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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1056423
異議申立番号 異議2000-71081  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-03-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-03-15 
確定日 2001-09-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2950762号「毛髪脱色剤」の請求項1〜4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2950762号の請求項1〜3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2950762号に係る発明は、平成7年8月30日に特許出願され、平成11年7月9日に特許権が設定登録された。その後、特許異議申立人中島理、特許異議申立人千葉恭弘、特許異議申立人森敏生、特許異議申立人赤松善弘により特許異議申立てがなされ、特許の取消しの理由が通知された後、意見書提出の指定期間内である平成12年10月17日に明細書の訂正請求がされた。その後、さらに当審により特許権者に対して審尋(平成13年1月9日発送)がされたが、これに対する応答はされなかった。

2.訂正請求について
(1)訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】過硫酸塩、酸化剤およびアルカリ剤を用いる毛髪脱色剤において、高級アルコールを含み、並びにその使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下であることを特徴とする毛髪脱色剤。」

「【請求項1】過硫酸塩、酸化剤、アンモニア、高級アルコールを含み、その使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下である毛髪脱色剤において、高級アルコールとアンモニアを含む第1剤、高級アルコールを含まず酸化剤を含む第2剤、過硫酸塩を含む粉末の第3剤からなり、第3剤を第2剤に溶解後、第1剤を加えて良く混合して毛髪脱色を行う毛髪脱色剤。」
に訂正する。

訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2の
「【請求項2】高級アルコールとアルカリ剤を含む第1剤、酸化剤を含む第2剤、過硫酸塩を含む第3剤からなることを特徴とする請求項1記載の毛髪脱色剤。」

「【請求項2】酸化剤が過酸化水素、過炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、過酸化水素付加物およびピロリン酸ナトリウム・過酸化水素付加物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の毛髪脱色剤。」
に訂正する。

訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3の
「【請求項3】酸化剤が過酸化水素、過炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム・過酸化水素付加物およびピロリン酸ナトリウム・過酸化水素付加物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1又は2記載の毛髪脱色剤。」

「【請求項3】カチオン性界面活性剤、またはカチオン化ポリマーの1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の毛髪脱色剤。」
に訂正する。

訂正事項d
特許請求の範囲の請求項4の
「【請求項4】カチオン性界面活性剤、またはカチオン化ポリマーの1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の毛髪脱色剤。」を削除する。

訂正事項e
段落0008の、
「すなわち、本発明は、過硫酸塩、酸化剤およびアルカリ剤を用いる毛髪脱色剤において、高級アルコールを含み、並びにその使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下であることを特徴とする毛髪脱色剤である。」
を、
「すなわち、本発明は、過硫酸塩、酸化剤、アンモニア、高級アルコールを含み、その使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下である毛髪脱色剤において、高級アルコールとアンモニアを含む第1剤、高級アルコールを含まず酸化剤を含む第2剤、過硫酸塩を含む粉末の第3剤からなり、第3剤を第2剤に溶解後、第2剤を加えて良く混合して毛髪脱色を行うことを特徴とする毛髪脱色剤である。」
と訂正する。

訂正事項f
段落0010の、
「また、この高級アルコールは1剤式から3剤式に関わらずいずれにも配合することができる。」
を削除する。

訂正事項g
段落0014の
「本発明で対象となる毛髪脱色剤としては、例えば、前述したa〜cの1剤ないし3剤式のものが挙げられる。また、これらの脱色剤の形態は通常、粉末または液状の他、クリーム状、ペースト状、ゲル状のものでも差し支えない。しかし、本発明が高級アルコールを必須成分としていることから、クリーム製剤が最も好ましく、1、2剤のどちらか一方、または両方ともクリーム剤型で、そこに過硫酸塩を含む粉末を添加して使用する3剤式が、特に脱色効果の点から好ましい。」
を削除する。

訂正事項h
段落0015の
「本発明においては、過硫酸塩、酸化剤およびアルカリ剤を用いる毛髪脱色剤において、高級アルコールを含み、並びにその使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下であることを必須の要件とするものであり、この条件が満たされることで、強く、均一な脱色効果が得られるものである。」
を、
「本発明においては、過硫酸塩、酸化剤およびアルカリ剤としてアンモニアを用いる毛髪脱色剤において、高級アルコールを含み、並びにその使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下であることを必須の要件とするものであり、この条件が満たされることで、強く、均一な脱色効果が得られるものである。」
と訂正する。

訂正事項i
段落0029の、
「アルカリ剤を」
を、
「アルカリ剤としてアンモニアを」
と訂正する。

訂正事項
段落0030の、
「アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムなどが挙げられ、」
を削除する。

訂正事項k
段落0035〜0038及び段落0040の、
「実施例3」「実施例4」「実施例5」.「実施例6」「実施例8」
を、
「参考例1」「参考例2」「参考例3」「参考例4」「参考例5」
と訂正する。

訂正事項1
段落0041の、
「過硫酸塩、酸化剤およびアルカリ剤を用いる毛髪脱色剤で、その処方中に、高級アルコールを含み、並びにその使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量を10%以下にすることで、」
を削除する。

(2)訂正の適否について
訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1において、アルカリ剤をアンモニアに限定すると共に、「高級アルコールとアンモニアを含む第1剤、高級アルコールを含まず酸化剤を含む第2剤、過硫酸鉛を含む粉末の第3剤からなり、第3剤を第2剤に溶解後、第 1剤を加えて良く混合して毛髪脱色を行う」との要件を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

訂正事項bは、特許請求の範囲の請求項2において、訂正前の請求項3に記載されたとおりに酸化剤を具体的化合物に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

訂正事項cは、特許請求の範囲の請求項3において、訂正前の請求項4に記載されたとおりにカチオン界面活性剤、またはカチオンかポリマーの1週又は2種以上を含むという要件を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

訂正事項dは、特許請求の範囲の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

訂正事項e〜lは、訂正事項a〜dによって特許請求の範囲が減縮されたことに伴い、発明の詳細な説明の対応部分の整合を図るものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。

そして、訂正事項a〜lは、明細書に記載した事項の範囲内での訂正であり、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものでもない。

したがって、本件訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する同条第126条第2項から第3項の規定に適合するので、訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記2.に示したように本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1〜3に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定された次のとおりのものである。

【請求項1】過硫酸塩、酸化剤、アンモニア、高級アルコールを含み、その使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下である毛髪脱色剤において、高級アルコールとアンモニアを含む第1剤、高級アルコールを含まず酸化剤を含む第2剤、過硫酸鉛を含む粉末の第3剤からなり、第3剤を第2剤に溶解後、第 1剤を加えて良く混合して毛髪脱色を行う毛髪脱色剤。

【請求項2】酸化剤が過酸化水素、過炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、過酸化水素付加物およびピロリン酸ナトリウム・過酸化水素付加物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の毛髪脱色剤。

【請求項3】カチオン性界面活性剤、またはカチオン化ポリマーの1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の毛髪脱色剤。

(2)刊行物に記載された発明
当審で通知した取消理由で引用した刊行物には、それぞれ以下の事項が記載されている。

刊行物1 特開平2-193911号公報(特許異議申立人中島理の提出した甲第1号証、特許異議申立人千葉恭弘の提出した甲第2号証、特許異議申立人森敏生の提出した甲第2号証、特許異議申立人赤松善弘の提出した甲第2号証)
第5頁右上欄5行〜右下欄1行には、第1剤、第2剤及び活性化剤からなり、第1剤にアンモニア、イソプロパノール(14重量%)及び第4級窒素含有セルロースエーテル、第2剤に過酸化水素及びセチルアルコール、活性化剤に過硫酸アンモニウムを含む毛髪脱色剤が開示されており、「第1剤50gに活性化剤25gを添加し、次いで、第2剤100gと混合したものを毛髪に塗布して脱色処理を行ったところ、・・・・毛髪の仕上がりに優れた結果を得た。」と記載されている。

刊行物2 特開昭55-85512号公報(特許異議申立人中島理の提出した甲第2号証、特許異議申立人千葉恭弘の提出した甲第3号証、特許異議申立人森敏生の提出した甲第1号証)
第8頁右上欄には、「漂白試験を次の通り行った。活性化剤23gを6%過酸化水素水溶液4オンスに添加し、振とうした。次に試験ローション60gを添加し、十分混合するまで振とうした。」と記載され、また、第10頁の左上欄の例1の欄には、3成分系の漂白組成物について、「活性化剤をローションと混合し、ローション活性化剤混合物に過酸化物展開剤を添加した。」と記載されている。そして、第12頁左下欄〜第13頁左上欄の実施例6には、水酸化アンモニウム(59%水溶液)(第3頁右上欄第1〜3行目の記載から、これがアンモニアの水溶液であることは明らかである。)、エタノール(1.15重量%)を含むローション、過酸化水素(50%水溶液)及びセチルアルコールを含む展開剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムを含む活性化剤からなる3成分系の毛髪漂白組成物が開示され、「ローション60グラム、展開剤120グラム及び活性化剤29グラムを前述のとおり混合した。」と記載されている。

刊行物3 特開平2-234971号公報(特許異議申立人中島理の提出した甲第3号証)
第3頁の実施例3には、アンモニアを含む第1剤、セチルアルコール、過酸化水素を含む第2剤、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムを含む第3剤を用い、第1剤70グラムに第3剤30グラムを添加し、次いでこれに第2剤100グラムを混合する脱色剤組成物が記載されている。
第3頁の実施例4には、イソプロバノール(14重量%)、アンモニアを含む第1剤、セチルアルコール、過酸化水素を含む第2剤、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムを含む第3剤を用い、第1剤50グラムに第3剤25グラムを添加し、次いでこれに第2剤100グラムを混合した脱色剤組成物が記載されている。
第1頁右欄第9〜15行目には、酸化剤として、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム・過酸化水素付加物、ピロリン酸ナトリウム・過酸化水素付加物が記載されている。
第2頁左上欄下から第5行目〜末行には、脱色剤組成物に第4級窒素含有セルロースエーテルを含めれば、より優れた仕上がりが得られることが記載されている。

刊行物4 特開平4-279514号公報(特許異議申立人赤松善弘の提出した甲第1号証、特許異議申立人千葉恭弘の提出した甲第1号証)
第4頁【0025】〜【0029】欄の実施例3には、セトステアリルアルコールと炭酸水素アンモニウム及びグリセリン(3.0重量%)を含む第1剤、過酸化水素水を含む第2剤、過硫酸アンモニウム粉末を含む第3剤からなる毛髪用脱色剤が開示され、「第1剤、第2剤をそれぞれ60gずつ採ってよく混合し、pH調節剤として燐酸を加えてpHが6.8となるよう調整した。これに第3剤を3g加えて良く混合した。」と記載されている。

刊行物5 特開平1-308215号公報(特許異議申立人中島理の提出した甲第4号証)
第10頁の実施例5には、クリーム状の毛髪脱色剤(2剤式)が記載されており、第1剤にはアンモニア水、セトステアリルアルコール、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム及び塩化ジアルキルジメチルアンモニウムが含まれている。

3)対比・判断
a.本件特許の請求項1に係る発明について
刊行物1〜2に記載された発明と本件発明を対比すると、いずれも第1剤がアンモニアを含み、第2剤が過酸化水素などの酸化剤を含み、第3剤が過硫酸塩を含む粉末である3剤式の毛髪脱色剤であり、高級アルコールを含有する点及び使用時における低級アルコールと多価アルコールの総和が10%以下である点で一致しているが、本件発明の毛髪脱色剤が、高級アルコールを第1剤に含み第2剤には含まないものであるのに対し、刊行物1〜2の毛髪脱色剤は、高級アルコールを第2剤に含み第1剤には含んでいない点、及び本件発明では、毛髪脱色を行うに当たり、第3剤を第2剤に溶解し、次いで第1剤を加えるのに対し、刊行物1〜2では、第3剤を第1剤に溶解し、次いで第2剤を加える点で相違している。

そこで、この相違点について検討すると、毛髪脱色剤に高級アルコールを配合する場合において、アルカリ側に加えるか酸化剤側に加えるか或いはその両者に加えるかは、当業者が適宜に選択できるものであり、アルカリ剤側に加えた刊行物4及び5の記載からみても、アンモニア水を含む第1剤(アルカリ剤)側に高級アルコールを含むことを妨げる格別の事由は認められない。また、3剤式の毛髪脱色剤により、毛髪を脱色するに際しての混合順序も、当業者が適宜に選択できるものであり、本件訂正明細書の参考例、特に刊行物1〜2と同様に酸化剤側に高級アルコールを含む参考例3及び4(訂正前の実施例5及び6)の記載からみても、本件毛髪脱色剤が刊行物1〜2に記載されたものに比べて、予期できない程顕著な効果を奏するものとは認めることができない。

請求項2について
刊行物1〜5でも使用されているように、過酸化水素は、毛髪脱色剤用の酸化剤として、最も代表的なものである。また、刊行物3に例示されているように過炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム・過酸化水素付加物およびピロリン酸ナトリウム・過酸化水素付加物も漂白組成物用の酸化剤として知られている。

請求項3について
刊行物1には、カチオン化ポリマーの1種である第4級窒素含有セルロースエーテルを配合した毛髪脱色剤が、また、刊行物5には、カチオン性界面活性剤の一種である、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム及び塩化ジアルキルジメチルアンモニウムが配合された毛髪脱色剤が記載されており、カチオン性界面活性剤、またはカチオン化ポリマーを毛髪脱色剤に配合することは、当業者が適宜に行うことと認められる。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認められる。
したがって、本件特許の請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
毛髪脱色剤
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 過硫酸塩、酸化剤、アンモニア、高級アルコールを含み、その使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下である毛髪脱色剤において、
高級アルコールとアンモニアを含む第1剤、高級アルコールを含まず酸化剤を含む第2剤、過硫酸塩を含む粉末の第3剤からなり、第3剤を第2剤に溶解後、第1剤を加えて良く混合して毛髪脱色を行う毛髪脱色剤。
【請求項2】 酸化剤が過酸化水素、過炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム・過酸化水素付加物およびピロリン酸ナトリウム・過酸化水素付加物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の毛髪脱色剤。
【請求項3】 カチオン性界面活性剤、またはカチオン化ポリマーの1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の毛髪脱色剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は毛髪脱色剤に関するもので、詳しくは、毛髪の損傷が少なく、しかも、強く、均一な脱色効果が得られる毛髪脱色剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、脱色効果の強い過硫酸塩を含有する毛髪脱色剤としては、下記のa〜cのタイプのものが一般的に知られている。
【0003】
a)アルカリ剤および界面活性剤を含む液状またはクリーム状第1剤、酸化剤を含む液状またはクリーム状第2剤、そして、過硫酸塩を含む粉末状活性化剤からなり、第1剤に活性化剤を添加した後、第2剤と混合して使用する3剤式毛髪脱色剤。
b)過硫酸塩、アルカリ剤および増粘剤を含む粉末状第1剤を、酸化剤を含む液状またはクリーム状第2剤に溶解して使用する2剤式毛髪脱色剤。
c)過硫酸塩、酸化剤、アルカリ剤および増粘剤を含む粉末状混合物を、水に溶解して使用する1剤式毛髪脱色剤。
【0004】
アルカリ剤および酸化剤を含む脱色剤に、さらに過硫酸塩を配合し脱色力をより強力にした毛髪脱色剤を使用する場合、毛髪は根元部分の温度が体温に近いのに対し、毛先部分は外気温に近いため、温度の高い根元部分が強く脱色され、毛髪の根元から毛先まで均一に脱色することが難しいという欠点があった。従って、これらの毛髪脱色剤を用いて、均一な仕上がりを得ようとする場合、温度の影響による毛髪脱色力を調節するために、先に薬液を温度の低い毛先部分に塗布、次に、一定時間をおいて温度の高い根元部分に塗布するといった操作が必要であった。
【0005】
また、これらの毛髪脱色剤の作用メカニズムは、発生期の酸素により、毛髪の色調を決定している色素のメラニン顆粒を酸化分解するもので、黒色を褐色から黄色にすることができる。しかし、毛髪の皮質あるいはケラチン自体も、この酸化分解反応を受ける恐れがある。例えば、H.Zahnは、このケラチンの酸化は、先ず毛髪の構造を保つのに重要なシスチン結合において起こると報告している(J.Soc.Cosmet.Chem.Vol.17,p.687,1966)。また、C.Robbinsらの報告によると、他のアミノ酸残基も、同様に酸化されているとしている(J.Soc.Cosmet.Chem.Vol.20,p.555,1969)。その結果、発生期の酸素によるメラニン顆粒の酸化分解反応は、毛髪ケラチンに対しても重大な損傷を与えてしまい、毛髪は、パサツキ、ゴワツキ、毛切れなどが起こり、外観的には艶のない毛髪になるという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このため、これらの強力タイプの毛髪脱色剤を使用する場合、特に自分自身で毛髪脱色操作を行う場合には、仕上がりに大きなムラが生じたり、毛髪損傷を引き起こすことが多かった。そのため、アルカリ剤と過酸化水素水からなる弱いタイプの毛髪脱色剤を使用するか、または専門技術を持った美容師に操作を依頼することが必要となり、容易に強い毛髪の脱色を行うことは難しかった。従って、特に技術的な操作を必要とせず、強く、均一な仕上がりで、しかも毛髪損傷の少ない毛髪脱色剤の開発が望まれていた。
【0007】
そこで本発明は、強く、均一な脱色効果が得られ、しかも毛髪の損傷が少ない毛髪脱色剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記実状に鑑み、従来の過硫酸塩を含む脱色効果の強い毛髪脱色剤の欠点を解決すべく鋭意検討の結果、高級アルコールを配合することによって、毛髪上での薬液の広がり、浸透を効果的にすること、また使用時に低級アルコールまたは多価アルコールを用いないか、または用いたとしてもその濃度を低くすることによって、脱色力が温度の影響を受けにくくなることを見い出した。さらに、この高級アルコールを配合し、低級アルコールまたは多価アルコールを用いないか、または用いたとしてもその濃度を低くすることによって、強く、かつ毛先から根元まで均一な毛髪脱色効果が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、過硫酸塩、酸化剤、アンモニア、高級アルコールを含み、その使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下である毛髪脱色において、高級アルコールとアンモニアを含む第1剤、高級アルコールを含まず酸化剤を含む第2剤、過硫酸塩を含む粉末の第3剤からなり、第3を第2剤に溶解後、第1剤を加えて良く混合して毛髪脱色を行うことを特徴とする毛髪脱色剤である。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる高級アルコールとは、炭素数6以上の1価アルコールで、ラウリルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノールなどが挙げられる。
【0010】
高級アルコールの毛髪脱色剤への配合量は、使用時濃度で通常0.01〜10重量%であり、0.01重量%未満では均一な脱色効果が得ることはできず、また10重量%を越えて配合してもそれ以上の効果は期待できない。なお、配合量の下限については、0.1重量%が好ましく、0.1重量%以上配合することにより、より強く均一な脱色効果が得られる。上限については、5重量%が好ましく、5重量%を越えた場合は脱色効果の上昇は少なくなる。
【0011】
一方、低級アルコールとは、炭素数1〜5の鎖式アルコールであり、多価アルコールとは、分子中に2個以上の水酸基を有するアルコールで、低級アルコール、多価アルコールともに、主に溶剤として用いられている化粧品原料である。例えば、低級アルコールとしては、エタノール、イソプロピルアルコールなどが、また多価アルコールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールなどが一般的によく使われている。化粧品原料として、低級アルコール、多価アルコールなどの溶剤は、保湿効果、製品安定化効果、増粘効果などに優れるため、不可欠な配合成分と考えられてきている。しかし、毛髪脱色剤において、その使用時濃度での配合量が、10%を越えると、脱色効果が著しく低下する。しかも、図1に示すようにその脱色力の低下度合いは、毛髪の温度が低いほど大きく、温度の高い毛髪根元部分と低い毛先部分とでは、脱色後の明るさにかなりの違いが生じてしまう。
【0012】
【図1】

さらに、本発明の必須成分の過硫酸塩としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムが挙げられる。その配合量は使用時の濃度で通常、1〜50重量%、脱色効果の点から特に好ましくは、5〜20重量%である。
【0013】
また、酸化剤としては、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム・過酸化水素付加物、ピロリン酸ナトリウム・過酸化水素付加物が挙げられる。その配合量は使用時の濃度で通常、0.1〜20重量%、脱色効果の点から特に好ましくは、1〜10重量%である。
【0014】
【0015】
本発明においては、過硫酸塩、酸化剤およびアルカリ剤としてアンモニアを用いる毛髪脱色剤において、高級アルコールを含み、並びにその使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下であることを必須の要件とするものであり、この条件が満たされることで、強く、均一な脱色効果が得られるものである。
【0016】
さらに、その組成にカチオン性界面活性剤またはカチオン化ポリマーを配合した場合、これらの毛髪への付着を妨げる低級アルコール、多価アルコールが少ないため、毛髪表面に皮膜を形成する効果が著しく高まり、毛髪内部のケラチンタンパクを保持するという良好な毛髪保護作用を有し、特に、すすぎ時の指通りのなめらかさ、仕上がりの感触が極めて良くなること、その上、脱色後の毛髪色調の変化が少なくなることも併せて見い出した。
【0017】
本発明で用いられるカチオン化ポリマーは、ポリマー鎖に結合してアミノ基またはアンモニウム基を含むか、または少なくともジメチルジアリルアンモニウムハライドを構成単位として含む水溶液のものであり、例えば第4級窒素含有セルロースエーテル、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物及び4級化ポリビニルピロリドン誘導体などが挙げられる。第4級窒素含有セルロースエーテルとしては例えば次の一般式(1)で表されるものが好ましい。
【0018】
【化1】

式(1)中、Aはアンヒドログルコース単位の残基を示し、fは50〜20000の整数であり、各R1は、それぞれ次の一般式(2)で表される置換基を示す。
【0019】
【化2】

式(2)中、R2,R3は炭素数2又は3のアルキレン基、gは0〜10の整数、hは0〜3の整数、iは0〜10の整数、R4は炭素数1〜3のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、R5,R6,R7は同じかまたは異なっており炭素数10までのアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、また式中の窒素原子を含んで複素環を形成してもよい。X1は陰イオン(塩素、臭素、沃素、硫酸、スルホン酸、メチル硫酸、リン酸、硝酸等)を示す。本発明に用いられる第4級窒素含有セルロースエーテルのカチオン置換度は、0.01〜1すなわちアンヒドログルコース単位当りのhの平均値は、0.01〜1が好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.5である。また、g+iの合計は平均1〜3である。カチオン置換度は、0.01未満では十分でなく、また1を超えてもかまわないが反応収率の点より1以下が好ましい。ここで用いる第4級窒素含有セルロースエーテルの分子量は約100000〜3000000の間が好ましい。市販品としては、ライオン(株)のレオガードG,GP、ユニオンカーバイド社のポリマーJR-125,JR-400,JR-30M,LR-400,LR-30Mなどが挙げられる。
【0020】
その他の第4級窒素含有セルロースエーテルとしてはヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリドが挙げられ、市販品としてはナショナルスターチアンドケミカル社のセルコートH-100,L-200などが挙げられる。
【0021】
カチオン性澱粉としては次の一般式(3)で表されるものが好ましい。
【化3】

式(3)中、Bは澱粉残基、R8はアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、R9、R10、R11は同じかまたは異なっており、炭素数10以下のアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、また式中の窒素原子を含んで複素環を形成してもよい。X2は陰イオン(塩素、臭素、沃素、硫酸、スルホン酸、メチル硫酸、リン酸、硝酸等)、jは正の整数を示す。本発明で用いられるカチオン性澱粉のカチオン置換度は0.01〜1、すなわち無水グルコース単位当たり0.01〜1、好ましくは0.02〜0.5個のカチオン基が導入されたものが好ましい。カチオン置換度が0.01未満では十分でなく、また1を超えてもかまわないが反応収率の点より1以下が好ましい。
【0022】
カチオン化グアーガム誘導体としては、次の一般式(4)で表されるものが好ましい。
【化4】

式(4)中、Dはグアーガム残基、R12はアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基R13,R14,R15は同じかまたは異なっており、炭素数10以下のアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、また式中の窒素原子を含んで複素環を形成してもよい。X3は陰イオン(塩素、臭素、沃素、硫酸、スルホン酸、メチル硫酸、リン酸、硝酸等)、kは正の整数を示す。本発明で用いられるカチオン化グアーガム誘導体のカチオン置換度は0.01〜1が好ましく、特に0.02〜0.5個のカチオン基が、糖単位に導入されたものが好ましい。例えば、特公昭58-35640号、特公昭60-46158号及び、特開昭58-53996号公報に記載され、RHONE-POULENC社のジャグアーC-13S,同-14S,同-17,同-210,同-162,HI-CARE1000として市販されている。
【0023】
カチオン性のジアリル4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物としては、次の一般式(5)または(6)で示されるものが好ましい。
【化5】

【化6】

式(5)及び(6)中、R16,R17は同じかまたは異なっており、水素、アルキル基(炭素数1〜18)、フェニル基、アリール基、ヒドロキシアルキル基、アミドアルキル基、シアノアルキル基、アルコキシアルキル基、またはカルボアルコキシアルキル基、R18,R19,R20,R21は同じかまたは異なっており、水素、低級アルキル基(炭素数1〜3)またはフェニル基、X4は陰イオン(塩素、臭素、沃素、硫酸、スルホン酸、メチル硫酸、リン酸、硝酸等)、pは1〜50の整数、qは0〜50の整数、rは150〜8000の整数を示す。本発明で用いられるジアリル4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物の分子量としては約3万〜200万が好ましく、さらに好ましくは10万〜100万の範囲である。市販品としては、メルク社のマーコート100,550,280などが挙げられる。
【0024】
4級化ポリビニルピロリドン誘導体としては次式(7)で示されるものが好ましい。
【化7】

式(7)中、R22は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、R23,R24,R25は同じかまたは異なっており、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミドアルキル基、シアノアルキル基、アルコキシアルキル基またはカルボアルコキシアルキル基、Y1は酸素原子またはアミド結合中のNH基、X5は陰イオン(塩素、臭素、沃素、硫酸、スルホン酸、炭素数1〜4のアルキル硫酸、リン酸、硝酸等)、uは1〜10の整数、s+t=20〜8000の整数を示す。本発明で用いられる4級化ポリビニルピロリドン誘導体の分子量としては1万〜200万が好ましく、さらに好ましくは5万〜150万である。市販品としては、アイエスピー・ジャパン(株)のガフコート734,755,755Nなどが挙げられる。
【0025】
これらの中でも第4級窒素含有セルロースエーテルおよびジアリル4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物が好ましい。
【0026】
また、カチオン性界面活性剤としては、下記(8)式に示す一般式で表されるものが用いられる。例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなどが挙げられる。
【0027】
【化8】

(8)式中、R26,R27,R28,R29の1〜2個は直鎖または分枝鎖の炭素数8〜20の長鎖アルキル基、または長鎖ヒドロキシアルキル基を示し、残余は炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示し、Xはハロゲン原子または炭素数1〜2のアルキル硫酸基を示す。
【0028】
カチオン性界面活性剤またはカチオン化ポリマーの配合量は使用時の濃度で、0.001〜10重量%であり、0.001重量%よりも少ないと十分な毛髪保護効果および均一な脱色効果が得られず、10重量%を越えても、その効果は変わらず経済的ではない。なお、配合量の下限については、0.01重量%が好ましく、0.01重量%以上配合することにより、より優れた毛髪保護効果および均一な脱色効果が得られる。上限については、5重量%が好ましく、5重量%を越えた場合は毛髪保護効果および均一な脱色効果の上昇は少なくなる。
【0029】
また、これらの脱色剤は、いずれも、過硫酸塩、酸化剤およびアルカリ剤としてアンモニアを必須成分とするものであり、これに通常、界面活性剤、増粘剤、pH調整剤などを配合したものである。
【0030】
界面活性剤としては、例えば、高級アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸石鹸、高級アルキルスルホン酸塩、高級アルキルリン酸エステルなどが挙げられる。そして、増粘剤としては、例えば、デンプン質、海藻類、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、グァーガム、キサンタンガムなどが挙げられ、pH調整剤としては、例えば、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸第一アンモニウム、リン酸第二アンモニウム、クエン酸、酒石酸、乳酸、コハク酸などが挙げられる。なお、本発明の脱色剤中に、製品外観を着色するための例えば、トリフェニルメタン染料、キノリン染料、アゾ染料、アントラキノン染料、スチルベン染料、チアゾール染料を配合することもできる。
【0031】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り実施例の記述に限定されるものではない。
【0032】
実施例1〜2および比較例1〜4
(粉末活性化剤) 重量%
過硫酸ナトリウム 60
硫酸ナトリウム 20
ラウリル硫酸ナトリウム 4
カルボキシメチルセルロース 10
EDTA二ナトリウム 1
第4級窒素含有セルロースエーテル 5
計100
上記組成の粉末活性化剤を調製し、この活性化剤25gを表1の実施例1〜2および比較例1〜4の第2剤(酸化剤)溶液100mlに溶解後、表1の対応する実施例1〜2および比較例1〜4の第1剤(アルカリ剤)25gを加えて良く混合して試験液とし、脱色試験を行った。毛髪脱色力の強さ、均一性、毛髪の仕上がりおよび毛髪の損傷についての評価結果を同じく表1に示した。
【0033】
【表1】

【0034】
<評価方法>
(1)毛髪脱色力の強さ
上記の粉末活性化剤を各極酸化剤に溶かした処理液を、100名のパネラーから採取した毛束に塗布し、常温で20分放置した。次に脱色した毛束をラウリル硫酸ナトリウム10%溶液で2回シャンプーし、乾燥する操作を30回繰り返した。対照として、市販のアルカリ剤および過酸化水素水からなる2剤式の毛髪脱色剤と比較して、次の基準で評価し、最も多いものを表に結果として示した。
○…対照と比較してかなり明るくなる。
△…対照と比較してやや明るくなる。
×…対照と比較して明るさに差が認められない。
(2)毛髪脱色力の均一性
処理液を毛束に塗布し、各々20℃および40℃で20分放置した。次に脱色した毛束をラウリル硫酸ナトリウム10%溶液で2回シャンプーし、乾燥する操作を30回繰り返した。20℃および40℃で脱色した毛束を比較して、次の基準で評価し、最も多いものを表に結果として示した。
◎…20℃および40℃で脱色した毛髪の間に、脱色力の差が全くない。
○…20℃および40℃で脱色した毛髪の間に、脱色力の差がほとんどない。
△…40℃で脱色した毛髪が、20℃で脱色した毛髪に比べてやや明るい。
×…40℃で脱色した毛髪が、20℃で脱色した毛髪に比べてかなり明るい。
(20℃の方が脱色力弱い。)
(3)毛髪の仕上がり
処理液を毛束に塗布し、常温で20分放置した。次に脱色した毛束を市販シャンプーを用いて洗髪し、次の基準で評価し、最も多いものを表に結果として示した。
○…艶のあるしっとりとした仕上がり。
△…やや艶に欠け、ややパサツキやゴワツキがある。
×…艶がなくパサツキやゴワツキがある。
(4)毛髪の損傷
脱色の前後の毛髪表面を電子顕微鏡(倍率3000倍)で観察し、毛小皮の損傷の程度を、次の基準で評価し、最も多いものを表に結果として示した。
○…脱色前と同じで損傷は認められない。
△…毛小皮にわずかの隆起、亀裂、剥離などの損傷が認められる。
×…毛小皮にかなりの隆起、亀裂、剥離などの損傷が認められる。
【0035】
参考例1
(第1剤) 重量%
流動パラフィン 10
オリーブ油 5
ポリオキシエチレン(15)セチルエーテル 5
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 3
第4級窒素含有セルロースエーテル 2
アンモニア(28%) 5
ステアリルアルコール 10
(使用時濃度4.0%)
精製水で100%にする。
(第2剤) 重量%
過酸化水素(35%) 17
精製水で100%にする。
(粉末活性化剤) 重量%
過硫酸ナトリウム 50
硫酸アンモニウム 10
炭酸ナトリウム 20
ラウリル硫酸ナトリウム 4
カルボキシメチルセルロース 10
EDTA二ナトリウム 1
加水分解コラーゲン末 5
計100
上記組成の3剤式脱色剤を用い、第1剤50gに活性化剤25gを添加し、次いで第2剤50gと混合したものを毛髪に塗布して脱色処理を行ったところ、実施例1、2と同様に毛髪の脱色効果、仕上がりに優れた結果を得た。
【0036】
参考例2
(第1剤) 重量%
流動パラフィン 5
スクワラン 10
ポリオキシエチレン(15)セチルエーテル 5
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 3
加水分解ケラチン末 5
アンモニア(28%) 5
ベヘニルアルコール 10
(使用時濃度2.9%※)
ポリエチレングリコール400 10
(使用時濃度2.9%)
精製水で100%にする。
(第2剤) 重量%
ポリオキシエチレン(4)ノニルフェニルエーテル
5
ポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル
5
過酸化水素(35%) 17
セタノール 3
(使用時濃度1.7%※)
精製水で100%にする。
(粉末活性化剤) 重量%
過硫酸ナトリウム 50
硫酸アンモニウム 10
炭酸ナトリウム 20
ラウリル硫酸ナトリウム 4
カルボキシメチルセルロース 10
EDTA二ナトリウム 1
第4級窒素含有セルロースエーテル 5
計100
(※ 高級アルコール使用時濃度:合計4.6%)
上記組成の3剤式脱色剤を用い、第1剤50gに活性化剤25gを添加し、次いで第2剤100gと混合したものを毛髪に塗布して脱色処理を行ったところ、実施例1、2と同様に毛髪の脱色効果、仕上がりに優れた結果を得た。
【0037】
参考例3
(第1剤) 重量%
ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル
5
ポリオキシエチレン(6)トデシルエーテル 4
オレイン酸 35
第4級窒素含有セルロースエーテル 2
EDTA二ナトリウム 1
アンモニア(28%) 8
イソプロピルアルコール 10
(使用時濃度4.0%)
精製水で100%にする。
(第2剤) 重量%
ポリオキシエチレン(4)ノニルフェニルエーテル
5
ポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル
5
過酸化水素(35%) 17
セタノール 3
(使用時濃度1.2%)
精製水で100%にする。
(粉末活性化剤) 重量%
過硫酸ナトリウム 50
硫酸アンモニウム 10
炭酸ナトリウム 20
ラウリル硫酸ナトリウム 4
カルボキシメチルセルロース 10
EDTA二ナトリウム 1
加水分解コラーゲン末 5
計100
上記組成の3剤式脱色剤を用い、第1剤50gに活性化剤25gを添加し、次いで第2剤50gと混合したものを毛髪に塗布して脱色処理を行ったところ、実施例1、2と同様に毛髪の脱色効果、仕上がりに優れた結果を得た。
【0038】
参考例4
(第1剤) 重量%
ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル15
ポリオキシエチレン(50)ノニフェニルエーテル
5
オレイン酸 25
第4級窒素含有セルロースエーテル 2
モノエタノールアミン 10
エタノール 20
(使用時濃度5.7%)
精製水で100%にする。
(第2剤) 重量%
ポリオキシエチレン(2)ノニルフェニルエーテル
1
ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル
1
ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル 1
エチレングリコールモノステアレート 2
過酸化水素(35%) 17
セタノール 5
(使用時濃度2.9%)
精製水で100%にする。
(粉末活性化剤) 重量%
過硫酸ナトリウム 50
硫酸アンモニウム 10
炭酸ナトリウム 20
ラウリル硫酸ナトリウム 4
カルボキシメチルセルロース 10
EDTA二ナトリウム 1
加水分解コラーゲン末 5
計100
上記組成の3剤式脱色剤を用い、第1剤50gに活性化剤25gを添加し、次いで第2剤100gと混合したものを毛髪に塗布して脱色処理を行ったところ、実施例1、2と同様に毛髪の脱色効果、仕上がりに優れた結果を得た。
【0039】
【0040】
参考例5
(粉末活性化剤) 重量%
過硫酸アンモニウム 25
過硫酸カリウム 20
メタケイ酸ナトリウム 20
ラウリル硫酸ナトリウム 4
カルボキシメチルセルロース 20
EDTA二ナトリウム 1
第4級窒素含有セルロースエーテル 5
加水分解コラーゲン末 5
計100
(第2剤) 重量%
ポリオキシエチレン(2)ノニルフェニルエーテル
1
ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル
1
ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル 1
エチレングリコールモノステアレート 2
過酸化水素(35%) 17
セタノール 5
(使用時濃度4.0%)
ポリエチレングリコール400 5
(使用時濃度4.0%)
精製水で100%にする。
上記組成の2剤式脱色剤を用い、第2剤100gに活性化剤25gを混合したものを毛髪に塗布して脱色処理を行ったところ、実施例1、2と同様に毛髪の脱色効果、仕上がりに優れた結果を得た。
【0041】
【発明の効果】
温度の高い根元部分から温度の比較的低い毛先部分まで均一に、強く脱色することができ、しかも仕上がりの感触が極めて良くなり、毛髪の損傷も少ない効果を有する。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】 過硫酸塩、酸化剤およびアルカリ剤を用いる毛髪脱色剤において、高級アルコールを含み、並びにその使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下であることを特徴とする毛髪脱色剤。」

「【請求項1】 過硫酸塩、酸化剤、アンモニア、高級アルコールを含み、その使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下である毛髪脱色剤において、高級アルコールとアンモニアを含む第1剤、高級アルコールを含まず酸化剤を含む第2剤、過硫酸塩を含む粉末の第3剤からなり、第3剤を第2剤に溶解後、第1剤を加えて良く混合して毛髪脱色を行う毛髪脱色剤。」
に訂正する。
訂正事項b
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項2の
「【請求項2】 高級アルコールとアルカリ剤を含む第1剤、酸化剤を含む第2剤、過硫酸塩を含む第3剤からなることを特徴とする請求項1記載の毛髪脱色剤。」

「【請求項2】 酸化剤が過酸化水素、過炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、過酸化水素付加物およびピロリン酸ナトリウム・過酸化水素付加物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の毛髪脱色剤。」
に訂正する。
訂正事項c
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項3の
「【請求項3】 酸化剤が過酸化水素、過炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム・過酸化水素付加物およびピロリン酸ナトリウム・過酸化水素付加物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1又は2記載の毛髪脱色剤。」

「【請求項3】 カチオン性界面活性剤、またはカチオン化ポリマーの1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の毛髪脱色剤。」
に訂正する。
訂正事項d
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項4の
「【請求項4】 カチオン性界面活性剤、またはカチオン化ポリマーの1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の毛髪脱色剤。」を削除する。
訂正事項e
明りょうでない記載の釈明を目的として、 段落0008の、
「すなわち、本発明は、過硫酸塩、酸化剤およびアルカリ剤を用いる毛髪脱色剤において、高級アルコールを含み、並びにその使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下であることを特徴とする毛髪脱色剤である。」
を、
「すなわち、本発明は、過硫酸塩、酸化剤、アンモニア、高級アルコールを含み、その使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下である毛髪脱色剤において、高級アルコールとアンモニアを含む第1剤、高級アルコールを含まず酸化剤を含む第2剤、過硫酸塩を含む粉末の第3剤からなり、第3剤を第2剤に溶解後、第1剤を加えて良く混合して毛髪脱色を行うことを特徴とする毛髪脱色剤である。」
と訂正する。
訂正事項f
明りょうでない記載の釈明を目的として、 段落0010の、
「また、この高級アルコールは1剤式から3剤式に関わらずいずれにも配合することができる。」
を削除する。
訂正事項g
明りょうでない記載の釈明を目的として、段落0014の
「本発明で対象となる毛髪脱色剤としては、例えば、前述したa〜cの1剤ないし3剤式のものが挙げられる。また、これらの脱色剤の形態は通常、粉末または液状の他、クリーム状、ペースト状、ゲル状のものでも差し支えない。しかし、本発明が高級アルコールを必須成分としていることから、クリーム製剤が最も好ましく、1、2剤のどちらか一方、または両方ともクリーム剤型で、そこに過硫酸塩を含む粉末を添加して使用する3剤式が、特に脱色効果の点から好ましい。」
を削除する。
訂正事項h
明りょうでない記載の釈明を目的として、段落0015の
「本発明においては、過硫酸塩、酸化剤およびアルカリ剤を用いる毛髪脱色剤において、高級アルコールを含み、並びにその使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下であることを必須の要件とするものであり、この条件が満たされることで、強く、均一な脱色効果が得られるものである。」
を、
「本発明においては、過硫酸塩、酸化剤およびアルカリ剤としてアンモニアを用いる毛髪脱色剤において、高級アルコールを含み、並びにその使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量が10%以下であることを必須の要件とするものであり、この条件が満たされることで、強く、均一な脱色効果が得られるものである。」
と訂正する。
訂正事項i
明りょうでない記載の釈明を目的として、段落0029の、
「アルカリ剤を」
を、
「アルカリ剤としてアンモニアを」
と訂正する。
訂正事項
明りょうでない記載の釈明を目的として、段落0030の、
「アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムなどが挙げられ、」
を削除する。
訂正事項k
明りょうでない記載の釈明を目的として、段落0035〜0038及び段落0040の、
「実施例3」「実施例4」「実施例5」.「実施例6」「実施例8」
を、
「参考例1」「参考例2」「参考例3」「参考例4」「参考例5」
と訂正する。
訂正事項1
明りょうでない記載の釈明を目的として、段落0041の、
「過硫酸塩、酸化剤およびアルカリ剤を用いる毛髪脱色剤で、その処方中に、高級アルコールを含み、並びにその使用時における低級アルコールおよび多価アルコールの総量を10%以下にすることで、」
を削除する。
異議決定日 2001-08-01 
出願番号 特願平7-246863
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A61K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 植原 克典  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 深津 弘
大久保 元浩
登録日 1999-07-09 
登録番号 特許第2950762号(P2950762)
権利者 ホーユー株式会社
発明の名称 毛髪脱色剤  
代理人 細田 芳徳  
代理人 田中 敏博  
代理人 足立 勉  
代理人 市橋 俊一郎  
代理人 田中 敏博  
代理人 足立 勉  

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