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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1054379
審判番号 審判1999-20069  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-10-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-12-16 
確定日 2002-03-06 
事件の表示 平成4年特許願第53988号「半導体装置の製造方法」拒絶査定に対する審判事件〔平成5年10月8日出願公開、特開平5-259130、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 [1]手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年3月13日の出願であって、その請求項1、2に係る発明(以下、「本願発明1、2」という。)は、平成13年12月21日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】半導体基板上に少なくとも三層の半導体層が積層された半導体装置であり、上層から順に第1の半導体層、第2の半導体層および第3の半導体層の各半導体層を含む半導体装置の製造工程において、
エッチングイオンの運動エネルギーにより半導体構成元素を脱離させる物理的エッチングを主要なエッチング機構とする第1のエッチングを用いて、前記第1の半導体層を除去する工程と、
次いでエッチングイオンと半導体構成元素との反応生成物を脱離させる化学反応エッチングが前記第1のエッチングと比較して主要なエッチング機構であり、前記第3の半導体層に対して前記第2の半導体層を選択的にエッチングする第2のエッチングを用いて、前記第3の半導体層を全面的に露出させる工程とを含むことを特徴とする半導体の製造方法。
【請求項2】半導体基板上に少なくとも二層の半導体層が積層された半導体装置であり、上層から順に第1の半導体層、第2の半導体層の各半導体層を含む半導体装置の製造工程において、
前記第1の半導体層にエッチングマスクを設け、エッチングイオンの運動エネルギーにより半導体構成元素を脱離させる物理的エッチングを主要なエッチング機構とする第1のエッチングを用いて前記エッチングマスクを設けた部分以外の第1の半導体層を厚さ方向に一部除去する工程と、
次いで前記除去して残る第1の半導体層を前記第2の半導体層に対して選択的に除去する湿式エッチングを用いて、前記第2の半導体層のうち前記エッチングマスクを設けた部分以外を全面的に露出する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」

[2]引用例の記載事項
(1)原審の拒絶の理由に引用された引用例1の特開平3-225302号公報には、マスクで覆われた部分以外の半導体第2クラッド層をエッチングにより除去してリブ型光導波路を形成する工程について、以下の事項が記載されている。
「従来のRIBE法によるドライエッチングでは、ウエハの表面状態にエッチング深さの制御性が左右されてしまい、制御性のよいエッチング深さが得られない。
これに対し、本発明においては、リブ部形成時のドライエッチング工程において、先ず比較的反応性の低いガスによる第1のエッチング工程を行う(実施例では、ArガスによるRIBE法を行っている。)から、ウエハの表面状態によらず、エッチング深さの制御性が改善される。さらにこの後に比較的反応性の高いガスによる第2のエッチング工程を行う(実施例では、Cl2によるRIBE法を行っている。)から、マスクとの選択比が確保され、マスクの後退による垂直性の低下の心配がない上に、エッチング面のダメージが少ない。このため、終始反応性の高いガスのみで行うエッチングに比べてエッチング深さの制御性がよく、かつ、終始反応性の低いガスのみで行うエッチングに比べて垂直性がよくエッチング面のダメージが少ない。」(2頁左下欄6行〜右下欄3行参照)

(2)同じく引用された引用例2の特開平3-160733号公報には、以下の事項が記載されている。
「ウエハ上のレジスト6を形成し、該レジスト6を第1のゲート電極のパターンにパターニングし、開口7を形成する。この開口7からCCl2系のガスを用いて露出した第2のGaAs層5をRIEすると、第2のGaAs層5のみが除去される(第2図A)。すなわち、第2のAlGaAs層4がRIEのエッチング停止層として働いており、第2のAlGaAs層4の表面が露出する。
フッ酸・・・を用いてウエットエッチングを施し、第2のAlGaAs層4を除去する(第2図B)。このとき、第2のAlAs層4は第1のGaAs層3に対して100倍以上の大きなエッチングの選択比を有しているので、第2のAlAs層4のみが除去される。」(2頁左下欄末行〜右下欄14行)

(3)同じく引用された引用例3の特開平1-179482号公報には、以下の事項が記載されている。
「半導体レーザーウエハー上方にストライプ上のフォトマスク17を形成し[第1図(a)]、このマスクを通して、活性層14の手前までエッチングする[同図(b)]。このエッチングは、・・・反応性イオンビームエッチング、Arイオンミリング等が利用できる。
次に、・・・活性層からリッジの底面までの距離XRを直接測定する。
そのXR値と、・・・ウエットエッチング速度をもとに、ウエハーを目標のXR・・・になるように、さらにウエットエッチングする(同図e)。」(3頁右上欄6行〜左下欄5行)
なお、上記活性層14の手前までのエッチングにより、キャップ層16、p型半導体クラッド層15がエッチングされることは、第1図より明らかである。

[3]対比・判断
(1)本願発明1について
引用例1に記載された方法では、半導体第2クラッド層(本願発明1の「第1の半導体層」に相当する。)をエッチングする際に、先ず比較的反応性の低いArガスによるRIBE法の第1のエッチングを行い、次に比較的反応性の高いCl2ガスによるRIBE法の第2のエッチングを行っており、また、引用例2に記載された方法では、CCl2系のガスを用いて第2のGaAs層(同じく「第1の半導体層」に相当する。)をRIEによりエッチングを行い、第2のGaAs層のみを除去し、次に、フッ酸を用いて第2のAlGaAs層(同じく「第2の半導体層」に相当する。)にウエットエッチングを施し、第2のAlGaAs層のみを除去して、第1のGaAs層(同じく「第3の半導体層」に相当する。)を露出させている。さらに、引用例3は、フォトマスクを設けた部分以外のn型半導体クラッド層(同じく「第1の半導体層」に相当する。)を活性層の手前までエッチングするために、Arイオンミリングし、次にウエットエッチングするものである。
しかしながら、引用例1〜3に記載された方法は、いずれも本願発明1のように、物理的エッチングを用いて第1の半導体層のみを第2の半導体層まで除去するものではないし、また、引用例1〜3には、本願発明1のように、物理的エッチングを用いて第1の半導体層のみを第2の半導体層まで除去する点については、何らの記載も示唆もない。
してみると、引用例1〜3に記載された方法を如何に組み合わせてみても、上記の点を容易に想到することはできない。

(2)本願発明2について
引用例1に記載された方法(第1図、第2図(c)参照。)では、マスクで覆われた部分以外の半導体第2クラッド層(本願発明2の「第1の半導体層」に相当する。)をエッチングする際に、先ず比較的反応性の低いArガスによるRIBE法の第1のエッチングを行い、次に比較的反応性の高いCl2ガスによるRIBE法の第2のエッチングを行っているものの、本願発明2のように、第2のエッチングによりマスクで覆われた部分以外の半導体第2クラッド層を全面的に除去して、下層の半導体層を露出させるものではない。
また、引用例2に記載された方法では、CCl2系のガスを用いて第2のGaAs層(同じく「第1の半導体層」に相当する。)をRIEによりエッチングを行い、第2のGaAs層のみを除去し、次にフッ酸を用いてウエットエッチングを施し、第2のAlGaAs層(同じく「第2の半導体層」に相当する。)のみを除去しており、本願発明2のように、物理的エッチング用いてエッチングマスクを設けた部分以外の第1の半導体層を厚さ方向に一部除去し、次いで除去して残る第1の半導体層を第2の半導体層に対して選択的に除去する湿式エッチングを用いて、第2の半導体層のうちエッチングマスクを設けた部分以外を全面的に露出するものではない。
さらに、引用例3に記載された方法は、n型半導体クラッド層(同じく「第1の半導体層」に相当する。)を活性層の手前までエッチングするために、Arイオンミリングし、次にウエットエッチングするものの、ウエットエッチングによりフォトマスクを設けた部分以外のn型半導体層を全面的に露出させるものではないから、本願発明2のように、厚さ方向に一部除去して残る第1の半導体層を第2の半導体層に対して選択的に除去する湿式エッチングを用いて、第2の半導体層のうちエッチングマスクを設けた部分以外を全面的に露出するものではない。
そして、引用例1〜3には、本願発明2のように、厚さ方向に一部除去して残る第1の半導体層を第2の半導体層に対して選択的に除去する湿式エッチングを用いて、第2の半導体層のうちエッチングマスクを設けた部分以外を全面的に露出する点については、何らの記載も示唆もない。
してみると、引用例1〜3に記載された方法を如何に組み合わせてみても、上記の点を容易に想到することはできない。

そして、本願発明1、2は、化学反応的なドライエッチングが困難な半導体層を含む半導体装置も、従来の物理的及び化学反応的なエッチング装置を組み合わせて加工ができ、また、物理的なエッチングを行った半導体表面を化学的にエッチングし、エッチングを一定の半導体層で自動停止させるので、物理的エッチングで生じたマスク周囲の溝を取り除くことが可能となるという、明細書に記載の顕著な効果を奏するものである。

[4]むすび
したがって、本願発明1、2は、引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-02-15 
出願番号 特願平4-53988
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今井 淳一  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 雨宮 弘治
大橋 賢一
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 福田 修一  
代理人 河合 信明  
代理人 京本 直樹  

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