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審決分類 |
審判 一部申し立て 発明同一 B32B 審判 一部申し立て 2項進歩性 B32B |
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管理番号 | 1053242 |
異議申立番号 | 異議2000-72548 |
総通号数 | 27 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-01-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-06-23 |
確定日 | 2001-11-28 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2999718号「光機能性有機フィルムとそれを用いた表示装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2999718号の請求項1〜6に係る発明についての出願は、平成8年6月28日に特許出願され、平成11年11月5日にその特許権の設定登録がなされ、その後、尾池工業株式会社より、請求項1〜2の「光機能性有機フィルム」に係る発明のみについての特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年6月4日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 2の1.訂正の内容 ア.訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1〜6の 「【請求項1】有機フィルム上に、粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも一種を含むゾル溶液を塗布し、波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜が形成されていることを特徴とする光機能性有機フィルム。 【請求項2】有機フィルム上に無機薄膜が多層に形成され、該無機薄膜は有機フィルム面側に高屈折率の無機薄膜とその上に低屈折率の無機薄膜が積層され、その少なくとも一層の無機薄膜が、粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも一種を含むゾル溶液を塗布し、波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜であることを特徴とする光機能性有機フィルム。 【請求項3】 前記有機フィルムの無機薄膜形成面がシランカップリング剤で処理された面上に前記無機薄膜が形成されている請求項1または2に記載の光機能性有機フィルム。 【請求項4】出射光または反射光を変調することにより表示を行う表示装置において、 前記表示装置の表示パネルフェース面に、有機フィルム上に粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも一種を含むゾル溶液を塗布し、波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜を有する光機能性有機フィルムを設けたことを特徴とする表示装置。 【請求項5】出射光または反射光を変調することにより表示を行う表示装置において、 前記表示装置の表示パネルフェース面に、表面に無機薄膜が多層に形成された有機フィルムを有し、前記無機薄膜は有機フィルム面側に高屈折率の無機薄膜とその上に低屈折率の無機薄膜が積層され、その少なくとも一層の無機薄膜が、粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも一種を含むゾル溶液を塗布し、波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜である光機能性有機フィルムを設けたことを特徴とする表示装置。 【請求項6】前記表示装置の表示パネルフェース面に形成した前記有機フィルムの無機薄膜形成面がシランカップリング剤処理された面上に前記無機薄膜が形成されている光機能性有機フィルムを設けた請求項4または5に記載の表示装置。」 を、 「【請求項1】出射光または反射光を変調することにより表示を行う表示装置において、 前記表示装置の表示パネルフェース面に、シランカップリング剤処理された面上に無機薄膜が多層に形成された有機フィルムを有し、 前記無機薄膜は有機フィルム面側に高屈折率の無機薄膜とその上に低屈折率の無機薄膜が積層され、 該無機薄膜が、In2O3,SnO2,ZnOから選ばれた粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも一種を含むゾル溶液を塗布し、 波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜である光機能性有機フィルムを設けたことを特徴とする表示装置。」 と訂正する。 イ.訂正事項2 明細書の段落【0039】の 「この膜の断面の……観察された。」 を、 「この膜の断面の……観察された。なお、前記ITO超微粒子分散ゾル溶液中のSiO2は、無機粒子(In2O3)3を囲むように形成されている。」 と訂正する。 2の2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否 訂正事項1は、実質的に請求項1〜4を削除すると同時に、訂正前の請求項5の「表示装置」に、同請求項6の技術事項並びに特許明細書の段落【0026】記載の無機粒子の種類についての限定を付す点で、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2は、特許請求の範囲の訂正に伴い必要となる、明りょうでない記載の釈明に相当する。 そして、上記訂正は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。 2の3.独立特許要件 特許異議申立の対象外である、上記訂正後の請求項1の「表示装置」に係る発明については、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとすべき理由を発見しない。 2の4.むすび したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 訂正前の請求項1〜2の「光機能性フィルム」に係る発明は、上記適法な訂正により削除された結果、もはや特許異議の申立ての対象は存在しないから、本件特許異議の申立ては不適法な申立てであって、その補正をすることができないものである。 したがって、本件特許異議の申立ては、特許法第120条の6第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 光機能性有機フィルムとそれを用いた表示装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 出射光または反射光を変調することにより表示を行う表示装置において、 前記表示装置の表示パネルフェース面に、シランカップリング剤処理された面上に無機薄膜が多層に形成された有機フィルムを有し、 前記無機薄膜は有機フィルム面側に高屈折率の無機薄膜とその上に低屈折率の無機薄膜が積層され、 該無機薄膜が、In2O3,SnO2,ZnOから選ばれた粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも一種を含むゾル溶液を塗布し、 波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜である光機能性有機フィルムを設けたことを特徴とする表示装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、通常の有機フィルムに無機系薄膜をコーティングして作製した光機能性有機フィルムとそれを用いた表示装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 有機フィルム上に無機系薄膜をコーティングし、該フィルムの光機能性を高めたものとしては、透明導電フィルムが知られている(New Glass, Vol.13,No.3,P.25(1989年)。こうしたフィルムの成膜方法としては、スパッタ法が知られている。 【0003】 特開平6-139964号公報には、機能性フィルム付き陰極線管が開示されている。これはフィルム上に反射防止効果や波長選択吸収効果を持つ膜を形成したものをCRT上に接着させたものである。これは、蒸着により多層薄膜をフィルム上に形成したものであるが、ゾル溶液をスプレー塗布により塗布する方法も開示されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 スパッタ法や蒸着によりフィルム上に無機膜を形成するものは、大掛かりな真空装置が必要な上に、大面積のものの成膜には適さず、また、成膜コストが高いなどの問題がある。スパッタ法の場合は、アルゴンプラズマ中での成膜のため、アルゴンプラズマによるフィルムの逆スパッタにより、フィルムが破壊されると云う問題もある。 【0005】 他の成膜法としてはCVD法や真空蒸着法が知られているが、成膜温度が高いためフィルム上への無機膜の成膜は困難で、大面積のものには成膜が困難などの欠点がある。特に、有機フィルム上への成膜は、フィルムの耐熱温度が低いため、通常の手法による成膜は困難である。 【0006】 また、真空蒸着法には、フィルム表面を冷却しながら成膜する方法もあるが、かなり特殊な付属装置を必要とする。また、蒸着法により成膜した場合、膜の構造が柱状構造となるため、膜の横方向に対する膜の強度は非常に弱いものであった。 【0007】 また、ゾル溶液をスプレー塗布し、ついで熱処理して成膜するものもあるが、膜表面が凹凸になり易いため、表示装置等の発光体では光の透過性能が悪化し、有機フィルムでは熱処理温度を高くできないために、フィルムへの密着強度は極めて低いものであった。 【0008】 反射帯電防止膜を形成したCRTが知られているが、この膜はCRTのフェースガラス面上に直接成膜されたものが多く、反射帯電防止膜を形成した有機フィルム等を設けたものではない。また、CRTのフェースガラス面上にスピンコーティングあるいはスプレーコーティングする方法は、膜形成に手数がかかり、生産性が悪いと云う問題があった。 【0009】 本発明の目的は、上記の問題を解決するためになされたもので、高光機能性を発揮する無機薄膜を、耐熱性が低い有機フィルム上に低温形成し、汎用性の高い便利な光機能性有機フィルムを提供することにある。 【0010】 本発明の他の目的は、上記光機能性有機フィルムを用いた表示装置の提供にある。 【0011】 【課題を解決するための手段】 有機フィルム上に機能性無機膜を形成するためには、低温成膜技術の開発が最大の問題となる。これを解決するため本発明者らは光照射を利用したゾルゲル法による光機能性有機フィルムを開発した。これは、光エネルギによりゾルゲル反応を促進して、低温で無機薄膜を形成する手法である。これによって、耐熱性の低い有機フィルム上にも機能性無機薄膜を形成することが可能となる。 【0012】 本発明の要旨は次のとおりである。 【0013】 〔1〕 有機フィルム上に、粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも一種を含むゾル溶液を塗布し、波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜が形成されていることを特徴とする光機能性有機フィルム。 【0014】 【0015】 〔2〕 有機フィルム上に無機薄膜が多層に形成され、該無機薄膜は有機フィルム面側に高屈折率の無機薄膜とその上に低屈折率の無機薄膜が積層され、その少なくとも一層の無機薄膜が、粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも一種を含むゾル溶液を塗布し、波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜であることを特徴とする光機能性有機フィルム。 【0016】 【0017】 〔3〕 前記有機フィルムの無機薄膜形成面がシランカップリング剤で処理された面上に前記無機薄膜が形成されている前記の光機能性有機フィルム。 【0018】 〔4〕 出射光または反射光を変調することにより表示を行う表示装置において、 前記表示装置の表示パネルフェース面に、有機フィルム上に粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも一種を含むゾル溶液を塗布し、波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜を有する光機能性有機フィルムを設けたことを特徴とする表示装置。 【0019】 〔5〕 出射光または反射光を変調することにより表示を行う表示装置において、 前記表示装置の表示パネルフェース面に、表面に無機薄膜が多層に形成された有機フィルムを有し、前記無機薄膜は有機フィルム面側に高屈折率の無機薄膜とその上に低屈折率の無機薄膜が積層され、その少なくとも一層の無機薄膜が、粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも一種を含むゾル溶液を塗布し、波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜である光機能性有機フィルムを設けたことを特徴とする表示装置。 【0020】 〔6〕 前記表示装置の表示パネルフェース面に形成した前記有機フィルムの無機薄膜形成面がシランカップリング剤処理された面上に前記無機薄膜が形成されている光機能性有機フィルムを設けた前記の表示装置。 【0021】 【発明の実施の形態】 ゾル溶液中に各種機能性の無機粒子を分散させておけば、ゾルが光照射により無機薄膜に変換される際に光機能性の無機粒子が固定される。これにより光機能性を有する無機薄膜を有機フィルム上に形成することができる。 【0022】 また、無機粒子を分散したゾル溶液の代わりに分散させたい無機粒子の原料となる金属アルコキシドのゾル溶液を用いることによっても、目的とする無機薄膜を得ることもできる。この際、照射する光は通常の金属アルコキシドの吸収波長領域である紫外線領域の光が効果的である。 【0023】 上記の紫外線により、ゾルゲル反応の基本反応である加水分解反応及び縮合反応を効率的に進行させることができ、目的とする無機薄膜を得ることができる。 【0024】 上記無機薄膜の形成に使用する有機フィルムは、その表面をシランカップリング剤等で処理し、フィルム表面に無機の中間介在層を形成しておくと、無機薄膜の密着強度が向上し、実用の際に好適なものが得られる。 【0025】 上記無機薄膜の成膜方法は、従来のようなスパッタ法、CVD法、真空蒸着法等の大掛かりな真空設備を要しないため、極めて経済的な方法である。 【0026】 前記無機粒子としてはIn2O3,SnO2,ZnO,TiO2,SiO2の少なくとも一種を用いることができる。該無機粒子の粒径は、500Å以下が望ましい。特に、In2O3,SnO2,ZnOは導電性を有するので、帯電防止膜となる。 【0027】 本発明のフィルムは高屈折率/低屈折率の積層膜とし、各層の膜厚と屈折率を制御することにより、それぞれの層での光の反射光をλ/4ずらすことで光の干渉効果により反射光を減殺させることにより、反射防止効果を発現させることができる。 【0028】 高屈折率層に導電性を有する無機粒子を用いることにより、反射防止機能と帯電防止機能を併せ持つ光機能性有機フィルムを得ることができる。 【0029】 本発明の光機能性有機フィルムは、液晶、CRT等のフェース面上に適用することにより、反射防止機能または反射帯電防止機能を形成することができる。 【0030】 また、本発明の有機フィルム上に形成した無機薄膜は、従来の蒸着やスパッタ法で形成した薄膜と比較して、その構造が大きく異なる。即ち、蒸着やスパッタ法で作製した薄膜は、膜の断面構造が柱状構造であり、膜の横方向に対する動きに対して、膜の強度が非常に弱いものであった。本発明による無機薄膜は、超微粒子(粒径500Å以下)が分散されているゾル溶液を、無機バインダとしてフィルム上に接着するため、無機薄膜の断面構造は、微粒子の集合体が積層したものとなる。このため膜の横方向や、粒子間の動きに対して余裕度が高いため、その強度は極めて強いものとなり、膜の可とう性もこれまでにない優れたものとなる。 【0031】 有機フィルムの素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましいが、トリアセチルセルロース(TAC)等の他の材料も目的に応じて用いることが可能である。 【0032】 高い光機能性を備えた本発明の有機フィルムは、接着剤で表示装置のフェース面に接着して用いる。その際の接着剤としては、酢酸ビニル系、アクリル系、ホットメルト系、ユリア樹脂系、フェノール樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリウレタン樹脂系、ホットメルト樹脂系など目的に応じて市販の透明な接着剤であれば使用することができる。 【0033】 【実施例】 本発明を実施例に基づき具体的に説明する。 【0034】 〔実施例1〕 テトラエトキシシラン、水、エタノール、硝酸をモル比で1:12:45:0.25の割合で混合してSiO2ゾル溶液とした。この溶液100mlにSnを2重量%含有したITO(Indim Tin Oxide)超微粒子(粒径50〜300Å)を酸性度を調節しながら分散し7重量%の分散ゾル溶液とした。 【0035】 このITO分散ゾル溶液をPETフィルム(フィルムの適用面をシランカップリング剤で処理し厚さ300Åのシリカ層を形成)上に浸潰法により成膜し、50℃で2分間乾燥した。 【0036】 次いで、このフィルム上にテトラエトキシシランを原料として合成した1重量%SiO2ゾル溶液を同様に浸潰法により成膜して、50℃で2分間乾燥した。 【0037】 次に、254nm,184nmの紫外線を3分間を照射した。この光照射の際の基板フィルムの温度は50℃とした。この膜の表面抵抗は5×106Ω/□であった。また表面反射率は0.35%(570nm)であった。 【0038】 この膜の断面構造を浸透型電子顕微鏡(TEM)で観察した。TEM観察用試料の作製はFIB(Focused Ion Beam)加工で作製した。 【0039】 この膜の断面の模式構造図を図1に示す。図中において、1は有機フィルム、2はシランカップリング層、3は無機粒子(In2O3)、4はシリカ層である。有機フイルム1上に1000Å及び800Åの膜厚でITO及びSiO2が均一に形成されていることが観察された。なお、前記ITO超微粒子分散ゾル溶液中のSiO2は無機粒子(In2O3)3を囲むように形成されている。 【0040】 また、ITO膜中には粒径が50〜300Åの粒子が観察された。この粒径は可視光波長よりもはるかに小さいので薄膜は透明となる。ITO及びSiO2の屈折率はそれぞれ1.70及び1.42であった。このため、液晶やCRTのフェースプレート表面にこの反射帯電防止膜を設けても、透過光または蛍光体の光を散乱することがない。また、液晶やCRTの表面反射を防止し、かつ、静電気などの帯電も防止することができた。 【0041】 ITOの代わりにSnO2(Sb含有),ZnO(Al含有)を使用しても同様な帯電防止効果と反射防止効果を有するフィルムが得られた。 【0042】 〔実施例2〕 実施例1で作製した反射帯電防止機能を有する有機フィルムを、CRT(17インチブラウン管)のフェースプレート表面に接着した。 【0043】 この表面に反射帯電防止膜を形成したCRTは、外光のフェースプレート表面での反射が抑えられるため、視認性が極めて向上した。また、帯電防止機能により、静電気が除去できるため、CRTフェースプレート表面への塵埃の付着が少なく、かつ、人が触れても電気的ショックを受けることがなかった。 【0044】 〔実施例3〕 実施例1で作製した反射帯電防止機能を有する有機フィルムを、液晶表示装置の表示面の偏光膜の上に接着した。 【0045】 この液晶表示装置は、フェースプレート表面での外光の反射が抑えられるため、視認性が極めて向上した。 【0046】 【発明の効果】 本発明の光機能性有機フィルムは、従来の蒸着法やプラズマ法に比べて、比較的低温で無機薄膜を形成することができるので、ベースとなる有機フィルムを変質,変形することがなく、高価な真空設備を必要としない。 【0047】 また、無機薄膜に含まれる無機粒子として導電性粒子を選択すれば、反射,帯電防止機能を有する光機能性有機フィルムを提供できる。該フィルムをフェースプレート表面に設けたCRTや液晶表示装置等の表示装置は、反射,帯電防止機能が優れている。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の光機能性有機フィルムのTEMの模式断面図である。 【符号の説明】 1…有機フィルム、2…シランカップリング層、3…無機粒子(In2O3)、4…シリカ(SiO2)層。 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 ア.訂正事項1 特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1〜6の 「【請求項1】有機フィルム上に、粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも一種を含むゾル溶液を塗布し、波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜が形成されていることを特徴とする光機能性有機フィルム。 【請求項2】有機フィルム上に無機薄膜が多層に形成され、該無機薄膜は有機フィルム面側に高屈折率の無機薄膜とその上に低屈折率の無機薄膜が積層され、その少なくとも一層の無機薄膜が、粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも一種を含むゾル溶液を塗布し、波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜であることを特徴とする光機能性有機フィルム。 【請求項3】前記有機フィルムの無機薄膜形成面がシランカップリング剤で処理された面上に前記無機薄膜が形成されている請求項1または2に記載の光機能性有機フィルム。 【請求項4】出射光または反射光を変調することにより表示を行う表示装置において、 前記表示装置の表示パネルフェース面に、有機フィルム上に粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも種を含むゾル溶液を塗布し、波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜を有する光機能性有機フィルムを設けたことを特徴とする表示装置。 【請求項5】出射光または反射光を変調することにより表示を行う表示装置において、 前記表示装置の表示パネルフェース面に、表面に無機薄膜が多層に形成された有機フィルムを有し、前記無機薄膜は有機フィルム面側に高屈折率の無機薄膜とその上に低屈折率の無機薄膜が積層され、その少なくとも一層の無機薄膜が、粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも種を含むゾル溶液を塗布し、波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜である光機能性有機フィルムを設けたことを特徴とする表示装置。 【請求項6】前記表示装置の表示パネルフェース面に形成した前記有機フィルムの無機薄膜形成面がシランカップリング剤処理された面上に前記無機薄膜が形成されている光機能性有機フィルムを設けた請求項4または5に記載の表示装置。」 を、 「【請求項1】出射光または反射光を変調することにより表示を行う表示装置において、 前記表示装置の表示パネルフェース面に、シランカップリング剤処理された面上に無機薄膜が多層に形成された有機フィルムを有し、 前記無機薄膜は有機フィルム面側に高屈折率の無機薄膜とその上に低屈折率の無機薄膜が積層され、 該無機薄膜が、In2O3,SnO2,ZnOから選ばれた粒子径が500Å以下の無機粒子と、金属がIn,Sn,Zn,Ti,Siから選ばれる金属アルコシドの少なくとも一種を含むゾル溶液を塗布し、 波長が254nmおよび/または184nmの紫外光照射により、前記金属アルコシドのゾルゲル反応によって得られた無機薄膜である光機能性有機フィルムを設けたことを特徴とする表示装置。」 と訂正する。 イ.訂正事項2 明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の段落【0039】の 「この膜の断面の……観察された。」 を、 「この膜の断面の……観察された。なお、前記ITO超微粒子分散ゾル溶液中のSiO2は、無機粒子(In2O3)3を囲むように形成されている。」 と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-11-06 |
出願番号 | 特願平8-169620 |
審決分類 |
P
1
652・
161-
XA
(B32B)
P 1 652・ 121- XA (B32B) |
最終処分 | 決定却下 |
前審関与審査官 | 中島 庸子 |
特許庁審判長 |
小林 正巳 |
特許庁審判官 |
喜納 稔 鴨野 研一 |
登録日 | 1999-11-05 |
登録番号 | 特許第2999718号(P2999718) |
権利者 | 株式会社日立製作所 |
発明の名称 | 光機能性有機フィルムとそれを用いた表示装置 |
代理人 | 小川 勝男 |
代理人 | 田中 恭助 |
代理人 | 田中 恭助 |
代理人 | 小川 勝男 |