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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
管理番号 1055048
異議申立番号 異議2000-74408  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-08-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-08 
確定日 2001-12-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3086165号「紫外線赤外線吸収緑色系ガラス」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3086165号の訂正後の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3086165号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成8年1月29日(優先権主張 平成7年11月30日 日本)に特許出願されたものであって、平成12年7月7日にその発明について特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、杉崎筆雄より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成13年8月7日付けで訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を、「【請求項1】重量%表示で実質的に下記酸化物、SiO2 67〜75%、Al2O3 0.05〜3.0%、CaO 7.0〜11.0%、MgO 2.0〜4.2%、Na2O 12.0〜16.0%、K2O 0.5〜3.0%、SO3 0.05〜0.30%、Fe2O3 0.40〜0.90%、CeO2 1.0〜2.5%、TiO2 0.1〜1.0%、MnO 0.0010〜0.0400%、CoO 0.0001〜0.0009%、Cr2O3 0.0001〜0.0010%、SnO2 0〜1%、これら成分の総和が98%以上、かつSiO2+Al2O3+TiO2 70〜76%、CaO+MgO 10〜15%、Na2O+K2O 13〜17%のガラスであり、前記ガラスが、5mm厚換算で、A光源による可視光線透過率が65%以上、日射透過率が30〜40%、紫外線透過率が10%以下、D65光源による主波長が500〜540nm、刺激純度が5%以下であることを特徴とする紫外線赤外線吸収緑色系ガラス。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項c
明細書第6頁第13〜20行の段落【0019】の「【0019】すなわち、本発明は、・・・紫外線赤外線吸収緑色系ガラス。」(本件特許掲載公報第3頁第6欄第16〜25行)を、「【0019】すなわち、本発明は、重量%表示で実質的に下記酸化物、SiO2 67〜75%、Al2O3 0.05〜3.0%、CaO 7.0〜11.0%、MgO 2.0〜4.2%、Na2O 12.0〜16.0%、K2O 0.5〜3.0%、SO3 0.05〜0.30%、Fe2O3 0.40〜0.90%、CeO2 1.0〜2.5%、TiO2 0.1〜1.0%、MnO 0.0010〜0.0400%、CoO 0.0001〜0.0009%、Cr2O3 0.0001〜0.0010%、SnO2 0〜1%、これら成分の総和が98%以上、かつSiO2+Al2O3+TiO2 70〜76%、CaO+MgO 10〜15%、Na2O+K2O 13〜17%のガラスであり、前記ガラスが、5mm厚換算で、A光源による可視光線透過率が65%以上、日射透過率が30〜40%、紫外線透過率が10%以下、D65光源による主波長が500〜540nm、刺激純度が5%以下であることを特徴とする紫外線赤外線吸収緑色系ガラス。」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書第6頁第21〜27行の段落【0020】の「【0020】ならびに、前記SnO2が、・・・それぞれ提供するものである。」(本件特許掲載公報第3頁第6欄第26〜33行)を、「【0020】ならびに、前記SnO2が、重量%表示で0.01〜0.6%であることを特徴とする上述した紫外線赤外線吸収緑色系ガラスをそれそれ提供するものである。」と訂正する。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
上記訂正事項aは、請求項3の記載内容を組み入れ、紫外線赤外線吸収緑色系ガラスの可視光線透過率、日射透過率、紫外線透過率、D65光源による主波長、刺激純度を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、上記訂正によって別個の新たな目的及び効果をもたらすものではないから実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、訂正事項bは請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、上記訂正事項c、dは、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項a、bの訂正に伴うものであり、減縮された特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるために明りょうでない記載の釈明を行うことを目的とする訂正に該当するものであり、しかも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされた訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
2-3.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立てについて
3-1.特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として甲第1〜6号証を提出し、請求項1〜3に係る発明は、甲第1、2号証に記載された発明であるか、甲第1〜6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜3に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号、第2項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものである旨主張している。
3-2.本件訂正発明
特許権者が請求した上記訂正は、上述したとおり、認容することができるから、訂正後の本件請求項1、2に係る発明は訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ本件訂正発明1、2という。)。
「【請求項1】重量%表示で実質的に下記酸化物、SiO2 67〜75%、Al2O3 0.05〜3.0%、CaO 7.0〜11.0%、MgO 2.0〜4.2%、Na2O 12.0〜16.0%、K2O 0.5〜3.0%、SO3 0.05〜0.30%、Fe2O3 0.40〜0.90%、CeO2 1.0〜2.5%、TiO2 0.1〜1.0%、MnO 0.0010〜0.0400%、CoO 0.0001〜0.0009%、Cr2O3 0.0001〜0.0010%、SnO2 0〜1%、これら成分の総和が98%以上、かつSiO2+Al2O3+TiO2 70〜76%、CaO+MgO 10〜15%、Na2O+K2O 13〜17%のガラスであり、前記ガラスが、5mm厚換算で、A光源による可視光線透過率が65%以上、日射透過率が30〜40%、紫外線透過率が10%以下、D65光源による主波長が500〜540nm、刺激純度が5%以下であることを特徴とする紫外線赤外線吸収緑色系ガラス。
【請求項2】前記SnO2が、重量%表示で0.01〜0.6%であることを特徴とする請求項1記載の紫外線赤外線吸収緑色系ガラス。」
3-3.甲号各証の記載内容
(1)甲第1号証:特開平4-310539号公報
(a)「下記酸化物換算で SiO2 65〜75重量% Al2O3 0.1〜5重量% Na2O 10〜18重量% K2O 0〜5重量% CaO 5〜15重量% MgO 1〜6重量% CeO2 0.1〜3.0重量% Fe2O3 0.5〜1.2重量% SO3 0.05〜1.0重量% TiO2 0〜1.0重量% から本質的になり、かつ、Fe2O3として表わされた全鉄分含有量のうち、重量で20〜40%が酸化第一鉄(FeO)であることを特徴とする赤外線・紫外線吸収ガラス。」(請求項1)
(b)「また上述の組成範囲のガラスに着色剤として、NiO、CoO、MnO、V2O5、MoO3等を1種類または2種類以上の合計量が0〜1.5重量%の範囲で添加しても良い。」(第3頁第3欄第28〜30行)
(c)第4頁表1の実施例には、組成がSiO2 71.0重量%、Al2O3 1.8重量%、CaO 7.8重量%、MgO 4.0重量%、Na2O 13.1重量%、K2O 0.7重量%、Fe2O3 0.81重量%、CeO2 0.77重量%、TiO2 0.01重量%、SO3 0.10重量%であり、光学特性を5mmの試料で測定し、可視透過率 66.8%、太陽熱透過率 38.4%、主波長 503nm (緑色)、色純度 3.7%のガラス板(ガラス板No.1)が記載されている。
(d)「本発明のガラスは、可視光透過率が高いため運転者の視界を損なうことなく、赤外線を吸収するので冷暖房効果を高め、また紫外線も吸収するのて、紫外線による自動車の内装材やシート、搭乗者の皮膚への悪影響を軽減することから、建築用、車両用の窓がラス等として特に有用てある。」(第4頁左欄段落【0022】)
(e)「また、本発明の赤外線・紫外線吸収ガラスは、赤外線をFe2+で、また紫外線をCe3+,Ce4+で吸収させる一方、全鉄分合有量のうち酸化第一鉄の割合が20重量%〜40重量%となるように還元条件を低めに抑えたことにより、緑色系の板ガラス、例えば主波長490nm〜530nmを持つ緑色の板がラスが容易に得られ、また清澄剤として芒硝が使用可能となり、また清澄剤として芒硝が使用できるのて、特殊な装置を使用することなく、従来のガラス溶解装置、例えばフロートガラス製造設備が使用でき、従って容易にそして安価に、生産効率良く、泡のないガラス板を製造可能てある。」(第4頁段落【0023】)
(2)甲第2号証:特公平6-88812号公報
(a)「【請求項1】Fe2O3に換算して0.65〜1.25重量%のFeと、0.2〜1.4重量%のCeO2、または0.1〜1.36重量%のCeO2及び0.02〜0.85重量%のTiO2とを主要な成分として含み、3〜5mmの厚さを有するときに、測色光A可視光透過率が70%以上であって、全太陽エネルギー透過率が46%以下であって、紫外線透過率が38%以下となるように、Fe2O3に対するFeOの重量比を定めたことを特徴とする赤外線及び紫外線吸収ソーダ石灰シリカ緑色ガラス。
【請求項2】0.51〜0.96重量%のFe2O3と、0.15〜0.33重量%のFeOと、0.2〜1.4重量%のCeO2とを主要な成分として含み、微量のTiO2を含むことを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の緑色ガラス。
【請求項9】0.51〜0.59重量%のFe2O3と、0.14〜0.17重量%のFeOと、0.2〜0.7重量%のCeO2とを主要な成分として含み、前記FeOの重量%が、Fe2O3として表された鉄分総量の23〜29%の還元パーセントをなすと共に、5mmの名目上の厚さを有するときに、測色光A可視光透過率が70%以上であって、全太陽エネルギー透過率が46%以下であって、紫外線透過率が36%以下であることを特徴とする特許請求の範囲第2項に記載の緑色ガラス。
【請求項10】A)65〜75重量%のSiO2、 B)10〜15重量%のNa2O、 C)0〜4重量%のK2O、 D)1〜5重量%のMgO、 E)5〜15重量%のCaO、 F)0〜3重量%のAl2O3、を含むことを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の緑色ガラス。
【請求項15】特許請求の範囲第1項に記載されたソーダ石灰シリカ緑色ガラスを有し、紫外線透過率が36%以下であって、測色光C主波長が498〜525nmであって、色純度が2〜3%であることを特徴とする車両用窓ガラス。」(請求項1、2、9、10、15)
(b)第7頁〜第8頁の第3表、第4表中の第11例には、組成がSiO2 71.58重量%、NaO2 13.75重量%、CaO 8.42重量%、MgO 4.14重量%、Fe2O3 0.833重量%、TiO2 0.021重量%、Al2O3 0.12重量%、SO3 0.13重量%、K2O 0重量%、Cr2O3 0.0002重量%、CeO2 0.915重量%、La2O3 0.008重量%であり、A透過率71.3%、全太陽エネルギー透過率 43.5%、紫外線透過率33.4%、主波長505.8nm、色純度2.8%の4mmの厚さのガラスが、第12例には、組成がSiO2 71.64重量%、NaO2 13.97重量%、CaO 8.38重量%、MgO 3.97重量%、Fe2O3 0.813重量%、TiO2 0.253重量%、Al2O3 0.16重量%、SO3 0.14重量%、K2O 0.02重量%、Cr2O3 0.0003重量%、CeO2 0.563重量%、La2O3 0.006重量%であり、A透過率71.7%、全太陽エネルギー透過率 43.8%、紫外線透過率33.1%、主波長514.1nm、色純度2.5%の4mmの厚さのガラスが、それぞれ記載されている。
(3)甲第3号証:作花済夫他編「ガラスハンドブック」株式会社朝倉書店 第286〜289頁 (1982年10月10日)
(a)「高炉鉱滓は1920年代にドイツでガラス原料に用いられ、米国では現在Calumiteという商品名で20から200メッシュの粒度のアルミナ源として市販されている。主成分はSiO2,Al2O3,CaO,MgOで、Fe2O3,SとMnOを若干含むので、米国のアンバーガラスの80%、ほかに緑色ガラス、繊維用ガラスの原料として用いられている。」(第286頁下から第5〜2行)。
(b)「石灰石(limestone)は主成分がCaCO3で、全国各地に優良な産地があり、純度97%以上ならばたいていのガラス原料として使用可能である。MgCO3,FeCO3,MnCO3などが固溶体として存在し、」(第289頁第15〜17行)
(4)甲第4号証:森谷太郎他編「ガラス工学ハンドブック」株式会社朝倉書店 第288、289頁 (昭和41年1月20日)
(a)「鉱滓はアメリカではCalumiteとして砂と同程度の粒度で市販されており、その成分は表1.4の通りで若干のS,Fe2O3を含むので、主にアンバー、緑色ガラスの原料に使われている。これは非常にとけやすく、バッチの成分分離(Segregation)を防ぎガラスの均質性を向上する。最近ではフリントガラスにも使われようとしている。」(第288頁第10〜13行)
(b)第288頁表1.4アルミナ原料成分には”Calumite”に(MnO 1.0)と記載されている。
(5)甲第5号証:特表平4-502304号公報
(a)「本発明は赤外線吸収青色ガラス組成に関し、より詳細に言えば、所望のエネルギー吸収特性及び光透過性を組み合わせた青色の赤外線吸収ガラス組成に関する。」(第2頁左上欄第4〜6行)
(b)「少量のスズが存在して、鉄を2価の状態に維持する還元剤として機能する。」(第3頁左上欄第24行〜右上欄第1行)
(6)甲第6号証:特開平4-46031号公報
(a)「重量%で・・・SnO2 0.1〜3 から本質的になる組成の紫外・赤外線吸収ガラス」(請求項1)
3-4.対比・判断
(1)本件訂正発明1について
(i)甲第1号証をベースとした対比・判断
甲第1号証には、上記(1)(a)、(c)、(d)から赤外線、紫外線吸収緑色系ガラスであることが記載されており、上記(c)の実施例のガラスを本件訂正発明1の記載に則して記載すると「組成がSiO2 71.0重量%、Al2O3 1.8重量%、Na2O 13.1重量%、K2O 0.7重量%、CaO 7.8重量%、MgO 4.0重量%、CeO2 0.77重量%、Fe2O3 0.81重量%、SO3 0.10重量%、TiO2 0.01重量%のガラスであり、光学特性を5mmの試料で測定し、可視透過率 66.8%、太陽熱透過率 38.4%、主波長 503nm 、色純度3.7%の紫外線赤外線吸収緑色系ガラス。」という発明(以下、甲1発明という)が記載されていると云える。
そこで本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明のガラスの場合、成分の総和は98%を越えており、かつSiO2+Al2O3+TiO2は72.81重量%、CaO+MgO は11.8重量%、Na2O+K2Oは13.8重量%であり、甲1発明の「可視透過率」、「太陽熱透過率」、「主波長」、「色純度」は、本件訂正発明1の「A光源による可視光線透過率」、「日射透過率」、「D65光源による主波長」、「刺激純度」にそれぞれ相当するから、両者は、
「組成がSiO2 71.0重量%、Al2O3 1.8重量%、CaO 7.8重量%、MgO 4.0重量%、Na2O 13.1重量%、K2O 0.7重量%、SO3 0.10重量%、Fe2O3 0.81重量%、その外CeO2とTiO2とを含み、これら成分の総和は98%を越えており、かつSiO2+Al2O3+TiO2は72.81重量%、CaO+MgO は11.8重量%、Na2O+K2Oは13.8重量%のガラスであり、5mm厚換算で、A光源による可視光線透過率 66.8%、日射透過率 38.4%、D65光源による主波長 503nm、刺激純度 3.7%の紫外線赤外線吸収緑色系ガラス」で一致し、以下の(イ)〜(ハ)で相違している。
(イ)本件訂正発明1では、CeO2が1.0〜2.5重量%、TiO2が0.1〜1.0重量%であるのに対して、甲1発明では、CeO2が0.77重量%、TiO2 が0.01重量%である点
(ロ)本件訂正発明1では、MnOが0.0010〜0.0400重量%、CoOが0.0001〜0.0009重量%、Cr2O3が0.0001〜0.0010重量%、SnO2が0〜0.1重量%であるのに対して、甲1発明では、それらの成分について記載されていない点
(ハ)本件訂正発明1では、紫外線透過率が10%以下であるのに対して、甲1発明では、紫外線透過率について具体的数値が記載されていない点
相違点(イ)については、上記(1)(a)から、甲第1号証にはCeO2が0.1〜3.0重量%、TiO2が0〜1.0重量%であることが記載されているから、相違点(イ)は格別のものとは認められないので、ここでは特に相違点(ロ)、(ハ)について検討する。
先ず相違点(ロ)について検討する。
本件訂正発明1のSnO2は任意添加成分であるから、MnO、CoO、Cr2O3成分について検討する。甲第1号証には、上記(1)(b)から着色剤としてCoO+MnOが0〜1.5重量%を添加されてもよいということが記載されているから、甲1発明においてCoOとMnOをまとめて0〜1.5重量%添加することは示唆されていると云えるが、MnOとCoO成分のそれぞれを別々に0.0010〜0.0400重量%、0.0001〜0.0009重量%とすることは記載も示唆もされていない。
また甲2、5、6号証には、CoOとMnOについては何も記載されておらず、甲第3、4号証には、鉱滓にMnOが若干含まれていることが記載されているだけであるから、結局、甲第2〜6号証には、紫外線赤外線吸収緑色系ガラス成分としてのMnOとCoO成分については何ら言及されていないと云える。
次にCr2O3成分について検討すると、甲第2号証には、紫外線赤外線吸収緑色系ガラスにおいて、Cr2O3成分が0.0002重量%、0.0003重量%であることが記載されている。
しかしながら、甲1発明と甲第2号証のガラス原材料が同一であるということが云えない以上、甲第2号証から、甲1発明においてもCr2O3成分が0.0002重量%、0.0003重量%であるとまでは云えない。
加えて、甲第2号証の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスの各種特性が4mm厚測定であることを勘案しても、甲第2号証の紫外線透過率は33.4、33.1%であり、それぞれ本件訂正発明1の紫外線透過率の10%以下よりもはるかに悪い。
してみると、紫外線透過率を勘案しても、甲第2号証は、紫外線赤外線吸収緑色系ガラスにおけるCr2O3成分添加の動機付けとはなり得ないと云える。
また甲3〜6号証には、紫外線赤外線吸収緑色系ガラス成分としてのCr2O3成分については何ら言及されていない。
そして、本件訂正発明1において、MnO成分、CoO成分、Cr2O3成分を添加することはTiO2成分と組み合わせることにより、「黄色調のガラス素地が発現しやすい、素地がリームやディストーション等の不均質な欠陥の要因となる」という現象を阻止し、より安定して確実に所期の緑色系色調を維持するという効果を奏するものである(本件特許掲載公報第4頁第7欄第41行〜第8欄第31行参照)。
なお特許異議申立人は、MnO、CoO、Cr2O3の含有量は微量であって、ガラスの溶融時に特に意図していなくても、不純物として不可避的に混入してしまう旨の主張をしているが、特許異議申立人の提出した甲第1〜6号証をみても、ガラス原材料からみて紫外線赤外線吸収緑色系ガラスにおいて不純物として不可避的にMnOが0.0010〜0.0400重量%、CoOが0.0001〜0.0009重量%、Cr2O3が0.0001〜0.0010重量%が混入するとの証拠は提出されていないので、上記主張は採用することができない。
相違点(ハ)について検討すると、甲第2〜6号証において、紫外線透過率が10%以下であるガラスについては記載も示唆もされていない。
(ii)甲第2号証をベースとした対比・判断
甲第2号証には、上記(2)(a)(b)の記載を本件訂正発明1の記載に則して記載すると、「組成がSiO2 71.58重量%、Al2O3 0.12重量%、CaO 8.42重量%、MgO 4.14重量%、NaO2 13.75重量%、K2O 0重量%、SO3 0.13重量%、Fe2O3 0.833重量%、CeO2 0.915重量%、TiO2 0.021重量%、Cr2O3 0.0002重量%、La2O3 0.008重量%であり、A透過率71.3%、全太陽エネルギー透過率 43.5%、紫外線透過率33.4%、主波長505.8nm、色純度2.8の4mmの厚さの赤外線及び紫外線吸収緑色ガラス。」という発明(以下、甲2発明という)が記載されている。
そこで、本件訂正発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明のNaO2はNa2Oの誤記と認められるから甲2発明のガラスの場合、成分の総和は98%を越えており、かつSiO2+Al2O3+TiO2は71.721重量%、CaO+MgO は12.56重量%、Na2O+K2Oは13.75重量%であり、甲2発明の「全太陽エネルギー透過率」、「色純度」は、本件訂正発明1の「日射透過率」、「刺激純度」にそれぞれ相当し、また甲2発明の特性の測定が4mm厚であるが本件訂正発明1の5mm厚測定と大差ない考えられるから、両者は、
「組成がSiO2 71.58重量%、Al2O3 0.12重量%、CaO 8.42重量%、MgO 4.14重量%、Na2O 13.75重量%、SO3 0.13重量%、Fe2O3 0.833重量%、Cr2O3 0.0002重量%、その外CeO2とTiO2とを含み、これら成分の総和は98%を越えており、かつSiO2+Al2O3+TiO2は71.721重量%、CaO+MgO は12.56重量%、Na2O+K2Oは13.75重量%のガラスであり、5mm厚換算で、A光源による可視光線透過率 71.3%、日射透過率 43.5%、D65光源による主波長 505.8nm、刺激純度 2.8%の紫外線赤外線吸収緑色系ガラス」で一致し、以下の(イ)〜(ハ)で相違している。
(イ)本件訂正発明1では、CeO2が1.0〜2.5重量%、TiO2が0.1〜1.0重量%であり、さらなる組成成分のK2Oが0.5〜3.0重量%であるのに対して、甲2発明では、CeO2が0.915重量%、TiO2が0.021重量%、K2Oが0重量%、La2O3が0.008重量%である点
(ロ)本件訂正発明1では、MnOが0.0010〜0.0400重量%、CoOが0.0001〜0.0009重量%、SnO2が0〜1重量%であるのに対して、甲2発明では、MnO、CoOについて記載されていない点
(ハ)本件訂正発明1では、紫外線透過率が10%以下であるのに対して、甲2発明では、紫外線透過率33.4%である点
相違点(イ)については、上記(2)(a)から、甲第2号証にはCeO2が0.2〜1.4重量%と、TiO2が微量含まれることが記載されているから、相違点(イ)は格別のものとは認められないので、ここでは特に相違点(ロ)、(ハ)について検討する。
先ず相違点(ロ)について検討する。
本件訂正発明1のSnO2は任意添加成分であるから、MnO、CoO成分について検討する。甲第1号証において、紫外線赤外線吸収緑色系ガラスにおいて、CoO+MnOが0〜1.5重量%が記載されているが、MnOとCoO成分をそれぞれ0.0010〜0.0400重量%、0.0001〜0.0009重量%とすることは記載も示唆もされていない。
また、甲第3〜6号証において、上記(i)で述べたように紫外線赤外線吸収緑色系ガラスにおいて、MnOとCoO成分をそれぞれ0.0010〜0.0400重量%、0.0001〜0.0009重量%とすることは記載も示唆もされていない。また、これら成分量がガラス原材料から不可避的に混入するとの立証はなされていない。
次に相違点(ハ)について検討する。
上記(i)で述べたように、甲第1号証には紫外線透過率の具体的数値については記載されておらず、甲第3〜6号証において紫外線透過率を10%以下とすることが記載も示唆もされていない。
(iii)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとも、また甲第2号証に記載された発明であるとも云えず、また、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2は本件訂正発明1を引用しさらに限定した発明であるから、上記(1)と同じ理由で、本件訂正発明2は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
4.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、訂正後の本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
紫外線赤外線吸収緑色系ガラス
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 重量%表示で実質的に下記酸化物、SiO267〜75%、Al2O3 0.05〜3.0%、CaO 7.0〜11.0%、MgO 2.0〜4.2%、Na2O12.0〜16.0%、K2O 0.5〜3.0%、SO3 0.05〜0.30%、Fe2O3 0.40〜0.90%、CeO2 1.0〜2.5%、TiO2 0.1〜1.0%、MnO 0.0010〜0.0400%、CoO 0.0001〜0.0009%、Cr2O3 0.0001〜0.0010%、SnO2 0〜1%、これら成分の総和が98%以上、かつSiO2+Al2O3 +TiO270〜76%、CaO +MgO 10〜15%、Na2O+K2O 13〜17%のガラスであり、前記ガラスが、5mm厚換算で、A光源による可視光線透過率が65%以上、日射透過率が30〜40%、紫外線透過率が10%以下、D65光源による主波長が500〜540nm、刺激純度が5%以下であることを特徴とする紫外線赤外線吸収緑色系ガラス。
【請求項2】 前記SnO2が、重量%表示で0.01〜0.6%であることを特徴とする請求項1記載の紫外線赤外線吸収緑色系ガラス。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は比較的高い透視性をもちかつ赤外線紫外線を高吸収して優れた遮蔽性を有し、高居住性、高安全性となって軽量化ができ得る紫外線赤外線吸収緑色系ガラスに関し、建築用窓ガラスや各種ガラス物品はもちろん、ことに車両用窓ガラスに有用な紫外線赤外線吸収緑色系ガラスを提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年富みに、冷房負荷の低減等省エネルギー化あるいは有機物における劣化ならびに退色等から、赤外線や紫外線の反射吸収等多機能化をガラス自体またはガラス表面に付加することにより、人的にも物的にもより高居住性に繋がる板ガラス物品のニーズが急激に高まってきている。
【0003】
そこで、従来の赤外線吸収ガラスに加えて紫外線吸収を意識したガラスが提案されつつあるなかで、さらに高い性能を期待した提案がなされてきている。
例えば特公平5-27578号公報には、原料を溶融操作へ供給し、この溶融操作が別々の液化段階と清澄化段階とを含み、溶融操作から平板ガラス成形操作へ、全操作においてあてはまる成分量であるFe2O3として表して少なくとも0.45重量%の鉄を有する溶融ガラスの連続流を送り、溶融操作中の酸化還元条件を最終製品においてFeOとして表される第一鉄状態の鉄を少なくとも35%与えるように制御し、そしてガラスを成形操作で平板ガラス製品へ成形することを含み、しかも平板ガラスが少なくとも65%の光透過率及び15%以下の赤外線透過率を有する、連続的方法でもって、ソーダ・石灰・シリカ平板ガラスを製造する方法が開示されている。
【0004】
該公報には、重量に基づいて、66〜75%のSiO2、12〜20%のNa2O、7〜12%のCaO、0〜5%のMgO、0〜4%のAl2O3、0〜3%のK2O、0〜1%のFe2O3、及びCeO2、TiO2、V2O5又はMoO3の合計0〜1.5%から本質的になる組成を有するガラス物品であって、0.45重量%の全鉄で、そのうち少なくとも50%がFeOとして表した第一鉄状態にある鉄、及びSO3として表して0.02重量%より少ない硫黄を有し、少なくとも65%の光(400〜770nm)透過率及び15%以下の全太陽赤外線(800〜2100nm)透過率を示すソーダ・石灰・シリカガラス物品が記載されている。
【0005】
また例えば、特公平6-88812号公報には、Fe2O3に換算して0.65〜1.25重量%のFeと、0.2〜1.4重量%のCeO2、または0.1〜1.36重量%のCeO2及び0.02〜0.85重量%のTiO2とを主要な成分として含み、3〜5mmの厚さを有するときに、測色光A可視光(波長400〜770nm)透過率が70%以上であって、全太陽エネルギ-(波長300〜2130nm)透過率が46%以下であって、紫外線(波長300〜400nm)透過率が38%以下となるように、Fe2O3に対するFeOの重量比を定めた赤外線及び紫外線吸収ソーダ石灰シリカ緑色ガラスが開示されている。
【0006】
該公報には、前記Feが0.48〜0.92重量%のFe2O3と0.15〜0.33重量%のFeOであること、FeOの重量%がFe2O3として表された鉄分総量の23〜29%の還元パ-セントをなすこと、測色光C主波長が498〜525nmであって、色純度が2〜4%であること、さらにA)65〜75重量%のSiO2、B)10〜15重量%のNa2O、C)0〜4重量%のK2O、D)1〜5重量%のMgO、E)5〜15重量%のCaO、F)0〜3重量%のAl2O3、を含むこと等が記載されている。
【0007】
また例えば、特開平4-310539号公報には、下記酸化物換算で、SiO265〜75重量%、Al2O30.1〜5重量%、Na2O10〜18重量%、K2O 0〜5重量%、CaO5〜15重量%、MgO1〜6重量%、CeO20.1〜3重量%、Fe2O30.5〜1.2重量%、SO30.05〜1.0重量%、TiO20〜1.0から本質的になり、かつ、Fe2O3として表わされた全鉄分含有量のうち、重量で20〜40%が酸化第一鉄(FeO)である赤外線・紫外線吸収ガラスが開示されている。
【0008】
該公報には、上述の組成範囲のガラスに着色剤として、NiO、CoO、MnO、V2O5、MoO3等を1種類または2種類以上の合計量が0〜1.5重量%の範囲で添加しても良いこと、更に紫外線による色調の変化(solarization)やアンバ-の発色を防止するため、必要に応じてZnOを0〜3重量%添加しても良いこと、また実施例では5mm厚みで可視透過率(380〜780nm)が66.1〜66.8%、太陽熱透過率(340〜1800nm)が37.7〜38.4%、主波長が501〜503nm(緑色)であることが記載されている。
【0009】
さらに例えば、特開平6-321577号公報には、重量%で、SiO265〜75%、Al2O30.1〜5、Na2O10〜18%、K2O 0〜5%、CaO5〜15%、MgO1〜6%、SO30.05〜1.0%、CeO2換算したCe分0.2〜1.5%、TiO2換算したTi分0〜1.0%、CoO 0.001〜0.006%、Fe2O3換算したFe分0.3〜1.6%から本質的になる組成を有し、かつ、Fe2O3換算したFe分のうち5〜18重量%がFe2+である紫外線吸収着色ガラスが開示されている。
【0010】
該公報には、標準光源Cにより測定した主波長が488〜492nmで色純度が3〜4%であること、厚さが3〜5mmで標準光源Aにより測定した可視光透過率が70%以上、ISOに規定した紫外線透過率が15%以下であること、CoOの含有量が0.001%より少ないと主波長が長くなり過ぎ黄色の色調となり、0.006%より多いと主波長が短くなり過ぎ、いずれも青色を呈するガラスが得られないこと等が記載されている。
【0011】
また例えば、特開平4-46031号公報には、重量%で、SiO265〜75%、Al2O30〜5%、Na2O10〜18%、K2O0〜5%、CaO5〜15%、MgO1〜5%、酸化セリウム0.1〜3%、FeO0.2〜1%、SnO20.1〜3%から本質的になる組成の紫外・赤外線吸収ガラスが開示されている。
【0012】
該公報には、上述の組成範囲のガラスに着色剤として、NiO、CoO、MnO、V2O5、MoO3等を1種類または2種類以上の合計量が0〜1.5重量%の範囲で添加しても良いこと、更に紫外線による色調の変化(solarization)やアンバ-の発色を防止するため、必要に応じてZnOを0〜3%添加しても良いこと、またSnO2は還元剤であり、0.1%より少ないとその効果が小さく、3%より多いとガラスの色がアンバ―となること、実施例における主波長は488〜497nmであることが記載されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
前述したような例えば特公平5-27578号公報に記載のものは、SO3成分を0.02重量%より少なくし、通常のフロート法による板ガラス製造での溶融操作手段では到底所期の赤外線紫外線吸収ガラスを得ることが困難であって、種々の複雑な手段工程、例えば液化段階溶解段階、清澄段階、攪拌室ならびに攪拌器等が必要となるようなものであり、また0〜1%のFe2O3及びCeO2、TiO2、V2O5又はMoO3の合計が0〜1.5%であることが記載されているものの、CeO2のみの添加の際には1.0重量%、CeO2とTiO2を添加する際にはそれぞれCeO2が0.25重量%とTiO2が1.0重量%または0.5重量%であることが記載されているだけであって、例えばCeO2のみを1.0重量%添加した際には過剰のCeO2により希望される程還元されていなく、その全太陽紫外線透過率が29.2%に留まる等、必ずしも充分高性能の所期の赤外線紫外線吸収ガラスとは到底言えないものである。
【0014】
また特公平6-88812号公報に記載のものは、例えばCeO2が0.915重量%でTiO2が0.021重量%であるものは紫外線透過率が33.4%と高く充分高性能のものとは言えず、また赤外線の吸収においても必ずしも充分優れるものとは言い難いものである。
【0015】
また特開平4-310539号公報に記載のものは、例えば着色剤として、NiO、CoO、MnO、V2O5、MoO3等を1種類または2種類以上の合計量が0〜1.5重量%の範囲で添加しても良いことが記載され、実施例でも着色剤として、Ni、Co、Mn、V、Moの酸化物粉を用いたことが記載されているものの、どのように用いるかの具体的な記載は実施例を含めてなく、その用い方及びその寄与の程度も不明である。また例えば実施例ではCeO2が0.77〜0.96重量%でTiO2が0.01〜0.04重量%であるものが記載されているものの、主波長が503nm程度の緑色であり、紫外線透過率の程度は不明で明らかでないものである。
【0016】
また特開平6-321577号公報に記載のものは、例えば実施例においてCeO2が1.10重量%、TiO2が0.1重量%でCoOが0.002重量%であると紫外線透過率が11.2%となるもののまだ充分高性能の紫外線吸収ガラスとは言い難いものであり、しかも主波長が491.2nmで青色であり、さらに太陽熱透過率が62.7%と大きいものである。
【0017】
また例えば、特開平4-46031号公報に記載のものは、例えば酸化セリウム0.1〜3%、FeO0.2〜1%、SnO20.1〜3%であって、主波長は488〜497nmで青色系であり、紫外線透過率の程度は不明で明らかでない紫外・赤外線吸収ガラスである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、従来のかかる課題に鑑みてなしたものであって、通常のフロート法による板ガラスの製造ができ、しかもCeO2成分をできるだけ多くし、しかも全鉄を極端に多くすることなく、TiO2成分と組合わせてCeO2成分を適度の増量とする程度に止めるようにするとともに、さらにMnO成分、CoO成分ならびにCr2O3成分、またさらに適宜必要に応じてSnO2成分をバランスよく添加組合わせることで.変色や不均質による生産性の低下ならびに操業条件の悪化を防止し解消しうるようにし、生産性向上と品質の安定維持を高めるなかで、赤外線と紫外線を充分優れた所期の吸収を有する高性能のものであり、比較的透視性がある緑色系の色調を安定化して発現せしめ、しかも易強化性で耐候性、成形性も充分に有する有用な紫外線赤外線吸収緑色系ガラスを提供するものである。
【0019】
すなわち、本発明は、重量%表示で実質的に下記酸化物、SiO267〜75%、Al2O30.05〜3.0%、CaO 7.0〜11.0%、MgO 2.0〜4.2%、Na2O12.0〜16.0%、K2O 0.5〜3.0%、SO3 0.05〜0.30%、Fe2O3 0.40〜0.90%、CeO2 1.0〜2.5%、TiO2 0.1〜1.0%、MnO 0.0010〜0.0400%、CoO 0.0001〜0.0009%、Cr2O3 0.0001〜0.0010%、SnO2 0〜1%、これら成分の総和が98%以上、かつSiO2+Al2O3+TiO270〜76%、CaO +MgO 10〜15%、Na2O+K2O 13〜17%のガラスであり、前記ガラスが、5mm厚換算で、A光源による可視光線透過率が65%以上、日射透過率が30〜40%、紫外線透過率が10%以下、D65光源による主波長が500〜540nm、刺激純度が5%以下であることを特徴とする紫外線赤外線吸収緑色系ガラス。
【0020】
ならびに、前記SnO2が、重量%表示で0.01〜0.6%であることを特徴とする上述した紫外線赤外線吸収緑色系ガラスをそれぞれ提供するものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
ここで、SiO2成分を重量%で67〜75%としたのは、67%未満では表面にヤケ等が発生しやすく耐候性が下がり実用上の問題が生じてくるものであり、75%を超えると、溶融も難しくなるものであり、Al2O3成分を重量%で0.05〜3.0%としたのは、0.05%未満では耐候性が下がり表面にやけ等が発生しやすく実用上の問題が生じてくるものであり、3%を超えると失透が生じやすくなり成形温度範囲が狭くなり製造が難しくなるものであり、CaO成分を重量%で7.0〜11.0%としたのは、7.0%未満では融剤として不足気味となり溶融温度も高くなりまた流動温度を低くしないので製造しにくくなり、11%を超えると失透し易くなり、成形作業範囲が狭くなり製造が難しくなるものであり、MgO成分を重量%で2.0〜4.2%としたのは、2.0%未満では溶融温度が上がり操作範囲を狭めるので製造がしにくくなり、4.2%を超えると易強化性が下がるものであり、Na2O成分を重量%で12.0〜16.0%としたのは、12.0未満では溶融性が悪化しかつ易強化性が下がり、成形性が難しくなり、失透も生じ易くなるので操作範囲が狭まり製造しにくくなり、16%を超えると耐候性が下がり、表面にやけ等が発生しやすくなり実用上の問題が生じてくるものであり、K2O成分を重量%で0.5〜3.0%としたのは、0.5%未満では易強化性が下がり、3.0%を超えると耐候性が下がりかつコストも高くなるものである。
【0022】
さらに、SO3成分を重量%で0.05〜0.30%としたのは、0.05%未満では例えば通常の溶融において脱泡あるいは均質性上不充分となり易い程度にしかできなくなり、0.30%を超えると特にガラスの着色状態に影響を与え、例えば黄色やアンバー色がかった色調に移行し易くなる等が発現し所期の緑系色調が得られなくなるためであり、好ましくは0.15%前後とどちらかと言えば範囲内でも低いところがよいものである。
【0023】
さらにまた、Fe2O3成分を重量%で0.40〜0.90%としたのは、赤外線を吸収するFeO成分量と紫外線を吸収し所期の色調を確保するFe2O3成分量との総量として、前述した各種光学特性を安定して得るために、他のCeO2、TiO2等の各成分量とともに必要であり、0.40%未満では上述に対する作用が劣り、0.90%を超えると特に可視光線透過率が低下するとともに、所期の色調を制御することができずらくなって不安定化することとなるからであり、より確実な所期の色調を得るためには好ましくは重量%で0.45〜0.85%程度であって、より好ましくは重量%で0.50〜0.80%程度である。
【0024】
CeO2とTiO2成分は紫外線の吸収作用を有し、CeO2成分を1.0〜2.5%とし、TiO2成分を0.1〜1.0%としたのは、ガラスにおける還元率をほとんど変化させないしかも紫外線吸収能がCeO2成分より小さいTiO2成分と、ガラスにおける還元率を比較的大きく変化させしかも紫外線吸収能を充分与えるCeO2成分とを上述の特定範囲内に限定して組み合わすことで、僅かの含有量で所期の特性を効率的に得ることでき、従来の還元率をほとんど変化させないようにしつつ、前述した全鉄におけるFe2O3とFeOとの割合を制御して、可視光領域の透過率を全体的に低下させないようにしかつ高性能の紫外線吸収や赤外線吸収等をうるとともに、緑色系色調等所期の光学特性を達成し得るようにするためである。
【0025】
さらにまた、紫外線の吸収に効果はあって酸化性が強力なCeO2成分が比較的多くガラス素地中に存在するようにし、Fe2O3とFeOを含む全鉄を酸化させFe+3に変えるように働きすぎ、例えば黄色調のガラス素地を発現し易くなり、該素地が所謂リームやディストーション等の不均質な欠陥の要因となって、生産性の低下や作業性の悪化を招くこととなる。該現象を阻止するためにもTiO2成分やMnO成分、CoO成分、Cr2O3成分と組み合わせることが重要であってより安定して確実に所期の緑色系色調と前記欠陥の発現を抑制できるとともに前記光学特性を維持できるものである。好ましくはCeO2成分を約1.2〜2.2%程度である。
【0026】
さらにまた、紫外線の吸収に効果があるものの可視域についても吸収するTiO2成分はガラス素地中のFe2O3としての全鉄濃度を低下しなければならなくなり、総合的にマイナスとなることとなるので、TiO2成分としては0.1〜1.0%の範囲とし、好ましくは0.30〜0.8%程度であり、しかも全鉄濃度とTiO2成分およびCeO2成分範囲とのバランスを調整せしめ、その補足としてCoO成分を0.0001〜0.0009%の範囲で可視光透過率にはほとんど影響を与えず、還元率によって変化する色調を補整する程度の微量添加とし、色調調整を比較的容易にできるようにする。好ましくは0.0001〜0.0007%程度であってよりバランスよく調整し易いこととなる。MnO成分としては約0.0010〜0.0400%程度であることが緑色系色調を制御するためにも微妙な影響を付与し得ることから好ましいものである。さらにCr2O3成分としては約0.0001〜0.0010%程度であることがCoO成分と同様に好ましいものである。
【0027】
ことに、MnO成分はFeとMnとの関係ではFeが酸化される方向でかつ微量ながら還元率が低い方向になる傾向があり、CeとMnとの関係ではMnが酸化される方向であって還元率には影響が少ないものであるものの、MnがFeとCeらとあいまって中性的に相互作用させながら、約500nm付近にあるMnOの吸収波長でもって前記色調調整に大きな影響を与えないで微力ながら調整できるようにしたものであり、またMnO成分を多量に用いれば例えばソラリゼ-ション等の現象を発現するように成り易くなるなどからCeO2成分の量等から勘案して約400ppm程度を超えないようにしたものであり、重要な役目をもつものである。
【0028】
さらにまた、還元率としては、(FeO/Fe2O3)×100の表示で約20〜45%程度であり、好ましくは25〜42%程度である。すなわち酸化性が強いCeO2成分を極力低減するようにしたことで、全鉄の還元率を高める必要もなく、むしろ該全鉄の還元率のアップは紫外線の吸収率を低下させ好ましくないものであり、紫外線の遮蔽率と日射の透過率を考慮すると前記範囲となる。いずれにしても本発明は着色成分とその濃度さらにバッチの酸化還元条件を調整することで、色調や光学特性共所期のめざす紫外線赤外線吸収緑色系ガラスを得ることができるものである。
【0029】
また、SiO2、Al2O3、CaO、MgO、Na2O、K2O、SO3、Fe2O3、CeO2、TiO2、MnO、CoO、Cr2O3の成分の総和を重量百分率で98%以上としたのは、例えばZnO、SnO2等微量成分を、各微量成分の合計でも2%を超えない量に制御するためである。さらに具体的には例えば、ZnO成分としてはガラスの物理的特性と色調の安定性等から例えば約1%以下程度、SnO2成分としては還元剤的作用による還元率の調整で黄色変質素地の発生の抑制、およびSn2+は約250nmと約400nm付近に吸収をもち、紫外線吸収能的作用による紫外線吸収補整等、ならびにガラスの色調の安定化から例えば約1%以下程度の添加であり、好ましくは約0.01〜0.6%程度、より好ましくは約0.01〜0.1%程度であってコスト面への影響を少なくするなかで色調ムラの抑制に寄与し色調のより安定化が計られる。
【0030】
さらに、SiO2+Al2O3+TiO2を重量百分率で70〜76%としたのは、70%未満では耐候性が下がり、76%を超えると易強化性が下がる問題が生じるものであり、好ましくは70〜74%程度である。CaO+MgOを重量百分率で10〜15%としたのは、CaOおよびMgO成分は溶融温度を下げるために用いられるとともに、10%未満では易強化性が下がり、15%を超えると失透しやすくなり製造上難しくなるものであり、好ましくは11.5〜15%程度である。Na2O+K2O を百分率で13〜17%としたのは、13%未満では易強化性が下がり、失透も生じやすくなって成形において作業温度範囲が狭くなり、製造が難しくなり、17%を超えると耐候性が下がり実用上の問題を生じるものであるとともにコスト的にも高くなるものである。
【0031】
また、易強化性については、粘度温度が109ポイズで約650〜685℃程度、1012ポイズで約555〜590℃程度、かつ両者の温度差が約95〜105℃程度になるようになるガラス成分組成であり、あるいは該粘度温度が該所期の特定範囲をクリヤ-していることならびに軟化点と歪点との温度差が大体200〜240℃程度の範囲にあるようになるガラス成分組成である。
【0032】
なお、粘度温度(℃)についてはベンディングア-ム法により粘度曲線を測定して109および1012ポイズの温度を求めるとともに、リリ-法によって歪点、リトルトン法によって軟化点を測定した。
【0033】
さらにまた、5mm厚換算で、A光源による可視光線透過率が65%以上、日射透過率が30〜40%、紫外線透過率が10%以下、D65光源による主波長が500〜540nm、刺激純度が5%以下であるとしたのは、前記可視光線透過率が65%以下では特に自動車のフロント窓ガラスにおいてガラスの透視性、ことに日暮れ、夜間あるいは雨降りなどに際し、物体の識別性の低下が発現しやすく好ましくなく、好ましくは前記可視光線透過率が65%以上、より好ましくは約2〜5mm板厚において可視光線透過率が約70%前後程度以上である。
【0034】
また日射透過率が40%を超えると冷房負荷の増大あるいは車内・室内での居住性を向上する効果の実感が少なく充分満足することができないこととなり、30%未満では透視性ことに前述した識別性の低下あるいは色調にも影響を与え兼ねないこととなる。
【0035】
また例えば、紫外線透過率が10%を超えると車内・室内での物品の脱色・劣化あるいは肌焼け等人的影響により居住性の悪化に結び付き易く、1%未満では例えば前記可視光線透過率が得られなくなる等の弊害が発生し易くなり、好ましくは7〜2%程度である。D65光源による主波長が540nmを超えると黄色あるいはアンバー色が影響して所期の緑色調系に成らず、500nm未満ではブルー色が勝ち過ぎて所期の緑色調系と成らないためであり、好ましくは約505〜530nm程度である。刺激純度が5.0%を超えると物体の識別性が低下するようになって例えば日暮れやどんよりした雨降り等で乗員の透視性に支障を来し、安全性の確保等が困難となるためである。なお紫外線域は290〜390nmとし、可視域等は従来通りとした。
【0036】
さらにまた例えば、前記紫外線赤外線吸収緑色系ガラスを製造するに当たり、原料として本発明のマザーガラス組成に例えばFe2O3、SO3、CeO2、TiO2あるいはさらにMnO、S2-等をも含むフリットガラスまたはカレットまたはこれらに属するもの、さらにFe2O3とCoOを含むフリットガラスまたはカレット、さらにCoOあるいはCr2O3を含むフリットガラスあるいはカレット等を用いる方が好ましいものであり、これらの量的調整が確実で安定して確保でき易く、FeOのガラス中への取り込みが少しでも容易となり、しかも実窯の操業条件等をほぼ不変とし、ガラスの酸化還元状態を従来と出来るだけ変えないように、すなわち実窯で還元率〔(FeO/Fe2O3)×100〕が約25%程度であるのに対し本発明の赤外線紫外線吸収緑色系ガラスの製造に当たってはCeO2等種々の作用を加味し20〜45%程度とするのに少しでも役立つためであり、微量原料として炭素、Zn、Sn等の金属粉または酸化物のうち少なくともその一つを用いることもでき、例えば時として芒硝(Na2SO4)等清澄剤の作用効果を助ける必要があり、一方では前記所期の色調の確保に悪い影響を与えることともなり易く、ZnあるいはSn等還元剤もFe2O3とFeOとのバランスを調整しかつ安定化せしめるのに必要な場合もあるためである。
【0037】
なお、本発明の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスは易強化ガラス組成物をも含むものであって、板厚1mm前後の薄板ガラスから15mm前後の厚板ガラスで、平板または曲げ板として生板から強度アップしたもの、半強化したもの、強化したもの等で、単板ガラス、合せガラス、積層ガラスあるいは複層ガラス等として、建築用窓材、ことに車両用窓ガラスで用いることができる。
【0038】
なおまた、ガラス溶融窯の調整域における雰囲気に窒素ガスまたは窒素ガスを含む混合ガスあるいは燃焼排ガスを導入することも場合によっては色調安定に寄与するものであった。
【0039】
前述したとおり、本発明の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスは、特定酸化物成分を特定組成範囲で組み合わせ、特にCeO2成分を増量してTiO2成分、MnO成分、CoO成分、Cr2O3成分と適宜必要に応じて色調安定化剤としてのSnO2成分とを組み合わせ、その濃度を制御したガラスとし、あるいはガラス組成内に易強化性をも含み持たせしかも還元率を制御するよう組み合わせて特異な原料をも用い、上述したガラスを通常のフロート法で製造することによって、例えば黄色調のガラス素地の発生を抑制し解消でき、所謂リームやディストーションの発現を抑制し、さらには場合によっては微細泡の発生等による歩留りの低下を激減することができ、操業ならびに品質の安定向上ができ、歩留りと生産性の向上に充分寄与することとなる。
【0040】
さらに例えば溶融性、清澄性、耐候性、成形性、失透性、コスト等を考慮し、従来のフロートガラスの製造条件ならびにそのガラスの性質等をほとんど変化させず、加えて易強化性を持ち合わせるようなガラス組成も含めかつ高性能の赤外線ならびに紫外線の吸収を得て、人的物的に高居住性であって、物体の識別も優れた透視性を充分持つものとなって高安全性を確保でき、グリーン色調系で例えば車・室内外と充分調和のあるものとなって環境的にも優れたものとなり、さらに、従来の熱強化方法では得られなかった薄板ガラス等でも、充分な強化度あるいは充分強度アップが得られるようになるものとすることができ、建築用窓ガラスはもちろん家具用ガラス、調理用ガラス、ことに自動車用等車両用窓ガラス等に有用な紫外線赤外線吸収緑色系ガラスを提供できるものである。
【0041】
【実施例】
以下本発明の実施例について説明する。ただし本発明は係る実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1
ガラス原料として例えば珪砂、長石、ソーダ灰、ドロマイト、石灰石、芒硝、ベンガラ、酸化チタン、炭酸セリウムあるいはイルメナイト、カーボン、スラグ、フリットガラスやカレット、例えば重量%でFe2O3約0.09%とTiO2約0.04%を含むクリアカレット(Cカレット)、Fe2O3約0.675%とTiO2約0.20%とCeO2約0.60%等を主に含むフリットガラス(NMフリット)またはカレット(NMカレット)、さらにCoO約0.0960%程度を含むフリットガラス(Hフリット)または重量%でFe2O3約0.36%とCoO約0.0017%程度を含むカレット(Hカレット)、あるいは例えばAl2O3,Fe2O3,CaCO3,MgCO3,Na2SO3,NCO3,CeO2,TiO2,CoOの化学試薬等を適宜用い、所期のガラス組成を目標組成として秤量調合し、ことに通常の実窯と多少高い程度の還元率(例えば35.5±5%程度)を得るようにしたものである。
【0043】
なお、原料バッチとして、例えば芒硝/(珪砂+長石)を約1%程度(0.5〜2%程度)、カレット約50%程度、(カーボン/硝子化量)×100=約0.16程度等とした。
【0044】
該調合原料をルツボに入れ、約1450℃前後に保持した実窯(例えば投入口横側壁部、コンディション部側壁部)または実窯と同等にある電気炉中で約3〜4時間程度溶融しガラス化して、さらに均質化および清澄のため、1420〜1430℃で約1.5〜2時間程度保持した後、型に流し出しガラスブロックとし、大きさ100mm×100mmで厚み約5mm程度のガラス板に切り出して研削研磨し、またはガラスを板状に流し出し、各試料とした。
【0045】
この試料について、ガラス成分組成(重量%)についてはJIS R-3101に基づく湿式分析法等で行い、光学特性(5mm厚みにおける)としての可視光線(波長380〜780nm)透過率(A光源にて、%)、紫外線(波長297.5〜377.5nm)透過率(A光源にて、%)、および日射(波長340〜1800nm)透過率(A光源にて、%)、主波長(D65光源にて、nm)、刺激純度(D65光源にて、%)については340型自記分光光度計(日立製作所製)とJIS Z-8722、JIS R-3106、ISO/DIS-9050にて測定計算して求める等を行った。
【0046】
その結果、ガラス成分組成は重量表示で、SiO2 69.93%、Al2O3 1.96%、CaO 7.93%、MgO 3.46%、Na2O 12.79%、K2O 1.07%、SO3 0.18%、他は表1に示すように、Fe2O30.631%、TiO20.30%、CeO21.70%、MnO 280ppm、CoO 2.4ppm、Cr2O3 2.0ppmと成り、また成分の総和が約99.979%であってかつSiO2+Al2O3+TiO272.19%、CaO +MgO11.39%、Na2O+K2O13.86%であり、還元率〔(FeO/全Fe2O3)×100〕は約35.5%程度となった。
【0047】
また光学特性は、表1に示すように、可視光線透過率が約67.1%、日射透過率が約37.3%、主波長が約517nm、紫外線透過率が約4.8%、刺激純度が約3.3%であってグリーン系色調であり、本発明がめざす所期の高性能の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスであった。
【0048】
なお、本発明の約2.5mm板厚の曲げ紫外線赤外線吸収緑色系ガラスを外側に用い、内側に約2mm板厚の熱線反射膜被覆曲げガラス板を配し、該膜側を内側にしてPVB中間膜を介して積層した合せガラスを試作し、自動車の窓ガラスに用いたところ、規格をクリヤーすることができ、本発明による高性能化と多機能化が計られ、車内外の居住性なよびに安全性がより優れたものとなるものであった。
【0049】
実施例2
前記実施例1と同様なガラス原料、前記Cカレット、NMカレット、Hカレットを用い、秤量調合し、溶融操作をし、得たガラスを同様に試料化した。
【0050】
なお、原料バッチとして、例えば芒硝/(珪砂+長石)を約0.8%程度、Cカレット約35%程度、NMカレット約13%程度、Hカレット約12%程度等とした。
得られた試料について前記実施例1と同様に分析、測定、評価した結果、ガラス成分組成は重量表示で、SiO2 69.50%、Al2O3 1.80%、CaO 8.52%、MgO 3.48%、Na2O 12.63%、K2O 0.91%、SO30.12%、他は表1に示すように、Fe2O30.597%、TiO20.5%、CeO21.91%、MnO 275ppm、CoO 3ppm、Cr2O3 2ppmと成り、また成分の総和が約99.995%であってかつSiO2+Al2O3+TiO2 71.8%、CaO +MgO 12%、Na2O+K2O13.54%であり、還元率〔(FeO/Fe2O3)×100〕は約36.8程度となった。
【0051】
また光学特性は、表1に示すように、可視光線透過率が約67.6%、日射透過率が約35.0%、主波長が約516nm、紫外線透過率が約4.4%、刺激純度が約3.8%であり、所期のグリーン系色調であり、本発明がめざす所期の高性能の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスであった。
【0052】
さらに2〜3mm程度の薄いガラス板でも高効率、高歩留りで前記規格に合格するものが得れるようになるものであった。
実施例3
前記実施例2と同様なガラス原料を用い、秤量調合し、溶融操作をし、得たガラスを同様に試料化した。
【0053】
得られた試料について前記実施例1と同様に分析、測定、評価した結果、ガラス成分組成は重量表示でSiO270.0%、Al2O31.6%、CaO8.96%、MgO 3.04%、Na2O12.71%、K2O0.9%、SO30.10%、他は表1に示すように、Fe2O30.612%、TiO20.43%、CeO21.60%、MnO 280ppm、CoO 4.1ppm、Cr2O3 4ppmと成り、また成分の総和が約99.981%であって、SiO2+Al2O3 +TiO2 72.03%、CaO +MgO 12%、Na2O+K2O 13.61%であり、前記還元率は約34.6%程度となった。
【0054】
光学特性は、表1に示すように、可視光線透過率が約65.7%、日射透過率が約35.8%、主波長が約512nm、紫外線透過率が約4.8%、刺激純度が約3.5%であり、所期のグリーン系色調であり、本発明がめざす所期の高性能の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスであった。
【0055】
易強化性についても、JIS、例えばR 3211あるいはR 3212で決められた規格を充分満足するものであり、また実施例1と同様、薄いガラス板でも高効率、高歩留りで前記規格に合格するものが得れるようになるものであった。
【0056】
実施例4
前記実施例1と同様なガラス原料を用い、秤量調合し、溶融操作をし、得たガラスを同様に試料化した。
【0057】
得られた試料について前記実施例1と同様に分析、測定、評価した結果、基礎ガラス成分組成は前記実施例1と同様であって、着色成分のみ、他は表1に示すように、Fe2O30.771%、TiO2 0.3%、CeO2 1.55%、MnO 285ppm、CoO 4.0ppm、Cr2O3 1ppmと成り、また成分の総和が約99.970%であって、SiO2+Al2O3 +TiO2 72.19%、CaO +MgO 11.39%、Na2O+K2O 13.86%であり、前記還元率は約27.5%程度となった。
【0058】
光学特性は、表1に示すように、可視光線透過率が約65.5%、日射透過率が約34.5%、主波長が約519nm、紫外線透過率が約4.5%、刺激純度が約3.8%であり、所期のグリーン系色調であり、本発明がめざす所期の高性能の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスであった。
【0059】
実施例5
前記実施例2と同様なガラス原料を用い、秤量調合し、溶融操作をし、得たガラスを同様に試料化した。
【0060】
得られた試料について前記実施例1と同様に分析、測定、評価した結果、基礎ガラス成分組成は前記実施例2と同様であって、着色成分のみ、他は表1に示すように、Fe2O30.635%、TiO20.44%、CeO21.61%、MnO 280ppm、CoO 4.0ppm、Cr2O3 5ppmと成り、また成分の総和が約99.674%であって、SiO2+Al2O3 +TiO2 71.74%、CaO +MgO 12%、Na2O+K2O 13.54%であり、前記還元率は約38.2%程度となった。
【0061】
光学特性は、表1に示すように、可視光線透過率が約66.4%、日射透過率が約33.1%、主波長が約507nm、紫外線透過率が約5.0%、刺激純度が約4.3%であり、所期のグリーン系色調であり、本発明がめざす所期の高性能の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスであった。
【0062】
実施例6
前記実施例3と同様なガラス原料を用い、秤量調合し、溶融操作をし、得たガラスを同様に試料化した。
【0063】
得られた試料について前記実施例1と同様に分析、測定、評価した結果、基礎ガラス成分組成はSiO269.3%、Al2O31.6%、CaO8.95%、MgO 3.21%、Na2O12.87%、K2O0.9%、SO30.10%であって、着色成分組成は表1に示すように、Fe2O30.737%、TiO2 0.2%、CeO22.09%、MnO 280ppm、CoO 5.0ppm、Cr2O3 3ppmと成り、また成分の総和が約99.986%であって、SiO2+Al2O3+TiO2 71.10%、CaO+MgO 12.16%、Na2O+K2O 13.77%であり、前記還元率は約25.6%程度となった。
【0064】
光学特性は、表1に示すように、可視光線透過率が約66.5%、日射透過率が約38.7%、主波長が約513nm、紫外線透過率が約4.9%、刺激純度が約2.9%であり、所期のグリーン系色調であり、本発明がめざす所期の高性能の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスであった。
【0065】
実施例7
前記実施例3と同様なガラス原料を用い、秤量調合し、溶融操作をし、得たガラスを同様に試料化した。(但し、カーボン添加量約0.15%)
得られた試料について前記実施例1と同様に分析、測定、評価した結果、基礎ガラス成分組成はSiO269.5%、Al2O31.8%、CaO8.5%、MgO3.4%、Na2O12.7%、K2O0.9%、SO30.12%であって、着色成分組成は、Fe2O30.798%、TiO20.4%、CeO21.25%、SnO20.55%、MnO 280ppm、CoO 4.0ppm、Cr2O3 3ppmと成り、また成分の総和が約99.947%であって、SiO2+Al2O3 +TiO2 71.7%、CaO +MgO 11.9%、Na2O+K2O 13.6%であり、前記還元率は約25.4%程度となった。(但し、FeO 0.203%)
光学特性は、可視光線透過率が約67.2%、日射透過率が約37.9%、主波長が約508nm、紫外線透過率が約6.5%、刺激純度が約4.3%であり、所期のグリーン系色調でありしかも色調も安定よく、高品位で効率よく、本発明がめざす所期の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスを製造することができた。
【0066】
実施例8
前記実施例3と同様なガラス原料を用い、秤量調合し、溶融操作をし、得たガラスを同様に試料化した。(但し、カーボン添加量約0.18%)
得られた試料について前記実施例1と同様に分析、測定、評価した結果、基礎ガラス成分組成はSiO269.5%、Al2O31.8%、CaO8.51%、MgO3.4%、Na2O12.8%、K2O0.9%、SO30.12%であって、着色成分組成は、Fe2O30.702%、TiO20.65%、CeO21.48%、SnO20.10%、MnO 280ppm、CoO 4.0ppm、Cr2O3 3ppmと成り、また成分の総和が約99.991%であって、SiO2+Al2O3 +TiO2 71.95%、CaO +MgO 11.91%、Na2O+K2O 13.7%であり、前記還元率は約33.3%程度となった。(但し、FeO 0.233%)
光学特性は、可視光線透過率が約68.3%、日射透過率が約36.4%、主波長が約518nm、紫外線透過率が約4.8%、刺激純度が約4.8%であり、所期のグリーン系色調でありしかも色調も安定よく、高品位で効率よく、本発明がめざす所期の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスを製造することができた。
【0067】
実施例9
前記実施例3と同様なガラス原料を用い、秤量調合し、溶融操作をし、得たガラスを同様に試料化した。(但し、カーボン添加量約0.20%)
得られた試料について前記実施例1と同様に分析、測定、評価した結果、基礎ガラス成分組成はSiO269.5%、Al2O31.8%、CaO8.53%、MgO3.4%、Na2O12.85%、K2O0.9%、SO30.12%であって、着色成分組成は、Fe2O30.689%、TiO2 0.598%、CeO21.55%、SnO20.03%、MnO 280ppm、CoO 4ppm、Cr2O3 3ppmと成り、また成分の総和が約99.996%であって、SiO2+Al2O3 +TiO2 71.90%、CaO +MgO 11.93%、Na2O+K2O 13.75%であり、前記還元率は約34.9%程度となった。(但し、FeO 0.240%)
光学特性は、可視光線透過率が約67.8%、日射透過率が約36.2%、主波長が約520nm、紫外線透過率が約4.5%、刺激純度が約5.0%であり、所期のグリーン系色調でありしかも色調も安定よく、高品位で効率よく、本発明がめざす所期の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスを製造することができた。
【0068】
比較例1
前記したと同様にして得られたガラスを同様に試料化した。
得られた試料について前記実施例1と同様に分析、測定、評価した結果、ガラス成分組成は重量表示でSiO272.4%、Al2O31.7%、CaO6.45%、MgO3.0%、Na2O13.1%、K2O1.0%、SO30.22%、他は表1に示すように、Fe2O30.865%、TiO20.02%、CeO21.24%と成り、また成分の総和が約99.995%であって、SiO2+Al2O3+TiO274.12%、CaO +MgO 9.45%、Na2O+K2O 14.1%であり、前記還元率は約0.5%程度であり、光学特性は表1に示すように、可視光線透過率が約79.4%、日射透過率が約71.7%、主波長が約571nm、紫外線透過率が約2.5%、刺激純度が約16%であり、所期のグリーン系色調であるとは必ずしも言えないものであって、断熱性能も悪く、本発明がめざす所期の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスではなかった。
【0069】
また黄色状素地の発現が少々見られ、所謂リームあるいはデストーション等がたまたま発生することがあり、必ずしも極めて充分とは言い難く、さらに品質および生産性を高める必要を多少感じるようなものであった。
【0070】
さらに易強化性についても、前記実施例3と同様に実施したところ、特に前記実施例3乃至4とは差異があるものであってJIS例えばR3211で決められた規格を必ずしも満足するものではなかった。また強化処理等で必ずしも効率や歩留りを向上させるものではなかった。
【0071】
比較例2
前記したと同様にして得られたガラスを同様に試料化した。
得られた試料について前記実施例1と同様に分析、測定、評価した結果、ガラス成分組成は重量表示でSiO271.0%、Al2O32.0%、CaO8.6%、MgO 3.65%、Na2O13.2%、K2O1.0%、SO30.12%、他は表1に示すように、Fe2O30.39%、TiO20.02%、CoO 19ppmと成り、また成分の総和が約99.981%であって、SiO2+Al2O3+TiO2 73.02%、CaO +MgO 12.25%、Na2O+K2O 14.2%であり、前記還元率は約27.1%程度であり、光学特性は表1に示すように、可視光線透過率が約75.1%、日射透過率が約56.8%、主波長が約490nm、紫外線透過率が約29.7%、刺激純度が約4.5%であり、ブル-系色調であり、断熱性能も充分ではなく、本発明がめざす所期の紫外線赤外線吸収緑色系ガラスではなかった。
【0072】
【表1】

【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、特定酸化物成分を特定組成範囲で組み合わせた紫外線赤外線吸収緑色系ガラスとし、しかもCeO2の濃度を増加しTiO2と組み合わせ、かつMnOやCoOやCr2O3を微量成分として添加し、しかも適宜必要に応じてSnO2を添加したものとし、特異な原料を組み合わせて用いることもでき、還元率を制御し、高性能の赤外線の吸収と紫外線の吸収とを緑色系色調とともにバランス良く実現し、充分透視性を持ち、所期のグリーン系色調を呈するガラスを、フロート法における実窯の操業条件ならびに製板条件を大幅に変更することなく、色調を安定化できて品質や歩留りを高めて生産性を向上し、安定操業で製造することができ、人的物的両面で高居住性、高安全性、高環境性を有し軽量化も可能であるものと成り、建築用窓ガラス等はもちろん、ことに自動車用窓ガラスに適用して有用なものと成る紫外線赤外線吸収緑色系ガラスを提供するものである。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第3086165号発明の明細書を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を、「【請求項1】重量%表示で実質的に下記酸化物、SiO2 67〜75%、Al2O3 0.05〜3.0%、CaO 7.0〜11.0%、MgO 2.0〜4.2%、Na2O 12.0〜16.0%、K2O 0.5〜3.0%、SO3 0.05〜0.30%、Fe2O3 0.40〜0.90%、CeO2 1.0〜2.5%、TiO2 0.1〜1.0%、MnO 0.0010〜0.0400%、CoO 0.0001〜0.0009%、Cr2O3 0.0001〜0.0010%、SnO2 0〜1%、これら成分の総和が98%以上、かつSiO2+Al2O3+TiO2 70〜76%、CaO+MgO 10〜15%、Na2O+K2O 13〜17%のガラスであり、前記ガラスが、5mm厚換算で、A光源による可視光線透過率が65%以上、日射透過率が30〜40%、紫外線透過率が10%以下、D65光源による主波長が500〜540nm、刺激純度が5%以下であることを特徴とする紫外線赤外線吸収緑色系ガラス。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項。
明細書第6頁第13〜20行の段落【0019】の「【0019】すなわち、本発明は、・・・紫外線赤外線吸収緑色系ガラス。」(本件特許掲載公報第3頁第6欄第16〜25行)を、「【0019】すなわち、本発明は、重量%表示で実質的に下記酸化物、SiO2 67〜75%、Al2O3 0.05〜3.0%、CaO 7.0〜11.0%、MgO 2.0〜4.2%、Na2O 12.0〜16.0%、K2O 0.5〜3.0%、SO3 0.05〜0.30%、Fe2O3 0.40〜0.90%、CeO2 1.0〜2.5%、TiO2 0.1〜1.0%、MnO 0.0010〜0.0400%、CoO 0.0001〜0.0009%、Cr2O3 0.0001〜0.0010%、SnO2 0〜1%、これら成分の総和が98%以上、かつSiO2+Al2O3+TiO2 70〜76%、CaO+MgO 10〜15%、Na2O+K2O 13〜17%のガラスであり、前記ガラスが、5mm厚換算で、A光源による可視光線透過率が65%以上、日射透過率が30〜40%、紫外線透過率が10%以下、D65光源による主波長が500〜540nm、刺激純度が5%以下であることを特徴とする紫外線赤外線吸収緑色系ガラス。」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書第6頁第21〜27行の段落【0020】の「【0020】ならびに、前記SnO2が、・・・それぞれ提供するものである。」を、「【0020】ならびに、前記SnO2が、重量%表示で0.01〜0.6%であることを特徴とする上述した紫外線赤外線吸収緑色系ガラスをそれそれ提供するものである。」と訂正する。
異議決定日 2001-11-21 
出願番号 特願平8-12781
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 仁志  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 唐戸 光雄
野田 直人
登録日 2000-07-07 
登録番号 特許第3086165号(P3086165)
権利者 セントラル硝子株式会社
発明の名称 紫外線赤外線吸収緑色系ガラス  

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