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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B01D 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 B01D 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B01D 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 B01D |
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管理番号 | 1056506 |
異議申立番号 | 異議2001-70493 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-08-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-02-13 |
確定日 | 2001-12-03 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3076653号「スラリー液と液との二相分離方法及び装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3076653号の訂正後の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第3076653号は、平成4年2月4日に特許出願され、平成12年6月9日にその特許の設定登録がなされ、その後、三菱化学株式会社から特許異議の申立てがあり、取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年7月23日に訂正請求(後日取下げ)がなされた後、再度取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年10月5日に新たな訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否について (1)訂正の内容 本件訂正請求書における訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、 訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1の「固相成分を有するスラリー液(I)と、これより密度が小さくかつ前記スラリー液と混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液(II)との混合物を、セトラー内の静置時における二液の分離界面付近に低流速で供給し、次いで、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、二相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出すことを特徴とするスラリー液(I)と液(II)との二相分離方法。」を「反応場の環境から数分間離れただけで変質する固相成分を有するスラリー液(I)と、これより密度が小さくかつ前記スラリー液と混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液(II)との混合物を、セトラー内の静置時における二液の分離界面付近に0.001m/秒以上2m/秒以下の流速で供給し、次いで、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、二相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出すことを特徴とするスラリー液(I)と液(II)との二相分離方法。」と訂正する。 訂正事項b:明細書の段落【0006】の「【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、上記の問題点を解決するために、セトラー内におけるスラリー液の滞留時間を極力少なくする方法、装置について研究した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は(1)固相成分を有するスラリー液(I)と、これより密度が小さくかつ前記スラリー液と混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液(II)との混合物を、セトラー内の静置時における二液の分離界面付近に低流速で供給し、次いで、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、二相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出すことを特徴とするスラリー液(I)と液(II)との二相分離方法。(2)請求項1に記載のスラリー液(I)と液(II)との混合物をセトラー内の静置時における二液の分離界面付近に低流速で供給する手段と、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する-方、該スラリーの滞留時間が該固相成分が変質しない時間内となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を形成するべくスペーサを配置し、この流路を通して、二相連続相に分離後の該スラリー液を、セトラーから抜き出す手段から成るスラリー液(I)と液(II)との二相分離装置である。」を「【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、上記の問題点を解決するために、セトラー内におけるスラリー液の滞留時間を極力少なくする方法、装置について研究した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、(1)反応場の環境から数分間離れただけで変質する固相成分を有するスラリー液(I)と、これより密度が小さくかつ前記スラリー液と混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液(II)との混合物を、セトラー内の静置時における二液の分離界面付近に0.001m/秒以上2m/秒以下の流速で供給し、次いで、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、二相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出すことを特徴とするスラリー液(I)と液(II)との二相分離方法。(2)請求項1に記載のスラリー液(I)と液(II)との混合物をセトラー内の静置時における二液の分離界面付近に低流速で供給する手段と、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する-方、該スラリーの滞留時間が該固相成分が変質しない時間内となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を形成するべくスペーサを配置し、この流路を通して、二相連続相に分離後の該スラリー液を、セトラーから抜き出す手段から成るスラリー液(I)と液(II)との二相分離装置である。」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項aは、本件明細書の段落【0005】の記載に基づいて、「固相成分」を「反応場の環境から数分間離れただけで変質する固相成分」に限定し、本件明細書の段落【0010】の記載に基づいて、「低流速」を「0.001m/秒以上2m/秒以下の流速」に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 上記訂正事項bは、特許請求の範囲の減縮を目的とする上記訂正事項aの訂正に伴うものであり、減縮された請求項1の記載と明細書の記載とを整合させるためにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。 また、上記訂正a〜bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)まとめ 以上のとおり、上記訂正請求は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 上記のとおり、訂正請求は容認できるから、訂正後の本件請求項1ないし2に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】反応場の環境から数分間離れただけで変質する固相成分を有するスラリー液(I)と、これより密度が小さくかつ前記スラリー液と混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液(II)との混合物を、セトラー内の静置時における二液の分離界面付近に0.001m/秒以上2m/秒以下の流速で供給し、次いで、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、二相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出すことを特徴とするスラリー液(I)と液(II)との二相分離方法。 【請求項2】請求項1に記載のスラリー液(I)と液(II)との混合物をセトラー内の静置時における二液の分離界面付近に低流速で供給する手段と、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する-方、該スラリーの滞留時間が該固相成分が変質しない時間内となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を形成するべくスペーサを配置し、この流路を通して、二相連続相に分離後の該スラリー液を、セトラーから抜き出す手段から成るスラリー液(I)と液(II)との二相分離装置。」 (2)申立ての理由の概要 特許異議申立人三菱化学株式会社は、証拠方法として甲第1号証(特開平3-238047号公報)、甲第2号証(PERRY’S CHEMICAL ENGINEERS’HANDBOOK SIXTH EDITION)、甲第3号証(HANDBOOK OF SEPARATION PROCESS TECHNOLOGY)を提出し、本件請求項1ないし2に係る発明の特許は、以下の理由により取り消されるべきものである旨主張している。 理由1:本件請求項1ないし2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1ないし3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 理由2:本件特許明細書の記載は特許法第36条第4項および第5項に規定する要件を満たしていない。 (3)甲各号証の記載内容 甲第1号証には、以下の事項が記載されている。 (a)「ルテニウム触媒と水によって構成される触媒スラリーに単環芳香族炭化水素および水素を連続的に供給して部分水素化反応を行い、該触媒スラリーである水相と、反応生成物からなる油相を相分離して、油相を連続的に採取する方法において、該触媒スラリーを混合下に、60〜180℃の温度に所定時間保持することを特徴とする触媒スラリーの前処理方法。」(特許請求の範囲) (b)「油水分離用静置槽を内部に有し、かつ、接液部にテフロンコーティングを施した連続流通反応装置に仕込んだ。…(中略)…この操作を500時間連続的に行い」(第4頁左下欄下から2行〜同頁右下欄第18行) 同じく、甲第2号証には、以下の事項が記載されている。 (c)「Gravity Settlers;Decanters…(中略)…The velocity of the liquid entering the decanter should be kept low to minimize disturbance of the interface」(21-64〜65) (d)FIG.21-86にGravity decantersが記載され、Light phaseとHeavy phaseのInterface付近にFeedすることが図示されている。 同じく、甲第3号証には、以下の事項が記載されている。 (e)「The proper introduction to feed to a gravity separation is the key to its perfomance. For optimum design, the feed shoud be (1) introduced uniformly across the active cross-section of the decanter and (2) done in a way to leave no residual jetting or turbulence. An uncontrolled mixture inlet without proper diffusion will enter as a strong jet, shooting across the separator and causing significant turbulence and mixing. A practical approach is to limit the inlet verocity head at the nozzle to ρV2=250lbm/ft・s2. For water, this corresponds to about 2 ft/s. In addition, forcing a direction change on the inlet flow can reduce the jet effect. A very simple approach is to use a plate just inside the inlet at least two times the nozzle diameter and located one-half nozzle diameter in from the inlet. This deflects the jet and significantly reduces the velocity. 」(第151頁) (4)当審の判断 (4)-1.申立て理由1について (請求項1に係る発明について) 甲第1号証には、上記(3)(a)〜(b)の記載から「触媒を有するスラリーと、このスラリーと混合した後静置した場合に二液連続相を形成する単環芳香族炭化水素を部分水素化した油との混合物を、油水分離用静置槽に供給するようにしたスラリーと単環芳香族炭化水素を部分水素化した油との二相分離方法」が記載されているといえる。 本件請求項1に係る発明(以下「請1発明」という)と甲第1号証に記載された発明(以下「甲1発明」という)とを対比すると、甲1発明の「触媒」は請1発明の「固相成分」、同じく「スラリー」は「スラリー液(I)」、「単環芳香族炭化水素を部分水素化した油」は「液(II)」、「油水分離用静置槽」は「セトラー」に、それぞれ相当し、また、単環芳香族炭化水素を部分水素化した油は触媒を有するスラリーより密度が小さいこと、分離後のスラリーは油水分離用静置槽から抜き出されることは明らかであるから、両者は、「固相成分を有するスラリー液(I)と、これより密度が小さくかつ前記スラリー液と混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液(II)との混合物を、セトラー内に供給し、次いで、二液連続相に分離後のスラリー液をセトラーから抜き出すことを特徴とするスラリー液(I)と液(II)との二相分離方法」である点で一致し、以下の点で相違している。 (イ)請1発明は固相成分が反応場の環境から数分間離れただけで変質するのに対し、甲第1号証には固相成分である触媒の変質については触れられていない点。 (ロ)請1発明は混合物をセトラー内の静置時における二液の分離界面付近に0.001m/秒以上2m/秒以下の流速で供給しているのに対し、甲第1号証には混合物のセトラー内への供給位置及び速度については記載ないし示唆されていない点。 (ハ)請1発明は二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、二相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出しているのに対し、甲第1号証にはセトラー内での分離後のスラリー液の保持状態及びその抜き出し流路については記載ないし示唆されていない点。 上記相違点のうち相違点(ハ)に着目すると、相違点(ハ)に記載した請1発明の構成は、本件出願前周知のものとは認められない。よって、相違点(ハ)について甲第2ないし3号証の記載を検討する。 甲第2号証には、上記(3)(c)〜(d)より、混合物をセトラー内の静置時における二液の分離界面付近に流速を小さく抑えて供給すること、甲第3号証には、上記(3)(e)より、混合物を均一に、余計な噴流や乱れを残さないように、入口速度ヘッドをρV2=250lbm/ft・s2、水では 2 ft/sに制限してセトラーに供給することは、それぞれ記載されていると云えるが、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、二相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出すことは記載ないし示唆されていない。 そして、請1発明はこの構成により、セトラー内におけるスラリー液の滞留時間を小さくでき、固相成分の変質を防ぐことができる(特許公報第8欄第2〜4行)という甲第1ないし3号証の記載から予期し得ない効果を奏するものである。 したがって、請1発明が、甲第1号証に記載された発明であるとすることができず、また、甲第1ないし3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともすることができない。 なお、異議申立人は、甲第1号証の「500時間連続的に反応を行う」という記載から、請1発明の構成「二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、二相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出す」が示唆されていると主張しているが、甲1発明は二相が過度に混入しないように確実に分離して反応を安定して行うことを課題とし、触媒の変質については認識されていないから、甲第1号証の上記記載のみからでは請1発明の上記構成が示唆されているとは云えない。よって、異議申立人の主張は採用することができない。 (請求項2に係る発明について) 甲第1号証には、上記(3)(a)〜(b)の記載から「触媒を有するスラリーと、このスラリーと混合した後静置した場合に二液連続相を形成する単環芳香族炭化水素を部分水素化した油との混合物を、油水分離用静置槽に供給する手段を有する、スラリーと単環芳香族炭化水素を部分水素化した油との二相分離装置」が記載されているといえる。 本件請求項2に係る発明(以下「請2発明」という)と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「触媒」は請2発明の「固相成分」、同じく「スラリー」は「スラリー液(I)」、「単環芳香族炭化水素を部分水素化した油」は「液(II)」、「油水分離用静置槽」は「セトラー」に、それぞれ相当し、また、単環芳香族炭化水素を部分水素化した油は触媒を有するスラリーより密度が小さいこと、分離後のスラリーを油水分離用静置槽から抜き出す手段を有することは明らかであるから、両者は、「固相成分を有するスラリー液(I)と、これより密度が小さくかつ前記スラリー液と混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液(II)との混合物を、セトラー内に供給する手段と、二液連続相に分離後のスラリー液をセトラーから抜き出す手段から成る、スラリー液(I)と液(II)との二相分離装置」である点で一致し、以下の点で相違している。 (ニ)請2発明は固相成分が反応場の環境から数分間離れただけで変質するのに対し、甲第1号証には固相成分である触媒の変質については触れられていない点。 (ホ)請2発明は混合物を二液の分離界面付近に低流速で供給する手段を有しているのに対し、甲第1号証には混合物の供給位置及び速度については記載ないし示唆されていない点。 (へ)二液連続相に分離後のスラリー液をセトラーから抜き出す手段が、請2発明はスラリー液中の固相成分を流動状態に保持する一方、該スラリーの滞留時間が該固相成分が変質しない時間内となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を形成するべくスペーサを配置し、この流路を通して抜き出しているのに対し、甲第1号証にはセトラー内での分離後のスラリー液の保持状態及びその抜き出し流路については記載ないし示唆されていない点。 上記相違点のうち相違点(ヘ)に着目すると、相違点(へ)に記載した請2発明の構成は、本件出願前周知のものとは認められない。よって、相違点(へ)について甲第2ないし3号証の記載を検討する。 甲第2号証には、上記(3)(c)〜(d)より、混合物をセトラー内の静置時における二液の分離界面付近に流速を小さく抑えて供給する手段を有すること、甲第3号証には、上記(3)(e)より、混合物を均一に、余計な噴流や乱れを残さないように、入口速度ヘッドをρV2=250lbm/ft・s2、水では 2 ft/sに制限してセトラーに供給する手段を有することは、それぞれ記載されていると云えるが、スラリー液中の固相成分を流動状態に保持する一方、該スラリーの滞留時間が該固相成分が変質しない時間内となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を形成するべくスペーサを配置し、この流路を通して抜き出すことは記載ないし示唆されていない。 そして、請2発明はこの構成により、セトラー内におけるスラリー液の滞留時間を小さくでき、固相成分の変質を防ぐことができる(特許公報第8欄第2〜4行)という甲第1ないし3号証の記載から予期し得ない効果を奏するものである。 したがって、請2発明が、甲第1号証に記載された発明であるとすることができず、また、甲第1ないし3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともすることができない。 (4)-2.申立て理由2について (A)異議申立人は、請求項1及び2記載の「低流速」および「充分に小さい」は比較の基準、程度が不明瞭であるから、本件発明の構成が不明瞭であると主張している。 そこで検討すると、請求項1記載の「低流速」は上記訂正請求により「0.001m/秒以上2m/秒以下の流速」と訂正され、具体的になったから、申立て理由は解消したものと認める。請求項2記載の「低流速」については、本件明細書段落【0010】に分散帯の乱れを防止するためには混合液の流速をできるだけ低くすることが重要であるが、小さすぎても乱れ防止効果が上がらず、導入口の開口面積が大きくなりすぎるだけであるとその技術的意味及び具体的流速が記載されているから、分散帯の乱れと導入口の開口面積を勘案して当業者が適宜設定できるものと認められる。よって、不明瞭な記載とは云えない。 また、「充分に小さい」については、スラリー液をセトラーから抜き出す条件として、請求項1では「充分に小さい流路容積を有する流路を通して」と「該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように」とが、請求項2では「充分に小さい流路容積を有する流路を形成するべくスペーサを配置し、この流路を通して」と「該スラリーの滞留時間が該固相成分が変質しない時間内となるように」とが、それぞれ並列に規定されている。両条件を満足するためには、固相成分が変質する流路容積であってはならず、その境界は固相成分が変質し始める滞留時間となる流路容積である。したがって、固相成分が変質し始める滞留時間となる流路容積を基準とし、余裕をとって、それより充分に小さい流路容積と解される。よって、基準が不明瞭とは云えない。 (B)異議申立人は、請求項1及び2の「固相成分が変質しない時間」は程度が不明瞭な記載であり、また、「変質」は意味不明であると主張している。 そこで検討すると、「固相成分が変質しない時間」については、固相成分に応じて決まるものであるから、程度が不明瞭とは云えない。 また、「変質」については、本件明細書段落【0005】に触媒の選択性の低下が例示されており、意味不明とは云えない。 (C)異議申立人は、固相成分の粒径が特定されていないから、請求項1及び2の「二液連続相に分離」はどの程度までの固相成分の沈降分離が許容されるのか否かの境界が曖昧であると主張している。 そこで検討すると、「二液連続相に分離」はその記載通りに固相成分を沈降分離させない意味であることは明らかである。そして、本件請求項1及び2記載の発明は二液連続相に分離することを構成としているから、二液連続相に分離しない場合があるとしても、それによって本件請求項1及び2記載の発明が不明瞭となるものではない。 (D)上記のとおりであるから、本件明細書の記載が特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていないものとすることができない。 4.むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、訂正後の本件請求項1ないし2に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に訂正後の本件請求項1ないし2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 スラリー液と液との二相分離方法及び装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 反応場の環境から数分間離れただけで変質する固相成分を有するスラリー液(I)と、これより密度が小さくかつ前記スラリー液と混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液(II)との混合物を、セトラー内の静置時における二液の分離界面付近に0.001m/秒以上2m/秒以下の流速で供給し、次いで、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、二相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出すことを特徴とするスラリー液(I)と液(II)との二相分離方法。 【請求項2】 請求項1に記載のスラリー液(I)と液(II)との混合物をセトラー内の静置時における二液の分離界面付近に低流速で供給する手段と、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、該スラリーの滞留時間が該固相成分が変質しない時間内となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を形成するべくスペーサーを配置し、この流路を通して、二相連続相に分離後の該スラリー液を、セトラーから抜き出す手段から成るスラリー液(I)と液(II)との二相分離装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、スラリー液と、これより密度が小さく前記スラリーと混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液との混合物(以下混合液という)を、セトラーを用いて二液連続相に連続分離するに際し、セトラー内におけるスラリー液の滞留時間をスラリー中の固相成分が変質しないように充分に小さく保持する方法と装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 化学工業においては、微粒子の固体触媒スラリー液を用いた反応方式、例えば液液固相反応や気液液固相反応などの反応方式が多く行われている。通常このための装置は、反応を行う反応装置と、触媒スラリー液と反応液とを分離する分離装置から成っている。 【0003】 例えば、ベンゼンを部分水素化したシクロヘキセンを製造する方法としては、主に金属ルテニウムよりなる水素化触媒粒子を水に懸濁させ、溶解してきたベンゼンを部分水添する方法(特開昭61-50930号公報、特開昭62-45544号公報、特開昭62-81332号公報)が提案されている。その明細書によれば、触媒として200×10-8cm以下に微粒化された金属ルテニウムに亜鉛化合物を助触媒とし、酸化ジルコニウムもしくは酸化ハフニウムを添加したものを用いる実施例が記載されている。 【0004】 それによれば、撹拌槽に触媒と硫酸酸性水溶液を仕込んで触媒スラリー液とし、これにベンゼンと水素とを連続的に供給し、反応温度100〜200℃で、反応圧力10〜100kg/cm2G、滞留時間数分〜2時間、接触反応したのち、セトラーにて触媒スラリー液と反応液との二液連続相に分離し、反応液よりシクロヘキセンを取得し、触媒スラリー液は撹拌槽に戻して再使用するものである。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、この触媒は反応場の環境から数分間離れただけで変質し、選択性が低下する性質を持っているため、触媒スラリー液と反応液との混合液は、できるだけ早く二液連続相に分離して、触媒スラリー液を反応槽(撹拌槽)に戻す必要がある。また、この金属触媒はスラリー液の流動が止まるとすぐに沈降分離し、再分散に時間を要するため、セトラー下部は触媒粒子が堆積しないように安息角以上の傾斜をつけることが好ましく、例えば下に頂点を持つコーン型にして流動性を良くする必要がある。ところが、下部の形状をコーン型にすると、セトラー内におけるスラリー液の占める容積が大きくなるため、スラリー液の滞留時間が長くなることになる。また、従来のように、このスラリー液と反応液との混合液をセトラー内に単一ノズルでフィードすると、その速度エネルギーによって系が乱され、分散帯の厚みが非常に大きくなることも、この傾向を助長することになる。 【0006】 【課題を解決するための手段】 そこで本発明者らは、上記の問題点を解決するために、セトラー内におけるスラリー液の滞留時間を極力少なくする方法、装置について研究した結果、本発明に到達した。 すなわち、本発明は (1) 反応場の環境から数分間離れただけで変質する固相成分を有するスラリー液(I)と、これより密度が小さくかつ前記スラリー液と混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液(II)との混合物を、セトラー内の静置時における二液の分離界面付近に0.001m/秒以上2m/秒以下の流速で供給し、次いで、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、ニ相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出すことを特徴とするスラリー液(I)と液(II)との二相分離方法。 (2) 請求項1に記載のスラリー液(I)と液(II)との混合物をセトラー内の静置時における二液の分離界面付近に低流速で供給する手段と、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、該スラリーの滞留時間が該固相成分が変質しない時間内となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を形成するべくスペーサーを配置し、この流路を通して、ニ相連続相に分離後の該スラリー液を、セトラーから抜き出す手段から成るスラリー液(I)と液(II)との二相分離装置である。 【0007】 まず、セトラー(1)内の液の流れについて説明する。セトラー(1)に連続的に供給される二液の混合液(2)は、図1のように分散帯(3)を形成し、二液の連続相に分離され、反応液(4)は上部から、スラリー液(5)は下部から連続的に取り出される。ここで分散帯(3)とは、二液連続相にはさまれた液液の混合相であり、スラリー液が反応液より多い場合は、スラリー液は連続的に下降し、反応液は液滴となって上昇し、反応液の連続相に到達しようとしている状態を言う。逆に反応液がスラリー液より多い場合は、反応液は連続的に上昇し、スラリー液は液滴となって下降し、スラリー液の連続相に到達しようとしている状態を言う。 【0008】 また分離界面(6)とは、この混合液の供給及び反応液とスラリー液の排出を停止して静置すると、図2のように静置時における二液連続相の界面(6)が現れるが、この界面のことを言う。 次に具体的に説明する。まず、セトラー(1)の下部の形状は、スラリー液中の固相成分、例えば触媒粒子が堆積しないように安息角以上の傾斜角度を持った形、例えば下に頂点をもつコーン型や角錐型のようにすることが好ましい。これによって前記固相成分、例えば触媒の流動状態を確保するためである。コーンの数は一つでも多数でもよい。また上部の反応液の分離域は円筒型でも角型でも多角型でもよいが、分離に必要な面積は確保する必要がある。ここで、分離に必要な面積とは、セトラー内において反応液の液滴が分散帯の中を上昇し上部の連続相に到達してその厚みを増大する速度よりも、反応液の抜き出し速度が小さくなるようにしたときの面積である。即ち、スラリー液が反応液に実質的に混入しないだけの大きさの面積をとる必要がある。 【0009】 次に分散帯の厚みを最小限にするためには、二液の混合液をセトラー内の静置時における二液の分離界面付近に低流速で供給する。つまり分離界面をできるだけ乱さないようにする。そのためには、セトラー内に混合液を導入する導入口の開口面積をできるだけ大きくし、さらに均一に導入するために、例えば図3〜9のようにセトラーの一方の内部壁面に混合液の供給路(11)を設け、その供給路に多数の孔(7)またはスリット(7)を切り、これを混合液の導入口(7)とする方法や、図10〜11のようにセトラー内部から放射状に導入する方法、あるいは図12〜14のようにセトラー内の周囲から導入する方法などが考えられる。ただし、図10〜11の場合の導入口はセトラーの中心にある必要はなく、あくまでも分散帯の厚みを増やさないために、水平方向に混合液を導入することが望ましい。従って、この場合の導入口の数はいくつあってもよい。 【0010】 いずれの場合も導入口における混合液の流速をできるだけ低くすることが重要である。平均流速は、場合により異るから限定はできないが、例えば前記触媒の場合は0.001m/秒以上2m/秒以下の範囲にすることが望ましい。これは、平均流速を0.001m/秒より小さくしても分散帯の乱れを防止する効果が上がらず、導入口の開口面積が極端に大きくなりすぎるからである。また2m/秒より大きくすると速度エネルギーによって分離界面が乱され、分散帯の厚みが大きくなりすぎるからである。 【0011】 一方、二液連続相に分離後のスラリー液中の固相成分が変質を起さぬうちに、セトラーから抜きとるため、その流路容積を充分に小さくするためには、セトラー内の分散帯より下のスラリー相にスペーサー(8)を設ける。こで、流路容積とは、分散帯より下のスラリー相とコーン部において、スラリー液が存在する全容積を言う。このときスペーサー(8)は中空でも中実でもよい。中空でもよい理由は、図3〜6に示すようにスペーサー下部に開口部(9)を設けておけば固相成分粒子は沈降し、この開口部から排出されるため、スペーサー内の空間には非常に希薄なスラリー液のみが残存することになり、固相成分例えば触媒粒子の滞留による反応への影響は無視し得るからである。また、このスペーサーの上部は固相成分粒子が堆積しないように安息角以上の傾斜角度をもたせることが好ましく、例えば山型のような形にするとよい。この山型は先が角ばっていても丸くなっていても問題ない。 【0012】 また、スラリー液の流路容積を少なくするためには、スラリー相に設置するスペーサーを分割することが有効である。スペーサーの形状は、図3〜6のようにセトラー長手方向中心線と平行に分割してもよいし、これとは逆に直角方向に分割してもよい。図10〜11のように放射状に分割してもよい。そのとき、分割したスペーサー間やスペーサーとセトラー壁面との間のスラリー液の流路(12)は、固相成分粒子が堆積しないように安息角以上の角度とする。また、その幅は小さいほうがよいが、固相成分粒子、例えば触媒粒子の性状との関係で任意に設定できる。例えば、触媒粒子が0.001m/秒以上10m/秒以下の速度で通過し得る幅であればよい。特定の触媒については、例えば0.01m/秒〜1m/秒である。 【0013】 さらに、先に述べた導入口と、このスペーサーとの距離を近づければ、セトラー内のスラリー液量を減らすために一層効果的である。 【0014】 【実施例】 以下、本発明の実施例を触媒粒子に例をとり具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。 【0015】 【実施例1】 図3〜6は、横型で下部コーン型のセトラー(1)に二液の混合液(2)を低流速で供給するための導入口(7)と、スラリー液の流路(12)の容積を必要かつ充分に小さくするためのスペーサー(8)を設置した例である。各図は横式図である。 【0016】 図3はセトラー内部を示す平面断面図、図4は同正面断面図、図5は同側面断面図、図6はスペーサーの斜視図である。 導入口は、二液混合液のセトラー内に流入する平均流速が約0.1m/秒となるような開口面積とした。 スペーサーは、中空とし、下部に開口部(9)を、上部にガス抜き用のベント管(10)を設け、セトラー長手方向中心線と平行に分割して設置した。さらに、セトラー内のスラリー液量を減らすために、導入口の下端とスペーサー上端との距離を近づけ、約0.15mとした。 【0017】 このセトラーを用いて、シクロヘキセン製造プロセスにおけるベンゼンの水添触媒スラリーと反応液との連続分離を行った。スラリー液の密度は約1.0g/cm3、反応液の密度は約0.7g/cm3である。 この運転の結果、セトラー内におけるスラリー液の滞留時間を数分のオーダーとなし得た。すなわち、このような導入口とスペーサーのない装置にくらべて約1/10にすることができたために、反応場から離れることによる触媒の変質はまったくみられなかった。 【0018】 【実施例2】 また、このセトラーを用いて、スペーサーの取り付け方向を90度変えたものに入れ換えて、同じ二液混合液の連続分離を同じ流速条件で行った。 その結果は実施例1と同様で、反応場から離れることによる触媒の変質はまったくみられなかった。 【0019】 【実施例3】 図7〜9は、横型で下部に角錐状のスペーサー(8)を四つ設けたセトラーに二液混合液を低流速で供給するための導入口(7)と前記スペーサー(8)を設置した例である。それぞれ平面、正面及び側面の断面図である。各角錐からでたスラリー液は集合管(13)で連結し一本にまとめて取り出すようにした。 【0020】 導入口は、二液混合液のセトラー内に流入する平均流速が約0.3m/秒となるような開口面積とした。 スペーサーは、これらの図のように設置し、スペーサー上端と導入口下端との距離は約0.3mとした。 このセトラーを用いて、実施例1と同じ二液混合液の連続分離を同じ流速条件で行った。 【0021】 その結果は、実施例1と同様で、反応場から離れることによる触媒の変質はまったくみられなかった。 【0022】 【実施例4】 図10,11は、竪型で下部コーン型のセトラーに二液混合液を低流速で供給するための導入口(7)とスペーサーを設置した例である。図10,11はそれぞれ、平面及び正面の断面図である。 二液混合液は、装置中心からセトラー内に実質的に水平方向に、かつ、放射状に流入するが、このときの平均流速が約0.2m/秒となるような導入口の開口面積とした。 【0023】 スペーサーは、この図のように設置し、スペーサー上端と導入口下端との距離は約0.2mとした。 このセトラーを用いて、実施例1と同じ二液混合液の連続分離を同じ流速条件で行った。 その結果は、実施例1と同様で、反応場から離れることによる触媒の変質はまったくみられなかった。 【0024】 【実施例5】 図12〜14は、竪型で下部コーン型のセトラーに二液混合液を周囲から実質的に水平方向に低流速で供給するための導入口(7)とスペーサー(8)を設置した例である。図12,13,14は、それぞれ平面、正面及び側面の断面図である。 【0025】 二液混合液は、装置の外周部からセトラーの中心に向かって流入するが、このときの平均流速が約0.2m/秒となるような導入口の開口面積とした。 スペーサーは、この図のように分割設置し、スペーサー上端と導入口下端との距離は約0.2mとした。 このセトラーを用いて実施例1の二液混合液の連続分離を同じ流速条件で行った。 【0026】 その結果は実施例1と同様で、反応場から離れることによる触媒の変質はまったくみられなかった。 【0027】 【発明の効果】 本発明は、セトラーに、低流速で混合液を実質的に水平方向に供給する導入口と、スラリー液の流路容積を小さくするスペーサーを取り組むことにより、セトラー内におけるスラリー液の滞留時間を必要充分に小さくできる。このときにより、スラリー液に含まれる固相成分、例えば触媒の変質を防ぐことができる。また反応に寄与しない固相成分を充分に少ない量、例えば最小限の量、におさえることができた。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明のセトラーを用いて、スラリー液と液とを二液連続相に連続分離するときの、液の流れの状態を示す図である。 【図2】 本発明のセトラーへの二液混合液の供給及び反応液とスラリー液の排出を停止したときの、セトラー内の液の状態を示す図である。 【図3】 本発明の実施態様の第一の例であり、横型下部コーン型セトラーに二液混合液の導入口と、コーン部にスペーサーを取り付けたときの平面断面図である。 【図4】 本発明の実施態様の第一の例であり、正面断面図である。 【図5】 本発明の実施態様の第一の例であり、側面断面図である。 【図6】 本発明の実施態様の第一の例であり、スペーサーの斜視図である。 【図7】 本発明の実施態様の第二の例であり、横型で下部に角錐を四つ設けたセトラーに二液混合液の導入口と、角錐部にスペーサーを取り付けたときの平面断面図である。 【図8】 本発明の前記第二の例の平面断面図である。 【図9】 本発明の前記第二の例の側面断面図である。 【図10】 本発明の実施態様の第三の例であり、竪型下部コーン型セトラーの中心部に二液混合液の導入口を、コーン部にスペーサーを取り付けたときの平面断面図である。 【図11】 本発明の前記第三の例の正面断面図である。 【図12】 本発明の実施態様の第四の例であり、竪型下部コーン型セトラーの外周部に二液混合液の導入口を、コーン部にスペーサーを取り付けたときの平面断面図である。 【図13】 本発明の前記第四の例の正面断面図である。 【図14】 本発明の前記第四の例の側面断面図である。 【符号の説明】 1 セトラー 2 混合液 3 分散帯 4 反応液 5 スラリー液 6 二液連続相の界面 7 導入口 8 スペーサー 11 混合液供給路 12 スラリー液の流路 |
訂正の要旨 |
特許第3076653号の明細書を、 特許請求の範囲の減縮を目的として、 訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1の「固相成分を有するスラリー液(I)と、これより密度が小さくかつ前記スラリー液と混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液(II)との混合物を、セトラー内の静置時における二液の分離界面付近に低流速で供給し、次いで、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、二相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出すことを特徴とするスラリー液(I)と液(II)との二相分離方法。」を「反応場の環境から数分間離れただけで変質する固相成分を有するスラリー液(I)と、これより密度が小さくかつ前記スラリー液と混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液(II)との混合物を、セトラー内の静置時における二液の分離界面付近に0.001m/秒以上2m/秒以下の流速で供給し、次いで、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、二相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出すことを特徴とするスラリー液(I)と液(II)との二相分離方法。」と訂正し、 明瞭でない記載の釈明を目的として、 訂正事項b:明細書の段落【0006】の「【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、上記の問題点を解決するために、セトラー内におけるスラリー液の滞留時間を極力少なくする方法、装置について研究した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は(1)固相成分を有するスラリー液(I)と、これより密度が小さくかつ前記スラリー液と混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液(II)との混合物を、セトラー内の静置時における二液の分離界面付近に低流速で供給し、次いで、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、二相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出すことを特徴とするスラリー液(I)と液(II)との二相分離方法。(2)請求項1に記載のスラリー液(I)と液(II)との混合物をセトラー内の静置時における二液の分離界面付近に低流速で供給する手段と、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、該スラリーの滞留時間が該固相成分が変質しない時間内となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を形成するべくスペーサを配置し、この流路を通して、二相連続相に分離後の該スラリー液を、セトラーから抜き出す手段から成るスラリー液(I)と液(II)との二相分離装置である。」を「【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、上記の問題点を解決するために、セトラー内におけるスラリー液の滞留時間を極力少なくする方法、装置について研究した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、(1)反応場の環境から数分間離れただけで変質する固相成分を有するスラリー液(I)と、これより密度が小さくかつ前記スラリー液と混合した後静置した場合に二液連続相を形成する液(II)との混合物を、セトラー内の静置時における二液の分離界面付近に0.001m/秒以上2m/秒以下の流速で供給し、次いで、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、二相連続相に分離後の該スラリー液を、該固相成分が変質しない時間内の滞留時間となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を通して、セトラーから抜き出すことを特徴とするスラリー液(I)と液(II)との二相分離方法。(2)請求項1に記載のスラリー液(I)と液(II)との混合物をセトラー内の静置時における二液の分離界面付近に低流速で供給する手段と、二液連続相に分離後のスラリー液を、同液中の固相成分を流動状態に保持する一方、該スラリーの滞留時間が該固相成分が変質しない時間内となるように、充分に小さい流路容積を有する流路を形成するべくスペーサを配置し、この流路を通して、二相連続相に分離後の該スラリー液を、セトラーから抜き出す手段から成るスラリー液(I)と液(II)との二相分離装置である。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-11-13 |
出願番号 | 特願平4-19090 |
審決分類 |
P
1
651・
531-
YA
(B01D)
P 1 651・ 121- YA (B01D) P 1 651・ 113- YA (B01D) P 1 651・ 534- YA (B01D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 豊永 茂弘 |
特許庁審判長 |
吉田 敏明 |
特許庁審判官 |
西村 和美 冨士 良宏 |
登録日 | 2000-06-09 |
登録番号 | 特許第3076653号(P3076653) |
権利者 | 旭化成株式会社 |
発明の名称 | スラリー液と液との二相分離方法及び装置 |
代理人 | 岡田 数彦 |