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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1056677
異議申立番号 異議2001-70384  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-03-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-02-05 
確定日 2002-01-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3074327号「オレフィン系樹脂フィルム」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3074327号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1. 手続の経緯
本件特許第3074327号の請求項1〜3に係る発明は、平成8年(1996)10月25日に特許出願され、平成12年6月9日にその特許権の設定登録がなされた。
その後、内田しづ江、オカモト株式会社、大倉工業株式会社、三菱化学エムケーブイ株式会社、出光ユニテック株式会社、大日精化工業株式会社および高塚ちはるより特許異議の申立がなされ、
当審より平成13年5月16日付け取消理由が通知され、その指定期間内の平成13年7月30日付け訂正請求書および特許異議意見書が提出されている。
2. 訂正の適否についての判断
(2.1)訂正事項は次のとおりである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を次のように訂正する。
「【請求項1】 オレフイン系樹脂からなる厚さ0.03〜0.2mmのフィルムであって、着色剤として、少なくとも、オレフイン系樹脂100重量部当たり、酸化チタン0.5〜30重量部および酸化鉄0.1〜10重量部を含み、かつ下式で表される隠蔽度が0.5〜3であり、カレンダー加工法により製造することを特徴とするオレフィン系樹脂フィルム。
【数1】隠蔽度=log I/T(但し、T(透過率)=I/Io Ioは入射光、Iは透過光)」
(2)訂正事項b
明細書(公報第2頁第3欄第37行参照)の「隠蔽度が0.5〜3であることを特徴とする。」を、「隠蔽度が0.5〜3であり、カレンダー加工法により製造することを特徴とする。」と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書(公報第2頁第4欄第13〜19行参照)の「上記のフィルムは、Tダイ押出法、・・・にシンジオタクチックポリプロピレンをブレンドすることが好ましい。」を、
「上記のフィルムは、カレンダー法により製造される。上記のフィルムをカレンダー加工法により製造する場合には、このカレンダー加工性を改良するために、上記のアイソタクチックポリプロピレンにシンジオタクチックポリプロピレンをブレンドすることが好ましい。」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書(公報第6頁第11欄第7行参照)の「実施例1〜8、比較例1〜2」を、
「参考例1〜8、比較例1〜2」と訂正する。
これに伴い、【表1の1】及び【表1の2】の「実施例」を「参考例」と訂正する。
(5)訂正事項e
明細書(公報第13欄第25行参照)の「実施例9〜10、比較例3」を、「実施例1〜2、比較例3」と訂正する。
これに伴い、【表2】の実施例の番号を「9」から「1」へ、また「10」から「2」へと訂正する。
(6)訂正事項f
明細書(公報第15欄第21行参照)の「実施例11」を、「参考例9」と訂正する。
(7)訂正事項g
明細書(公報第15欄第22行参照)の「実施例1〜8」を、「参考例1〜8」と訂正する。
(8)訂正事項h
明細書(公報第15欄第39行参照)の「実施例12」を、「実施例3」と訂正する。
(9)訂正事項i
明細書(公報第15欄第40行参照)の「実施例9〜10」を、「実施例1〜2」と訂正する。
(10)訂正事項j
明細書(公報第16欄第32行参照)の「実施例11〜12」を、「参考例9、実施例3」と訂正する。
(2.2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張又は変更の存否
訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
そして、(1)訂正事項aは、「カレンダー加工法により製造する」という入手法を特定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、(2)訂正事項b〜(10)訂正事項jは、特許請求の範囲の減縮に伴う特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3.3) むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を適法なものとして認める。
3. 特許異議の申立てについての判断
(3.1) 本件発明
異議申立の対象となった本件特許第3074327号の請求項1〜3に係る発明は、その後上記訂正請求がなされ、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のとおりのものとなっている。
「【請求項1】オレフイン系樹脂からなる厚さ0.03〜0.2mmのフィルムであって、着色剤として、少なくとも、オレフィン系樹脂100重量部当たり、酸化チタン0.5〜30重量部および酸化鉄0.1〜10重量部を含み、かつ下式で表される隠蔽度が0.5〜3であり、カレンダー加工法により製造することを特徴とするオレフイン系樹脂フィルム。
【数1】隠蔽度=log I/T(但し、T(透過率)=I/Io Ioは入射光、Iは透過光)
【請求項2】酸化鉄がFeOOHおよび/またはFe2O3である請求項1記載のオレフイン系樹脂フィルム。
【請求項3】表面側に、紫外線吸収剤およびヒンダートアミン系化合物を含み、かつ555nmの全光線透過率が70%以上で、厚さ0.03〜0.2mmの実質的に透明なオレフイン系樹脂フィルムを積層した請求項1、2記載のオレフイン系樹脂フィルム。」
(3.2) 引用刊行物の記載事項
当審が通知した取り消し理由において引用した刊行物には次の事項が記載されている。
(1)特許異議申立人内田しづ江の提出した刊行物。
刊行物(1.1)(特開平8-267682号公報;甲1号証)には、
「一方、表面層2に含有させる光安定剤としては、紫外線を吸収するベンゾトリアゾール系、・・などの紫外線吸収剤や、ラジカルを捕捉してポリプロピレンの分解を抑制するHALS(ヒンダードアミン系光安定剤)などが使用される。」(段落0023)、
と記載されている。
(2)特許異議申立人オカモト(株)の提出した刊行物。
刊行物(2.1)(特開平8-90740号公報;甲1号証)には、
「前記基材シートおよび透明熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1ないし請求項2記載の化粧シートおよびその製造方法。」(請求項4)
「ランダム重合ポリプロピレンに、低密度ポリエチレンを15重量%、・・ヒンダードアミン系光安定剤を0.3重量%、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.5重量%、・・添加して得た樹脂を、・・化粧シートを得た。(図2参照)」(段落0033)、
と記載されている。
刊行物(2.2)(特開平6-256531号公報;甲3号証)には、
「(実施例5〜7)
製造例5〜7で得られた樹脂 40%
酸化チタン(・・) 20%
弁柄(・・) 40%
上記3成分を・・混練し、・・マスターバッチを得ることができた。タルク20%を含有するポリエチレン組成物100部にマスターバッチ3部を混合して、射出成形機にて・・プレートに成形した。」(段落0037)、
と記載されている。
刊行物(2.3)(花田豊外1名著「プラスチック用着色剤」 P.76〜79、P.107〜109、昭和41年10月20日、日刊工業(株)発行;甲第4号証)には、
「3・2・2 ポリオレフイン用着色剤
・・・
(a)耐熱性
一般に低密度ポリエチレンの・・・要求される。
使用可能な顔料としては、低密度ポリエチレンには酸化チタン、・・・酸化鉄、・・があげられる。」(第76頁第21行〜第77頁第8行)、
と記載されている。
刊行物(2.4)(「顔料便覧」 P.10〜11、P.14〜15、P.26、(株)誠文堂新光社発行;甲第5号証)には、
「65黄色酸化鉄・・マルス黄・・FeO(OH)・nH2O・・Pig.Yellow・・」(第15頁上段)、
「べんがら・・弁柄・・Fe2O3 Pig.Red・・」(第26頁上段)、
と記載されている。
(3)特許異議申立人大倉工業(株)の提出した刊行物および実験報告書。
刊行物(3.1)(特開平6-278261号公報;甲1号証)には、
「【実施例】ポリプロピレン樹脂90重量部と、マスターバッチとして茶色に着色したポリプロピレン樹脂(酸化チタン、酸化鉄からなる金属粉末(配合は色による)65重量%含有)10重量部とを混合し、・・溶融押出した。・・これに透明なポリプロピレン樹脂を、・・前記シートの凹凸面上と表面が平滑な冷却ロールとの間に溶融押出した。得られたシートは・・意匠的に優れた化粧シートが得られた。」(段落0016)、
「また、シートの厚さも特に規定されるものではないが、シート全体を薄くし、・・50〜200μm程度が良い。」(段落0009)
と記載されている。
刊行物(3.2)(特開平6-198830号公報;甲2号証)には、
「ベース基材層1には、・・ポリオレフイン系樹脂フイルム・・などがあげられるが、焼却廃棄処分時に発生する有機ガスの安全性の点では、ポリオレフイン系樹脂フイルム、・・が好ましく、また化粧シートの表面に形成される絵柄印刷層の色調の安定性の点、及び化粧板用基板の表面色相のばらつきに対応できる隠蔽力を保持するには、・・特に着色されたポリプロピレンフイルムが好適に使用できる。」(段落0011)、
「ポリプロピレンフイルムの着色顔料としては、通常使用される有機又は無機系顔料が使用でき、隠蔽性を保持する為の白色顔料としては、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の無機顔料が適し、その添加量としては10〜20%が好ましい。」(段落0012)、
と記載されている。
刊行物(3.3)(特開平7-53773号公報;甲6号証)には、
「(実施例5)
分散剤E 20%
酸化チタン「・・」(・・) 20%
弁柄「・・」(・・) 40%
ポリプロピレン「・・」(・・) 20%
上記4成分を・・混練し、・・マスターバッチを得た。・・次いで、タルク20%を含有するポリエチレン組成物「・・」100部に、得られたマスターバッチ3部を混合して、実施例3と同様にしてプレート成形品を得た。」(段落0023)、
と記載されている。
実験報告書(3.4)(土田友久作成「全光線透過率測定データ」;甲7号証)には、次のことが記載されている。
「ポリオレフインと、酸化チタン、酸化鉄を所定量混合し、これを・・100μmに成形する。
3結果
配合部数(重量部)0.5・・5.0・・ 30.0
全光線透過率 66.8・・28.3・・7.9
配合部数(重量部)0.1・・1.0・・10.0
全光線透過率 74.4・・36.0・・0.07」
実験報告書(3.5)(土田友久作成「紫外・可視光線透過率測定データ」;甲8号証)には、次のことが記載されている。
「UVTR(%T)(全光線透過率)と波長(nm)の関係が示されている。」
(4)特許異議申立人三菱化学エムケーブイ(株)の提出した刊行物。
刊行物(4.1)(特開平7-137221号公報;甲2号証)には、
「本発明において用いられる不透明な熱可塑性樹脂フイルムは、通常、厚みが0.02〜0.5mm程度の、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフイン樹脂、・・等の不透明な樹脂フイルム又はシートが用いられる。フイルムを不透明に形成するには、二酸化チタン、カーボンブラック、弁柄等の顔料等を練り込んで下層の隠蔽性を付与すると同時に化粧シート全体の基調となる色を付与する。」(段落0012)、
と記載されている。
(5)特許異議申立人出光ユニテック(株)の提出した刊行物。
刊行物(5.1)(特開平5-202234号公報;甲1号証)には、
「〔実施例3〜5〕
製造例3〜5で得られた樹脂 40%
酸化チタン(・・) 20%
弁柄(・・) 40%
上記3成分を・・混練し、・・マスターバッチを得た。・・タルク20%を含有するポリエチレン組成物100部に、得られたマスターバッチ3部を混合して、射出成形機にて・・プレートに成形した。」(段落0028)、
「〔比較例3〕
ポリプロピレン「・・」 10%
ポリプロピレンワックス「・・」 30%
酸化チタン「・・」(・・) 20%
弁柄(・・) 40%
上記4成分を・・混練し、・・良好なマスターバッチを得ることができなかった。実施例3〜5と同様に、タルク20%を含有するポリエチレン組成物100部に、得られたマスターバッチ3部を混合して、射出成形機にて・・プレートに成形した。」(段落0029)、
と記載されている。
刊行物(5.2)(阿部嘉長外1名「新版・プラスチックス配合剤-基礎と応用-」 P.307〜315 昭和62年11月30日 (株)大成社発行;甲2号証)には、
「4・2 無機顔料
有機顔料に比較すると、一般に無機顔料は陰ぺい力が大きく、耐熱性、耐光性・・色調の鮮明さ、着色力、種類の豊富さなどの点では劣る。」(第311頁第22〜25行)、
「4・2・1 酸化チタン
酸化チタンの製法には、・・着色力、耐光性にすぐれているが色調はやや黄味である。
・・・・・・
4・2・2 ベンガラ
酸化鉄(Fe2O3)を主成分とする顔料で、・・・黄色酸化鉄、四三酸化鉄からなる鉄黒などがある。」(第312頁第13〜26頁)、
と記載されている。
(3.3) 対比・判断
〈特許法第29条第2項違反について〉
本件請求項1〜3に係る発明(以下「本件発明1〜3」という。)は、熱劣化および変色劣化をすることなく、酸化鉄系顔料を用いて意匠性を有する、家具、家電、建材等の表面化粧材として使用されるオレフイン系樹脂製の化粧用フィルムを提供することにある。
本件発明1は、「オレフイン系樹脂からなる厚さ0.03〜0.2mmのフィルムであって、着色剤として、少なくとも、オレフィン系樹脂100重量部当たり、酸化チタン0.5〜30重量部および酸化鉄0.1〜10重量部を含み、かつ下式で表される隠蔽度が0.5〜3であり、カレンダー加工法により製造することを特徴とするオレフイン系樹脂フィルム」であり、上記刊行物(2.1)(請求項4)にはポリプロピレン樹脂を主体とする化粧シートが、刊行物(3.1)(段落0016)には、顔料着色ポリプロピレン系着色シートが、刊行物(3.2)(段落0011、0012)には、隠蔽力を保持する着色顔料を添加したポリオレフインフイルムが記載されており、両者は「着色剤を含むオレフイン系樹脂フイルム」という点において一致する。
そこで、本件発明のオレフイン系樹脂フィルムの特徴を子細に吟味するに、本件各発明で限定する、「厚さ0.03〜0.2mmのフイルム」などは、刊行物(3.1)(段落0009)に記載のシートの厚さは「50〜200μm」程度がよい、刊行物(4.1)(段落0012)記載の「0.02〜0.5mm」程度のものと一致しており、これは汎用のフイルムの厚さであるといえる。
本件発明1の「着色剤として、少なくとも、オレフィン系樹脂100重量部当たり、酸化チタン0.5〜30重量部および酸化鉄0.1〜10重量部を含み」という点は、まず酸化チタン、酸化鉄それ自体が刊行物(2.3)(花田豊外1名著「プラスチック用着色剤」)の記載に見るとおり、ポリオレフイン用着色剤として周知慣用のものである。
まず、隠蔽力を保持する為にポリプロピレン系樹脂が適していることは刊行物(3.2)(段落0011)にみるとおりであり、一方で、酸化チタンおよびベンガラのような酸化鉄の無機顔料は、隠蔽力が大きいことは、刊行物(5.2)(第311頁下段)、刊行物(4.1)(段落0012)に記載のとおり周知の技術でもある。
そうすると、適正な隠蔽力を発現する為には、ポリオレフイン系樹脂と、無機顔料の組み合わせはまさにその指向に沿ったものといえる。
そこで、本件発明1の、特に代表的な無機顔料の酸化チタンおよび酸化鉄を併用する点について検討するに、これらの顔料を併用することは、刊行物(2.2)(段落0037)、刊行物(3.1)(段落0016)、刊行物(3.3)(段落0023)、刊行物(5.1)(段落0028、0029)に記載されているように、組み合わせの典型的な態様である。
その添加量である、酸化チタン「0.5〜30重量部」、酸化鉄「0.1〜10重量部」の限定事項も、無機顔料として常識的に決め得る範囲のものであり、これは、各引用例に示す添加量と重複する。
そこで、本件発明1の「隠蔽度が0.5〜3」について検討するに、特に隠蔽力を特定値に限定した理由は、化粧フイルムとしての実用上の理由(本件明細書段落0019)からであって、その隠蔽度「0.5〜3」という範囲のものを発現させるために、無機顔料を添加するという以外の、一体如何なる技術的工夫を凝らしているかという点で本件明細書を考察すると、操作上の特別な技術的配慮が殆ど無く、特に実施例を考察すると、例えば実施例1〜5において、酸化チタンをそれぞれ5、3、3、2、2重量部、FeOOHをそれぞれ0.3、5、ー、5、5 重量部という程度の配合量で実施して、隠蔽度が、0.7、1.3、1.2,1.3,1.4という程度の結果を達し得ている。
ということは、酸化チタンを2〜3重量部、酸化鉄0.3〜5重量部という、上記隠蔽度の比較的優れていることが知られた無機顔料の着色剤を通常の配合量に基づいて製作すれば、その結果、オレフイン系樹脂フイルムの隠蔽度なるものは、着色剤の使用に必然的に付随して、隠蔽力を保持するに適したポリオレフイン系フイルムが潜在的に固有の性質として本質的に備えている程度の特性と解することができる。
そうすると、本件発明1の「隠蔽度0.5〜3」という限定事項は、酸化チタン、酸化鉄の通常の配合量に付随して発現する程度の隠蔽性を、それは化粧フイルムという用途に必要な性質であるということを知見し、化粧フイルムとして求められる隠蔽度はどの程度が適正かという点で吟味すれば、その隠蔽度の範囲など自ずと容易に設定できる程度のことである。
さらに、本件発明1の「カレンダー加工法により製造する」という限定事項を検討するに、この成形方法自体は周知慣用手段(瀬戸正二監修「実用プラスチック用語辞典」第116頁昭和50年1月20日(株)プラスチック・エージ社発行)であり、専ら成形手段という方法に技術的特徴を有するものである。
ところで、本件発明1は、「オレフイン系樹脂フイルム」という高分子材料から成る「物」に係る発明である。
そうすると、この「カレンダー加工法」なるものは、専らフイルムの成形手段に主体とするものであり、そのポリオレフイン系樹脂フイルムという物の特性を表す為に、その成形手段が一体如何なる技術的意義或いは機能を果たしているかという点で当然に吟味する必要が有る。
勿論カレンダー加工法であるがゆえに、押出成形などに比して、例えば目ヤニの発生がないなどの特有の成形上の技術的意義があるにせよ、本件明細書を考察すると、化粧フイルムとしての物性上あるいは機能上において、特有の技術的意義を奏しているわけではなく、加工性においてすら他の成形手段に比して特段特徴つけられるようなものではない。
ということは、カレンダー加工法を限定することは、本件発明1のオレフイン系樹脂フイルムの入手する一成形態様を明示した程度のことであり、カレンダー加工法それ自体は周知慣用の成形手段であるという事情を考慮すれば、適正なフイルムの入手法を限定する程度のことであり、当業者なら容易に為し得ることである。
以上のとおりであるから、本件発明1は上記各刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえる。
本件発明2は、「酸化鉄がFeOOHおよび/またはFe2O3である請求項1記載のオレフイン系樹脂フィルム」を限定したものであるが、これは、既に指摘したとおり、刊行物(5.2)(第312頁中段)、刊行物(2.4)(P.15、P.26)に記載の通り、酸化鉄の着色剤として周知慣用のものであり、これを用いることなど当業者が容易に為し得ることである。
本件発明3は、「表面側に、紫外線吸収剤およびヒンダートアミン系化合物を含み、かつ555nmの全光線透過率が70%以上で、厚さ0.03〜0.2mmの実質的に透明なオレフイン系樹脂フィルムを積層した請求項1、2記載のオレフイン系樹脂フィルム」を限定したものであるが、表面を「紫外線吸収剤およびヒンダートアミン系化合物」を添加したもので被覆することは、刊行物(1.1)(段落0023)、刊行物(2.1)(段落0033)などの見られるとおり、任意に採用する程度の慣用手段であり、「かつ555nmの全光線透過率が70%以上」という限定事項も、実験報告書(3.4)(土田友久作成「全光線透過率測定データ」)、及び実験報告書(3.5)(土田友久作成「紫外・可視光線透過率測定データ」)として表示した解析データを参考にすれば、ごく普通のポリオレフイン系樹脂フイルムが保有する性質であり、この透明なオレフイン系樹脂フイルムを積層することなど当業者が容易に為し得ることである。
本件発明1〜3の作用効果として、着色剤を用いたことによる化粧用フイルムの作用効果は予測できることであり、しかも、ポリオレフイン系樹脂フイルムは、PVCに比べて、焼却において有毒ガスの発生が少ないことも、例えば刊行物(3.2)(段落0011)などにも見られるとおり公知である。
したがって、本件発明1〜3は、上記各刊行物に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえる。
(3.4) むすび
以上のとおり、本件発明1〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
オレフィン系樹脂フィルム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 オレフィン系樹脂からなる厚さ0.03〜0.2mmのフィルムであって、着色剤として、少なくとも、オレフィン系樹脂100重量部当たり、酸化チタン0.5〜30重量部および酸化鉄0.1〜10重量部を含み、かつ下式で表される隠蔽度が0.5〜3であり、カレンダー加工法により製造することを特徴とするオレフィン系樹脂フィルム。
【数1】隠蔽度=log1/T(但し、T(透過率)=I/Io Ioは入射光、Iは透過光)
【請求項2】 酸化鉄がFeOOHおよび/またはFe2O3である請求項1記載のオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項3】 表面側に、紫外線吸収剤およびヒンダートアミン系化合物を含み、かつ555nmの全光線透過率が70%以上で、厚さ0.03〜0.2mmの実質的に透明なオレフィン系樹脂フィルムを積層した請求項1,2記載のオレフィン系樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家具、家電、建材等の表面化粧材として使用されるオレフィン系樹脂製の化粧用フィルムに関する。
【0002】
【技術背景】
従来、上記のようないわゆる化粧用フィルムとして、主として塩化ビニル系樹脂(以下、PVCと記す)フィルムが使用されている。しかし、PVCフィルムは、焼却あるいは燃焼の際に、HClガスを発生する懸念があり、環境保護の観点から、脱PVCへの動きがある。
【0003】
この問題を解決するために、PVCに代わる素材としてオレフィン系樹脂が注目されている。だだし、オレフィン系樹脂は、周知の通り、PVCに比して一般に加工性に劣ることから、優れた意匠性を有する上記化粧用フィルムを低コストで製造することが困難であり、昨今の装飾性の高い製品が要求される市場性に適合しないものとして、今日まで敬遠されて来ていた。
【0004】
一方、フィルムを着色するための顔料として、フィルム(すなわち、フィルムの構成樹脂)の熱劣化を促進する懸念がなく、かつ変色劣化の進行の少ない顔料として、鉛、6価クロム、カドミウム等を含む重金属系の化合物が使用されている。しかし、鉛、6価クロム、カドミウム等を含む重金属系の化合物についても、種々の環境上の問題が懸念されている。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、以上のような実情下において、PVCフィルムが有している上記のような問題、およびフィルムを着色するための顔料に由来する環境上の問題を解決することのできる安価な化粧用フィルムを提供することを目的とする。
【0006】
【発明の概要】
上記目的を達成するために、本発明者は、(a)今日まで敬遠されて来たオレフィン系樹脂を敢えて使用したところ、意外にも、優れた意匠性を有する化粧用フィルムを、困難性を伴うことなく、したがって低コストで生産することができること、(b)しかもPVCを構成樹脂とする化粧用フィルムでは、これまで構成樹脂の熱劣化を促進し、かつ変色劣化を促進する顔料として使用不適とされて来た酸化鉄系の顔料を、これら両方の劣化の問題なく使用できることの知見を得て、本発明を提案するに至った。
【0007】
すなわち、本発明のフィルムは、オレフィン系樹脂からなり、厚さ0.03〜0.2mmであって、着色剤として、少なくとも、オレフイン系樹脂100重量部当たり、酸化チタン0.5〜30重量部および酸化鉄0.1〜10重量部を含み、かつ下式で表される隠蔽度が0.5〜3であり、カレンダー加工法により製造することを特徴とする。
【0008】
【数2】隠蔽度=log1/T(但し、T(透過率)=I/Io Ioは入射光、Iは透過光)
【0009】
本発明におけるオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂;エチレン-メチルアクリレート共重合樹脂等のエチレン-アクリル系共重合樹脂;エチレン-プロピレン共重合樹脂等が使用できる。中でも、化粧用フィルムとして好適な硬さを有するアイソタクチックのホモ、ランダムあるいはブロックポリプロピレンが適している。
【0010】
但し、上記のアイソタクチックポリプロピレンをオレフィン系樹脂として使用する場合には、エンボス絞が付与できる軟化温度範囲が狭く、得られるフィルムの後エンボス適性が悪い。そこで、後エンボス適性を改良するために、ポリエチレン、特に低密度ポリエチレンをブレンドするのが望ましい。ポリエチレンのブレンドの割合は、少なすぎればブレンド効果が発現せず、多すぎると相対的にアイソタクチックポリプロピレンの量が少なくなりすぎて化粧用フィルムとして好適な硬さを得ることができなくなるため、アイソタクチックポリプロピレン100重量部に対し、ポリエチレン(好ましくは低密度ポリエチレン)10〜300重量部、好ましくは30〜200重量部が適している。
【0011】
上記のフィルムは、カレンダー法により製造される。上記のフィルムをカレンダー加工法により製造する場合には、このカレンダー加工性を改良するために、上記のアイソタクチックポリプロピレンにシンジオタクチックポリプロピレンをブレンドすることが好ましい。シンジオタクチックポリプロピレンのブレンドの割合は、少なすぎればブレンド効果が発現せず、多すぎると相対的にアイソタクチックポリプロピレンの量が少なくなりすぎて、化粧用フィルムとして好適な硬さを得ることがきなくなるため、アイソタクチツクポリプロピレン100重量部に対し、シンジオタクチツクポリプロピレン5〜200重量部が適している。
【0012】
さらに、上記のフィルムにおいては、耐衝撃性を向上するために、上記のアイソタクチックポリプロピレンあるいはこれとポリエチレンやシンジオタクチックポリプロピレンとのブレンド物に、エチレン-プロピレンゴム、水添加SBR、ポリブテン等のゴム成分を配合することが望ましい。ゴム成分の配合割合は、所望の耐衝撃強度により異なり、一概には決められないが、本発明のフィルムでは、上記のオレフィン系樹脂100重量部に対し、10〜200重量部の範囲から所望の耐衝撃強度に応じて適宜選択すればよい。
【0013】
以上のオレフィン系樹脂に配合される着色剤の1つである酸化チタンは、一般にチタンホワイトと呼称される通常の白色顔料として使用されているルチル型、アナターゼ型のものが使用できるが、耐光性や耐候性の面からはルチル型のものが好ましい。
【0014】
上記の酸化チタンと共に配合される着色剤の他の1つである酸化鉄としては、FeOOH、Fe2O3、Fe3O4、Fe3O4・H2O等が使用できるが、特にFeOOH(すなわち、「鉄黄」と呼ばれる顔料)やFe2O3(すなわち、「ベンガラ赤」と呼ばれる顔料)が好適に使用できる。これらの酸化鉄は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0015】
上記の酸化チタン、酸化鉄の配合量は、オレフィン系樹脂100重量部に対して、酸化チタンが0.5〜30重量部、酸化鉄が0.1〜10重量部であり、これらが少なすぎればフィルムの隠蔽力が不充分となるのみならず、所望の着色が得られず、多すぎるとこれらの着色剤を配合したオレフィン系樹脂組成物の加工性が悪化する。特に、化粧用フィルムのように、硬度が高く、厚さが薄い場合には、この加工性の悪化が顕著となる。すなわち、本発明のフィルムを、カレンダー加工法で製造する場合には、カレンダーロールで圧延後にフィルム両端部を切除して行くが、酸化チタンや酸化鉄の配合量が多すぎると、特に硬度が高く厚さが薄いフィルムの場合に、この切除作業の途上において切除した部分の切れ(いわゆる「耳切れ」)が発生し易く、耳切れが発生すると、切除作業の続行が不可能となり、作業効率が極端に悪くなる。また、本発明のフィルムを押出加工法で製造する場合には、酸化チタンや酸化鉄の配合量が多すぎると、押出ダイのリップ部に組成物の滴がいわゆる「目ヤニ」状に付着し易く、該滴が押出直後のフィルム上に落下して表面状態を汚損する現象(フィルムの「目ヤニ」と呼ばれている)がしばしば発生する。
【0016】
上記の着色剤は、酸化チタン、酸化鉄のいずれにおいても、そのまま顔料としてオレフィン系樹脂に混合してもよいが、特に着色剤の添加量が少量の場合には微妙な量の違いによって所望の色が得られないばかりか、色ぶれが生じ易くなり色相安定性に欠けることから、予めオレフィン系樹脂で希釈しておいたもの(すなわち、希釈顔料としたもの)を使用することが望ましい。このときの希釈用オレフィン系樹脂としては、本発明のフィルムに使用しているオレフィン系樹脂との相溶性に優れるもの(特に望ましくは同種の樹脂)を使用し、また該オレフィン系樹脂として上記のようなブレンド物を使用する場合には、ブレンドする各オレフィン系樹脂中の最高融点を有するオレフィン系樹脂の融点以下の融点を有するオレフィン系樹脂を使用することが、均一な混合状態を容易かつ確実に得る上で望ましい。
【0017】
希釈度は、酸化チタン希釈顔料、酸化鉄希釈顔料のいずれにおいても、これら各希釈顔料中の各顔料濃度(すなわち、酸化チタン濃度、酸化鉄濃度)が、それぞれ1〜70wt%程度の範囲の中から、上記した各顔料(酸化チタン、酸化鉄)の所望配合量に応じて、適宜の希釈度のものを選択して使用する。
【0018】
なお、本発明のフィルムにおいては、以上の各成分の外に、必要に応じて、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、紫外線吸収剤、上述した鉛、6価クロム、カドミウム等を含む重金属系化合物以外の着色剤等の添加剤を配合してもよい。この重金属系化合物以外の着色剤としては、カーボンブラック、有機系のポリアゾブラウン、キナクリドンマゼンタ、ペリレンレッド、ポリアゾレッド、ピロールレッド、イソインドリノンイエロー、ポリアゾイエロー等の着色剤、無機系のチタンイエロー等の着色剤等を使用することができる。
【0019】
以上の本発明のフィルムは、化粧用フィルムとしての実用上の理由から、厚さが0.03〜0.2mmで、上記式で表される隠蔽度が0.5〜3であることが重要である。
【0020】
以上のような成分からなり、かつ以上のような特性を有する本発明のフィルムにおいては、片面あるいは両面に模様や文字等の印刷を施してもよい。印刷用のインクは、オレフィン系樹脂と被着性のあるインクであればよいが、前述した環境上の観点からハロゲンを含有しない、ウレタン系インクや熱硬化タイプのインクが好ましい。これらのインクを用いた印刷法は、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等の印刷手法が採用できる。勿論、印刷に先立ち、本発明のフィルムの被印刷面にコロナ放電処理等を施してもよい。
【0021】
また、本発明のフィルムにおいては、エンボス加工を施すこともできるし、エンボス加工により彫設された凹部にいわゆる谷印刷を施すこともできる。エンボス加工は、Tダイ押出機やカレンダー等でフィルムを作製する際に同時にエンボスする方法や、フィルム作製後に後工程でエンボスする後エンボス加工法等により行われる。エンボス加工は、上記の印刷を施した後に施してもよいし、上記の印刷に先立って施してもよい。なお、印刷に先立ってエンボス加工を施す場合には、印刷適性を考慮して、表面粗さ(Ra)が1.5μm以下、好ましくは0.2〜1.0μmの梨地状となるように施すのが望ましい。
【0022】
上記のように、必要に応じて印刷やエンボス加工が施された本発明のフィルムの表面側には、555nmの全光線透過率が70%以上、厚さが0.03〜0.2mmで、かつヒンダードアミン(光安定剤)と紫外線吸収剤とを含有する実質的に透明なオレフィン系樹脂フィルムを積層することもできる。ヒンダードアミンとしては、化1、化2に示すような化合物を使用することができ、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の公知の紫外線吸収剤が使用できる。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
実質的に透明なオレフィン系樹脂フィルムヘのヒンダードアミンの添加量は、オレフィン系樹脂100重量部に対し、0.05〜1.0重量部、紫外線吸収剤の添加量は、オレフィン系樹脂100重量部に対し、0.05〜2.0重量部が望ましい。この実質的に透明なオレフィン系樹脂フィルムを積層することにより、印刷の保護、深みのある意匠の表現性の向上が図れると共に、耐候性に優れたオレフィン系樹脂製の化粧用フィルムを得ることができる。
【0026】
実質的に透明なオレフィン系樹脂フィルムは、上述した本発明のフィルムの場合と同様、Tダイ押出法、カレンダー法、インフレーション法等の手段で製造できる。また、この実質的に透明なオレフィン系樹脂フィルムと上述した本発明のフィルムとの積層は、適当な接着剤を使用する方法や、熱融着による方法等で行われる。このとき、必要に応じて、コロナ放電処理を併用することもできる。
【0027】
実質的に透明なオレフィン系樹脂フィルムの片面あるいは両面にも、上述した本発明のフィルムと同様に、必要に応じて印刷やエンボス加工を施すこともできるし、エンボス加工により彫設された凹部にいわゆる谷印刷を施すこともできる。この印刷やエンボス加工等は、積層前に予め施しておいてもよいし、積層後に施すこともできる。印刷に先立ってエンボス加工を施す場合には、上述した本発明のフィルムと同様、表面粗さ(Ra)が1.5μm以下、好ましくは0.2〜1.0μmの梨地状となるように施すのが望ましい。
【0028】
なお、実質的に透明なオレフィン系樹脂フィルムと上述した本発明のフィルムとの積層が適当な接着剤を使用してなされる場合にあっては、接着強度を考慮して、接着面となる側の面に、予め、表面粗さ(Ra)0.2μm以上、好ましくは0.2〜5.0μmの梨地状となるようにエンボス加工を施しておくことが望ましい。ただし、接着面となる側の面にエンボス加工の後に印刷を施す場合には、この限りでなく、上記と同様、表面粗さ(Ra)1.5μm以下、好ましくは0.2〜1.0μmの梨地状となるようにエンボス加工を施しておくことが望ましい。
【0029】
さらに、本発明のフィルムにおいては、裏打材(バッキング材)として、上述した本発明のフィルムのオレフィン系樹脂と同種あるいは異種の、透明、半透明あるいは不透明のオレフィン系樹脂フィルムを積層してもよい。この裏打材としての透明、半透明あるいは不透明のオレフィン系樹脂フィルムも、上述した本発明のフィルムや実質的に透明なオレフィン系樹脂フィルムと同様に、Tダイ押出法、カレンダー法、インフレーション法等の手段で製造でき、この裏打材と本発明のフィルムとの積層も、適当な接着剤を使用する方法や、熱融着による方法等で行われ、必要に応じて、コロナ放電処理を併用することもできる。
【0030】
【実施例】
参考例1〜8、比較例1〜2表1の配合からなるオレフィン系樹脂組成物を用い、90mmの単軸押出機にて、シリンダー温度220℃、ダイス温度210℃の条件で、エンボスロール絞押し面のフィルム表面に表面粗さ(Ra)0.7μmの梨地絞が付与された厚さ0.1mmの本発明および比較のフィルムを製造した。
【0031】
このときの加工性の良否について観察した結果と、製品フィルムの隠蔽度とを表1に合わせて示した。なお、加工性の良否は、上記の条件で押出した場合の、いわゆる「目ヤニ」の発生頻度の多少で評価し、「目ヤニ」が発生しないか、発生したとしても極く僅かな場合を良好とし、「目ヤニ」が頻繁に発生した場合を困難とした。
【0032】
【表1の1】

【0033】
【表1の2】

【0034】
実施例1〜2、比較例3
表2の配合からなるオレフィン系樹脂組成物を用い、ロール温度185℃のカレンダー装置にて、エンボスロール絞押し面のフィルム表面に表面粗さ(Ra)0.5μmの梨地絞が付与された厚さ0.1mmの本発明および比較のフィルムを製造した。
【0035】
このときの加工性の良否について観察した結果と、製品フィルムの隠蔽度とを表2に合わせて示した。なお、加工性の良否は、上記の条件でカレンダー加工した場合の、いわゆる「耳切れ」の発生頻度の多少で評価し、「耳切れ」が発生しないか、発生したとしても極く僅かな場合を良好とし、「耳切れ」が頻繁に発生した場合を困難とした。
【0036】
【表2】

【0037】
参考例9
参考例1〜8の本発明のフィルムの、エンボスロール絞押し面で表面粗さ(Ra)0.7μmの梨地絞が付与された面に、コロナ放電処理を施した後、カーボンブラックを配合した黒色のウレタン系インクで木目模様印刷を行った。次いで、シンジオタクチックポリプロピレン/低密度ポリエチレン(60/40)100重量部に対し、ヒンダードアミン(旭電化社製商品名「アデカスタブLA-63」)0.2重量部、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.2重量部、フェノール系酸化防止剤(旭電化社製商品名「アデカスタブAO-60」)0.2重量部、フタロシアニンブルー0.005重量部を添加したオレフィン系樹脂組成物を原料とし、押出機にて作製した、エンボスロール絞押し面のフィルム表面に表面粗さ(Ra)2μmの梨地絞が付与された厚さ0.1mmの実質的に透明なフィルム(555nmの全光線透過率が86%)を、上記の印刷面に接着剤を用いてラミネートし、積層フィルムを得た。
【0038】
実施例3
実施例1〜2の本発明のフイルムの、エンボスロール絞押し面で表面粗さ(Ra)0.5μmの梨地絞が付与された面に、コロナ放電処理を施した後、カーボンブラックを配合した黒色のウレタン系インクで木目模様印刷を行った。次いで、アイソタクチックホモポリプロピレン/アイソタクチックランダムポリプロピレン/低密度ポリエチレン/シンジオタクチックポリプロピレン(20/30/40/10)100重量部に対し、ヒンダードアミン(旭電化社製商品名「アデカスタブLA-63」)0.2重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.2重量部、フェノール系酸化防止剤(旭電化社製商品名「アデカスタブAO-60」)0.2重量部、フタロシアニンブルー0.005重量部を添加したオレフィン系樹脂組成物を原料とし、ロール温度185℃のカレンダー装置にて作製した、エンボスロール絞押し面のフィルム表面に表面粗さ(Ra)2μmの梨地絞が付与された厚さ0.1mmの実質的に透明なフィルム(555nmの全光線透過率が83%)を、上記の印刷面に接着剤を用いてラミネートした後、加熱して木目状のエンボス加工を施して、積層フィルムを得た。
【0039】
参考例9、実施例3の印刷・積層した本発明の化粧用フィルムにつき、燃焼テストを行ったところ、HClガスの発生は全く認められなかった。また、サンシャインウエザオメーターでの1500時間照射による変色が極めて少なく、耐候性に優れるものであった。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明のフィルムによれば、次のような効果を奏することができる。
(1)焼却あるいは燃焼の際に、HClガスを発生する懸念はなく、また重金属系の化合物を用いていないので、環境保護の観点からみて好ましい。
(2)優れた意匠性を有する化粧用フィルムを低コストで製造することができ、装飾性の高い化粧用フィルムとして優位な市場性を期待することができる。
(3)耐候性に優れ、変色が極めて少ないので、化粧用フィルムとして長期間使用する用途に好適である。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
1.訂正事項は次のとおりである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を次のように訂正する。
「【請求項1】 オレフイン系樹脂からなる厚さ0.03〜0.2mmのフィルムでありて、着色剤として、少なくとも、オレフイン系樹脂100重量部当たり、酸化チタン0.5〜30重量部および酸化鉄0.1〜10重量部を含み、かつ下式で表される隠蔽度が0.5〜3であり、カレンダー加工法により製造することを特徴とするオレフィン系樹脂フィルム。
【数1】隠蔽度=log I/T(但し、T(透過率)=I/Io Ioは入射光、Iは透過光)」
(2)訂正事項b
公報第2頁第3欄第37行の「隠蔽度が0.5〜3であることを特徴とする。」を、「隠蔽度が0.5〜3であり、カレンダー加工法により製造することを特徴とする。」と訂正する。
(3)訂正事項c
公報第2頁第4欄第13〜19行の「上記のフィルムは、Tダイ押出法、・・・にシンジオタクチックポリプロピレンをブレンドすることが好ましい。」を、
「上記のフィルムは、カレンダー法により製造される。上記のフィルムをカレンダー加工法により製造する場合には、このカレンダー加工性を改良するために、上記のアイソタクチックポリプロピレンにシンジオタクチックポリプロピレンをブレンドすることが好ましい。」と訂正する。
(4)訂正事項d
公報第6頁第11欄第7行を「実施例1〜8、比較例1〜2」を、
「参考例1〜8、比較例1〜2」と訂正する。
これに伴い、【表1の1】及び【表1の2】の「実施例」を「参考例」と訂正する。
(5)訂正事項e
公報第13欄第25行の「実施例9〜10、比較例3」を、「実施例1〜2、比較例3」と訂正する。
これに伴い、【表2】の実施例の番号を「9」から「1」へ、また「10」から「2」へと訂正する。
(6)訂正事項f
公報第15欄第21行「実施例11」を、「参考例9」と訂正する。
(7)訂正事項g
公報第15欄第22行「実施例1〜8」を、「参考例1〜8」と訂正する。
(8)訂正事項h
公報第15欄第39行「実施例12」を、「実施例3」と訂正する。
(9)訂正事項i
公報第15欄第40行「実施例9〜10」を、「実施例1〜2」と訂正する。
(10)訂正事項j
公報第16欄第32行「実施例11〜12」を、「参考例9、実施例3」と訂正する。
異議決定日 2001-11-02 
出願番号 特願平8-300890
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C08J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 三谷 祥子  
特許庁審判長 三浦 均
特許庁審判官 中島 次一
柿沢 紀世雄
登録日 2000-06-09 
登録番号 特許第3074327号(P3074327)
権利者 アキレス株式会社
発明の名称 オレフィン系樹脂フィルム  
代理人 樋口 榮四郎  
代理人 石崎 剛  
代理人 木下 実三  
代理人 長谷川 曉司  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 吉田 勝廣  
代理人 田中 宏  
代理人 中山 寛二  

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