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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D |
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管理番号 | 1056150 |
審判番号 | 不服2000-3100 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-04-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-03-07 |
確定日 | 2002-03-28 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第269878号「アスファルトマットを設けたケーソンの製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 4月18日出願公開、特開平 7-102576]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年10月1日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年3月7日付けの全文補正明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 鋼製のケーソン本体の下面にアスファルトマットを一体に取付け、捨石基礎に対する摩擦力を増大するケーソンにおいて、 所定の厚さに成形され、周囲の端面から所定の間隔をおいた内側部に、上に向けて突出させたボルトや針金等からなる接続部材を配置してなるアスファルトマットと、 前記アスファルトマットに設けた接続部材を通す孔を設けた底板を有する鋼製のケーソンの下部部材と、を組み合わせ、 前記アスファルトマットの表面に接着剤を塗布し、ケーソンの下部部材の底板を前記アスファルトマット上に位置決めして載置するとともに、 前記アスファルトマットに設けた接続部材を、前記底板の孔を通して突出させ、前記接続部材を底板上に固定することを特徴とするアスファルトマットを設けたケーソンの製造方法。」 2.刊行物 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開昭62-248712号公報(以下、「刊行物1」という。)には、滑動防止材の取付方法に関し (ア)「本発明は、基本的には構造物と該構造物支持用架台との間にアスファルト……を用いた滑動防止用マットを介装一体化するものである。ケーソンドック等で建造されたケーソン等の構造物を外洋に曳航してこれを沈設する場合、ケーソンドック内でのマットの布設と外洋でのマットの布設とを重複して行うことは煩雑であるとともに、大水深の場合はマットの布設が不可能であった。本発明はこのような問題に対処するためになされたものである。」(1頁右下欄11行ないし2頁左上欄2行)、 (イ)「ケーソンドックの底面にマットを布設し、このマット上に接着剤カプセルを介在して構造物を載置する。その際構造物の荷重によりカプセルは破壊され、構造物とマットとが接着一体化される。これにより構造物のケーソンドック内での滑動が防止されると共に、この構造物を外洋に曳航してそのまま沈設すれば、構造物の外洋での滑動防止の目的を達することができる。」(2頁左上欄下から2行ないし同右上欄7行) と記載されており、これらの記載からみて、刊行物1には、「ケーソンの下面にアスファルトを用いた滑動防止用マットを一体に取付けるものにおいて、アスファルトを用いた滑動防止用マットと、ケーソンとを組み合わせ、アスファルトを用いた滑動防止用マットの上に接着剤カプセルを介在して、ケーソンを、アスファルトを用いた滑動防止用マット上に載置する滑動防止材の取付方法。」の発明が記載されていると認められる。 (2)同じく、実願昭61-116123号(実開昭63-23343号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、 (ア)「ケーソン底面部およびこれに取付ける摩擦マットの双方にボルトが貫通する孔をあけておき、ケーソン底面部とマットとを上記のボルトが貫通する孔を通して、ボルトおよびナットで結合してなることを特徴とするケーソン底面へのマット取付構造。」(実用新案登録請求の範囲)、 (イ)「本考案で言う摩擦マットは、アスファルトマット、……等であり」(明細書2頁下から2ないし末行)、 (ウ)「本考案の適用されるケーソンは鋼製……である。」(同3頁5ないし6行)、 (エ)「本考案によれば、これらケーソンを製作後、例えば、空ドック等の地上の配置台座の上にクレーン等を利用してケーソンをセットし人間が地上で上向き作業で、ケーソン底面へのマット取付けを行うことができ」(同3頁13ないし17行) と記載されている。 3.対比・判断 本願発明と刊行物1に記載の発明とを比較すると、刊行物1に記載の「ケーソン」及び「アスファルトを用いた滑動防止用マット」が、それぞれ本願発明の「ケーソン本体」及び「アスファルトマット」に相当し、刊行物1に記載の「ケーソン」に「アスファルトを用いた滑動防止用マット」を一体に取り付けたものが、本願発明の「ケーソン」に相当し、刊行物1に記載の「滑動防止材の取付方法」が、本願発明の「アスファルトマットを設けたケーソンの製造方法」に相当し、さらに、本願発明のケーソンの下部部材はケーソン本体を構成するものであり、刊行物1に記載の発明において、ケーソンが捨石基礎に対する摩擦力を増大するものであること、アスファルトを用いた滑動防止用マットが所定の厚さに成形されること、ケーソンが底板を有すること、及びケーソンをアスファルトを用いた滑動防止用マット上に載置する際に位置決めを行うことはいずれも自明の事項であるから、両者は、「ケーソン本体の下面にアスファルトマットを一体に取付け、捨石基礎に対する摩擦力を増大するケーソンにおいて、所定の厚さに成形されたアスファルトマットと、底板を有するケーソン本体とを組み合わせ、ケーソン本体の底板をアスファルトマット上に位置決めして載置するアスファルトマットを設けたケーソンの製造方法。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1 本願発明では、ケーソン本体が鋼製であり、下部部材(と上部部材)を有するのに対し、刊行物1に記載の発明では、そのような構成を有するか否かが不明である点 相違点2 本願発明では、アスファルトマットの表面に接着剤を塗布するのに対し、刊行物1に記載の発明では、アスファルトマットの上に接着剤カプセルを設ける点 相違点3 本願発明では、アスファルトマットの周囲の端面から所定の間隔をおいた内側部に、上に向けて突出させたボルトや針金等からなる接続部材を配置し、鋼製のケーソンの下部部材の底板に、アスファルトマットに設けた接続部材を通す孔を設け、アスファルトマットに設けた接続部材を、底板の孔を通して突出させ、接続部材を底板上に固定するのに対し、刊行物1に記載の発明では、そのような構成を有さない点 そこで、相違点1について検討すると、下部部材と上部部材から構成される鋼製ケーソンは、周知慣用技術にすぎず、刊行物1に記載の発明に当該周知技術を適用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が適宜なし得ることである。 次に、相違点2について検討すると、接着剤を施す手段として、部材表面に接着剤を塗布することはごく普通に行われることにすぎず、刊行物1に記載の発明において、接着剤カプセルに換えて接着剤の塗布を行うことは当業者が適宜なし得る事項にすぎない。 次に、相違点3について検討すると、刊行物2には、鋼製のケーソン(本願発明の「ケーソン本体」に相当)のケーソン底面部(本願発明の「底板」に相当)及びアスファルトマットにボルトが貫通する孔をあけておき、ケーソン底面部とアスファルトマットとをボルトが貫通する孔を通して、ボルト(本願発明の「接続部材」に対応)及びナットで結合する点が記載されており、また、第1図等の記載からみて、ボルトが貫通する孔がアスファルトマットの周囲の端面から所定の間隔をおいた内側部に設けられることは明らかである。 また、2部材を接続するに際し、一方の部材から突出させたボルトを他方の部材に設けた孔を通して突出させ、他方の部材上にナットで固定することはごく普通に行われていることにすぎない。 そして、刊行物1に記載の発明と刊行物2に記載のものとは、ケーソンとアスファルトマットの接続という共通の技術分野に属するものであり、かつ、ケーソンとアスファルトマットの間に十分な接続強度を持たせることは、当業者が当然に考慮する事項であるので、刊行物1に記載の発明に、接続手段として刊行物2に記載のものを付加することは当業者が容易になし得ることであり、上記のように一方の部材から突出させたボルトを他方の部材に設けた孔を通して突出させ、他方の部材上にナットで固定することが技術常識であるから、刊行物2に記載されたアスファルトマットに、ボルトが貫通する孔に換えて上に向けてボルトを突出させ、当該ボルトを底板の孔を通して突出させ底板上に固定することは、単なる均等手段の転換にすぎない。 そして、全体として本願発明によってもたらされる効果も、刊行物1に記載の発明、刊行物2に記載のもの及び技術常識から当業者であれば当然に予測できる程度のものであって顕著なものではない。 したがって、本願発明は、刊行物1及び2に記載の発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-01-29 |
結審通知日 | 2002-01-29 |
審決日 | 2002-02-12 |
出願番号 | 特願平5-269878 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E02D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 菊岡 智代、安藤 勝治、深田 高義 |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
中田 誠 鈴木 公子 |
発明の名称 | アスファルトマットを設けたケーソンの製造方法 |
代理人 | 高橋 紘 |