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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B02C |
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管理番号 | 1055839 |
審判番号 | 不服2000-10731 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-04-16 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-07-13 |
確定日 | 2002-03-18 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第278229号「紙葉細断装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 4月16日出願公開、特開平 5- 92143]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成3年9月30日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年8月11日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「使用済み紙葉を細断するカッタユニットと、このカッタユニットの回転軸を駆動する駆動モータとを具備した紙葉細断装置において、 上記駆動モータに流れる負荷電流を検出する検出器と、 上記回転軸に連結され回転を電気的に無段変速する変速機と、 あらかじめ設定された電流基準設定値と、上記検出器により検出した電流値とを比較し、電流値が前記電流基準設定値を越えた場合には、トルクを増大させながら紙葉を細断しきる高トルク低回転に切り換わるように上記変速機の回転を制御する変速制御回路とを具備したことを特徴とする紙葉細断装置。」 2.引用例記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭64-85148号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「本発明文書細断機は、細断用紙を細断する細断刃1と、該細断刃1を駆動する細断モータ2とを具え、前記細断刃1にかかる負荷を検出する負荷検出手段3と、該負荷検出手段3の検出結果に基づき前記細断刃1の回転速度を変化させる変速手段4とが設けられたものである。」(第2頁右上欄第2〜8行) (2)「前記変速手段4は、第1図および第2図の如く、前記細断モータ2の回転軸8に回転自在に外嵌された軽負荷用駆動スプロケット9、中負荷用駆動スプロケット10および重負荷用駆動スプロケット11と、前記細断刃1の一方の回転軸12に外嵌固定された軽負荷用従動スプロケット13、中負荷用従動スプロケット14および重負荷用従動スプロケット15と、前記軽負荷用駆動スプロケット9と軽負荷用従動スプロケット13間に掛巻された軽負荷用連結チェーン16と、前記中負荷用駆動スプロケット10と中負荷用従動スプロケット14間に掛巻された中負荷用連結チェーン17と、前記重負荷用駆動スプロケット11と重負荷用従動スプロケット15間に掛巻された連結チェーン18等から成る。そして、前記各駆動スプロケット9,10,11は、前記細断モータ2の回転軸8に外嵌固定された電磁クラッチ19,20,21がオンすることにより回転軸8と一体回転する。」(第2頁右上欄第15行〜左下欄第13行) (3)「該変速回路41は、軽負荷用電磁クラッチ駆動回路42、中負荷用電磁クラッチ駆動回路43および重負荷用電磁クラッチ駆動回路44から成る。」(第3頁右上欄第1〜3行) (4)「そして、直流電源VccとグラウンドGNDとの間に接続された抵抗54〜59により、GND<V1<V2<V3<Vccなる電圧が作成され、前記第一ウインドコンパレータ45の上限端子にはV1、下限端子にはGND、第二ウインドコンパレータ48の上限端子にはV2、下限端子にはV1、また、第三ウインドコンパレータ51の上限端子にはV3、下限端子にはV2の電圧が印加されている。」(第3頁左下欄第14行〜右下欄第2行) (5)「そして、前記負荷検出手段3は、カレントトランス35、ダイオードブリッジ36、コンデンサ37、抵抗38および電圧増幅回路39等により構成される。」(第3頁右下欄第14〜17行) (6)「このとき、細断刃1にかかる負荷の大小は、細断モータ2に流れる電流の大小となって表われる。この電流は、カレントトランス35により検出され、整流平滑回路で整流平滑された後、電圧増幅回路39により増幅され遅延回路40を通り、変速回路41に至る。ここで検出電圧(電圧増幅回路39の出力電圧)と各ウインドコンパレータ(WC)および紙づまり検出回路60の出力との関係を示すと、下の第1表の通りとなる。・・(略)・・すなわち、負荷が軽く検出電圧がV1未満であれば、第一ウインドコンパレータ45がオンし、軽負荷用電磁クラッチ19がオンする。すると、細断モータ2の回転軸8と軽負荷用駆動スプロケット9が一体回転を始め、細断刃1は高速で回転する。また、負荷が中程度であり、検出電圧がV1以上V2未満であれば、第二ウインドコンパレータ48がオンし、中負荷用電磁クラッチ20がオンする。すると、細断モータ2の回転軸8と中負荷用駆動スプロケット10が一体回転を始め、細断刃1は中速で回転する。また、負荷が重く、検出電圧がV2以上V3未満であれば、第三ウインドコンパレータ51がオンし、重負荷用電磁クラッチ21がオンする。すると、細断モータ2の回転軸8と重負荷用駆動スプロケット11が一体回転を始め、細断刃1は低速で回転する。」(第4頁左上欄第15行〜左下欄第9行) これらの記載事項によると、引用例には、 「文書を細断する細断刃1と、この細断刃1の回転軸12を駆動する細断モータ2とを具備した文書細断機において、 上記細断モータ2に流れる負荷電流を検出するカレントトランス35と、 上記回転軸12に連結され回転を電磁クラッチ19,20,21がオンすることにより多段変速する変速手段4と、 あらかじめ設定された電圧基準設定値V1,V2,V3と、上記カレントトランス35により検出した電流値に基づく検出電圧値とを比較し、検出電圧値が、前記電圧基準設定値V1以上V2未満である場合には、トルクを増大させ紙葉を細断しきる中負荷中速回転に、前記電圧基準設定値V2以上V3未満である場合には、さらにトルクを増大させ紙葉を細断しきる重負荷低速回転に切り換わるように上記変速手段4の回転を制御する変速回路41とを具備した文書細断機。」 の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 3.対比 本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「文書」は、本願発明の「使用済み紙葉」に相当する。以下同様にして、「細断刃1」は「カッタユニット」に、「回転軸12」は「回転軸」に、「細断モータ2」は「駆動モータ」に、「文書細断機」は「紙葉細断装置」に、「カレントトランス35」は「検出器」に、「電磁クラッチ19,20,21がオンすることにより」は「電気的に」に、「変速手段4」は「変速機」に、「変速回路41」は「変速制御回路」に、それぞれ、相当する。 してみると、両者は、 「使用済み紙葉を細断するカッタユニットと、このカッタユニットの回転軸を駆動する駆動モータとを具備した紙葉細断装置において、 上記駆動モータに流れる負荷電流を検出する検出器と、 上記回転軸に連結され回転を電気的に変速する変速機と、 上記変速機の回転を制御する変速制御回路とを具備した紙葉細断装置。」 の点において一致し、以下の点で相違する。 相違点;本願発明は、変速機として、電気的に無段変速する変速機を採用し、あらかじめ設定された電流基準設定値と、上記検出器により検出した電流値とを比較し、電流値が前記電流基準設定値を越えた場合には、トルクを増大させながら紙葉を細断しきる高トルク低回転に切り換わるようにするのに対して、引用例記載の発明は、変速機として、電気的に多段変速する変速機を採用し、あらかじめ設定された電圧基準設定値V1,V2,V3と、上記検出器により検出した電流値に基づく検出電圧値とを比較し、検出電圧値が、前記電圧基準設定値V1以上V2未満である場合には、トルクを増大させ紙葉を細断しきる中負荷中速回転に、前記電圧基準設定値V2以上V3未満である場合には、さらにトルクを増大させ紙葉を細断しきる重負荷低速回転に切り換わるようにする点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 無段変速する変速機は従来周知の変速機であり、当該変速機を電気的に変速することも従来周知の事項(必要なら、原査定の備考において引用された特開昭53-18860号公報、参照。)であるから、引用例記載の発明において、変速機として、電気的に多段変速する変速機に代えて、電気的に無段変速する変速機を採用することは、必要に応じて当業者が格別困難なく想到し得ることにすぎないものと認められる。 そして、引用例記載の発明において、上記電気的に無段変速する変速機を採用するに当たり、「電圧基準設定値V1」をこれと等価の「電流基準設定値」とし、「検出器により検出した電流値に基づく検出電圧値」をこれと等価の「検出器により検出した電流値」として、「電流値が前記電流基準設定値を越えた場合には、トルクを増大させながら紙葉を細断しきる高トルク低回転に切り換わるようにする」ことも、必要に応じて当業者が格別困難なく想到し得ることにすぎないものと認められる。 なお、請求人は、平成12年4月18日付けの意見書において、「したがって、引用例では、一度に大量の紙葉を投入した場合には、重負荷用電磁クラッチ21に切替った際に切り替えショックが発生し、さらには、引用例の明細書の第4頁下段左欄の第10行から第14行に記載されているように、細断モータ2が停止し、細断刃1を紙葉を噛んだまま停止するに至る。これに対して、本願の請求項1に係る発明は、一度に多量の紙葉を投入しても、切り替えショックを生じることなく、しかも回転刃が停止することなく、低速高トルクに切り替えて細断を連続して行うことを目的として、その目的達成のために、変速機には、電気的に変速する無段方式のものを採用することを基本として、負荷を検出する手段と、変速機の回転を制御する制御回路を設けたものである。」と主張している。 しかしながら、本願発明の「一度に多量の紙葉を投入しても、切り替えショックを生じることなく」という作用は、無段変速する変速機を採用することによる自明の作用にすぎず、また、本願発明の「回転刃が停止することなく」という作用は、引用例公報の第4頁左下欄の第10〜14行記載の「さらに負荷が重く、細断刃1の細断能力を越えると、・・(略)・・細断モータ2が停止し、細断刃1が停止する。」という付加機能を考慮していないだけであるから、請求人の上記主張は採用し得ない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-01-24 |
結審通知日 | 2002-01-25 |
審決日 | 2002-02-05 |
出願番号 | 特願平3-278229 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B02C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 黒石 孝志 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
氏原 康宏 亀井 孝志 |
発明の名称 | 紙葉細断装置 |
代理人 | 佐藤 政光 |
代理人 | 黒瀬 雅志 |
代理人 | 佐藤 一雄 |