ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 G02B 審判 全部申し立て 2項進歩性 G02B 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 G02B |
---|---|
管理番号 | 1054875 |
異議申立番号 | 異議2000-74117 |
総通号数 | 28 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-05-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-11-14 |
確定日 | 2001-11-19 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3040267号「再帰反射性シートの製造方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3040267号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)手続きの経緯 本件特許第3040267号発明は、平成4年10月23日に出願され、平成12年3月3日にその発明の特許がなされ、その後、紀和化学工業 株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年9月11日に訂正請求がなされたものである。 (2)訂正の適否についての判断 (i)発明の詳細な説明の訂正 ア.明細書の段落【0024】の『ここで「剪断応力S」は、JIS K-7199に記載された流れ試験法によって測定された値である。』を『本発明において、「剪断応力S」は、JIS K-7199に記載された流れ特性試験法によって、温度180℃、押し出し速度5mm/分にて測定されたときの補正値である。』と訂正する。 (ii)訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否等 上記訂正(i)は、発明の詳細な説明の欄中の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、新規事項の追加もない。 (iii)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する平成6年法律第116号による改正前の第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 (3)特許異議の申立てについての判断 ア.申立ての理由の概要 申立人紀和化学工業 株式会社は、証拠として甲第1号証(特開昭60-194405号公報)、甲第2号証(特開平2-196653号公報)、甲第3号証(日本工業規格JIS K7199(1999))を提出し、訂正前の請求項1〜5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべき旨主張し、また、記載不備があるから、訂正前の請求項1〜5に係る発明及び特許明細書は、特許法第36条の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。 イ.判断 [引用刊行物に記載された発明] 訂正前明細書の請求項1〜5に対して、当審が通知した取消理由で引用した刊行物1(特開昭60-194405号公報)には、「支持フイルム上に一層に並ぶガラスビーズの金属蒸着膜で被覆されたほぼ下半球面を埋設して支持し、露呈したガラスビーズ表面側に設けた透明な保護フイルムと上記支持フイルムとの間には支持フイルムの部分的溶融成形により形成した連続線状の連結壁によつて隔離された多数の密封小区画空室を構成してなる再帰反射シートにおいて、上記支持フイルムは少くともガラスビーズに接する上層側と反対側の下層側とを含み、この上層側は下層側よりも保護フイルムへの接着力が大きく、下層側は上層側よりも凝集力の大きい相互に異なる組成からなることを特徴とする再帰反射シート」(特許請求の範囲第1項)、「支持フイルムは常温固体で熱可塑性であり加熱によつて連結壁の成形が可能な流動状態となるが成形後に常温で架橋されて硬化する性質の材料を硬化してなるものであることが望ましい。」(第5頁左下欄第6〜9行)、「支持フイルムの上層側5Aを溶融成形時に溶融粘度が低い組成のものとし、下層側5Bを殆んど溶融しない組成のものとし、これらの互いに異なる性質のものを一体的に組合わせて支持フイルムとしたところに一つの大きな特徴がある。」(第6頁左上欄第3〜8行)、「連結壁6は公知の方法により170℃でプレス成形される。その線状に連続した連結壁による表面模様は第5図に示すとおりである。」(第8頁左上欄第13〜15行)、「製法上は連結壁6形成のための加熱成形温度を200℃としている。」(第8頁左下欄第16〜17行)、「支持フイルムの材料も別に常温硬化型のポリマ材料であることを要せず、熱その他の通常の手段により硬化するものであればよいが、上層側と下層側の物性は必ず異ならせる必要がある。」(第9頁左下欄第16〜20行)、「人為的な力又は経時変化による劣化に由来する連結壁部分の界面破壊ないし凝集破壊に対して一体となつて強い抵抗を示し、加熱による収縮変形を顕著に改善防止する。」(第10頁右上欄第7〜10行)、及び「なお、本発明の反射シートの好適例における製造方法によるときは、支持フイルム材料が常温で硬化するから、電子線照射、紫外線照射ないし長時間の熱線照射に用いる装置を一切不要とし、連結壁が加熱成形された後に何らの特別の工程を要しない点も製造上有利である。」(第11頁左欄第1〜6行)との記載があり、結局、上側層5Aと下側層5Bとからなり、そして該上側層5Aに再帰反射性ガラスビーズが実質的に単層で且つガラスビーズの少なくとも非反射性部分が露呈するように埋設されている支持フイルム5のガラスビーズ上に、光透過性保護フイルムを配置し、ガラスビーズ間の上側層5A表面に保護フイルムが接触しない状態を保持しつつ、加熱、加圧下に該支持フイルム5を部分的に熱変形させて該支持フイルムの上側層5Aを部分的に保護フイルムに接着させることにより再帰反射シートを製造する方法において、該支持フイルム5の下側層5Bが、成形後に常温で架橋されて硬化する架橋性樹脂よりなる再帰反射性シートの製造方法が記載されている。 同じく引用した刊行物2(特開平2-196653号公報)には、「一層に並ぶガラスビーズの金属蒸着膜で被覆されたほぼ下半球面が埋設されたバインダー層と、このバインダー層に接してガラスビーズの反対側に設けられたサポート層とを含み、露呈したガラスビーズ表面側に設けた透明な合成樹脂からなる保護フィルムと該バインダー層との間には支持フィルムの部分的加熱成形により形成した連続線状の連結壁によって隔離された多数の密封小区画空室を構成してなる再帰反射シートにおいて、・・・、該サポート層は硬化性樹脂を主成分として形成されることを特徴とする再帰反射シート。」(特許請求の範囲第1項)、「また下層は半架橋状態において支持フィルムの溶融成形、保護フィルムとの接着を行う。したがって上記改良カプセル型反射シートの目的を達成するためには、上層が未架橋状態でかつ下層がすでに半架橋状態に入っているタイミングを見計らって支持フィルムのエンボス加工を行わねばならず、」(第3頁左上欄第3〜9行)、「また、支持フィルムの溶融成形時に連結壁の脚部が伸びすぎて薄くなることを防止するためには、溶融成形時において、下層は上記半架橋状態の中でも後期すなわち架橋状態に近い半架橋状態にあることがもっとも好ましい。」(第3頁左上欄第16〜20行)、「サポート層を形成する硬化性樹脂が半架橋状態にある間にいつでもエンボス加工を行えばよいのである。」(第4頁左上欄末行〜右上欄第2行)、「170℃の温度の下で保護フィルムに対しエンボス加工し、連結壁を形成する。」(第7頁左上欄第14〜16行)、及び「エンボステストによれば、常温で1日放置後でも14日放置後でもバインダー層のエンボスは可能であり、保護フィルムへの接着力も充分であった。」(第7頁右下欄第13〜16行)との記載があり、 同じく引用した刊行物3(日本工業規格JIS K7199(1999))には、プラスチック-キャピラリーレオメータ及びスリットダイレオメータによるプラスチックの流れ特性試験方法の記載がある。 <29条第2項の違反について> 〔本件請求項1に係る発明〕 本件請求項1に係る発明と、上記刊行物1に記載された発明とを、対比すると、本件請求項1に係る発明の「バインダー層」、「補強層」、「支持体シート」は、それぞれ、上記刊行物1に記載された発明の「上側層5A」、「下側層5B」、「支持フイルム5」に相当するから、両者は、バインダー層と補強層とからなり、そして該バインダー層に再帰反射性ガラスビーズが実質的に単層で且つガラスビーズの少なくとも非反射性部分が露呈するように埋設されている支持体シートのガラスビーズ上に、光透過性保護フイルムを配置し、ガラスビーズ間のバインダー層表面に保護フイルムが接触しない状態を保持しつつ、加熱、加圧下に該支持体シートを部分的に熱変形させて該支持体シートのバインダー層を部分的に保護フイルムに接着させることにより再帰反射シートを製造する方法において、該支持体シートの補強層が、架橋性樹脂よりなる再帰反射性シートの製造方法で一致し、 A補強層が、本件請求項1に係る発明は、熱変形前において6×106〜1.2×107dyne/cm2の範囲内の剪断応力Sを有するのに対して、刊行物1に記載された発明は、そのような記載が無い点、 B架橋性樹脂が、本件請求項1に係る発明は、該支持体シートの熱変形前においてその架橋反応が実質的に完結した状態にあるのに対して、刊行物1に記載された発明は、成形後に常温で架橋されて硬化する点で相違する。 そこで、上記相違点A,Bが、上記刊行物2に開示されているか否かを検討すると、上記刊行物2には、いずれの点も開示されていない。 本件請求項1に係る発明は、これらの構成を有することによって、明細書記載の作用効果を奏するものであるから、上記各刊行物のいずれかに記載された発明であるとも、上記各刊行物に基づいて、当業者が容易に推考できたものであるとも言えない。 〔本件請求項2〜5に係る発明〕 本件請求項2〜5に係る発明は、本件請求項1〜4に係る発明の構成の一部をさらに限定したものであるから、本件請求項1に係る発明の判断と同様である。 <36条の違反について> 異議申立人の提出した甲第3号証は、本件特許出願前に頒布されたものではないから、証拠として採用できない。 なお、記載不備は、特許権者の提出した乙第2号証(平成4年2月29日発行の日本工業規格JIS K7199(1991))に試験方法が記載されており、また、上記訂正請求により、温度及び押し出し速度が明らかになったものであるから、解消された。 ウ.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由 及び証拠によっては、本件請求項1〜5に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜5に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 再帰反射性シートの製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 バインダー層と補強層とからなり、そして該バインダー層に再帰反射性ガラスビーズが実質的に単層で且つガラスビーズの少なくとも非反射性部分が露呈するように埋設されている支持体シートのガラスビーズ上に、光透過性保護フィルムを配置し、ガラスビーズ間のバインダー層表面に保護フィルムが接触しない状態を保持しつつ、加熱、加圧下に該支持体シートを部分的に熱変形させて該支持体シートのバインダー層を部分的に保護フィルムに接着させることにより再帰反射シートを製造する方法において、該支持体シートの補強層が、熱変形前において6×106〜1.2×107dyne/cm2の範囲内の剪断応力Sを有する架橋性樹脂よりなり、そして該架橋性樹脂は該支持体シートの熱変形前においてその架橋反応が実質的に完結した状態にあることを特徴とする再帰反射性シートの製造方法。 【請求項2】 バインダー層が、熱変形前において2×105〜1.5×106dyne/cm2の範囲内の剪断応力Sを有する非架橋性もしくは低架橋性の樹脂又はこれらの混合物よりなる請求項1記載の方法。 【請求項3】 バインダー層が熱変形後において2×106dyne/cm2以下の剪断応力Sを有し且つ融性である非架橋性もしくは低架橋性樹脂又はこれらの混合物よりなる請求項1又は2記載の方法。 【請求項4】 保護フィルムの少なくとも支持体シートと接触する面が、接着性向上処理されている請求項1〜3のいずれかに記載の方法。 【請求項5】 接着性向上処理がコロナ放電処理である請求項4記載の方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、道路標識、自動車、オートバイ等の車輌のナンバープレート、工事標識、看板等のマーキング等において有用な再帰反射性シートの製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術と問題点】 従来より光を光源に向けて再帰反射させる再帰反射性シートはよく知られており、その再帰反射性を利用して、該シートは、道路標識、車輌のナンバープレート、工事標識、看板などのディスプレイマーキング等の分野で広く利用されている。 【0003】 中でも空気の屈折率が低いことを利用し、光の再帰反射性能を高めた一般にセル状反射シートまたはカプセルレンズ型反射シートと呼ばれる再帰反射性シートは、その優れた光再帰反射性能により、用途が年々拡大しつつある。 【0004】 一般に、セル状反射シートは、せまい空気層を介して対向する保護フィルムと支持体シート、及びこれら両者を結合するために支持体シートを部分的に熱変形させることにより形成された互いに交差した網目状結合部分とから構成されており、そしてこの網目状結合部分によって区切られた保護フィルムと支持体シートとの間のセル状空間部分には、支持体上に部分的に埋設された多数の再帰反射性ガラスビーズを内包している。 【0005】 このような構造のセル状反射シートにおいては、再帰反射性能はほぼセル状部分のみによって発揮され、網目状結合部分はほとんど再帰反射性能貢献しないので、より高い再帰反射性能を発揮させるためには、再帰反射性シートの単位表面積当りに占める結合部分の面積割合を極力小さくすることが重要である。 【0006】 しかしながら、結合部分面積の割合を小さくする、即ち、保護フィルムと支持体シートの結合部分との接着面積を少なくすると、屡々結合部分自体の強度の低下や接着強度の不足が生じ、保護フィルムの支持体シートからの剥離トラブルが発生するという問題がある。 【0007】 そのため、結合部分面積をできるだけ小さくし且つ保護フィルムと支持体シートの間の接着強度を大きくする試みが従来からいくつかなされており、例えば、特公昭61-13561号公報には、「(a)一方の表面上に再帰反射性要素の層を配置した基体シートを製造し、そして(b)結合剤物質を加熱形成して互に交差している狭い網目状の結合部組織を形成して被覆シート及び前記基体の少なくとも一方に接触させることにより、再帰反射要素の層から間隔を置いて該被覆シートを接着させることからなる再帰反射シーティングの製造法において、加熱成形可能でかつ放射線によって硬化し得る結合剤物質を加熱成形して前記の結合部組織を形成した後、この結合部組織に施される放射線によってこれをその場で硬化させて不溶性で不融性の状態にすることにより、前記シートに対する結合部組織の結合強度を増大させることを特徴とする前記シーティングの製造法」が提案されている。 【0008】 しかしながら、本発明者らの上記提案の方法を追試したところによれば、放射線硬化により結合部分の強度は強くなるものの、基体シートの結合部分と保護フィルムと間の界面接着力はそれ程向上しないことが判明した。また、上記提案の方法で使用される基体シートは熱変形前には熱可塑性のものであるので(放射線硬化は熱変形後実施される)、熱変形時に非常に流動し易い状態となり、保護フィルムや基体フィルムの部分的な厚みの変動により、また熱変形条件のわずかな変動により、結合部分の幅や厚みが変動し、安定した結合部分の形態、従って安定した保護フィルムと基体シートとの間の接着強度が得られにくいことが判った。さらに、本発明者らの検討によれば、熱変形後(結合部分形成後)の硬化反応は、結合部分に体積収縮、即ち、歪を生じさせることになり、保護フィルムと基体シートとの間の接着強度に悪影響を及ぼすことも判った。 【0009】 また、特開昭62-121043号公報には、(i)レンズの実質的な単層をキャリャーウェブへ部分的に埋め;(ii)前記キャリャーウェブのレンズを有する表面の上に鏡面状反射性材料を付着させ;(iii)熱と圧力をかけて、HMW熱可塑性結合剤フィルムを、前記キャリャーウェブの表面上にある鏡面状反射性付着物のレンズ間のどの部分とも接触しないようにしながら、レンズ上にある鏡面状反射性付着物の部分に接触させ;(iv)キャリャーウェブを剥がし;(v)露出したレンズ上に覆いフィルムを置き;そして(vi)網目状結合部線に沿って熱と圧力をかけ、結合剤材料を硬化して変形し、覆いフィルムと接触させ、このようにして気密に密封したセルを型成し、それらのセル中にレンズが包まれ、且つ空気界面をもつようにする;諸工程からなる包まれたレンズ型逆行反射性シートの製造方法が提案されている。 【0010】 この提案の方法は、溶融指数750以下の熱可塑性結合剤フィルムを支持体シートとして用いることにより、結合部分の改善を目指したものである。 【0011】 しかしながら、本発明者らによる追試の結果によれば、結合剤フィルムは溶融指数の低い熱可塑性フィルムであるとはいえ、前述と同様に熱変形時に流動し易い状態に基づく結合部分の形態変動が生じ、安定した結合部分の形態が得難いという問題があることがわかった。さらに、上記提案の方法では、熱可塑性フィルムの溶融指数を極端に低下させると、保護フィルムと接触する部分での溶融性が悪くなり、保護フィルムと結合部分との間のぬれ性が不十分となり、保護フィルムと結合部分との間の界面接着力が低下することがわかった。 【0012】 さらに、保護フィルムと結合部分との間のぬれ性を損なわずに結合部分の強度を向上させる手段として、支持体シートを2層構造とすることも提案されており、例えば、特開昭60-194405号公報には、「合成樹脂からなる支持フィルム上に一層に並ぶガラスビーズの金属蒸着膜で被覆されたほぼ下半球面を埋設して支持し、露呈したガラスビーズ表面側に設けた透明な合成樹脂からなる保護フィルムと上記支持フィルムとの間には支持フィルムの部分的加熱成形により形成した連続線状の連結壁によって隔離された多数の密封小区画空室を構成してなる再帰反射シートにおいて、上記支持フィルムは少くともガラスビーズに接する上層側と反対側の下層側とを含み、この上層側は下層側よりも保護フィルムヘの接着力が大きく下層側は上層側よりも凝集力の大きい相互に異なる組成からなることを特徴とする再帰反射シート」が開示されており、また、特開平2-196653号公報には、「一層に並ぶガラスビーズの金属蒸着膜で被覆されたほぼ下半球面が埋設されたバインダー層と、このバインダー層に接してガラスビーズの反対側に設けられたサポート層とを含み、露呈したガラスビーズ表面側に設けた透明な合成樹脂からなる保護フィルムと該バインダー層との間には支持フィルムの部分的加熱成形により形成した連続線状の連結壁によって隔離された多数の密封小区画空室を構成してなる再帰反射シートにおいて、該バインダー層はガラス転移点が35℃以下で保護フィルムとの接着力が大きい樹脂と常温において伸び50%以上で70℃における抗張力が120kg/cm2以上のエラストマーを含有する熱可塑性樹脂を主成分として形成され、該サポート層は硬化性樹脂を主成分として形成されることを特徴とする再帰反射シート」が開示されている。 【0013】 しかしながら、これらの再帰反射シートでは、支持体シートの熱変形前の剪断応力S(特に下層に当る補強層の剪断応力S)を一定とすることにより、安定した結合部分形態、安定した保護フィルムと支持体シートとの間の接着強度を得ることは意図されていない。そのため、支持体シートは熱変形前に半架橋等の比較的熱流動し易い状態にされており、前述したとおり、それでは安定した結合部分形態を得難い。 【0014】 さらに、上記の開示された反射シートでは、支持体シートを熱変形後に架橋を進行させ、結合部分に体積収縮、即ち、歪を発生させ、保護フィルムと支持体シートとの間の接着強度に悪影響を与えている。 【0015】 本発明の目的は、これら従来技術の欠点を解消し、保護フィルムと支持体シートとの間の接着強度が大きいセル状再帰反射性シートを安定的且つ容易に製造することができる方法を提供することである。 【0016】 【問題を解決するための手段】 本発明者らは、セル状反射シートの屋外長期使用等における保護フィルムの剥離トラブル防止のためには、保護フィルムと支持体フィルムの結合部分との間の界面接着力の向上や結合部分自体の強度の向上等に基づく保護フィルムと支持体シートとの間の接着強度の全体的な向上を図ることはもちろんのこと、結合部分の局部的な形態の変動による局部的な接着強度の変動を防止することが重要な要素であることを見出した。 【0017】 即ち、結合部分の形態の変動に基づく接着強度の弱い部分が存在すると、そこに歪による応力が比較的集中してかかり、その部分の保護フィルムと支持体シートとの間の接着が比較的短期間で破壊され、その後、この破壊された部分を起点として保護フィルムの剥離が順次進行し、最終的には保護フィルムの大きな剥離トラブルとなると考えられる。従って、仮令保護フィルムと支持体シートとの間の接着強度が全体的に優れていたとしても、局部的に弱い部分が存在すると、その部分が保護フィルムの剥離トラブルの原因となり易い。 【0018】 従つて、このようなトラブルを未然に防止するためには、シート全体にわたり保護フィルムと支持体シートとの間の接着強度をできるだけ均一にすることが重要であり、そのためには、保護フィルムと支持体シートとの間を連結する結合部分の形態をできるだけ均一且つ一定にすることが非常に重要である。 【0019】 本発明者らは、結合部分の形態の均一化(一定化)を達成するため種々検討した結果、支持体シートをバインダー層と補強層との二層構造とし、該補強層を熱変形前において6×106〜1.2×107dyne/cm2の範囲内の剪断応力Sを有する架橋性樹脂により形成すると、結合部分の形態を比較的容易に均一且つ一定にすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0020】 【発明の開示】 かくして、本発明によれば、バインダー層と補強層とからなり、そして該バインダー層に再帰反射性ガラスビーズが実質的に単層で且つガラスビーズの少なくとも非反射性部分が露呈するように埋設されている支持体シートのガラスビーズ上に、光透過性保護フィルムを配置し、ガラスビーズ間のバインダー層表面に保護フィルムが接触しない状態を保持しつつ、加熱、加圧下に該支持体シートを部分的に熱変形させて該支持体シートのバインダー層を部分的に保護フィルムに接着させることにより再帰反射シートを製造する方法において、該支持体シートの補強層が、熱変形前において6×106〜1.2×107dyne/cm2の範囲内の剪断応力Sを有する架橋性樹脂よりなることを特徴とする再帰反射性シートの製造方法が提供される。 【0021】 以下、本発明の方法を図1及び図2に示す製造工程図を参照しつつさらに詳細に説明する。 【0022】 本発明で使用する支持体シート(1)は、図1(a)に示すとおり、バインダー層(2)と補強層(3)とからなり、バインダー層(2)に再帰反射性ガラスビーズ(4)が実質的に単層で且つガラスビーズ(4)の少なくとも非反射性部分(5)が露呈するように埋設された構造から本質的になる。図1において、バインダー層及び補強層はそれぞれ単一の層からなるものとして記載されているが、バインダー層及び/又は補強層は組成が同一もしくは相異なる複数の層で構成されていてもよい。 【0023】 また、補強層(3)のバインダー層(2)と反対側の面には、必要に応じて、熱変形成形時に加熱されたエンボスロールと補強層が接着しないように補強層を保護する等の目的で、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、樹脂コート工程紙、フッ素系フィルムなどからなる一時的保護層(7)が積層されていてもよい。 【0024】 本発明が特徴としている1つの点は、上記支持体シートを構成する補強層が、熱変形前において、6×106〜1.2×107dyne/cm2、好ましくは7×106〜1.1×107dyne/cm2、さらに好ましくは8×106〜1.0×107dyne/cm2の範囲内の剪断応力Sを有する架橋性樹脂よりなる点にある。本発明において、「剪断応力S」は、JIS K-7199に記載された流れ特性試験法によって、温度180℃、押し出し速度5mm/分にて測定されたときの補正値である。補強層を形成する架橋性樹脂の剪断応力Sが1.2×107dyne/cm2より大きいと、補強層が硬くなりすぎて熱変形時に補強層を通してバインダー層に加わる押圧力が分散し、幅、厚味等の均一な安定した結合部分の形態が得難くなり、また、架橋性樹脂の剪断応力Sが6×106dyne/cm2より小さくなると、補強層が軟らくなりすぎて熱変形時の押圧力により補強層自体が大きく変形し、均一で安定した結合部分の形態が得難くなり好ましくない。 【0025】 補強層を構成するために使用される架橋性樹脂には、紫外線、電子線などの活性線の照射、加熱、触媒等により自己架橋しうる内部架橋型の樹脂;及びポリイソシアネート化合物、メラミン又はその誘導体、エポキシ化合物又はその誘導体、アルミニウム、チタン等の金属のキレート化合物等の架橋剤との併用により架橋しうる外部架橋型の樹脂の両者が包含される。具体的に内部架橋型の樹脂としては、例えば、架橋性官能基としてカルボキシル基、メチロール基、アミド基、アミノ基、グリシジル基等をそれぞれ有する相補的に反応する少なくとも2種の樹脂の組み合わせ[例えば、メチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)-アクリル酸(AA)共重合体とメチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)-グリシジルメタクリレート(GMA)共重合体の組み合わせ、メチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)-アクリルアマイド(AMD)共重合体とメチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)-グリシジルメタクリレート(GMA)共重合体の組み合わせなど]あるいは末端に活性な二重結合を有する低分子量化合物または高分子量樹脂(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート化合物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート化合物、トリエチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリジエチレングリコールジアクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレートなど)等が挙げられる。また、外部架橋型の樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)-アクリル酸、メチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)-イタコン酸、メチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)-2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)などの共重合体が挙げられる。 【0026】 上記の如き架橋性樹脂には、必要に応じてさらに、例えば、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、黄鉛、シアニンブルー、シアニングリーン等の体質顔料ないし着色顔料;紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤、シアノアクリレート系吸収剤など)、熱安定剤(例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系光安定剤など)、酸化防止剤(例えば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤など)の安定助剤;その他の添加剤を通常の量で配合することができ、さらに必要に応じて、熱可塑性樹脂、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を適当量配合することにより架橋性樹脂の剪断応力S、その他の特性を調節するようにしてもよい。 【0027】 補強層の厚味は厳密に制限されるものではなく、補強層の材質、最終製品の用途等に応じて広い範囲にわたって変えることができるが、一般には、5〜100μ、好ましくは10〜70μ、さらに好ましくは20〜50μの範囲内とするのが適当である。 【0028】 補強層を構成する架橋性樹脂は、後述する熱変形前に、その架橋反応が実質的に完結されていることが望ましく、この場合には、架橋反応が実質的に完結した架橋性樹脂が前述した範囲内の剪断応力Sを有していなければならない。そのため、内部架橋型の樹脂を用いる場合には、例えば該樹脂中の架橋性官能基の含有量の調節、架橋性官能基の種類の選択、2種以上の架橋性官能基の組み合わせ比率などにより、そして外部架橋型の樹脂を用いる場合には、例えば樹脂及び/又は架橋剤の種類の選択、架橋剤の配合量の調節、架橋反応条件の調節などにより、架橋反応完結後の樹脂の剪断応力Sが前述の範囲内に入るようにする必要がある。 【0029】 なお、上記架橋性樹脂の架橋反応が実質的に完結しているかどうかの確認は、例えば、成形物の伸度、強度、弾性率、流動性等の測定;有機溶剤を用いた不溶分もしくは可溶分の定量;赤外分光分析、NMR分析などによる分子構成分析などによって実施することができる。 【0030】 一方、バインダー層は、再帰反射性ガラスビーズを前記の補強層に付着固定させ且つ後述する保護フィルムを補強層に結合させるための層であり、その材質は特に制限されるものではないが、一般には、非架橋性もしくは低架橋性又はこれらの混合物の樹脂が使用され、特に、非架橋性樹脂と低架橋性樹脂との混合物が好ましい。また、低架橋性樹脂としては多段重合型の内部架橋型樹脂を用いることが好ましい。 【0031】 バインダー層は、熱変形成形時に補強層ほどは熱の影響を受けにくいので、バインダー層を構成する樹脂の剪断応力Sは、補強層における程は厳密に制限されるものではないが、バインダー層を構成する樹脂は、熱変形前において一般に2×105〜1.5×106dyne/cm2、好ましくは3×105〜1.3×106dyne/cm2、さらに好ましくは4×105〜1.0×106dyne/cm2の範囲内の剪断応力Sを有しているのが好都合である。 【0032】 再帰反射性シートは用途に応じて適当な大きさにカットして使用されるが、そのカットされた端部は水や湿気等の浸入により再帰反射能に悪影響を与えたり、また結合部分が最も破壊されやすく保護フィルム剥離の起点となりやすい。従って、反射性シートのカットした端部は熱プレス等により予めシール(エッジシール)しておくことが望ましく、そのために、支持体シートのバインダー層の樹脂は、熱変形成形後において、融性を有していることが望ましく、且つまた少なくとも2×106dyne/cm2以下、好ましくは1.5×106dyne/cm2以下、さらに好ましくは2×105〜1.5×106dyne/cm2の範囲内の剪断応力Sを保持しているのが望ましい。 【0033】 バインダー層を構成する樹脂としては、前述したとおり、非架橋性もしくは低架橋性の樹脂又はそれらの混合物を使用することができるが、非架橋性の樹脂としては、例えば、アクリル系、アルキッド系、ポリウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系等から選らばれる熱可塑性樹脂が挙げられ、これらはそれぞれ単独又は2種以上のブレンド物として使用することができる。 【0034】 また、低架橋性の樹脂としては、上記の如き樹脂に自己架橋性の又は、前述した如き架橋剤により架橋しうる官能基を導入したものが包含される。ここで「低架橋性」とは、熱プレス等によるシールが可能な程度の融性を有し、さらには、溶剤に対しても比較的溶解性、具体的には、テトラヒドロフラン溶剤に樹脂を25℃で12時間浸漬し、不溶分を分離、定量する方法において、不溶分が15重量%以下程度を示すような架橋程度という。 【0035】 バインダー層を構成する樹脂の特に好ましい態様としては、非架橋性樹脂と低架橋性樹脂の混合物が挙げられる。その混合比は厳密に制限されるものではないが、通常、非架橋性樹脂50〜90重量%と低架橋性樹脂10〜50重量%の範囲内で混合することが好ましく、さらに好ましくは非架橋性樹脂60〜80重量%と低架橋性樹脂20〜40重量%の範囲内で混合するのが望ましい。また、混合物に使用する低架橋性樹脂としては、多段重合型の内部架橋樹脂が特に好ましい。 【0036】 なお、本明細書において「多段重合型の内部架橋樹脂」は、核となる中心部の重合体の外側に順次異なる重合体層が積み重ねられた形で重合された集合体樹脂を包含するものである。この樹脂は核となる最内層重合体1のTgが10℃以上であり、最外層重合体2のTgが50℃以上である2層構造を基本構造単位とし、最内層重合体1と最外層重合体2の間にTgが-50℃〜50℃の中間層を多数有していてもよい多段重合により得られた多層構造の樹脂であって、各層間はグラフト化により密に結合されており、最外層以外の各層は重合時に単独でそれぞれ内部架橋反応が施されている樹脂であり、例えば特公昭59-36645号公報に開示される樹脂などが挙げられる。 【0037】 バインダー層の樹脂として低架橋性の樹脂を使用する場合には、補強層の場合と同様に、熱変形成形処理を行なう前に、実質的に架橋反応を完結させておくことが好ましい。 【0038】 バインダー層には、補強層について述べたと同様に、必要に応じて、体質顔料、着色顔料、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤等の添加剤を配合してもよく、また、蛍光漂白剤(例えば、イミダゾール誘導体、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、クマリン誘導体、イミダゾロン誘導体など)の助剤も適宜添加することができる。 【0039】 バインダー層の厚味もまた厳密に制限されるものではなく、バインダー層の樹脂の種類、ガラスビーズの大きさ等に応じて広範囲にわたって変えることができるが、一般には、20〜200μ、好ましくは30〜150μ、さらに好ましくは50〜100μの範囲内に設定するのが好都合である。 【0040】 一方、このバインダー層に埋設される再帰反射性カラズビーズは、屈折率が1.7〜2.0、殊に1.91程度で平均粒子径が通常30〜100μ、特に40〜90μの範囲内にあるガラスビーズのほぼ下半球部分(図1の参照番号6の部分)がアルミニウム、銀、鉄、金、クロム、チタン、銅、亜鉛、ニッケルなどの金属又はその合金の蒸着等によって鏡面処理されているものである。 【0041】 以上に説明した図1(a)に示す如き支持体シート(1)のガラスビーズ(4)上には、図1(b)に示すように、光透過性保護フィルム(8)が、ガラスビーズ(4)間のバインダー層表面(9)に該保護フィルムが接触しない状態で重ねられる。 【0042】 ここで使用する光透過性保護フィルムは、少なくとも20%以上、好ましくは40%以上の全光線透過率を有する或る程度の柔軟性を有するものであれば、その材質には特に制限はなく、例えば、アクリル系樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム等が挙げられる。中でも耐候性に優れたフィルムが好ましく、殊にフッ素系樹脂フィルムは極めて耐候性に優れており、屋外において長期使用する反射性シート用の保護フィルムとして特に好適である。 【0043】 これら保護フィルムは一般に、未延伸のものであることが好ましい。何んとなれば、一軸又は多軸延伸したフィルムは機械的強度は大きくなるが、フィルム中に歪が残るからである。 【0044】 また、保護フィルムは、前述した支持体シートのバインダー層との接着性が乏しい場合には、バインダー層に面する表面を接着性向上処理しておくことが望ましい。接着性向上処理としては、それ自体既知の方法を採用することができ、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、プラズマ-コート処理等を用いることができる。中でも、コロナ放電処理は比較的操作が容易で且つ効果的にも優れており、好適な手段である。 【0045】 保護フィルムの厚味は、反射性シートの用途等に応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常20〜200μ、好ましくは40〜150μ、さらに好ましくは50〜100μの範囲内とすることができる。 【0046】 図1(b)に示す如き支持体シート(1)と保護フィルム(8)とを重ね合わせたものは、次いで、その状態を保持しつつ、加熱加圧下に支持体シート(1)を部分的に熱変形成形することにより、バインダー層(2)を部分的に保護フィルム(8)に接着させる。 【0047】 この熱変形成形は、図1(c)に示すように、上記重ね合わせ物を、例えば網目状突起を表面に有するよう成形された、一般には100〜250℃、好ましくは150〜230℃、さらに好ましくは170〜200℃の表面温度に加熱された金属ロールのごときエンボスロール(10)と一般には常温ないし100℃、好ましくは約40〜約90℃、さらに好ましくは約50〜約80℃の範囲内の温度に加熱されたゴムロールのごときおさえロール(11)間の間隙を一定とし、両ロールを回転させながら通過させることによる方法等によって実施される。両ロール間の間隙は、エンボスロールの突起部とおさえロール間が、重ね合わせ物の総厚みより小さく、エンボスロールの凹部とおさえロール間が重ね合わせ物の総厚みより大きくなるように調整するのが適当である。 【0048】 熱変形成形後のシートは、一時的保護層(7)を用いた場合はこれを剥がした後、用いなかった場合はそのままの状態で、図1(d)に示すように、シリコン処理剥離性フィルムのごとき剥離基材(13)上にコーティング、乾燥等によって成形された接着剤層(12)と貼り合わされ再帰反射性シートとして完成される。 【0049】 以上に述べた本発明の方法において使用される図1(a)に示す支持体シート(1)は、例えば、図2に示す製造工程により製造することができる。 【0050】 まず、図2(a)に示すように、例えば約110℃の温度に加熱してポリエチレンフィルムを軟化させたポリエチレンフィルム/紙ラミネート工程紙(14)上にガラスビーズ(4)を密に且つ、実質的に単層となるように散布し、ニップロール等を用いてガラスビーズをポリエチレンフィルム中にガラスビーズの直径の約1/3〜1/2が埋め込まれるように押し込む。 【0051】 次に、図2(b)に示すように、ガラスビーズ付着面側に光反射性部分としてアルミニウムのごとき金属を、真空蒸着法等を用いて蒸着させ光反射性部分形成用光反射膜(15)を設ける。 【0052】 つづいて、図2(c)に示すように、例えばシリコーン系剥離処理剤で表面処理したポリエチレンテレフタレートフィルムのごとき工程フィルム(16)上に予め溶液コーティング法等によって成形された補強層(3)とバインダー層(2)を有する積層物上に、図2(b)で作製したシートを、光反射膜(15)を有する側(金属蒸着面側)をバインダー層(2)側に向けて重ね合わせ、必要ならば熱をかけバインダー層を軟化させながら、ニップロール等を用いてガラスビーズがその直径の約1/3〜1/2程度バインダー層中に埋まり込むようにして押し込む。この時、ポリエチレンフィルム上の光反射膜(金属蒸着膜)がバインダー層に接触転写しないように、光反射膜(金属蒸着膜)とバインダー層表面との間に少し空隙をあけるようにして押し込むことが好ましい。その際の押し込み圧力は、バインダー層の剪断応力S、また、その時の温度等によって異なるが、通常、1m長さのニップロールあたり1〜2トン程度の圧力がかかるようにして実施するのが好都合である。 【0053】 補強層(3)とバインダー層(2)との積層物は、例えば、工程フィルム(16)上にまず、補強層樹脂溶液をコーティングし、乾燥後、その上からバインダー層樹脂溶液をコーティングし乾燥するか、あるいは別々にコーティング、乾燥して成形した補強層、バインダー層のそれぞれを貼り合わせて積層する等の手段により作製することができる。工程フィルム(16)は必要に応じて剥離してもよいが、そのまま付着させた状態で一時的保護層(7)として利用してもよい。最後にラミネート工程紙(14)を剥離することにより本発明の支持体シート(1)が得られる。 【0054】 【実施例】 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。 【0055】 実施例1 厚さ約20μのポリエチレン樹脂を紙にラミネートした工程紙を約105℃に加熱し、この上に平均粒子径約65μ、屈折率約1.91のガラスビーズを均一に且つ密に分散させ、ニップロールにより加圧しガラスビーズをその直径の約1/3までポリエチレン樹脂中に埋め込んだ。 【0056】 その後、このガラスビーズを埋め込んだ工程紙表面に真空蒸着機を用いてアルミニウムを約0.1μの厚みで真空蒸着した。 【0057】 次に、シリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、メチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)-2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)共重合体のメチルイソブチルケトン/トルエン(1/1)溶液(重量組成比:MMA/EA/2-HEMA=20/65/15、固形分=50%)100重量部とヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤の1-メトキシプロピルアセテート-2/キシレン(1/1)溶液(固形分=75%)14.2重量部の混合溶液を塗布、乾燥して厚み40μの補強層を形成した。 【0058】 さらに、この補強層の上に、メチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)-2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)共重合体のメチルイソブチルケトン/トルエン(1/1)溶液(重量組成比:MMA/EA/2-HEMA=40/55/5、固形分=40%)100重量部と酸化チタン30重量部を混合して得られるアクリル樹脂溶液Aに対し、メチルメタクリレート(MMA)-ブチルアクリレート(BA)-スチレン(St)共重合体のメチルイソブチルケトン溶液B(固形分=20%;多段重合型の内部架橋樹脂)10重量部及びセルロースアセテートブチレート樹脂のメチルイソブチルケトン溶液(固形分=15%)13重量部を混合して得られる溶液を塗布、乾燥して厚み約80μのバインダー層を形成することにより、補強層-バインダー層積層物を得た。 【0059】 次に、ガラスビーズ埋め込み工程紙のアルミ蒸着側に上記積層物のバインダー層側が面するように重ね合わせ、加圧してガラスビーズがバインダー層中に約1/3程度埋まり込むようにした。その後、35℃で14日間エージングし、補強層の架橋を実質的に完結させ、補強層及びバインダー層の剪断応力Sを測定した。その結果、補強層の剪断応力Sは9.48×106dyne/cm2であり、バインダー層の剪断応力Sは4.78×105dyne/cm2であった。 【0060】 次に、この積層物よりポリエチレン樹脂ラミネート工程紙を引き剥がし、露出したガラスビーズ上に厚み約75μ、全光線透過率約93%の無延伸アクリルフィルム(三菱レーヨン(株)製)を重ねて置き、線巾0.3mmの網目状凸彫刻を施した表面温度約190℃の金属ロールと表面温度約60℃のゴムロールとの間を、アクリルフィルム側がゴムロールと接触するようにして加圧しながら通過させて熱変形成形を行なった。ここで再び補強層及びバインダー層の剪断応力Sを測定したが、補強層、バインダー層ともに熱変形成形前の剪断応力に対して大きな差はなかった。 【0061】 この熱変形成形物より、シリコン処理ポリエチレンテレフタレートフィルムを除去し、厚み約40μのアクリル系粘着剤(日本カーバイド工業(株)製KP-997)を補強層にラミネートし再帰反射性シートを作製した。得られたシートは後記表-1に示すごとく、結合部分の形態の均一性に優れており、しかも保護フィルムの耐剥離性にも優れていた。また、得られたシートは端部の熱シールが可能であった。 【0062】 比較例1 補強層のヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤の添加量を5.0重量部とした以外は全て実施例1と同様にして再帰反射性シートを作製した。補強層の熱変形前剪断応力Sは5.31×106dyne/cm2であった。 【0063】 得られた再帰反射性シートは後記表-1に示すごとく、結合部分のにじみが大きく、結果として反射性能が悪く本発明の目的を達成しないものであった。また、耐候性テスト後の保護フィルム耐剥離性にも劣るものであった。 【0064】 比較例2 補強層のイソシアネート系架橋剤の添加量を25.0重量部とした以外は、全て実施例1と同様にしてセル状反射シートを作製した。補強層の熱変形前剪断応力Sは1.25×107dyne/cm2であった。 【0065】 得られた再帰反射性シートは後記表-1に示すごとく結合部分のにじみが大きく、結果として反射性能が悪く本発明の目的を達成しないものであった。また、耐候性テスト後の保護フィルムの耐剥離性にも劣るものであった。 【0066】 比較例3 35℃におけるエージングを行なわなかった以外は、全て実施例1と同様にして再帰反射性シートを作製した。補強層の熱変形前剪断応力Sは5.48×106dyne/cm2であった。 【0067】 得られた再帰反射性シートは後記表-1に示すごとく、結合部分の線巾に部分的変動があり、初期強度及び耐候性テスト後の保護フィルムの耐剥離性に劣る本発明の目的を達成しないものであった。また、得られた再帰反射性シートの支持体シートのガラスビーズを埋設している側の表面には、小さな小ジワが発生し外観的にも好ましくないものとなった。 【0068】 実施例2 保護フィルムをフッ化ビニリデン系フィルム(電気化学工業(株)製DXフィルム)とした以外は、全て実施例1と同様にして再帰反射性シートを作製した。 得られた反射シートは後記表-1に示すごとく、結合部分の形態の均一性に優れ、保護フィルムの耐剥離性にも優れており、本発明の目的を満足するものであった。 実施例3 バインダー層のアクリル樹脂溶液Aの組成を、非架橋性のメチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)共重合体のトルエン/酢酸エチル(7/3)溶液(重量組成比:MMA/EA=46/54、固形分=30%)57重量部及び架橋性のメチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)-アクリル酸(AA)共重合体のトルエン/酢酸エチル(6/4)溶液(重量組成比:MMA/EA/AA=33/66/1、固形分=40%)43重量部を酸化チタン17重量部と混合して得られるアクリル樹脂溶液に代え、このアクリル樹脂溶液Aに対し、メチルメタクリレート(MMA)-ブチルアクリレート(BA)-スチレン(St)共重合体のメチルイソブチルケトン溶液B(固形分=20%:多段重合型の内部架橋樹脂)34重量部及びセロソルブアセテートブチレート樹脂のメチルイソブチルケトン溶液(固形分=15%)12重量部を混合した以外は、すべて実施例1と同様にして再帰反射性シートを作成した。 【0069】 得られた反射シートは後記表-1に示すごとく、結合部分の形態の均一性に優れ、保護フィルムの耐剥離性にも優れる本発明の目的を満足するものであッた。 実施例4 ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤の代わりに、メラミン架橋剤(日本カーバイド工業(株)製CK-300)25重量部及び架橋触媒(日本カーバイド工業(株)製CK-902)25重量部を用いて補強層を形成し、また、バインダー層のアクリル樹脂溶液Aの組成を、非架橋性のメチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)共重合体のトルエン/酢酸エチル(7/3)溶液(重量組成比:MMA/EA=46/54、固形分=30%)80重量部及び架橋性のメチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)-2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)共重合体のトルエン/酢酸エチル(7/3)溶液(重量組成比:MMA/EA/2-HEMA=33/66/1、固形分=30%)20重量部と酸化チタン30重量部を混合して得られるアクリル樹脂溶液に代え、メチルメタクリレート(MMA)-ブチルアクリレート(BA)-スチレン(St)共重合体のメチルイソブチルケトン溶液B(固形分=20%:多段重合型の内部架橋樹脂)28重量部、メラミン系架橋剤(日本カーバイド工業(株)製CK-300)0.4重量部及び架橋触媒(日本カーバイド工業(株)製CK-902)0.4重量部の混合溶液よりバインダー層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして再帰反射性シートを作製した。 【0070】 得られたシートは後記表-1に示すごとく、結合部分の形態の均一性に優れ、保護フィルムとの耐剥離性にも優れる本発明の目的を満足するものであった。 【0071】 実施例5 バインダー層のアクリル樹脂溶液Aをメチルメタクリレート(MMA)-エチルアクリレート(EA)共重合体のトルエン/酢酸エチル(7/3)溶液(重量組成比:MMA/EA=46/54、固形分=30%)100重量部と酸化チタン30重量部を混合して得られるアクリル樹脂溶液に代えた以外は、すべて実施例1と同様にして再帰反射性シートを製作した。 【0072】 得られた反射シートは後記表-1に示すごとく、結合部分の形態の均一性に優れ、保護フィルムの耐剥離性にも優れる本発明の目的を満足するものであった。 【0073】 【表1】 【0074】 表-1に用いた各テスト項目の測定法は次のとおりである。 【0075】 (1) 熱変形前剪断応力S 東洋精機(株)製キャピログラフを用いてJIS K-7199記載の流れ特性試験方法により剪断応力を求めた。なお、温度は180℃、押し出し速度は5mm/分にて測定した。 【0076】 (2) 結合部分の外観 得られた再帰反射性シートを表面から観察し、結合部分の外観の変動状態を以下の基準に従って評価した。 【0077】 4・・・線巾が均一で、境界部分におけるにじみがない。 【0078】 3・・・線巾が比較的均一だが、境界部分で若干にじみがみられる。 【0079】 2・・・線巾の部分的な変動がある、もしくは、にじみが大きい。 【0080】 1・・・にじみが大きく、線巾が所定の巾より大きくなつている。 【0081】 (3) 保護フィルム耐剥離性 得られた再帰反射性シートを横7.5cm、縦15cmのアルミ板に貼り付け、各端部より2.5cmの所に端部と平行にナイフで切り込み線を入れテスト片とした。 【0082】 a 初期強度 上記テスト片の切り込み線で区切られた中央部分の保護フィルムを端部から、ナイフを用いて一部剥がし、ポリエステールテープで保護フィルムを補強した後、保護フィルムの支持体シートからの剥離強度をインストロン型引張試験機を用いて測定した。なお、測定は90°引き剥がし、引張速度100mm/分で実施した。 【0083】 測定値は、引張試験における平均的な最小剥離強度と、平均的な最大剥離強度をもって表わした。 【0084】 b 耐候性テスト後強度 テスト片を以下の条件で100回耐候性テストした。 【0085】 UV-CON 16時間→(70℃加熱1時間→-25℃冷却1時間→70℃加熱1時間→25℃水浸漬1時間)×2サイクル 耐候性テスト後のテスト片について上記初期強度の測定と同様にして剥離強度を測定した。 【0086】 c 耐候性テスト後外観 上記同様の耐候性テストを実施した後以下の基準で外観を評価した。 【0087】 3・・・耐候性テスト前と比較して、ほとんど外観変化がない。 【0088】 2・・・耐候性テスト前と比較して、結合部分の一部破壊による保護フィルムの浮きがわずかにみられる。 【0089】 1・・・耐候性テスト前と比較して結合部分の破壊による保護フィルムの浮きが全表面積に対し10%以上発生した。 【0090】 (4) 熱シール性 得られたセル状反射シートを実施例1と同様にして再度熱変形成型し、熱シールが可能かどうか評価した。 【0091】 (5) 反射性能 得られた再帰反射シートの反射性能をJIS Z-9117に記載された反射性能の測定法に従って測定した。なお、観測角は12′、入射角は5°とした。 【図面の簡単な説明】 【図1】 図1は、本発明における支持体シートの代表的な断面模式図(a)及びこの支持体シートを用いて再帰反射性シートを製造するための代表的な方法の概略断面模式図(b)(c)(d)である。 【図2】 図2は、本発明の支持体シートを製造するための代表的な方法の概略断面模式図(a)(b)(c)(d)である。 【符号の説明】 1・・・支持体シート 2・・・バインダー層 3・・・補強層 4・・・ガラスビーズ 5・・・ガラスビーズの非反射性部分 6・・・ガラスビーズの反射性部分 7・・・一時的保護層 8・・・光透過性保護フィルム 9・・・バインダー層表面 10・・・熱変形成形用に用いられるエンボスロール 11・・・熱変形成形用に用いられるおさえロール 12・・・接着剤層 13・・・剥離基材 14・・・ラミネート工程紙 15・・・光反射部分形成用光反射膜 16・・・工程フィルム |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 発明の詳細な説明の欄中の明瞭でない記載の釈明を目的として、下記(1)のように訂正する。 (1)明細書の段落【0024】の『ここで「剪断応力S」は、JIS K-7199に記載された流れ試験法によって測定された値である。』を『本発明において、「剪断応力S」は、JIS K-7199に記載された流れ特性試験法によって、温度180℃、押し出し速度5mm/分にて測定されたときの補正値である。』と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-10-29 |
出願番号 | 特願平4-307965 |
審決分類 |
P
1
651・
534-
YA
(G02B)
P 1 651・ 531- YA (G02B) P 1 651・ 121- YA (G02B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 末政 清滋 |
特許庁審判長 |
森 正幸 |
特許庁審判官 |
北川 清伸 高橋 美実 |
登録日 | 2000-03-03 |
登録番号 | 特許第3040267号(P3040267) |
権利者 | 日本カーバイド工業株式会社 |
発明の名称 | 再帰反射性シートの製造方法 |
代理人 | 佐藤 公博 |
代理人 | 乕丘 圭司 |
代理人 | 辻丸 光一郎 |
代理人 | 池内 寛幸 |
代理人 | 小田島 平吉 |
代理人 | 江角 洋治 |
代理人 | 江角 洋治 |
代理人 | 小田島 平吉 |
代理人 | 黒田 茂 |
代理人 | 鎌田 耕一 |