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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A63B 審判 全部申し立て 2項進歩性 A63B |
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管理番号 | 1056512 |
異議申立番号 | 異議2001-71252 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-07-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-04-23 |
確定日 | 2002-01-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3101846号「ツーピースゴルフボール」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3101846号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3101846号の請求項1に係る発明についての出願は、平成4年12月28日に特許出願され、平成12年8月25日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人菊地公明により特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年10月30日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 ア.訂正の内容 a.明細書の段落【0004】に記載の「【課題を解決するための手段】このため本発明は、中心部のコアとその外側のカバーの二層構造からなり、前記コアは、2.54mmの変形時のコンプレッション値が50kgf以下のコア材から構成されると共に前記カバーは引っ張り伸びが400%以上、50%モジュラスが1.5kgf/mm2以上のカバー材から構成され、2.54mm変形時のコンプレッション値が95kgf以下であるツーピースゴルフボールを要旨とするものである。」を「【課題を解決するための手段】このため本発明は、中心部のコアとその外側のカバーの二層構造からなり、前記コアは、2.54mmの変形時のコンプレッション値が50kgf以下のコア材から構成されると共に前記カバーは引っ張り伸びが400%以上、50%モジュラスが1.5kgf/mm2以上のカバー材から構成され、2.54mm変形時のコンプレッション値が95kgf以下であるツーピースゴルフボールを要旨とするものである。 そして、本発明におけるゴルフボールは、R&Aにより規格が統一され、1990年1月1日から我が国でも実施されたラージサイズのゴルフボール、すなわち、ボールの重量が、45.93g以下、直径が42.67mm以上のボールを対象としたものである。」に訂正する。 b.明細書の段落【0025】に記載の「*15 スイングロボットを用いてドライバー(ウッドクラブ1番)で43mm/秒のへッドスピードで打球したときの・・・・・」を「*15 スイングロボットを用いてドライバー(ウッドクラブ1番)で43m/秒のへッドスピードで打球したときの・・・・・」に訂正する。 c.明細書の段落【0026】に記載の「*16 スイングロボットを用いてドライバー(ウッドクラブ1番)で43mm/秒のヘッドスピードで打球したときの・・・・・」を「*16 スイングロボットを用いてドライバー(ウッドクラブ1番)で43m/秒のヘッドスピードで打球したときの・・・・・」に訂正する。 イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否 訂正事項aは、本件発明の対象とするゴルフボールをラージボールに明確化するものであって、本件特許明細書における実施例においては、ゴルフボールの直径が43.3mmと記載されており、本件特許発明で対象としているゴルフボールがラージサイズのゴルフボールであることは明らかであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項b、cについては、ヘッドスピードを「43mm/秒」から「43m/秒」に、すなわち、単位を「mm/秒」から「m/秒」に訂正するものであって、ゴルフボールの特性を「43mm/秒」のようなヘッドスピードで打球して測定しないこと、ゴルフクラブのヘッドスピードの単位として「m/秒」が一般的に用いられていることから、誤記の訂正を目的とするものである。 そして、上記訂正は願書に添付した明細書に記載された事項の範囲を越えるものとは認められないから、新規事項の追加に該当せず、また特許請求の範囲を実質的に拡張または変更するものではない。 ウ.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項および第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて ア.申立の理由の概要 申立人菊地公明は、甲第1ないし3号証を提出して、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、また、甲第2、3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号または同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、取り消されるべき旨主張している。 イ.本件発明 本件の請求項1に係る発明は、平成13年10月30日付けで提出された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、本件発明という。) 「【請求項1】中心部のコアとその外側のカバーの二層構造からなり、前記コアは、2.54mmの変形時のコンプレッション値が50kgf以下のコア材から構成されると共に前記カバーは引っ張り伸びが 400%以上、50%モジュラスが1.5kgf/mm2以上のカバー材から構成され、2.54mm変形時のコンプレッション値が95kgf 以下であるツーピースゴルフボール。」 ウ.甲第1ないし3号証記載の発明 甲第1号証(特開昭62ー170269号公報、以下、刊行物1という。)には、「下記表ー1の配合内容により11種類のゴム組成物を常法にしたがって調整した。得られたゴム組成物1〜11をそれぞれ160℃で20分間プレス成形し、直径36.4mmの球状ソリッド核(コア)とし、このソリッド核にカバーとしてアイオノマー(サーリン1605、1706(酸化チタン1%含有)を被覆し(厚さ約2.5mm)、2層構造ソリッドゴルフボールA〜Jを製造した。これらのゴルフボールの物性を下記表ー2に示す。表ー1及び表ー2から明らかなように、標準例1、3のような比較的低いコンプレッションの範囲では良好な反発弾性を示しているが、さらにコンプレッションを高めた配合の標準例2、4では著しく反発弾性が低下することが判る。これに対して、実施例5〜8においては、コンプレッションの増加と共に反発弾性の低下が少ないことが判り、70〜180の広いコンプレッション範囲にわたり、反発弾性の良好なゴルフボールが得られることを示している。また、耐久性においても非常に優れ、打撃時にこころよいフィーリング(音と感触)も得られる。」(4頁左上欄16行〜右上欄19行)と記載され、表ー2の標準例A、C、実施例E、比較例Iのコンプレッション(kg)は、それぞれ75、85、90、65であることが記載されている。 上記記載を総合すると、刊行物1には、中心部のコアとその外側のカバーの二層構造からなり、前記カバーはアイオノマー(サーリン1605、1706(酸化チタン1%含有)から構成され、(2.54mm変形時の)コンプレッション値が95kgf 以下であるであるゴルフボール(標準例A、C、実施例E、比較例I)が記載されているものと認められる。 甲第2号証(特開昭59ー57675号公報、以下、刊行物2という。)には、「表ー1の配合処方によるコア用組成物をモールド内で150℃、30分間加圧成形して直径37.1mmのコアを製造した。得られたコアを、表ー1の配合処方によるカバーを用い常法によって被覆してスモールサイズツーピースボールを製造した。得られたボールの物性を表ー1に示す。」(3頁左下欄2行〜8行)と記載され、表ー1の比較例1には、カバー組成(重量部)として、アイオノマー樹脂(サーリン1605)、100部、ボールの物性として、硬度(PGA)95としたゴルフボールが記載されている。 上記記載を総合すると、刊行物2には、中心部のコアとその外側のカバーの二層構造からなり、前記カバーはアイオノマー樹脂(サーリン1605)から構成され、(2.54mm変形時の)コンプレッション値が95kgfであるであるゴルフボール(比較例1)が記載されているものと認められる。 甲第3号証(特開昭60ー249979号公報、以下、刊行物3という。)には、「ヘッドスピードの遅いプレーヤーでは、コンプレッションの高いボールでも低いボールでも速度比は変わらないため球離れ等自分の好みのコンプレッションのボールを選べばよいが、一般にはヘッドスピードが遅ければ遅いほど、快い打撃時のフィーリングを得るためにはコンプレッションのより低いボールが要求される。」(2頁右上欄12行〜18行)、「下記の第1表に示される種々のゴム組成物(実施例1〜6、標準例1〜9、比較例1〜4)を調整した。〜この未加硫コンパウンドをツーピースゴルフボールの場合のコア用金型により140℃〜160℃で20分〜30分加硫し、固化させてコアとした。このコアを、射出成型法又は圧縮成型法等によりアイオノマー(ハイミラン1706:三井ポリケミカル社製)の熱可塑性エラストマーで厚さ1.8mmにカバーし、ツーピースゴルフボールを得た。」(3頁左下欄1行〜右下欄2行)と記載され、第1表の標準例1、2、7、実施例4、比較例1には、コアのコンプレッション(kg)が、それぞれ32、40、32、50、41のツーピースゴルフボールが記載されている。 上記記載を総合すると、刊行物3には、中心部のコアとその外側のカバーの二層構造からなり、前記コアは、(2.54mmの変形時の)コンプレッション値が50kgf以下のコア材から構成されるツーピースゴルフボール(第1表の標準例1、2、7、実施例4、比較例1)が記載されているものと認められる。 エ.対比・判断 本件発明と刊行物1ないし3に記載の発明を対比すると、刊行物1ないし3に記載の発明は、本件発明を特定する事項である、ツーピースボールにおいて「コアは、2.54mmの変形時のコンプレッション値が50kgf以下のコア材から構成されると共にカバーは引っ張り伸びが400%以上、50%モジュラスが1.5kgf/mm2以上のカバー材から構成され、2.54mm変形時のコンプレッション値が95kgf 以下である」ことを具備していない。 すなわち、刊行物1には、「下記表ー1の配合内容により11種類のゴム組成物を常法にしたがって調整した。得られたゴム組成物1〜11をそれぞれ160℃で20分間プレス成形し、直径36.4mmの球状ソリッド核(コア)とし、このソリッド核にカバーとしてアイオノマー(サーリン1605、1706(酸化チタン1%含有)を被覆し(厚さ約2.5mm)、2層構造ソリッドゴルフボールA〜Jを製造した。これらのゴルフボールの物性を下記表ー2に示す。」と記載され、表ー2の標準例A、C、実施例E、比較例Iのゴルフボールのコンプレッション(kg)は、それぞれ75、85、90、65であるから、2.54mm変形時のコンプレッション値が95kgf 以下であるツーピースゴルフボールが記載され、上記サーリン1605、1706は、本件明細書に記載のハイミラン1605、1706に各々相当するものであるから、本件特許明細書の表2の記載からは、サーリン1605を単独またはサーリン1605とサーリン1706との配合比を80/20としたカバー材は、本件発明のカバー材の物性値を満たし、サーリン1605とサーリン1706との配合比を50/50としたものでは、本件発明のカバー材の物性値を満たさないように、その配合比によってカバーの物性値は変動するものであるが、刊行物1に記載の表ー2には、カバーについての記載はなく、また、上記標準例A、C、実施例E、比較例Iと、本件明細書に記載のサーリン1605を単独またはサーリン1605とサーリン1706との配合比を80/20としたカバー材を用いた実施例とでは、コアの成分、組成が相違している以上、上記(サーリン1605、1706)の記載では、刊行物1に記載のカバーが、サーリン1605を単独で、または、本件発明のカバーの物性を具備するような配合比でサーリン1605とサーリン1706を混合して用いているものとは推認し得ない。 したがって、刊行物1に記載の発明は、コアは、2.54mmの変形時のコンプレッション値が50kgf以下のコア材から構成されると共にカバーは引っ張り伸びが400%以上、50%モジュラスが1.5kgf/mm2以上のカバー材から構成されているものとは認められない。 また、刊行物2に記載の発明(比較例1)は、カバー材としてサーリン1605を単独で用いているから、引張り伸びが400%以上、50%モジュラスが1.5kgf/mm2以上のカバー材から構成され、2.54mm変形時のコンプレッション値が95kgfであるツーピースゴルフボールが記載されているが、刊行物2に記載の発明(比較例1)は、表ー1に記載されるように、実施例1および比較例1〜6として、コアの組成を一定にし、各種アイオノマー樹脂を単独で或いは混合してカバーとして、これらカバーによる反撥弾性(初速度)および耐久性、特に低温耐久性を比較したものの比較例の一例であり、アイオノマー樹脂として、サーリン1605を用いた時に、コンプレッション値(硬度)が95であることを示したものであって、ここではコア、カバーおよびボールの三者の物性値を指標として、これらの物性値を特定することによって、耐久性(耐衝撃性)、反発弾性に優れ、かつソフトな打撃時のフィーリングを有するゴルフボールを得るという技術思想は存在しないし、刊行物3には、コンプレッション値を50kgf以下としたツーピースゴルフボールが記載され、「ヘッドスピードの遅いプレーヤーでは、コンプレッションの高いボールでも低いボールでも速度比は変わらないため球離れ等自分の好みのコンプレッションのボールを選べばよいが、一般にはヘッドスピードが遅ければ遅いほど、快い打撃時のフィーリングを得るためにはコンプレッションのより低いボールが要求される」と記載されているが、刊行物3に記載の発明は、70〜180のコンプレッション(コアコンプレッションで45〜150)に亘って、良好な反撥弾性と打撃時のフィーリングを有するようにしたゴルフボールであり、その実施例1〜6、標準例1〜9、比較例1〜4において、実施例4、標準例1、2、7および比較例1にコアコンプレッションが50kgf以下のものが例示されているものであり、コアコンプレッションが50kgf以下が好ましいとする記載はなく、本件発明は、ヘッドスピードの遅いプレーヤーを対象とするものでもないから、刊行物3に記載の発明から、50kgf以下のコアコンプレッションのコアを選択し、刊行物2に記載のゴルフボールのコアに適用することは当業者が容易に想到し得るものとは認められない。 そして、本件発明は、上記事項を具備することによって、明細書記載の顕著な効果を奏するものであるから、刊行物1に記載された発明とすることはできず、刊行物2および3に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 オ.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ツーピースゴルフボール (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 中心部のコアとその外側のカバーの二層構造からなり、前記コアは、2.54mmの変形時のコンプレッション値が50kgf以下のコア材から構成されると共に前記カバーは引っ張り伸びが400%以上、50%モジュラスが1.5kgf/mm2以上のカバー材から構成され、2.54mm変形時のコンプレッション値が95kgf以下であるツーピースゴルフボール。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、打撃時のフィーリングがソフトで、かつ耐久性(耐衝撃性)と反発性に優れたツーピースゴルフボールに関する。 【0002】 【従来の技術】 一般に使用されているゴルフボールには、糸巻きゴルフボールとツーピースゴルフボールが存在する。ツーピースゴルフボールは、ゴム組成物からなるコアを耐衝撃性、反発性に優れるイオン性エチレン系共重樹脂等のカバーで被覆して構成される。ツーピースゴルフボールは、飛距離が大きく、耐久性にも優れるので多くのゴルファーが使用している。しかし、打撃時のフィーリングが硬質なため、打球感については、糸巻きゴルフボールのソフトな打球感を好むゴルファーが多く、ソフトな打球感を有するツーピースゴルフボールの開発が望まれていた。また、ツーピースゴルフボールを軟質化するためにコアに軟質なコア材を使用した場合、打撃時の変形が大きいため耐久性が低下するという問題があった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、糸巻きゴルフボールの打球感に近いソフトな打球感を有し、かつ耐久性(耐衝撃性)、反発性に優れるツーピースゴルフボールを提供することを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】 このため本発明は、中心部のコアとその外側のカバーの二層構造からなり、前記コアは、2.54mmの変形時のコンプレッション値が50kgf以下のコア材から構成されると共に前記カバーは引っ張り伸びが400%以上、50%モジュラスが1.5kgf/mm2以上のカバー材から構成され、2.54mm変形時のコンプレッション値が95kgf以下であるツーピースゴルフボールを要旨とするものである。 そして、本発明におけるゴルフボールは、R&Aにより規格が統一され、1990年1月1日から我が国でも実施されたラージサイズのゴルフボール、すなわち、ボールの重量が、45.93g以下、直径が42.67mm以上のボールを対象としたものである。 【0005】 このように本発明では、コア材およびカバー材の物性を定めると共に、ツーピースゴルフボール自体のコンプレッション値を定めたために、打撃時のフィーリングがソフトとなり、さらに耐久性(耐衝撃性)および反発性を向上させることが可能となる。以下、本発明の構成につき詳しく説明する。 【0006】 (1)コア材。 コア材は、通常、ポリブタジエンゴムを主成分とし、さらに架橋剤と補強材から構成される。架橋剤としては、 (メタ)アクリル酸等のα、β-エチレン性不飽和カルボン酸、ビスマレイミド化合物、ウレタン(メタ)アクリレートが使用される。補強材として二酸化珪素、金属酸化物が使用される。 【0007】 本発明で使用するコア材は、その組成が限定されるものではないが、2.54mm変形時のコンプレッション値が50kgf以下、好ましくは30kgf〜50kgfである。コンプレッション値が50kgfを超えると、ソフトな打球感が得られない。コンプレッション値の調整は架橋剤量の増減で行うことができる。ここで、コンプレッション値とは、圧縮速度10mm/分にて2.54mm変形させるに要する力(kgf)をいう(以下、同じ)。 【0008】 本発明で使用するコア材を構成する組成物としては、具体的には以下の材料を用いることが望ましい。 (a)ポリブタジエンゴム。 シス-1,4結合を少なくとも40%以上、好ましくは90%以上有するポリブタジエンゴムである。シス-1,4結合が40%未満では、反発性が低下するので本発明のコア材に使用するには不適当である。上記ポリブタジエンゴムを単独で用いることが好ましいが、必要に応じて通常のポリブタジエンゴムまたは従来からソリードゴルフボール用基材ゴムとして用いられているゴム成分、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム等を配合することができる。 【0009】 (b)α、β-エチレン性不飽和カルボン酸。 不飽和カルボン酸は、例えばアクリル酸、メタアクリル酸である。その塩は、例えばアクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛である。 (c)ビスマレイミド化合物。 ビスマレイミド化合物としては、例えばN,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-トリメチレンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミドが挙げられる。 【0010】 (d)ウレタン(メタ)アクリレート。 ウレタン(メタ)アクリレートは、1種または2種以上のポリイソシアネートと水酸基を有するポリ(メタ)アクリレートを反応させて得られる(メタ)アクリレート基含有ウレタン化合物である。 (e)二酸化珪素。 【0011】 二酸化珪素としては、BET法による比表面積が160〜340m2/gで、かつ純度が99%以上であるものが良い。 (f)金属酸化物。 例えば、酸化亜鉛である。一般に市販されているものを用いれば良く、主にゴルフボールの重量調整に用いられる。 【0012】 コア材は、上記組成物に重合開始剤として有機過酸化物を添加し、プレス成形等の常法により得られる。 (2)カバー材。 本発明で使用するカバー材は、その組成が限定されるものではないが、引っ張り伸びが400%以上、好ましくは400%〜600%、50%モジュラスが1.5kgf/mm2以上、好ましくは1.5kgf/mm2〜3kgf/mm2である。イオン性エチレン系共重合体が得られる。 【0013】 引っ張り伸びが400%未満では必要な耐衝撃性が得られない。また、引っ張り伸びが400%以上であっても、50%モジュラスが1.5kgf/mm2未満では、耐衝撃性には優れるが反発性が劣る。本発明で使用するカバー材を構成する組成物としては、具体的には以下の材料を用いることが望ましい。 【0014】 (a)イオン性エチレン共重合体。 エチレン-不飽和カルボン酸共重合体と陽イオンを供給し得る金属化合物または、有機アミン類から得られる。製造方法には特に限定は無く、公知の方法が用いられ得る。例えば三井デュポンポリケミカル社製のハイミラン、HPR、Dupont社製のSurlyn、Exxon Chemical社製のIOTEC等である。これらのイオン性エチレン共重合体は単独で用いてもよく、また数種類を混合して用いても良い。 【0015】 ▲1▼ エチレン-不飽和カルボン酸共重合体。 例えば、エチレンと炭素数3〜6の不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、あるいは安息香酸ビニル等との共重合体である。 ▲2▼ 陽イオンを供給し得る金属化合物。 【0016】 アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等のギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素酸塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド等である。金属の種類としては、Na、Zn、Li、Mg、Mn、Ca、Co、k等である。 ▲3▼ アミン類。 ビスアミノアルキル基を有する芳香族または脂環状化合物である。例えば、m-キシレンジアミン、o-キシシレンジアミン、p-キシレンジアミン、またはこれらの水添物である1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,2-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサンなどが用いられる。 【0017】 (b)白色顔料。 白色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、鉛白、硫化亜鉛、硫酸バリウム、石膏、沈降性シリカ等を用いる。好ましくは、酸化チタンである。配合に際しては、100〜250℃の温度で溶融混練を行うと良い。なお、必要に応じて、酸化防止剤、安定剤、滑剤、着色剤等の添加剤を適宜添加しても良い。さらに具体的には、ハイミラン1605、ハイミラン1605とハイミラン1855のブレンド物、ハイミラン1605とハイミラン1705のブレンド物等が好適である。 【0018】 【実施例】 表1に示した配合処方(重量部表示)により、常法に従いコア用ゴム組成物(A〜D)を混合した。得られたゴム組成物をそれぞれ160℃で20分間プレス成形し、直径38.3mmの球状コア材を得た。表2に示した配合処方(重量部表示)により、2軸押し出し機を用い200℃の温度で溶融混練を行いカバー材(a〜f)を得た。カバー材の特性測定用サンプルは、得られたカバー材を170℃でプレス成形し、サンプルを得た。 【0019】 特性測定用のゴルフボールは、前述のコア材にカバー材の厚さが2.5mmになるように射出成形により被覆し、ゴルフボールを得た。各コア材、カバー材及びゴルフボールの特性を表3に示した。 【0020】 注) *1 BR01、ポリブタジエンゴム:シス1,4構造97%(日本合成ゴム社製)。 *2 ヘキサメチレンジイソシアネートとグリセリンジメタアクリレートの反応生成物:官能基数4。 【0021】 *3 N,N’-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(三井東圧社製)。 *4 AEROSIL200 (日本アエロジル社製)。 *5 ジクミルパーオキサイド。 【0022】 注) *6 ナトリウムイオン性エチレン系共重合体(三井デュポンポリケミカル社製)。 【0023】 *7 亜鉛イオン性エチレン系共重合体(三井デュポンポリケミカル社製)。 *8 亜鉛イオン性エチレン系共重合体(三井デュポンポリケミカル社製)。 *9 ナトリウムイオン性エチレン系共重合体(三井デュポンポリケミカル社製)。 *10 亜鉛イオン性エチレン系共重合体(三井デュポンポリケミカル社製)。 *11 タイペークCR-60-2、二酸化チタン:平均粒径0.21μm(石原産業社製)。 【0024】 注) *12 圧縮速度10mm/分にてゴルフボールを1/10インチ(2.54mm)変形させるに要する力(kgf)。 【0025】 *13 引張り試験時の破断伸び(%)。JIS K7113による。サンプル形状:プラスチック用JIS2号、引っ張り速度:100mm/分。 *14 上記測定時の50%変形時の応力値(kgf/mm2)。 *15 スイングロボットを用いてドライバー(ウッドクラブ1番)で43m/秒のヘッドスピードで打球したときのクラック発生までの打球回数で比較例1を100とした場合の相対値。 【0026】 *16 スイングロボットを用いてドライバー(ウッドクラブ1番)で43m/秒のヘッドスピードで打球したときのヘッドスピードに対するゴルフボールの初速比率で、比較例1を100とした場合の相対値。 *17 プロゴルファーによるウッドクラブ1番での打撃感。 表3から明らかなように、実施例1〜5は、従来例1〜2に比較しソフトな打撃時のフィーリングを有していることが分かる。また、比較例1のように引っ張り伸びが400%未満のカバー材を被覆した場合は、打撃時のフィーリングはソフトであるが、耐久性が劣ってしまう。一方、比較例2のように、単に引っ張り伸びが400%を超えるカバー材を被覆しても、そのモジュラス値が1.5kgf/mm2未満の場合は、耐久性は優れるが、反発性が劣ることが分かる。 【0027】 つまり、本発明のようなソフトな打球感を有するツーピースゴルフボールを得るために、低コンプレッションのコア材を使用した場合には、前述したような高伸び、高モジュラスのカバー材を被覆する必要があることが分かる。 【0028】 【発明の効果】 上述した如く、本発明のツーピースゴルフボールは、耐久性(耐衝撃性)、反発弾性に優れ、かつソフトな打撃時のフィーリングを有する。 |
訂正の要旨 |
特許第2745245号の特許明細書を本件訂正請求書に添付の訂正明細書のとおりに訂正する。即ち、特許請求の範囲の減縮を目的として下記(a)のとおり訂正し、明りょうでない記載の釈明を目的として下記aのとおり訂正し、誤記の訂正を目的として下記b、cのとおりり訂正する。 a.明細書の段落【0004】に記載の「【課題を解決するための手段】このため本発明は、中心部のコアとその外側のカバーの二層構造からなり、前記コアは、2.54mmの変形時のコンプレッション値が50kgf以下のコア材から構成されると共に前記カバーは引っ張り伸びが400%以上、50%モジュラスが1.5kgf/mm2以上のカバー材から構成され、2.54mm変形時のコンプレッション値が95kgf以下であるツーピースゴルフボールを要旨とするものである。」を「【課題を解決するための手段】このため本発明は、中心部のコアとその外側のカバーの二層構造からなり、前記コアは、2.54mmの変形時のコンプレッション値が50kgf以下のコア材から構成されると共に前記カバーは引っ張り伸びが400%以上、50%モジュラスが1.5kgf/mm2以上のカバー材から構成され、2.54mm変形時のコンプレッション値が95kgf以下であるツーピースゴルフボールを要旨とするものである。 そして、本発明におけるゴルフボールは、R&Aにより規格が統一され、1990年1月1日から我が国でも実施されたラージサイズのゴルフボール、すなわち、ボールの重量が、45.93g以下、直径が42.67mm以上のボールを対象としたものである。」に訂正する。 b.明細書の段落【0025】に記載の「*15 スイングロボットを用いてドライバー(ウッドクラブ1番)で43mm/秒のヘッドスピードで打球したときの・・・・・」を「*15 スイングロボットを用いてドライバー(ウッドクラブ1番)で43m/秒のヘッドスピードで打球したときの・・・・・」に訂正する。 c.明細書の段落【0026】に記載の「*16 スイングロボットを用いてドライバー(ウッドクラブ1番)で43mm/秒のヘッドスピードで打球したときの・・・・・」を「*16 スイングロボットを用いてドライバー(ウッドクラブ1番)で43m/秒のヘッドスピードで打球したときの・・・・・」に訂正する。 |
異議決定日 | 2001-11-30 |
出願番号 | 特願平4-349258 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(A63B)
P 1 651・ 113- YA (A63B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 神 悦彦 |
特許庁審判長 |
藤井 俊二 |
特許庁審判官 |
白樫 泰子 鈴木 寛治 |
登録日 | 2000-08-25 |
登録番号 | 特許第3101846号(P3101846) |
権利者 | 横浜ゴム株式会社 |
発明の名称 | ツーピースゴルフボール |
代理人 | 小川 信一 |
代理人 | 古関 宏 |
代理人 | 斎下 和彦 |
代理人 | 野口 賢照 |
代理人 | 野口 賢照 |
代理人 | 斎下 和彦 |
代理人 | 小川 信一 |