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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1054285
審判番号 審判1998-18464  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-12-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-11-19 
確定日 2002-02-15 
事件の表示 平成 8年特許願第143325号「排他制御装置」拒絶査定に対する審判事件[平成9年12月16日出願公開、特開平 9-325893]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年6月5日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年8月16日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「複数のCPUがバスを介して資源を共有するシステムにおいて共有資源の排他制御を行う排他制御装置であって、
前記バスと接続し前記CPUからの所定のアドレスを受け前記排他制御装置に選択信号を送るセレクタを備え、
レジスタ、ゲート回路、および比較演算回路を含む構成部分を備え、該構成部分は前記CPUおよび共有資源とは独立に前記バスに接続し、
前記レジスタには、前記比較演算回路からの信号に基づき前記比較演算回路が出力する共有資源を使用する複数のCPUを識別する識別情報と前記共有資源が使用されていないことを示す所定値とが選択的に書き込まれ、
前記ゲート回路は前記セレクタからの信号とバスからのリード信号に基づき前記レジスタの出力をバスに出力し、
前記比較演算回路は前記セレクタからの信号とバスからのライト信号に基づき前記レジスタの内容が上記共有資源が使用されていないことを示す所定値のときこの所定値を前記CPUから送られてきた前記CPUを識別する識別情報に書き換え、前記レジスタの内容が前記CPUを識別する識別情報であるときこの識別情報を前記CPUから送られて来た前記共有資源が使用されていないことを示す所定値に書き換え、
前記レジスタの内容が前記所定値から前記識別情報に書き換えられた時点からの経過時間を計測する計測手段を備え、
前記複数のCPUの各々が、前記経過時間を読み出し得るように構成されていることを特徴とする排他制御装置。」

2.引用例
これに対して、当審において合議の結果、平成13年9月6日付けで通知した拒絶理由に引用した特開昭51-140537号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「このような複数のプロセッサによる共通端末機器の同時使用を避けるためには、各プロセッサが共通端末機器を使用する場合に、プロセッサ側で共通端末機器が他のプロセッサによって使用状態にあるか否かを判定し、使用状態にないときだけ当該端末機器を使用するようにしなければならない。
従来は、このような要求に対して、複数プロセッサの共通端末機器の使用を管理する管理装置を用意し、共通端末機器を使用しようとするプロセッサは、この管理装置にその要求を出し、管理装置から使用許可を得てから当該端末機器を使用するという方式をとっていた。この方式では端末機器の使用状態が管理装置を介して判定されるので、管理装置におけるわずかなエラーによって重複使用状態が発生する恐れがあり、そして共通に使用される端末機器が増加すれば管理装置の構成も複雑となり、この装置の費用がかさむだけでなく、エラーの発生も増大して、前記の重複使用状態の発生の機会も増々多くなる等の欠点がある。
本発明は、このような欠点を除くため、プロセッサの共通端末機器に対する使用要求にして、使用可能状態であればこれに使用権を与え、かつこの使用権の設定をし、そしてこの設定された使用権を各プロセッサが読出してプロセッサ自身で共通端末機器の使用状態を判定することのできる方式を提供することを目的とする。」(第2頁左下欄第6行目乃至右下欄第11行目)
(2)「第1図は本発明の第1の実施例を示すブロック構成図である。この図においてP1〜Pnはプロセッサで、共通の情報伝送バスBに並列接続される。バスBはさらにプロセッサP1〜Pnに共通の端末機器Dおよびこの端末機器Dの使用権を設定するための使用権設定装置Uが接続される。使用権設定装置Uは、プロセッサP1〜Pnのそれぞれに個有に与えられた機番N1〜Nn以外の機番Nuが設定される機番設定器K、バスBからのデータと機番設定器Kからのデータを選択してレジスタに伝送するデータセレクタS、このデータセレクタSを介して伝送されたデータを読込み、記憶するレジスタR、このレジスタRの読込みを制御するゲートG2、レジスタRの記憶データを読出す読出しゲートG1およびレジスタRの記憶データと機番設定器Kの設定データとを比較し、一致したときに出力信号SC1を発生する比較器C1を備えている。
このように構成された本発明装置は、次のように動作する。
使用権設定装置Uにおいては、最初は機番設定機Kに設定された機番NuがレジスタRに読込まれる。したがって、レジスタRの内容は動作開始時はNuとなる。
しかして、ある時点で、機番N1の与えられたプロセッサP1において、共通の端末機器Dの使用要求が発生すると、このプロセッサP1は、端末機器Dに対応して設けられた使用権設定装置Uに、選択的にバスBを介して使用権設定信号SETとともにデータとして自己に与えられた機番N1を伝送する。使用権設定装置Uは、プロセッサP1からの設定信号を受けると、データセレクタSがバスBからのデータをレジスタRに導くように動作する。このとき、レジスタRの内容は、Nuで機番設定器Kの内容と一致するので、比較器C1は出力信号SSC1を発生し、ゲートG2に与える。このゲートG2においては設定信号SETと比較器C1の出力信号SC1との一致がとれるので、ゲートG2からオア回路ORを介してレジスタRに読込み信号RSが与えられる。これにより、レジスタRはバスBおよびセレクタSを介してプロセッサP1から伝送されたデータN1を読込み、内容をNuからN1に書換える。次でプロセッサP1はバスBを介して使用権設定装置UのレジスタRの読取りゲートG1に読取り信号REAを伝送する。これにより、レジスタRにセットされたデータN1が、ゲートG1により読出され、バスBを介してプロセッサP1に読取られるのである。
プロセッサP1は、このようにして使用権設定装置UのレジスタRから読取ったデータを自己に与えられた機番N1と比較し、使用権が設定されたか否かの確認を行う。この場合は、レジスタRから読取ったデータがN1であり、自己の機番N1と一致するので、プロセッサP1は、端末機器Dに対する使用権の設定が使用権設定装置Uで行われたことを確認する。このように、使用権の設定が確認されると、プロセッサP1は端末機器Dの使用を実行し、その終了により、使用権解除信号RESを使用権設定装置Uに伝送する。
使用権設定装置Uにおいては、解除信号RESを受取るとデータセレクタSが、今度はバスBからのデータを切離し、機番設定器KのデータNuをレジスタRに導くように動作する。しかして解除信号RESはオア回路ORを介してレジスタRに読取り信号RSとしても加わるので、レジスタRはデータセレクタから導かれた機番設定器KからのデータNuを直ちに読取り内容をNuに書換え、プロセッサP1の使用権の設定を解除する。
前記プロセッサP1から解除信号RESが発信される前の段階、すなわち、プロセッサP1が端末機器Dを使用している間に、他のプロセッサ、例えばPnにおいて、共通端末機器Dの使用要求が発生した場合は、同様にプロセッサPnから端末機器Dに対応して設けた使用権設定器Uに使用権設定信号SETと、データとして自己の機番NnとがバスBを介して伝送される。これにより、データセレクタSは、データNnをレジスタRの入力に導く。しかしながら、この場合は、すでにプロセッサP1が自己の機番N1を登録し、共通端末機器Dの使用権を設定しているので、比較器C1は、入力に加わるレジスタRの内容と機番設定器Kの内容とが一致しないため、出力信号SC1を発生しない。このため、読込みゲートG2からの読込み信号RSが発生されず、レジスタRは、入力に導かれたデータNnの読込みを行なわず、内容の書換えは行なわない。したがって、この後、プロセッサPnが自己の使用権設定が実行されたか否かを確認するため、レジスタRの読取りゲートG1に読取り信号REAを送って、レジスタRの内容を読取った場合、プロセッサPnには、プロセッサP1の機番N1が読取られ、自己の機番Nnと一致しないことにより、使用権の設定がなされなかったことが確認される。この結果、プロセッサPnにおいては端末機器Dを使用するシーケンスのスタートが禁止されるので端末機器Dが複数のプロセッサによって同時に重複して使用されることはなくなる。」(第3頁左上欄第20行目乃至第4頁右上欄第13行目)
(3)「この第2図の装置は、プロセッサが使用権を設定する際は、第1図の装置と同一に動作するが、設定を解除する際の動作が異なる。すなわち、第2図には図示しない使用権を設定しているプロセッサが、設定を解除する際は、設定動作のときと同様に設定解除信号RESとともにデータとして自己の機番を使用権設定装置に送るのである。このように、解除信号RESとともに送られてきたプロセッサの機番を示すデータは、使用権設定装置Uの比較器C2により、レジスタRの内容と比較される。この場合、使用権を設定しているプロセッサからのデータであれば、レジスタRに設定された内容と同一となるので、比較器C2は出力信号SC2を発生し、ゲートG3に与える。これにより、ゲートG3において解除信号RESと比較器C2の出力信号SC2との一致がとれるので、レジスタRへの読込み信号RSが発生されるので、レジスタRは入力に導かれたデータを読み込む。この場合、レジスタRの入力には、すでにデータセレクタSに解除信号RESが加わり、機番設定器Kのデータが導かれているので、レジスタRの内容はこの機番設定器Kに設定された内容に書換えられ、これにより、先に設定された使用権が解除され新たな使用権の設定が可能な状態となる。」(第4頁右下欄第2行目乃至第5頁左上欄第5行目)

上記記載事項によると、引用刊行物1には、
「複数のプロセッサがバスを介して端末機器を共有するシステムにおいて共通端末機器の使用権設定を行う使用権設定装置であって、
レジスタR、ゲートG1、データセレクタS、ゲートG2、および比較器C1を含む構成部分を備え、該構成部分は前記プロセッサおよび共通端末機器とは独立に前記バスに接続し、
前記レジスタRには、比較器C1の出力信号SC1と比較器C2の出力信号SC2に基づき、前記データセレクタSが出力する共通端末機器を使用する複数のプロセッサを識別する機番N1〜Nnと前記共通端末機器が使用されていないことを示す機番Nuとが選択的に書き込まれ、
前記ゲートG1はバスからの読取り信号REAに基づき前記レジスタRの出力をバスに出力し、
前記データセレクタS、ゲートG2、ゲートG3、比較器C1、および比較器C2は、バスからの設定信号SETに基づき、前記レジスタRの内容が上記共通端末機器が使用されていないことを示す機番Nuのとき、この機番Nuを前記プロセッサから送られてきた前記プロセッサを識別する機番N1〜Nnに書き換え、バスからの解除信号RESに基づき、前記レジスタRの内容が前記プロセッサを識別する機番N1〜Nnであるとき、この機番N1〜Nnを前記プロセッサから送られてきた前記共通端末機器が使用されていないことを示す機番Nuに書き換える、
ことを特徴とする使用権設定装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

また、同じく拒絶理由に引用した特開昭59-123063号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(4)第2図において11は複数のマイクロプロセッサ(図示せず)などが接続されるマルチバスであって、これはアドレスバス11A、データバス11Bを持っている。12はアドレスバス11Aから入力されるシステムアドレスをデコードするデコーダ、13a、13bはデコーダ12からのメモリチップセレクト信号MCによってメモリ領域をセレクトされる共有メモリ、14はセマフォア回路であって、これにはセマフォアセレクト信号SSおよびシステムメモリリードコントロール信号MRDC、システムメモリライトコントロール信号MWTCが入力されるようになっている。」(第3頁右下欄第10行目乃至第4頁左上欄第2行目)

また、同じく拒絶理由に引用した特開平3-266170号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(5)「第3図は本発明の第2の実施例のロック機構のブロック図、第4図は第3図のロック機構を含む情報処理装置の一例のブロック図である。
第4図の情報処理装置はCPU10,11,12,13とIOP14,15,16,17(装置番号をそれぞれ0,1,2,3,4,5,6,7とする)とロック機構18とから構成されている。
ロック機構18は、第3図に示すように、タイマ1とロックレジスタ2と比較器3とロック制御部4と監視時間テーブル5とから構成されている。
監視時間テーブル5は、表1(15頁)に示すように、各装置10〜17に対するロックの監視時間T0〜T7が予め登録されている。タイマ1は、一定のクロックにより計時を行うカウンタで、デッドロック検出の時間(各装置の監視時間T0〜T7)に比べ十分大きな値までカウントできる。ロックレジスタ2は、ロック取得中か否かを示すロックバイトが格納されるロックバイト格納エリア21と、ロックを取得した装置の番号が格納されるロック装置番号格納エリア22と、タイマ1のタイマ値が格納されるタイマ値格納エリア23とからなっている。比較器3は2個の減算器31,32とアンドゲート33から構成され、減算器31はタイマ1の出力101とロックレジスタ2のタイマ値格納エリア23の読出し値との差分を求め、減算器32は減算器31の出力と監視時間テーブル5の出力501とを比較し、減算器31の出力が出力501の値を越えたときにその桁上げ信号とロック制御部4からのロック失敗信号403との論理積をアンドゲート33で取り、その結果をデッドロック検出信号301として出力する。ロック制御部4は各装置からのロック/アンロック要求信号401を解読して、ロックレジスタ制御信号402によりロック要求時にはまずロックレジスタ2の内容を読出し、ロックバイト格納エリア21の読出し値211が0かどうかを判定し、ロックバイトが0であれば前述の通り書込みデータ210とタイマ1の出力101をロックレジスタ2に書込むと共にロック要求元装置にロック成功/失敗信号404によりロック成功を通知し、ロックバイトが0で無ければロック失敗信号403を比較器3に送ると共にロック要求元装置にもロック成功/失敗信号404によりロック失敗を通知する。また、ロック制御部4はアンロック要求時、ロックレジスタ2のロックバイト格納エリア21とロック装置番号エリア22をクリアする。なお、監視時間テーブル5はロックレジスタ2のロック装置番号格納エリア22の読出し値221によりアクセスされる。」(第3頁右下欄第18行目乃至第4頁左下欄第6行目)
(6)「いま、CPU10が時刻taにおいてロックを取得したと仮定する。この場合、ロックレジスタ2には、CPU10が指定したロックバイトと、CPU10の装置番号0およびタイマ1のタイマ値taが書込まれている。次に、IOP14が時刻tbにロックを要求したとする。CPU10がロック取得中のためロックは失敗する。ロック失敗時に監視時間テーブル5からCPU10に対する監視時間T0が読出され比較器3でtbとtaの差分を求め、これがT0と比較される。CPU10が一定時間T0以内にアンロックを行えばデッドロックとならずIOP14がロックを取得し処理が正常に行われる。CPU10がなんらかの原因で一定時間T0以内にアンロックを行わなければ、IOP14からロック要求が失敗した時にtb-ta>T0を比較器3によって検出されたときにデッドロック検出信号301が出力される。」(第4頁右下欄第4行目乃至第20行目)

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「複数のプロセッサ」「共通端末機器」「レジスタR」「ゲートG1」「データセレクタS、ゲートG2、ゲートG3、比較器C1、および比較器C2」「共通端末機器を使用する複数のプロセッサを識別する機番N1〜Nn」「共通端末機器が使用されていないことを示す機番Nu」「バスからの読取り信号REA」「バスからの設定信号SETとバスからの解除信号RES」は、それぞれ、本願発明の「複数のCPU」「共有資源」「レジスタ」「ゲート回路」「比較演算回路」「共有資源を使用する複数のCPUを識別する識別情報」「共有資源が使用されていないことを示す所定値」「バスからのリード信号」「バスからのライト信号」に相当し、引用発明の使用権設定装置で使用権の設定を行うのは、1つのプロセッサが共通端末機器を排他的に使用するためである。
よって、本願発明と引用発明とは、
複数のCPUがバスを介して資源を共有するシステムにおいて供給資源の排他制御を行う排他制御装置であって、
レジスタ、ゲート回路、および比較演算回路を含む構成部分を備え、該構成部分は前記CPUおよび共有資源とは独立にバスに接続し、
前記レジスタには、前記比較演算回路からの信号に基づき前記比較演算回路が出力する共有資源を使用する複数のCPUを識別する識別情報と前記共有資源が使用されていないことを示す所定値とが選択的に書き込まれ、
前記ゲート回路はバスからのリード信号に基づき前記レジスタの出力をバスに出力し、
前記比較演算回路はバスからのライト信号に基づき前記レジスタの内容が上記共有資源が使用されていないことを示す所定値のときこの所定値を前記CPUから送られてきた前記CPUを識別する識別情報に書き換え、前記レジスタの内容が前記CPUを識別する識別情報であるときこの識別情報を前記CPUから送られてきた前記共有資源が使用されていないことを示す所定値に書き換える排他制御装置である点で一致し、次の点(A)、(B)で相違する。
相違点:
(A)本願発明は、バスと接続しCPUから所定のアドレスを受け排他制御装置に選択信号を送るセレクタを備え、前記セレクタからの選択信号を用いてバスからのリード信号、ライト信号を有効/無効としているのに対して、引用発明は、そのようなセレクタを備えていない点
(B)本願発明は、レジスタの内容が所定値から識別情報に書き換えられた時点からの経過時間を計測する計測手段を備え、複数のCPUの各々が、前記経過時間を読み出し得るように構成されているのに対して、引用発明は、レジスタの内容が所定値から識別情報に書き換えられた時点からの経過時間を計測する計測手段を備えておらず、複数のCPUの各々が、前記経過時間を読み出し得るように構成されていない点。

4.当審の判断
相違点(A)について:
引用刊行物2には、マルチ・プロセッサ・システムの共有資源アクセス方式において、バスと接続しマイクロプロセッサからの所定のアドレスを受け排他制御装置にセレクト信号を送るデコーダを備え、前記デコーダからのセレクト信号を用いてバスからのリードコントロール信号、ライトコントロール信号を有効/無効とすることが示されている。
そうすると、引用刊行物2に示されている公知技術を引用発明に適用して、バスと接続しプロセッサから所定のアドレスを受け使用権設定装置に選択信号を送るセレクタを備え、前記セレクタからの選択信号を用いてバスからのリードコントロール信号、ライトコントロール信号を有効/無効とするように変更することは、当業者ならば容易に想到し得るものである。
相違点(B)について:
引用刊行物3には、マルチプロセッサシステムのロック機構において、共有資源のロック時にタイマ値taを設定するロックレジスタと現在時刻tbを表示するタイマを備えることにより、ロック時点からの経過時間tb-taを計測し、該経過時間とロックを取得した各プロセッサの監視時間とを比較する技術思想が示されている。
引用刊行物3には、実施例として、経過時間とロックを取得した各プロセッサの監視時間との比較をロック機構でまとめて行うことが記載されているが、該比較をロック機構でまとめて行うか、それとも、各々のプロセッサでそれぞれ行うかは、当業者が適宜選択すべき事項と認められる。
そうすると、引用刊行物3に示されている技術思想を引用発明に適用して、レジスタの内容が所定値から識別情報に書き換えられた時点からの経過時間を計測する計測手段を備え、複数のCPUの各々が、前記経過時間を読み出し得るように構成するようにすることは、当業者ならば容易に想到し得るものである。

なお、請求人は、平成13年11月19日付けの意見書において、引用刊行物3に記載された技術を引用刊行物1記載のマルチプロセッサシステムの発明に適用したとしても、デッドロックの検出時間を各CPUに個別に設定することにより、ロック機構で一括検出する場合と比較して、資源の横取り処理の判断条件を各CPUに対して細かく設定できるという、本願発明が奏する効果は実現できない旨主張しているが、平成13年8月16日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1には、デッドロックの検出時間を各CPUに個別に設定することも、資源の横取り処理の判断条件を各CPUに対して細かく設定することも、いずれも、記載されておらず、前記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものであって、採用することができない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-12-05 
結審通知日 2001-12-14 
審決日 2001-12-26 
出願番号 特願平8-143325
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 馬場 清
特許庁審判官 堀田 和義
橋本 正弘
発明の名称 排他制御装置  
代理人 京本 直樹  
代理人 福田 修一  
代理人 河合 信明  

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