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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C04B |
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管理番号 | 1056674 |
異議申立番号 | 異議2001-70346 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-04-15 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-01-31 |
確定日 | 2002-01-04 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3071452号「誘電体磁器組成物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3071452号の訂正後の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3071452号の請求項1に係る発明についての出願は、平成2年8月31日に特許出願され、平成12年5月26日にその発明について特許の設定登録がなされたものである。 これに対して、株式会社村田製作所より特許異議の申立てがなされ、平成13年4月11日付け取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成13年6月25日付けで訂正請求がなされ、その後再度平成13年7月31日付けで取消理由通知がなされたものである。 2.訂正の適否 2-1.訂正の内容 本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。 (1)訂正事項a 請求項1を、「【請求項1】水熱合成法により生成されたチタン酸バリウムBaTiO3100重量部に対して、Nd2O3が0.2〜1.2重量%、ZnOが0.3〜1.5重量%、Nb2O5が1.4〜2.8重量%、添加されて成る誘電体磁器組成物。」と訂正する。 (2)訂正事項b 明細書第2頁第17行〜第4頁第11行の「〔問題点を解決するための具体的な手段〕・・・抗折強度が向上した積層コンデンサが提供できる。」(本件特許掲載公報第1頁第2欄第15行〜第2頁第3欄第29行)を、「〔問題点を解決するための具体的な手段〕 本発明が要旨とするところは、水熱合成法により生成されたチタン酸バリウム(BaTiO3)100重量部に対して、酸化ネオジウム(Nd2O3)が0.2〜1.2重量%、酸化亜鉛(ZnO)が0.3〜1.5重量%、酸化ニオブ(Nb2O5)が1.4〜2.8重量%、を添加して成る誘電体磁器組成物である。 BaTiO3は主成分であり、Nd2O3は温度特性を制御するものであり、即ち、Nd2O3が0.2重量%未満及び1.2重量%を越えると温度特性が±15%を越える。 ZnOは絶縁抵抗、温度特性、誘電損失を制御するものであり、ZnOが0.3重量%未満では、絶縁抵抗が下がり、温度特性が大きくなる。また、ZnOが1.5重量%越えると、絶縁抵抗が下がり、温度特性、誘電損失が大きくなる。 Nb2O5は焼成温度、比誘電率を制御するものであり、Nb2O5が1.4重量%未満では、焼成温度が高くなり、また、Nb2O5が2.8重量%を越えると比誘電率が低下してしまう。 誘電体磁器組成物を、水熱合成法により生成されたチタン酸バリウム(BaTiO3)100重量部に対して.酸化ネオジウム(Nd2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb2O5)を、前記範囲内に設定することにより、誘電率を2000以上、温度変化率が-55〜125℃にわたって±15%以内、誘電正綾tanδを1.0未満の誘電体磁器組成物が得られ、厚みが薄く、誘電率が高いグリーンシートで達成できるので、積層数の少ない小型、低背型の積層コンデンサが提供できる。さらに、焼成温度が1200℃以下となり、積層コンデンサの内部電極材料に比較的安価なAg-Pd(Ag/Pd=60/40〜70/30)が使用でき、安価な積層コンデンサが提供できる。さらに、上述の従来の誘電体材料に比較して、Biを排除することができ、内部電極材料のPdとの反応が皆無となり、抗折強度が向上した積層コンデンサが提供できる。」と訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否 訂正事項aは、「チタン酸バリウム」を「水熱合成法により生成されたチタン酸バリウム」と製造法によりチタン酸バリウムを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして特許明細書中に「出発材料として、水熱合成法により生成されたチタン酸バリウム」(本件特許掲載公報第2頁第3欄第32行〜第4欄第1行)と記載されているから、上記訂正事項aは願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものである。また、上記訂正事項aは上記訂正によって別個の新たな目的及び効果をもたらすものではないから実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また上記訂正事項bは、大別すると(b-1)「チタン酸バリウム」を「水熱合成法により生成されたチタン酸バリウム」と訂正する、(b-2)「誘電体磁器組成物を、」を「誘電体磁器組成物を、水熱合成法により生成されたチタン酸バリウム(BaTiO3)100重量部に対して、酸化ネオジウム(Nd2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb2O5)を、」と訂正するというものである。(b-1)は、特許請求の範囲の減縮を目的とする上記訂正事項aの訂正に伴うものであるから、減縮された特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるための明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものであり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また(b-2)は、誘電体磁器組成物を訂正された特許請求の範囲の記載に合わせて説明したものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものであり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 2-3.まとめ したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6状第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立てについて 3-1.本件発明 特許権者が請求した上記訂正は、上述したとおり、認容することができるから、訂正後の本件請求項1に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】水熱合成法により生成されたチタン酸バリウムBaTiO3100重量部に対して、Nd2O3が0.2〜1.2重量%、ZnOが0.3〜1.5重量%、Nb2O5が1.4〜2.8重量%、添加されて成る誘電体磁器組成物。」 3-2.当審の判断 当審は、平成13年7月31日付け取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。 そして、上記の取消理由は妥当なものであると認められるので、訂正後の本件請求項1に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 誘電体磁器組成物 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】水熱合成法により生成されたチタン酸バリウムBaTiO3100重量部に対して、Nd2O3が0.2〜1.2重量%、ZnOが0.3〜1.5重量%、Nb2O5が1.4〜2.8重量%、添加されて成る誘電体磁器組成物。 【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、平坦な温度特性を有し、比誘電率が高く、焼成温度が低い誘電体磁器組成物に関するものである。 〔従来の技術及びその問題点〕 従来、チタン酸バリウムを主成分とし、温度特性が比較的平坦で、比誘電率が高く、焼成温度が低い誘電体磁器組成物として、Nb2O5、酸化チタン、酸化ランタン、酸化鉛、酸化ビスマスが添加されたものが知られている。(特開昭58-30002号)。 しかし、かかる誘電体磁器組成物は、酸化ビスマスが添加されているので、誘電体磁器組成物を積層コンデンサの誘電体材料として用いるとき、内部電極のPdと反応を起こし、抗折強度等が大きく劣化してしまい、積層コンデンサの多層化に制限があった。 本発明者らは上記問題点に鑑みて、鋭意研究を重ねた結果、チタン酸バリウムに、所定量の酸化ネオジウム(Nd2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb2O5)を添加することにより、積層コンデンサの内部電極材料のPdと反応が皆無で、温度特性が比較的平坦で、比誘電率が高く、焼成温度が低い誘電体磁器組成物が得られることを知見した。 〔問題点を解決するための具体的な手段〕 本発明が要旨とするところは、水熱合成法により生成されたチタン酸バリウム(BaTiO3)100重量部に対して、酸化ネオジウム(Nd2O3)が0.2〜1.2重量%、酸化亜鉛(ZnO)が0.3〜1.5重量%、酸化ニオブ(Nb2O5)が1.4〜2.8重量%、を添加して成る誘電体磁器組成物である。 BaTiO3は主成分であり、Nd2O3は温度特性を制御するものであり、即ち、Nd2O3が0.2重量%未満及び1.2重量%を越えると温度特性が±15%を越える。 ZnOは絶縁抵抗、温度特性、誘電損失を制御するものであり、ZnOが0.3重量%未満では、絶縁抵抗が下がり、温度特性が大きくなる。また、ZnOが1.5重量%越えると、絶縁抵抗が下がり、温度特性、誘電損失が大きくなる。 Nb2O5は焼成温度、比誘電率を制御するものであり、Nb2O5が1.4重量%未満では、焼成温度が高くなり、また、Nb2O5が2.8重量%を越えると比誘電率が低下してしまう。 誘電体磁器組成物を、水熱合成法により生成されたチタン酸バリウム(BaTiO3)100重量部に対して、酸化ネオジウム(Nb2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb2O5)を、前記範囲内に設定することにより、誘電率を2000以上、温度変化率が-55〜125℃にわたって±15%以内、誘電正接tanδを1.0未満の誘電体磁器組成物が得られ、厚みが薄く、誘電率が高いグリーンシートで達成できるので、積層数の少ない小型、低背型の積層コンデンサが提供できる。さらに、焼成温度が1200℃以下となり、積層コンデンサの内部電極材料に比較的安価なAg-Pd(Ag/Pd=60/40〜70/30)が使用でき、安価な積層コンデンサが提供できる。さらに、上述の従来の誘電体材料に比較して、Biを排除することができ、内部電極材料のPdとの反応が皆無となり、抗折強度が向上した積層コンデンサが提供できる。 〔実施例〕 以下、本発明を具体的に説明する。 出発材料として、水熱合成法により生成されたチタン酸バリウム100重量部に対してNd2O3、ZnO及びNb2O5の各粉末を表1に示す配合比になるように秤量し、ボールミルにて20時間湿式粉砕した後、有機系粘結剤を添加する。しかる後攪拌、ドクターブレード法で厚さ20〜30μmのテープに成型した。このテープを40枚積層して、熱圧着した。このようにして作成された厚み1.0mmの積層体を直径20mmの円板状に打ち抜き、酸素雰囲気にて1100〜1200℃で2時間焼成した。さらに両端面に銀ペーストによる電極を焼きつけ試料とした。 このように形成された試料について、比誘電率ε及び誘電正接tanδを基準温度25℃、周波数1.0kHz、測定電圧1.0Vrmsで測定した。 その結果を表1に示す。試料番号に*印を付したものは本発明の範囲外である。そして本発明の範囲の評価として、比誘電率εは2000以上を良品とした。即ち、比誘電率εが2000未満では、充分な比誘電率εが得れず、これにより積層コンデンサの小型化が困難となってしまう。 また、誘電正接tanδは1.0%未満を良品とした。即ち、誘電正接tanδが1.0%以上では、積層コンデンサの誘電正接tanδ不良となり、シート層の薄膜化が困難となる。 また、温度特性は±15%以内を良品とした。即ち、温度特性は±15%以外になると、X7R(EIA規格)を満足しなくなる。 また、絶縁抵抗が1×105MΩ以上を良品とした。絶縁抵抗が1×105MΩ未満では、積層コンデンサを作成したとき、絶縁不良が発生する。 また、焼成温度は1200℃以下が望ましい。焼成温度が1200℃を越えると、内部電極にPdの含有率が高い高価な電極材料しか使用できない。 ![]() 試料番号1〜9は誘電体材料の主成分となるBaTiO3100重量部に添加するNd2O3の添加量を検討した。即ち、Nd2O3を0.1重量%から1.3重量%まで変化させた。この時、ZnO及びNb2O5を夫々0.6重量%、2.0重量%に設定した。これは後述の夫々の添加量で本発明の範囲の中心的な値となるものである。 試料番号1(Nd2O3:0.1重量%)では、比誘電率ε及び誘電正接tanδが比較的良好な結果となるものの、温度変化率が±15%を越えて、-18.0%(-55℃)となってしまう。 また、試料番号2〜8(Nd2O3:0.2〜1.2重量%)では、比誘電率εが2950以上、誘電正接tanδが0.5%以下、温度変化率が-12〜10%、絶縁抵抗が4×105MΩ以上、焼成温度1160℃以下となり、EIA規格のX7R特性を満足する小型の積層コンデンサ用の誘電体磁器組成物が達成できる。 試料番号9(Nd2O3:1.3重量%)では比誘電率ε、誘電正接tanδ、絶縁抵抗、焼成温度が比較的良好な結果となるものの、温度変化率が±15%を越えて、-18.0%(-55℃)となってしまう。 従って、本発明のBaTiO3に、Nd2O3の添加量によって温度変化率が大きくなる。 結局、Nd2O3を0.2〜1.2重量%添加することが重要である。 試料番号10〜16は誘電体系磁組成物の主成分となるBaTiO3100重量部に添加するZnOの添加量を検討した。即ち、ZnOを0.2〜1.6重量%まで変化させた。この時、Nd2O3、Nb2O5の添加量を夫々0.6重量%、2.0〜2.7重量%に設定した。 試料番号10(ZnO:0.2重量%)では比誘電率ε、誘電正接tanδ及び焼成温度が比較的良好な結果となるものの、温度特性が±15%を越えて-20%(-55℃)となり、さらに絶縁抵抗が1×104となってしまう。 試料番号11〜15(ZnO:0.3〜1.5重量%)では比誘電率εが2200以上、誘電正接tanδが0.75%以下、温度特性が-12〜+14%、絶縁抵抗が3×105MΩ以上、焼成温度1160℃以下となり、EIA規格のX7R特性を満足する小型の積層コンデンサ用の誘電体磁器組成物が達成できる。 試料番号16(ZnO:1.6重量%)では比誘電率ε及び焼成温度が良好な結果が得られるものの、誘電正接tanδが1.0%を越え1.82%となり、温度変化率が±15%を越えて-25%(-55℃)、絶縁抵抗が5×103MΩとなってしまう。 従って、本発明のBaTiO3に添加するZnOの添加量が所定範囲外となると絶縁抵抗、温度特性が悪化し、さらにZnOの添加量が増加すれば、誘電正接tanδが小さくなる傾向があるものの、ある添加量を越えると極度に誘電正接tanδが悪化する。 結局、ZnOの添加量は、0.3〜1.5重量%の範囲とした。 試料番号17〜25は誘電体系磁組成物の主成分となるBaTiO3100重量部に添加するNb2O5の添加量を検討した。即ち、Nb2O5を1.3〜2.9重量%まで変化させた。この時、Nd2O3、ZnOの添加量を夫々0.6重量%、0.3〜1.1重量%に設定した。 試料番号17(Nb2O5:1.3重量%)では比誘電率ε、誘電正接tanδ、温度特性及び絶縁抵抗が比較的良好な結果となるものの、焼成温度が1250℃を越えてしまう。 試料番号18〜24(Nb2O5:1.4〜2.8重量%)では比誘電率εが2100以上、誘電正接tanδが0.60%以下、温度特性が-13〜+10%、絶縁抵抗が5×105MΩ、焼成温度1200℃以下となり、EIA規格のX7R特性を満足する小型の積層コンデンサ用の誘電体磁器組成物が達成できる。 試料番号25(Nb2O5:2.9重量%)ででは誘電正接tanδ、絶縁抵抗、焼成温度が良好な結果が得られるものの、比誘電率ε1900、温度変化率が±15%を越えて-16%(-55℃)となってしまう。 従って、本発明のBaTiO3に添加するNb2O5を減少すると焼成温度が悪化する傾向がある。逆にNb2O5を増加すると比誘電率εが低下する傾向がある。 結局、Nb2O5の添加量は、1.4〜2.8重量%の範囲とした。 以上のように、BaTiO3100重量部に対して、Nd2O3が0.2〜1.2重量%、ZnOが0.3〜1.5重量%、Nb2O5が1.4〜2.8重量%添加されて成る誘電体磁器組成物では、比誘電率εが2000以上、誘電正接tanδが1.0%以下、温度特性が±15%(-55〜+125℃)、絶縁抵抗が1×105MΩ以上、焼成温度が1200℃以下の誘電体磁器組成物が達成できる。 この誘電体磁器組成物を用いて、積層コンデンサを作成すると、高い比誘電率で温度特性X7R(EIA規格)を満足し、小型のコンデンサが達成できる。また、ビスマス(Bi)を含有していないため、内部電極材料に含まれるPdとの反応が発生しない安定かつ抗折強度の高いコンデンサが達成できる。さらには焼成温度が1200℃以下であるため、内部電極材料にAg-Pd(Ag/60/40〜70/30)の安価な材料が使用でき、安価な積層コンデンサが達成される。 尚、表1の試料番号26、27はNd2O3、ZnO、Nb2O5が全て範囲外のものである。 試料番号26はすべての添加量が範囲を満たないもの(Nd2O3が0.2重量%、ZnOが0.2重量%、Nb2O5が1.3重量%)である。測定の結果、比誘電率ε、誘電正接tanδ、絶縁抵抗に関して良好な結果が得られるものの、温度特性が-18〜12%、焼成温度が1280℃となってしまう。 また、試料番号27はすべての添加量が範囲を越えたもの(Nd2O3が1.3重量%、ZnOが1.6重量%、Nb2O5が2.9重量%)である。測定の結果、比誘電率ε、誘電正接tanδ、絶縁抵抗及び焼成温度に関して良好な結果が得られるものの、温度特性が-22〜0%となってしまう。 次に、チタン酸バリウムの生成方法について検討する。一般にチタン酸バリウムの生成方法には、上述の実施例で採用される水熱合成方法の他に固相法、蓚酸法が知られている。上述の実施例で採用した水熱合成法で生成したチタン酸バリウムは粒径が小さく、粒形状が一定化する。このため、焼結温度が他の生成方法で作製したものよりも約100℃も小さくでき、粒子の異常成長がなく、より緻密な磁器が達成できる。しかし、その他の固相法や蓚酸法で生成したチタン酸バリウムでは粒径や形状が不揃いとなり、安定した特性が得られないことがある。 例えば、固相法で生成したチタン酸バリウム100重量部に対して、Nd2O3を0.5重量%、ZnOを0.6重量%、Nb2O5を2.0重量%添加して、その特性を測定すると、試料の中には、誘電損失tanδが0.75%、温度特性が-15〜+27%、及び焼成温度が1320℃となり良品の範囲を越えてしまうものがある。 また、蓚酸法で生成したチタン酸バリウム100重量部に対して、Nd2O3を0.5重量%、ZnOを0.6重量%、Nb2O5を2.0重量%添加して、その特性を測定すると、試料の中には、誘電損失tanδが0.65%と良品の範囲を越えて、絶縁抵抗が1×105MΩになるものがある。 したがって、水熱合成法でチタン酸バリウムを生成する方法が望ましい。これにより、粒径が小さく、粒形状が一定化したチタン酸バリウムが容易に得られ、焼結温度が他の生成方法で作製したものよりも約100℃も小さくでき、粒子の異常成長がなく、より緻密な磁器が達成できる。したがって、抗折強度に優れ、耐圧特性が向上した磁器となる。 〔発明の効果〕 以上のように、本発明によれば、比誘電率ε、誘電正接tanδ、絶縁抵抗に優れ、さらに温度特性がX7Rに対応した誘電体磁器組成物となる。また、低温焼成が可能で、且つ内部電極と反応が起こらないため、積層コンデンサの内部電極に安価なAg-Pd材料を用いることができ、安価で且つ抗折強度に優れた誘電体磁器組成物となる。 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 特許第3071452号発明の明細書を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、 (1)訂正事項a 請求項1を、「【請求項1】水熱合成法により生成されたチタン酸バリウムBaTiO3100重量部に対して、Nd2O3が0.2〜1.2重量%、ZnOが0.3〜1.5重量%、Nb2O5が1.4〜2.8重量%、添加されて成る誘電体磁器組成物。」と訂正する。 (2)訂正事項b 明細書第2頁第17行〜第4頁第11行の「〔問題点を解決するための具体的な手段〕・・・抗折強度が向上した積層コンデンサが提供できる。」(本件特許掲載公報第1頁第2欄第15行〜第2頁第3欄第29行)を、「〔問題点を解決するための具体的な手段〕 本発明が要旨とするところは、水熱合成法により生成されたチタン酸バリウム(BaTiO3)100重量部に対して、酸化ネオジウム(Nd2O3)が0.2〜1.2重量%、酸化亜鉛(ZnO)が0.3〜1.5重量%、酸化ニオブ(Nb2O5)が1.4〜2.8重量%、を添加して成る誘電体磁器組成物である。 BaTiO3は主成分であり、Nd2O3は温度特性を制御するものであり、即ち、Nd2O3が0.2重量%未満及び1.2重量%を越えると温度特性が±15%を越える。 ZnOは絶縁抵抗、温度特性、誘電損失を制御するものであり、ZnOが0.3重量%未満では、絶縁抵抗が下がり、温度特性が大きくなる。また、ZnOが1.5重量%越えると、絶縁抵抗が下がり、温度特性、誘電損失が大きくなる。 Nb2O5は焼成温度、比誘電率を制御するものであり、Nb2O5が1.4重量%未満では、焼成温度が高くなり、また、Nb2O5が2.8重量%を越えると比誘電率が低下してしまう。 誘電体磁器組成物を、水熱合成法により生成されたチタン酸バリウム(BaTiO3)100重量部に対して.酸化ネオジウム(Nd2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb2O5)を、前記範囲内に設定することにより、誘電率を2000以上、温度変化率が-55〜125℃にわたって±15%以内、誘電正綾tanδを1.0未満の誘電体磁器組成物が得られ、厚みが薄く、誘電率が高いグリーンシートで達成できるので、積層数の少ない小型、低背型の積層コンデンサが提供できる。さらに、焼成温度が1200℃以下となり、積層コンデンサの内部電極材料に比較的安価なAg-Pd(Ag/Pd=60/40〜70/30)が使用でき、安価な積層コンデンサが提供できる。さらに、上述の従来の誘電体材料に比較して、Biを排除することができ、内部電極材料のPdとの反応が皆無となり、抗折強度が向上した積層コンデンサが提供できる。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-11-12 |
出願番号 | 特願平2-230803 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(C04B)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 武重 竜男 |
特許庁審判長 |
吉田 敏明 |
特許庁審判官 |
野田 直人 唐戸 光雄 |
登録日 | 2000-05-26 |
登録番号 | 特許第3071452号(P3071452) |
権利者 | 京セラ株式会社 |
発明の名称 | 誘電体磁器組成物 |