• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06K
審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06K
管理番号 1054724
審判番号 審判1999-20336  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-07-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-12-28 
確定日 2002-03-01 
事件の表示 平成 1年特許願第311691号「情報読取装置及び方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年 7月24日出願公開、特開平 3-171384]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成元年11月30日の出願であって、「情報読取装置及び方法」に関するものと認められる。

2.当審の拒絶理由
当審において、平成13年1月15日付けで通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
「本件出願は、明細書及び図面の記載が下記1〜3項の点で不備のため、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない。

1 明細書及び図面の記載では、C従来の技術及びD発明が解決しようとする問題点に於いてどの問題点を解決しようとしているのか本願発明の目的が不明であり、G実施例に於いてはどれがどの問題点を解決する手段か本願発明の構成が不明であり、F作用及び発明の効果に於いてはどの作用効果がどの解決手段に対応するのか本願発明の効果が不明であるので、本願発明が何か不明である。
2 1項の様に本願発明が何か不明であるため、本願発明の構成に欠くことができない事項が何か不明であるので、特許請求の範囲の欄に本願発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されているとは認められない。
3 特許請求の範囲の欄の記載では、希望的記載(機能的記載)が多く具体的解決手段が何か不明であるので、本願発明の構成が不明である。なお、特許請求の範囲の欄の記載とE問題点を解決するための手段の記載が同じでないので、何が本願発明の目的を達成しうる解決手段としての構成か不明である。」

3.明細書の記載・当審の判断
平成13年3月27日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面には、本願発明の構成、従来技術の問題点及びこれを解決するための手段、作用、効果に関して次のように記載されている。
(ア)「(1)情報データ源から伝送されて来る伝送情報データ信号を検出する伝送情報データ信号検出手段と、
上記伝送情報データ信号をディジタル情報データに変換するアナログ/ディジタル変換手段と、
フィードバックパルスによって駆動され、当該フィードバックパルスの周期に対応するバンドパス領域内の上記ディジタル情報データをフィルタ出力として送出するディジタルバンドパスフィルタ手段と、
上記ディジタルバンドパスフィルタ手段のフィルタ出力がゼロクロスレベルを横切ったとき論理レベルを遷移するゼロクロス検出出力を出力することにより上記伝送情報データ信号によって伝送されて来た伝送情報を抽出するゼロクロス検出手段と、
上記ゼロクロス検出出力が論理レベルを遷移したとき所定の時間の間カウントパルスをカウントするカウント手段と、
上記カウント手段のカウント結果と前回位相エラー値とを加算し、当該加算値を位相エラー信号として送出する位相エラー換算手段と、
順次続く上記位相エラー信号を累算してフィードバックデータを生成する累算手段と、
上記フィードバックデータの値に対応する周期を有する上記フィードバックパルスを送出するパルス発振手段と、
を具え、上記ディジタルバンドパスフィルタ手段の上記フィルタ出力から上記伝送情報を抽出できないために上記カウント手段がカウント動作しない状態になったとき、上記累算手段が累算動作を続けることによって当該累算値が変化し続けることにより、上記パルス発振手段から得られる上記フィードバックパルスの周期を変化し続けさせ、その結果上記ディジタルバンドパスフィルタ手段から上記伝送情報を抽出できるまで、上記ディジタルバンドパスフィルタ手段の動作周波数を変化し続けさせる
ことを特徴とする情報読取装置。
(2)情報データ源から伝送されて来る伝送情報データ信号を伝送情報データ信号検時出手段によって検出し、
上記伝送情報データ信号をアナログ/ディジタル変換手段によってディジタル情報データに変換し、
フィードバックパルスによって駆動されるディジタルバンドパスフィルタ手段によって当該フィードバックパルスの周期に対応するバンドパス領域内の上記ディジタル情報データをフィルタ出力として送出し、
上記ディジタルバンドパスフィルタ手段のフィルタ出力がゼロクロス検出手段のゼロクロスレベルを横切ったとき論理レベルを遷移するゼロクロス検出出力を出力することにより上記伝送情報データ信号のよって伝送されて来た伝送情報を抽出し、
上記ゼロクロス検出出力が論理レベルを遷移したとき所定の時間の間カウントパルスをカウント手段によってカウントし、
上記カウント手段のカウント結果と前回位相エラー値とを位相エラー換算手段によって加算し、当該加算値を位相エラー信号として送出し、
順次続く上記位相エラー信号を累算手段によって累算してフィードバックデータを生成し、
パルス発振手段によって上記フィードバックデータの値に対応する周期を有する上記フィードバックパルスを送出し、
上記ディジタルバンドパスフィルタ手段の上記フィルタ出力から上記伝送情報を抽出できないために上記カウント手段がカウント動作しない状態になったとき、上記累算手段が累算動作を続けることによって当該累算値が変化し続けることにより、上記パルス発振手段から得られる上記フィードバックパルスの周期を変化し続けさせ、その結果、上記ディジタルバンドパスフィルタ手段から上記伝送情報を抽出できるまで上記ディジタルバンドパスフィルタ手段の動作周波数を変化し続けさせる
ことを特徴とする情報読取方法。」(特許請求の範囲)
(イ)「B発明の概要
本発明は、情報読取装置及び方法において、情報データ信号をPLL回路部において発生させたパルス信号によって駆動されるディジタルバンドパスフィルタを通じてPLL回路部に入力すると共に、ディジタルバンドパスフィルタから情報データが得られない状態になったとき、ディジタルバンドパスフィルタの駆動パルス周期を変化させ続けるようにしたことにより、簡単な構成によってPLL回路部を情報データ信号の周波数に容易にロックさせることができる。」(明細書第3頁第14行〜第4頁第3行)
(ウ)「従って応答信号処理回路において単純にPLL回路を用いるようにしたのでは、PLL回路部において一旦応答情報信号に対するロックがはずれると、周波数変動が大きい応答情報信号を再度補足し難い問題がある。
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、微弱かつ周波数変動が大きい応答情報信号を容易に補足できるようにした情報読取装置及び方法を提案しようとするものである。」(明細書第8頁第1行〜第9頁第2行)
(エ)「E問題点を解決するための手段
かかる問題点を解決するため本発明においては、情報データ源4から伝送されて来る伝送情報データ信号S17A、S17Bを検出する伝送情報データ信号検出手段(32A〜38A)、(32B〜38B)と、伝送情報データ信号S17A、S17Bをディジタル情報データS18A、S18Bに変換するアナログ/デジタル変換手段40A、40Bと、フィードバックパルスS21A、S21Bによって駆動され、当該フィードバックパルスS21A、S21Bの周期に対応するバンドパス領域J内のディジタル情報データS18A、S18Bをフィルタ出力として送出するディジタルバンドパスフィルタ手段41A、41Bと、ディジタルバンドパスフィルタ手段41A、41Bのフィルタ出力がゼロクロスレベルを横切ったとき論理レベルを遷移するゼロクロス検出出力20A、20Bを出力することにより伝送情報データ信号S18A、S18Bによって伝送されてきた伝送情報を抽出するゼロクロス検出手段42A、42Bと、ゼロクロス検出出力S20A、S20Bが論理レベルを遷移したとき所定の時間の間カウントパルスをカウントするカウント手段75と、カウント手段75のカウント結果S43と前回位相エラー信号S45とを加算し、当該加算値を位相エラー信号S23A、S23Bとして送出する位相エラー換算手段77と、順次続く位相エラー信号S23A、S23Bを累算してフィードバックデータS24A、S24Bを生成する累算手段46A、46Bと、フィードバックデータS24A、S24Bの値に対応する周期を有するフィードバックパルスS21A、S21Bを送出するパルス発振手段45A、45Bとを具え、ディジタルバンドパスフィルタ手段41A、41Bのフィルタ出力S19A、S19Bから伝送情報を抽出できないためにカウント手段75がカウント動作しない状態になったとき、累算手段46A、46Bが累算動作を続けることによって当該累算値が変化し続けることにより、パルス発振手段45A、45Bから得られるフィードバックパルスS21A、S21Bの周期を変化し続けさせ、その結果ディジタルバンドパスフィルタ手段41A、41Bから伝送情報を抽出できる状態になるまで、ディジタルバンドパスフィルタ手段41A、41Bの動作周波数を変化し続けさせるようにする。」(明細書第9頁第3行〜第10頁第7行)
(オ)「F作用
伝送情報との位相エラー値S23A、S23Bを累算し、その累算結果に基づいてディジタルバンドパスフィルタ手段41A、41Bに対するフィードバックパルスS21A、S21Bの周期を決めるようにすると共に、伝送情報が捕捉できない状態になったときにも累算動作を続けてその累算値S24A、S24Bの変化を続けさせるようにしたことにより、ディジタルバンドパスフィルタ手段41A、41Bのバンドパス領域Jを決める動作周波数が移動され、その結果一旦捕捉できなくなった周波数変動の大きい伝送情報を容易に再捕捉することができる。」(明細書第10頁第8行〜第11頁第9行)
(カ)「H発明の効果
上述のように本発明によれば、伝送情報との位相エラー値を累算し、その累算結果に基づいてディジタルバンドパスフィルタ手段に対するフィードバックパルスの周期を決めるようにすると共に、伝送情報が捕捉できない状態になったときも累算動作を続けてその累算値の変化を続けさせるようにしたことにより、ディジタルバンドパスフィルタ手段のバンドパス領域を決める動作周波数が移動され、その結果一旦捕捉できなくなった周波数変動の大きい伝送情報を容易に再捕捉することができる。」(明細書第67頁第19行〜第68頁第13行)

そこで、上記記載の発明について、当業者が容易にその実施をすることができる程度に発明の構成が明細書の発明の詳細な説明に記載されているかどうか、また、発明の構成に欠くことができない事項のみが特許請求の範囲に記載されているかどうかについて検討する。
明細書の発明の詳細な説明及び図面には、上記ディジタルバンドパスフィルタ手段の上記フィルタ出力から上記伝送情報を抽出できないために上記カウンタ手段がカウント動作しない状態になったときの、上記累算手段が累算動作を続けるための構成として、カウント回路75、現在値換算回路76、位相エラー換算回路77及び前回値保持回路78からなる位相比較回路44A(44B)と、1次重み付け回路81、1次加算回路82、2次加算回路83、2次遅延回路84及び2次重み付け回路85からなるディジタル信号処理回路46A(46B)が記載されている(明細書第31頁第17行〜第50頁第7行及び第9図、第12図参照)。
そして、これらの動作については、次のように説明されている。
(キ)「現在値換算回路76はカウント信号S43として数値データ「0」〜「7」が与えられたときこれを次式
S44={(S43-4)+0.5}×2 ・・・・・・(10)
によって表される換算式によって現在値換算信号S44に変換する。」(明細書第37頁第4行〜第10行)
(ク)「この現在値換算信号S44は第12図に示す換算値テーブルTABLEを構成する位相エラー換算回路77に現在値情報として入力される。
位相エラー換算回路77は数値データ「-7」〜「+7」を変化範囲とする現在値換算信号S44を、その変化の仕方に応じて数値データ「-15」〜「+15」の変化幅を有する位相エラー信号S23A及びS23Bに変換し、これによりカウント範囲が狭いカウント回路75のカウント動作結果によって得られたデータの変化範囲(すなわち「0」〜「7」)と、前回値保持回路78から与えられる前回値信号S45とを換算条件として格段的に広い変化範囲(すなわち「-15」〜「+15」)をもつ位相エラー信号S23A及びS23Bへの換算数を選定するようになされている。」(明細書第37頁第17行〜第38頁第12行)
(ケ)「比較回路44A及び44Bの位相エラー信号S23A及びS23Bはディジタル信号処理回路46A及び46Bの1次重み付け回路81において所定の重み付けをされた後1次加算回路82に与えられると共に、2次加算回路83に与えられる。
2次加算回路83の加算出力S25は2次遅延回路84において1サンプリング周期だけ遅延された後2次加算回路83にフィードバックされ、これにより2次加算回路83は順次位相比較回路44A及び44Bから与えられる位相エラー信号S23A及びS23Bのトータル積算値を表す加算出力S45を送出する。
2次遅延回路84から得られる加算出力S45は2次重み付け回路85を介して1次加算回路82に供給され、かくして1次加算回路82から現在の位相比較動作が実行されるまでの位相比較動作におけるトータル位相エラー量に現在の位相比較動作による位相エラー量を加算した加算出力が得られ、これがフィードバックデータS24A及びS24Bとして数値制御型発振回路45A及び45Bに供給される。」(明細書第42頁第20行〜第43頁第20行)
この構成で上記(ア)〜(カ)に記載されるように累算動作を行うためには、現在値換算回路76は、カウント回路からの出力がない場合に位相エラー換算回路77が前回値保持回路78から出力される前回値をそのまま出力するように制御するか、位相エラー換算回路77がカウンタ回路75からの出力がないことを検出し、前回値保持回路78から出力される前回値をそのまま出力する必要があるが、そのような動作をすることは上記(キ)〜(コ)には記載されていないし、上記以外の明細書及び図面の記載からはそのような動作が行われるとも認められない。現在値換算回路76は、上記(キ)に記載されるようにカウンタ回路75からのカウント信号S43を上記換算式(10)で現在値換算信号S44に変換するのみであって、カウント信号S43が出力されない場合に、どのような動作を行なうのか不明である。また、位相エラー換算回路は、現在値換算回路からの現在値と前回値保持回路からの前回値によって位相エラー信号を出力するためのテーブルを持つのみであって、カウント回路からの出力がない場合に前回値保持回路の出力を出し続ける構成とはなっていない。
また、ディジタル信号処理回路46A(46B)も、カウンタからの出力がある場合及び出力がない場合で、いかなるタイミングでその加算動作を行なうのか、その構成が不明である。
なお、請求人は、前記補正により、明細書の第43頁第20行〜第44頁第1行の間に位相比較回路とディジタル信号処理回路の累算動作に関する記載を追加したが、これは特許請求の範囲の補正に合わせて発明の詳細な説明の記載を補正したものであって、この記載から実施例の回路が上記累算動作を行なうように構成されているとは認められない。
さらに、上記累算動作に関する記載を除いて検討しても、発明の詳細な説明の記載からは、実施例の回路において、PLL回路部がその発振パルスの周波数を情報データ信号の周波数にロックさせ、ロックされた状態を維持する動作をどのように実現しているのか全く不明である。
以上のように、明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易に実施することができる程度に発明の構成が記載されているとは認められず、そのため、特許請求の範囲に発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されているとも認められない。

4.まとめ
したがって、本願は、明細書及び図面の記載が特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていないので、当審で通知した上記拒絶の理由によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-12-03 
結審通知日 2001-12-14 
審決日 2002-01-11 
出願番号 特願平1-311691
審決分類 P 1 8・ 531- WZ (G06K)
P 1 8・ 534- WZ (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高松 猛梅沢 俊  
特許庁審判長 広岡 浩平
特許庁審判官 石井 茂和
長島 孝志
発明の名称 情報読取装置及び方法  
代理人 田辺 恵基  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ