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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H03H
管理番号 1056138
審判番号 審判1999-12057  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-08-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-07-27 
確定日 2002-04-15 
事件の表示 平成 7年特許願第 11396号「弾性表面波装置の製造方法、および、これを用いて製造された弾性表面波装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成 8年 8月 9日出願公開、特開平 8-204483、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成7年1月27日の出願であって、その請求項1ないし20に係る発明は、平成10年3月17日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された次のとおりのものと認める。
【請求項1】 タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム単結晶圧電基板上に単結晶のアルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る電極を備えた弾性表面波装置の製造方法において、
前記単結晶圧電基板上の基板表面変質層を、前記タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム単結晶圧電基板表面に最も近い低指数を持つ結晶面に垂直な軸方向に対しイオンビームの照射方向が平行または垂直となる位置からそれぞれ±20°の範囲内になるようにイオン源を配置してイオンビームエッチングを行うことにより除去した後、前記単結晶圧電基板上に単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜を形成することを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項2】 請求項1に記載の弾性表面波装置の製造方法において、
前記単結晶圧電基板がXカットタンタル酸リチウムであり、
前記基板表面変質層を、該Xカットタンタル酸リチウム単結晶圧電基板表面に最も近い低指数を持つ(100)結晶面に垂直な〈100〉軸方向に対しイオンビームの照射方向が平行または垂直となる位置からそれぞれ±20°の範囲内になるようにイオン源を配置してイオンビームエッチングを行うことにより除去した後、前記単結晶圧電基板上に単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜を形成することを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項3】 請求項1に記載の弾性表面波装置の製造方法において、
前記単結晶圧電基板がZカットタンタル酸リチウムまたはZカットニオブ酸リチウムであり、
前記基板表面変質層を、該Zカットタンタル酸リチウムまたはZカットニオブ酸リチウム単結晶圧電基板表面に最も近い低指数を持つ(001)結晶面に垂直な〈001〉軸方向に対しイオンビームの照射方向が平行または垂直となる位置からそれぞれ±20°の範囲内になるようにイオン源を配置してイオンビームエッチングを行うことにより除去した後、前記単結晶圧電基板上に単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜を形成することを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項4】 請求項1に記載の弾性表面波装置の製造方法において、
前記単結晶圧電基板が36°回転Yカットタンタル酸リチウムであり、
前記基板表面変質層を、該36°回転Yカットタンタル酸リチウム単結晶圧電基板表面に最も近い低指数を持つ(012)結晶面に垂直な軸方向に対しイオンビームの照射方向が平行または垂直となる位置からそれぞれ±20°の範囲内になるようにイオン源を配置してイオンビームエッチングを行うことにより除去した後、前記単結晶圧電基板上に単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜を形成することを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項5】 請求項1に記載の弾性表面波装置の製造方法において、
前記単結晶圧電基板が128°回転Yカットニオブ酸リチウムであり、
前記基板表面変質層を、該128°回転Yカットニオブ酸リチウム単結晶圧電基板表面に最も近い低指数を持つ(0,-1,2)結晶面に垂直な軸方向に対しイオンビームの照射方向が平行または垂直となる位置からそれぞれ±20°の範囲内になるようにイオン源を配置してイオンビームエッチングを行うことにより除去した後、前記単結晶圧電基板上に単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜を形成することを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項6】 請求項1に記載の弾性表面波装置の製造方法において、
前記単結晶圧電基板が41°回転Yカットニオブ酸リチウムであり、
前記基板表面変質層を、該41°回転Yカットニオブ酸リチウム単結晶圧電基板表面に最も近い低指数を持つ(012)結晶面に垂直な軸方向に対しイオンビームの照射方向が平行または垂直となる位置からそれぞれ±20°の範囲内になるようにイオン源を配置してイオンビームエッチングを行うことにより除去した後、前記単結晶圧電基板上に単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜を形成することを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項7】 請求項1に記載の弾性表面波装置の製造方法において、
前記単結晶圧電基板が64°回転Yカットニオブ酸リチウムであり、
前記基板表面変質層を、該64°回転Yカットニオブ酸リチウム単結晶圧電基板表面に最も近い低指数を持つ(001)結晶面に垂直な軸方向に対しイオンビームの照射方向が平行または垂直となる位置からそれぞれ±20°の範囲内になるようにイオン源を配置してイオンビームエッチングを行うことにより除去した後、前記単結晶圧電基板上に単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜を形成することを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項8】 請求項1に記載の弾性表面波装置の製造方法を用いて製造された弾性表面波装置であって、
前記タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム単結晶圧電基板上に(100)方位の単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る櫛型電極を有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項9】 請求項4に記載の弾性表面波装置の製造方法を用いて製造された弾性表面波装置であって、
前記36°回転Yカットタンタル酸リチウム単結晶圧電基板上に(100)方位の単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る櫛型電極を有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項10】 請求項5に記載の弾性表面波装置の製造方法を用いて製造された弾性表面波装置であって、
前記128°回転Yカットニオブ酸リチウム単結晶圧電基板上に(100)方位の単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る櫛型電極を有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項11】 請求項6に記載の弾性表面波装置の製造方法を用いて製造された弾性表面波装置であって、
前記41°回転Yカットニオブル酸リチウム単結晶圧電基板上に(100)方位の単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る櫛型電極を有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項12】 請求項1に記載の弾性表面波装置の製造方法を用いて製造された弾性表面波装置であって、
前記タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム単結晶圧電基板上に(110)方位の単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る櫛型電極を有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項13】 請求項2に記載の弾性表面波装置の製造方法を用いて製造された弾性表面波装置であって、
前記Xカットタンタル酸リチウム単結晶圧電基板上に(110)方位の単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る櫛型電極を有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項14】 請求項1に記載の弾性表面波装置の製造方法を用いて製造された弾性表面波装置であって、
前記タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム単結晶圧電基板上に(111)方位の単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る櫛型電極を有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項15】 請求項3に記載の弾性表面波装置の製造方法を用いて製造された弾性表面波装置であって、
前記Zカットタンタル酸リチウム単結晶圧電基板上に(111)方位の単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る櫛型電極を有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項16】 請求項3に記載の弾性表面波装置の製造方法を用いて製造された弾性表面波装置であって、
前記Zカットニオブ酸リチウム単結晶圧電基板上に(111)方位の単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る櫛型電極を有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項17】 請求項4に記載の弾性表面波装置の製造方法を用いて製造された弾性表面波装置であって、
前記36°回転Yカットタンタル酸リチウム単結晶圧電基板上に(111)方位の単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る櫛型電極を有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項18】 請求項5に記載の弾性表面波装置の製造方法を用いて製造された弾性表面波装置であって、
前記128°回転Yカットニオブ酸リチウム単結晶圧電基板上に(111)方位の単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る櫛型電極を有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項19】 請求項6に記載の弾性表面波装置の製造方法を用いて製造された弾性表面波装置であって、
前記41°回転Yカットニオブ酸リチウム単結晶圧電基板上に(111)方位の単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る櫛型電極を有することを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項20】 請求項7に記載の弾性表面波装置の製造方法を用いて製造された弾性表面波装置であって、
前記64°回転Yカットニオブ酸リチウム単結晶圧電基板上に(111)方位の単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜より成る櫛型電極を有することを特徴とする弾性表面波装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1ないし10には、それぞれ以下の点が記載されている。
引用例1(特開平5-199062号公報)
・単結晶状態の水晶ブロックを切断し、研磨加工した後、水晶基板表面の加工変質層の除去および応力解放、ならびに水晶基板表面を島状構造に仕上げるエッチング加工を行うこと、
・エッチングは、弗酸あるいは弗化アンモニウムの混合液等のエッチング液に浸すことにより行なうこと、
・基板表面を島状構造に加工することにより蒸着法やスパッタリング法等の簡便な方法により、アルミニウム単結晶膜を得ることができること、
引用例2(特開平6-45288号公報)
・誘電体基板にイオンミリングによって電極のパターニングを行う際に、イオン衝撃による切削加工が施されている面の近くの空間にレーザ光を投射し、切削面からのスパッタ飛沫を該レーザ光が照射することにより生ずるラマン散乱光のスペクトルを観測することによって被切削物質を検知すること、
・切削加工の進行に伴って生ずる被処理体の微細飛沫から被切削物質を実時間に検知しているので、ミリング処理の過剰進行を防止することができ、該処理により形成される機能素子の素子特性を良好なものとすることができること、
引用例3(特開平4-23471号公報)
・結晶表面にステップがある場合、ソースから供給された原子は表面を拡散してステップに優先的に吸着されるため、低指数面から少し傾いた面を有する半導体基板を用い、GaAs原料とAlAs原料の供給を交互に1/2原子層ずつ正確に切換えていくことによりGaAs層とAlAs層が基板表面に平行方向に積層された縦型超格子が成長させることができること、
・縦型超格子の作成過程に引き続いて、一旦大気にさらして基板表面に薄い酸化膜を形成した後、蒸気圧の差を利用して一方の半導体層を熱エッチングし、エッチングした個所に不純物をドープした半導体層を成長させることにより不純物ドープ層を含む縦型超格子が実現できること、
引用例4(特開昭62-234319号公報)
・無極性結晶であるSi単結晶基板上に有極性のGaAs単結晶薄膜を成長させる際、反位相境界の発生による電気的特性の劣化の問題を解決するには、Si基板の面方位を低指数面(一般には(100)面)から2〜4゜傾ける方法が有効という報告があるが、再現性が必ずしもよくないこと、
・Si基板表面の方位を低指数面から傾けることにより反位相境界が減少する理由は、基板表面に存在するステップの効果と考えられているが、研磨後の基板表面には数10〜数100原子層の高さのステップが存在し、通常の希弗酸による自然酸化膜のエッチングでは大きな段差を除去できないこと、
・本発明は低指数面からわずかに傾いた表面をもつSiウエハを酸化した際、酸化膜と基板の界面に原子層オーダ(1〜2原子層)の段差が傾き角に対応した間隔で発生することを利用したものであること、
・Si基板の表面をあらかじめ熱酸化等により酸化して酸化膜を形成した後、この酸化膜を化学的に除去することにより、反位相境界の発生を極めて低くできたこと、
引用例5(特開平4-196610号公報)
・AT振動子の発振片にあらかじめ形成された金属からなる励振電極の薄膜をイオンビームを照射してエッチングすることによりAT振動子の周波数調整をするにあたり、イオンビームの入射角度を励振電極に対し垂直から角度を付けること、
・イオンビームのエネルギー密度が一定である場合、発振片に対してイオンビームを垂直に照射した場合(照射角度0度)に比べ、照射角度が60〜70度の角度をもったときの方が、周波数の変化速度が1.3〜1.5倍速くなること、
引用例6(特開平4-78209号公報)
・基板表面に入出力トランスデューサ用電極膜を形成した後に、入出力トランスデューサ用電極膜を覆うように圧電薄膜を形成する工程で製造される表面波デバイスは、ダンピング剤を塗布したり、電極をスプリット構造としても不要波の発生や周波数特性及び速度分散のばらつきを充分に抑制できないこと、
・圧電薄膜形成後に、圧電薄膜表面をECR装置でイオンビームエッチングして平滑化することにより、圧電薄膜の表面が平滑化され、圧電薄膜表面の凹凸に起因する表面波の反射や速度分散を抑制できること、好ましくは、イオンビームを基板表面に対して垂直方向から45度以内の入射角度で照射すること、
引用例7(特開昭57-15514号公報)
・圧電基板表面に形成するすだれ状電極の膜厚に等しい段差のため不要反射やバルク波が発生するなど特性劣化を防止するため、すだれ状電極を基板表面に埋め込み段差を解消すること、
・圧電基板表面に、すだれ状電極のパターンを有する溝を形成し、次に電極材料膜を全面付着した後電極材料膜上に被膜を形成し、しかる後に表面法線方向に対して所定の角度だけ傾いた方向から基板全面にイオンビームを照射して被膜及び不要電極膜をエッチングすること、
引用例8(特開平6-132777号公報)
・LSTカット水晶基板、ニオブ酸リチウム基板、タンタル酸リチウム基板を用いた弾性表面波素子の周波数変化を小さくするために、アルミニウム電極を単結晶膜とすること、アルミニウム単結晶膜は、単結晶圧電基板上の成膜速度を毎秒25オングストローム以下の低レートで成膜することにより、蒸着法、スパッタリング法により容易に得られること、
引用例9(特開平5-226337号公報)
・Alは(111)配向性の高い膜ほどマイグレーション耐性が高いことが知られているが、基板上に直接(111)配向のAlを堆積させることは容易ではないこと、
・アモルファス状あるいは微細粒組織のAlないしAl合金薄膜を下地層として形成すると、その上に(111)配向のAlないしAl合金薄膜が容易に形成できること、
・アモルファス状あるいは微細粒組織のAlないしAl合金薄膜を形成する方法としては、液体窒素で冷却した基板上に、AlないしAl合金を堆積させる方法、AlないしAl合金薄膜中にイオン打ち込みを行う方法、圧電基板上にAlないしAl合金薄膜を堆積し、その堆積中に圧電基板を振動させる方法、があること、
引用例10(特開平5-183373号公報)
・アルミニウム電極のストレスマイグレーション対策としては、電極材料として(311)面に結晶方位のそろったアルミニウム又はその合金を用いることが提案されているが、その効果は未だ不充分であること、
・結晶方位を(111)面とすることにより耐ストレスマイグレーション特性を向上できること、
・(111)面に配向した電極材料の形成方法としては、蒸着、スパッタ、IBS(Ion Beam Sputtering)、CVD(Chemical Vapor Deposition)、プラズマCVD、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、ICB(Ionized Cluster Beam)等の各種薄膜作成プロセスを用いることができること、

3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明と引用例1ないし10に記載された事項と対比すると、引用例1ないし10には、本願の請求項1に係る発明における「タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム単結晶圧電基板上の基板表面変質層を、前記タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム単結晶圧電基板表面に最も近い低指数を持つ結晶面に垂直な軸方向に対しイオンビームの照射方向が平行または垂直となる位置からそれぞれ±20°の範囲内になるようにイオン源を配置してイオンビームエッチングを行うことにより除去した後、前記単結晶圧電基板上に単結晶アルミニウムあるいはアルミニウム系合金膜を形成する」点について記載がなく、またこれを示唆する記載も認められない。
引用例1ないし10のうち、イオンビームエッチングに関する記載のある、引用例2、5、6及び7について検討すると、引用例2は、電極のパターニングを行うため、引用例5は、電極をエッチングして周波数調整をするため、引用例6は、入出力トランスデューサ用電極膜を覆う圧電薄膜表面の平滑化のため、引用例7は、溝を形成した基板全面に電極材料膜とそれをおおう被膜を形成した後に被膜及び不要電極膜を除去するため、それぞれイオンビームを照射するものであって、いずれも、本願請求項1に係る発明とは、イオンビームを照射する対象ないし目的が相違している上、イオンビームの照射方向についても、引用例2では、明細書に明示の記載がなく図面からは基板に対して垂直方向と推測されるのみであり、また引用例5、6及び7は基板に対して垂直な方向に対する角度で表わされており、本願請求項1に係る発明におけるイオンビームの照射方向に関する構成とは相違する。
そして、本願請求項1に係る発明は前記摘記した構成を備えることにより、歩留まりよく単結晶アルミニウム膜あるいはアルミニウム系合金膜を形成でき、弾性表面波装置の電極の耐電力性を格段に向上できるとともに、高濃度の添加元素を必要としないために、挿入損の増大や電極加工時におけるエッチング残査を生じさせずにSAWフィルタを歩留り良く製造することができるという、引用例1ないし10の記載からは予期し得ない効果を奏するものと認められる。
したがって、本願請求項1に係る発明が、引用例1ないし10に記載された発明に基いて当業者の容易に発明をすることができたものであると認めることはできない。
また、本願の請求項2ないし20はいずれも本願の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本願の請求項1に係る発明について前記したと同様の理由により、引用例1ないし10に記載された発明に基いて当業者の容易に発明をすることができたものであると認めることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1ないし請求項10に係る発明は引用例1ないし10に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-03-26 
出願番号 特願平7-11396
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H03H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 工藤 一光  
特許庁審判長 下野 和行
特許庁審判官 植松 伸二
稲葉 和生
発明の名称 弾性表面波装置の製造方法、および、これを用いて製造された弾性表面波装置  
代理人 京本 直樹  

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