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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E03F
管理番号 1056409
審判番号 不服2002-1346  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-11-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-24 
確定日 2002-05-07 
事件の表示 平成 5年特許願第114690号「地下トンネル式排水設備」拒絶査定に対する審判事件〔平成 6年11月22日出願公開、特開平 6-322812、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年5月17日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 地上河川からの越流水を、取水立坑から開放坑兼ポンプ吸込槽と連通する地下トンネルに導き、ポンプにより排水する地下トンネル式排水設備において、開放坑兼ポンプ吸込槽を、前記地下トンネルの少なくとも末端に設け、前記地下トンネルと開放坑兼ポンプ吸込槽との接続箇所の頂部よりも上方位置に、排水ポンプ設置用のポンプ坑を並設し、このポンプ坑にポンプを設置し、取水立坑内の水位を許容最高限度にまで上昇させた状態で前記ポンプを運転することを特徴とする地下トンネル式排水設備。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平4-363427号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、地下排水施設に関し、
(ア)「図1に本発明の一実施例の地下排水施設の概念構成図を縦断面図により示す。本実施例は、大深度地下排水施設の一例であり、図示のように、地下の深いところに流入主管路1が埋設され、これに流入立坑2を介して河川3、管渠4、放水路5等から雨水等が流入されている。……流入主管路1の下流端はポンプ井7に連通され、ポンプ井7に流入する流入水を、排水ポンプ8により放流先の河川9に排水するように構成されている。」(4頁6欄8ないし17行)、
(イ)「このように構成される実施例の動作及び運転方法を次に説明する。雨が降って河川3等の水位が上昇すると流入主管路1に流入する水量が増加し、雨量の程度に応じて流入主管路1の水位が上昇する。集中豪雨などのような流入水の急激な増大が生ずると、流入主管路1が満水状態になり、地下貯留池10の連通立坑11の水位が急激に上昇し、図1に示した動水勾配20に従って、水位が地下貯留池10の入口レベルに達する。水位がこのレベルに達すると、地下貯留池10の貯留効果が発揮されるため、それ以降の急激な水位の上昇が緩和される。したがって、流下水がポンプ井7に到達してから、排水ポンプ8の運転を開始するまでの時間を十分にとることができる。つまり、地下貯留池10の入口レベルに水位が到達してから排水ポンプ8を運転開始しても、上流側水路の河川3、管渠4、放水路5又は空気孔6から流入水が逆流して生ずる冠水を防止できる。……したがって、地下貯留池10に水位が達してから排水ポンプ8を運転開始すれば、水位の上昇を抑えられるのである。このことから、図2に示すように、地下貯留池10の入口レベルの水位を基準とし、これに対応するポンプ井7の水位をポンプ運転開始水位HWLとして、そのレベルを維持するように排水ポンプ8の運転排水量を制御する。」(4頁6欄45行ないし5頁7欄20行)、
(ウ)「図10に、排水ポンプにかかる他の実施例を示す。一般に、流入主管路1の埋設深さが深くなると、ポンプ井7の低水位LWLと高水位HWLの差が大きくなる。また、地下排水施設ではポンプ井7の水位が低い場合は排水量は少なくてよく、水位が高くなるにつれて排水利用を増大すればよい。そこで、図10に示すように、必要排水量を賄う排水ポンプを分割して階層状に設置し、下の階層に高揚程ポンプ8aを、上の階層に低揚程ポンプ8bを設置することが望ましい。この場合、低揚程ポンプ8aは少なくとも地下貯留池10の底面よりも下のレベルに設ける。このように構成することにより、上層階の排水ポンプ8bは設置レベルが高い分だけ放流先河川9の水位Hoとの差が小さくなるから、その分だけ必要揚程が小さくなるので、排水動力を節減できることになる。特に、上階層の排水ポンプ8bの定格を低揚程・大容量のものにし、水位の上昇に応じて運転を開始するようにすれば、低揚程大容量のポンプは広い範囲にわたってポンプ効率が高いので、排水動力の節減効果が著しい。また、ポンプ井7の水位が低いときはそれほど速やかに排水する必要はないから、低い階層の排水ポンプ8aは高揚程ではあるが、小容量でよい。」(7頁11欄16ないし37行)
と記載されている。
(エ)また、図10には、排水ポンプ8a、8bを設置するためのポンプ坑をポンプ井7に並設すること、及び、ポンプ坑内の流入主管路1とポンプ井7との接続箇所の頂部よりも上方位置に排水ポンプ8bを設置することが記載されている。
上記(ア)ないし(エ)の記載及び図1、図10の記載からみて、引用刊行物には、
「河川3からの雨水等を流入立坑2からポンプ井7と連通する流入主管路1に流入させ、排水ポンプ8bにより排水する地下排水施設において、ポンプ井7を流入主管路1の下流端に設け、排水ポンプ8b設置用のポンプ坑を並設し、ポンプ坑内の流入主管路1とポンプ井7との接続箇所の頂部よりも上方位置に排水ポンプ8bを設置し、地下貯留池10の入口レベルの水位を維持するように排水ポンプ8bの運転排水量を制御する地下排水施設。」
の発明が記載されていると認める。

3.対比・判断
本願発明と引用刊行物に記載の発明とを比較すると、引用刊行物に記載の「河川3からの雨水等」、「流入立坑2」、「ポンプ井7」、「流入主管路1」、「流入させ」、「排水ポンプ8b」、「地下排水施設」及び「下流端」が、それぞれ本願発明の「地上河川からの越流水」、「取水立坑」、「開放坑兼ポンプ吸込槽」、「地下トンネル」、「導き」、「排水ポンプ及びポンプ」、「地下トンネル式排水設備」及び「末端」に相当し、また、引用刊行物に記載の「地下貯留池10の入口レベルの水位」が、本願発明の「取水立坑内の水位」の「許容最高限度」に相当し、「地下貯留池10の入口レベルの水位を維持するように排水ポンプ8bの運転排水量を制御する」は、「取水立坑内の水位を許容最高限度にまで上昇させた状態で前記ポンプを運転する」と言い換えることができ、さらに、本願発明のポンプは、ポンプ坑内の地下トンネルと開放坑兼ポンプ吸込槽との接続箇所の頂部よりも上方位置に設置されることになるから、両者は、
「地上河川からの越流水を、取水立坑から開放坑兼ポンプ吸込槽と連通する地下トンネルに導き、ポンプにより排水する地下トンネル式排水設備において、開放坑兼ポンプ吸込槽を、地下トンネルの末端に設け、排水ポンプ設置用のポンプ坑を並設し、ポンプ坑内の地下トンネルと開放坑兼ポンプ吸込槽との接続箇所の頂部よりも上方位置にポンプを設置し、取水立坑内の水位を許容最高限度にまで上昇させた状態でポンプを運転する地下トンネル式排水設備。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点
ポンプ坑は、本願発明では、地下トンネルと開放坑兼ポンプ吸込槽との接続箇所の頂部よりも上方位置に並設されるのに対し、引用刊行物に記載の発明では、地下トンネルと開放坑兼ポンプ吸込槽との接続箇所の頂部よりも下方位置まで並設される点

そこで、相違点について検討すると、相違点に係る本願発明の構成は本願の出願前に公知ではなく、また、周知慣用技術でもない。しかも、本願発明は相違点に係る構成を備えることにより、「ポンプ立坑8も浅くて済むため、土木工事も容易で安価である。」(段落【0005】)という引用刊行物に記載の発明からは期待できない顕著な効果を奏するものである。
したがって、本願発明は、引用刊行物に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-04-16 
出願番号 特願平5-114690
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川島 陵司  
特許庁審判長 山田 忠夫
特許庁審判官 鈴木 公子
中田 誠
発明の名称 地下トンネル式排水設備  
代理人 前田 厚司  
代理人 青山 葆  
代理人 古川 泰通  

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