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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1054821 |
審判番号 | 審判1998-6692 |
総通号数 | 28 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-12-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-04-28 |
確定日 | 2002-03-08 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 65796号「マルチプロセッサシステム」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年12月 8日出願公開、特開平 7-319826]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成7年3月24日(優先権主張平成6年3月30日)の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、平成10年2月19日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された 「複数のプロセッサと、前記プロセッサからのリクエストが出力される複数のポートと、前記プロセッサからのリクエストを前記複数のポートごとに調停する複数の優先度決定回路を有するマルチプロセッサシステムにおいて、 前記複数の優先度決定回路の各々は、前記プロセッサからのリクエストの一つをある固定優先順位に従って選択する固定優先回路と、前記固定優先回路によって選択されずに保留されたリクエストを検出してその検出結果を保持する保留回路と、前記保留回路に保留されたリクエストがあると新たなリクエストを前記プロセッサから受け取らないセレクタとを含み、前記複数の優先度決定回路の各々の固定優先回路は、相互に異なる固定的な優先順位に従って前記プロセッサからのリクエストの一つを選択することを特徴とするマルチプロセッサシステム。」にあると認める。 なお、平成10年4月28日付の手続補正は、本審決と同日付けで決定をもって却下されたので、本願発明を上記のとおり認定した。 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-66662号公報(昭和63年3月25日出願公開。以下、引用例という。)には、次の事項が記載されている。 (1)本発明は計算機システムの記憶制御方式に関し詳しくは、記憶装置に対するアクセス要求間の優先順位の処理方式に関する。(1頁右下欄2行乃至4行) (2)本発明の目的は、複数の並列動作を行うアクセス要求制御装置が独立にアクセス要求を発生し、独立にアクセス可能な複数の記憶単位(ポートという。)から構成される記憶装置に該アクセス要求を発行するにあたり、上記ポート毎に設けられた各アクセス要求順位決定装置において、ある特定のアクセス要求制御装置から発行されたアクセス要求がいつまでも記憶装置に発行されないという状態を完全に防止し、かつ少ない金物量で優先順位を決定する優先順位決定回路を提供することにある。(2頁右上欄17行乃至左下欄7行) (3)上記目的は、先行するタイミングに優先順位決定論理で選択されず待たされているアクセス要求だけを優先制御フリップフロップを用いて記憶しておき、そのアクセス要求の優先順位を高くすることにより達成される。(2頁左下欄9行乃至13行) (4)次に優先順位決定論理310Pについて説明する。優先制御フリップフロップ310I、310J、310K、310L(310E、310F、310G、310Hの誤記)の出力全てがリセット状態のときには、常にアクセス要求スタック装置300 から発行されたアクセス要求を最優先にし、アクセス要求スタック装置301、302、303 から発行されたアクセス要求をそれぞれ第2位、第3位、第4位とする固定優先順位にする。優先制御フリップフロップ310E、310F、310G、310Hのうちどれかがセット状態の時には、セット状態の優先制御フリップフロップに対応するアクセスだけを前記した固定優先順位に従って優先順位を決定する。(3頁左上欄18行乃至右上欄9行) (5)アクセス要求スタック装置300、301、302、303は最初にスタックしたアクセス要求をアクセス要求順位決定装置310 に送出し、アクセス要求順位決定装置310 のリクエストフリップフロップ310A、310B、310C、310Dにそれぞれセットされる。リクエストフリップフロップ310A、310B、310C、310Dにセットされたアクセス要求は次のクロックで優先順位を論理310Pにより決定され1つが選択される。ここでは、優先制御フリップフロップが全てリセット状態なので、前記した固定優先順位に従いアクセス要求スタック装置300 のアクセス要求を選択する。そして、アクセス要求スタック装置300 のアクセス要求が選択されたという信号をセットリセット回路に返して、選択されなかったアクセス要求スタック装置301、302、303 に対応する優先制御フリップフロップ310F、310G、310Hをセットする。(3頁左下欄9行乃至右下欄5行) 上記記載事項から、引用例には、 「複数のアクセス要求制御装置と、前記アクセス要求制御装置からのアクセス要求が出力される複数のポートと、前記アクセス要求制御装置からのアクセス要求を前記複数のポートごとに1つ選択する複数の優先順位決定回路を有する計算機システムにおいて、 前記複数の優先順位決定回路の各々は、前記アクセス要求制御装置からのアクセス要求の一つをある固定優先順位に従って選択する優先順位決定論理と、前記優先順位決定論理によってどのアクセス要求が選択されたかを示す信号を返されるセットリセット回路と、前記セットリセット回路により、選択されたアクセス要求以外のアクセス要求に対応してセットされる優先制御フリップフロップを含み、前記優先制御フリップフロップのうちどれかがセット状態の時には、セット状態の優先制御フリップフロップに対応するアクセスだけを前記した固定優先順位に従って優先順位を決定することを特徴とする計算機システム。」(以下、引用例に記載された発明という。)が記載されていると認められる。 3.対比 本願発明と引用例に記載された発明を対比すると、引用例に記載された発明の「アクセス要求」、「1つ選択する」、「優先順位決定回路」、「優先順位決定論理」は、それぞれ本願発明の「リクエスト」、「調停する」、「優先度決定回路」、「固定優先回路」に相当し、また、引用例に記載された発明の「優先順位決定論理によってどのアクセス要求が選択されたかを示す信号を返されるセットリセット回路と、前記セットリセット回路により、選択されたアクセス要求以外のアクセス要求に対応してセットされる優先制御フリップフロップ」からなる部分は、機能的に本願発明の「固定優先回路によって選択されずに保留されたリクエストを検出してその検出結果を保持する保留回路」に相当する。そして、引用例に記載された発明において、「優先制御フリップフロップのうちどれかがセット状態の時には、セット状態の優先制御フリップフロップに対応するアクセスだけを前記した固定優先順位に従って優先順位を決定する」のであるから、引用例に記載された発明においても、本願発明の「保留回路に保留されたリクエストがあると新たなリクエストを前記プロセッサから受け取らないセレクタ」に相当する部分の存在することは明らかであり、さらに、本願発明の「プロセッサ」はアクセスを要求する制御装置であり、「マルチプロセッサシステム」は計算機システムであることから、両者は、 「複数のアクセス要求制御装置と、前記アクセス要求制御装置からのリクエストが出力される複数のポートと、前記プロセッサからのリクエストを前記複数のポートごとに調停する複数の優先度決定回路を有する計算機システムにおいて、 前記複数の優先度決定回路の各々は、前記アクセス要求制御装置からのリクエストの一つをある固定優先順位に従って選択する固定優先回路と、前記固定優先回路によって選択されずに保留されたリクエストを検出してその検出結果を保持する保留回路と、前記保留回路に保留されたリクエストがあると新たなリクエストを前記アクセス要求制御装置から受け取らないセレクタとを含み、前記複数の優先度決定回路の各々の固定優先回路は、相互に異なる固定的な優先順位に従って前記アクセス要求制御装置からのリクエストの一つを選択することを特徴とする計算機システム。」であることで一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 「アクセス要求制御装置」及び「計算機システム」が、本願発明ではそれぞれ「プロセッサ」及び「マルチプロセッサシステム」であるのに対して、引用例には、アクセス要求制御装置がプロセッサであること、したがって、計算機システムがマルチプロセッサシステムであることが明記されていない点。 (相違点2) 本願発明においては、複数の優先度決定回路の各々の固定優先回路は、相互に異なる固定的な優先順位に従って前記プロセッサからのリクエストの一つを選択するものであるのに対して、引用例には、複数の優先順位決定論理が相互に異なる固定的な優先順位に従って優先順位を決定するのか、同一の固定的な優先順位に従って優先順位を決定するのか何ら記載されていない点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) プロセッサは、記憶装置にアクセス要求を出すものの代表的なものであるから、引用例に記載された発明において、「アクセス要求制御装置」及び「計算機システム」を、「プロセッサ」及び「マルチプロセッサシステム」とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (相違点2について) 引用例には、各優先順位決定論理のそれぞれの固定優先順位が同一であるか否かは記載されていないのであるから、引用例に記載された発明に接した当業者にとって、固定順位を同一にするか否かは2者択一の事項である。そして、全ての優先順位決定論理の固定優先順位を同一にしなければならない格別の理由がアクセス要求制御装置間になければ、アクセスの調停をなるべく公平に行うことは当業者の常套手段であるから、各優先順位決定論理のそれぞれの固定優先順位を相互に異なるようにすることに格別の発明力を要したとは認められない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例に記載された発明および周知技術思想に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-12-20 |
結審通知日 | 2002-01-08 |
審決日 | 2002-01-21 |
出願番号 | 特願平7-65796 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中里 裕正 |
特許庁審判長 |
斎藤 操 |
特許庁審判官 |
徳永 民雄 村上 友幸 |
発明の名称 | マルチプロセッサシステム |
代理人 | 京本 直樹 |