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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10B
管理番号 1056221
審判番号 不服2000-21141  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-11-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-22 
確定日 2002-04-04 
事件の表示 平成 2年特許願第 63708号「4段12列の鍵盤楽器」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年11月22日出願公開、特開平 3-263095]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 本願発明
本願は、平成2年3月14日の出願であって、その発明は、補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲(請求項の数6)に記載された「鍵盤楽器」とその「鍵盤」に係るものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次に掲げるとおりのものである。
「4段12列の鍵盤の各キーに楽音を割当て、親指を除く左手の指で鍵盤の左半分の24キーを担当し、親指を除く右手の指で鍵盤の右半分の24キーを担当するようにし、同じ段の横に隣合う2つのキーの楽音は、右のキーの楽音が左のキーの楽音よりも半音高く、同じ列の縦に隣合う2つのキーの楽音は、上のキーの楽音が下のキーの楽音よりも1オクターブ高くなるようにした、4段12列の鍵盤楽器」

第2 刊行物発明
1 刊行物1の発明
原審の拒絶理由に引用された刊行物である、本願の出願の日前の昭和58年5月16日に頒布された特開昭58-81185号公報には、次に掲げる(1)ないし(4)の事項からなるタイプライタ(以下「刊行物1の発明」という。)が記載されている。
(1) 多数のキーよりなるキー列を複数列備え、隣合うキー列のキーが交互に配列されたキーボードと、
前記キーの操作に応答し、文字、記号等を印字する印字装置とよりなるタイプライタにおいて、
前記キーボードの少なくとも一部のキーに夫々楽音を割付け、そのキーの操作に応答して楽音を発生するようにしたことを特徴とするタイプライタ(1頁左下欄4行ないし12行)
(2) 本発明は、多数のキーより成るキー列を複数列備え、隣合うキー列のキーが交互に配列されたキーボードにより印字操作を行なうようにしたタイプライタに関するもので、その目的は、タイプライタ機能の他に電子オルガン機能を得ることができ、しかもタイプライタとしての操作性を全く損なうことなく電子オルガンとしての操作性を良好になし得る等の効果を奏するタイプライタを提供するにある。(1頁左下欄14行ないし同頁右下欄3行)
(3) 上段のキー列9,10がメロデイ演奏用の上鍵盤として使用され、下段のキー列11,12が伴奏用の下鍵盤として使用される。このとき、所謂白鍵に対応するキー列10,12の各キーは例えば白色或はアイボリー系色に形成され、またキー列9,11が有するキーのうち、所謂黒鍵に対応した位置にあるものは黒色に形成され、それ以外のキーは他の色に形成されている。(2頁左上欄5行ないし12行)
(4) 一般的なタイプライタのようにキー列を4列設ける構成とすれば、電子オルガンとして機能している場合に各2列ずつのキー列を夫々メロデイ演奏用の上鍵盤及び伴奏用の下鍵盤として使用することができて、本格的な二段鍵盤式電子オルガンの雰囲気を楽しむことができる。(3頁左下欄末行ないし同頁右下欄6行)

2 刊行物2の発明
原審の拒絶査定に引用された刊行物である、本願の出願の日前の平成1年9月8日に頒布された特開平1-225999号公報には、次に掲げる(1)ないし(3)の事項からなる鍵盤楽器(以下「刊行物2の発明」という。)が記載されている。
(1) C,D,E,F,G,A,Bの各鍵とC#,Eb,F#,Ab,Bbの各鍵とが、C,C#,D,Eb,E,F,F#,G,Ab,A,Bb,Bの鍵順序で8度音程を繰返して配列されている鍵盤楽器において、すべての鍵が同一長さ、同一幅、同一高さおよび同一断面形に形成され、かつ該断面形の上部形状が鍵幅の中心線を最高部とする略半円形に形成されていることを特徴とする鍵盤楽器(1頁左下欄5行ないし12行)
(2) 本発明はピアノ,オルガン等で代表される鍵盤楽器の改良に関し、さらに詳しくいえば、人間工学的にみて極めて合理的であり、初心者であると熟練者であるとを問わず心理的負担なく安心感を抱いて演奏できる鍵盤楽器に関する。(1頁右下欄4行ないし8行)
(3) 第1図は一部破断した本発明による鍵盤の平面図、第2図は同じく斜視図、第3図は第1図におけるイーイ矢視正面図である.
図示実施例において、C,D,E,F,G,A,Bは従来と同様に白鍵とされており、C#,Eb,F#,Ab,Bbは同じく黒鍵とされているが、これらの白鍵および黒鍵の全鍵はすべて同一長さ,同一幅,同一高さおよび同一断面形に形成され、かつ該断面形の上部形状が第2図および第3図に示されるように鍵幅の中心線を最高部とする略半円形に形成されている。なおすべての鍵の鍵幅は従来鍵盤の黒鍵幅と略同幅にすることができ、このようにすれば、従来のピアノの鍵盤のみを本実施例の鍵盤におきかえることにより、容易に本発明の鍵盤楽器(ピアノ)を得ることができる。(4頁左上欄下から2行ないし同頁右上欄14行)

3 刊行物3の発明
原審の拒絶理由に引用された刊行物である、本願の出願の日前の昭和61年4月23日に頒布された実願昭59-143453号(実開昭61-60229号公報)のマイクロフィルムには、次に掲げる(1)ないし(3)の事項からなる電子楽器(以下「刊行物3の発明」という。)が記載されている。
(1) 盤面上に複数個の階名キーが配列され、少なくとも1オクターブ以上の音階を、キー操作により出力可能な電子楽器において、
音階順のキー配列を同方向に配列するとともに、オクターブの相違する同一階名キーを同一放射線上に配列してなることを特徴とする電子楽器(1頁5行ないし10行)
(2) 第1図は、この考案の1実施例を示す電子楽器の盤面を示す平面図である。
この実施例電子楽器1は、略葉書大のものであり、厚さは1.5cm程度のものである。もっとも大きさは、任意に変更できるこというまでもない。
盤面2には、3列の指名キーの配列3、4、5が設けられている。キー配列3、4、5はいずれも同心円上に配列されている。内円のキー配列3は、キーK3a、K3b、K3c、……、K3lの12個のキーからなり、これらのキーは、キーK3aがドに相当し、以下時計方向にド#(●印で示す)、レ、レ#、……、シの順で階名キーとして配列されている。
同様に、中円のキー配列4及び外円のキー配列5も、キーK4a、K4b、K4c、……、K4lとキーK5a、K5b、K5c、……、K5lからなり、これらのキーはやはり、キーK4a,K5aをドとし、時計方向にド#、レ、レ#、……、シの順で階名キーとして配列されている。(3頁6行ないし4頁4行)
(3) 今、上記実施例電子楽器1において、キーK3a、K4a、K5aに着目すると、これらは操作されると1オクターブずつ相違するドが出力されるが、いずれも、同一放射線上に位置しており、発音はいずれのドであるかにかかわらず、時計の0時に相当する位置に指をもってくればよい。また同様にキーK3c、K4c、K5cに着目すると、これらのキーの操作によりやはり1オクタ‐ブずつ相違するレが出力されるが、これらのキーも同一放射線上に位置しており、奏者はいずれのレであるかにかかわらず、時計の2時に相当する位置に指を持ってくればよい。(4頁10行ないし5頁1行)

第3 刊行物発明と本願発明との対比・検討
1 刊行物1の発明と本願発明との対比
刊行物1の発明における事項と本願発明における事項とを対比すると、刊行物1の発明は「タイプライタ」であるが、このタイプライタは、その機能の他に電子オルガン機能を有する「鍵盤楽器」といえるから、次に掲げる(1)(2)の事項がそれぞれ相当する。
(1) 刊行物1の発明において、第1図に示される4段の「キー列9,10,11,12」は、鍵盤として使用され、各キー列には白鍵に対応するキーは白色に、黒鍵に対応するキーは黒色に12列のキーが形成されているから、このように形成することは、本願発明における「4段12列の鍵盤の各キーに楽音を割当て、」ることに相当する。
(2) 刊行物1の発明において、「タイプライタ」を「電子オルガン」として使用する際に、「電子オルガン」のキー操作として、「タイプライタ」のキー操作と同じく「親指を除く左手の指で鍵盤の左半分の24キーを担当し、親指を除く右手の指で鍵盤の右半分の24キーを担当させる」ことはごく自然なことであるから、このようにキー操作をすることは、本願発明における「親指を除く左手の指で鍵盤の左半分の24キーを担当し、親指を除く右手の指で鍵盤の右半分の24キーを担当するようにし、」とすることに相当する。

2 刊行物1の発明と本願発明との一致点・相違点の検討
上記1の対比から刊行物1の発明と本願発明とは、次に掲げる(1)の点で一致し、次に掲げる(2)の点で相違する。
(1) 一致点
「4段12列の鍵盤の各キーに楽音を割当て、親指を除く左手の指で鍵盤の左半分の24キーを担当し、親指を除く右手の指で鍵盤の右半分の24キーを担当するようにした、4段12列の鍵盤楽器」
(2) 相違点
上記「鍵盤楽器」が、本願発明においては「同じ段の横に隣合う2つのキーの楽音は、右のキーの楽音が左のキーの楽音よりも半音高く、同じ列の縦に隣合う2つのキーの楽音は、上のキーの楽音が下のキーの楽音よりも1オクターブ高くなるようにした」のに対して、刊行物1の発明においては、従来の電子オルガンのキー配列である点

3 相違点についての検討
従来のピアノ、オルガン(鍵盤楽器)のキー配列を「横に隣合う2つのキーの楽音は、右のキーの楽音が左のキーの楽音よりも半音高く」することは、上記刊行物2の発明に示されているから、この刊行物2の発明のキー配列を、刊行物1の発明の「同じ段」に採用することは、当業者であれば、適宜なし得ることである。
そして、その際に、「隣合う2つのキーの楽音は、上のキーの楽音が下のキーの楽音よりも1オクターブ高くなるように」することは、上記刊行物3の発明に示されているから、この刊行物3の発明のキー配列を、刊行物1の発明の「異なる段」に採用することは、当業者であれば、適宜なし得ることである。
したがって、刊行物1の発明の「鍵盤楽器」を「同じ段の横に隣合う2つのキーの楽音は、右のキーの楽音が左のキーの楽音よりも半音高く、同じ列の縦に隣合う2つのキーの楽音は、上のキーの楽音が下のキーの楽音よりも1オクターブ高くなるように」することは、当業者であれば、適宜なし得ることである。

第4 むすび
以上、本願発明は、刊行物1の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-01-17 
結審通知日 2002-01-22 
審決日 2002-02-04 
出願番号 特願平2-63708
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G10B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 樫本 剛益戸 宏  
特許庁審判長 谷川 洋
特許庁審判官 小林 秀美
小松 正
発明の名称 4段12列の鍵盤楽器  

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