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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02F |
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管理番号 | 1054572 |
審判番号 | 不服2000-19044 |
総通号数 | 28 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-11-30 |
確定日 | 2002-03-19 |
事件の表示 | 平成10年特許願第323773号「アクティブマトリクス基板及びその製造方法」拒絶査定に対する審判事件〔平成12年 5月26日出願公開、特開2000-147555、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年11月13日の出願であって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成12年12月20日付けで補正された明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】液晶表示装置におけるアクティブマトリクス基板の製造方法であって、 (a)透明性絶縁基板上にゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極を有するTFTを形成し、全面をパッシベーション膜で覆う工程と、 (b)前記ドレイン電極上の前記パッシベーション膜にスルーホールを開口する工程と、 (c)カラーレジストとして顔料を分散させたアクリル樹脂を全面にスピンコートする工程と、 (d)前記カラーレジストを露光した後現像して対応する部分のカラーレジストを残し、カラーフィルターを形成する工程と、 (e)前記アクリル樹脂のガラス転移温度よりも高い温度に加熱されているオーブンに前記基板を挿入して前記カラーフィルターの端面形状が弓なり形状になるように硬化させる工程と、 (f)前記(c)〜(e)の工程を繰り返して全色のカラーフィルターを形成したのち全面にITO膜を被着した後加工して前記カラーフィルタの上に画素電極を形成する工程と、 (g)ブラックマトリックスとして顔料あるいはカーボンを分散させたアクリル樹脂を全面にスピンコートする工程と、 (h)その後露光、現像して前記画素電極上のブラックマトリックスを除去する工程と、を有するアクティブマトリックス基板の製造方法。 【請求項2】前記パッシベーション膜が、プラズマCVD法による窒化シリコン膜で形成する請求項1記載のアクティブマトリクス基板の製造方法。 【請求項3】弓なり形状を得る工程の後にカラーフィルター用レジスト残渣を完全に除去するための残渣除去処理としてUV光を照射した後、純水洗浄を行う工程を有する請求項1または2記載のアクティブマトリクス基板の製造方法。 【請求項4】液晶表示装置におけるアクティブマトリクス基板であって、 (a)透明性絶縁基板上にゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極を有するTFTと、基板全面を覆うパッシベーション膜と、 (b)前記ドレイン電極上の前記パッシベーション膜に開口されたスルーホールと、 (c)スピンコートを使用して全面を覆うカラーレジストを露光した後現像して対応する部分を残し、形成され、端面形状が弓なり形状になるように硬化されたカラーフィルターと、 (d)前記(c)の工程を繰り返して全色のカラーフィルターを形成したのち全面にITO膜を被着した後加工して前記カラーフィルタの上に形成された画素電極と、 (e)全面にスピンコートされ、その後露光、現像して前記画素電極上のブラックマトリックスが除去されたブラックマトリックスと、を有するアクティブマトリックス基板。」 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-167524号公報には、カラー液晶表示装置について次のように記載されている。 「本発明を実施例について以下に説明する。…。本実施例の表示装置の製造工程は、TFT製造工程、カラーフィルタ形成工程、液晶パネル形成工程の3つの工程に大別される。」(第3頁左上欄第8〜14行) 「<TFT形成工程> ガラス等の透明基板21上に…ゲートバス配線22を形成した。…。 次に、…ゲート絶縁膜23を形成した。…。 更に、ソース電極27、ドレイン電極37、及びソースバス配線(図示していない)をパターン形成した。…以上のようにして、TFT20が形成される。…。」(第3頁左上欄第15行〜左下欄第4行) 「<カラーフィルタ形成工程> … 前述のTFT20を形成した透明基板21上に、多官能アクリレートの透明感光性樹脂に顔料を分散させた感光性着色樹脂を塗布した。感光性着色樹脂の塗布には、スピンコート、…等の公知の方法を用い得る。塗膜の厚さはTFT20の高さとほぼ同じとした。この塗膜をプリベークした。このプリベークにより、感光性着色樹脂中の粘度調整用の溶剤が蒸発され、更に、該樹脂の軽度の重合が行われる。 次に、この感光性着色樹脂の塗膜に、フォトマスクを介して高圧水銀灯の光を照射した。これにより、カラーフィルタとして残される部分が露光される。露光により感光性着色樹脂が重合する。尚、光照射のみでは重合が十分進行しない場合には、露光後にベークを行い、露光による架橋反応を促進させても良い。 次に現像を行った。現像は、露光した塗膜の未露光の部分を溶剤で除去することにより行われる。更に、残った感光性樹脂塗膜のポストベークを行うことにより、該塗膜の強度を向上させた。 以上の工程を、カラーフィルタの色の数と同じ回数だけ繰り返すことにより、カラーフィルタが完成される。…。 次に、カラーフィルタ28R、28G、及び28B上の全面にITO膜を形成し、パターニングによって絵素電極29を形成した。このとき、ITO膜はドレイン電極37上にも形成される。尚、第2図では図示していないが、ドレイン電極37上に残存する感光性着色樹脂を除去するため、及びカラーフィルタ28R、28G、及び28Bの肩部でITO膜の段切れを防止するため、ITO膜の形成前にプラズマ処理等のエッチングを行うことが望ましい。」(第3頁左下欄第5行〜第4頁左上欄第12行) 「第3図に本発明の他の実施例の断面図を示す。…本実施例では各カラーフィルタ間の凹部に遮光層36が形成されている。…。遮光層36は、カラーフィルタの形成に用いた樹脂と同様であり、顔料のみが異なっている。遮光層36は絵素電極29の形成の後、カラーフィルタと同様の工程で形成される。」(第4頁左下欄第10行〜右下欄第3行) 3.当審の判断 審査官は、前置報告書において、引用刊行物に記載される「ポストベーク」が本願請求項1の「(e)前記アクリル樹脂のガラス転移温度よりも高い温度に加熱されているオーブンに前記基板を挿入して前記カラーフィルターの端面形状が弓なり形状になるように硬化させる工程」に相当する旨の報告をしているが、引用刊行物にはポストベークについて「残った感光性樹脂塗膜のポストベークを行うことにより、該塗膜の強度を向上させた。」と記載されているのであって、引用刊行物のポストベークは、塗膜の強度の向上を目的とするものであって、本願請求項1のように「カラーフィルターの端面形状が弓なり形状になるように硬化させる」ものではない。 引用刊行物には、カラーフィルタの肩部でのITO膜の段切れ防止について「カラーフィルタ28R、28G、及び28Bの肩部でITO膜の段切れを防止するため、ITO膜の形成前にプラズマ処理等のエッチングを行うことが望ましい。」と記載されていることからしても、引用刊行物に、カラーフィルタの肩部でのITO膜の段切れを防止する手段として、本願請求項1のように「アクリル樹脂のガラス転移温度よりも高い温度に加熱されているオーブンに前記基板を挿入して前記カラーフィルターの端面形状が弓なり形状になるように硬化させる」ことや本願請求項4のようにカラーフィルターを「端面形状が弓なり形状になるように硬化」させることが記載されているとも、示唆されているともいえない。 したがって、本願請求項1ないし4に係る発明を引用刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたということはできない。 4.むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由により本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2002-03-05 |
出願番号 | 特願平10-323773 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉野 公夫 |
特許庁審判長 |
青山 待子 |
特許庁審判官 |
稲積 義登 吉田 禎治 |
発明の名称 | アクティブマトリクス基板及びその製造方法 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 河合 信明 |
代理人 | 京本 直樹 |