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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 H01L |
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管理番号 | 1054843 |
異議申立番号 | 異議2001-70437 |
総通号数 | 28 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-04-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-02-07 |
確定日 | 2001-11-05 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3074843号「投影露光装置及び露光方法並びに回路パターン形成方法」の請求項6、7、17、18に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3074843号の請求項6、7、16、17に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第3074843号は、平成3年10月4日に特許出願され、平成12年6月9日にその特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人キャノン株式会社から特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内に訂正請求がなされたものである。 1.1 異議申立ての概要 異議申立人キャノン株式会社は、甲第1号証(特開平1-295215号公報)、甲第2号証(特開平1-271718号公報)及び甲第3号証(特開平2-48627号公報)を提出し、本件請求項6、7、17及び18に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件請求項6、7、17及び18に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件請求項6、7、17及び18に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであり、本件請求項6、7、17及び18に係る特許を取り消すべき旨主張している。 また、上記異議申立人キャノン株式会社は、本件請求項6、7、17及び18に係る発明は、甲第1〜第3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、本件請求項6、7、17及び18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、本件請求項6、7、17及び18に係る特許を取り消すべき旨主張している。 1.2 異議申立人キャノン株式会社が提出した甲第1号証の記載内容 甲第1号証の第2頁左上欄第8行ないし第13行には、「そこで、本発明の目的は、コヒーレンシイの高いレーザ光源を用いた場合にも、コヒーレンシイを低減した証明を可能とし、簡単な構成によって実質的にインコヒーレントな光源を形成することもでき、対物光学系を介して効率良い照明を可能とする照明装置を提供することにある。」と記載されている。 甲第1号証の第2頁左上欄第15行ないし同頁右上欄第4行には、「本発明による照明装置は、光源と、内面反射可能な側面を有する反射部材と、該反射部材と前記光源との間に配置されて前記反射部材に入射する光源からの入射光束を所定の点を中心として所望の角度で交差する光束に変換する光束変換手段とを有し、前記反射部材の内面反射によって複数の光源像を形成し、前記複数の光源の像を対物光学系の入射瞳上に形成することによって被照明物体をを照明するものである。」と記載されている。 甲第1号証の第2頁左下欄第5行ないし同頁同欄第17行には、「第1図は本発明による照明装置の原理的構成を示す光路図であり、光源像形成手段として透明物質で形成された柱状部材を用い物体面(10)をインコヒーレントに照明するものである。レーザー光源(1)からのコヒーレント光は走査光学装置(20)により所定の光束径に拡大されてX-Z平面内で所定の角度範囲にわたって二次元的に走査され、第2図の斜視図に示したごとき四角柱部材(9)の入射面(9a)より四角柱部材(9)内に入射する。四角柱部材(9)の各側面には内面反射するよう反射膜が蒸着されており、入射する光束は走査角度θに応じて四角柱部村(9)の側面の内面で反射されて射出面(9b)より射出する。」と記載されている。 甲第1号証の第3頁左上欄第4行ないし同頁同欄第16行には、「第1図に示したX-Z平面図で四角柱部材(9)に入射する光束の角度が…1周期走査されると、射出面(9b)には、あたかも順に、A0…各点から順次光束が供給されることとになり、四角柱部材(9)の側面での内面反射により実質的には極めて大きな光源より光束が供給される状態となる。この状態は、第1図に示したX-Z平面と直交するY-Z平面内でも同様にに形成されるため、四角柱部材(9)の射出面(9b)近傍の物体面(10)は四角柱部材(9a)の入射面(9a)を含むX-Y平面上の極めて大きな領域から照明されるこことなる」と記載されている。 甲第1号証の第3頁左下欄第3行ないし同頁同欄第12行には、「第3図は本発明の実施例に用いられる走査光学装置の例を示す…。レーザ光源(1)からの光束はビームエキスパンダー(21)により光束径を拡大され、…第2回転ミラー(24)に入射する。第2回転ミラー(24)で反射された光束は…走査面(3)上に達する。」と記載されている。 甲第1号証の第3頁右下欄第3行ないし第4頁左上欄第1行には、「第4図は第1図に示したインコヒーレント照明の原理的構成を投影露光装置に応用した実施例の光学系配置図である。第4図の構成例では、走査露光光学装置(20′)により走査される平行光束の回転中心A0点が、四角柱部材(9)の入射面(9a)から離れた位置にあり、A0点を含むX‐Y平面上に実質的にに拡大されたインコヒーレント光源が形成される。そして、四角柱部材の射出面(9b)の近傍に配置された被照明物体としてのレチクル(R)がインコヒ-レント照明され、投影対物レンズ(7′)によりレチクル(R)上のパターンがウェハ(W)上に投影される。レチクル(R)を照明する実質的な光源面がA0点にあるため、投影対物レンズ(7′)はその入射瞳がこのA0点の近傍に形成されるものであることが望ましい。また、四角柱部材(8)とレチクル(R)との間にコンデンサーレンズを挿入する場合には、このコンデンサーレンズに関して、投影対物レンズ(7′)の入射瞳とA0点とが共役になるように構成することが望ましい。」と記載されている。 1.3 異議申立人キャノン株式会社が提出した甲第2号証の記載内容 甲第2号証には、コンデンサーレンズ中に実像の光源像を形成する旨記載されている。 1.4 異議申立人キャノン株式会社が提出した甲第3号証の記載内容 甲第3号証には、正レンズによって実像の光源像を形成する旨記載されている。 2.訂正の適否について 本件訂正請求は、本件特許第3074843号の明細書(以下、「特許明細書」という。)を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、訂正しようとするものである。 2.1 訂正事項 訂正事項a 特許明細書の請求項8及び19を削除し、請求項9〜18を請求項8〜17に繰り上げ、また、請求項請求項20〜25を請求項18〜23に繰り上げ、引用する請求項を繰り上げる。 請求の範囲対応表 特許時の請求項 訂正後の請求項 2 2 3 3 4 4 5 5 6 6 7 7 8 削除 9 8 10 9 11 10 12 11 13 12 14 13 15 14 16 15 17 16 18 17 19 削除 20 18 21 19 22 20 23 21 24 22 25 23 訂正事項b 特許明細書の請求項6の「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系とを有すること」を、「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系とを有し、 前記入射角を可変にする光学系は、間隔が調整可能に設けられた第1及び第2プリズムを有すること」と訂正する。 訂正事項c 特許明細書の請求項18の「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする工程とを含むこと」を、「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする工程とを含み、 前記入射角を可変にする工程は、前記ロッド型インテグレータの入射側に配置された2つのプリズムの間隔を調整することを含むこと」と訂正する。 訂正事項d 特許明細書の【0014】段落の「また、本発明は、例えば図7に示す如く、光源(1)からの照明光を照明光学系を通して所定のパターンが形成されたマスク(10)に照射し、前記パターンの像を投影光学系(11)を介して感光基板(12)上に結像する投影露光装置において、前記照明光学系は、前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータ(71)と、前記光源と前記ロツド型インテグレータとの間に配置されて前記ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系(41、42、70)とを有するものである。」を、「また、本発明は、例えば図7に示す如く、光源(1)からの照明光を照明光学系を通して所定のパターンが形成されたマスク(10)に照射し、前記パターンの像を投影光学系(11)を介して感光基板(12)上に結像する投影露光装置において、前記照明光学系は、前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータ(71)と、前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置されて前記ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系(41,42,70)とを有し、前記入射角を可変にする光学系は、間隔が調整可能に設けられた第1及び第2プリズムを有するものである。」と訂正する。 【0014】段落の「また、発明による露光方法は、内面反射型のロッド型インテグレータを含む照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程と、前記ロッド型インテグレータに入射する光の入射角を可変にする工程とを含むものである。」を、「また、本発明による露光方法は、内面反射型のロッド型インテグレータを含む照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程と、前記ロッド型インテグレータに入射する光の入射角を可変にする工程とを含み、前記入射角を可変にする工程は、前記ロッド型インテグレータの入射側に配置された2つのプリズムの間隔を調整することを含むものである。」と訂正する。 2.2 訂正後の特許請求の範囲 請求項1 所定のパターンが形成されたレチクルを、照明光学系を通した光源からの照明光で照射し、前記パターンの像を投影光学系を介して感光基板上に結像する投影露光装置において、 前記照明光学系は、前記照明光を分割する光分割光学系と、該光分割光学系によって分割された各光束に対応した複数の面光源を前記レチクルに対するフーリエ面、もしくはその近傍での前記照明光学系の光軸から偏心した複数の位置に形成する多面光源形成光学系と、該多面光源形成光学系による複数の面光源からの光束を前記レチクルへ集光するコンデンサーレンズとを有し、 前記多面光源形成光学系は、少なくともロッド型オプテイカルインテグレータを含むことを特徴とする投影露光装置。 請求項2 前記多面光源形成光学系は、前記照明光学系の光軸から偏心した複数の位置に各々の中心が配置される複数のロッド型オプテイカルインテグレータを有することを特徴とする請求項1記載の投影露光装置。 請求項3 前記多面光源形成光学系は、前記光分割光学系により分割された光束を集光する第1集光レンズと、該集光レンズによる集光点に入射面が位置するロッド型オプテイカルインテグレータと、該ロッド型オプテイカルインテグレータからの光束を集光して複数の面光源を前記レチクルに対するフーリエ面、もしくはその近傍に形成する第2集光レンズとを有することを特徴とする請求項1記載の投影露光装置。 請求項4 光源からの照明光を照明光学系を通して所定のパターンが形成されたレチクルに照射し、前記パタ)ンの像を投影光学系を介して感光基板上に結像する投影露光装置において、 前記照明光学系は、光源像を形成する第1集光光学系と、該第1集光光学系による光源像位置に入射面が位置決めされたロッド型オプティカルインテグレータと、該ロッド型オプテイカルインテグレータからの光束を集光して面光源を前記レチクルに対するフーリエ面、もしくはその近傍に形成する第2集光光学系と、該面光源からの光束を前記レチクルへ集光するコンデンサー光学系とを有し、 前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間には、前記照明光学系の光軸を含む面内において光束を分割する光分割光学系が配置されており、 前記ロッド型インテグレータは、該光分割光学系により分割された光束に基づいて前記光軸に関して偏心した位置に前記面光源を形成することを特徴とする投影露光装置。 請求項5 前記光分割光学系は、V型の凹部を持つ第1のプリズムと、V型の凸部を持つ第2のプリズムとを有し、 前記偏心した面光源の位置を調整するために、前記第1および第2のプリズムの間隔は調整可能であることを特徴とする請求項4記載の投影露光装置。 請求項6 光源からの照明光を照明光学系を通して所定のパターンが形成されたマスクに照射し、前記パターンの像を投影光学系を介して感光基板上に結像する投影露光装置において、 前記照明光学系は、前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータと、前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置されて前記ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系とを有し、 前記入射角を可変にする光学系は、間隔が調整可能に設けられた第1及び第2プリズムを有することを特徴とする投影露光装置。 請求項7 前記入射角を可変にする光学系は、照明光学系の光軸から離れた位置に前記2次光源を形成することを特徴とする請求項6記載の投影露光装置。 請求項8 光源からの照明光を照明光学系を通して所定のパターンが形成されたマスクに照射し、前記パターンの像を投影光学系を介して感光基板上に結像する投影露光装置において、 前記照明光学系は、前記光源からの光を内面反射させるロッド型インテグレータと、前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置されて前記ロッド型インテグレータと協働して前記照明光学系の光軸から離れた位置に2次光源を形成するプリズム部材とを有することを特徴とする投影露光装置。 請求項9 前記プリズム部材と前記ロッド型インテグレータとの間に配置されて、前記プリズム部材からの光を集光する集光光学系をさらに有することを特徴とする請求項8記載の投影露光装置。 請求項10 前記ロッド型インテグレータの射出側面と前記マスクとを互いに共役にする光学系をさらに有することを特徴とする請求項8または9記載の投影露光装置。 請求項11 前記プリズム部材は、前記2次光源の前記光軸に対する位置をコントロールできるように構成されることを特徴とする請求項6記載の投影露光装置。 請求項12 前記プリズム部材は、錐型の凹部を持つ第1プリズムと、錐型の凸部を持つ第2プリズムとを有することを特徴とする請求項8、9または10記載の投影露光装置。 請求項13 前記第1プリズムと前記第2プリズムとの間の間隔は調整可能であることを特徴とする請求項12記載の投影露光装置。 請求項14 光源からの照明光を照明光学系を通してマスク上のパターンに照射し、前記パターンの像を投影光学系を介して感光基板上に結像する投影露光装置において、 前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータと、 前記2次光源の分布を変更するための手段とを有し、 前記分布を変更するための手段は、前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置され、かつ移動可能なプリズムを有することを特徴とする投影露光装置。 請求項15 光源からの照明光を照明光学系を通してマスク上のパターンに照射し、前記パターンの像を投影光学系を解して感光基板上に結像する投影露光装置において、 前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータと、 前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置されて、前記2次光源の分布を変更するための手段とを有し、 前記分布を変更するための手段は、互いに間隔可変なプリズムを有することを特徴とする投影露光装置。 請求項16 請求項1乃至15の何れか一項記載の投影露光装置の前記照明光学系を用いてマスクのパターンを照明する工程と、 該マスクのパターンの像を感光基板上に転写する工程とを含むことを特徴とする回路パターン形成方法。 請求項17 内面反射型のロッド型インテグレータを含む照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、 前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程と、 前記ロッド型インテグレータに入射する光の入射角を可変にする工程とを含み、 前記入射角を可変にする工程は、前記ロッド型インテグレータの入射側に配置された2つのプリズムの間隔を調整することを含むことを特徴とする露光方法。 請求項18 光源からの光を照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程とを含み、前記マスクを照明する工程は、前記光源からの光をプリズム部材へ導く工程と、該プリズム部材からの光を内面反射型のロッド型インテグレータへ導く工程と、 前記プリズム部材及び前記ロッド型インテグレータにより前記照明光学系の光軸から離れた位置に形成される2次光源からの光を前記マスクへ導く工程とを含むことを特徴とする露光方法。 請求項19 前記2次光源の位置をコントロールする工程をさらに含むことを特徴とする請求項18記載の露光方法。 請求項20 前記コントロールする工程では、前記マスクに応じて前記2次光源の位置をコントロールすることを特徴とする請求項19記載の露光方法。 請求項21 前記プリズム部材は第1及び第2プリズムを含み、前記コントロールする工程では前記第1及び第2プリズムの間隔を変更することを特徴とする請求項19または20記載の露光方法。 請求項22 光源からの光を照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程とを含み、 前記マスクを照明する工程は、前記光源からの光をプリズム部材へ導く工程と、該プリズム部材からの光を内面反射型のロッド型インテグレータへ導く工程と、該ロッド型インテグレータからの光を前記マスクへ導く工程とを含み、 前記プリズム部材を移動させて前記ロッド型インテグレータが形成する2次光源の分布の調整を行う工程をさらに含むことを特徴とする回路の形成方法。 請求項23 光源からの光を照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程とを含み、 前記マスクを照明する工程は、前記光源からの光をプリズム手段へ導く工程と、該プリズム手段からの光を内面反射型のロッド型インテグレータへ導く工程と、該ロッド型インテグレータからの光を前記マスクへ導く工程とを含み、 前記プリズム手段は、互いに間隔が調整可能な第1及び第2プリズムを含み、 前記間隔を調整して前記ロッド型インテグレータが形成する2次光源の分布の調整を行う工程をさらに含むことを特徴とする回路の形成方法。 3. 訂正の適否 3.1 訂正事項a 上記訂正事項aについては、特許明細書の請求項8及び19を削除し、請求項9〜18を請求項8〜17に繰り上げ、また、請求項請求項20〜25を請求項18〜23に繰り上げ、引用する請求項を繰り上げるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明に相当する。 また、上記訂正事項aは、出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。 3.2 訂正事項b 上記訂正事項bについては、特許明細書の請求項6の「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系とを有すること」を、下位概念である「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系とを有し、前記入射角を可変にする光学系は、間隔が調整可能に設けられた第1及び第2プリズムを有すること」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当する。 また、当該「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系とを有し、前記入射角を可変にする光学系は、間隔が調整可能に設けられた第1及び第2プリズムを有すること」は、特許明細書の請求項8の記載から、直接かつ一義的に導き出されるものであるから、上記訂正事項bは、出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。 3.3 訂正事項c 上記訂正事項cについては、特許明細書の請求項18の「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする工程とを含むこと」を、下位概念である「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする工程とを含み、前記入射角を可変にする工程は、前記ロッド型インテグレータの入射側に配置された2つのプリズムの間隔を調整することを含むこと」と訂正すると訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当する。 また、当該「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする工程とを含み、前記入射角を可変にする工程は、前記ロッド型インテグレータの入射側に配置された2つのプリズムをの間隔を調整することを含むこと」は、特許明細書の請求項19の記載から、直接かつ一義的に導き出されるものであるから、上記訂正事項cは、出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。 3.4 訂正事項d 上記訂正事項dは、上記訂正事項a、b及びcの特許請求の範囲の訂正による、明細書の発明の詳細な説明の記載と特許請求の範囲との不一致を解消するものである。 従って、訂正事項dについては、明りょうでない記載の釈明に相当する。 また、上記訂正事項dは、出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。 3.5 訂正の適否の判断 上記訂正事項a〜dは、上記3.1〜3.4のとおりであるから、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第126条第1項ただし書、同条第2項の規定に適合する。 従って、当該請求を認める。 4.特許異議申立てについての判断 4.1 異議申立に係る請求項 請求項6 光源からの照明光を照明光学系を通して所定のパターンが形成されたマスクに照射し、前記パターンの像を投影光学系を介して感光基板上に結像する投影露光装置において、 前記照明光学系は、前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータと、前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置されて前記ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系とを有し、 前記入射角を可変にする光学系は、間隔が調整可能に設けられた第1及び第2プリズムを有することを特徴とする投影露光装置。 請求項7 前記入射角を可変にする光学系は、照明光学系の光軸から離れた位置に前記2次光源を形成することを特徴とする請求項6記載の投影露光装置。 請求項16 請求項1乃至15の何れか一項記載の投影露光装置の前記照明光学系を用いてマスクのパターンを照明する工程と、 該マスクのパターンの像を感光基板上に転写する工程とを含むことを特徴とする回路パターン形成方法。 請求項17 内面反射型のロッド型インテグレータを含む照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、 前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程と、 前記ロッド型インテグレータに入射する光の入射角を可変にする工程とを含み、 前記入射角を可変にする工程は、前記ロッド型インテグレータの入射側に配置された2つのプリズムの間隔を調整することを含むことを特徴とする露光方法。 4.2 異議申立ての理由の概要 上記1.1に記載のとおり。 4.2.1 本件請求項6に係る発明と異議申立人キャノン株式会社が提出した甲第1号証〜甲第3号証との対比、判断 本件請求項6に係る発明が、異議申立されていない、「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系とを有し、前記入射角を可変にする光学系は、間隔が調整可能に設けられた第1及び第2プリズムを有する」構成(以下、「本件請求項6に係る発明の特徴的構成」という。)を有するのに対し、異議申立人キャノン株式会社が提出した甲1号証〜甲第3号証のいずれにも、上記本件請求項6に係る発明の特徴的構成の記載及びその記載を示唆する記載がない。 また、本件請求項6に係る発明は、上記本件請求項6に係る発明の特徴的構成を有することにより、甲1号証〜甲第3号証記載のいずれの発明にもない、本件特許明細書記載の効果を有する。 従って、本件請求項6に係る発明は、異議申立人キャノン株式会社が提出した甲第1号証記載の発明と同一ではなく、また、甲1号証〜甲第3号証に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。 4.2.2 本件請求項7に係る発明と異議申立人キャノン株式会社が提出した甲第1号証〜甲第3号証との対比、判断 本件請求項6を引用する本件請求項7に係る発明は、上記本件請求項6を判断した4.2.1と同様に、異議申立人キャノン株式会社が提出した甲第1号証記載の発明と同一ではなく、また、甲1号証〜甲第3号証に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。 4.2.3 本件請求項16に係る発明と異議申立人キャノン株式会社が提出した甲第1号証〜甲第3号証との対比、判断 本件請求項1〜15を引用する本件請求項16に係る発明において、本件請求項6及び7を引用する本件請求項16に係る発明は、上記本件請求項6を判断した4.2.1及び4.2.2と同様に、異議申立人キャノン株式会社が提出した甲第1号証記載の発明と同一ではなく、また、甲1号証〜甲第3号証に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。 また、本件請求項1〜5、8〜15を引用する本件請求項16に係る発明は、異議申立されていない構成を有するのに対し、異議申立人キャノン株式会社が提出した甲1号証〜甲第3号証のいずれにも、当該構成の記載及びその記載を示唆する記載がない。 また、本件請求項1〜5、8〜15を引用する本件請求項16に係る発明は、当該構成を有することにより、甲1号証〜甲第3号証記載のいずれの発明にもない、本件特許明細書記載の効果を有する。 従って、本件請求項16に係る発明は、異議申立人キャノン株式会社が提出した甲第1号証記載の発明と同一ではなく、また、甲1号証〜甲第3号証に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。 4.2.4 本件請求項17に係る発明と異議申立人キャノン株式会社が提出した甲第1号証〜甲第3号証との対比、判断 本件請求項17に係る発明が、異議申立されていない、「入射角を可変にする工程は、前記ロッド型インテグレータの入射側に配置された2つのプリズムの間隔を調整することを含むこと」構成(以下、「本件請求項17に係る発明の特徴的構成」という。)を有するのに対し、異議申立人キャノン株式会社が提出した甲1号証〜甲第3号証のいずれにも、上記本件請求項17に係る発明の特徴的構成の記載及びその記載を示唆する記載がない。 また、本件請求項17に係る発明は、上記本件請求項17に係る発明の特徴的構成を有することにより、甲1号証〜甲第3号証記載のいずれの発明にもない、本件特許明細書記載の効果を有する。 従って、本件請求項17に係る発明は、異議申立人キャノン株式会社が提出した甲第1号証記載の発明と同一ではなく、また、甲1号証〜甲第3号証に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。 5.むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項6、7、16及び17に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項6、7、16及び17に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 従って、本件請求項6、7、16及び17に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 投影露光装置及び露光方法並びに回路パターン形成方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 所定のパターンが形成されたレチクルを、照明光学系を通した光源からの照明光で照射し、前記パターンの像を投影光学系を介して感光基板上に結像する投影露光装置において、 前記照明光学系は、前記照明光を分割する光分割光学系と、該光分割光学系によって分割された各光束に対応した複数の面光源を前記レチクルに対するフーリエ面、もしくはその近傍での前記照明光学系の光軸から偏心した複数の位置に形成する多面光源形成光学系と、該多面光源形成光学系による複数の面光源からの光束を前記レチクルへ集光するコンデンサーレンズとを有し、 前記多面光源形成光学系は、少なくともロッド型オプティカルインテグレータを含むことを特徴とする投影露光装置。 【請求項2】 前記多面光源形成光学系は、前記照明光学系の光軸から偏心した複数の位置に各々の中心が配置される複数のロッド型オプティカルインテグレータを有することを特徴とする請求項1記載の投影露光装置。 【請求項3】 前記多面光源形成光学系は、前記光分割光学系により分割された光束を集光する第1集光レンズと、該集光レンズによる集光点に入射面が位置するロッド型オプティカルインテグレータと、該ロッド型オプティカルインテグレータからの光束を集光して複数の面光源を前記レチクルに対するフーリエ面、もしくはその近傍に形成する第2集光レンズとを有することを特徴とする請求項1記載の投影露光装置。 【請求項4】 光源からの照明光を照明光学系を通して所定のパターンが形成されたレチクルに照射し、前記パターンの像を投影光学系を介して感光基板上に結像する投影露光装置において、 前記照明光学系は、光源像を形成する第1集光光学系と、該第1集光光学系による光源像位置に入射面が位置決めされたロッド型オプティカルインテグレータと、該ロッド型オプティカルインテグレータからの光束を集光して面光源を前記レチクルに対するフーリエ面、もしくはその近傍に形成する第2集光光学系と、該面光源からの光束を前記レチクルへ集光するコンデンサー光学系とを有し、 前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間には、前記照明光学系の光軸を含む面内において光束を分割する光分割光学系が配置されており、 前記ロッド型インテグレータは、該光分割光学系により分割された光束に基づいて前記光軸に関して偏心した位置に前記面光源を形成することを特徴とする投影露光装置。 【請求項5】 前記光分割光学系は、V型の凹部を持つ第1のプリズムと、V型の凸部を持つ第2のプリズムとを有し、 前記偏心した面光源の位置を調整するために、前記第1および第2のプリズムの間隔は調整可能であることを特徴とする請求項4記載の投影露光装置。 【請求項6】 光源からの照明光を照明光学系を通して所定のパターンが形成されたマスクに照射し、前記パターンの像を投影光学系を介して感光基板上に結像する投影露光装置において、 前記照明光学系は、前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータと、前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置されて前記ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系とを有し、 前記入射角を可変にする光学系は 間隔が調整可能に設けられた第1及び第2プリズムを有することを特徴とする投影露光装置。 【請求項7】 前記入射角を可変にする光学系は、照明光学系の光軸から離れた位置に前記2次光源を形成することを特徴とする請求項6記載の投影露光装置。 【請求項8】 光源からの照明光を照明光学系を通して所定のパターンが形成されたマスクに照射し、前記パターンの像を投影光学系を介して感光基板上に結像する投影露光装置において、 前記照明光学系は、前記光源からの光を内面反射させるロッド型インテグレータと、前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置されて前記ロッド型インテグレータと協働して前記照明光学系の光軸から離れた位置に2次光源を形成するプリズム部材とを有することを特徴とする投影露光装置。 【請求項9】 前記プリズム部材と前記ロッド型インテグレータとの間に配置されて、前記プリズム部材からの光を集光する集光光学系をさらに有することを特徴とする請求項8記載の投影露光装置。 【請求項10】 前記ロッド型インテグレータの射出側面と前記マスクとを互いに共役にする光学系をさらに有することを特徴とする請求項8または9記載の投影露光装置。 【請求項11】 前記プリズム部材は、前記2次光源の前記光軸に対する位置をコントロールできるように構成されることを特徴とする請求項6記載の投影露光装置。 【請求項12】 前記プリズム部材は、錐型の凹部を持つ第1プリズムと、錐型の凸部を持つ第2プリズムとを有することを特徴とする請求項8、9または10記載の投影露光装置。 【請求項13】 前記第1プリズムと前記第2プリズムとの間の間隔は調整可能であることを特徴とする請求項12記載の投影露光装置。 【請求項14】 光源からの照明光を照明光学系を通してマスク上のパターンに照射し、前記パターンの像を投影光学系を介して感光基板上に結像する投影露光装置において、 前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータと、 前記2次光源の分布を変更するための手段とを有し、 前記分布を変更するための手段は、前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置され、かつ移動可能なプリズムを有することを特徴とする投影露光装置。 【請求項15】 光源からの照明光を照明光学系を通してマスク上のパターンに照射し、前記パターンの像を投影光学系を解して感光基板上に結像する投影露光装置において、 前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータと、 前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置されて、前記2次光源の分布を変更するための手段とを有し、 前記分布を変更するための手段は、互いに間隔可変なプリズムを有することを特徴とする投影露光装置。 【請求項16】 請求項1乃至15の何れか一項記載の投影露光装置の前記照明光学系を用いてマスクのパターンを照明する工程と、 該マスクのパターンの像を感光基板上に転写する工程とを含むことを特徴とする回路パターン形成方法。 【請求項17】 内面反射型のロッド型インテグレータを含む照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、 前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程と、 前記ロッド型インテグレータに入射する光の入射角を可変にする工程とを含み、 前記入射角を可変にする工程は、前記ロッド型インテグレータの入射側に配置された2つのプリズムの間隔を調整することを含むことを特徴とする露光方法。 【請求項18】 光源からの光を照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程とを含み、前記マスクを照明する工程は、前記光源からの光をプリズム部材へ導く工程と、該プリズム部材からの光を内面反射型のロッド型インテグレータへ導く工程と、 前記プリズム部材及び前記ロッド型インチグレータにより前記照明光学系の光軸から離れた位置に形成される2次光源からの光を前記マスクへ導く工程とを含むことを特徴とする露光方法。 【請求項19】 前記2次光源の位置をコントロールする工程をさらに含むことを特徴とする請求項18記載の露光方法。 【請求項20】 前記コントロールする工程では、前記マスクに応じて前記2次光源の位置をコントロールすることを特徴とする請求項19記載の露光方法。 【請求項21】 前記プリズム部材は第1及び第2プリズムを含み、前記コントロールする工程では前記第1及び第2プリズムの間隔を変更することを特徴とする請求項19または20記載の露光方法。 【請求項22】 光源からの光を照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程とを含み、 前記マスクを照明する工程は、前記光源からの光をプリズム部材へ導く工程と、該プリズム部材からの光を内面反射型のロッド型インテグレータへ導く工程と、該ロッド型インテグレータからの光を前記マスクへ導く工程とを含み、 前記プリズム部材を移動させて前記ロッド型インテグレータが形成する2次光源の分布の調整を行う工程をさらに含むことを特徴とする回路の形成方法。 【請求項23】 光源からの光を照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程とを含み、 前記マスクを照明する工程は、前記光源からの光をプリズム手段へ導く工程と、該プリズム手段からの光を内面反射型のロッド型インテグレータへ導く工程と、該ロッド型インテグレータからの光を前記マスクへ導く工程とを含み、 前記プリズム手段は、互いに間隔が調整可能な第1及び第2プリズムを含み、 前記間隔を調整して前記ロッド型インテグレータが形成する2次光源の分布の調整を行う工程をさらに含むことを特徴とする回路の形成方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、半導体集積回路又は液晶デバイス等のパターン形成に使用するパターンを投影露光する装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 半導体素子等の回路パターン形成には、一般にフォトリングラフ技術と呼ばれる工程が必要である。この工程には通常、レチクル(マスク)パターンを半導体ウエハ等の基板上に転写する方法が採用される。基板上には、感光性のフォトレジストが塗布されており、照射光像、すなわちレチクルパターンの透明部分のパターン形状に応じて、フォトレジストに回路パターンが転写される。投影露光装置(例えばステッパー)では、レチクル上に描画された転写すべき回路パターンの像が、投影光学系を介して基板(ウエハ)上に投影、結像される。 【0003】 また、レチクルを照明するための照明光学系中には、フライアイレンズ、ファイバー等のオプチカルインテグレーターが使用されており、レチクル上に照射される照明光の強度分布が均一化される。その均一化を最適に行なうためにフライアイレンズを用いた場合、レチクル側焦点面(射出面側)とレチクル面(パターン面)とはほぼフーリエ変換の関係で結ばれており、さらにレチクル側焦点面と光源側焦点面(入射面側)ともフーリエ変換の関係で結ばれている。従って、レチクルのパターン面と、フライアイレンズの光源側焦点面(正確にはフライアイレンズの個々のレンズの光源側焦点面)とは、結像関係(共役関係)で結ばれている。このため、レチクル上では、フライアイレンズの各光学エレメント(2次光源像)からの照明光がコンデンサーレンズ等を介することによってそれぞれ加算(重畳)されることで平均化され、レチクル上の照度均一性を良好とすることが可能となっている。 【0004】 従来の投影露光装置では、上述のフライアイレンズ等のオプチカルインテグレータ入射面に入射する照明光束の光量分布を、照明光学系の光軸を中心とするほぼ円形内(あるいは矩形内)でほぼ一様になるようにしていた。図9は上述の如き従来の投影露光装置(ステッパー)の概略的な構成を示しており、照明光束L140は照明光学系中のフライアイレンズ414、空間フィルター(開口絞り)S、及びコンデンサーレンズ9を介してレチクル10のパターン10aを照射する。ここで、空間フィルターSはフライアイレンズ414のレチクル側焦点面414a、すなわちレチクルパターン10aに対するフーリエ変換面F(以後、瞳面と略す)、もしくはその近傍に配置されており、投影光学系11の光軸AXを中心としたほぼ円形領域の開口を有し、瞳面内にできる2次光源(面光源)像を円形に制限する。こうしてレチクル10のパターン10aを通過した照明光は、投影光学系11を介してウエハ12のレジスト層に結像される。このとき、照明光学系(414、S、9)の開口数と投影光学系11のレチクル側開口数との比、いわゆるσ値は開口絞り(例えば空間フィルター5aの開口径)により決定され、その値は0.3〜0.6程度が一般的である。 【0005】 さて、照明光L140はレチクル10にパターニングされたパターン10aにより回折され、パターン10aからは0次回折光DO、+1次回折光DP、及び-1次回折光Dmが発生する。それぞれの回折光(DO、Dm、DP)は投影光学系11により集光され、ウエハ(基板)12上に干渉縞を発生させる。この干渉縞がパターン10aの像である。このとき、0次回折光DOと±1次回折光DP、Dmとのなす角θ(レチクル側)はsinθ=λ/P(λ:露光波長、P:パターンピッチ)により決まる。 【0006】 ところで、パターンピッチが微細化するとsinθが大きくなり、sinθが投影光学系11のレチクル側開口数(NAR)より大きくなると、±1次回折光DP、Dmは投影光学系11内の瞳(フーリエ変換面)Puの有効径で制限され、投影光学系11を透過できなくなる。このとき、ウエハ12上には0次回折光DOのみしか到達せず干渉縞は生じない。つまり、sinθ>NARとなる場合にはパターン10aの像は得られず、パターン10aをウエハ12上に転写することができなくなってしまう。 【0007】 以上のことから、今までの投影露光装置においては、sinθ=λ/P≒NARとなるピッチPは次式で与えられていた。 P≒λ/NAR (1) これより、最小パターンサイズはピッチPの半分であるから、最小パターンサイズは0.5・λ/NAR程度となるが、実際のフォトリソグラフィ工程においてはウエハの湾曲、プロセスによるウエハの段差等の影響、またはフォトレジスト自体の厚さのために、ある程度の焦点深度が必要となる。このため、実用的な最小解像パターンサイズは、k・λ/NARとして表される。ここで、kはプロセス係数と呼ばれ0.6〜0.8程度となる。レチクル側開口数NARとウエハ側開口数NAWとの比は、投影光学系の結像倍率と同じであるので、レチクル上における最小解像パターンサイズはk・λ/NAR、ウエハ上の最小パターンサイズは、k・λ/NAW=k・λ/B・NAR(但しBは結像倍率(縮小率))となる。 【0008】 従って、より微細なパターンを転写するためには、より短い波長の露光光源を使用するか、あるいはより開口数の大きな投影光学系を使用するかを選択する必要があった。もちろん、露光波長と開口数の両方を最適化する努力も考えられる。 しかしながら、上記の如き従来の投影露光装置において、照明光源を現在より短波長化(例えば200nm以下)することは、透過光学部材として使用可能な適当な光学材料が存在しない等の理由により現時点では困難である。また、投影光学系の開口数は、現状でも既に理論的限界に近く、これ以上の大開口化はほぼ望めない状態である。さらに、もし現状以上の大開口化が可能であるとしても、±λ/2NA2で表わされる焦点深度は開口数の増加に伴なって急激に減少し、実使用に必要な焦点深度がますます少なくなるという問題が顕著になってくる。 【0009】 また、レチクルの回路パターンの透過部分のうち、特定の部分からの透過光の位相を、他の透過部分からの透過光の位相よりπだけずらす、いわゆる位相シフトレチクルが、例えば特公昭62-50811号公報等で提案されている。この位相シフトレチクルを使用すると、従来よりも微細なパターンの転写が可能となる。 【0010】 ところが、位相シフトレチクルについては、その製造工程が複雑になる分コストも高く、また検査及び修正方法も未だ確立されていないので、多くの問題が残されている。そこで、位相シフトレチクルを使用しない投影露光技術として、レチクルの照明方法を改良することで転写解像力を向上させる試みがなされている。 その1つの照明方法は、例えば図9の空間フィルターSを輪帯状の開口にし、フーリエ変換面F上で照明光学系の光車由の回りに分布する照明光束をカットすることにより、レチクル10に達する照明光束に一定の傾斜を持たせるものである。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、照明光学系のフーリエ変換面内での照明光束分布を輪帯状にするような特殊な照明方法を採用すると、確かに通常のレチクルでも解像力の向上は認められるが、レチクルの全面に渡って均一な照度分布を保証することが難しくなるといった問題点が生じた。また、図9のように単に空間フィルター等のような部分的に照明光束をカットする部材を設けた系では、当然のことながらレチクル上、又はウエハ上での照明強度(照度)を大幅に低下させることになり、照明効率の低下に伴う露光処理時間の増大という問題に直面する。さらに、照明光学系中のフーリエ変換面には、光源からの光束が集中して通るため、空間フィルター等の遮光部材の光吸収による温度上昇が著しくなり、照明光学系の熱的な変動による性能劣化の対策(空冷等)も考える必要がある。 【0012】 本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、通常のレチクルを使用しても、高解像度かつ大焦点深度が得られるとともに、照度均一性の優れた投影露光装置を提供することを目的とする。 【0013】 【課題を解決するための手段】 本発明は、例えば図1に示す如く、照明光学系の光路中において、照明光を分割する光分割光学系4と、その光分割光学系4によって分割された各光束に対応した複数の面光源をレチクル10に対するフーリエ面、もしくはその近傍での照明光学系の光軸から偏心した複数の位置に形成する多面光源形成光学系(5a,5b,6a,6b,7a,7b)と、その多面光源形成光学系(5a,5b,6a,6b,7a,7b)による複数の面光源からの光束をレチクルへ集光するコンデンサーレンズ9とを有し、前記多面光源形成光学系(5a,5b,6a,6b,7a,7b)は、少なくともロッド型オプティカルインテグレータ(6a,6b)を含むようにしたものである。 【0014】 そして、上記の基本構成に基づいて、多面光源形成光学系は、照明光学系の光軸から偏心した複数の位置に各々の中心が配置される複数のロッド型オプティカルインテグレータを有するようにしても良い。 また、多面光源形成光学系は、光分割光学系により分割された光束を集光する第1集光レンズと、その集光レンズによる集光点に入射面が位置するロッド型オプティカルインテグレータと、そのロッド型オプティカルインテグレータからの光束を集光して複数の面光源をレチクルに対するフーリエ面、もしくはその近傍に形成する第2集光レンズとを有するようにしても良い。 また、本発明は、例えば図7に示す如く、光源(1)からの照明光を照明光学系を通して所定のパターンが形成されたマスク(10)に照射し、前記パターンの像を投影光学系(11)を介して感光基板(12)上に結像する投影露光装置において、前記照明光学系は、前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータ(71)と、前記光源と前記ロッド型インチグレータとの間に配置されて前記ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系(41,42,70)とを有し、前記入射角を可変にする光学系は 間隔が調整可能に設けられた第1及び第2プリズムを有するものである。 また、本発明は、例えば図1又は図7に示す如く、光源(1)からの照明光を照明光学系を通して所定のパターンが形成されたマスク(10)に照射し、前記パターンの像を投影光学系(11)を介して感光基板(12)上に結像する投影露光装置であって、前記照明光学系は、前記光源からの光を内面反射させるロッド型インテグレータ(6A,6B,71)と、前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置されて前記ロッド型インチグレータと協働して前記照明光学系の光軸から離れた位置に2次光源を形成するプリズム部材(41,42)とを有するものである。 また、本発明は、例えば図1及び図7に示す如く、光源(1)からの照明光を照明光学系を通してマスク(10)上のパターンに照射し、前記パターンの像を投影光学系(11)を介して感光基板(12)上に結像する投影露光装置であって、前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータ(6A,6B,71)と、前記2次光源の分布を変更するための手段(4)とを有し、前記分布を変更するための手段は、前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置され、かつ移動可能なプリズム(41,42)を有するものである。 また、本発明は、例えば図1及び図7に示す如く、光源(1)からの照明光を照明光学系を通してマスク(10)上のパターンに照射し、前記パターンの像を投影光学系(11)を介して感光基板(12)上に結像する投影露光装置であって、前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータ(6A,6B,71)と、前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置されて、前記2次光源の分布を変更するための手段(4)とを有し、前記分布を変更するための手段は、互いに間隔可変なプリズム(41,42)を有するものである。 また、本発明による露光方法は、内面反射型のロッド型インテグレータを含む照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程と、前記ロッド型インテグレータに入射する光の入射角を可変にする工程とを含み、前記入射角を可変にする工程は、前記ロッド型インテグレータの入射側に配置された2つのプリズムの間隔を調整することを含むものである。 また、本発明による露光方法は、光源からの光を照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程とを含み、前記マスクを照明する工程は、前記光源からの光をプリズム部材へ導く工程と、該プリズム部材からの光を内面反射型のロッド型インテグレータへ導く工程と、前記プリズム部材及び前記ロッド型インテグレータにより前記照明光学系の光軸から離れた位置に形成される2次光源からの光を前記マスクへ導く工程とを含むものである。 また、本発明は、光源からの光を照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程とを含む回路の形成方法であって、前記マスクを照明する工程は、前記光源からの光をプリズム部材へ導く工程と、該プリズム部材からの光を内面反射型のロッド型インテグレータへ導く工程と、該ロッド型インテグレータからの光を前記マスクへ導く工程とを含み、前記プリズム部材を移動させて前記ロッド型インテグレータが形成する2次光源の分布の調整を行う工程をさらに含むものである。 また、本発明は、光源からの光を照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程とを含む回路の形成方法であって、前記マスクを照明する工程は、前記光源からの光をプリズム手段へ導く工程と、該プリズム手段からの光を内面反射型のロッド型インテグレータへ導く工程と、該ロッド型インテグレータからの光を前記マスクへ導く工程とを含み、前記プリズム手段は、互いに間隔が調整可能な第1及び第2プリズムを含み、前記間隔を調整して前記ロッド型インテグレータが形成する2次光源の分布の調整を行う工程をさらに含むものである。 【0015】 【作用】 本発明による作用を図8を用いて説明する。図8中、多面光源形成光学系中の各面光源形成光学6a,6bを介した各々の光束は、第2集光レンズ7a,7bにより、これのレチクル側焦点距離f7位置の光軸AXと垂直な面F内において均一化された2つの面光源が形成される。この第2集光レンズ7a,7bは光軸AXに対する垂直な面内に並び、これより射出される光束は、コンデンサーレンズ9によりレチクル10に照射される。 【0016】 ここで、各多面光源形成光学系中の第2集光レンズ7a,7bの光軸は共に、光軸AXより離れた位置に存在している。また、各第2集光レンズ7a,7bのレチクル側焦点距離f7の位置の光軸AXと垂直な面は、レチクルパターン10aのフーリエ変換面Fとほぼ一致しているので、光軸AXと各第2集光レンズ7a,7bの光軸との距離は、各第2集光レンズ7a,7bを射出した光束のレチクル10への入射角に相当する。 【0017】 レチクル(マスク)上に描画された回路パターン10aは、一般に周期的なパターンを多く含んでいる。従って1つの第2集光レンズ7aからの照明光が照射されたレチクルパターン10aからは0次回折光成分DO及び±1次回折光成分DP、Dm、及びより高次の回折光成分が、パターンの微細度に応じた方向に発生する。 【0018】 このとき、照明光束(主光線)が傾いた角度でレチクル10に入射するから、発生した各次数の回折光成分も、垂直に照明された場合に比べ、傾き(角度ずれ)をもってレチクルパターン10aから発生する。図8中の照明光L130は、光軸に対してψだけ傾いてレチクル10に入射する。照明光L130はレチクルパターン10aにより回折され、光軸AXに対してψだけ傾いた方向に進む0次回折光DO、0次回折光に対してθPだけ傾いた+1次回折光DP、及び0次回折光DOに対してθmだけ傾いて進む-1次回折光Dmを発生する。しかしながら、照明光L130は両側テレセントリックな投影光学系11の光軸AXに対して角度ψだけ傾いてレチクルパターンに入射するので、0次回折光DOもまた投影光学系の光軸AXに対して角度ψだけ傾いた方向に進行する。 【0019】 従って、+1次光DPは光軸AXに対してθP+ψの方向に進行し、-1次回折光Dmは光軸AXに対してθm-ψの方向に進行する。このとき回折角θP、θmはそれぞれ sin(θP+ψ)-sinψ=λ/P (2) sin(θm-ψ)+sinψ=λ/P (3) である。 【0020】 ここでは、+1次回折光DP、-1次回折光Dmの両方が投影光学系11の瞳Puを透過しているものとする。レチクルパターン10aの微細化に伴って回折角が増大すると先ず角度θP+ψの方向に進行する+1次回折光DPが投影光学系10の瞳Puを透過できなくなる。すなわちsin(θP+ψ)>NARの関係になってくる。しかし照明光L130が光軸AXに対して傾いて入射している為、このときの回折角でも-1次回折光Dmは、投影光学系11を透過可能となる。すなわちsin(θm-ψ)<NARの関係になる。 【0021】 従って、ウエハ12上には0次回折光DOと-1次回折光Dmの2光束による干渉縞が生じる。この干渉縞はレチクルパターン10aの像であり、レチクルパターン10aが1:1のラインアンドスペースの時、約90%のコントラストとなってウエハ12上に塗布されたレジストに、レチクルパターン10aの像をパターニングすることが可能となる。 【0022】 このときの解像限界は、 sin(θm-ψ)=NAR (4) となるときであり、従って NAR+sinψ=λ/P P=λ/(NAR+sinψ) (5) が転写可能な最小パターンのレチクル側でのピッチである。 【0023】 一例として今sinψを0.5×NAR程度に定めるとすれば、転写可能なレチクル上のパターンの最小ピッチは P=λ(NAR+0.5NAR) =2λ/3NAR (6) となる。 【0024】 一方、図9に示したように、照明光の瞳F上での分布が投影光学系11の光軸AXを中心とする円形領域内である従来の露光装置の場合、解像限界は(1)式に示したようにP≒λ/NARであった。従って、従来の露光装置より高い解像度が実現できることがわかる。次に、レチクルパターンに対して特定の入射方向と入射角で露光光を照射して、0次回折光成分と1次回折光成分とを用いてウエハ上に結像パターンを形成方法によって、焦点深度も大きくなる理由について説明する。 【0025】 図8のようにウエハ12が投影光学系11の焦点位置(最良結像面)に一致している場合は、レチクルパターン10a中の1点を出てウエハ12上の一点に達する各回折光は、投影光学系11のどの部分を通るものであってもすべて等しい光路長を有する。このため従来のように0次回折光成分が投影光学系11の瞳面Puのほぼ中心(光軸近傍)を貫通する場合でも、0次回折光成分とその他の回折光成分とで光路長は相等しく、相互の波長収差も零である。しかし、ウエハ12が投影光学系11の焦点位置に一致していないデフォーカス状態の場合、斜めに入射する高次の回折光の光路長は光軸近傍を通る0次回折光に対して焦点前方(投影光学系11から遠ざかる方)では短く、焦点後方(投影光学系11に近づく方)では長くなりその差は入射角の差に応じたものとなる。従って、0次、1次、・・・の各回折光は相互に波面収差を形成して焦点位置の前後におけるボケを生じることとなる。 【0026】 前述のデフォーカスによる波面収差は、ウエハ12の焦点位置からのずれ量をΔF、各回折光がウエハ上の1点に入射するときの入射角θwの正弦をr(r=sinθw)とすると、ΔFr2/2で与えられる量である。(このときrは各回折光の、瞳面Puでの光軸AXからの距離を表わす。)従来の図9に示した投影露光装置では、0次回折光DOは光軸AXの近傍を通るので、r(0次)=0となり、一方±1次回折光DP、Dmは、r(1次)=M・λ/Pとなる(Mは投影光学系の倍率)。従って、0次回折光DOと±1次回折光DP、Dmとのデフォーカスによる波面収差は ΔF・M2(λ/P)2/2となる。 【0027】 一方、本発明における投影露光装置では、図8に示すように0次回折光成分DOは光軸AXから角度ψだけ傾いた方向に発生するから、瞳面Puにおける0次回折光成分の光軸AXからの距離はr(0次)=M・sinψである。一方、-1次回折光成分Dmの瞳面における光軸からの距離はr(-1次)=M・sin(θm-ψ)となる。そしてこのとき、sinψ=sin(θm-ψ)となれば、0次回折光成分DOと-1次回折光成分Dmのデフォーカスによる相対的な波面収差は零となり、ウエハ12が焦点位置より光軸方向に若干ずれてもパターン10aの像ボケは従来程大きく生じないことになる。すなわち、焦点深度が増大することになる。また、(3)式のように、sin(θm-ψ)+sinψ=λ/Pであるから、照明光束L130のレチクル10への入射角ψが、ピッチPのパターンに対して、sinψ=λ/2Pの関係にすれば焦点深度をきわめて増大させることが可能である。 【0028】 さらに、本発明は光源より発せられる照明光束を複数の光束に分割してコンデンサーレンズに導くために、光源からの光束を光量的にわずかの損失のみで利用して、上記の高解像、大焦点深度の投影露光方式を実現することができる。 【0029】 【実施例】 図1は本発明の第1実施例であって、光分割光学系として2個の多面体プリズムを使用したものである。水銀灯等の光源1より放射される照明光束は楕円鏡2で焦光され、インプットレンズ(コリメータレンズ)3によりほぼ平行光束となって光分割光学系4に入射する。ここでは光分割光学系4は、V型の凹部を持つ第1の多面体プリズム41と、V型の凸部を持つ第2の多面体プリズム42とで構成されている。これら2つのプリズムの屈折作用によって照明光束は2つの光束に分割される。そして、それぞれの光束は別々の第1の面光源形成光学系(5a,6a,7a)及び第2の面光源形成光学系(5b,6b,7b)に入射する。 【0030】 ここでは面光源形成光学系を2コとしたが、この数量は任意でよい。また、光分割光学系も、面光源形成光学系の個数に合わせて2分割とするものとしたが、多面光源形成光学系の個数に応じていくつに分割してもよい。例えば面光源形成光学系が4個より成れば、図2(a)及び(b)に示す如く、光分割光学系41、42はそれぞれ4角錐型(ピラミッド型)の凹部を有する第1の多面体プリズム41と、4角錐型(ピラミッド型)の凸部を有する第2の多面体プリズム42とより構成すればよい。 【0031】 各面光源形成光学系は、第1集光レンズ(5a,5b)と、ロッド型オプティカルインテグレータ(6a,6b)と、第2集光レンズ(7a,7b)とから構成され、まず光分割光学系4により2分割された各光束は、第1集光レンズ(5a,5b)により集光され、ロッド型オプティカルインテグレータ(6a,6b)に入射する。このロッド型オプティカルインテグレータ(6a,6b)は、四角柱状の棒状光学部材で構成され、この入射側面A2は、第1集光レンズ(5a,5b)の集光位置もくしはその近傍に配置され、楕円鏡2により形成される光源像位置A1と実質的に共役に配置されている。ロッド型オプティカルインテグレータ(6a,6b)を入射した光束はこれの内部で内面反射して射出面B1から射出するため、射出面側B1からの射出光は、あたかもこれの入射側面A2に複数の光源像(面光源)があるかの如く射出する。この事については特開平1-271718号公報に詳しい。 【0032】 ロッド型オプティカルインテグレータ(6a,6b)を射出した照明光はそれぞれ第2集光レンズ(7a、7b)により集光されて、このレンズ系の射出側(後側)焦点位置A3にそれぞれ2つの2次光源が形成され、ここには実質的に2つの面光源が形成される。この2次光源が形成される位置A3には、2つの開口を持つ開口絞り8が設けられており、この開口絞り8の各開口を介した各光束はコンデンサーレンズ9により集光されてレチクル10を所定の傾きで均一な傾斜照明する。 【0033】 レチクル10の下面には、所定の回路パターンが形成されており、傾斜照明によりレチクルのパターンを透過、回折した光は投影光学系11により集光結像され、ウエハ12上に、レチクル10のパターンの像を形成する。なお、図1に示した照明光学系中において、楕円鏡2による光源像A1,ロッド型オプティカルインテグレータ6a,6bの入射側面A2,第2集光レンズ7a,7bの射出側(後側)焦点位置A3は、投影光学系の入射瞳面Pu(開口絞り11a)と互いに共役に設けられており、換言すれば、A1,A2,A3は、物体面(レチクル10及びウエハ12)のフーリエ変換面となっている。また、ロッド型オプティカルインテグレータ6a,6bの射出側面B1は、物体面(レチクル10及びウエハ12)と互いに共役に設けられている。 【0034】 以上の如く、第1の面光源形成光学系(5a,6a,7a)及び第2の面光源形成光学系(5b,6b,7b)は光軸AXより離れた位置にあるため、レチクル10のパターン中で特定の方向及びピッチを有するパターンの投影像の焦点深度を極めて大きくすることが可能となっている。ただし、レチクル10のパターンの方向やピッチは、使用するレチクル10により異なることが予想される。従って各レチクル10に対して最適となるように、駆動系23により第1の面光源形成光学系(5a,6a,7a)及び第2の面光源形成光学系(5b,6b,7b)の位置等を変更可能としておくと良い。なお、駆動系23は主制御系22の動作命令により動作するが、このときの位置等の設定条件はキーボード等の入力手段24より入力する。あるいはバーコードリーダー21によりレチクル10上のバーコードパターンBCを読み、その情報に基づいて設定を行なってもよい。レチクル10上のバーコードパターンBCに、上記照明条件を記入しておいてもよいし、あるいは主制御系22は、レチクル名とそれに対応する照明条件を記憶(予め入力)しておき、バーコードパターンBCに記されたレチクル名と、上記記憶内容とを照合して、照明条件を決定してもよい。 【0035】 図3は、図1中の光分割光学系4(41,42)から第2集光レンズ7a,7bまでの拡大図である。ここでは、第1の多面体プリズム41と第2の多面体プリズム42との互いに対向する面は平行であるものとし、プリズム41の入射面とプリズム42の射出面とは光軸AXと垂直であるものとする。その第1の多面体プリズム41は保持部材43により保持され、第2の多面体プリズム42は保持部材44により保持される。各保持部材43、44はそれぞれ可動部材45a、45b、及び46a、46bにより保持され、固定部材47a、47b上を図中左右方向、すなわち光軸AXに沿った方向に可動となっている。この動作はモータ等の駆動部材48a、48b、49a、49bによって行なわれる。また、第1の多面体プリズム41と第2の多面体プリズム42は独立に移動可能であるので、2つのプリズムの間隔の変更により射出する2光束の間隔を光軸AXを中心として放射方向に変更することができる。 【0036】 多面体プリズム42から射出する複数の光束は、第1集光レンズ5a,5bに入射する。図3では第1の面光源形成光学系(5a,6a,7a)が保持部材50aに保持され、第2の面光源形成光学系(5b,6b,7b)が50bに保持されている。また、これらの保持部材50a,50bはそれぞれ可動部材51a、51bにより保持されている為に、固定部材52a、52bに対して可動となっている。この動作は駆動部材53a、53bによりおこなわれる。 【0037】 第1の面光源形成光学系(5a,6a,7a)と第2の面光源形成光学系(5b,6b,7b)とを一体に保持及び移動することにより、第1の面光源形成光学系(5a,6a,7a)と第2の面光源形成光学系(5b,6b,7b)の光学的な位置関係をずらすことなく、第2集光レンズ7a,7bから射出する光束の位置を光軸AXと垂直な面内で任意に変更することができる。尚、保持部材50a、50bより突き出た部材54a、54bは遮光板である。これにより、光分割光学系より発生する迷光を遮断し、不必要な光がレチクルへ達することを防止する。また、遮光版54a、54bが光軸AX方向に各々ずれていることにより、保持部材50a、50bの可動範囲の制限を少なくすることができる。 【0038】 図3中では、光分割光学系(多面体プリズム)41、42の光軸方向の間隔を変更することで、分割した各光束の位置を光軸AXに対して放射方向に変更可能としたが、各光束を光軸AXを中心とする同心円方向に変更することも可能である。さて、露光すべきレチクルパターンに応じて、これらの系をどのように最適にするかを説明する。第1の面光源形成光学系(5a,6a,7a)と第2の面光源形成光学系(5b,6b,7b)との各位置(光軸と垂直な面内での位置)は、転写すべきレチクルパターンに応じて決定(変更)するのが良い。この場合の位置決定方法は作用の項で述べた通り、各面光源形成光学系からの照明光束が転写すべきパターンの微細度(ピッチ)に対して最適な解像度、及び焦点深度の向上効果を得られるようにレチクルパターンに入射する位置(入射角ψ)とすればよい。 【0039】 そこで、各面光源形成光学系の位置決定の具体例を、図4、及び図5(A)、(B)、(C)、(D)を用いて説明する。図4は各面光源形成光学系の第2集光レンズ7a,7bから投影光学系11までの部分を模式的に表わす図であり、第2集光レンズ7a,7bのレチクル側焦点位置、即ち2次光源像が形成される位置が、レチクルパターン10aのフーリエ変換面Fと一致している。またこのとき両者をフーリエ変換の関係とならしめるコンデンサーレンズ9を一枚のレンズとして表わしてある。さらに、コンデンサーレンズ9の第2集光レンズ側(前側)主点から第2集光レンズのレチクル側(後側)焦点位置までの距離と、コンデンサーレンズ9のレチクル側(後側)主点からレチクルパターン10aまでの距離は共にfであるとする。 【0040】 図5(A)、(C)は共にレチクルパターン10a中に形成される一部分のパターンの例を表わす図であり、図5(B)は図5(A)のレチクルパターンの場合に最適な各面光源形成光学系の光軸(X7a,X7b)のフーリエ変換面F(投影光学系の瞳面)での位置を示し、図5(D)は図5(C)のレチクルパターンの場合に最適な各面光源形成光学系の位置(最適な各面光源形成光学系の光軸の位置)を表わす図である。 【0041】 図5(A)は、いわゆる1次元ラインアンドスペースパターンであって、透過部と遮光部が等しい幅でY方向に帯状に並び、それらがX方向にピッチPで規則的に並んでいる。このとき、個々の面光源形成光学系の最適位置は図5(B)に示すようにフーリエ変換面内に仮定したY方向の線分Lα上、及び線分Lβ上の任意の位置となる。図5(B)はレチクルパターン10aに対するフーリエ変換面Fを光軸AX方向から見た図であり、かつ、面F内の座標系X、Yは、同一方向からレチクルパターン10aを見た図5(A)と同一にしてある。 【0042】 さて、図5(B)において、光軸AXが通る中心Cから各線分Lα、Lβまでの距離α、βはα=βであり、λを露光波長としたとき、α=β=f・(1/2)・(λ/P)に等しい。この距離α・βをf・sinψと表わせれば、sinψ=λ/2Pであり、これは作用の項で述べた数値と一致している。従って、各面光源形成光学系の各光軸(各第2集光レンズのレチクル側焦点位置に夫々形成される2次光源像の光量分布の各重心)位置が線分Lα、Lβ上にあれば、図5(A)に示す如きラインアンドスペースパターンに対して、各面光源形成光学系からの照明光により発生する0次回折光と±1次回折光のうちのどちらか一方との2つの回折光は、投影光学系の瞳面Puにおいて光軸AXからほぼ等距離となる位置を通る。従って、図5(A)に示した1次元パターンの場合、図4に示した各面光源形成光学系の光軸(X7a,X7b)は、周期的なレチクルパターンの方向Xでの各面光源形成光学系の光軸間の距離の半分をL(α=β)、コンデンサーレンズ9の射出側(後側)の焦点距離をf、照明光の波長をλ、レチクルパターンの周期的なピッチをPとするとき、L=λf/2Pの関係をほぼ満足するように配置されることによって、ラインアンドスペースパターン(図5(A))に対する焦点深度を最大とすることができ、かつ高解像度を得ることができる。 【0043】 次に、図5(C)はレチクルパターンがいわゆる孤立スペースパターンである場合であり、パターンのX方向(横方向)ピッチがPx、Y方向(縦方向)ピッチがPyとなっている。図5(D)は、この場合の各面光源形成光学系の最適位置を表わす図であり、図5(C)との位置、回転関係は図5(A)、(B)の関係と同じである。図5(C)の如き、2次元パターンに照明光が入射するとパターンの2次元方向の周期性(X:Px、Y:Py)に応じた2次元方向に回折光が発生する。図5(C)の如き2次元パターンにおいても回折光中の±1次回折光のうちのいずれか一方と0次回折光とが投影光学系の瞳面Puにおいて光軸AXからほぼ等距離となるようにすれば、焦点深度を最大とすることができる。図5(C)のパターンではX方向のピッチはPxであるから、図5(D)に示す如く、α=β=f・(1/2)・(λ/Px)となる線分Lα、Lβ上に各面光源形成光学系の光軸があれば、パターンのX方向成分について焦点深度を最大とすることができる。同様に、r=ε=f・(1/2)・(λ/Py)となる線分Lγ、Lε上に各面光源形成光学系の光軸があれば、パターンY方向成分について焦点深度を最大とすることができる。 【0044】 以上、図5(B)、又は(D)に示した各位置に配置した面光源形成光学系からの照明光束がレチクルパターン10aに入射すると、0次光回折光成分DOと、+1次回折光成分DPまたは-1次回折光成分Dmのいずれか一方とが、投影光学系11内の瞳面Puでは光軸AXからほぼ等距離となる光路を通る。従って作用の項で述べたとおり、高解像及び大焦点深度の投影露光装置が実現できる。 【0045】 また、レチクルパターン10aが図5(D)の如く2次元の周期性パターンを含む場合、特定の1つの0次回折光成分に着目したとき、投影光学系の瞳面Pu上ではその1つの0次回折光成分を中心としてX方向(第1方向)に分布する1次以上の高次回折光成分と、Y方向(第2方向)に分布する1次以上の高次回折光成分とが存在し得る。そこで、特定の1つの0次回折光成分に対して2次元のパターンの結像を良好に行うものとすると、第1方向に分布する高次回折光成分の1つと、第2方向に分布する高次回折光成分の1つと、特定の0次回折光成分との3つが、瞳面Pu上で光軸AXからほぼ等距離に分布するように、特定の0次回折光成分(1つの面光源形成光学系)の位置を調節すればよい。例えば、図5(D)中で面光源形成光学系の光軸位置を点Pζ、Pη、Pκ、Pμのいずれかと一致させるとよい。点Pζ、Pη、Pκ、Pμはいずれも線分LαまたはLβ(X方向の周期性について最適な位置、すなわち0次回折光とX方向の±1次回折光の一方とが投影光学系瞳面Pu上で光軸からほぼ等距離となる位置)及び線分Lγ、Lε(Y方向の周期性について最適な位置)の交点であるためX方向、Y方向のいずれのパターン方向についても最適な光源位置となる。 【0046】 特に、図5(C)の如き2次元の周期性パターンの場合において最もバランスの良い最適な傾斜照明を達成するには、図5(D)に示す如きフーリエ変換面F上の点Pζ、Pη、Pκ、Pμの4つの位置に各々の2次光源像(面光源)の中心を位置されることが好ましい。このための好適な構成としては、図1の光分割光学系4を図2に示す如き四角錐型(ピラミッド型)の凹部を有する第1の多面体プリズムと、四角錐型(ピラミッド型)の凸部を有する第2の多面体プリズムとで構成して、この光分割光学系4により4分割される光束の数に対応する4つの面光源形成光学系を並列的に設けることが良い。このとき、図5(D)に示す如きフーリエ変換面F上の点Pζ、Pη、Pκ、Pμの4つの位置に各面光源形成光学系の光軸を一致されることが肝要である。 【0047】 そして、この構成の場合、コンデンサーレンズ9の射出側(後側)の焦点距離をf、照明光の波長をλ、周期的なレチクルパターンのX方向に対応する方向での各面光源形成光学系の光軸間の距離の半分をLx(α=β)、周期的なレチクルパターンのX方向に対応する方向での各面光源形成光学系の光軸間の距離の半分をLy(γ=ε)、レチクルパターンのX方向での周期的なピッチをPx、レチクルパターンのY方向での周期的なピッチをPyとするとき、Lx=λf/2Px及びLy=λf/2Pyの関係を満足するように4つの面光源形成光学系の光軸を配置すれば良い。 【0048】 また、図5(C)に示した2次元パターンの各方向での周期的なピッチが等しく(Px=Py=P)、しかも上述の如く面光源形成光学系を4つで構成した場合、フーリエ変換面Fの大きさを最大限利用(投影光学系の開口数NAを最大限利用)した最もバランスの良い傾斜照明を達成するには、各周期的なレチクルパターン方向X,Yでの各面光源形成光学系の光軸間の距離の半分をL(α=β=γ=ε)、コンデンサーレンズ9の射出側(後側)の焦点距離をf、照明光の波長をλ、レチクルパターンの周期的なピッチをPとするとき、L=λf/2Pの関係をほぼ満足するように4つの面光源形成光学系の光軸を配置することが望ましい。 【0049】 また、この場合において、投影光学系のレチクル側の開口数をNAR、周期的なレチクルパターンの各方向に対応する方向での各面光源形成光学系の光軸間の距離の半分をL(α=β=γ=ε)、コンデンサーレンズ9の射出側(後側)の焦点距離をfとするとき、 0.35NAR≦L/f≦0.7NAR の関係を満足するように4つの面光源形成光学系の光軸を配置することが好ましい。この関係式の下限を越えると、傾斜照明による効果が薄れてしまい、仮に傾斜照明をしたとしても大きな焦点深度を維持しつつ高解像度を達成することは困難となる。逆に、上記の関係式の上限を越えると、フーリエ面上に形成される分離光源からの光束が投影光学系を通過できなくなるため好ましくない。 【0050】 以上、レチクルパターン10aとして図5(A)、又は(C)に示した2例のみを考えたが、他のパターンであってもその周期性(微細度)に着目し、そのパターンからの+1次回折光成分または-1次回折光成分のいずれか一方と0次回折光成分との2光束が、投影光学系内の瞳面Puでは光軸AXからほぼ等距離になる光路を通るような位置に各面光源形成光学系の光軸を配置すればよい。 【0051】 また、図5(A)、(C)のパターン例は、ライン部とスペース部の比(デューティ比)が1:1のパターンであった為、発生する回折光中では±1次回折光が強くなる。このため、±1次回折光のうちの一方と0次回折光との位置関係に着目したが、パターンがデューティ比1:1から異なる場合等では他の回折光、例えば±2次回折光のうちの一方と0次回折光との位置関係が、投影光学系瞳面Puにおいて光軸AXからほぼ等距離となるようにしてもよい。 【0052】 尚、以上において2次元パターンとしてレチクル上の同一箇所に2次元の方向性を有するパターンを仮定したが、同一レチクルパターン中の異なる位置に異なる方向性を有する複数のパターンが存在する場合にも上記の方法を適用することができる。レチクル上のパターンが複数の方向性又は微細度を有している場合、フライアイレンズ群の最適位置は、上述の様にパターンの各方向性及び微細度に対応したものとなるが、或いは各最適位置の平均位置に各面光源形成光学系の光軸を配置してもよい。また、この平均位置は、パターンの微細度や重要度に応じた重みを加味した荷重平均としてもよい。 【0053】 また、各面光源形成光学系を射出した光束の0次光成分は、それぞれウエハに対して傾いて入射する。このときこれらの傾いた入射光束(複数)の光量重心の方向がウエハに対して垂直でないと、ウエハ12の微小デフォーカス時に、転写像の位置がウエハ面内方向にシフトするという問題が発生する。これを防止する為には、各面光源形成光学系からの照明光束(複数)の結像面、もしくはその近傍の面上での光量重心の方向は、ウエハと垂直、すなわち光軸AXと平行であるようにする。 【0054】 つまり、投影光学系11の光軸AXを基準とした各面光源形成光学系の光軸のフーリエ変換面内での位置ベクトルと、各面光源形成光学系から射出される光量との積のベクトル和が零になる様にすればよい。尚、以上の系において、各動作部にはエンコーダ等の位置検出器を備えておくと良い。図1中の主制御系22または駆動系23は、これらの位置検出器からの位置情報を基に各構成要素の移動、回転、交換を行なう。 【0055】 次に、第2実施例について図6を参照しながら説明する。第1実施例を示す図1と同じ機能を持つ部材には同じ符号を付している。本実施例が第1実施例と異なる所は、第1集光レンズ5a,5bの代わりに、フライアイレンズ60a,60bを配置した点である。図6に示す如く、水銀灯等の光源1より放射される照明光束は楕円鏡2で焦光され、インプットレンズ(コリメータレンズ)3によりほぼ平行光束となって光分割光学系4にて2分割される。この2分割された平行光束は、矩形状断面(例えば正方形状断面)の棒状レンズ素子の集合体でなるフライアイレンズ60a,60bに入射し、これの射出側面A2もしくはこれの近傍で集光され、複数の点光源が各々形成される。ここには、実質的に2次光源としての面光源が形成される。フライアイレンズ60a,60bの射出側面A2にロッド型オプティカルインテグレータ6a,6bの入射側面が近接して設けられている。従って、ロッド型オプティカルインテグレータ6a,6bの入射側面は、楕円鏡2により形成される光源像位置A1と実質的に共役に配置されている。このロッド型オプティカルインテグレータ6a,6bは、四角柱状の棒状光学部材で構成され、前述した如く、これに入射した光束はこれの内部で内面反射して射出面B1から射出するため、射出面側B1からの射出光は、あたかもこれの入射側面A2に複数の光源像(面光源)があるかの如く射出する。 【0056】 そして、ロッド型オプティカルインテグレータ6a,6bを射出した照明光はそれぞれ集光レンズ7a、7bにより集光されて、このレンズの射出側焦点位置A3には、光軸AXから偏心した位置に3次光源としての2つの面光源像が形成される。従って、フライアイレンズ60a,60bの射出側面での光束の照度分布はこれの積分効果により均一化され、さらにロッド型オプティカルインテグレータ6a,6bと集光レンズ7a、7bとにより集光レンズ7a、7bの射出側焦点位置A3での光束の照度分布は、さらに均一化される。 【0057】 この3次光源としての2つの面光源が形成される位置A3には、2つの開口を持つ開口絞り8が設けられており、この開口絞り8の開口を介した各光束は、コンデンサーレンズ9により集光されてレチクル10を所定の傾きで均一な傾斜照明する。レチクル10の下面には、所定の回路パターンが形成されており、傾斜照明によりレチクルのパターンを透過、回折した光は投影光学系11により集光結像され、ウエハ12上に、レチクル10のパターンの像を形成する。 【0058】 以上の如く、第1の面光源形成光学系(60a,6a,7a)及び第2の面光源形成光学系(60b,6b,7b)は光軸AXより離れた位置にあるため、レチクル10のパターン中で特定の方向及びピッチを有するパターンの投影像の焦点深度を極めて大きくすることが可能となっている。なお、図6に示した照明光学系中において、楕円鏡2による光源像A1,フライアイレンズ60a,60bの射出側面(ロッド型オプティカルインテグレータ6a,6bの入射側面)A2,第2集光レンズ7a,7bの射出側焦点位置A3は、投影光学系の入射瞳面Pu(開口絞り11a)と互いに共役に設けられており、換言すれば、A1,A2,A3は、物体面(レチクル10及びウエハ12)のフーリエ変換面となっている。また、フライアイレンズ60a,60bの入射側面B11,ロッド型オプティカルインテグレータ6a,6bの射出側面B1は、物体面(レチクル10及びウエハ12)と互いに共役に設けられている。 【0059】 また、図6に示した第2実施例では、光分割光学系4で光束を2分割した例を示したがこれに限ることなく、図2に示したプリズムを用いると共に、そのプリズムのレチクル側に面光源形成光学系を4つ並列的に配置して、フーリエ変換面に4つの面光源を形成する構成としても良い。次に、第3実施例について図7を参照しながら説明する。第1実施例を示す図1と同じ機能を持つ部材には同じ符号を付している。本実施例が第1実施例と異なる所は、第1の面光源形成光学系(60a,6a,7a)及び第2の面光源形成光学系(60b,6b,7b)と等価な機能を、1つの光学系(第1集光レンズ70,ロッド型オプティカルインテグレータ71,第2集光レンズ72)に持たせた点である。 【0060】 図7に示す如く、水銀灯等の光源1より放射される照明光束は楕円鏡2で焦光され、インプットレンズ(コリメータレンズ)3によりほぼ平行光束となって光分割光学系4にて2分割される。この2分割された平行光束は、第1集光レンズ70によりこれの射出側(後側)焦点位置に集光される。この集光点位置A2には、ロッド型オプティカルインテグレータ71の入射側面が位置しており、これの入射側面は、楕円鏡2により形成される光源像位置A1と実質的に共役に配置されている。 【0061】 そして、前述した如く、ロッド型オプティカルインテグレータ71に入射した光束はこれの内部で内面反射して射出面B1から射出するため、射出面側B1からの射出光は、あたかもこれの入射側面A2に複数の光源像(面光源)があるかの如く射出し、第2集光レンズ72により集光されて、このレンズ72の射出側(後側)焦点位置A3には2次光源としての互いに分離した(光軸AXから等しい距離だけ偏心した)2つの面光源像が形成される。これは、光分割光学系4によりロッド型オプティカルインテグレータ71に入射する各光は分離された状態で互いに等しい角度で入射するためである。 【0062】 さて、この2次光源としての2つの面光源像が形成される位置A3には、2つの開口を持つ開口絞り8が設けられており、この開口絞り8を介した各光束は、コンデンサーレンズ9により集光されてレチクル10を所定の傾きで均一な傾斜照明する。そして、レチクル10の下面には、所定の回路パターンが形成されており、傾斜照明によりレチクルのパターンを透過、回折した光は投影光学系11により集光結像され、ウエハ12上に、レチクル10のパターンの像を形成する。 【0063】 以上の如く、多面光源形成光学系(70,71,72)により形成される2つの面光源(2次光源)の重心位置は各々光軸AXより離れた位置にあるため、レチクル10のパターン中で特定の方向及びピッチを有するパターンの投影像の焦点深度を極めて大きくすることが可能となっている。本実施例では、光分割光学系4を構成する2つの多面体プリズム41,42との空気間隔を変化させるだけで、ロッド型オプティカルインテグレータ71の入射側面A2に入射する分割光の入射角を可変にできる。このため、第2集光レンズ72の射出側(後側)焦点位置A3上に形成される2次光源像の光軸Axに対する位置をコントロールできる。 【0064】 なお、図7に示した照明光学系中において、楕円鏡2による光源像A1,ロッド型オプティカルインテグレータ71の入射側面A2,第2集光レンズ72の射出側焦点位置A3は、投影光学系の入射瞳(開口絞り11a)と互いに共役に設けられており、換言すれば、A1,A2,A3は、物体面(レチクル10及びウエハ12)のフーリエ変換面となっている。また、ロッド型オプティカルインテグレータ71の射出側面B1は、物体面(レチクル10及びウエハ12)と互いに共役に設けられている。 【0065】 また、図7に示した第3実施例では、光分割光学系4で光束を2分割した例を示したがこれに限ることなく、図2に示したプリズムを用いて、フーリエ変換面に4つの面光源を形成する構成としても良い。ところで、図1,図6,図7に示した各実施例では、各多面光源形成光学系により形成される2次的もしくは3次的な複数の面光源位置に設けられた可変開口絞り8は、口径を変化させることにより、光源像の大きさを可変としている。従って、投影光学系の瞳面上に形成される光源像の大きさをコントロールすることにより、適切なσ値の下で最適な傾斜照明が達成できる。 【0066】 ここで、各多面光源形成光学系により形成される面光源像の大きさは、射出する各光束の1つあたりの開口数(レチクル上の角度分布の片幅)が、投影光学系のレチクル側開口数に対して0.1から0.3倍程度であるとよい。これは0.1倍以下では転写パターン(像)の忠実度が低下し、0.3倍以上では、高解像度かつ大焦点深度の効果が薄らぐからである。 【0067】 なお、可変開口絞りの代わりに複数の異なる口径を円板上に設けこれを適宜回転される所謂、ターレット方式等により光源像の大きさを変化させて最適なσ値に変更しても良い。また、図1,図6及び図7に示した各実施例では、水銀灯等の光源1を楕円鏡2で集光し、インプットレンズ3で平行光束としている構成としているが、エキシマ等の平行光束を供給するレーザー等を光源を使用し、このレーザーからの平行光束を光分割光学系4に入射させる構成としても良い。特に、図6に示す第2実施例の場合、フライアイレンズ60a,60bの射出側面A2に形成される光源像は実質的に大きさのない点光源が形成されるためフライアイレンズ60a,60bの射出側面A2の形状を平面としても良い。しかもエキシマレーザー等の出力の高い光源を使用した場合にはフライアイレンズ60a,60bの射出側面A2には光エネルギーが集中するため、フライアイレンズ60a,60bの耐久性を維持するには、それの入射側面B1の焦点位置がその射出側面A1より外側の空間上に位置するように構成することが良い。 【0068】 【発明の効果】 以上、本発明によれば、通常の透過及び遮光パターンから成るレチクルを使用しながら、従来より高解像度かつ大焦点深度の投影露光装置を実現することが可能である。しかも本発明によれば、すでに半導体生産現場で稼動中の投影露光装置の照明光学系の1部分を替えるだけで良く、稼動中の装置の投影光学系をそのまま利用してそれまで以上の高解像度化、すなわち大集積化が可能となる。 【0069】 また、光分割光学系は照明光束を効率良く導くために、照明光量も従来の装置に比べて大きく損失することはない。従って、露光時間の増大もほとんどなく、その結果処理能力(スループット)の低下もない。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1実施例による投影露光装置の構成を示す図。 【図2】光分割光学系の1例を示す斜示図。 【図3】図1中の照明光学系の1部を示す図。 【図4】多面光源形成光学系の照明光学系内での配置の原理を示す図。 【図5】多面光源形成光学系の配置方法を説明する図。 【図6】本発明の第2実施例による投影露光装置の構成を示す図。 【図7】本発明の第3実施例による投影露光装置の構成を示す図。 【図8】本発明の原理を説明するための装置構成を示す図。 【図9】従来の投影露光装置での投影原理を説明する図。 【主要部分の符号の説明】 1・・・光源 2・・・楕円鏡 3・・・インプットレンズ 4・・・光分割光学系 5a、5b、70・・・第1集光レンズ 6a、6b、71・・・ロッド型オプティカルインテグレータ 7a、7b、72・・・第2集光レンズ 9・・・コンデンサーレンズ 10・・・レチクル 11・・・投影レンズ 12・・・ウエハ 60a、60b・・・フライアイレンズ |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 訂正事項a〜cは、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とし、訂正事項dは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項a 特許明細書の請求項8及び19を削除し、請求項9〜18を請求項8〜17に繰り上げ、また、請求項請求項20〜25を請求項18〜23に繰り上げ、引用する請求項を繰り上げる。 請求の範囲対応表 特許時の請求の範囲 訂正後の請求の範囲 2 2 3 3 4 4 5 5 6 6 7 7 8 削除 9 8 10 9 11 10 12 11 13 12 14 13 15 14 16 15 17 16 18 17 19 削除 20 18 21 19 22 20 23 21 24 22 25 23 訂正事項b 特許明細書の請求項6の「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系とを有すること」を、「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系とを有し、 前記入射角を可変にする光学系は、間隔が調整可能に設けられた第1及び第2プリズムを有すること」と訂正する。 訂正事項c 特許明細書の請求項18の「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする工程とを含むこと」を、「ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする工程とを含み、 前記入射角を可変にする工程は、前記ロッド型インテグレータの入射側に配置された2つのプリズムの間隔を調整することを含むこと」と訂正する。 訂正事項d 特許明細書の【0014】段落の「また、本発明は、例えば図7に示す如く、光源(1)からの照明光を照明光学系を通して所定のパターンが形成されたマスク(10)に照射し、前記パターンの像を投影光学系(11)を介して感光基板(12)上に結像する投影露光装置において、前記照明光学系は、前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータ(71)と、前記光源と前記ロツド型インテグレータとの間に配置されて前記ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系(41、42、70)とを有するものである。」を、「また、本発明は、例えば図7に示す如く、光源(1)からの照明光を照明光学系を通して所定のパターンが形成されたマスク(10)に照射し、前記パターンの像を投影光学系(11)を介して感光基板(12)上に結像する投影露光装置において、前記照明光学系は、前記光源からの光を内面反射させることにより2次光源を形成するロッド型インテグレータ(71)と、前記光源と前記ロッド型インテグレータとの間に配置されて前記ロッド型インテグレータへ入射する光の入射角を可変にする光学系(41,42,70)とを有し、前記入射角を可変にする光学系は、間隔が調整可能に設けられた第1及び第2プリズムを有するものである。」と訂正する。 【0014】段落の「また、発明による露光方法は、内面反射型のロッド型インテグレータを含む照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程と、前記ロッド型インテグレータに入射する光の入射角を可変にする工程とを含むものである。」を、「また、本発明による露光方法は、内面反射型のロッド型インテグレータを含む照明光学系を用いて所定のパターンが形成されたマスクを照明する工程と、前記マスクの前記パターンの像を感光基板に露光する工程と、前記ロッド型インテグレータに入射する光の入射角を可変にする工程とを含み、前記入射角を可変にする工程は、前記ロッド型インテグレータの入射側に配置された2つのプリズムの間隔を調整することを含むものである。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-10-10 |
出願番号 | 特願平3-258049 |
審決分類 |
P
1
652・
113-
YA
(H01L)
P 1 652・ 121- YA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 國島 明弘、岩本 勉 |
特許庁審判長 |
高橋 美実 |
特許庁審判官 |
綿貫 章 辻 徹二 |
登録日 | 2000-06-09 |
登録番号 | 特許第3074843号(P3074843) |
権利者 | 株式会社ニコン |
発明の名称 | 投影露光装置及び露光方法並びに回路パターン形成方法 |
代理人 | 高梨 幸雄 |
代理人 | 渡辺 隆男 |
代理人 | 渡辺 隆男 |