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審決分類 |
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 B01J 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B01J 審判 全部申し立て 2項進歩性 B01J |
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管理番号 | 1056669 |
異議申立番号 | 異議2000-72617 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-02-08 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-06-27 |
確定日 | 2002-01-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2996423号「炭化水素油の水素化処理用触媒」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2996423号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
〔一〕 本件特許は、平成4年(1992)7月14日に出願され(特願平4-209680号)、平成11年10月29日に特許権の設定の登録がされ(特許番号 第2996423号、 請求項数 2)、平成11年12月27日に特許掲載公報が発行されたものである。 平成12年6月27日付けで特許異議の申立てがあり、当審は、本件特許は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、同条同項の規定に違反して、また、同第29条第2項の規定に違反して、さらに、同第36条に規定する要件を満たしていない特許出願に対して、特許されたものであるから、特許を取り消すべきであるとの取消理由を通知し、特許権者は、意見書とともに訂正請求書を提出した。 〔二〕 訂正の成否 平成13年10月18日付けの訂正請求書による、本件特許の願書に添付された明細書(以下では、本件特許明細書という。)の訂正の請求について以下に判断する。 (1) 訂正事項 以下の訂正事項中、(α)2.訂正事項(2)は、特許請求の範囲を減縮することを目的とし、(β)28.訂正事項(6-2)は、誤記を訂正することを目的とし、(γ)他の訂正事項は、いずれも、明りょうでない記載を釈明することを目的としている。 1. 訂正事項(1) 発明の名称を「炭化水素油の水素化脱金属用触媒」と訂正する。 2. 訂正事項(2) 特許請求の範囲を次の通り訂正する(請求項1を減縮し、請求項2を削除する)。 「【請求項1】 ホウ素を含むアルミナ含有担体に、Ni、MoおよびCoを担持し、粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有する炭化水素油の水素化脱金属用触媒。」 3. 訂正事項(2-1) 明細書段落【0001】、【0007】中の「水素化処理用触媒」を「水素化脱金属用触媒」と訂正する。 4. 訂正事項(2-2) 明細書の段落【0008】の記載を 「【課題を解決するための手段および作用】 本発明者等は、脱金属活性の異なる種々の水素化処理用触媒について各種の解析を行ったところ、Ni、Co、Moを担持し、粉末X線回折パターンの2θ=27°に特徴的なピークを有する触媒が、高い脱金属活性を示すことを見い出し、本発明を完成した。」と訂正する。 5. 訂正事項(2-3) 明細書段落【0009】の記載を 「すなわち、本発明は、ホウ素を含むアルミナ含有担体に、Ni、MoおよびCoを担持し、粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有する炭化水素油の水素化脱金属用触媒(以下、「本発明の水素化処理用触媒」あるいは「本発明の触媒」等と記す)を要旨とする。」と訂正する。 6. 訂正事項(2-4) 明細書段落【0018】の記載を 「 このようにして得られるアルナミ含有担体は、水素化処理用触媒の活性成分であるMo、CoおよびNiを担持したときに、粉末X線回折パターンにおいて2θが約27°に特徴的なピークを有し、高い脱金属活性や大きい金属許容量を示す本発明の触媒となる。」と訂正する。 7. 訂正事項(2-5) 明細書段落【0019】の記載を 「 本発明の水素化処理用触媒は、前述したアルミナ含有担体に、MoとCoとNiを担持させたものであって、しかも粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有するものである。」と訂正する。 8. 訂正事項(3) 明細書段落【0010】の記載を 「 本発明の触媒におけるホウ素を含むアルミナ含有担体とは、アルミナに、触媒換算で約5〜40重量%のホウ素の酸化物を含有させたものを言う(以下、「アルミナ含有担体」と略すこともある)。 このアルミナとしては、γ-アルミナ、χ-アルミナ、η-アルミナのいずれか1種またはこれらの混合物が好適に使用できる。 混合物の場合の各種アルミナの混合割合は、特に限定されず、どのような割合としてもよい。」と訂正する。 9. 訂正事項(3-1) 明細書段落【0011】の記載を 「 ホウ素の酸化物の含有量が約5重量%未満であると、該酸化物を含有させる効果(脱金属効果等)が良好に発現せず、逆に約40重量%より多くても、該効果が飽和して不経済となる。」と訂正する。 10. 訂正事項(3-2) 明細書段落【0012】の記載を 「 ホウ素酸化物のアルミナへの含有方法は、後述するように、共沈法や混練法などのいずれの方法でもかまわないが、操作の容易性などの面から混練法が好ましい。」と訂正する。 11. 訂正事項(3-3) 明細書段落【0014】の記載を 「 この後、混練法によりホウ素酸化物を含有させればよい。 なお、ホウ素酸化物を共沈法により含有させる場合は、上記のアルミナ原料水溶液中に、ホウ素の水溶性化合物を混合しておけばよい。」と訂正する。 12. 訂正事項(3-4) 明細書段落【0029】の記載を 「 第3の成分は、上述のアルミナ含有担体に含まれているホウ素の酸化物とは異なり、ホウ素の酸化物が予め含有されているアルミナ含有担体に後から担持されるものであって、上述した水素化活性成分の助触媒として作用し、本発明の触媒の脱硫活性や脱窒素活性を向上させることができる。 なお、第3の成分の担持方法は、上述のMo、Co、Niと同様であってよく、第3の成分の担持時期は、Mo、Co、Niの後でも、前でも、同時でもよい。」と訂正する。 13. 訂正事項(4) 明細書段落【0020】の記載を 「 なお、本発明の触媒は、MoとCoと共に、Niを担持するものである。」と訂正する。 14. 訂正事項(4-1) 明細書段落【0021】の記載を 「 本発明の触媒は、次のようにして調製される。 アルミナ含有担体に、水素化活性成分として、Mo(以下、「VIA族」あるいは「VIA族金属」と記すことがある)とCoとNi(以下、「VIII族」あるいは「VIII族金属」と記すことがある)を担持する。これらの担持方法は、通常の含浸法、浸漬法などいずれの方法も採用できる。」と訂正する。 15. 訂正事項(4-2) 明細書【0022】の記載を 「 水素化活性成分を担持する順序は、MoとCoとNiのどれが先でも良いし、また同時でもよいが、CoとNiを先に担持させると、CoとNiがアルミナと複合酸化物を形成し、水素化処理用触媒の活性点として作用しないCoとNiが多くなってしまうため、Moを先に担持させるのが好ましい。」と訂正する。 16. 訂正事項(4-3) 明細書段落【0023】の記載を 「 Moは、水溶液となり得るもので有れば、どのようなものでも使用できるが、好ましくはパラモリブデン酸アンモニウム4水和物((NH4)6Mo7O24・4H2O)を用いるのが、コストが低いため経済的に有利であるばかりか、焼成時に発生するガスの安全性が高いという点から好ましい。」と訂正する。 17. 訂正事項(4-4) 明細書段落【0024】の記載を 「 Co、Niも、水溶液となり得るもので有れば、どのようなものでも使用できるが、好ましくは硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、塩化コバルト、塩化ニッケルなどが挙げられ、中でも硝酸コバルトや硝酸ニッケルが水素化活性が高いため好ましい。」と訂正する。 18. 訂正事項(4-5) 明細書段落【0025】の記載を 「 Mo、CoおよびNiの水素化活性成分は、本発明の触媒において、アルミナ含有担体に、酸化物および/または硫化物として担持されていることが好適である。 この理由は、Mo、CoおよびNiの水素化処理の活性種は硫化物であって、酸化物は容易に硫化物になるからである。 なお、酸化物は、後述する水素化活性成分を担持させた後の担体の焼成によって得られ、硫化物は後述する触媒の予備硫化処理によって得られる。」と訂正する。 19. 訂正事項(4-6) 明細書段落【0026】の記載を 「 水素化活性成分の担持量は、本発明の触媒において、触媒基準で、酸化物換算で、Moは、MoO3の酸化物として、約5〜30重量%、好ましくは約7〜25重量%、より好ましくは約10〜20重量%であり、CoとNiは、これらをMとした場合に、それぞれ、MxOyの酸化物として、約1〜10重量%、好ましくは約2〜8重量%である。」と訂正する。 20. 訂正事項(4-7) 明細書段落【0031】の記載を 「 また、本発明の触媒は、比表面積が約200〜400m2/g、全細孔容積が約0.4〜0.9mL、かさ密度が約0.5〜1.0g/mL、側面破壊強度が約0.8〜3.5kg/mm、平均細孔径が約80〜300Åであるのが好ましい。」と訂正する。 21. 訂正事項(4-8) 明細書段落【0032】の記載を 「 本発明の触媒は、炭化水素油の水素化反応に使用するのに先立ち、予備硫化を行うことが好ましい。 予備硫化は、炭化水素油の水素化反応塔における、本発明の触媒の使用(充填)箇所において行うことができる。 すなわち、本発明の触媒を、含硫炭化水素油(例えば、含硫留出油)と、温度約150〜400℃、圧力(全圧)約15〜150kg/cm2、液空間速度約0.3〜8.0hr-1で、約50〜1500L/L油比の水素含有ガスの存在下において接触させ、この処理の終了後、上記の含硫留出油を水素化処理対象原料油(含硫炭化水素油)に切替え、該原料油の脱硫に適当な運転条件に設定して、運転を開始する。」と訂正する。 22. 訂正事項(4-9) 明細書段落【0033】の記載を 「 本発明の触媒の予備硫化の方法としては、上記のような方法の他に、硫化水素、その他の硫黄化合物を、直接、本発明の触媒と接触させるか、あるいはこれらの硫黄化合物を適当な留出物に添加したものを、本発明の触媒と接触させる方法なども適用できる。」と訂正する。 23. 訂正事項(4-10) 明細書段落【0037】の記載を 「 本発明の水素化処理用触媒において、担持されているCo、Niは、助触媒として有効に機能しているが、炭化水素油の水素化処理に際して、炭化水素油からVなどの金属とともに除去されるNiは、担持されているNiとは異なり、助触媒効果を有さない。 これは、炭化水素油から除去されたNiは、担持されているNiとは異なった状態で触媒中に存在するためと考えられる。」と訂正する。 24. 訂正事項(4-11) 明細書段落【0038】の記載を 「 このようなNiは、助触媒効果を示さないのみならず、触媒中の細孔を閉塞して炭化水素油の触媒中への進行を阻害し、触媒活性を低下させる一因となるが、本発明の触媒の場合、炭化水素油から除去されたNi、その他の金属(硫黄化合物なども含む)がかなりの量で堆積しているにもかかわらず、炭化水素油の触媒中への進行は阻害されず、触媒活性低下がかなり抑制される。 この理由は必ずしも明らかではないが、アルミナとともに担体を構成しているホウ素酸化物が、炭化水素油の触媒中への進行促進に何らかの作用を発現していること、および該ホウ素酸化物が水素化活性成分の担持状態を特殊なものとしている(粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有するものとする)ことに起因するものと推測される。」と訂正する。 25. 訂正事項(5) 明細書【0035】の記載を 「 また、本発明の触媒を用いる場合の水素化処理条件は、原料油の種類、脱硫率などにより適宜選択することができるが、温度約300〜500℃、水素圧力約50〜200kg/cm2、(水素濃度約60〜100%の)水素含有ガス/油比約50〜10000L/L、液空間速度約0.1〜10hr-1とすることが好ましい。」と訂正する。 26. 訂正事項(6) 明細書【0044】(実施例2)の記載を削除する。 27. 訂正事項(6-1) 明細書段落【0045】の記載を 「実施例2 50Lのイオン交換水の中に、アルミン酸ナトリウム溶液(Al2O3として約23%含む)29.8kgと、硫酸アルミニウム溶液(Al2O3として約7.9%含む)38.0kgとをゆっくり滴下した。このとき、上記と同じアルミン酸ナトリウム溶液を加え、最終的に溶液のpHは11とした。 以上の操作により生成したアルミナスラリーをろ過し、ろ別された沈澱物(アルミナゲル)を、先ずアンモニアを加えてpHを9に調整した水で繰り返し洗浄し、次いで硝酸を加えてpHを6に調整した水で再び繰り返し洗浄して、アルミナケーキを得た。」と訂正する。 28. 訂正事項(6-2) 明細書段落【0048】の記載を 「 一方、硝酸ニッケル6水和物121.6gおよび硝酸コバルト121.4gを精製水に溶解し、全量を1050ccとした。この水溶液を、上記のモリブデンを担持させた触媒に注意深く滴下した。全ての水溶液を滴下させた後、1時間静置し、続いて空気で乾燥した。その後、480℃で4時間焼成して、ニッケルとコバルトとを担持させた。 得られた触媒の性状を表1に示し、実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを図2に示した。」と訂正する。 29. 訂正事項(6-3) 明細書段落【0052】の記載を 「 一方、硝酸ニッケル6水和物121.6gおよび硝酸コバルト121.4gを精製水に溶解し、全量を1000ccとした。この水溶液を、上記のモリブデンを担持した触媒に注意深く滴下した。全ての水溶液を滴下させた後、1時間静置し、続いて空気で乾燥した。その後、480℃で4時間焼成した。 得られた触媒の性状を表1に示し、実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを図3に示した。」と訂正する。 30. 訂正事項(6-4) 【0053】【表1】、【0058】【表3】及び【0062】【表5】中、実施例2を削除し、実施例3を実施例2とする。 31. 訂正事項(7) 明細書段落【0063】の記載を 「 【発明の効果】 以上詳述したように、ホウ素酸化物を含有させたアルミナ含有担体を使用した本発明の触媒によれば、従来のアルミナやアルミナ含有担体にVIA族金属やVIII族金属を担持させた水素化処理用触媒では得ることのできなかった、 (1)高い除去率で金属や硫黄化合物などを炭化水素油から除去することができる、 (2)これらの金属がかなりの量で堆積しているにもかかわらず、触媒活性が低下せず、良好な水素化処理を持続することができる、 と言う効果を奏することができる。」と訂正する。 32. 訂正事項(7-1) 明細書段落【0064】の記載を 「 したがって、本発明の触媒は、軽油、常圧残油、減圧軽油、減圧残油などの石油製品を、さらに軽質化したり、高品質化するための高次処理を良好に行うことができるため、上記のような従来の水素化処理用触媒に比して、重質炭化水素油の有効利用上、極めて有益な触媒である。」と訂正する。 33. 訂正事項(8) 明細書【図面の簡単な説明】の記載を 「【図面の簡単な説明】 【図1】 実施例1で得られた触媒の粉末X線回折パターンを示す図である。 【図2】 実施例2で得られた触媒の粉末X線回折パターンを示す図である。 【図3】 比較例1で得られた触媒の粉末X線回折パターンを示す図である。」と訂正する。 34. 訂正事項(8-1) 図面の【図2】を削除し、図番【図3】を【図2】と訂正し、図番【図4】を【図3】と訂正する。 (2) 訂正の要件 (2-1) 訂正事項(2)に関して (i) 特許請求の範囲の減縮 (イ) 訂正事項(2)中の「ホウ素を含むアルミナ含有担体」は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1(以下では、本件特許請求項1という。)の「アルミナ含有担体」のアルミナの含有物を「ホウ素」に限定するものである。 (ロ) 本件特許明細書の詳細な説明の段落【0019】には、 (α)「本発明の水素化処理用触媒は、前述した定義のアルミナ含有担体(以下、このアルミナ含有担体を単に「アルミナ含有担体」と言うこともある)に、MoとCoとを担持させたものであって、しかも粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有するもの(以下、「第1触媒と言う」)と、特定のピークを有するアルミナ含有担体に、周期律表第VIA族金属と第VIII族金属とを担持させたもの(以下、「第2触媒」と言う)との2種類がある。」と記載され、さらに、続けて、同段落【0020】には、 (β)「なお、第1触媒は、MoとCoの他に、Mo以外の周期律表第VIA族金属の1種以上および/またはCo以外の周期律表第VIII族金属の1種以上を担持していてもよい。また、第2触媒は、MoとCoのいずれか一方あるいは双方を担持していてもよいし、MoもCoも担持していなくてもよい。」と記載されているから、本件特許請求項1の「MoおよびCoを担持し」の記載は、本件特許明細書の段落【0019】及び同【0020】の記載からみて、「少なくともMoおよびCoを担持し」の意に解される。 そうすると、本特許請求項1の「MoおよびCoを担持し」の記載を「Ni、MoおよびCoを担持し」と訂正するのは、Mo及びCo以外の金属成分をNiに限定することによって、担持する触媒金属成分を「Ni、MoおよびCo」に限定するものである。 (ハ) 訂正事項(2)中の「炭化水素油の水素化脱金属触媒」は、本件特許請求項1の「炭化水素油の水素化処理触媒」による処理の内容を限定することによって、その触媒を限定するものである。 (ニ) 以上(イ)〜(ハ)によれば、本件訂正請求は、その訂正事項(2)の点で、特許請求の範囲を減縮することを目的としている。 (ii) 明細書に記載した事項の範囲内であること (イ) 本件特許明細書の段落【0008】には、 (α)「本発明者等は、脱金属活性の異なる種々の水素化処理用触媒について各種の解析を行ったところ、(i)Ni、Co、Moを担持した触媒の中で、粉末X線回折パターンの2θ=27°に特徴的なピークを有する触媒が、高い脱金属活性を示すこと、(ii)アルミナ担体の中で、Co、Moを担持したときに、粉末X線回折パターンの2θ=27°に特徴的なピークを有するものが、脱金属活性が高く、かつ金属許容量の大きい触媒の担体として優れていること、を見い出し、本発明を完成した。」 と記載され、また、本件特許明細書の段落【0010】には、 (β)「本発明の触媒におけるアルミナ含有担体とは、アルミナに、触媒換算で約5〜40重量%のアルミナ以外の無機酸化物を含有させたものを言う。このアルミナとしては、γ-アルミナ、χ-アルミナ、η-アルミナのいずれか1種またはこれらの混合物が好適に使用できる。混合物の場合の各種アルミナの混合割合は、特に限定されず、どのような割合としてもよい。」 と記載され、さらに、同段落【0011】には、 (γ)「これらアルミナ以外の無機酸化物(以下、「無機酸化物」と記す)としては、ホウ素、チタン、亜鉛などの酸化物があり、特にホウ素の酸化物が望ましい。このような無機酸化物の含有量が約5重量%未満であると、該無機酸化物を含有させる効果(脱金属効果等)が良好に発現せず、逆に約40重量%より多くても、該効果が飽和して不経済となる。」 と記載されている。 (ロ) 本件特許明細書の、上記(i)(ロ)及び上記(イ)に指摘した記載によれば、本件訂正請求による訂正は、訂正事項(2)の点で、本件特許明細書に記載した事項の範囲内でする訂正である。 (iii) 特許請求の範囲の拡張・変更 本件特許明細書の、上記(i)(ロ)及び上記(ii)(イ)に指摘した記載によれば、本件訂正請求による訂正は、訂正事項(2)の点で、特許請求の範囲を実質上拡張するものでもなく、変更するものでもない。 (2-2) 訂正事項(6-2)に関して 本件特許明細書の段落【0048】によれば、「上記のモリブデンを担持させた触媒」に硝酸ニッケル及び硝酸コバルトの水溶液を滴下しているのであるから、「全ての水溶液を滴下させた後、」「その後、480℃で4時間焼成」することによって、「ニッケルとモリブデンとを担持させた」というのは、不自然な記載であり、「ニッケルとコバルトを担持させた」の誤記であることは、明らかである。 そうすると、本件訂正請求による訂正は、訂正事項(6-2)の点で、誤記を訂正することを目的としている。ただし、図3を図2に訂正するのは、明りょうでない記載を釈明することを目的としている。 また、本件訂正請求による訂正は、訂正事項(6-2)の点で、本件特許の願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内でする訂正であり、特許請求の範囲を実質上拡張するものでもなく、変更するものでもない。 (2-3) 訂正事項(2)及び訂正事項(6-2)以外の訂正事項に関して 本件訂正請求は、これらの訂正事項の点で、訂正事項(2)に対応して、本件特許明細書の明りょうでない記載を釈明することを目的としており、本件特許明細書に記載した事項の範囲内でする訂正であり、また、特許請求の範囲を実質上拡張するものでもなく、変更するものでもない。 (3) したがって、本件訂正請求による訂正は、適法な訂正であるから、本件訂正請求を認める。 以下では、本件訂正請求によって訂正された本件特許明細書を単に本件特許明細書という。 〔三〕 本件特許明細書の記載 (イ) 特許請求の範囲 「【請求項1】 ホウ素を含むアルミナ含有体に、Ni、MoおよびCoを担持し、粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有する炭化水素油の水素化脱金属用触媒。」 (ロ) 【0001】、【産業上の利用分野】 「本発明は、炭化水素油の水素化脱金属用触媒に関し、特に、脱金属活性に優れた水素化脱金属用触媒に関する。」 (ハ) 【0008】、【課題を解決するための手段および作用】の一部 「本発明者等は、脱金属活性の異なる種々の水素化処理用触媒について各種の解析を行ったところ、Ni、Co、Moを担持し、粉末X線回折パターンの2θ=27°に特徴的なピークを有する触媒が、高い脱金属活性を示すことを見い出し、本発明を完成した。」 (ニ) 【0010】、【課題を解決するための手段および作用】の一部 「本発明の触媒におけるホウ素を含むアルミナ含有担体とは、アルミナに、触媒換算で約5〜40重量%のホウ素の酸化物を含有させたものを言う(以下、「アルミナ含有担体」と略すこともある)。このアルミナとしては、γ-アルミナ、χ-アルミナ、η-アルミナのいずれか1種またはこれらの混合物が好適に使用できる。 混合物の場合の各種アルミナの混合割合は、特に限定されず、どのような割合としてもよい。」 (ホ) 【0011】、【課題を解決するための手段および作用】の一部 「ホウ素の酸化物の含有量が約5重量%未満であると、該酸化物を含有させる効果(脱金属効果等)が良好に発現せず、逆に約40重量%より多くても、該効果が飽和して不経済となる。」 (ヘ) 【0016】、【課題を解決するための手段および作用】の一部 「これらの成型物は、約100〜140℃で数時間乾燥し、さらに約200〜700℃で数時間焼成して、本発明の触媒におけるアルミナ含有担体に仕上げられる。」 (ト) 【0031】、【課題を解決するための手段および作用】の一部 「また、本発明の触媒は、比表面積が約200〜400m2/g、全細孔容積が約0.4〜0.9mL、かさ密度が約0.5〜1.0g/mL、側面破壊強度が約0.8〜3.5kg/mm、平均細孔径が約80〜300Åであるのが好ましい。」 (チ) 【0038】、【課題を解決するための手段および作用】の一部 「このようなNiは、助触媒効果を示さないのみならず、触媒中の細孔を閉塞して炭化水素油の触媒中への進行を阻害し、触媒活性を低下させる一因となるが、本発明の触媒の場合、炭化水素油から除去されたNi、その他の金属(硫黄化合物なども含む)がかなりの量で堆積しているにもかかわらず、炭化水素油の触媒中への進行は阻害されず、触媒活性低下がかなり抑制される。 この理由は必ずしも明らかではないが、アルミナとともに担体を構成しているホウ素酸化物が、炭化水素油の触媒中への進行促進に何らかの作用を発現していること、および該ホウ素酸化物が水素化活性成分の担持状態を特殊なものとしている(粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有するものとする)ことに起因するものと推測される。」 (リ) 実施例1の概略 アルミン酸ナトリウム水溶液と硫酸アルミニウム水溶液を混合してpH11として、アルミナゲルを製造し、このアルミナゲルをアンモニアでpH9とし、次いで硝酸でpH6として、アルミナケーキを製造した。このアルミナケーキを噴霧乾燥してアルミナ粉末とした後、ホウ酸を加え、混練し、成型後770℃で4時間焼成して、アルミナ含有担体を製造した。 上記アルミナ含有担体にパラモリブデン酸アンモニウム水溶液を滴下し、乾燥後、480℃で4時間焼成して、Mo担持体を製造した。 上記Mo担持体(触媒)に硝酸ニッケルと硝酸コバルトとの混合水溶液を滴下し、乾燥後、480℃で4時間焼成して、Mo-Ni-Co担持体を製造した。 この担持体のX線回折パターンは、図1のとおりである。 (ヌ) 実施例2の概略 実施例1とほぼ同様にして、アルミナ含有担体を製造した。 上記アルミナ含有担体にパラモリブデン酸アンモニウム水溶液を滴下し、焼成して、Moを担持させた。 上記Mo担持体に硝酸ニッケルと硝酸コバルトとの混合水溶液を滴下し、触媒を製造した。 (ル) 表3の概略 比較例1の触媒を100としたときの実施例1、2の触媒の相対脱硫活性及び相対脱金属活性 実施例番号 1 2 相対脱硫活性 95 85 相対脱金属活性 125 137 (ヲ) 表5の概略 相対金属許容量(脱硫率20%のときの触媒基準金属堆積量)の比較(比較例1の触媒を100とする) 実施例番号 1 2 相対金属許容量 118 132 (ワ) 【0063】、【発明の効果】の一部 「以上詳述したように、ホウ素酸化物を含有させたアルミナ含有担体を使用した本発明の触媒によれば、従来のアルミナやアルミナ含有担体にVIA族金属やVIII族金属を担持させた水素化処理用触媒では得ることのできなかった、 (1)高い除去率で金属や硫黄化合物などを炭化水素油から除去することができる、 (2)これらの金属がかなりの量で堆積しているにもかかわらず、触媒活性が低下せず、良好な水素化処理を持続することができる、 と言う効果を奏することができる。」 (カ) 【0064】、【発明の効果】の一部 「したがって、本発明の触媒は、軽油、常圧残油、減圧軽油、減圧残油などの石油製品を、さらに軽質化したり、高品質化するための高次処理を良好に行うことができるため、上記のような従来の水素化処理用触媒に比して、重質炭化水素油の有効利用上、極めて有益な触媒である。」 〔四〕 特許を維持する理由 〔四〕A. 引例の記載 (1) 本件特許異議申立人が提示した甲第1号証(特公昭50-18475号公報)(以下では、引例1という。) (イ) 特許請求の範囲 「1 実質的にベーマイトゲルまたはベーマイトであるアルミナゲルをあらかじめ450〜700℃で1〜5時間焼成し、さらに400〜600℃で脱気したものが非水溶媒中でベンゼンアゾジフェニルアミン等の指示薬に対し酸性を示すアルミナにベーマイトゲルの時点でアルカリ土類金属酸化物1〜30%(重量)を添加することを特徴とする炭化水素残渣油の水素化脱硫触媒用アルミナ担体の製法。 2 実質的にベーマイトゲル又はベーマイトであるアルミナゲルをあらかじめ450〜700℃で1〜5時間焼成し、さらに400〜600℃で脱気したものが非水溶媒中でベンゼンジフェニルアミン等の指示薬に対し酸性を示すアルミナにベーマイトゲルの時点でアルカリ土類金属酸化物1〜30%(重量)を添加したアルミナを担体とし、周期律表第4族、第6族又は第8族に属する金属より撰ばれた1種又は2種以上の金属を担持せしめることを特徴とする炭化水素残渣油の水素化脱硫触媒の製法。」 (ロ) 第1図、第2図の概略 第1図は、引例1の発明で使用するプソイドベーマイトであるアルミナゲルのX線回折図であり、ほぼ27°にX線強度のピークがみられる。 第2図は、引例1の発明で使用する実質的にベーマイトであるアルミナゲルのX線回折図であり、ほぼ27°にX線強度のピークがみられる。 (ハ) 2欄、4〜9行 「 本発明は水素化脱硫触媒用担体及び水素化脱硫触媒の製法に関するものである。更に詳しくは、触媒被毒物質を多量に含有する炭化水素油特に残渣油の脱硫を行うに当り、水素加圧下で高活性を示す水素化脱硫触媒用担体及び水素化脱硫触媒の製法に関するものである。」 (ニ) 3欄、5〜11行 「水素化脱硫触媒は使用後の触媒上の堆積物特に触媒の活性低下の一因となるカーボン類の堆積量がアルミナを単独に担体としたものに比較して極めて少なく、且つ従来の市販触媒よりは著く高活性を示し、しかも使用経時による活性の低下が極めて少ないことを見出して本発明に到達したものである。」 (ホ) 3欄、12〜39行 「 (α)本発明でいう「実質的にベーマイトであるアルミナゲル」は粉砕したアルミニウムアルコレートをpH7〜9の範囲に調整された温度40〜100℃の温水又はアルコール類との混合溶液で加水分解して得られたアルミニウムヒドロゲルを熟成することなしに直ちにアルコール類で洗浄して得たアルミナゲルである。かかるアルミナゲルは示性式AlO(OH)で示されるベーマイト、またはこのベーマイト結晶中に過剰の水が入り理論量より含水量が多くなったベーマイトもしくはベーマイトゲルと称せられることもあるアルミナゲルであって、第1図及び第2図に示すX線回折図よりプソイドベーマイト又はベーマイトの結晶構造を示すものであることがわかった。(β)実質的にベーマイトであるアルミナゲルの焼成は、常法により成型したアルミナゲルを予じめ450〜700℃において1〜5時間加熱することによって行われる。焼成時間は焼成温度によっても幾分変更できるが、焼成条件のうち温度は特に重要であり、700℃以上で焼成すると結晶構造が変化し、450℃以下で焼成したのでは脱水が不完全となり、これらを担体として触媒を製造した場合はいずれの場合も炭化水素油特に残渣油の水素化脱硫触媒としての性能が悪い。 (γ) 本発明のアルミナ担体はまた上記特定の結晶構造を示すアルミナゲルを特定の条件下で焼成したものであると同時に酸性度の強いものでなければならない。」 〔当審注: ただし、上記中、(α)〜(γ)の区分記号は、当審が加入したものである。〕 (ヘ) 4欄41行〜5欄10行 「 アルカリ土類金属酸化物の添加による効果についてはその理由は明確ではないが、本発明で使用する実質的にベーマイトであるアルミナゲルを焼成してγ-アルミナを担体とした場合、その担体はPka1.5乃至それ以下の強酸性アルミナであることからアルミナゲルの時点でアルカリ土類金属の水和物を添加することにより担体焼成時にアルミナの有する酸性点が部分的に中和され、触媒上の分解活性点として作用する点が弱まりその結果原料油の初期における触媒上での分解反応が抑制され、脱硫活性の初期低下をまねく触媒上の炭素の生成が減少するものと思考される。従って脱硫活性は向上し、同時に活性の経時的変化に対する低下が少なくなる。」 (ト) 5欄18〜40行 「 (α)上記特定のアルミナ担体に担持せしめる金属触媒成分としてはいわゆる脱硫活性をもつ金属例えば周期律表第4族、第6族又は第8族に属する金属より撰ばれた1種又は2種以上の金属例えばクロム、モリブデン、タングテン、チタン、ジルコニウム、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、バナジウム等があげられ、コバルト-モリブデン、ニッケル-コバルト-モリブデン、モリブデン-ニッケル、タングステン-ニッケル等が適当である。 (β)これら金属成分のアルミナ担体への担持方法、担持した触媒の乾燥方法、焼成方法、活性化方法はいづれも常法により行なうことができる。担持方法としては、例えばアルミナ担体を上記金属塩化物、水酸化物、硫化物等の水溶液にねりこむ方法、浸漬する方法またはアルミナ担体に水溶液を吹きつける方法等がある。浸漬法には一液浸漬法、多液浸漬法があるが、一液浸漬法が簡便で能率的である。 (γ)乾燥、焼成方法は例えば比較的低温で乾燥した後400〜650℃好ましくは450〜550℃で3〜4時間加熱焼成する。乾燥は焼成と同時に行なうこともできる。」 〔ただし、上記中、(α)〜(γ)の当審が加入したものである。また、Ni-Co-Mo系触媒の実施例はない。〕 (チ) なお、引例2には、引例2の触媒の脱金属活性及びX線回折パターンについては記載されていない。 (2) 本件特許異議申立人が提示した甲第2号証(特開昭58-112049号公報)(以下では、引例2という。) (イ) 特許請求の範囲 「1. アルミナ-ボリヤからなる担体にコバルト成分とモリブデン成分を担持させてなる触媒であって、該触媒の細孔特性が下記の(A)、(B)両条件を満足することを特徴とする減圧軽油水素化処理触媒組成物。 (A) 窒素ガス吸着法で測定した場合、直径が0〜600Åの範囲にある細孔の平均直径が70〜100Åであり、直径70〜100Åの細孔が占める容積が直径0〜600Åの細孔が占める容積の少なくとも70%であり、直径0〜60Åの細孔が占める容積が直径0〜600Åの細孔が占める容積の20%以下であること。 (B) 水銀圧入法で測定した場合、直径が62〜600Åの範囲にある細孔の平均直径が70〜100Åであり、平均直径±10Åの細孔が占める容積が直径62〜600Åの細孔が占める容積の少なくとも60%を占め、平均直径+10Å以上の細孔が占める容積が直径62〜600Åの細孔が占める容積15%以下であること。 2. アルミナ-ボリヤ中のボリヤが、B2O3として5〜30wt%である特許請求の範囲第1項記載の触媒組成物。 3. モリブデン成分の担持量が金属として触媒組成物の5〜24wt%であり、コバルト成分の担持量が金属として触媒組成物の0.5〜8wt%である特許請求の範囲第1項記載の触媒組成物。」 以下では、上記第3項の構成の触媒組成物の発明を引例2発明という。 (ロ) 1頁右下欄、下から6行〜末行 「 本発明は既存の減圧軽油水素化脱硫反応装置及び反応条件を使用して減圧軽油などの重質油を脱硫しながら、ガス状成分及びナフサ留分の収率を増加させることなく、灯軽油を効率よく得るのに適した水素化処理触媒に関するものである。」 (ハ) 2頁左下欄、1〜12行 「 固体酸担体中でもアルミナ-ボリヤが特に優れている理由については未だ不明の点が多いが、ブレンステッド酸(B酸)を多量に保有しているアルミナ-ボリヤの固体酸性質及びアルミナ-ボリヤと担持活性金属成分との相互作用による水素化活性の増大などが減圧軽油の分解及び脱硫に極めて有効に働いていると推察される。そして触媒の細孔特性について言えば、本発明では細孔分布が適正にコントロールされているため、原料油の過分解が抑制され、その結果として灯軽油などの中間留分の生成量が増大するものと推定される。」 (ニ) 3頁左下欄、8〜10行 「 こうして得られた担体には水素化金属としてモリブデンとコバルトがそれぞれ金属酸化物または金属硫化物の形で担持される。」 (ホ) 実施例の概略 (a) アルミン酸ソーダ溶液にグルコン酸水溶液を加え、次いで硫酸アルミニウム溶液を添加して、スラリーのpHを7.0とし、擬ベーマイトを含有するアルミナ水和物をつくった。pHを10.60に調整し、95℃で加熱攪拌し、擬ベーマイトの結晶子径を成長させた。このアルミナ水和物から捏和物(X)を得た(3頁右下欄〜4頁左上欄)。 (b) 水1.33lに硼酸534gを加えた加温水溶液と上記捏和物(X)5Kgとを混合し、捏和した後、押し出し品とし、空気中110℃で16時間乾燥後550℃で3時間焼成して酸化硼素15wt%の触媒担体を得た〔(2)触媒Aの製造の項(4頁右上欄)〕。 (c) 上記(b)の担体に酸化モリブデン170g、炭酸コバルト75gを含む水溶液を含浸し、250℃まで徐々に昇温、乾燥し、次いで550℃で1時間焼成して、触媒Aを得た。この触媒のモリブデン及びコバルト担持量はそれぞれ金属酸化物として14.0wt%、3.7wt%であった。 (ヘ) なお、引例2には、触媒の脱金属活性については記載されていない。また、上記担体及び触媒のX線回折パターンも記載されていない。 (3) 斯波忠夫ら著、「触媒化学概論 新版」(昭和51年10月15日、共立出版株式会社発行)(以下では、引例3という。) (イ) Al(OH)3の加熱分解温度が低い場合、Al2O3には、κ、θ、δ、γ、η、χ、ρの7種の変態が知られている(274頁)。 (ロ) γ-Al2O3はベーマイトを500℃で熱分解するとき得られる(274頁)。 (ハ) η-Al2O3はAl(OH)3を真空中300℃以上に加熱すると得られる。また、バイアライトを空気中で250℃、16時間、次に500℃、24時間加熱脱水しても得られる。また、ゲル状のAl(OH)3を100℃で乾燥後、400℃以上に加熱分解しても得られる。 (ニ) 塩を含まないアルミナゲルは、Al(OC3H7)3を加水分解して、水洗、乾燥、焼成して得られる(275頁) (ホ) (275頁) 「 以上各種方法で得られるAl2O3の表面積は200〜300m2/gにも達する。これを500℃で真空乾燥すると酸性が現われるが、微量の水を与えれば再び失われる。このようにAl2O3の性質は水の有無によって大きく変わる。」 (ヘ) (275〜276頁) 「 Al2O3にホウ酸を含浸させ400℃に焼成するとAl2O3-B2O3触媒がえられる。この触媒は固体酸性を示し、固体酸に共通な諸反応の触媒となる。B2O310〜20wt%が良い。」 〔四〕B. 判断 (1) 引例1に記載されている発明の認定 引例1の特許請求の範囲の第2項に記載されている炭化水素残渣油の水素化脱硫触媒の製法の触媒は、下記のとおりである。 「 実質的にベーマイトゲル又はベーマイトであるアルミナゲルをあらかじめ450〜700℃で1〜5時間焼成し、さらに400〜600℃で脱気したものが非水溶媒中でベンゼンジフェニルアミン等の指示薬に対し酸性を示すアルミナにベーマイトゲルの時点でアルカリ土類金属酸化物1〜30%(重量)を添加したアルミナを担体とし、周期律表第4族、第6族又は第8族に属する金属より撰ばれた1種又は2種以上の金属を担持せしめたことを特徴とする炭化水素残渣油の水素化脱硫触媒。」 以下では、上記触媒の発明を引例1発明という。 (2) 本件特許発明と引例1発明との比較 (2-1) 一致点 (イ) いずれの発明も、炭化水素油の水素化処理触媒の発明である。 (ロ) いずれの発明も、アルミナを主要成分とする担体を用いる担持触媒である。 (2-2) 相違点 (イ) 本件特許発明の触媒は、炭化水素油の水素化脱金属触媒であるのに対して、引例1発明の触媒は、炭化水素残渣油の水素化脱硫触媒である。 以下では、上記相違点を相違点1という。 (ロ) 本件特許発明の触媒の触媒成分は、Ni、Mo及びCoであるのに対して、引例1発明の触媒の触媒成分は、「第6族又は第8族に属する金属より撰ばれた1種又は2種以上の金属」である。 以下では、上記相違点を相違点2という。 (ハ) 本件特許発明の触媒の担体は、「ホウ素を含むアルミナ含有体」であるのに対して、引例1発明の触媒の担体は、「アルカリ土類金属酸化物1〜30%(重量)を添加したアルミナ」である。 以下では、上記相違点を相違点3という。 (ニ) 本件特許発明の触媒は、「粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有する」のに対して、少なくとも引例1の記載からは、引例1発明の触媒の粉末X線回折パターンは不明である。 以下では、上記相違点を相違点4という。 (3) 相違点の検討 (イ) 相違点1について 引例1には、引例1発明の触媒の脱金属活性については、格別具体的にはなにも説明されていない。 引例1発明の触媒は、「触媒被毒物質を多量に含有する炭化水素油特に残渣油の脱硫」に有効で、「活性低下の一因となるカーボン類の堆積量が」「極めて少な」いとされている{上記〔四〕A.(1)(ハ)、(ニ)参照}ところ、この触媒被毒物質が炭化水素残渣油中の金属成分であり、この金属成分が引例1発明の触媒の脱金属作用によるものかどうかは不明であるから、上記記載を考慮しても、本件特許発明の触媒の優れた脱金属活性を予想できるとはいえない。 (ロ) 相違点2〜相違点4について 引例1発明の触媒の触媒金属成分として「ニッケル-コバルト-モリブデン」を用いる場合{上記〔四〕A.(1)(ト)参照。}、本件特許発明の触媒と引例1発明の触媒との物質組成上の相違は、もっぱら触媒の担体の物質組成の相違に帰着し、相違点2は実質的な相違ではない(ただし、引例1には、触媒金属成分として「ニッケル-コバルト-モリブデン」を使用した実施例はない。)が、相違点3及び相違点4によれば、触媒の担体は、相違している。 本件特許発明の触媒は、ホウ素をアルミナに添加するという工夫(相違点3の工夫)によって、予想外の脱金属活性を有するようになったと認められる{上記〔三〕(チ)参照}。 なお、引例1の記載{上記〔四〕A.(1)(ロ)参照}及び引例3の一般的な記載によれば、本件特許発明の触媒の「2θ=27°に特徴的なピーク」はそのボリア-アルミナ担体(このアルミナ自体は特別のものとは認められない。)に由来する可能性があるが、本件特許異議申立人は、この可能性が現実に起きていることを認めるに足る具体的な資料を提示していない〔ボリア(アルカリ土類とは一般的性質を異にする)をアルミナにくみこむことがアルミナの構造にどのように影響するのか、必ずしも明らかではないし、また、本件特許異議申立人は、むしろ、上記ピークが触媒では消失する可能性があることを認めてもいる。〕から、相違点4は、本件特許発明の触媒に特有の物質構造に由来するものとするほかはない。 (ハ) ところで、引例2発明{上記〔四〕A.(2)(イ)参照}の触媒は、「アルミナ-ボリヤからなる担体にコバルト成分とモリブデン成分を担持させてなる減圧軽油水素化処理触媒組成物」であるから、その担体は、本件特許発明の触媒の担体と同一である。 しかしながら、引例2には、引例2発明の触媒が脱金属活性を有することを示唆する具体的な記載はなく、また、引例2発明の触媒の細孔特性はその脱硫活性を高めるために特別に工夫されているから、引例1発明と引例2発明とを組み合わせたとしても、引例1発明単独の場合と同様に、本件特許発明の触媒が炭化水素油の水素化脱金属作用に優れていることを予想することはできない。 (ニ) そうすると、本件特許発明は、引例1及び引例2に記載されている発明ではなく、また、引例3の記載を参酌しても、引例1発明及び引例2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとすることはできない。 (4) 本件特許異議申立人は、「2θ=27°に特徴的なピークを有する」という本件特許発明の構成上の要件は明りょうでないと主張しているが、この記載自体が明りょうであることは明らかであり、また、本件特許明細書に記載された本件特許発明の実施例によって、この構成要件をもつ本件特許発明が容易に実施でき、かつ、炭化水素油の水素化処理において、所望の脱金属効果を奏すると認めることができる。 そうすると、本件特許が特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を備えていない出願に対して特許されたものともいえない。 (5) 当審は、他に、本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、結論のとおり、決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 炭化水素油の水素化脱金属用触媒 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ホウ素を含むアルミナ含有担体に、Ni、MoおよびCoを担持し、粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有する炭化水素油の水素化脱金属用触媒。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、炭化水素油の水素化脱金属用触媒に関し、特に、脱金属活性に優れた水素化脱金属用触媒に関する。 【0002】 【従来の技術および発明が解決しようとする課題】 原油を常圧蒸留または減圧蒸留して得られる軽油、常圧残油、減圧軽油、減圧残油などの石油製品には多くの硫黄化合物が含まれており、その含有量は原油の種類によって異なる。 これらの炭化水素油成分を燃焼に供した場合、硫黄化合物などの有害物質を発生し、燃焼炉を腐蝕し、さらには大気を汚染する原因となる。 【0003】 また、上記の各種石油製品の軽質化や高品質化などの高次処理時には、これらの石油製品に含まれる硫黄化合物や窒素化合物、さらには金属が、触媒を不活性化させ、重質炭化水素油を有効利用するための操作を妨げる大きな原因となっている。 【0004】 このため、従来から、多量の硫黄化合物や金属を含有する炭化水素油を、周期律表第VIA族金属のMo、Cr、Wや、第VIII族金属のFe、Ni、Co、Ptなどの金属成分を、アルミナあるいはアルミナ含有担体に担持させた触媒と、水素加圧下で接触させて、硫黄化合物中の硫黄や金属を除去する操作が行われている。 しかし、この触媒では、硫黄化合物の除去は充分であっても、金属の除去が充分に行われないことがある。 【0005】 また、常圧残油、減圧残油、減圧留出油の水素化処理においては、特公昭49-18763号公報に示されるように、細孔分布の異なる複数の触媒を用いることが効果的であるとされている。 すなわち、固定床の反応器において、入り口側に大孔径を有する金属許容量の大きな触媒を配し、次いで中程度の細孔径と中程度の脱硫活性を有する触媒を配し、出口側に小細孔径で高い脱硫性能を有する触媒を配する技法である。 この技法は、反応器入り口側で処理油中に含まれる金属を取り除き、出口側の金属による細孔閉塞を起こし易い高脱硫活性触媒を保護する考え方に基づいている。 【0006】 しかし、この技法によっても、未だ、充分満足する結果は得られていない。この理由は、次のように考えられる。 すなわち、大細孔径の触媒は、大きな細孔容積を有する結果として金属を堆積する能力が高いと考えられる。しかし、金属を堆積する能力が高くても、処理油中より金属を取り除く能力(脱金属活性)が高くなければ、その性能が充分に高いとは言えない。 【0007】 本発明は、以上の諸点を考慮し、炭化水素油中に含まれる金属を取り除く能力が高く、しかも金属許容量がより大きい、炭化水素油の水素化脱金属用触媒を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段および作用】 本発明者等は、脱金属活性の異なる種々の水素化処理用触媒について各種の解析を行ったところ、Ni、Co、Moを担持し、粉末X線回折パターンの2θ=27°に特徴的なピークを有する触媒が、高い脱金属活性を示すことを見い出し、本発明を完成した。 【0009】 すなわち、本発明は、ホウ素を含むアルミナ含有担体に、Ni、MoおよびCoを担持し、粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有する炭化水素油の水素化脱金属用触媒(以下、「本発明の水素化処理用触媒」あるいは「本発明の触媒」等と記す)を要旨とする。 【0010】 本発明の触媒におけるホウ素を含むアルミナ含有担体とは、アルミナに、触媒換算で約5〜40重量%のホウ素の酸化物を含有させたものを言う(以下、「アルミナ含有担体」と略すこともある)。 このアルミナとしては、γ-アルミナ、χ-アルミナ、η-アルミナのいずれか1種またはこれらの混合物が好適に使用できる。 混合物の場合の各種アルミナの混合割合は、特に限定されず、どのような割合としてもよい。 【0011】 ホウ素の酸化物の含有量が約5重量%未満であると、該酸化物を含有させる効果(脱金属効果等)が良好に発現せず、逆に約40重量%より多くても、該効果が飽和して不経済となる。 【0012】 ホウ素酸化物のアルミナへの含有方法は、後述するように、共沈法や混練法などのいずれの方法でもかまわないが、操作の容易性などの面から混練法が好ましい。 【0013】 本発明の触媒におけるアルミナ含有担体は、通常の方法により得ることができる。 すなわち、アルミナ原料として、アルミニウムの水溶性化合物、具体的には、アルミニウムの硫酸塩や塩化物、アルカリ金属アルミン酸塩、アルミニウムアルコキシド、その他の無機酸塩および有機酸塩を使用して調製する。 具体的に示せば、酸性アルミニウム水溶液(濃度約0.3〜2mol/リットル(以下、リットルを「L」と、ミリリットルを「mL」と記す)およびアルミン酸アルカリ水溶液に、水酸化アルカリ水溶液を添加し、pH約6.0〜11.0、好ましくは約8.0〜10.5の範囲で、ヒドロゲルまたはヒドロゾルを生成させるか、あるいはアンモニア水、硝酸または酢酸などを適宜添加し、pHを調整しながら、この懸濁液を約50〜90℃に加熱して、少なくとも2時間保持する。 次いで、沈澱物(アルミナゲル)をフィルターでロ別し、炭酸アンモニウムおよび水で洗浄して不純物イオンを除去する。 【0014】 この後、混練法によりホウ素酸化物を含有させればよい。 なお、ホウ素酸化物を共沈法により含有させる場合は、上記のアルミナ原料水溶液中に、ホウ素の水溶性化合物を混合しておけばよい。 【0015】 以上のようにして調製されたアルミナ含有担体は、押し出し成型機にて所望の形状に成型される。 このときの形状は、種々の形状であってよく、例えば、円柱状のもの、柱状成型で断面が小円を二つ連ねたダンベル型のもの、小円を三つ葉状あるいは四つ葉状に重ねたものなどが好都合であり、これらの小円は真円である必要はなく、長円形のもの、あるいは長方形、正方形、ひし形に近くても差し支えない。 また、断面が中空円柱状のもの、断面がT、I、C、E、口字型のような文字型の柱状のものでもよいし、あるいは、断面が3角、4角、5角、6角、8角状のハニカムや柱状のものでもかまわない。 【0016】 これらの成型物は、約100〜140℃で数時間乾燥し、さらに約200〜700℃で数時間焼成して、本発明の触媒におけるアルミナ含有担体に仕上げられる。 【0017】 以上のアルミナ含有担体の調製時において、該アルミナ含有担体が、本発明の水素化処理用触媒の担体として必要な平均細孔径および細孔分布を得るためには、上記のアルミナ原料などの水和物を沈澱させる際(すなわち、アルミナゲルを調製する際)や該沈澱物を熟成する際の温度、時間、あるいは上記の成型の際の成型圧力、さらには該成型物の焼成の際の温度や時間などを調節すればよい。 【0018】 このようにして得られるアルナミ含有担体は、水素化処理用触媒の活性成分であるMo、CoおよびNiを担持したときに、粉末X線回折パターンにおいて2θが約27°に特徴的なピークを有し、高い脱金属活性や大きい金属許容量を示す本発明の触媒となる。 【0019】 本発明の水素化処理用触媒は、前述したアルミナ含有担体に、MoとCoとNiを担持させたものであって、しかも粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有するものである。 【0020】 なお、本発明の触媒は、MoとCoと共に、Niを担持するものである。 【0021】 本発明の触媒は、次のようにして調製される。 アルミナ含有担体に、水素化活性成分として、Mo(以下、「VIA族」あるいは「VIA族金属」と記すことがある)とCoとNi(以下、「VIII族」あるいは「VIII族金属」と記すことがある)を担持する。これらの担持方法は、通常の含浸法、浸漬法などいずれの方法も採用できる。 【0022】 水素化活性成分を担持する順序は、MoとCoとNiのどれが先でも良いし、また同時でもよいが、CoとNiを先に担持させると、CoとNiがアルミナと複合酸化物を形成し、水素化処理用触媒の活性点として作用しないCoとNiが多くなってしまうため、Moを先に担持させるのが好ましい。 【0023】 Moは、水溶液となり得るもので有れば、どのようなものでも使用できるが、好ましくはパラモリブデン酸アンモニウム4水和物((NH4)6Mo7O24・4H2O)を用いるのが、コストが低いため経済的に有利であるばかりか、焼成時に発生するガスの安全性が高いという点から好ましい。 【0024】 Co、Niも、水溶液となり得るもので有れば、どのようなものでも使用できるが、好ましくは硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、塩化コバルト、塩化ニッケルなどが挙げられ、中でも硝酸コバルトや硝酸ニッケルが水素化活性が高いため好ましい。 【0025】 Mo、CoおよびNiの水素化活性成分は、本発明の触媒において、アルミナ含有担体に、酸化物および/または硫化物として担持されていることが好適である。 この理由は、Mo、CoおよびNiの水素化処理の活性種は硫化物であって、酸化物は容易に硫化物になるからである。 なお、酸化物は、後述する水素化活性成分を担持させた後の担体の焼成によって得られ、硫化物は後述する触媒の予備硫化処理によって得られる。 【0026】 水素化活性成分の担持量は、本発明の触媒において、触媒基準で、酸化物換算で、Moは、MoO3の酸化物として、約5〜30重量%、好ましくは約7〜25重量%、より好ましくは約10〜20重量%であり、CoとNiは、これらをMとした場合に、それぞれ、MxOyの酸化物として、約1〜10重量%、好ましくは約2〜8重量%である。 【0027】 VIA族金属が約5重量%未満では、好ましい水素化活性が得られず、また約30重量%を超えると、分散性が低下すると同時に、VIII族金属の助触媒効果を抑制してしまうことがある。 一方、VIII族金属が約1重量%未満であると、充分な水素化効果が得られず、また約10重量%を超えると、アルミナ含有担体と結合しない遊離の水素化活性成分(VIII族金属)が増加してしまう。 【0028】 また、所望に応じて、以上のVIA族金属およびVIII族金属以外の第3の成分を担持することもできる。 第3の成分としては、ホウ素やリンなどを挙げることができる。 第3の成分の担持量は、触媒基準で、酸化物換算で、約1〜10重量%とすることが好ましい。 【0029】 第3の成分は、上述のアルミナ含有担体に含まれているホウ素の酸化物とは異なり、ホウ素の酸化物が予め含有されているアルミナ含有担体に後から担持されるものであって、上述した水素化活性成分の助触媒として作用し、本発明の触媒の脱硫活性や脱窒素活性を向上させることができる。 なお、第3の成分の担持方法は、上述のMo、Co、Niと同様であってよく、第3の成分の担持時期は、Mo、Co、Niの後でも、前でも、同時でもよい。 【0030】 以上の水素化活性成分、あるいは第3の成分を担持した担体は、含浸あるいは浸漬などの溶液から分離した後、水洗、乾燥および焼成を行う。乾燥および焼成条件は、上記したアルミナ含有担体の場合の条件と同一でよい。 【0031】 また、本発明の触媒は、比表面積が約200〜400m2/g、全細孔容積が約0.4〜0.9mL、かさ密度が約0.5〜1.0g/mL、側面破壊強度が約0.8〜3.5kg/mm、平均細孔径が約80〜300Åであるのが好ましい。 【0032】 本発明の触媒は、炭化水素油の水素化反応に使用するのに先立ち、予備硫化を行うことが好ましい。 予備硫化は、炭化水素油の水素化反応塔における、本発明の触媒の使用(充填)箇所において行うことができる。 すなわち、本発明の触媒を、含硫炭化水素油(例えば、含硫留出油)と、温度約150〜400℃、圧力(全圧)約15〜150kg/cm2、液空間速度約0.3〜8.0hr-1で、約50〜1500L/L油比の水素含有ガスの存在下において接触させ、この処理の終了後、上記の含硫留出油を水素化処理対象原料油(含硫炭化水素油)に切替え、該原料油の脱硫に適当な運転条件に設定して、運転を開始する。 【0033】 本発明の触媒の予備硫化の方法としては、上記のような方法の他に、硫化水素、その他の硫黄化合物を、直接、本発明の触媒と接触させるか、あるいはこれらの硫黄化合物を適当な留出物に添加したものを、本発明の触媒と接触させる方法なども適用できる。 【0034】 本発明における炭化水素油とは、原油の常圧蒸留あるいは減圧蒸留で得られる軽質留分や常圧蒸留残渣および減圧蒸留残渣を意味し、もちろん、コーカー軽油、溶剤脱瀝油、タールサンド油、シェールオイル、石炭液化油などをも包含するものである。 【0035】 また、本発明の触媒を用いる場合の水素化処理条件は、原料油の種類、脱硫率などにより適宜選択することができるが、温度約300〜500℃、水素圧力約50〜200kg/cm2、(水素濃度約60〜100%の)水素含有ガス/油比約50〜10000L/L、液空間速度約0.1〜10hr-1とすることが好ましい。 【0036】 さらに、本発明における「水素化処理」とは、上記したように、炭化水素油と水素との接触による処理を総称し、比較的反応条件の苛酷度の低い水素化精製、比較的苛酷度の高い若干の分解反応を伴う水素化精製、水添異性化、水素化脱アルキル化、その他の水素の存在下における炭化水素油の反応などを包含するものである。 例えば、常圧蒸留または減圧蒸留の留出液および残渣油の水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化分解を含み、また灯油留分、軽油留分、ワックス、潤滑油留分の水素化精製などをも包含する。 【0037】 本発明の水素化処理用触媒において、担持されているCo、Niは、助触媒として有効に機能しているが、炭化水素油の水素化処理に際して、炭化水素油からVなどの金属とともに除去されるNiは、担持されているNiとは異なり、助触媒効果を有さない。 これは、炭化水素油から除去されたNiは、担持されているNiとは異なった状態で触媒中に存在するためと考えられる。 【0038】 このようなNiは、助触媒効果を示さないのみならず、触媒中の細孔を閉塞して炭化水素油の触媒中への進行を阻害し、触媒活性を低下させる一因となるが、本発明の触媒の場合、炭化水素油から除去されたNi、その他の金属(硫黄化合物なども含む)がかなりの量で堆積しているにもかかわらず、炭化水素油の触媒中への進行は阻害されず、触媒活性低下がかなり抑制される。 この理由は必ずしも明らかではないが、アルミナとともに担体を構成しているホウ素酸化物が、炭化水素油の触媒中への進行促進に何らかの作用を発現していること、および該ホウ素酸化物が水素化活性成分の担持状態を特殊なものとしている(粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有するものとする)ことに起因するものと推測される。 【0039】 【実施例】 〔触媒の調製〕 実施例1 50Lのイオン交換水の中に、アルミン酸ナトリウム溶液(Al2O3として約23%含む)29.8kgと、硫酸アルミニウム溶液(Al2O3として約7.9%含む)38.0kgとをゆっくり滴下した。このとき、上記と同じアルミン酸ナトリウム溶液を加えて、最終的に溶液のpHは11とした。 以上の操作により生成したアルミナスラリーをロ過し、ロ別された沈澱物(アルミナゲル)を、先ずアンモニアを加えてpHを9に調整した水で繰り返し洗浄し、次いで硝酸を加えてpHを6に調整した水で再び繰り返し洗浄して、アルミナケーキを得た。 【0040】 このアルミナケーキを、噴霧乾燥して得られたアルミナ粉末に、再びイオン交換水を加えて調湿した。 これにホウ酸1.94kgを加えて、ニーダーで充分均一になるまで混練した。 これを押し出し成型機で、必要な触媒直径に合うように押し出して、円柱状に成型した。 この押し出し成型物を、120℃で一昼夜乾燥し、次いで770℃で4時間焼成した。 このようにして調製されたアルミナ含有担体を1kg採取して、次のようにして周期律表第VIA族金属および第VIII族金属を担持させた。 【0041】 パラモリブデン酸アンモニウム4水和物230gを精製水に完全に溶解し、全量を1000ccにした。 次いで、この水溶液を注意深く上記のアルミナ含有担体に滴下した。全ての水溶液を滴下させた後、1時間静置し、続いて乾燥空気で乾燥した。その後、480℃で4時間焼成して、モリブデンを担持させた。 【0042】 一方、硝酸ニッケル6水和物121.6gおよび硝酸コバルト121.4gを精製水に溶解し、全量を1000ccとした。 この水溶液を、上記のモリブデンを担持させた触媒に注意深く滴下した。全ての水溶液を滴下させた後、1時間静置し、続いて空気で乾燥した。その後、480℃で4時間焼成して、ニッケルとコバルトとを担持させた。 得られた触媒の性状を表1に示し、また粉末X線回折パターンを図1に示した。 【0043】 なお、粉末X線回折は、理学電機(株)製商品名“RINT”を用い、管球はCu製のものを使用し、管電圧40KV、管電流30mA、発散スリット1°、散乱スリット1°、受光スリット0.30mmで行った。 【0044】 【0045】 実施例2 50Lのイオン交換水の中に、アルミン酸ナトリウム溶液(Al2O3として約23%含む)29.8kgと、硫酸アルミニウム溶液(Al2O3として約7.9%含む)38.0kgとをゆっくり滴下した。このとき、上記と同じアルミン酸ナトリウム溶液を加え、最終的に溶液のpHは11とした。 以上の操作により生成したアルミナスラリーをろ過し、ろ別された沈澱物(アルミナゲル)を、先ずアンモニアを加えてpHを9に調整した水で繰り返し洗浄し、次いで硝酸を加えてpHを6に調整した水で再び繰り返し洗浄して、アルミナケーキを得た。 【0046】 このアルミナケーキを噴霧乾燥して得られたアルミナ粉末に、再びイオン交換水を加えて調湿した。 これにホウ酸1.94kgを加えて、ニーダーで充分均一になるまで混練した。 これを押し出し成型機で、必要な触媒直径に合うように押し出して、円柱状に成型した。 この押し出し成型物を、120℃で一昼夜乾燥し、次いで845℃で4時間焼成した。 このようにして調整されたアルミナ含有担体を1kg採取して、次のようにして周期律表第VIA族金属および第VIII族金属を担持させた。 【0047】 パラモリブデン酸アンモニウム4水和物230gを精製水に完全に溶解し、全量を1050ccにした。次いで、この水溶液を、注意深く上記のアルミナ含有担体に滴下した。全ての水溶液を滴下させた後、1時間静置し、続いて乾燥空気で乾燥した。その後、480℃で4時間焼成して、モリブデンを担持させた。 【0048】 一方、硝酸ニッケル6水和物121.6gおよび硝酸コバルト121.4gを精製水に溶解し、全量を1050ccとした。この水溶液を、上記のモリブデンを担持させた触媒に注意深く滴下した。全ての水溶液を滴下させた後、1時間静置し、続いて空気で乾燥した。その後、480℃で4時間焼成して、ニッケルとコバルトとを担持させた。 得られた触媒の性状を表1に示し、実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを図2に示した。 【0049】 比較例1 50Lのイオン交換水の中に、アルミン酸ナトリウム溶液(Al2O3として約23%含む)29.8kgと、硫酸アルミニウム溶液(Al2O3として約7.9%含む)38.0kgとをゆっくり滴下した。このとき、上記と同じアルミン酸ナトリウム溶液を加え、最終的に溶液のpHは11とした。 以上の操作により生成したアルミナスラリーをロ過し、ロ別された沈澱物(アルミナゲル)を、先ずアンモニアを加えてpHを9に調整した水で繰り返し洗浄し、次いで硝酸を加えてpHを6に調整した水で再び繰り返し洗浄して、アルミナケーキを得た。 【0050】 このアルミナケーキを噴霧乾燥して得られたアルミナ粉末に、再びイオン交換水を加えて調湿した。 これを押し出し成型機で、必要な触媒直径に合うように押し出して、円柱状に成型した。 この押し出し成型物を、120℃で一昼夜乾燥し、次いで845℃で4時間焼成した。 このようにして調整されたアルミナ含有担体を1kg採取して、次のようにして周期律表第VIA族金属および第VIII族金属を担持させた。 【0051】 パラモリブデン酸アンモニウム4水和物230gを精製水に完全に溶解し全量を1000ccにした。次いで、この水溶液を、注意深く上記のアルミナ含有担体に滴下した。全ての水溶液を滴下させた後、1時間静置し、続いて乾燥空気で乾燥した。その後、480℃で4時間焼成して、モリブデンを担持させた。 【0052】 一方、硝酸ニッケル6水和物121.6gおよび硝酸コバルト121.4gを精製水に溶解し、全量を1000ccとした。この水溶液を、上記のモリブデンを担持した触媒に注意深く滴下した。全ての水溶液を滴下させた後、1時間静置し、続いて空気で乾燥した。その後、480℃で4時間焼成した。 得られた触媒の性状を表1に示し、実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを図3に示した。 【0053】 【表1】 ![]() ![]() 【0054】 〔触媒の活性評価〕 以上の実施例および比較例で得られた触媒を、表2に示す条件の水素化脱硫および水素化脱金属相対活性評価試験で評価した。結果を表3に示す。 【0055】 【表2】 ![]() 【0056】 水素化脱硫および水素化脱金属の相対活性の評価方式は、表2の運転条件下、90日目の反応生成物の残留硫黄分(重量%)、バナジウム(ppm)およびニッケル(ppm)分を求め、数1に示す計算式により反応速度定数を求めることで行った。 【0057】 【数1】 Ks=〔(1/Sp)-(1/Sf)〕×LHSV (1) Sp;精製油の硫黄濃度 Sf;原料油の硫黄濃度 Km=-Ln(Mp/Mf)×LHSV (2) Ln;自然対数 Mp;精製油の金属濃度 Mf;原料油の金属濃度 【0058】 【表3】 ![]() 【0059】 以上の実施例および比較例で得られた触媒を、表4に示す条件の相対金属許容量評価試験で評価した。 【0060】 【表4】 ![]() 【0061】 相対金属許容量試験の評価方式は、表4の運転条件下、脱硫率20%(残留硫黄濃度3.57%)のときの触媒基準金属堆積量を金属許容量として行った。 結果を表5に示した。 【0062】 【表5】 ![]() 【0063】 【発明の効果】 以上詳述したように、ホウ素酸化物を含有させたアルミナ含有担体を使用した本発明の触媒によれば、従来のアルミナやアルミナ含有担体にVIA族金属やVIII族金属を担持させた水素化処理用触媒では得ることのできなかった、 (1)高い除去率で金属や硫黄化合物などを炭化水素油から除去することができる、 (2)これらの金属がかなりの量で堆積しているにもかかわらず、触媒活性が低下せず、良好な水素化処理を持続することができる、 と言う効果を奏することができる。 【0064】 したがって、本発明の触媒は、軽油、常圧残油、減圧軽油、減圧残油などの石油製品を、さらに軽質化したり、高品質化するための高次処理を良好に行うことができるため、上記のような従来の水素化処理用触媒に比して、重質炭化水素油の有効利用上、極めて有益な触媒である。 【図面の簡単な説明】 【図1】 実施例1で得られた触媒の粉末X線回折パターンを示す図である。 【図2】 実施例2で得られた触媒の粉末X線回折パターンを示す図である。 【図3】 比較例1で得られた触媒の粉末X線回折パターンを示す図である。 【図面】 ![]() ![]() ![]() |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 (1) 訂正事項 以下の訂正事項中、(α)2.訂正事項(2)は、特許請求の範囲を減縮することを目的とし、(β)28.訂正事項(6-2)は、誤記を訂正することを目的とし、(γ)他の訂正事項は、いずれも、明りょうでない記載を釈明することを目的としている。 1. 訂正事項(1) 発明の名称を「炭化水素油の水素化脱金属用触媒」と訂正する。 2. 訂正事項(2) 特許請求の範囲を次の通り訂正する(請求項1を減縮し、請求項2を削除する)。 「【請求項1】 ホウ素を含むアルミナ含有担体に、Ni、MoおよびCoを担持し、粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有する炭化水素油の水素化脱金属用触媒。」 3. 訂正事項(2-1) 明細書段落【0001】、【0007】中の「水素化処理用触媒」を「水素化脱金属触媒」と訂正する。 4. 訂正事項(2-2) 明細書の段落【0008】の記載を 「【課題を解決するための手段および作用】 本発明者等は、脱金属活性の異なる種々の水素化処理用触媒について各種の解析を行ったところ、Ni、Co、Moを担持し、粉末X線回折パターンの2θ=27°に特徴的なピークを有する触媒が、高い脱金属活性を示すことを見い出し、本発明を完成した。」と訂正する。 5. 訂正事項(2-3) 明細書段落【0009】の記載を すなわち、本発明は、ホウ素を含むアルミナ含有担体に、Ni、MoおよびCoを担持し、粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有する炭化水素油の水素化脱金属触媒(以下、「本発明の水素化処理用触媒」あるいは「本発明の触媒」等と記す)を要旨とする。」と訂正する。 6. 訂正事項(2-4) 明細書段落【0018】の記載 「 このようにして得られるアルナミ含有担体は、水素化処理用触媒の活性成分であるMo、CoおよびNiを担持したときに、粉末X線回折パターンにおいて2θが約27°に特徴的なピークを有し、高い脱金属活性や大きい金属許容量を示す本発明の触媒となる。」と訂正する。 7. 訂正事項(2-5) 明細書段落【0019】の記載を 本発明の水素化処理用触媒は、前述したアルミナ含有担体に、MoとCoとNiを担持させたものであって、しかも粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有するものである。」と訂正する。 8. 訂正事項(3) 明細書段落【0010】の記載を 「 本発明の触媒におけるホウ素を含むアルミナ含有担体とは、アルミナに、触媒換算で約5〜40重量%のホウ素の酸化物を含有させたものを言う(以下、「アルミナ含有担体」と略すこともある)。 このアルミナとしては、γ-アルミナ、χ-アルミナ、η-アルミナのいずれか1種またはこれらの混合物が好適に使用できる。 混合物の場合の各種アルミナの混合割合は、特に限定されず、どのような割合としてもよい。」と訂正する。 9. 訂正事項(3-1) 明細書段落【0011】の記載を 「 ホウ素の酸化物の含有量が約5重量%未満であると、該酸化物を含有させる効果(脱金属効果等)が良好に発現せず、逆に約40重量%より多くても、該効果が飽和して不経済となる。」と訂正する。 10. 訂正事項(3-2) 明細書段落【0012】の記載を 「 ホウ素酸化物のアルミナヘの含有方法は、後述するように、共沈法や混練法などのいずれの方法でもかまわないが、操作の容易性などの面から混練法が好ましい。」と訂正する。 11. 訂正事項(3-3) 明細書段落【0014】の記載を 「 この後、混練法によりホウ素酸化物を含有させればよい。 なお、ホウ素酸化物を共沈法により含有させる場合は、上記のアルミナ原料水溶液中に、ホウ素の水溶性化合物を混合しておけばよい。」と訂正する。 12. 訂正事項(3-4) 明細書段落【0029】の記載を 「 第3の成分は、上述のアルミナ含有担体に含まれているホウ素の酸化物とは異なり、ホウ素の酸化物が予め含有されているアルミナ含有担体に後から担持されるものであって、上述した水素化活性成分の助触媒として作用し、本発明の触媒の脱硫活性や脱窒素活性を向上させることができる。 なお、第3の成分の担持方法は、上述のMo、Co、Niと同様であってよく、第3の成分の担持時期は、Mo、Co、Niの後でも、前でも、同時でもよい。」と訂正する。 13. 訂正事項(4) 明細書段落【0020】の記載を 「 なお、本発明の触媒は、MoとCoと共に、Niを担持するものである。」と訂正する。 14. 訂正事項(4-1) 明細書段落【0021】の記載を 「 本発明の触媒は、次のようにして調製される。 アルミナ含有担体に、水素化活性成分として、Mo(以下、「VIA族」あるいは「VIA族金属」と記すことがある)とCoとNi(以下、「VIII族」あるいは「VIII族金属」と記すことがある)を担持する。これらの担持方法は、通常の含浸法、浸漬法などいずれの方法も採用できる。」と訂正する。 15. 訂正事項(4-2) 明細書【0022】の記載を 「 水素化活性成分を担持する順序は、MoとCoとNiのどれが先でも良いし、また同時でもよいが、CoとNiを先に担持させると、CoとNiがアルミナと複合酸化物を形成し、水素化処理用触媒の活性点として作用しないCoとNiが多くなってしまうため、Moを先に担持させるのが好ましい。」と訂正する。 16. 訂正事項(4-3) 明細書段落【0023】の記載を 「 Moは、水溶液となり得るもので有れば、どのようなものでも使用できるが、好ましくはパラモリブデン酸アンモニウム4水和物((NH4)6Mo7O24・4H2O)を用いるのが、コストが低いため経済的に有利であるばかりか、焼成時に発生するガスの安全性が高いという点から好ましい。」と訂正する。 17. 訂正事項(4-4) 明細書段落【0024】の記載を 「 Co、Niも、水溶液となり得るもので有れば、どのようなものでも使用できるが、好ましくは硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、塩化コバルト、塩化ニッケルなどが挙げられ、中でも硝酸コバルトや硝酸ニッケルが水素化活性が高いため好ましい。」と訂正する。 18. 訂正事項(4-5) 明細書段落【0025】の記載を 「 Mo、CoおよびNiの水素化活性成分は、本発明の触媒において、アルミナ含有担体に、酸化物および/または硫化物として担持されていることが好適である。 この理由は、Mo、CoおよびNiの水素化処理の活性種は硫化物であって、酸化物は容易に硫化物になるからである。 なお、酸化物は、後述する水素化活性成分を担持させた後の担体の焼成によって得られ、硫化物は後述する触媒の予備硫化処理によって得られる。」と訂正する。 19. 訂正事項(4-6) 明細書段落【0026】の記載を 「 水素化活性成分の担持量は、本発明触媒において、触媒基準で、酸化物換算で、Moは、MoO3の酸化物として、約5〜30重量%、好ましくは約7〜25重量%、より好ましくは約10〜20重量%であり、CoとNiは、これらをMとした場合に、それぞれ、MxOyの酸化物として、約1〜10重量%、好ましくは約2〜8重量%である。」と訂正する。 20. 訂正事項(4-7) 明細書段落【0031】の記載を 「 また、本発明の触媒は、比表面積が約200〜400m2/g、全細孔容積が約0.4〜0.9mL、かさ密度が約0.5〜1.0g/mL、側面破壊強度が約0.8〜3.5kg/mm、平均細孔径が約80〜300Åであるのが好ましい。」と訂正する。 21. 訂正事項(4-8) 明細書段落【0032】の記載を 本発明の触媒は、炭化水素油の水素化反応に使用するのに先立ち、予備硫化を行うことが好ましい。 予備硫化は、炭化水素油の水素化反応塔における、本発明の触媒の使用(充填)箇所において行うことができる。 すなわち、本発明の触媒を、含硫炭化水素油(例えば、含硫留出油)と、温度約150〜400℃、圧力(全圧)約15〜150kg/cm2、液空間速度約0.3〜8.0hr-1で、約50〜1500L/L油比の水素含有ガスの存在下において接触させ、この処理の終了後、上記の含硫留出油を水素化処理対象原料油(含硫炭化水素油)に切替え、該原料油の脱硫に適当な運転条件に設定して、運転を開始する。」と訂正する。 22. 訂正事項(4-9) 明細書段落【0033】の記載を 「 本発明の触媒の予備硫化の方法としては、上記のような方法の他に、硫化水素、その他の硫黄化合物を、直接、本発明の触媒と接触させるか、あるいはこれらの硫黄化合物を適当な留出物に添加したものを、本発明の触媒と接触させる方法なども適用できる。」と訂正する。 23. 訂正事項(4-10) 明細書段落【0037】の記載を 「 本発明の水素化処理用触媒において、担持されているCo、Ni、助触媒として有効に機能しているが、炭化水素油の水素化処理に際して、炭化水素油からVなどの金属とともに除去されるNiは、担持されているNiとは異なり、助触媒効果を有さない。 これは、炭化水素油から除去されたNiは、担持されているNiとは異なった状態で触媒中に存在するためと考えられる。」と訂正する。 24. 訂正事項(4-11) 明細書段落【0038】の記載を 「 このようなNiは、助触媒効果を示さないのみならず、触媒中の細孔を閉塞して炭化水素油の触媒中への進行を阻害し、触媒活性を低下させる一因となるが、本発明の触媒の場合、炭化水素油から除去されたNi、その他の金属(硫黄化合物なども含む)がかなりの量で堆積しているにもかかわらず、炭化水素油の触媒中への進行は阻害されず、触媒活性低下がかなり抑制される。 この理由は必ずしも明らかではないが、アルミナとともに担体を構成しているホウ素酸化物が、炭化水素油の触媒中への進行促進に何らかの作用を発現していること、および該ホウ素酸化物が水素化活性成分の担持状態を特殊なものとしている(粉末X線回折パターンにおいて2θ=27°に特徴的なピークを有するものとする)ことに起因するものと推測される。」と訂正する。 25. 訂正事項(5) 明細書【0035】の記載を 「 また、本発明の触媒を用いる場合の水素化処理条件は、原料油の種類、脱硫率などにより適宜選択することができるが、温度約300〜500℃、水素圧力約50〜200kg/cm2、(水素濃度約60〜100%の)水素含有ガス/油比約50〜10000L/L、液空間速度約0.1〜10hr-1とすることが好ましい。」と訂正する。 26. 訂正事項(6) 明細書【0044】(実施例2)の記載を削除する。 27. 訂正事項(6-1) 明細書段落【0045】の記載を 「実施例2 50Lのイオン交換水の中に、アルミン酸ナトリウム溶液(Al2O3として約23%含む)29.8kgと、硫酸アルミニウム溶液(Al2O3として約7.9%含む)38.0kgとをゆっくり滴下した。このとき、上記と同じアルミン酸ナトリウム溶液を加え、最終的に溶液のpHは11とした。 以上の操作により生成したアルミナスラリーをろ過し、ろ別された沈澱物(アルミナゲル)を、先ずアンモニアを加えてpHを9に調整した水で繰り返し洗浄し、次いで硝酸を加えてpHを6に調整した水で再び繰り返し洗浄して、アルミナケーキを得た。」と訂正する。 28. 訂正事項(6-2) 明細書段落【0048】の記載を 「 一方、硝酸ニッケル6水和物121.6gおよび硝酸コバルト121.4gを精製水に溶解し、全量を1050ccとした。この水溶液を、上記のモリブデンを担持させた触媒に注意深く滴下した。全ての水溶液を滴下させた後、1時間静置し、続いて空気で乾燥した。その後、480℃で4時間焼成して、ニッケルとコバルトとを担持させた。 得られた触媒の性状を表1に示し、実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを図2に示した。」と訂正する。 29. 訂正事項(6-3) 明細書段落【0052】の記載を 「 一方、硝酸ニッケル6水和物121.6gおよび硝酸コバルト121.4gを精製水に溶解し、全量を1000ccとした。この水溶液を、上記のモリブデンを担持した触媒に注意深く滴下した。全ての水溶液を滴下させた後、1時間静置し、続いて空気で乾燥した。その後、480℃で4時間焼成した。 得られた触媒の性状を表1に示し、実施例1と同様にして測定した粉末X線回折パターンを図3に示した。」と訂正する。 30. 訂正事項(6-4) 【0053】【表1】、【0058】【表3】及び【0062】【表5】中、実施例2を削除し、実施例3を実施例2とする。 31. 訂正事項(7) 明細書段落【0063】の記載を 「 【発明の効果】 以上詳述したように、ホウ素酸化物を含有させたアルミナ含有担体を使用した本発明の触媒によれば、従来のアルミナやアルミナ含有担体にVIA族金属やVIII族金属を担持させた水素化処理用触媒では得ることのできなかった、 (1)高い除去率で金属や硫黄化合物などを炭化水素油から除去することができる、 (2)これらの金属がかなりの量で堆積しているにもかかわらず、触媒活性が低下せず、良好な水素化処理を持続することができる、 と言う効果を奏することができる。」と訂正する。 32. 訂正事項(7-1) 明細書段落【0064】の記載を 「 したがって、本発明の触媒は、軽油、常圧残油、減圧軽油、減圧残油などの石油製品を、さらに軽質化したり、高品質化するための高次処理を良好に行うことができるため、上記のような従来の水素化処理用触媒に比して、重質炭化水素油の有効利用上、極めて有益な触媒である。」と訂正する。 33. 訂正事項(8) 明細書【図面の簡単な説明】の記載を 「【図面の簡単な説明】 【図1】 実施例1で得られた触媒の粉末X線回折パターンを示す図である。 【図2】 実施例2で得られた触媒の粉末X線回折パターンを示す図である。 【図3】 比較例1で得られた触媒の粉末X線回折パターンを示す図である。」と訂正する。 34. 訂正事項(8-1) 図面の【図2】を削除し、図番【図3】を【図2】と訂正し、図番【図4】を【図3】と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-12-13 |
出願番号 | 特願平4-209680 |
審決分類 |
P
1
651・
534-
YA
(B01J)
P 1 651・ 113- YA (B01J) P 1 651・ 121- YA (B01J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 野田 直人、関 美祝 |
特許庁審判長 |
吉田 敏明 |
特許庁審判官 |
西村 和美 唐戸 光雄 |
登録日 | 1999-10-29 |
登録番号 | 特許第2996423号(P2996423) |
権利者 | コスモ石油株式会社 株式会社コスモ総合研究所 |
発明の名称 | 炭化水素油の水素化処理用触媒 |
代理人 | 平石 利子 |
代理人 | 平石 利子 |
代理人 | 平石 利子 |