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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11B
管理番号 1054688
審判番号 不服2001-8995  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-28 
確定日 2002-03-22 
事件の表示 平成 4年特許願第106003号「再生装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成 5年10月29日出願公開、特開平 5-282766、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成4年3月31日の出願であって、その請求項1に係る発明は、原審及び当審において補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
記録媒体をそれぞれ保持する複数のトレイと、
上記複数のトレイを並設して収納する収納手段と、
上記収納手段を上記複数のトレイの並設方向に移動する移動手段と、
上記収納手段の一端側と対向する所定の装填位置において、上記トレイに上記記録媒体を装填可能な装填部と、
上記収納手段の他端側と対向する所定の再生位置において、上記トレイに保持された上記記録媒体から情報を再生可能な再生部と、
上記移動手段によつて上記装填部の装填位置及び上記再生部の再生位置間を結ぶライン上に位置決めされた一の上記トレイを、当該ラインに沿つてスライドさせることにより上記装填部又は上記再生部に選択的に搬送する搬送手段と
を具えることを特徴とする再生装置。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由及び前置報告において引用された次の刊行物には、それぞれ以下の発明が記載されている。
特開平3-44865号公報(以下「引用刊行物1」という)
特開平3-216857号公報(以下「引用刊行物2」という)
特開平1-224969号公報(以下「引用刊行物3」という)
特開平4-38674号公報(平成4年2月7日公開、以下「引用刊行物4」という)
実願昭62-32452号(実開昭63-142051号)のマイクロフィルム(以下「引用刊行物5」という)
特開昭62-46461号公報(以下「引用刊行物6」という)
特開昭61-80648号公報(以下「引用刊行物7」という)
特開平4-38666号公報(平成4年2月7日公開、以下「引用刊行物8」という)
特開平3-83263号公報(以下「引用刊行物9」という)

(1) 引用刊行物1(特開平3-44865号公報)
引用刊行物1には、光ディスクカートリッジ等のA面/B面のかけかえ動作が必要な「ディスクカートリッジオートチェンジャ」に関する発明が記載されており、特に、第2〜3図に示された実施例に着目すれば、この引用刊行物1には次の発明が記載されている。
「複数のディスクカートリッジ(34)を並設して収容するディスク収容部(33)と、
上記ディスク収容部を上記複数のディスクカートリッジの並設方向に移動するディスク収容部駆動部(36〜38)と、
上記ディスク収容部の一端側と対向する装置本体の側面に設けられ、該ディスク収容部に上記ディスクカートリッジを出し入れするためのディスク投入口(61)と、
上記装置本体の底面と下面に設けられ、上記ディスク収容部内のディスク取り込み位置にあるディスクカートリッジを押圧して回転し、該ディスクカートリッジを該ディスク収容部から排出する挿排ローラ(41)と、該ディスク収容部から排出されたディスクカートリッジを該ディスク収容部の他端側と対向して配置される1巻投入タイプのディスク装置(31)へ挿入する挿排ベルト(42)とを有するローディング機構部と、
上記挿排ベルトを内部に保持し、上記装置本体に対して回転駆動される反転フレーム(51)を備える反転機構部とを備えて成り、
上記ディスク収容部駆動部によって上記ローディング機構部のディスク取り込み位置に移動されたディスクカートリッジを、該ローディング機構部により上記1巻投入タイプのディスク装置に搬送するディスクカートリッジオートチェンジャを具備する1巻投入タイプのディスク装置。」
そして、上記引用刊行物1の記載事項を検討すれば、上記ローディング機構部は、ディスクカートリッジ(34)をディスク収容部(33)と1巻投入タイプのディスク装置(31)との間で搬送するものであって、前記ディスクカートリッジをディスク投入口(61)と前記ディスク収容部内との間で搬送する機能を有するものではない。

(2) 引用刊行物2(特開平3-216857号公報)
上記引用刊行物2には、「ディスクプレーヤのローディング機構」に関する発明が記載されており、さらに次の発明についても記載されている。
「ディスク(CD)を収納する薄形平板状のサブトレイ(11)と、
このサブトレイを所定間隔を保って段積みし、収納するとともに、ディスクプレーヤ(1)に引出し自在に取付けられたベーストレイ(5)と、
前記ベーストレイ及びサブトレイのいずれかに選択的に噛合して、それを一括もしくは選択してディスクプレーヤの外部位置からプレーヤハウジング(2)内部の待機位置まで、往復移動させるトレイ移動機構(50)と、
前記待機位置にあるベーストレイに収納されているサブトレイの一つを再生位置に移動する移動手段と、
前記再生位置に移動された前記サブトレイに保持されているディスクを再生する再生部と、
を備えるディスクプレーヤ。」

(3) 引用刊行物3(特開平1-224969号公報)
引用刊行物3には、「フロントローディングディスクプレーヤ」について、次の発明が記載されている。
「ディスク(5,6)を担持しこれをプレーヤハウジング(2)内のターンテーブル(17)上に搬送するディスク搬送機構を有するフロントローディングディスクプレーヤであって、前記ディスク搬送機構はディスクを担持し得且つ前記ターンテーブルのディスク担持面(17a)に略垂直な方向において並置された2つのトレイ(8,9)と、前記トレイの各々を演奏位置、収納位置及び突出位置に案内し且つ移動せしめる案内駆動手段とを有し、前記案内駆動手段は1のトレイが前記演奏位置にあるときに他のトレイを前記収納位置と突出位置のいずれかに位置せしめるフロントローディングディスクプレーヤ。」

(4) 引用刊行物4(特開平4-38674号公報)
引用刊行物4には、「チェンジャー型ディスク再生装置」について、次の発明が記載されている。
「ディスク(D)を載置可能なディスク載置部を夫々備えた単一の第1のキャリッジ(S)及び複数個の第2のキャリッジ(1〜6)とからなるn個のキャリッジ群と、
上記キャリッジが挿脱可能な単一のスロットを備えたトレイ(7)と、
上記キャリッジ群のうち何れか一つのキャリッジが挿入されたトレイを装置外に突出するイジェクト位置と、装置内に収納するロード位置との間で移動させるトレイ移動手段(22)と、
上記装置内に配置され、上記キャリッジを収納可能なn個のスロット(15〜21)を備えたストッカ(14)と、
上記ストッカを、上記ストッカの夫々のスロットが上記ロード位置に持ち来されたトレイのスロットと同一高さ位置となるn箇所の位置に移動させるストッカ移動手段(34)と、
上記ロード位置に持ち来されたトレイと上記n箇所の位置の何れかに持ち来されたストッカとの間で上記キャリッジを移動させるキャリッジ移動手段(22)と、
上記ロード位置に持ち来されたトレイに挿入されたキャリッジ上のディスクを再生するディスク再生手段と、
上記トレイが上記ロード位置に持ち来された状態において、上記ディスク再生手段と上記トレイに挿入されたキャリッジを相対的に移動させ、上記キャリッジ上のディスク(D)を上記ディスク再生手段に装着させる移動手段(28)と、
ディスクが載置されていない上記第1のキャリッジが挿入された上記トレイが上記イジェクト位置からロード位置に持ち来された時には、上記第1のキャリッジをその位置に保持可能とし、ディスクが載置されていない上記第2のキャリッジのうちの何れか一つが挿入された上記トレイが上記イジェクト位置からロード位置に持ち来されたときには、該第2のキャリッジをストッカ内に収納するよう、上記キャリッジ移動手段を制御する制御手段とからなるチェンジャー型ディスク再生装置。」

(5) 引用刊行物5(実願昭62-32452号(実開昭63-142051号)のマイクロフィルム)
引用刊行物5には、再生するディスクの交換をトレーを移送することにより自動的に行う「ディスクプレーヤのオートチェンジャー装置」に関する事項が記載されており、特に実施例の記載に着目すれば、この引用刊行物5には次の発明についても記載されている。
「コンパクトディスク(2)をそれぞれ保持する複数のトレイ(1,1…)と、
上記複数のトレイを並設して収納する収納部(18)と、
上記収納部の一端側と対向する所定の装填位置において、上記トレイに上記コンパクトディスクを装填可能な装填部と、
ターンテーブル(7)の軸方向に移動可能に上記収納部の他端側に隣接して設けられ、上記収納部から引き出されたトレーを支持する支持体(4)と、
上記支持体の下方であって、上記収納部の他端側と対向する所定の再生位置において、上記トレイに保持された上記コンパクトディスクから情報を再生可能なプレーヤ部(10)と、
上記支持体と同方向に移動可能であり、上記収納部(18)に収納された複数のトレイのうち一のトレイを上記装填部又は上記支持体に選択的に搬送する摺動機構(3)と、
を備えるディスクプレーヤ。」

(6) 引用刊行物6(特開昭62-46461号公報)
上記引用刊行物6には、「記録再生装置」について、次の発明が記載されている。
「テープカセットあるいは磁気ディスクもしくは収納された磁気ディスクカセット等の所定の記録媒体(37)を使用し、この記録及び/又は再生を行なう記録再生部(12)と、
複数の記録媒体が収納されると共に該複数の記録媒体のうちの選択されたものがこれの取出し及び戻入れが行なわれる位置に来るように移動される記録媒体収納部(30,86)と、
記録媒体が着脱自在に装着されると共に装着された記録媒体を前記記録再生部の所定の位置に装着せしめる第1の位置と前記記録媒体収納部から取出された記録媒体の装着及び取出しが行なわれる第2の位置と外筺外へ突出した第3の位置との間を移動される記録媒体保持手段(20)と、
選択された記録媒体の記録媒体収納部からの取出し及びこれへの戻入れと記録媒体保持手段への装着及びこれからの取出しとを行なう記録媒体移動手段(42,90)と、
該記録媒体移動手段及び前記記録媒体保持手段の動きを制御する制御手段(47)と、
を備えており、
記録又は再生を記録媒体収納部に収納された記録媒体以外のものを使用して行なう場合における当該記録媒体の記録媒体保持手段(20)に対する装着及び取出しは記録媒体保持手段を前記第3の位置へと移動せしめた状態で行なうようにした記録再生装置。」

(7) 引用刊行物7(特開昭61-80648号公報)
上記引用刊行物7には、カートリッジ自動交換機構を備えた「カートリッジ式記録再生装置」について、次の発明が記載されている。
「カートリッジマガジン移動機構(9)とカートリッジ装着排出機構(6)を備えたカートリッジ自動交換機構に、カートリッジ群を収納したカートリッジマガジン(2)を装填してカートリッジ(1)を自動的に交換しながら記録再生を行うカートリッジ式記録再生装置(12,13)において、前記カートリッジ自動交換機構への前記カートリッジマガジンの装着の有無を検出する検出手段(11)と前記カートリッジ装着排出機構へカートリッジを手で装填するための開口部(14,15)を設けたカートリッジ式記録再生装置。」

(8) 引用刊行物8(特開平4-38666号公報)
上記引用刊行物8には、「ディスクプレーヤにおけるトレーのロック装置」に関する発明が記載されており、さらに次の発明についても記載されている。
「ディスク(100)を載置する複数枚のキャリッジ(40,40…)と、
プレーヤ本体(1)内に収納されるローディング位置と該プレーヤ本体から引き出されるイジェクト位置との間で往復可能であると共に、前記キャリッジを着脱可能に支持するトレー(30)と、
前記トレー上に載置されたディスクの記録情報を再生するディスク再生手段(113)と、
前記プレーヤ本体内に配置され該プレーヤ本体に対して昇降可能であると共に、前記キャリッジに載置された前記ディスクの回転軸が同軸となるよう前記キャリッジを複数枚収納可能なストッカ(90)と、
前記ローディング位置をとるトレーと前記ストッカとの間で前記キャリッジを移動可能なキャリッジ移動手段(50,80)と、
前記トレーが前記ローディング位置にあるとき、前記キャリッジとディスク再生手段を相対的に移動させ、前記キャリッジに載置された前記ディスクを前記ディスク再生手段に装着するディスク装着手段(120,112)からなるディスクプレーヤ。」

(9) 引用刊行物9(特開平3-83263号公報)
上記引用刊行物9には、複数のディスクを選択的に再生可能な所謂チェンジャー機能を備えた「ディスク再生装置」について、次の発明が記載されている。
「ディスク(51〜56)が載置される載置部を有するサブトレイ(231〜236)と、
ディスク再生装置(1)内に収納される第1の位置及び前記装置外に突出される第2の位置をとるべく、前記装置に対して移動可能であると共に、前記サブトレイを着脱可能に支持するメイントレイ(30)と、
ディスク再生手段(84)と、
前記装置内に配置され該装置に対して昇降可能であると共に、、前記サブトレイに載置された前記ディスクの回転軸が同軸となるよう前記サブトレイを複数枚収納可能なストッカ(20)と、
前記第1の位置をとるメイントレイと前記ストッカとの間で前記サブトレイを移動可能なサブトレイ移動手段(91,92)と、
前記メイントレイが前記第1の位置にあるとき、前記サブトレイとディスク再生手段を相対的に移動させ、前記サブトレイに載置された前記ディスクを前記ディスク再生手段に装着するディスク装着手段(40,71)からなるディスク再生装置。」

3 対比・判断
本願発明と引用刊行物1〜9に記載されたそれぞれの発明とを比較すると、引用刊行物1〜9に記載された発明は、本願発明の構成に欠くことができない事項の一部である以下の構成を備えていない。
「収納手段の一端側と対向する所定の装填位置において、トレイに記録媒体を装填可能な装填部と、前記収納手段の他端側と対向する所定の再生位置において、前記トレイに保持された前記記録媒体から情報を再生可能な再生部と、移動手段によつて前記装填部の装填位置及び前記再生部の再生位置間を結ぶライン上に位置決めされた一の前記トレイを、当該ラインに沿つてスライドさせることにより前記装填部又は前記再生部に選択的に搬送する搬送手段とを具えること。」
そして、本願発明は、上記の点を具備することにより、「一段と簡易な操作方法によって複数の記録媒体を収納及び選択的に再生することができると共に、簡易な構成かつ小型化し得る再生装置を実現できる。」という明細書に記載された効果を奏するものである。
また、引用刊行物5に記載された再生装置(ディスクプレーヤ)の収納手段(収納部18)について、引用刊行物4、8及び9等に記載されている、収納手段(ストッカ)を移動する移動手段を設けるという技術事項を適用しても、搬送手段(摺動機構3)がトレイを搬送する位置は、本願発明で言う「再生位置」ではないから、上記の「移動手段によつて前記装填部の装填位置及び前記再生部の再生位置間を結ぶライン上に位置決めされた一の前記トレイを、当該ラインに沿つてスライドさせることにより前記装填部又は前記再生部に選択的に搬送する搬送手段」を具えることにはならない。
したがって、本願発明は、上記引用刊行物1〜9に記載されたそれぞれの発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願は、原査定の拒絶の理由又は前置報告の理由によって、拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-03-07 
出願番号 特願平4-106003
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮下 誠  
特許庁審判長 内藤 二郎
特許庁審判官 伊東 和重
犬飼 宏
発明の名称 再生装置  
代理人 田辺 恵基  

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