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審決分類 |
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K |
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管理番号 | 1055826 |
審判番号 | 審判1996-14567 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-02-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1996-08-26 |
確定日 | 2002-03-07 |
事件の表示 | 平成 2年特許願第508831号「クローン化透明帯遺伝子を基本とする避妊ワクチン」拒絶査定に対する審判事件[平成 2年12月27日国際公開、WO90/15624、平成 5年 2月12日国内公表、特表平 5-500654]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯等 本願は、平成2年6月6日(優先権主張1989年6月12日、米国)にPCT/US90/03075として出願された国際特許出願であって、平成12年12月13日付けで手続補正された請求の範囲の請求項1および請求項1を直接もしくは間接的に引用する請求項2〜9には「哺乳類雌用の避妊用ワクチン」に係る発明が記載されており、請求項1の記載は下記の通りである。 「哺乳類の雌用であって、精子による卵の受精を抑制する抗体の結合のためのアミノ酸配列を含む避妊用ワクチンであって、 前記アミノ酸配列は、マウスZP3アミノ酸配列Cys-Ser-Asn-Ser-Ser-Ser-Ser-Gln-Phe-Gln-Ile-His-Gly-Pro-Arg-Glnおよび保存的に変更されたその変異体からなるペプチド、又は、 前記ワクチンが使用される哺乳動物の種に由来するZP3蛋白質の上記配列に相同な領域及び保存的に変更された前記相同な領域の変異体からなるペプチドを含み、 薬理学的に使用可能な担体をさらに含むことを特徴とする避妊用ワクチン。」 2.本件明細書の記載: 本件明細書において実際に避妊用ワクチンとしての効果を確認したものは、マウスZP3蛋白質由来の「Cys-Ser-Asn-Ser-Ser-Ser-Ser-Gln-Phe-Gln-Ile-His-Gly-Pro-Arg-Gln」からなる16アミノ酸ペプチド(以下、「ペプチド-16」という。)をマウス雌用に用いた場合のみであり、特にマウス以外の哺乳動物の種、例えばヒト避妊用ワクチンについての具体的な実施例は全くない。 しかも、本件明細書中でのヒトZP3蛋白質に関しては、ヒトゲノム中に78%以上の類似性を有する配列が検出されたことが記載された文献名と共に、FIG-2A、FIG2Bとして、N末端側の280にも満たないアミノ酸配列(対応する塩基配列)がマウスZP3アミノ酸配列と対比して記載されているのみであり、ヒトZP3蛋白質の全アミノ酸配列どころか、上記ペプチド-16に対応する領域のアミノ酸配列すら示されていない。 そうであるから、上記請求項1に記載される「ヒトに由来するZP3蛋白質のペプチド-16に相同な領域及び保存的に変更された前記相同な領域の変異体からなるペプチド」とはいかなる配列を有するものであるかは不明であり、そもそも各哺乳類の種間でファミリーを構成する蛋白質どうしが、エピトープの1次構造上の位置(上記における「相同の位置」)が保存されているという一般論が本願優先日前に存在していたとはいえず、この点を指摘した平成12年5月29日付の拒絶理由通知、及び平成12年12月28日付の審尋書に対して明確な反論がない。 してみれば、本件明細書中には、「ヒトに由来するZP3蛋白質のペプチド-16に相同な領域及び保存的に変更された前記相同な領域の変異体からなるペプチド」に対応するアミノ酸配列が開示されているとはいえない。 ところで、一般に抗原性エピトープであることが明らかな配列を切り出してペプチドとするとその立体構造が変化して元の蛋白質の表面に存在している時のイメージを保存できる場合は少なく、特定抗原物質のエピトープに対応するアミノ酸配列を有するペプチドであっても元の抗原物質を認識できる抗体を誘発できるか否かはやってみなくては分からない(必要ならば、大海忍等著「細胞工学別冊実験プロトコールシリーズ 抗ペプチド抗体実験プロトコール」(株)秀潤社(1995年11月5日)第14〜24頁、特に第14頁、第24頁4〜5行など参照のこと)といえるが、まして、避妊用ワクチンとなれば透明帯を認識できる抗体が誘導できるのみでは足りず、精子の接近もしくは貫通を阻止できるように、透明帯の適切な位置に有効な抗体を大量に誘導できるペプチドであることが要求されるのであるから、ますますやってみなくては分からないといえる。この点についても明確な反論がない。 したがって、いずれにしても本願明細書にはヒトZP3蛋白質由来ペプチドからなるヒト避妊用ワクチンについては到底当業者が容易に実施できる程度に記載されているとはいえず、本件明細書の開示は不十分である。 3.結論: 以上述べた通り、ヒト用の避妊用ワクチンを包含する請求項1〜10に記載された発明は、本願明細書中に当業者が容易に実施できるように記載されておらず、反対に請求項1〜10の記載は明細書に十分に開示されていない発明を含んでいるから、本願は、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない。 また、請求項1〜10に包含されたヒト避妊用ワクチンに係る発明については、本件明細書中に産業上利用できる完成された発明として記載されていないということもできるから、当該発明は特許法第29条柱書きの規定からみても特許を受けることができない。 よって、結論の通り審決する。 |
審理終結日 | 2001-09-05 |
結審通知日 | 2001-09-14 |
審決日 | 2001-09-28 |
出願番号 | 特願平2-508831 |
審決分類 |
P
1
8・
531-
WZ
(A61K)
P 1 8・ 534- WZ (A61K) P 1 8・ 14- WZ (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田村 明照、新見 浩一 |
特許庁審判長 |
眞壽田 順啓 |
特許庁審判官 |
種村 慈樹 佐伯 裕子 |
発明の名称 | クローン化透明帯遺伝子を基本とする避妊ワクチン |
代理人 | 秋山 暢利 |
代理人 | 武田 正男 |
代理人 | 奥山 尚男 |