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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H03H
管理番号 1056110
審判番号 審判1999-12869  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-08-05 
確定日 2002-04-15 
事件の表示 平成 7年特許願第 83039号「弾性表面波装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成 8年11月 1日出願公開、特開平 8-288786、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成7年4月10日の出願であって、その請求項1ないし3に係る発明は、平成11年9月3日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 複数の弾性表面波素子を有する弾性表面波装置において、2枚の弾性表面波素子圧電基板がそれぞれの弾性表面波素子のパターンを向き合わせるように配置され、一方の弾性表面波素子圧電基板の入出力端子は、他方の弾性表面波素子圧電基板の前記パターンと同一面に形成されたパッドに導電性の物質により電気的および物理的に接続され、前記パッドを介して前記弾性表面波装置の入出力端子へ接続されていることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】 前記導電性の物質が導電性接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項3】 前記導電性の物質が導電ゴムであることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1ないし8には、それぞれ以下の点が記載されている。
引用例1(実願昭56-16711号(実開昭57-131023号)のマイクロフィルム)
・複数個の表面波チップを同一外囲器内に立体的に配設すること、
・具体的には、第2の表面波チップをステムのほぼ中央部に穿設した凹部の底部に載置固定し、第1の表面波チップをこの凹部を跨ぐようにステムに載置固定すること、
引用例2(特公昭56-1808号公報)
・上面下面のいずれか一方に弾性表面波励起用電極及び他方に弾性表面波検出用電極が配置され、上面下面とそれらに連なる一側面を伝搬経路とする一対の圧電性媒体を、該一側面が弾性表面波波長の5倍以下の距離を隔てて平行に相対向して配置することにより弾性表面波結合素子を構成すること、
・図面第4図、第5図に関し、図面の簡単な説明には、二平面上の弾性表面波素子を重ね合わせても本発明における効果は得られぬことを説明するための側断面図および平面図をそれぞれ示す旨、また、発明の詳細な説明には、このような構成は実際には不可能であり、電極73、74よりリード線を取出すことが困難である旨記載のあること、
引用例3(特開平4-170811号公報)
・弾性表面波デバイスのワイヤボンディングすべき位置に金属バンプを形成し、パッケージの金属パターンに金属バンプを直接接続すること、
引用例4(実願平2-95804号(実開平4-53320号)のマイクロフィルム)
・弾性表面波素子上に形成した入出力パターンとプリント基板上に形成した入出力パターンとの間を伸縮性のある導電性部材(導電ゴム)で接続すること、
引用例5(実願平2-86217号(実開平4-44733号)のマイクロフィルム)
・弾性表面波素子上の入出力パターンとパッケージに設けられた入出力部分とを伸縮性のある導電性部材(導電ゴム)で接続すること、
引用例6(実願平2-68383号(実開平4-27623号)のマイクロフィルム)
・電極膜を形成した面を容器ベースに対向させて取付けた上で容器ベース上に金属材の容器キャップをかぶせて密封すること、
引用例7(実願昭62-165138号(実開平1-70424号)のマイクロフィルム)
・電極形成面に吸音材が形成され、端子に吸音材の高さよりも高いバンプが形成された弾性表面波素子を取付け面に対してフェイスダウンボンディングすること、
引用例8(特開昭58-130613号公報)は、拒絶査定の際に追加引用例として示されたものであり、以下の点が記載されている。
・弾性表面波素子を重ね合わせ板を介して複数個積層すること、
さらに、前置審査における、報告書には、以下の引用例9ないし12が参考文献として挙げられている。
引用例9(実公昭62-23125号公報)
・スペーサ粒子を含有する導電ペーストを介して圧電振動子を配線基板と平行な姿勢で接続すること、
引用例10(実公昭62-44582号公報)
・接着剤に直径100〜200μmで比重が接着剤とほぼ等しいガラスビーズを混入すること、
引用例11(実開昭60-124132号公報)
・枠状の吸着パッドとカバーとで空洞境界面を形づくるものとし、カバーと内部基板間に吸着パッドを存在させるか、一対の吸着パッドおよびカバーの各吸着パッド同士を接触させて空洞を形成し空洞内は負気圧ないし真空もしくはこれに近い気圧状態にすること、
引用例12(実開平2-29435号公報)
・球状のセラミックス、ガラスあるいは樹脂芯材の表面に低融点金属被膜あるいは低融点合金被膜を形成すること、

3.対比・判断
本願請求項1に係る発明と引用例1ないし12に記載された事項とを対比すると、引用例1ないし12には、いずれも、本願の請求項1に係る発明における「2枚の弾性表面波素子圧電基板がそれぞれの弾性表面波素子のパターンを向き合わせるように配置され、一方の弾性表面波素子圧電基板の入出力端子は、他方の弾性表面波素子圧電基板の前記パターンと同一面に形成されたパッドに導電性の物質により電気的および物理的に接続され、前記パッドを介して前記弾性表面波装置の入出力端子へ接続されている」点について記載がなく、またこれを示唆する記載も認められない。
引用例1ないし12のうち、唯一、2枚の弾性表面波素子圧電基板がそれぞれの弾性表面波素子のパターンの形成された面を向き合わせるように配置されている構成が、その図面第4図及び第5図として示されている引用例2について検討する。引用例2では、弾性表面波結合素子を構成するにあたり、実際には不可能である、ないしは効果が得られない例として第4図及び第5図を示しており、かつ、この第4図及び第5図においては、2枚の弾性表面波素子圧電基板のそれぞれの弾性表面波素子のパターンの形成位置はずれていて、伝搬経路(の大部分)が向き合っているだけで、「それぞれの弾性表面波素子のパターンを向き合わせるように配置」したものではなく、また、引用例2の第4図及び第5図については、接続に関しても、電極よりリード線を取出すことが困難であるという消極的記載しかない。
したがって、本願請求項1に係る発明が、引用例1ないし12に記載された発明に基いて当業者の容易に発明をすることができたものであると認めることはできない。
また、本願の請求項2及び3はいずれも本願の請求項1を引用するものであるから、本願の請求項1に係る発明について前記したと同様の理由により、引用例1ないし12に記載された発明に基いて当業者の容易に発明をすることができたものであると認めることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1ないし請求項3に係る発明は引用例1ないし12に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-03-28 
出願番号 特願平7-83039
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H03H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 工藤 一光  
特許庁審判長 下野 和行
特許庁審判官 今井 義男
治田 義孝
発明の名称 弾性表面波装置  
代理人 京本 直樹  

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