• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1054402
審判番号 不服2000-9797  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-12-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-06-29 
確定日 2002-03-12 
事件の表示 平成3年特許願第144379号「半導体集積回路」拒絶査定に対する審判事件〔平成4年12月21日出願公開、特開平4-368145、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 [1]手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年6月17日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成11年9月3日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。
「複数の論理回路チップを実装する半導体集積回路において、外部からのパッケージの1個の受光窓口を介して入力した光を光電変換して電気信号を出力する受光素子部と、前記電気信号の開閉信号をデコードして論理制御信号に変換するデコーダ回路部と、前記論理制御信号の入力により開閉制御され前記複数の論理回路チップがそれぞれデータ線を介してテストモードに接続されるスイッチ部とを有することを特徴とする半導体集積回路。」

[2]引用例の記載事項
原審の拒絶の理由に引用された引用例の特開昭61-156746号公報には、試験単位毎に分割された回路ブロックに対して外部端子を不要とし、しかも複雑な試験選択線の配設を不要とした分割テスト方式の半導体集積回路装置に関する発明(以下、「引用発明」という。)が、第1〜5図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。

「複数に分割された回路ブロック毎に動作試験を行ない得る様に構成された試験容易化半導体集積回路装置において、各回路ブロック内に又はその近傍に光検出器を配置し、レーザ光ビームを照射された光検出器の出力により試験を行なう回路ブロックを選択するようにしたことを特徴とする半導体集積回路装置。」(特許請求の範囲)

「第5図のようなデコーダを内蔵する方法では、試験用のパッド数を減少させることはできるものの、余分なパッドが不要になる訳ではなく、又試験選択線を各回路ブロックまで配設する必要があり、更にこのデコーダ回路分だけ集積回路の余分な専有面積を必要とする、などの難点が残る。」(2頁右上欄7〜14行)

「本発明によれば、試験のための回路ブロック選択を、そのためのパッドを設けることなく光学的に行うことができ、試験のためのパッドを全く必要なくすることができる。また長い試験選択線の配設も必要なくなるし、選択試験を行なうための占有面積の増大は必要最小限に抑えられる。」(2頁左下欄9〜14行)

「第1図において、レーザ光ビームを走査して光検出器13を順次オンすることにより、その出力により各回路ブロック12を順次選択することができる。このとき回路ブロック12の選択のためには、従来と同様に、電源オンオフ、入出力線のオンオフ、クロックのオンオフなどを行う切換え回路を有し、これを光検出器13の出力で制御することになる。
・・・
第3図において、集積回路ウエーハ32への通常の信号入力印加、出力検出はチャネル36を通して行われる。テスタ31から制御線37は、光シャッタ35のオンオフ制御およびビームスキャン装置34の制御を行ない、これによりレーザ光ビームの集積回路ウエーハ32に対する照射位置の制御を行なう。こうして第1図の光検出器13のうちいずれか一つの位置にレーザ光ビームを照射して回路ブロック12の選択を行なうことができる。
従ってこの実施例によれば、集積回路装置の試験のための制御用パッドを全く必要とせず、また複雑な試験選択線をウエーハ内に配設する必要もなくなる。また光検出器の付加は従来のデコーダ回路やシフトレジスタを設ける構成に比べて面積増大は非常に小さい。この結果ますます大規模化するLSIに適用して大きい効果が得られる。」(第2頁右下欄末行〜3頁右上欄11行)

[3]対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明は、光検出器(受光素子部)の出力により、複数の回路ブロック(論理回路ブロック)毎に試験を行う点では、本願発明に類似しているものの、引用発明は、その実施例の記載からみて、複数に分割した回路ブロックを形成した集積回路チップを集積回路ウエーハ状態で試験するものであって、本願発明のように、複数の論理回路チップを実装した半導体集積回路をパッケージ状態でテストするものではない(仮に、引用発明が、集積回路チップを集積回路ウエーハ状態で試験するものではないとしても、集積回路チップをパッケージ状態で試験することは、引用例には何らの記載も示唆もない。)。
しかも、引用発明は、試験のためのパッドや試験選択線を配設する必要をなくし、またデコーダやシフトレジスタを内蔵することによる占有面積の増大をなくすことを目的として、複数に分割した回路ブロック毎に光検出器を配置し、ビームスキャン装置によりレーザ光ビームを走査しながら、光検出器を順次オンすることにより、回路ブロックを順次選択するようにしたものである(なお、この回路ブロックの選択においては、切換え回路により、電源オンオフ、入出力オンオフ、クロックのオンオフ等を行っているものの、この切換え回路は回路ブロックを選択するものではない。)。
一方、本願発明は、パッケージにある1個の受光窓口を介して受光素子部に入力した光を光電変換し、出力した開閉信号をデコーダ回路によりデコードして論理制御信号に変換し、この論理制御信号により複数の論理回路チップのそれぞれをテストモードに接続するようにしたものであって、複数の論理回路チップのうちの任意の論理回路チップを選択してテストモードに接続するものであるから、引用発明のように、レーザ光ビームを走査しながら光検出器を順次オンすることにより、回路ブロックを順次選択するようにしたものではない。
してみると、引用例に記載されたデコーダを内蔵する従来技術のように、複数の機能ブロックを選択的に試験するに当たりデコーダにより制御することが慣用技術であるにしても、引用発明において、複数に分割した回路ブロック毎に配置した光検出器に替えて、集積回路チップに1個の光検出器を配置するとともに、デコーダを内蔵することにより、複数の回路ブロックのうちの任意の回路ブロックを選択するようなことは、引用発明が集積回路装置にデコーダを内蔵することによる占有面積の増大をなくすことを目的としていることからみて、その目的に反する設計変更となるから、当業者が容易に想到することはできない。
さらに、引用例に記載された上記従来技術は、パッケージ状態で試験するものではないことからみて、パッケージ状態の集積回路チップに1個の光検出器を配置するとともにデコーダを内蔵するようなことは、当業者が容易に想到することはできない。

そして、本願発明は、半導体集積回路をパッケージ状態でテストするに当たって、パッケージの1個の受光窓口を介して入力した光を光電変換した開閉信号により複数の論理回路チップを選択するものであって、従来技術のプロービングによる中間チェックにおいては、その後の半田付、樹脂コーテイング、キュア等の工程を経た後の最終回路構成になった時点での最終検査でないため、後で不良が出るという問題があったが、本願発明ではこのような問題がなくなるという、明細書に記載の顕著な効果を奏するものである。

[4]むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-02-28 
出願番号 特願平3-144379
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田代 吉成  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 大橋 賢一
市川 祐司
発明の名称 半導体集積回路  
代理人 河合 信明  
代理人 福田 修一  
代理人 京本 直樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ