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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B02C |
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管理番号 | 1053289 |
異議申立番号 | 異議2001-72686 |
総通号数 | 27 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-07-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-10-01 |
確定日 | 2002-02-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3151440号「自走式破砕機」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3151440号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.本件発明 特許第3151440号の請求項1ないし4に係る発明についての出願は、平成3年10月29日に特許出願した特願平3-347564号の一部を平成10年10月29日に新たな特許出願としたものであり、平成13年1月19日にその発明についての特許権の設定登録がなされたものであって、その請求項1ないし4に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 被破砕物を破砕する自走式破砕機において、 フレームと、 このフレームに設けた走行手段と、 前記フレームの長手方向のほぼ中心部に設けた破砕装置と、 前記フレームの長手方向の一方側に配置したエンジンと、 前記フレームの長手方向の他方側に配置したホッパと、 このホッパの下方と前記破砕装置との間で、前記破砕装置側部分が前記ホッパ側部分よりも高くなるように前記フレームの短手方向に並設配置した複数のグリズリバーを有するグリズリフィーダと、 前記破砕装置の下方に、前記破砕装置で破砕した破砕物を搬出するコンベヤとを備えたことを特徴とする自走式破砕機。 【請求項2】 請求項1記載の自走式破砕機において、前記フレームの短手方向に並設配置した前記複数のグリズリバーは、前記フレームの長手方向に2段配置されていることを特徴とする自走式破砕機。 【請求項3】 請求項1または2記載の自走式破砕機において、前記コンベヤは、一方側が前記破砕装置の下方に、他方側が前記エンジン側に延在するように配置したことを特徴とする自走式破砕機。 【請求項4】 請求項1乃至3記載の自走式破砕機において、前記グリズリフィーダと前記コンベヤとの間に、シュートを設けたことを特徴とする自走式破砕機。」 2.特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人川崎重工業株式会社は、証拠として甲第1号証(「E/MJ ENGINEERING AND MINING JOURNAL」 Vol. 167. No.10 1966年10月 McGRAW HILL社発行 第82〜86頁)、甲第2号証(特開昭63-77553号公報)、甲第3号証(特開昭57-130576号公報)、 甲第4号証(「PIT QUARRY」 Vol. 83. No.10 1991年4月 Edgell Communications社発行 第46頁のNordberg社の広告頁)を提出し、請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができないものであるから、請求項1ないし4に係る発明の特許は取り消されるべきものである旨主張している。 3.特許異議申立人が提出した甲号各証記載の発明 (1)甲第1号証 特許異議申立人が提出した甲第1号証(「E/MJ ENGINEERING AND MINING JOURNAL」 Vol. 167. No.10 1966年10月 McGRAW HILL社発行 第82〜86頁)には、「移動式クラッシャ」に関する機械である 「WESERHUTTE'S Crus-Mobile 500」及び「Crush-Mobile 1000」の斜視図が記載されており、該図から「移動式破砕機において、フレームと、このフレームに設けた走行手段と、このフレームに設けたコンベアを備えた移動式破砕機」が看て取れる。 また、第84頁右欄第32〜54行の記載及びFIG.7等からみて、「移動式破砕機において、走行手段と、クラッシャ2と、最初のフィーダースクリーン1と、一端がクラッシャ2の下方に位置し他端が破砕装置の長手方向の他方側に位置するように設けられたコンベア3を備えた移動式破砕機」の発明が記載されている。 さらに、第84頁右欄第24〜31行の記載及びFIG.6から、前分離装置として振動スクリーンフィーダを備えた移動式破砕機が記載されている。 (2)甲第2号証 特許異議申立人が提出した甲第2号証(特開昭63-77553号公報)には、「被破砕物を破砕する移動式破砕機において、フレーム2と、このフレーム2に設けたクローラ3と、フレーム2の長手方向のほぼ中心部に設けた破砕機本体1と、フレーム2の長手方向の一方側に配置したエンジン発電機7と、フレーム2の長手方向の他方側に配置した供給受けシュート5と、破砕機本体1の下方に、破砕機本体1で破砕した破砕物を搬出する排出用コンベア4とを備えた移動式破砕機」の発明が記載されている。 (3)甲第3号証 特許異議申立人が提出した甲第3号証(特開昭57-130576号公報)には、「一方向に延びる複数の格子材を所要間隔をあけて横方向に並べ、これらの格子材のうち、交互に位置する一群の格子材を残りの格子材に対して上下並びに前後に相対移動させる機構を設けた粒状体の選別移送装置」の発明が記載されている。 また、第1図から、該粒状体の選別移送装置が、搬送方向下流側が上流側より高くなるよう配置されている点が看て取れる。 (4)甲第4号証 特許異議申立人が提出した甲第4号証(「PIT QUARRY」 Vol. 83. No.10 1991年4月 Edgell Communications社発行 第46頁のNordberg社の広告頁)には、自走式破砕装置と看て取れる写真と、ロコトラック(Lokotrack)に関する説明が記載されている。 4.対比・判断 (1)請求項1に係る発明 本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と特許異議申立人が提出した甲号各証記載の発明とを対比する。 甲第1号証に記載された発明の「移動式破砕機」は、本件発明1の「自走式破砕機」に相当し、以下同様に、「走行手段」は「走行手段」に、「クラッシャ2」は「破砕装置」に、「コンベヤ3」は「コンベヤ」に、それぞれ相当する。 また、甲第2号証に記載された発明の「移動式破砕機」は、本件発明1の「自走式破砕機」に相当し、以下同様に、「フレーム2」は「フレーム」に、「クローラ3」は「走行手段」に、「破砕機本体1」は「破砕装置」に、「供給受けシュート5」は「ホッパ」に、「エンジン発電機7」は「エンジン」に、「排出用コンベア4」は「コンベヤ」に、それぞれ相当する。 そこで、本件発明1と、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明とを比較すると、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明は、いずれも、本件発明の構成に欠くことができない事項である、(a)「破砕装置側部分がホッパ側部分よりも高くなるようにフレームの短手方向に並設配置した複数のグリズリバーを有するグリズリフィーダ」を有していない。 また、甲第3号証及び甲第4号証のいずれにも、上記(a)の事項が記載されているとは認められない。 しかも、「グリズリバーの先端が高くなるように配置したグリズリフィーダ」が、本件の出願前、当業者にとって周知の事項であったということを認めるに足る証拠も見いだせない。 そして、上記(a)の事項により、本件発明1は、ホッパから破砕装置への円滑かつ安定的な被破砕物の供給を確保し、これによって破砕効率を向上させ、高い生産性を実現することができるという顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件請求項1に係る発明は、上記甲号各証記載の発明から当業者が容易に想到し得るものではない。 (2)請求項2ないし4に係る発明 本件特許の請求項2ないし4に係る発明は、請求項1を引用して更に限定したものであるから、上記(1)の請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記甲号各証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。 (3)以上のとおりであるから、請求項1ないし4に係る発明は、特許異議申立人が提出した甲号各証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5.特許異議申立人の主張 (1)特許異議申立人は、甲第1号証には「ホッパの下方と破砕装置との間で、フレームの短手方向に並設配置した水平な複数のグリズリバーを有するグリズリフィーダ」が開示されており(異議申立書第6頁第8〜12行)、また、甲第3号証には「選別手段を備えたフィーダを、搬送方向下流側が上流側より高くなる傾斜構造とする技術」が開示されており(異議申立書第8頁第24〜26行)、甲第3号証に記載された技術を甲第1号証に記載された発明に適用することにより、上記(a)の構成は、当業者であれば容易に想到し得るものである(異議申立書第8頁第26行〜第9頁第8行)旨主張する。 しかしながら、甲第1号証には、振動スクリーンフィーダを有する移動式破砕機は記載されているものの、複数のグリズリバーを有するグリズリフィーダについては何ら記載されておらず示唆もされていない。 また、仮に、甲第1号証に記載された発明の振動スクリーンフィーダ1(Fig.6)あるいは最初のフィーダースクリーン1(Fig.7)に、周知のグリズリーフィーダーを採用したとしても、グリズリーフィーダは、通常、粒状物の搬送方向下流側が低くなるように配置するか水平に配置して使用するものであり、搬送方向下流側が上流側より高くなる構成を有する甲第3号証に記載された粒状体の選別移送装置の技術を、通常、粒状物の搬送方向下流側が低くなるように配置するか水平に配置して使用する周知のグリズリーフィーダーに適用することは困難性があると言わざるを得ない。 異議申立人は、「甲第1号証の発明、甲第2号証の技術及び甲第3号証の技術を併合することは、甲第4号証から極めて容易である」(異議申立書第9頁第9〜12行)旨主張するが、甲第4号証に上記適用が容易であることが記載されているとも示唆されているとも認められない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (2)特許異議申立人は、甲第4号証は、本件請求項1記載の発明の構成要件の全ての構成を開示している(異議申立書第第7頁第15〜19行)と主張し、本件請求項1記載の発明の構成要件G(上記(a)の事項に相当)は、甲第4号証に記載されている旨主張する。 しかしながら、甲第4号証の、Nordberg社の広告頁には、自走式破砕装置と看て取れる写真と、ロコトラック(Lokotrack)に関する説明が記載されているものの、上記(a)の事項に関する記載はなく、それを示唆する記載も認められない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 6.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る発明の特許を取り消すことはできない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2002-01-18 |
出願番号 | 特願平10-308772 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B02C)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 黒石 孝志 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
山口 直 清田 栄章 |
登録日 | 2001-01-19 |
登録番号 | 特許第3151440号(P3151440) |
権利者 | メッツォ・ミネラルズ・ジャパン株式会社 日立建機株式会社 |
発明の名称 | 自走式破砕機 |
代理人 | 高 雄次郎 |