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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1055049
異議申立番号 異議2000-72202  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-01-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-26 
確定日 2001-11-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2984417号「排煙脱硫装置排水から固化物を取得する方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2984417号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 〔一〕 本件特許は、平成3年(1991)6月28日に出願(特願平3-158333号)され、平成11年9月24日に特許権の設定の登録がされ(特許第2984417号。請求項数 1)、平成11年11月29日に特許掲載公報が発行されたものである。
これに対して、平成12年5月26日付けで、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、取り消すべきであるとの特許異議の申立てがされ、当審は、同趣旨の取消理由を通知をし、また、特許異議申立人に対して審尋した。
特許権者は、特許異議意見書を提出するとともに、訂正請求書を提出し、特許異議申立人は審尋に対する回答書を提出した。

〔二〕 訂正請求について
以下では、本件特許の願書に添付した明細書を本件特許明細書という。
(1) 訂正請求の内容
(イ) 訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、
「その際、全水銀0.0005mg/l以下、カドミウム0.01mg/l以下、鉛0.1mg/l以下、有機リン0.1mg/l以下、6価クロム0.05mg/l以下、ひ素0.05mg/l以下及びシアン0.1mg/l以下を満たし、かつ圧縮強度が0.5kg/cm2以上の固化物が得られるように濃縮排水とセメント又はセメントと石炭灰の混合割合を濃縮排水の組成に基づき決定する」の記載(以下では、本件訂正請求の付加事項という。)を本件特許明細書の特許請求の範囲の記載に付加して、同特許請求の範囲を下記のように訂正する。
「【請求項1】 燃焼排ガス中の二酸化硫黄ガスをアルカリ剤により吸収・分離する排煙脱硫装置からの排水を原水タンクに貯蔵し、該排水を真空排気装置を有する蒸発缶に供給して減圧下に水分を蒸発させて濃縮し、得られた濃縮排水中に、セメントまたはセメントと石炭灰の混合粉体を添加混練することからなり、その際、全水銀0.0005mg/l以下、カドミウム0.01mg/l以下、鉛0.1mg/l以下、有機リン0.1mg/l以下、6価クロム0.05mg/l以下、ひ素0.05mg/l以下及びシアン0.1mg/l以下を満たし、かつ圧縮強度が0.5kg/cm2以上の固化物が得られるように濃縮排水とセメント又はセメントと石炭灰の混合割合を濃縮排水の組成に基づき決定することを特徴とする排煙脱硫装置から固化物を取得する方法。」
以下では、上記構成の発明を本件訂正請求発明という。
(ロ) 訂正事項b
明りょうでない記載を釈明することを目的として、上記(イ)の訂正請求に対応して、本件特許明細書の段落【0011】の記載を下記のとおり訂正する。
「【課題を解決するための手段】 本発明は燃焼排ガス中の二酸化硫黄ガスをアルカリ剤により吸収・分離する排煙脱硫装置からの排水を原水タンクに貯蔵し、該排水を真空排気装置を有する蒸発缶に供給して減圧下に水分を蒸発させて濃縮し、得られた濃縮排水中に、セメントまたはセメントと石炭灰の混合粉体を添加混練することからなり、その際、全水銀0.0005mg/l以下、カドミウム0.01mg/l以下、鉛0.1mg/l以下、有機リン0.1mg/l以下、6価クロム0.05mg/l以下、ひ素0.05mg/l以下及びシアン0.1mg/l以下を満たし、かつ圧縮強度が0.5kg/cm2以上の固化物が得られるように濃縮排水とセメント又はセメントと石炭灰の混合割合を濃縮排水の組成に基づき決定することを特徴とする排煙脱硫装置から固化物を取得する方法である。」

(2) 訂正請求の成否
A. 訂正事項aについて
(イ) 本件訂正請求は、訂正事項aについて、本件訂正請求の付加事項を付加するものであるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とする訂正である。
(ロ-1) 本件特許明細書の段落【0023】には、「表2に環境庁告示第13号に準じて、この実施例の固化物の溶出試験を行った結果を示すように、該固化物は表3に示す検出限界値以下であり、また同試験値は上記総理府令の判定基準に適合していることが確認されている。」と記載され、さらに、同段落の【表2】には、本件特許発明の実施例の固化物〔重量基準で、濃縮排水(塩化カルシウム301,000、塩化マグネシウム84,500、石こう410、各ppm、重金属をはじめとする金属成分を微量含有する)1.0に対してセメント0.3及び石炭灰0.5をくわえて固化させた物。同段落【0016】及び同【0020】参照。〕について溶出試験をした結果、全水銀、カドミウム、鉛、有機リン、6価クロム、ひ素及びシアンについて検出不可とされている。そして、本件特許発明の実施例の固化物の溶出試験の検出限界値(mg/l)は、下記のとおりである(段落【0023】の表3)。
全水銀 カドミウム 鉛 有機リン
検出限界 0.0005 0.01 0.1 0.1
6価クロム ひ素 シアン
検出限界 0.05 0.05 0.1
そうすると、上記各不純物が検出不可であることは、上記固化物中の上記各不純物の濃度が上記検出限界値より低いことを意味しているから、本件訂正請求の付加事項中、上記各不純物の濃度に関する部分は、本件特許明細書に記載されていた事項の範囲内である。
(ロ-2) また、同段落【0021】には、上記(ロ-1)の固化物の圧縮強度が0.5kg/cm2以上であると記載されている。
(ロ-3)本件訂正請求の付加事項の一部である「濃縮排水とセメント又はセメントと石炭灰の混合割合を濃縮排水の組成に基づき決定する」の記載部分は、同段落【0016】に「表1に示す組成の濃縮排水はラインaにより一旦タンク1に貯蔵されたのち、同濃縮排水とセメント、石炭灰とを混合、混練を行う混練機5にラインbを介して供給される。」と記載され、さらに、同段落【0017】には、「セメント貯蔵器2内のセメント、石炭灰貯蔵器3内の石炭灰が夫々所定量比、ラインc,dを介して、これら固化媒体を均一に混合する混合機4に送られて均一混合されたのち、更にラインeを介して混練機5に供給される」と記載されているから、本件特許明細に記載されていた事項である。
(ロ-4) そうすると、本件訂正請求の付加事項は、本件特許明細書に記載されていた事項である。
(ハ) 本件特許発明は、本件特許明細書の段落【0010】の記載によれば、「濃縮排水を固化させることにより埋立投棄を目的とした固化物を取得する方法を提供しようとするものである」から、本件訂正請求は、訂正事項aに関して、特許請求の範囲を実質上拡張するものでも変更するものでもない。
B. 訂正事項bについて
(イ)本件訂正請求は、訂正事項bにおいて、訂正事項aに対応して、本件特許明細書の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載を釈明することを目的とする訂正であり、(ロ)訂正事項aについて上記A.で述べた理由により、本件特許明細書の記載の範囲内でする訂正であり、(ハ)特許請求の範囲を実質上拡張するものでも、変更するものでもない。

(3) そうすると、本件訂正請求は、適法な訂正を請求するものであるから、本件訂正を認める。

〔三〕 本件特許を取消す理由
以下では、本件訂正請求によって訂正された本件特許明細書及び上記本件訂正請求発明を、それぞれ、本件特許明細書及び本件特許発明という。
(1) 本件特許明細書の記載
(イ) 段落【0004】
「図2に前述の方法を用いた排水処理設備の流れ図の一態様を示し、同図に基づき先に本発明者らが提案した排水の濃縮を行う排水処理設備(特願平3-156460号)を説明する。図2は排水の濃縮方法として真空排気装置を備えた蒸発缶を用いた場合の処理装置の流れ図である。」
(ロ) 段落【0009】、【0010】(4欄)、【発明が解決しようとする課題】
「【0009】前述のような排水中水分を蒸発する排水処理方法においても、固形成分、溶質成分及び金属成分等が濃縮されたのみであり、最終的処理が施されていないため原排水同様公共水域等の放流はできない。そのため、同濃縮排水の最終処理を行わないと、プロセスとして成立しない欠点があった。
【0010】本発明は上記技術水準に鑑み、前述の処理方法にて生成した濃縮排水を固化させることにより埋立投棄を目的とした固化物を取得する方法を提供しようとするものである。」
(ハ) 段落【0012】【作用】の一部
「本発明によれば、濃縮排水に従来より金属の固定(不溶化)に効果のあるとされるセメントまたはセメントと石炭灰の混合粉体を添加、混合するため、濃縮排水中に含有される金属成分等の有害成分の不溶化を行うことができ、この結果、前記排水、セメントまたはセメントと石炭灰の混合粉体を混合した固化物は総理府令にて定める産業廃棄物の埋立廃棄処分に係る判定基準に適合するため、固化物は埋立投棄等の最終処分が可能となり、総括的には脱硫装置からの排水の最終処分を行うことができる。」
(ニ) 段落【0013】、【作用】の一部
「なお、石炭焚きボイラーからはシリカ、アルミナを主成分とする石炭灰が多量に発生し、このものも不溶化作用があるが、これのみではその作用が低いのでセメントとの混合粉体として使用するものである。」
(ホ) 段落【0022】、【実施例】の一部
「 乾燥機6からの固化物はラインgを介して系外へ排出されるが、同固化物は先に述べた如く総理府令第5号にて定める産業廃棄物の埋立投棄処分に係る判定基準に適合するため埋立投棄等の最終処分が可能である。」
(ヘ) 段落【0023】、【実施例】の一部
「表2に環境庁告示第13号に準じて、この実施例の固化物の溶出試験を行った結果を示すように、該固化物は表3に示す検出限界値以下であり、また同試験値は上記総理府令の判定基準に適合していることが確認されている。」
(ト) 段落【0024】、【実施例】の一部
「以上、本発明の一実施例をあげて本発明を説明したが、固化物を上述の総理府令にて定める産業廃棄物の埋立投棄処分に係る判定基準に適合させるためには、固化物を構成する濃縮排水、セメントまたはセメントと石炭灰の混合割合が重要な因子となるので、濃縮排水の組成に基づき各々の混合割合を決定すべきである。」
(チ) 段落【0025】、【発明の効果】
「本発明による排水の不溶化方法を現状有望となりつつある蒸発・減容化による脱硫排水の処理設備に適用することにより同処理設備がプロセス的に成立するとともに、また、脱硫廃水の処理という観点からすると既存の廃水処理設備に比較して設備費の低減、設備面積の縮少及び運転維持費の低減化に貢献する。」

(2) 引例の記載
(2-1) 引例の記載の摘示
(a) 特開平3-8411号公報(以下では、引例1という。)
(イ) 特許請求の範囲
「(1)燃焼排ガス処理に適用される湿式石灰石-石膏法による排煙脱硫装置からの排水を濃縮し、回収水分は排煙脱硫装置に戻し、該濃縮水に石炭灰を添加してスラリ化した後、該スラリ中の水分を蒸発させて、排水中の溶解成分と石炭灰との水和反応生成物を含む硬化物を生成させることにより上記排水を排煙脱硫装置系外に出さないことを特徴とする湿式石灰石-石膏法による排煙脱硫装置の排水処理法。
(2)排煙脱硫装置から排出する濃縮排水に石炭灰を加えてさらに、該排水中の溶解成分と石炭灰との水和反応を促進させる水和反応促進剤を添加することを特徴とする請求項1記載の排煙脱硫装置の排水処理法。
(3)排煙脱硫装置の吸収塔スラリの一部を抜き出した該スラリを水和反応促進剤として使用することを特徴とする請求項2記載の排煙脱硫装置の排水処理法。
(4)排煙脱硫装置の吸収塔循環スラリにハロゲンイオン緩和剤を添加することを特徴とする請求項1ないし3記載の排煙脱硫装置の排水処理法。
(5)燃焼排ガスに適用される湿式石灰石-石膏法による排煙脱硫装置から排出する濃縮排水と石炭灰との混合物からなるスラリ中の水分を蒸発させて得られる、該排水中の溶解成分と石炭灰との水和反応生成物を含む硬化物。
(6)排煙脱硫装置から排出する濃縮排水に石炭灰に加えてさらに、該排水中の溶解成分と石炭灰との水和反応を促進させる水和反応促進剤を添加することを特徴とする請求項5記載の硬化物。
(7)排煙脱硫装置の吸収塔循環スラリを一部抜き出した該スラリを水和反応促進剤として使用することを特徴とする請求項5ないし6記載の硬化物。
(8)水和反応促進剤は石灰、セメント、粘土石英、カオリナイト、石膏、硫酸アルミニウムからなる群のうちから選ばれる一以上の物質であることを特徴とする請求項6記載の硬化物。
(9)燃焼ボイラからのボイラ排ガスを脱硝処理、集塵処理等の後、脱硫処理する発電システムの排煙脱硫処理法において、湿式石灰石-石膏法の脱硫装置からの濃縮排水に石炭灰を添加してスラリ状にし、該スラリを乾燥して硬化物とし、排水に含まれるハロゲン化合物、COD物質、金属成分を硬化物に固定したことを特徴とする発電システムの排煙脱硫処理装置の排水処理法。」
(ロ)〔産業上の利用分野〕(2頁左上欄)
「 本発明は、石炭火力発電所ボイラなどに適用される排煙脱硫装置から排出される排水の処理法に係り、特に湿式石灰石-石膏法による排煙脱硫処理装置の無排水化法およびその過程で得られる硬化物に関する。」
(ハ)(2頁右下欄、13行〜末行)
「 そこで、本発明の目的は比較的簡易な処理法として、湿式石灰石-石膏法を用いる排煙脱硫装置からの排水中に含まれるハロゲン化合物、ジチオン酸等の物質をハンドリングの容易な、再溶出のおそれのない不溶性固形物として回収し、あわせて分離した排水を系外に出さない排水のクローズ化をした湿式石灰石-石膏法による排煙脱硫装置における排水処理法を提供することである。」
(ニ)(3頁左上欄、2〜7行)
「 本発明は上記の目的を達成するために、鋭意検討した結果、湿式石灰石-石膏法を用いた排煙脱硫装置から排出する排水中のハロゲン、ジチオン酸等と石炭灰との間で水和反応をおこなわせ、水和反応生成物を乾燥させると、不溶性の硬化物が得られることを見いだし、本発明を完成した。」
(ホ)(3頁右上欄、下から2行〜同左下欄、4行)
「 この排水中にはハロゲン化合物、ジチオン酸等が含まれており、この排水を濃縮した後、石炭灰を入れ混合液のpHを7以上のスラリーにすると、第2表に示した石炭灰の成分のうち、主成分である酸化カルシウム、酸化アルミニウムまたは酸化けい素等が溶出する。」
(ヘ)(3頁左下欄、下から9行〜同右下欄、下から5行)
「 このスラリ中に溶出した酸化カルシウム、酸化アルミニウムまたは酸化けい素等は排水中のハロゲンイオン、ジチオン酸イオンと反応し、蒸発乾固処理工程あるいは水蒸気による加熱処理工程を経て、不溶性の水和硬化物が得られる。水和硬化物の生成を促進するにはスラリのpHを高めることにより、石炭灰中の酸化カルシウム、酸化アルミニウムまたは酸化けい素等をスラリ中に溶出させることができ、さらに、スラリ中に高濃度でハロゲン化合物、ジチオン酸等が存在していることが有効である。
さらに必要に応じて、石灰(消石灰あるいは生石灰)または石膏等を加えることで、例えば、ハロゲン化合物の塩素イオンは、石炭灰中のCaO、Al2O3、SiO2、SO42-、Ca(OH)2、CaSO4等と反応し、次ぎのような種々の複塩形態の水和物を生成する。
m1CaO-Al2O3-SiO2-n1CaSO4-x1.H2O
m2CaO-Al2O3-n2CaS04-x2.H2O
m3CaO-Al2O3-SiO2-n3CaCl2-x3.H2O
m4CaO-Al2O3-n4CaCl2-x4.H2O
水和物中のm1、n1、x1、・・・、m4、n4、x4等の値は排水性状、水和反応条件によって異なるが、このような水和物が生成すると、機械的強度の高い化学的に安定な硬化物が得られる。」
(ト)(4頁右上欄、7〜13行)
「 一方、排水中のハロゲン化合物、ジチオン酸等は、水和反応により硬化物中に安定な複塩として固定されるので、硬化物は従来行われていた石炭灰と同様な処理ができ、投棄や埋め立て処理が可能である。また硬化物はブロック化できるので軽量骨材、軟弱地盤改良材、土木用骨材またはコンクリート材料としても用い得る。」
(チ)(4頁右上欄、下から7行〜同左下欄、3行)
「 ところで、本発明のボイラ燃焼排ガスの湿式脱硫装置からの排水中には、0.8〜2wt%の塩素イオンが含まれているが、このような塩素量を前述の水和物(β-3CaO・Al2O3・CaCl2・XH2Oなど)として固定するためには、第2表に示す石炭灰中のCaO含有量でも一応は可能ではあるが、用途により硬化物の機械的硬度を高くする必要がある場合には、別途、系外から消石灰、生石灰あるいは石膏、その他の硬化促進剤を添加することが効果的である。」
(リ)(4頁右下欄、10行〜下から3行)
「 なお、硬化物の用途、目的に応じて高強度の硬化物を得るには、消石灰、石膏添加量を制御することが有効であることが明らかになったが、さらに、消石灰、生石灰、石膏以外に、セメント、石英、粘土、カオリナイト、硫酸アルミニウム等からなる濃縮排水と石炭灰の水和反応を促進する物質のうち一以上の物質を添加すると得られる硬化物から不純物が溶出しないので、一段と安定した不溶出処理ができる。」
(ヌ)(6頁左上欄、2〜9行)
「脱硫装置11からの排水23は濃縮装置20に導かれ、ハロゲン化合物、COD物質、金属成分等が濃縮される。排水の濃縮法は、蒸発法、電気的な方法(電気分解、電気透析)、晶析法あるいは化学的な方法等によって行われ、第1図および第2図には空気予熱器8の出口の排ガスの熱源を利用した蒸発法の実施例を示す。」
(ル)(7頁右上欄10行〜末行)
「このようにして、得られた排水からの水和生成物の蒸発乾固後の硬化物について、産業廃棄物を対象とした規準に準じた溶出試験の結果を第4表および第9図(a)〜(c)に示す。」
そして、第4表 硬化物含有成分 には、下記の各成分の溶出試験の結果が各成分の下段に記載されている値より小さいことが記載されている(単位 mg/l)。
pH 6.1(19℃)
CN Cr6+ Pb Cd As T-Hg
0.01 0.05 0.05 0.01 0.01 0.0005
(ヲ) (7頁左下欄、表4直下の行から6行)
「 この結果から、硬化物は安定にハロゲン物質、ジチオン酸などを固定しており、産業廃棄物に準じた埋め立ての投棄処理などが可能であることが明らかになった。特に、ジチオン酸、およびハロゲンの中でもフッ素イオンの固定がしやすいことが分かった。」

(b-1) 亀井三郎、「蒸發・蒸溜及乾燥」(昭和10年5月20日、合資會社 共立社)、14〜15頁〔1.真空蒸發(Vacuum Evaporation)の意義の項〕(以下では、引例2という。)
「 普通真空蒸発と云うのは真の真空ではなく一気圧よりも低い圧力に於ける蒸発を意味している。化学工場では機関の廃蒸気が多いが之は比較的低温度の蒸気である。若し常圧に於ける蒸発の加熱蒸気として之を利用すれば液の沸点との温度差が少くて実用にならない場合が多い。特に化学工業で蒸発すべき液は多くの場合相当な濃度の溶液であって其の沸点は純水よりも高いので加熱蒸気との温度差は一層少なくなる。然るに液面の圧力を下げて蒸発を低温の下で行えば蒸気との温度差が増して始めて実用に供し得るものである。之が真空蒸発の第一の目的である。液体を減圧の下で蒸発さすと低温度で沸騰するから種々の有機物等の分解を防ぐことが出来る。・・・。真空蒸発の真の意義及目的は上に述べた通りであって実際工業上の大規模の蒸発は殆ど全部真空蒸発に依るのである。」
(ただし、上記の摘示文は、転記に際して、旧漢字体を現在普通に用いられている漢字体に改めた。また、「・・・」の部分は、摘示を省略した部分である。)

(b-2) 特開昭63-224701号公報(以下では、引例3という。)
(イ) 特許請求の範囲
「 蒸溜廃液処理に於いて、温排水供給ポンプと、同ポンプにより給送された温排水を熱源とする蒸溜廃液濃縮缶と、同缶につながる凝縮器と、同凝縮器につながる真空装置とを有し、温排水を用いて蒸溜廃液を濃縮することを特徴とした蒸留廃液濃縮装置。」
(ロ) 〔産業上の利用分野〕(1頁左下欄)
「 本発明は蒸溜精製形アルコール製造における蒸溜廃液処理に適用される蒸溜廃液濃縮装置に関する。」
(ハ) 〔問題点を解決するための手段〕
「 本発明は前記問題点に対処するもので、蒸溜廃液を熱的濃縮するための加熱源として、従来、放出されていた温廃水を回収し、その「熱」を有効利用する。」

(c) 山田順治ら編、「わかりやすいセメントとコンクリートの知識」(昭和51年4月30日、鹿島出版会)(以下では、引例4という。)
(イ) p.18、12〜19行
「セメントが水と反応して別の物質に変化することを水和といい、水和によって生じた物質を水和生成物または単に水和物ということから、これらののことをいい換えると、ポルトランドセメントは初めは粉末状であるが、水和によって水和物に変化し、この水和物は水和物同志または骨材や補強材などを結合して強度と耐久性の高い材料を形成する性質を有するということができる。しかしこのような性質は、ポルトランドセメントに限らず、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメントその他のセメントおよび焼き石こうについても同様なことがいえる。」
(ロ) p.35、下から2行〜p.36、8行、「4. 石こう」の項
「 セメントの製造に使用される石こうには天然の石こうのほかに、火力発電所の排煙脱硫石こうやりん酸肥料製造時に副産する化学石こうなどがある。
これらの石こうは、CaSO4・2H2Oと2分子の結晶水をもつものであるが、セメントクリンカーと混ぜて仕上げミルにて粉砕すると、粉砕時の熱で一部の結晶水を失い、CaSO4・1/2H2Oという半水石こうになっていることが多い。・・・。しかし、ポルトランドセメント中の半水石こうは、水と混練したときに、混練作業中にすみやかに二水石こうに戻り、半水石こうと二水石こうの間には、その作用に本質的な差異はない。」
(ハ) p.77、7〜10行
「フライアッシュセメントはフライアッシュ粒子のボールベアリングとしての物理的作用とポゾラン反応(セメントが水和するとき多量に生成する水酸化カルシウムと化合する作用)を利用したものである。」
(ニ) p.86、「2.フライアッシュセメント、(2)品質」の項
「フライアッシュセメントのフライアッシュの混合割合は0〜30%(重量)である」が、そのうちのC種(「フライアッシュの量 20をこえ30%以下」)のフライアッシュセメントの圧縮強さは、98kg/cm2から251kg/cm2に変化する(表4-5参照)。
(ホ) p.88、3〜12行、「2.フライアッシュセメント、(3)特徴」の一部
「4) 長期強度の増進が大きくなる
長期材令においては、セメントの水和作用に基づいて生ずるCa(OH)2がフライアッシュと反応し、コンクリート強度が著しく増大する。また、コンクリートの組織が密になるので、水密性、化学抵抗性が増す。
5) 水和熱が低くなる
フライアッシュはそれ自身水硬性をもつものでないから、フライアッシュセメントの水和熱はフライアッシュの混合割合に比例して小さくなる。」
(d) 緒方雅彦ら、「重油・排煙脱硫技術」(第4版)(昭和50年5月20日、日刊工業新聞社)、p.135〜p.138の「10.2 湿式法」の項(以下では、引例5という。)
特に、p.138、4〜6行には、「石灰スラリーで亜硫酸ガスを吸収し、生成した亜硫酸石灰をpH調整後に加圧空気酸化して二水石こうの結晶を助長させ、スラリーを濃縮後遠心分離して石こうを回収する」と記載されている。

(2-2) 引例発明の認定
なお、以下では、引用する場合を除き、「石膏」、「せっこう」は、「石こう」と記す。
引例1には、(α)その請求項1によれば、濃縮水に石炭灰を、また、(β)その請求項2によれば、石炭灰とともに、さらに水和反応促進剤をくわえる〔上記(2-1)(a)(イ)参照〕ことが記載され、(γ)「排水の濃縮法は、蒸発法、・・・によって行われ、第1図および第2図には空気予熱器8の出口の排ガスの熱源を利用した蒸発法の実施例を示す。」〔上記(2-1)(a)(ヌ)参照〕と記載され、また、(δ)「排煙脱硫装置から排出する濃縮排水と石炭灰との混合物からなるスラリ中の水分を蒸発させて得られる、該排水中の溶解成分と石炭灰との水和反応生成物を含む硬化物」〔同(イ)の請求項5参照〕が、(ε)水和反応促進剤としては、「石灰、セメント、粘土石英、カオリナイト、石膏、硫酸アルミニウムからなる群のうちから選ばれる一以上の物質」がある〔同(2-1)(a)(イ)の請求項8及び同(リ)参照〕ことが、かつ、(ζ)「高強度の硬化物を得る」ことができる〔同(2-1)(a)(ヘ)〜(リ)参照〕とされているから、当審は、引例1には、下記の構成の発明が記載されていると認める。
「 燃焼排ガス処理に適用される湿式石灰石-石こう法による排煙脱硫装置からの排水を加熱し蒸発させて濃縮する、湿式石灰石-石こう法による排煙脱硫装置の排水処理法において、該濃縮水に石炭灰を添加し、さらに、水和反応促進剤として、石灰、セメント、粘土石英、カオリナイト、石膏、硫酸アルミニウムからなる群のうちから選ばれる一以上の物質を添加してスラリ化した後、該スラリ中の水分を蒸発させて、排水中の溶解成分と石炭灰との水和反応生成物を含む硬化物を生成させることにより、高強度の硬化物を取得することを特徴とする方法。」
以下では、上記構成の発明を引例1発明という。

(3) 本件特許発明の容易性の判断
(3-1) 本件特許発明と引例1発明との比較
(イ) 本件特許発明の「燃焼排ガス中の二酸化硫黄ガスをアルカリ剤により吸収し・分離する排煙脱硫装置からの排水」は、引例1発明の「燃焼排ガス処理に適用される湿式石灰石-石膏法による排煙脱硫装置からの排水」を包含している(必要ならば、引例5参照)。
(ロ) 本件特許発明の、濃縮排水中にセメントと石炭灰の混合粉体を添加混練して、排煙脱硫装置から固化物を取得することは、引例1発明の、濃縮水に石炭灰及びセメント等を添加したスラリ中の水分を蒸発させて、硬化物を生成させ、その硬化物を取得することを包含している。
なお、本件特許発明の濃縮排水も引例1発明の濃縮排水も燃焼排ガスを処理したものであって、その溶解し、また、懸濁している無機塩等の成分に格別の相違があるとは認めることができない。
ただし、下記の点で、本件特許発明は、引例1発明と相違している。
(ハ) 本件特許発明では、排煙脱硫装置からの排水を「原水タンクに貯蔵し」ているのに対して、引例1発明では、排水の貯蔵については、なにも限定していない(以下では、相違点1という。)。
(ニ) 本件特許発明では、「該排水を真空排気装置を有する蒸発缶に供給して減圧下に水分を蒸発させて濃縮」するのに対して、引例1発明では、「加熱し蒸発させて濃縮」するから、本件特許発明は、排水の濃縮を減圧蒸発法によって濃縮している(以下では、相違点2という。)。
(ホ) 本件特許発明は、「得られた濃縮排水中に、セメントまたはセメントと石炭灰の混合粉体を添加混練する」のに対して、引例1の発明は、「濃縮水に石炭灰を添加し」、水和反応促進剤の選択肢のひとつとしてセメントをあげ、このセメントをさらに「添加してスラリ化」することがあるとしている。すなわち、本件特許発明は、セメントを必ず使用するのに対して、引例1発明は、セメントの添加を単なる選択肢としている(以下では、相違点3という。)。
(ヘ) 本件特許発明では、得られる固化物の「圧縮強度が0.5kg/cm2以上」であるのに対して、引例1発明では、「高強度」とするだけで、具体的圧縮強度値が不明である(以下では、相違点4という。)。
(ト) 本件特許発明では、「全水銀0.0005mg/l以下、カドミウム0.01mg/l以下、鉛0.1mg/l以下、有機リン0.1mg/l以下、6価クロム0.05mg/l以下、ひ素0.05mg/l以下及びシアン0.1mg/l以下を満たし」た「固化物が得られる」のに対して、引例1発明の固化物の不純物含有量が特定されていない(以下では、相違点5という。)。

(3-2) 上記相違点に対する判断
(3-2-1) 相違点1について
排煙脱硫装置からの排水を原水タンクに一旦貯蔵するかどうかは、実際操業の条件に応じて、当業者が必要に応じてできる。
本件特許発明は、「原水タンクを設けて一旦貯蔵」することによって、予想外の技術的効果を奏することができたものとも認められない。

(3-2-2) 相違点2について
(イ)(i) 減圧濃縮法は、引例2及び引例3の記載からみてもわかるように、常套手段であって、排煙脱硫装置からの大量の排水を蒸発法で濃縮する場合にも、当業者が必要に応じて採用できる。
(ii) そして、本件特許明細書には、排煙脱硫装置からの排水の減圧法濃縮の条件、すなわち減圧度、蒸発温度等について、具体的な説明はなく、本件特許発明は、減圧濃縮法を採用にあたって、格別の工夫をしたものでもない。
実施例を検討しても、上記排水を100℃未満の温度で濃縮するとはされていない。
(ロ) 石こう類の析出について
(ロ-1) 本件特許権者は、本件特許異議意見書の4頁、(3)(イ)の項で、(α)「80℃以下では2水石こう(CaSO4・2H2O)が析出し、120℃以上では半水石こう(CaSO4・1/2H2O)が析出します。確かに、溶解度が近接した(溶解度が顕著でない)100℃近傍では、2水石こう若しくは半水石こうの析出を制御できない領域は存在」するとした上で、参考資料2{「石膏石灰ハンドブック」(昭和47年6月15日、技報堂発行)}の104頁の記載を引用し、しかし、(β1)「約42℃以下においては二水せっこうが安定で、それ以上では無水せっこうが安定であり、半水せっこうは準安定状態で存在する」が、(β2)「せっこうより無水せっこうの晶出する速度は低温では小さいので」「二水せっこうを加熱すると半水せっこうが生成しやすい」から、「(γ1)本件発明に従い濃縮を減圧下で行うと、100℃以下の温度での沸騰蒸発による濃縮操作が可能であり、(γ2)特に80℃以下では溶解度の差が顕著となり、主に2水石こうの形での析出とすることができます。(δ)その結果、半水石こうが加熱器の伝熱管の表面に付着して伝熱性能を低下させるトラブルや、さらに半水石こうが配管内に析出して配管の圧損上昇や閉塞等のトラブルで発生を防止することができます。すなわち、(ε)本件発明では濃縮を減圧下で行うので、排水の温度制御がしやすく、その結果、スケール発生の原因となる結晶形態の制御が容易となる利点があります。」と主張している。
ただし、上記(α)〜(ε)の符号は、当審が加入した。
(ロ-2)(i) 参考資料2の上記記載〔上記(ロ-1)(β1)、(β2)及び(γ1)〕は、純水中での石こうの析出挙動を示しているにすぎないが、このこと自体は周知のことであるとともに、比較的低温では主として二水石こうの形で析出することは、慣用方法である減圧濃縮法を適用して、減圧しない場合より低い温度(例えば、100℃より低い温度)で蒸発、濃縮することを当業者におもいとどまらせるものではないことは、当然のことである。
(ii) 本件特許権者の上記(ロ-1)(γ2)の主張は、参考資料2を解釈しているにすぎないし、また、減圧濃縮法を適用して、例えば80〜100℃で蒸発、濃縮したと仮定した場合に、実際に、半水石こうが析出することを確実に防止することができることを主張し、立証するものではない。
(ロ-3) 本件特許明細書の記載及び参考資料2の記載からは、本件特許発明が実際に上記(ロ-1)(γ2)から(ε)までの効果を奏することを確認できいない。
上記(ロ-1)に指摘した、参考資料2の(β1)「約42℃以下においては二水せっこうが安定で、それ以上では無水せっこうが安定であり、半水せっこうは準安定状態で存在する」が、(β2)「せっこうより無水せっこうの晶出する速度は低温では小さいので」「二水せっこうを加熱すると半水せっこうが生成しやすい」という記載は、純粋な石こう水溶液についてのものであるだけでなく、晶出速度からみてありがちな傾向を指摘しているにすぎない。そして、本件特許権者は、上記参考資料2の(β1)及び(β2)の記載内容を、大量の塩化カルシウムや塩化マグネシウム等が共存する、実際の排煙脱硫装置からの排水に、そのまま、適用できるとするに足る技術根拠については、なんら説明していない〔なお、本件特許異議申立人が提出した、当審の審尋に対する回答書の2〜3頁、(3)の項を参照〕。すなわち、本件特許権者は、本件特許発明の技術的条件に即して、上記(ロ-1)(γ2)〜(ε)の主張する効果を立証していない(この際、そもそも、これらの効果は、本件特許明細書にはなにも記載されていないことに留意すべきである。)。
(ロ-4)(i) 本件特許権者は、本件特許異議意見書でも、少なくとも、100℃より低く、80℃より高い温度領域では、2水石こう又は半水石こうの析出を制御できない領域が存在することを否定していない〔上記(ロ-1)(α)〕。しかるに、本件特許発明は、その減圧法濃縮の温度条件を80℃未満に限定していない。
(ii) 本件特許権者の本件特許異議意見書5頁、(ロ)の項で、参考資料3によれば、セメントの安定した凝結・硬化反応を確保するためには二水石こうの存在が好ましいことが分かると主張しているが、本件特許権者は、本件特許発明の減圧法濃縮によれば、排煙脱硫装置からの排水から二水石こうだけが晶出することを立証していない。
また、本件特許権者は、本件特許発明の技術的条件に即して、二水石こうが、その期待される長所を現実に示すことを立証していない。
(ハ) 以上によれば、本件特許発明は、減圧法濃縮の具体的条件を適切に選択すれば、顕著な技術的効果を奏すること場合があることまでを否定することはできないとしても、どのような減圧条件下でも、顕著な技術的効果を奏するとまではいえず、全体として、上記(イ)の判断をくつがえすことはできない。

(3-2-3) 相違点3について
(イ) 本件特許発明は、「濃縮排水に従来より金属の固定(不溶化)に効果のあるとされるセメントまたはセメントと石炭灰の混合粉体を添加、混合するため、濃縮排水中に含有される金属成分等の有害成分の不溶化を行うことができ」るようにするものであり{上記〔三〕(1)(ハ)参照}、かつまた、「石炭焚きボイラーからはシリカ、アルミナを主成分とする石炭灰が多量に発生し、このものも不溶化作用があるが、これのみではその作用が低いのでセメントとの混合粉体として使用するものである」{上記〔三〕(1)(ニ)参照}。
(ロ) 一方、引例1発明は、石炭灰を使用することによって、排水中の「ハロゲン化合物、ジチオン酸等」を固化物中に閉じこめると同時に、固化物を「軽量骨材、軟弱地盤改良材、土木用骨材またはコンクリート材料としても用い」ようとするものである{上記〔三〕(2)(2-1)(a)(ト)参照}が、請求項8{上記〔三〕(2)(2-1)(a)(イ)参照}によれば、硬化物の用途、目的に応じて高強度の硬化物を得るには、濃縮排水と石炭灰の水和反応を促進する物質のうち一以上の物質として、セメントを添加することができると解され、かつ、「得られる硬化物から不純物が溶出しないので、一段と安定した不溶出処理ができる」とされている{上記〔三〕(2)(2-1)(a)(イ)の請求項1及び請求項2、同(リ)参照}から、引例1発明において、セメントを水和反応促進剤として添加するのは、少なくとも、硬化物の強度を高強度にすることをも目的としている。
(ハ) 上記(イ)及び(ロ)に指摘した内容によれば、本件特許発明でセメントと石炭灰とを同時使用する目的と引例1発明で石炭灰にセメントを追加使用する目的とに実質的な相違があるとする具体的理由はみいだせない。
(ニ) 本件特許権者は、本件特許発明は、本件特許異議意見書の7頁、9〜10行で、「本件発明ではセメントの硬化反応を利用するので、硬化の際に加熱を必要とせず、また、複雑な成分調整の必要はな」いと主張しているが、引例1発明が水和反応促進剤としてセメントを使用する場合にも、少なくとも、セメントの硬化反応をも利用するものであることは、技術常識上明らかなことであるから、本件特許発明が格別の工夫をしているとは認められない。
すなわち、引例1発明では、ハロゲン、ジチオン酸等と石炭灰とを水和反応させて{上記〔三〕(2)(2-1)(a)(ニ)〜(ヘ)参照}、ハロゲン化合物、ジチオン酸等を硬化物中に安定な複塩として固定する{上記〔三〕(2)(2-1)(a)(ヘ)、(ト)参照}が、その際、「用途により硬化物の機械的硬度を高くする必要がある場合には、消石灰、生石灰あるいは石こう、その他の硬化促進剤を添加することが効果的」{上記〔三〕(2)(2-1)(a)(チ)参照}であり、この「その他の硬化促進剤」として、「水和反応を促進する物質」であるセメントが挙げられている{上記〔三〕(2)(2-1)(a)(リ)参照}。引例1には、引例1発明におけるセメントの硬化促進作用について具体的な説明はないが、セメント、フライアッシュセメントや焼き石こうの周知の性質{引例4の記載、殊に、上記〔三〕(2)(2-1)(c)(イ)、(ハ)に摘示した引例4の記載参照。}からみて、硬化促進剤として引例1に指摘されているセメントが単にハロゲン、ジチオン酸等と石炭灰との水和反応を促進することだけに限定して解釈しなければならない理由は、到底、みいだせない。

(3-2-4) 相違点4について
(イ) 本件特許発明の固化物の圧縮強度が0.5kg/cm2以上であるのに対して、引例1発明では、セメントと石炭灰を同時使用した場合に得られる固化物の圧縮強度の具体値を限定していない。
しかしながら、本件特許発明の固化物の圧縮強度が0.5kg/cm2以上という値は、セメント硬化物の強度として、格別の圧縮強度値ではない{フライアッシュセメントそのものの強度については、上記〔三〕(2)(2-1)(c)(ニ)、(ホ)参照}。そして、上記〔三〕(2)(2-1)(a)(ト)及び同(リ)によれば、引例1には、必要に応じて、その固化物の強度を高めることができると記載され、引例1発明は、少なくとも、そのためにも、セメントを添加していると解されるから、硬化物について必要とする強度を得るために、セメント量を増加する程度のことは、引例1発明に基づいて、当業者が容易にできることである。
(ロ) 単に、引例1発明でセメントが水和反応促進剤であるとされているから、引例1発明の固化物の圧縮強度が0.5kg/cm2より低い場合だけであると推測することは、技術的にみて妥当でない。
(ハ) 本件特許権者は、本件特許異議意見書の(4)(ロ)(7〜8頁)で、重量比で、濃縮排水1.0に対してセメント0.25、石炭灰0.25しか添加しないと、圧縮強度は0.26kg/cm2で、溶出試験でCdが検出され、セメントを0.3、0.4、石炭灰0.5を添加した場合に比して固化物の性質が劣っていると主張しているが、引例1発明ではセメント添加量が圧縮強度が0.5kg/cm2より小さい場合に限られれているわけではない。
なお、本件特許発明の固化物の圧縮強度が0.5kg/cm2以上であることによって、本件特許発明が臨界的な技術的効果を奏したものとは認められない。

(3-2-5) 相違点5について
(イ) 上記〔三〕(2)(2-1)(a)(ル)〔引例1の「第4表 硬化物含有成分」〕には、引例1の硬化物についての溶出試験の結果が、CN<0.01、Cr6+<0.05、Pb<0.05、Cd<0.01、As<0.01、T-Hg<0.0005(単位 mg/l)であると記載されている。
(ロ) 上記の溶出試験は、セメントと石炭灰ではなく、石こうや消石灰と石炭灰を添加した場合の硬化物についてのものであるが、引例1には、セメントと石炭灰でも同様であると記載されている。
(ハ) 上記の不純物含量は、本件特許発明の固化物の対応する不純物含量よりも優れている。
なお、本件特許発明の上記不純物含量は、検出限界を示すものである{本件特許明細書の段落【0023】参照}から、具体的な個々の場合には、本件特許発明の場合の方が引例1の場合よりも優れていることがある可能性があるとも考えられるが、少なくとも、本件特許発明は、その特許請求の範囲に記載された構成上、そのような優れた場合だけに限られているとは認められない。
(ニ) また、本件特許発明の固化物では、有機リン0.1mg/l以下とされているが、引例1には、有機リンの含有量は記載されていない。
しかしながら、本件特許発明は、有機リンの含有量を低下させるために格別の処理をしている発明ではないから、本件特許発明の固化物の上記有機リン含有量が引例1発明の固化物の有機リン含有量より格別優れているとは認められない。

(3-3) 以上、(3-2)の判断によれば、本件特許発明は、引例1発明及び引例2又は引例3に記載されている発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
排煙脱硫装置排水から固化物を取得する方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃焼排ガス中の二酸化硫黄ガスをアルカリ剤により吸収・分離する排煙脱硫装置からの排水を原水タンクに貯蔵し、該排水を真空排気装置を有する蒸発缶に供給して減圧下に水分を蒸発させて濃縮し、得られた濃縮排水中に、セメントまたはセメントと石炭灰の混合粉体を添加混練することからなり、その際、全水銀0.0005mg/l以下、カドミウム0.01mg/l以下、鉛0.1mg/l以下、有機リン0.1mg/l以下、6価クロム0.05mg/l以下、ひ素0.05mg/l以下及びシアン0.1mg/l以下を満たし、かつ圧縮強度が0.5kg/cm2以上の固化物が得られるように濃縮排水とセメント又はセメントと石炭灰の混合割合を濃縮排水の組成に基づき決定することを特徴とする排煙脱硫装置から固化物を取得する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は燃焼排ガス中の二酸化硫黄ガス(以下SOxガスと称す)を環境汚染防止の観点より石灰石等のアルカリ剤を吸収剤とする装置にて排ガス中のSOxガスを吸収・分離する脱硫装置の排水を、同排水中の水分を蒸発させることにより濃縮・減容化する排水処理設備より排出される濃縮水の排水を固化させることにより埋立投棄を目的とした固化物を取得する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
脱硫装置より放出される排水は、該装置内で排ガス中SOxガスとの反応により生成する石こう、亜硫酸石こう及び反応に寄与しなかった吸収剤としての石灰石等の固形物、排ガス中の塩素ガスと(吸収剤として石灰石を例にとれば)吸収剤中のカルシウム、マグネシウムなどの反応により生成した塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩成分、排ガス中のシリカ、アルミニウムなどの金属の酸化物及び脱硫装置内で捕獲した燃焼排ガス中の燃焼灰等々種々雑多な成分を含有しているばかりか、排ガス中のSOxガス、塩素ガス及びフッ素ガス等の酸性ガスにより排水の水素イオン濃度も通常酸性となっており、そのため前述の性状のまま公共水域等への放流はできない。
【0003】
このため、放流可能な性状まで排水を処理する必要があるが、同処理の一環として排水中の水分のみを蒸発・減容させて固形成分、塩成分の溶質成分等の排水中含有成分の濃度を高くした排水(以下濃縮排水と称す)とする処理方法が設備費、運転費等のコスト面より有望となりつつある。
【0004】
図2に前述の方法を用いた排水処理設備の流れ図の一態様を示し、同図に基づき先に本発明者らが提案した排水の濃縮を行う排水処理設備(特願平3-156460号)を説明する。図2は排水の濃縮方法として真空排気装置を備えた蒸発缶を用いた場合の処理装置の流れ図である。
【0005】
図2において、1′は脱硫装置(図示省略)から放出される排水を一旦貯蔵するための原水タンク、2′は排水中の水分を蒸発するための蒸発缶、3′は蒸発缶2′内の排水の温度を上昇するための排水加熱器、4′は蒸発缶2′で蒸発した水分を凝縮・回収するための冷却器、5′は蒸発缶2′内での排水中水分の蒸発を促進するために蒸発缶2′内を減圧にするとともに蒸発缶2′内で発生した蒸気をすみやかに冷却器4′に移動するための真空排気装置である。
【0006】
図2において脱硫装置からの排水はラインa′により一旦原水タンク1′に貯蔵されたのちラインb′を介して蒸発缶2′に供給される。蒸発缶2′内の排水はラインc′を介して排水加熱器3′に供給される。排水加熱器3′には蒸気その他の加熱媒体がラインe′により供給され、蒸発缶2′より供給される排水を昇温した後、ラインf′により系外へ排出される。排水加熱器3′にて昇温された排水はラインd′を介して再び蒸発缶2′に戻る。蒸発缶2′内は真空排気装置5′によりその圧力が負圧に維持され、かつ前述の如く排水加熱器3′にて排水温度が上昇しているため、蒸発缶2′内の排水中の水分は蒸発することとなり、同蒸発により生じた蒸気はラインg′を介して蒸発缶2′より抜き出され、冷却器4′に送られる。冷却器4′内に送られた蒸気はラインh′により冷却器4′に供給される冷却媒体と熱交換を行い、凝縮して水分(液体)となりラインj′により冷却器4′より抜き出され、系外へ排出される。ラインh′より冷却器4′に供給された冷却媒体はラインi′より抜き出される。冷却器4′にて気体中の蒸気分を水分(液体)として回収したのちの非凝縮性気体はラインk′を介して真空排気装置5′に送られたのち、更にラインl′を介して系外へ排出される。
【0007】
一方、蒸発缶2′にて排水中水分を蒸気として分離された後の濃縮排水はラインm′を介して蒸発缶2′より抜き出され、系外へ排出される。
【0008】
図2には蒸気その他の加熱媒体を用いた場合の一実施態様を示したが、蒸発缶2′及び排水加熱器3′は蒸気その他の加熱媒体の熱効率の上昇を目的として複数とすることもできる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前述のような排水中水分を蒸発する排水処理方法においても、固形成分、溶質成分及び金属成分等が濃縮されたのみであり、最終的処理が施されていないため原排水同様公共水域等の放流はできない。そのため、同濃縮排水の最終処理を行わないと、プロセスとして成立しない欠点があった。
【0010】
本発明は上記技術水準に鑑み、前述の処理方法にて生成した濃縮排水を固化させることにより埋立投棄を目的とした固化物を取得する方法を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は燃焼排ガス中の二酸化硫黄ガスをアルカリ剤により吸収・分離する排煙脱硫装置からの排水を原水タンクに貯蔵し、該排水を真空排気装置を有する蒸発缶に供給して減圧下に水分を蒸発させて濃縮し、得られた濃縮排水中に、セメントまたはセメントと石炭灰の混合粉体を添加混練することからなり、その際、全水銀0.0005mg/l以下、カドミウム0.01mg/l以下、鉛0.1mg/l以下、有機リン0.1mg/l以下、6価クロム0.05mg/l以下、ひ素0.05mg/l以下及びシアン0.1mg/l以下を満たし、かつ圧縮強度が0.5kg/cm2以上の固化物が得られるように濃縮排水とセメント又はセメントと石炭灰の混合割合を濃縮排水の組成に基づき決定することを特徴とする排煙脱硫装置から固化物を取得する方法である。
【0012】
【作用】
本発明によれば、濃縮排水に従来より金属の固定(不溶化)に効果のあるとされるセメントまたはセメントと石炭灰の混合粉体を添加、混合するため、濃縮排水中に含有される金属成分等の有害成分の不溶化を行うことができ、この結果、前記排水、セメントまたはセメントと石炭灰の混合粉体を混合した固化物は総理府令にて定める産業廃棄物の埋立廃棄処分に係る判定基準に適合するため、固化物は埋立投棄等の最終処分が可能となり、総括的には脱硫装置からの排水の最終処分を行うことができる。
【0013】
なお、石炭焚きボイラーからはシリカ、アルミナを主成分とする石炭灰が多量に発生し、このものも不溶化作用があるが、これのみではその作用が低いのでセメントとの混合粉体として使用するものである。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図1に基づいて詳細に説明する。図1は固化媒体としてセメント及び石炭灰の混合粉体を用いる場合の本発明の一実施例を示す説明図である。
【0015】
図1において、1は脱硫排水中水分の蒸発・濃縮装置(図示なし)から送られる濃縮排水を一旦貯蔵するためのタンク、2は濃縮排水と混合するためのセメントを貯蔵するためのセメント貯蔵器、3は濃縮排水と混合するための石炭灰を貯蔵するための石炭灰貯蔵器、4は前記セメント貯蔵器2及び石炭灰貯蔵器3より所定量比にて送られるセメント、石炭石を均一に混合するための混合機、5はタンク1及び混合機4より所定流量送られる濃縮排水とセメント・石炭灰の混合粉体とを混練するための混練機、6は混練機5にて生成する濃縮排水、セメント及び石炭灰の混和物を所定水分量まで乾燥するための乾燥機である。
【0016】
図1において、排水の蒸発・濃縮装置(図示省略)からの表1に示す組成の濃縮排水はラインaにより一旦タンク1に貯蔵されたのち、同濃縮排水とセメント、石炭灰とを混合、混練を行う混練機5にラインbを介して供給される。なお、セメントと石炭灰の混合機4としてはスクリュー型機械攪拌式混合機を、また混練機5としては二軸スクリュー式混練機を用いた。
【表1】

【0017】
一方、セメント貯蔵器2内のセメント、石炭灰貯蔵器3内の石炭灰が夫々所定量比、ラインc,dを介して、これら固化媒体を均一に混合する混合機4に送られて均一混合されたのち、更にラインeを介して混練機5に供給される。
【0018】
この実施例において使用したセメントは市販の普通ポルトランドセメントを、石炭灰は実際の石炭焚き火力発電所(国内炭使用)にて発生したものを使用した。
【0019】
混練機5内ではラインbを介して送られる濃縮排水とラインeを介して送られるセメント、石炭灰の混合粉体とを混合、混練し、濃縮排水とセメント、石炭灰の混合粉体との混和物を製造する。
【0020】
混練機5に供給する濃縮排水及びセメント・石炭灰の混合粉体の供給量は幾多の実験に基づき決定し、こゝでは重量基準で濃縮排水1.0に対し、セメント、石炭灰は各々0.3、0.5とした。
【0021】
混練機5にて製造された混和物はラインfを介して乾燥機6に送られ、同乾燥機6内では107℃の熱風に260分間、混和物中の水分を蒸発させることにより混和物を乾燥させ、下流工程の操作性に適した強度(圧縮強度0.5kg/cm2以上)を有する固化物とした。なお、乾燥機6にて乾燥した後の混和物の水分はほゞ30%程度であった。
【0022】
乾燥機6からの固化物はラインgを介して系外へ排出されるが、同固化物は先に述べた如く総理府令第5号にて定める産業廃棄物の埋立投棄処分に係る判定基準に適合するため埋立投棄等の最終処分が可能である。
【0023】
表2に環境庁告示第13号に準じて、この実施例の固化物の溶出試験を行った結果を示すように、該固化物は表3に示す検出限界値以下であり、また同試験値は上記総理府令の判定基準に適合していることが確認されている。
【表2】

【表3】

【0024】
以上、本発明の一実施例をあげて本発明を説明したが、固化物を上述の総理府令にて定める産業廃棄物の埋立投棄処分に係る判定基準に適合させるためには、固化物を構成する濃縮排水、セメントまたはセメントと石炭灰の混合割合が重要な因子となるので、濃縮排水の組成に基づき各々の混合割合を決定すべきである。
【0025】
【発明の効果】
本発明による排水の不溶化方法を現状有望となりつつある蒸発・減容化による脱硫排水の処理設備に適用することにより同処理設備がプロセス的に成立するとともに、また、脱硫排水の処理という観点からすると既存の排水処理設備に比較して設備費の低減、設備面積の縮少及び運転維持費の低減化に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
固化媒体としてセメント及び石炭灰の混合粉体を用いる場合の本発明の一実施例を示す説明図
【図2】
本発明において排煙脱硫装置からの排水を濃縮する排水処理設備の流れ図を示す説明図。
 
訂正の要旨 (訂正の要旨)
(1) 訂正事項a
特許請求の範囲を減縮することを目的として、
「その際、全水銀0.0005mg/l以下、カドミウム0.01mg/l以下、鉛0.1mg/l以下、有機リン0.1mg/l以下6価クロム0.05mg/l以下、ひ素0.05mg/l以下及びシアン0.1mg/l以下を満たし、かつ圧縮強度が0.5kg/cm2以上の固化物が得られるように濃縮排水とセメント又はセメントと石炭灰の混合割合を濃縮排水の組成に基づき決定する」
の構成を本件特許明細書の特許請求の範囲の記載に付加して、同特許請求の範囲を下記のように訂正する。
「 燃焼排ガス中の二酸化硫黄ガスをアルカリ剤により吸収・分離する排煙脱硫装置からの排水を原水タンクに貯蔵し、該排水を真空排気装置を有する蒸発缶に供給して減圧下に水分を蒸発させて濃縮し、得られた濃縮排水中に、セメントまたはセメントと石炭灰の混合粉体を添加混練することからなり、その際、全水銀0.0005mg/l以下、カドミウム0.01mg/l以下、鉛0.1mg/l以下、有機リン0.1mg/l以下、6価クロム0.05mg/l以下、ひ素0.05mg/l以下及びシアン0.1mg/l以下を満たし、かつ圧縮強度が0.5kg/cm2以上の固化物が得られるように濃縮排水とセメント又はセメントと石炭灰の混合割合を濃縮排水の組成に基づき決定することを特徴とする排煙脱硫装置から固化物を取得する方法。」
(2) 訂正事項b
明りょうでない記載を釈明することを目的として、本件特許明細書の段落【0011】の記載下記のとおり訂正する。
「 本発明は燃焼排ガス中の二酸化硫黄ガスをアルカリ剤により吸収・分離する排煙脱硫装置からの排水を原水タンクに貯蔵し、該排水を真空排気装置を有する蒸発缶に供給して減圧下に水分を蒸発させて濃縮し、得られた濃縮排水中に、セメントまたはセメントと石炭灰の混合粉体を添加混練することからなり、その際、全水銀0.0005mg/l以下、カドミウム0.01mg/l以下、鉛0.1mg/l以下、有機リン0.1mg/l以下、6価クロム0.05mg/l以下、ひ素0.05mg/l以下及びシアン0.1mg/l以下を満たし、かつ圧縮強度が0.5kg/cm2以上の固化物が得られるように濃縮排水とセメント又はセメントと石炭灰の混合割合を濃縮排水の
組成に基づき決定することを特徴とする排煙脱硫装置から固化物を収得する方法。」
異議決定日 2001-09-26 
出願番号 特願平3-158333
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C02F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 中村 敬子  
特許庁審判長 吉田 敏明
特許庁審判官 唐戸 光雄
野田 直人
登録日 1999-09-24 
登録番号 特許第2984417号(P2984417)
権利者 三菱重工業株式会社 中部電力株式会社
発明の名称 排煙脱硫装置排水から固化物を取得する方法  
代理人 萩原 亮一  
代理人 内田 明  
代理人 萩原 亮一  
代理人 安西 篤夫  
代理人 内田 明  
代理人 萩原 亮一  
代理人 安西 篤夫  
代理人 安西 篤夫  
代理人 内田 明  
代理人 萩原 亮一  

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