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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1056052
審判番号 審判1999-11626  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-07-15 
確定日 2002-03-18 
事件の表示 平成 4年特許願第291209号「アイドル回転数制御方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 5月27日出願公開、特開平6-146971]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願発明
本願は、平成4年10月29日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年1月19日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「スロットルバルブを迂回するバイパス通路に設けられた流量制御弁の開度を、少なくともエンジン回転数の変化に基づき制御して吸入空気量を調節することにより、アイドリング時のエンジン回転数を制御するアイドル回転数制御方法であって、アイドリング回転数よりも高いエンジン回転数からエンジン回転数が低下していく運転状態でのエンジン回転数を検知し、検知したエンジン回転数とそのエンジン回転数が検出された時点の少なくともエンジンの暖機状態によって決定されるアイドル目標回転数との差が大きいほど吸入空気量を増加させるように回転補正量を決定し、少なくともこの回転補正量を加えて流量制御弁の開度のデューティ比を増加補正することを特徴とするアイドル回転数制御方法。」
(なお、平成11年4月26日付け及び平成11年7月30日付けの手続補正は、平成13年8月15日付けの補正の却下の決定により却下された。)

【2】引用例の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用した特公昭63-18016号公報(以下、「引用例1」という。)には、次のような技術的事項が記載されている。
・引用例1;
「車両のエンジンのスロットル弁をバイパスして設けられた補助空気通路からの補助空気供給量を調整してエンジンの回転速度を制御する方法であって、エンジンの現行回転速度および車両の走行速度を検出し、現行回転速度の検出値と閉ループ制御されるべきアイドリング回転速度の所定の目標値との差に応じて、前記補助空気供給量に相当する第1の値を決定し、前記車両の走行速度の検出値に応じて制御されるべき前記補助空気供給量に相当する第2の値を決定し、前記第1の値および前記第2の値のうちの大きい方の値に応じて、前記補助空気供給量を調整することを特徴とするエンジン回転速度制御方法。」(特許請求の範囲)、
「エンジンのアイドル回転速度についてメインテナンスフリーとするために、エンジンの暖機状態に応じた目標回転速度にアイドル回転速度を閉ループ制御して、エンジンがアイドリング回転速度以上の運転状態の時には、エンジン回転速度信号のみに依存して補助空気量を増大させ、且つ上記状態からアイドリング運転状態に戻る時には、上記増大させた補助空気量を所定の時間の関数に従って緩やかに減少して目標回転速度に戻るように制御する装置はこれまでにも例えば本出願人による特願昭54-70951において提案されている。」(第1欄第26行〜第2欄第8行)、
「空気導管21,22はスロットル弁17をバイパスするように設けられ、両導管21,22の間には空気制御弁30が設けられている。また、導管21の一端は、スロットル弁17とエアフローメータ12の間に設けられた空気導入口23に接続され、導管22の一端は、スロットル弁17の下流部に設けられた空気導出口24に接続されている。空気制御弁30は、基本的には電磁(リニアソレノイド)式制御弁であって、ハウジング31の中で摺動可能なプランジャ32の変位により、空気導管21,22の間の空気通路面積を変える。通常プランジャ32は圧縮コイルバネ33により空気通路面積が零となるようセットされている。」(第3欄第41行〜第4欄第10行)、
「また、レーシング状態、自動車の走行中のようにエンジン回転速度が目標回転速度より高い状態ではD-A変換回路100の出力電圧を、コンデンサ405に入力しb点の電圧とし、その電圧はダイオード402、抵抗404を通ってa点の電位を上昇させる。したがって補助空気量はレーシング時あるいは負荷運転時であってもある程度の空気を流している。ここで、スロットル弁17を全閉にするとエンジン回転速度は下がるが、補助空気量の減少は、コンデンサ405と抵抗403で決まる時定数で徐々に下がるb点電位によって制御される。従ってエンジン回転速度の落ち込みはなめらかにかつ緩やかなものとなり、設定回転速度以下に落ち込むこともなくなる。従って目標回転速度を越えるエンジン回転速度に対する補助空気の増加量の関係例が第3図のように表示され、エンジン回転速度がアイドル回転時の目標回転速度で制御されるときは補助空気量もほぼ一定で補助空気増加量は零であるが、エンジン回転速度が増加すると補助空気増加量も増加する。」(第6欄第8〜29行)、
「なお、上記実施例では、空気制御弁は、入力電流に比例して、流量の変化する可動プランジャ型リニアソレノイド式電磁弁としたが、他に可動コイル型電磁弁あるいは電流のON-OFFの通電時間比(デューティ比)で、空気流量を制御する弁を用いてもよい。」(第7欄第36行〜第8欄第5行)
そして、引用例1に記載される各「回転速度」は、図面の第3図に記載されるその単位が「rpm」であることからみて、「回転数」を意味するものである。
それゆえ、以上の記載、及び、第1、3図の記載等からみて、引用例1には、
「スロットル弁を迂回する補助空気通路に設けられた空気制御弁の開度を、少なくともエンジン回転数の変化に基づき制御して吸入空気量を調節することにより、アイドリング時のエンジン回転数を制御するアイドル回転数制御方法であって、アイドリング回転数よりも高いエンジン回転数からエンジン回転数が低下していく運転状態でのエンジン回転数を検知し、検知したエンジン回転数がエンジンの暖機状態によって決定されるアイドル目標回転数に対して大きいほど吸入空気量を増加させるように補助空気増加量を決定し、この補助空気増加量に基づく補正量を加えて空気制御弁の開度のデューティ比を増加補正するアイドル回転数制御方法」、
という発明が記載されているものと認められる。

【3】対比・判断
そこで、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と上記引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1に記載された「スロットル弁」、「補助空気通路」、「空気制御弁」は、それぞれ、本願発明の「スロットルバルブ」、「バイパス通路」、「流量制御弁」に相当するものであり、また、引用例1に記載される「補助空気増加量」に基づいて空気制御弁の開度のデューティ比を増加させる「補正量」は、本願発明の「回転補正量」というべきものであるから、両者は、
「スロットルバルブを迂回するバイパス通路に設けられた流量制御弁の開度を、少なくともエンジン回転数の変化に基づき制御して吸入空気量を調節することにより、アイドリング時のエンジン回転数を制御するアイドル回転数制御方法であって、アイドリング回転数よりも高いエンジン回転数からエンジン回転数が低下していく運転状態でのエンジン回転数を検知し、検知したエンジン回転数を基にして吸入空気量を増加させるように回転補正量を決定し、この回転補正量を加えて流量制御弁の開度のデューティ比を増加補正するアイドル回転数制御方法」、
で一致し、以下の各点(イ)、(ロ)で相違している。
(相違点)
(イ)本願発明が、検知したエンジン回転数とそのエンジン回転数が検出された時点の少なくともエンジンの暖機状態によって決定されるアイドル目標回転数との差が大きいほど吸入空気量を増加させるように回転補正量を決定するものであるのに対し、引用例1に記載された発明は、検知したエンジン回転数がエンジンの暖機状態によって決定されるアイドル目標回転数に対して大きいほど吸入空気量を増加させるように回転補正量を決定するものである点。
(ロ)本願発明が、少なくとも吸入空気量を増加させるように決定された回転補正量を加えて、流量制御弁の開度のデューティ比を増加補正するものであり、回転補正量以外の補正量を加えることが可能であるのに対し、引用例1に記載された発明は、回転補正量を加えてデューティ比を増加補正するものである点。
以下、前記各相違点(イ)、(ロ)について検討する。
・相違点(イ)について;
引用例1に記載された発明は、検知したエンジン回転数がエンジンの暖機状態によって決定されるアイドル目標回転数に対して大きければ大きいほど補正空気増加量、即ち、吸入空気量を増加させるのであるから、検知したエンジン回転数とエンジンの暖機状態によって決定されるアイドル目標回転数との差が大きいほど補助空気増加量を増加させるものであるといえる。
また、補助空気増加量は、エンジン回転数をエンジンの暖機状態によって決定されるアイドル目標回転数に適切に収束させるためになされるものであるから、引用例1の第3図おいて、エンジンの暖機状態によってアイドル目標回転数が変化する場合には、アイドル目標回転数の変化に応じて、第3図に示されるグラフが変化すること、即ち、アイドル目標回転数が減少すれば、その変化に応じてグラフは左方向へ移動し、アイドル目標回転数が増加すれば、その変化に応じてグラフは右方向へ移動することは、当業者が容易に想到し得るものと認められる。
それゆえ、補助空気増量制御(いわゆるダッシュポット制御)において、時々刻々変化するアイドル目標回転数を基準点とするならば、補助空気増加量は、エンジン回転数に対応して決定されるものであると同時に、エンジン回転数とアイドル目標回転数の差に対応して決定されるものでもあることは、当業者が容易に想到し得るものである。
してみれば、引用例1に記載された発明を「検知したエンジン回転数とそのエンジン回転数が検出された時点のエンジンの暖機状態によって決定されるアイドル目標回転数との差が大きいほど吸入空気量を増加させるように」することは、当業者が容易になし得るものと認められる。
また、アイドル目標回転数を、「少なくともエンジンの暖機状態によって」決定するか、あるいは「エンジンの暖機状態によって」決定するかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る程度の設計的事項にすぎないものである。
したがって、上記相違点(イ)における本願発明の構成は、引用例1に記載された発明から当業者が容易になし得たものというべきである。
・相違点(ロ)について;
本願発明も引用例1に記載された発明も、共に、吸入空気量を増加させるように決定された回転補正量を加えてデューティ比を増加補正するものであり、また、流量制御弁の開度をより精密に補正したい時は、精密さに関係する各種要因の因子を勘案し、上記回転補正量の他にさまざまの補正量をさらに加えるようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の事項にすぎないから、この相違点(ロ)は格別のものではない。
(効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1に記載された発明から当業者であれば当然予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

【4】むすび
以上のとおりであって、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-12-27 
結審通知日 2002-01-15 
審決日 2002-01-28 
出願番号 特願平4-291209
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 哲鈴木 貴雄  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 清田 栄章
飯塚 直樹
発明の名称 アイドル回転数制御方法  
代理人 赤澤 一博  

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