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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1054470
審判番号 不服2000-17691  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-12-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-11-07 
確定日 2002-02-21 
事件の表示 平成 3年特許願第155098号「X線CT装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年12月 8日出願公開、特開平 4-352948]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 本願発明
本願は、平成3年5月30日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年8月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】天井面に複数本のガイドレールを並列配備し、これらのガイドレールと直交する可動レールを前記ガイドレールに沿って移動可能に取り付け、前記可動レールに沿って移動可能な支持台によってガントリを天井面から吊下げ支持しているX線CT装置であって、前記ガントリは上下移動自在、水平軸心周りに回動自在であり、かつ、前記ガントリを上下移動させて、水平軸心周りに回動傾斜させることにより、そのガントリの傾斜軸を任意姿勢の被検体の体軸に一致させてダイレクトコロナル撮影を可能に構成したことを特徴とするX線CT装置。」

2.引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された各刊行物には、それぞれ次の事項が記載されている。
(1)刊行物1(特開平1-280444号公報)
刊行物1には、X線CTスキャナ装置が記載されている。
このX線CTスキャナ装置においては、検査室の天井に固定したベース10の長手方向(図示A方向)に走行可能な走行基台11が設けられ、走行基台11に垂下して支持体12が設けられている。支持体12は、上下方向(図示B方向)に伸縮動可能になっている(第1図及び第3図、2頁右下欄17行〜3頁左上欄5行)。
支持体12の下垂端部には回転機構13が設けられ、この回転機構13は、図示C方向に図示のC方向にデータ収集に対応する速度にて回動可能になっている。この回転機構の回転軸13aには、U字形状アーム14が固定され、一方のアーム14b1の端部には、X線源15が固定され、他方のアーム14b2の端部には円弧状多チャンネルX線検出器16が固定されている(第1図及び第3図、3頁左上欄6行〜15行)。
そして、回転軸13a周りの回転は、X線源15と円弧状多チャンネルX線検出器16との対向空間に、被検者を配置し且つU字形状アーム14を回転しつつX線を曝射して得られる多方向からのX線透過データに基づき、X線源15と円弧状多チャンネルX線検出器16とのなす面についての再構成画像生成用データ群を得るためのものである(3頁右上欄3行〜11行)。
このX線CTスキャナ装置による診断手順は、昇降寝台2を降下させ且つ天板を退避させた状態にあって、被検者Pを昇降寝台2の天板に乗せ、天板を上昇させ、天板を進ませ、所望の診断部位を本体ガントリに相当する部分接近させる。一方、走行基台11を駆動して支持体12、回転機構13及びU字形状アーム14の全体を被検者Pの所望撮影部位に到達させる(第3図、3頁右下欄下から2行〜4頁左上欄8行)。
従来の本体ガントリ1及び昇降寝台2を検査室の床に設置し、固定位置にある本体ガントリ1に対して専ら被検者Pの方を導入する構成となっているものでは、診断には問題がない場合であっても、引続き行われる特殊検査や治療に際しては検査や治療のための器具の配置空間を確保することができなく、また作業空間も確保できない等のスペース的な問題が生じることがあったり、撮影部位が、外部からあまり見通しの利かない本体ガントリ1内に設定され、しかも固定位置にある本体ガントリ1に対して専ら被検者Pの方を導入する構成となっているので、撮影部位の位置決めが容易でなく、診断効率の点で問題であったことが記載され(2頁左上欄14行〜右上欄12行、第4図)、刊行物1のX線CTスキャナ装置によれば、撮影に際して本体ガントリに相当する部分と、被検者Pとの双方を接近させ且つ離間させることができるので、特殊検査や治療に際しては検査や治療のための器具の配置空間を確保することができ、また作業空間も確保できる等のスペース的な余裕を生むことができ、また、撮影部位が定まるX線源15と円弧状多チャンネルX線検出器16とを対向させて設けているU字形状アーム14の内部は、外部から見通しが利くので、撮影部位の位置決めは容易であり、診断効率を高めることができるという効果を奏するものであることが記載されている(4頁左上欄20行〜4頁右上欄11行)。

(2)刊行物2(特開昭56-49136号公報)
刊行物2には、循環器系診断に使用されるX線撮影装置が記載されている。
このX線撮影装置は、心臓を異なった方向から撮影するものである。
刊行物2のX線撮影装置には、第1図に示されるように、移動ブロック2を備えている。移動ブロック2は、ガイドレール1面に沿って水平移動(図示D1,D2方向)できるようになっている。この移動ブロック2の底部に軸受2Aを介して枢軸2Bを垂直回転軸として矢示C1-C2方向へ回転自在に二又状支持腕4が取り付けられている。二又状支持腕4に対し水平軸Y1-Y2回り(B1-B2方向)に回転可能に外側リング5が配設されており、この外側リング5内に矢示A1-A2方向に回転自在に配置される内側リング11と、内側リング11上にX線管21aと撮像装置(イメージインテンシファイア)22a、及びX線管21bと撮像装置22bが対向して設けられている。(第1図、2頁左上欄2行〜18行)
この装置を使用する場合には、移動ブロック2をレール1に沿って移動させることによって、装置を所望の位置に配置し、天板9を図示D1-D2方向へ移動することによって、天板9上の被検体8を装置の中央部に位置決めし、所望の撮影を行うものである(2頁右下欄7行〜12行)。
この装置は、天井に設けられたレールに沿って移動できるので、配置及び退避の操作が容易になることも記載されている。(3頁左上欄17行〜18行)

(3)刊行物3(特開平2-182239号公報)
刊行物3には、天井吊方式のX線撮影システムにおいて、特に先端部にX線管5が取り付けられた上下方向に伸縮移動可能な支持柱6を保持する保持部7を天井面に沿って移動可能に支持する支持機構を改良したX線管支持装置が記載されている(第6図、1頁右下欄4行〜8行)。
従来のX線管支持装置は、長手レールの下に横手レール2を段違いに配設し、保持金具3により長手レール1に対してL方向に移動可能に保持させているため支持柱6が収縮したときの全長寸法Aが大きくなるという問題があった(第4図、第5図、2頁右上欄9行〜17行)が、刊行物3発明の支持機構は、横手レール12を長手レール11に対して同一平面になるように配設し、且つ、横手レール12に複数個の走行用ローラを前記長手レールを挟持させて取り付ける構成とするもので、この改良により、支持柱6の収縮時における全長寸法Aは従来の支持機構に比較して横手レール12の段差分だけ小さくできることが記載されている(2頁右上欄9行〜17行)。

3.本願発明と刊行物1記載の発明との対比・検討
(1)刊行物1に記載された発明との対比
ここで、本願発明と、刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載の「X線CTスキャナ装置」の天井に固定した「ベース10」上を走行可能な「走行基台11」は、本願発明における「天井面」に「移動可能な支持台」に相当し、この「ベース10」は「ガイドレール」に相当するものであり、「ガイドレール」を一本設けることが記載されているということができる。しかし、刊行物1には「可動レール」について記載されていない
また、刊行物1に記載の「X線CTスキャナ装置」は、移動可能な支持台によって「撮像部」を天井面から吊下げ支持しているX線CT装置に相当する。
刊行物1記載の「X線CTスキャナ装置」の「撮像部」は、刊行物1の第1図のB方向に伸縮可能であり、上下移動自在であるということができる。
刊行物1の第1図の回転軸13aは水平な軸ではあるが、X線源15と円弧状多チャンネルX線検出器16とのなす面内でそれらを回転させるものであって、該面自体を「水平軸心周りに回動自在」にするものでない。

(2)一致点・相違点
そうすると、本願発明は、刊行物1に記載された発明と、
「天井面にレール状部材を用いた移動案内機構を設け、それに沿って移動可能な支持台によってX線管とX線検出器を備えた撮像部を天井面から吊り下げ支持しているX線CT装置であって、前記撮像部は上下移動自在であるX線CT装置」である点で一致するが、次の点で相違する。
<相違点1>
天井面に設けられたレール状部材を用いたX線CT装置の支持台の移動案内機構が、前者では、「天井面に複数本のガイドレールを並列配備し、これらのガイドレールと直交する可動レールを前記ガイドレールに沿って移動可能に取り付け」るものであり、「支持台」を「可動レール」に沿って移動可能とするものであるのに対し、後者では、「ガイドレール」を複数本設けること、及び、「可動レール」を設けること、について記載されていない点。
<相違点2>
X線CT装置のX線源とX線検出器を備えた撮像部が、前者では「ガントリ」であって、前記ガントリは「水平軸心周りに回動自在」、すなわちそのX線源とX線検出器とのなす面を「水平軸心周りに回動自在」であり、かつ、「水平軸心周りに回動傾斜」させることにより、そのガントリの傾斜軸を任意姿勢の被検体の体軸に一致させて「ダイレクトコロナル撮影」を可能に構成したものであるのに対し、後者では、撮像部が水平回転軸に固定されたU字形状アームの一方のアーム端部にはX線源が、他方のアーム端部には円弧状多チャンネルX線検出器が固定されているものであって、そのX線源とX線検出器とのなす面を「水平軸心周りに回動自在」とするものでなく、ダイレクトコロナル撮影を可能にすることについても記載されていない点。

(3) 相違点についての検討
そこで、これらの相違点について検討する。
(3-1)相違点1について
刊行物3には、天井吊方式のX線撮影システムが記載されており、その「保持部7」は、天井面に沿って移動可能に取り付けられた「支持台」ということができるものである。そして、従来技術として、天井面に複数本のガイドレールを並列配備し、これらのガイドレールと直交する可動レールを前記ガイドレールに沿って移動可能に取り付け、前記「保持部7」を前記可動レールに沿って移動可能に設けた移動案内機構が記載されている。
そうすると、天井面に設けられたレール状部材を用いたX線CT装置の支持台の移動案内機構として、刊行物1記載の天井面に配備されガイドレールとして機能している1本の「ベース10」に沿ってX線CT装置の支持台を移動案内する機構に変えて、刊行物3に記載の、天井面に複数本のガイドレールを並列配備し、これらのガイドレールと直交する可動レールを前記ガイドレールに沿って移動可能に取り付けて、「支持台」を「可動レール」に沿って移動可能とする構成を採用することは、当業者が適宜に設計変更できる事項にすぎない。

(3-2)相違点2について
ガントリは、刊行物1の従来技術にも記載の如く、X線CT装置では慣用の撮像部である。
また、X線CT装置においては、被検体の体軸に対して直角方向に撮影してX線CT画像を得ることと共に、被検体の体軸と平行な方向に撮影するダイレクトコロナル撮影を行うことも、特に頭部のX線CT画像を得るために、本願出願前から一般的に要請されていた技術課題である。
そして、被検体の体軸と平行な方向に撮影するダイレクトコロナル撮影を行うためには、被検体の体軸とX線CT装置の撮像部のX線源とX線検出器とのなす面を平行な関係に置かなければならない以上、ガントリを備えたX線CT装置おいては、実際にはガントリの傾斜角度と被検体、例えば頭部など、をどれだけ傾けられるかによって平行な位置関係をとり得るか否か、撮影の可否が決まるものであることから、ガントリの傾斜角度を大きくとれればとれるほど、被検体のとるべき角度の負担は少なくできることは、ダイレクトコロナル撮影についてのX線CT撮影技術の常識的事項である(必要ならば、例えば特開昭56-148340号公報等参照)。
一方、X線撮像装置において、通常の開口面軸線が水平方向であるガントリと同様の、X線管とX線検出手段を備え中央に被検体を配置する開口部を有するドーナツ状撮像部が、天井面から吊り下げ支持する場合には、任意にドーナツ状撮像部を回動傾斜できることも、刊行物2に記載されている公知の構造である。
そうすると、X線CT装置を床面に固定設置しないで天井吊方式とすることで、引続き行われる特殊検査や治療のための器具の配置空間や作業空間を確保できる等のスペース的問題を解決し、撮影部位の位置決めにあたり、撮像部を被検体の方へ移動でき、撮影部位の位置決めが床面固定方式よりも容易化されている刊行物1に記載されたX線CT装置についても、撮像部のX線源とX線検出器とのなす面を傾斜できないU字形状撮像部から、ダイレクトコロナル撮影も可能なように、刊行物2に記載のX線撮像部と同様のドーナツ状である通常のガントリに変更し、ガントリを上下移動自在だけでなく、水平軸心周りに回動自在にもさせ、かつ、この回動によりガントリの傾斜軸を任意姿勢の被検体の体軸に一致させることができるように構成することは、当業者が必要に応じ、容易に設計できる範囲内の事項である。

4. むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-12-20 
結審通知日 2001-12-25 
審決日 2002-01-07 
出願番号 特願平3-155098
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 居島 一仁  
特許庁審判長 後藤 千恵子
特許庁審判官 森 竜介
志村 博
発明の名称 X線CT装置  
代理人 西岡 義明  

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