現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A21D
管理番号 1056679
異議申立番号 異議2000-74402  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-05-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-04 
確定日 2002-01-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3052362号「冷凍パン生地の製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3052362号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3052362号の請求項1に係る発明についての出願は、平成2年9月28日に特許出願され、平成12年4月7日に特許の設定登録がされ、その後、その特許について異議申立人 天野 明により特許異議の申立てがなされ、平成13年4月12日付けで取消理由がなされ、これに対し、特許権者よりその指定期間内である平成13年6月26日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の「【請求項1】パン生地の製造方法において、三糖類以上のグルコースを構成単糖とする非還元ホモオリゴ糖および/または二糖類アルコール以上の還元オリゴ糖を穀物粉に対して0.2〜20重量%添加し、小麦粉、水、酵母等のパン原料と共に混捏した後、冷凍することを特徴とする冷凍パン生地の製造方法。」とあるのを、「解凍後にほいろ工程を経て焼成される冷凍パン生地の製造方法において、三糖類以上のグルコースを構成単糖とする非還元ホモオリゴ糖および/または二糖類アルコール以上の還元オリゴ糖を穀物粉に対して0.2〜20重量%添加し、小麦粉、水、酵母等のパン原料と共に混捏した後、冷凍することを特徴とする冷凍パン生地の製造方法。」と訂正する。
イ.訂正事項b 明細書の第10頁第16行(特許公報第5欄31行)の「、ほいろ後冷凍法」を削除する。
ウ.訂正事項c 明細書の第6頁第2行(特許公報第4欄10行)の「マルトデキストリン類」の後の「、」を削除する。
エ.訂正事項d 明細書の第6頁第4行(特許公報第4欄12行)の「およ微」を「および」と訂正する。
(2)訂正の適否
上記訂正事項aは、「冷凍パン生地の製造方法」を、「解凍後にほいろ工程を経て焼成される冷凍パン生地の製造方法」に限定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、この訂正事項aは、願書に添付した明細書の第111頁2〜4行(特許公報第5欄36行〜38行)に記載されており、訂正事項bは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、訂正事項c、dは、明りょうでない記載の釈明に該当する。
そして、上記訂正事項は、いずれも、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正が、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。
「解凍後にほいろ工程を経て焼成される冷凍パン生地の製造方法において、三糖類以上のグルコースを構成単糖とする非還元ホモオリゴ糖および/または二糖類アルコール以上の還元オリゴ糖を穀物粉に対して0.2〜20重量%添加し、小麦粉、水、酵母等のパン原料と共に混捏した後、冷凍することを特徴とする冷凍パン生地の製造方法。」

4.引用刊行物
平成13年4月12日付けの取消理由において、「ジャパンフードサイエンス」、1986年4月号,第68〜76頁(以下、引用例という)には、
“新しい糖質原料「イソマルト500」の特性と加工食品への利用技術”なる表題の下に
1)「イソマルト500は、・・・イソマルトオリゴ糖とよばれている分岐少糖類を主成分としている。」(第68頁左欄1〜4行)と記載され、
2)「1.イソマルト500の特性 1-1 糖組成 イソマルト500は、イソマルトース、パノース、イソマルトトリオースなどの分岐オリゴ糖を主成分とし、かつ高分子成分(5糖類以上)を殆ど含まない低粘度の・・・糖質原料である。」(第69頁左欄下から7行〜同4行)と記載され、
3)表1には、イソマルト500についての糖組成例が記載されており、フラクトースなどの単糖類、マルトースなどの2糖類に加えて、3糖類(マルトトリース、パノース、イソマルトトリオース)19.0%、4糖類8.9%、5糖類2.6%(第69頁左欄)と記載され、
4)「イソマルト500の主要特性はまろやかで、且つ旨味のある甘味を有すること、水分保持力(保湿性)が高く、使用される各種食品に好ましい「しとり効果」を与え、でんぷん質の老化防止効果があること等があげられるが、その効果はイソマルトオリゴ糖によるものと思われる。」(第68頁左欄15行〜右欄4行)と記載され、
5)「イソマルト500をパンなどの発酵加工食品に使用すると、酵母によりブドウ糖、麦芽糖が発酵消費され、非発酵等であるイソマルトオリゴ糖が残り、まろやかな甘味と、保湿性による「しとり特性」をつける効果がある。」(第71頁、「1-8 発酵性」の項)と記載され、
6)「イソマルト500はベーカリー製品等のでん粉含有食品の老化防止に効果があり、その結果、これまでのでん粉含有食品では避けられなかった硬化や離水等の硬化による好ましからざる変化を押さえることのできるものと期待されている。」(第72頁1-9 老化防止の項)と記載され、
7)「2-1-1 食パン
小麦粉に対して、無水物換算6%の糖量を使用し、中種法により製パン試験を行った。対照区には上白糖を使用し、試験区にはイソマルト500を固形分で25%、および50%置換した表13に示した。表14はこの試験についての工程条件を一括表示したものである。発酵性については、フロアー、ホイロとも対照区と試験区の間に差が認められなかった。できあがったパンの製品水分については、対照区と試験区間に傾向的な差違が認められなかったが、硬度はイソマルト500の置換率が高い程、傾向的に低くなっており、保存日数の経時変化でみると、さらに大きな差違が認められる(表15,図13)。表16は製品中の残糖を分析した結果である。表16からも明らかなとおり、イソマルト500置換区は非発酵性等の残糖が多くなっており、これが保存中の老化(硬化)抑制に役立っているものと推察できる。・・・(1)発酵性および製品のすだち、内相の色については差が認められなかったが、焼色についてはイソマルト500の置換率が高くなるほど薄くなる傾向がある。・・・(2)製品保存中の老化(硬化)は、イソマルト500の置換率が高くなるほど少なくなることが認められた。」(第73頁左欄下から7行〜74頁左欄下から13行)と記載され、
8)表13には、パンの中種法による中種工程、及び本捏工程に、それぞれ強力粉、イースト、イーストフード、水を、及び強力粉、上白糖、イソマルト500、食塩、ショートニング、水を材料に使用し、これら材料の配合割合がイソマルト500の使用量に応じて対照区、25%区、50%区に分けて記載されている(第73頁左欄表13 配合の欄)。
9)表14には、中種工程、本捏工程において、混捏、生地温度、発酵時間等が具体的に記載されている(第73頁左欄表14工程の欄)。
10)表15には、製品の水分と硬度について、記載され、硬度(g/cm2)については、対照区は、103,25%区は、95,50%区は、90と記載されている(第73頁右欄)。
11)表17には、嗜好性として、25%区、50%区について対照区と対比して、焼色、すだち、食感、香り、甘味、味及び総合評価について、◎(対照区より良好)、○(対照区と同等)、×(対照区より劣る)として記載されており、25%区、50%区は、焼き色、すだち、香りは、対照区と同等であり、食感は、25%区、50%区は、対照区より良好であること等が記載されている(第74頁)。
12)「2-2 菓子パン ・・・発酵性については、フロアー、ホイロとも対照区に比べイソマルト500に置換区は若干良い結果を示した。製品の水分値は、イソマルト500の置換率が高いほど高くなる傾向となり、硬度についても同じ傾向があり、ソフトでしっとりした好ましい品質改善効果が明らかに認められた(表20,図14)。」(第74頁左欄下から6行〜同頁右欄下から2行、及び表2,図14参照)と記載され、
13)表18には、菓子パンの配合割合が記載され、中種、本捏合わせて強力粉100重量部に対し、イソマルト500を合わせて10重量部(25%区)及び20重量部(50%区)を配合する例が記載されている(第74頁左欄)。

5.対比・判断
本件発明に係る「三糖類以上のグルコースを構成単糖とする非還元ホモオリゴ糖」についてみると、本件明細書には、「構成グルコースの重合度が3以上であり、水素添加還元を施さない直鎖及び/又は分岐糖類である。また、かかる非還元オリゴ糖は、構成するグルコースが同種であるホモオリゴ糖であり、これらの糖類の単品もしくは混合物である。ホモオリゴ糖の例としては、(1)グルコースを構成単糖とし、α-1,4’グルコシド結合で構成されるマルトデキストリン類、α-1,4’グリコシド結合およびα-1,6’グリコシド結合で構成されるパノース類、α-1,3’グリコシド結合で構成されるニゲロオリゴ糖類、α-1,2’グリコシド結合で構成されるコージビオース類などが挙げられる。」(特許公報第2頁第4欄2〜16行)と記載され、本件発明の実施例でも「イソマルト500」なる品名で、「分岐オリゴ糖であり、三糖類以上のイソマルトデキストリン類含有量が39%、構成単糖の重合度が6以上の糖含有量が1重量%」(本件明細書の第2表実施例1のイソマルト500の欄参照)と説明されている。
一方、引用例には、パン類の製造方法において、「イソマルト500」を中種法により、パンでは、強力粉に対し、1.5重量%及び3.0重量%、菓子パンでは、同様に7.5重量%及び15.0重量%をそれぞれ添加することが記載され、該「イソマルト500」には、前記摘示事項3には、三糖類(マルトトリオース、パノース、イソマルトトリオース)19.0%含まれていると記載されており、該「三糖類」は、本件発明の「三糖類以上のグルコースを構成単糖とする非還元ホモオリゴ糖」であることは明らかであり、その添加量を強力粉当たりに対する量に換算すると、引用例には、強力粉に対し、三糖類以上のグルコースを構成単糖とする非還元ホモオリゴ糖を、パン生地では、強力粉に対し、0.28重量%、0.57重量%添加し、菓子パン生地では、該非還元ホモオリゴ糖を、1.42重量%、2.85重量%添加し、小麦粉、水、酵母等のパン原料と混捏してパン生地とする、パン生地の製造方法が記載されている。
そこで、本件発明と引用例記載の発明とを比較すると、後者の「強力粉」は、前者の「穀物粉」に相当するので、両者は、三糖類以上のグルコースを構成単位とする非還元ホモオリゴ糖(以下、非還元ホモオリゴ糖と略称する。)を穀粉に対して添加し、小麦粉、水、酵母等のパン原料と共に混捏することを特徴とするパン生地の製造に関する技術である点で一致し、上記非還元ホモオリゴ糖の配合量の点でも両者は重複している。
しかしながら、本件発明は、解凍後にほいろ工程を経て焼成される冷凍生地の製造方法であるのに対して、引用例に記載の発明では、通常のパンに焼成されるパン生地の製造方法である点、で両者は相違する。
この相違点について検討すると、従来、冷凍パン生地の改良剤として糖類、糖アルコール、多糖類等が用いられていることは周知である(たとえば、特開昭59-22-146号公報の特に第2頁左下欄12〜20行、本件特許公報第3頁左欄5行〜7行参照)。しかして、引用例には、糖類である、上記還元ホモオリゴ糖(イソマルト500)は、まろやかで且つ旨味のある甘味を有し、水分保持力(保湿性)が高く、使用される各種食品に「しとり効果」を与え、でんぷん質の老化防止効果があること等があることが記載され(摘示事項4)、さらにパン生地に含有させると、焼成後のパンの硬度は、イソマルト500の置換率が高いほど低い傾向と食感にすぐれたものが得られる旨記載されている(摘示事項7)。このように、パン生地に添加し、焼成されたパンに効果のある上記還元ホモオリゴ糖を、パン生地に添加し、その後冷凍して冷凍パン生地を製造することは、当業者が容易に想到できるものといえる。
また、冷凍された生地について、解凍後にほいろ工程を経て焼成することは、通常の方法であるから(必要なら、藤巻正生外4名編「食料工業」、第57頁右欄1行〜4行、1985年9月25日、(株)恒星社厚生閣発行)、この点にも、格別のものをみいだすことはできない。
そして、本件発明の効果について 本件明細書を検討すると、実施例(公報第3〜5頁)には、「イソマルト500」等の糖類を添加したパン生地を-80℃のフリーザーで凍結して冷凍パン生地を製造し、その後-26℃のフリーザー内で7日間貯蔵し、貯蔵終了後、25℃で2時間解凍し、第1発酵、第2混捏、第2発酵、丸め、成形発酵、焼成し、製品が得られたこと、製品の評価は、25℃で一夜貯蔵した後に行い、体積および内相の硬さを測定したことが記載されている。
本件公報の第4頁第1表には、製パン特性として、体積(ml)、硬さ(gwf)について、実施例1(イソマルト500)〜実施例5(マルチトール)、比較例1(無添加)、比較例2(シュクロース)、比較例3(ソルビトール)が記載され、体積は、シュクロースのみは1460であるのに対し、本件実施例では、1450〜1590の間にあること、硬さは、シュクロースのみでは、392であるのに対し、本件実施例では、185〜228であることが記載されている。このような記載からみて、体積については、やや向上され、硬度については、かなり改善されていることが認められる。しかしながら、上記の効果は、引用例に記載されたものから予測できる程度のものである。

特許権者は、平成13年6月26日付けの特許異議意見書において、本件発明の効果として、解凍後にほいろ工程を経て焼成する場合に、従来法で製造した冷凍パン生地に比べて、生地のほいろ時間の著しい延長がないことも効果の一つとして主張している(同書第2頁下から10行〜9行)が、本件明細書には何も記載がないので、上記主張は採用できない。
以上のとおり、本件発明は、引用例に記載された発明、および周知のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

6.むすび
したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
冷凍パン生地の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 解凍後にほいろ工程を経て焼成される冷凍パン生地の製造方法において、三糖類以上のグルコースを構成単糖とする非還元ホモオリゴ糖および/または二糖類アルコール以上の還元オリゴ糖を穀粉に対して0.2〜20重量%添加し、小麦粉、水、酵母等のパン原料と共に混捏した後、冷凍することを特徴とする冷凍パン生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、冷凍パン生地の製造方法に関するものである。
[従来の技術]
最近、パン生地を冷凍保存しておき、パン販売店内で解凍後に焼成して焼き立てのパンを消費者に提供する、いわゆるべークオフ・ベーカリーが普及してきている。その背景には、製パンの合理化(大量集中生産、工場設備の集約化、コストダウン、販売・配送範囲の拡大など)や労働条件改善(深夜・早朝・休日労働の解消、労働時間短縮など)などがある。ここで冷凍パン生地とは、小麦粉、水および酵母を必須の成分とし、必要に応じて甘味剤、塩類、膨張剤その他の成分を配合した、製パンまたは製菓用生地(以下、パン生地と称す)を冷凍したものをいう。その冷凍パン生地による製パンには、以下の方法が例示される。
1)生地冷凍法:
パン生地をそのまま冷凍し、解凍後に分割、成形、ほいろ(最終発酵)、焼成を行なう
2)分割生地冷凍法:
パン生地を分割した後、冷凍し、解凍後に成形、ほいろ、焼成を行なう
3)成形生地冷凍法:
パン生地を分割、成形した後、冷凍し、解凍後にほいろ、焼成を行なう
4)ほいろ後冷凍法:
パン生地を分割、成形、ほいろ工程の後、冷凍し、解凍後に焼成する
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら冷凍パン生地を長期間貯蔵すると、▲1▼生地のほいろ時間の著しい延長、▲2▼パン内相のすだちの劣化、パン外相の肌荒れ、▲3▼パン体積の低下、硬化やボソツキなどのテクスチャーの劣化、▲4▼パン形状の歪化、などの問題が生じる。
その原因として、冷凍貯蔵下での氷結晶成長に起因する酵母の凍結障害、小麦タンパク質の冷凍変性およびグルテンネットワーク構造の破壊、凍結障害酵母から漏洩してくる還元型グルタチオンによるグルテンのジスルフィド結合の還元に起因するパン生地の軟化などが考えられている(田中康夫:食品と低温、10(1),2(1984))。
これに対しては、パン生地への水の配合の減量、酵母の増量、冷凍耐性酵母の使用、シュクロース等の糖類や油脂含量を高める方法が以前より知られているが(神田芳文:食品と化学、1982秋季増刊、27(1982))、味やテクスチャーの面から対象となるパンの種類が限定されてしまう。一方、急速凍結することにより、均一かつ微細な氷結晶を形成させて氷結晶成長を抑制する方法(特開昭59-11134号公報)、あるいは臭素酸カリウムやアスコルビン酸(パン生地中ではデヒドロアスコルビン酸として機能する)などの酸化剤を添加することにより還元型グルタチオンの影響を回避する方法(E.Varriano-Marston et al.:Baker’s Digest,54(1),32(1980)、特開昭63-254940号公報等)などが行われている。
しかし、これらの方法では十分な品質を有し、長期間貯蔵が可能な冷凍パン生地が得られない。
[課題を解決するための手段]
そこで、本発明者らは、十分な効果を有する冷凍パン生地用改良剤を提供すべく種々検討した結果、特定の糖類および/または糖アルコール類を使用すると冷凍パン生地の劣化抑制に顕著な効果があることを見い出し、本発明に到達した。ここに冷凍パン生地用改良剤とは、冷凍パン生地を解凍後に焼成した製品の体積、形状、外相、内相、テクスチャーなどを改良する特定の性質を備えたものをいう。
すなち、本発明の要旨は、解凍後にほいろ工程を経て焼成される冷凍パン生地の製造方法において、三糖類以上のグルコースを構成単糖とする非還元ホモオリゴ糖および/または二糖類アルコール以上の還元オリゴ糖を穀物粉に対して0.2〜20重量%添加し、小麦粉、水、酵母等のパン原料と共に混捏した後、冷凍することを特徴とする冷凍パン生地の製造方法に存する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいう三糖類以上のグルコースを構成単糖とする非還元ホモオリゴ糖とは、構成グルコースの重合度が3以上であり、水素添加還元を施さない直鎖及び/または分岐糖類である。また、かかる非還元オリゴ糖は、構成するグルコースが同種であるホモオリゴ糖であり、これらの糖類の単品もしくは混合物である。
ホモオリゴ糖の例としては、
▲1▼グルコースを構成単糖とし、α-1,4′グルコシド結合で構成されるマルトデキストリン類、α-1,6′グリコシド結合で構成されるイソマルトデキストリン類、α-1,4′グリコシド結合およびα-1,6′グリコシド結合で構成されるパノース類、α-1,3ノグリコシド結合で構成されるニゲロオリゴ糖類、α-1,2′グリコシド結合で構成されるコージビオース類
などが挙げられる。
本発明において特に好ましい非還元オリゴ糖は、イソマルトデキストリン類である。市販されているイソマルトデキストリン類には、種々の組成のものがあるが、ごく一般的な組成物として三糖類以上のイソマルトデキストリン類含量が糖組成として30重量%以上のイソマルトデキストリン類混合物が好ましく用いられる。構成単糖の重合度が大きすぎると、小麦タンパク質の水和状態を破解する傾向があるので、好ましい重合度は3〜5の範囲から選ばれる。従って、重合度が6以上である糖の含量は通常10重量%以下、好まくは4重量%以下であるものがよい。
一方、二糖アルコール類以上の還元オリゴ糖とは、非還元オリゴ糖のうち構成単糖の重合度が2以上の非還元オリゴ糖を常法によって水素添加還元により得られる二糖アルコール類以上の糖アルコールである。分枝の有無や、構成単糖の種類には制限がなく、混合物であっても構わない。
本発明において特に好ましい還元オリゴ糖は還元マルトデキストリン類および還元イソマルトデキストリン類である。これらも市販のものには種々の組成のものがあるが、一般的な組成として二糖アルコール以上の還元マルトデキストリン酸含量が糖組成として50重量%以上の還元マルトデキストリン類混合物、および二糖アルコール以上の還元イソマルトデキストリン類含量が糖組成として45重量%以上の還元イソマルトデキストリン類混合物が好ましく用いられる。中でも、構成単糖類の重合度が5以上である糖アルコールの糖組成が10重量%以下であるものが特に好ましい。
本発明において非還元オリゴ糖および/または還元オリゴ糖の使用量は、パン生地の配合、穀類粉の種類、産地、収穫時期、冷凍貯蔵の温度および期間などによって若干異なるが、穀類粉に対して0.2〜20重量%、好ましくは甘味に対する影響を考慮して3〜10重量%の範囲から適宜選択される。さらに、非還元オリゴ糖と還元オリゴ糖とを併用する場合、その重量比は、通常、非還元オリゴ糖1重量部に対して還元オリゴ糖は0.3〜3.0重量部、好ましくは0.8〜1.7重量部の範囲から適宜選択される。
また、本発明の冷凍パン生地用改良剤は、従来のパン生地改良剤と同様に、糖類、糖アルコール類、多糖類、非糖質系甘味剤、油脂(ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油など)、乳化剤、酸化剤、還元剤、有機酸もしくはその塩、無機塩、酸素、イーストフードなどを適宜配合して用いることも可能であり、かかる場合、各添加剤の作用効果は損なわれることなく十分発揮される。
本発明の冷凍パン生地の製造方法に適用される原料穀類粉としては、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉などが挙げられるが、これらの混合物にも使用することが可能である。また、本発明の冷凍パン生地の製造方法は、食パンや欧風硬焼パンなどのようなリーンな配合のパン生地で特に効果が顕著であるが、ロール類(テーブルロール、バンズ、バターロールなど)、特殊パン(マフィン、ラスクなど)、蒸しパン(肉まん、餡まんなど)や菓子パン、クロワッサン、デニッシュペストリーなどのリッチな配合のパン生地およびクッキーやビスケットなどの菓子生地、ピッザクラスト、餃子や焼売などの皮などにも適用可能である。
なお、本発明の冷凍パン生地の製造方法は、直捏法、中種法などのいずれの製パン方法にも適用可能であり、混捏工程で、主原料である小麦粉などの穀類粉と水、および副材料である酵母、糖類、塩化ナトリウム、油脂、乳製品などと同時にまたは順次に加えて混捏される。また、パン生地の冷凍は生地冷凍法、分割生地冷凍法、成形生地冷凍法、ほいろ後冷凍法のいずれも採用可能であり、冷凍方法も液体窒素トンネルフリーザーやコンタクトフリーザー、エアーブラストフリーザーによる冷凍、あるいは冷凍庫内静置による冷凍などいずれの冷凍方法も適用可能であるが急速冷凍が望ましい。
冷凍貯蔵された冷凍パン生地は、所望の時に解凍して、必要に応じて寝かし、発酵、ほいろ工程を経て焼成等を行って製品にすることができる。
本発明の冷凍パン生地の製造方法は、特定の重合度を有する非還元オリゴ糖および/または還元オリゴ糖がパン生地の混捏工程で小麦タンパク質の水和状態をコントロールして良好なグルテンマトリックス構造を形成させ、さらにパン生地の冷凍貯蔵工程で氷点降下、ならびに分散相の水分子配列の規則性を向上させることにより小麦タンパク質の安定性の向上、氷結晶成長の阻害を担っていると考えられる。
[発明の効果]
本発明の冷凍パン生地の製造方法で製造された冷凍パン生地は、従来法で製造したものに比べて冷凍貯蔵下での氷結晶成長に起因する酵母の凍結障害、小麦タンパク質の冷凍変性およびグルテンネットワーク構造の破壊が起き難いので長期間冷凍貯蔵が可能である。つまり、解凍後の生地のほいろ時間の著しい延長、パン内相のすだちの劣化、パン外相の肌荒れ、パン体積の低下、テクスチャーの劣化、パン形状の歪化などの問題が生じ難いので製パン業界にとって画期的な有益性をもたらす。
さらに、本発明の冷凍パン生地の製造方法は、製品の風味に悪影響を及ぼさないことから、製造直後のパン生地から製造された製品と同様な風味、味、品質を示し、遜色がない。
[実施例]
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜5、比較例1〜3
[基本配合]
小麦粉「イーグル」(商品名、日本製粉(株)製)
250.0重量部
塩化ナトリウム(特級、キシダ化学(株)製
4.5重量部
グラニュー糖(日本製糖(株)製) 10.0重量部
ショートニング「Crisco」
(商品名、プロクター・アンド・ギャンブル社製)
10.0重量部
ドライイースト「スーパーカメリヤ」
(商品名、日清製粉(株)製) 3.0重量部
脱脂粉乳(森永乳業(株)製) 5.0重量部
水 177.5重量部*
*後で添加される冷凍パン生地用改良剤が固形分100%の場合を示す。同改良剤が水分を含む場合は、その水分の合計量をしめす。
上記の基本配合物に対して第1表に示したように、各種の糖類(冷凍パン生地用改良剤)を固形分換算で小麦粉重量の6重量%になるように各々添加した。


次いで家庭用オートベーカリー(FAB-72、船井電気(株))で18分間混捏してパン生地を調製した。得られたパン生地をポリエチレン製袋に充填し、-80℃のフリーザー内で凍結して冷凍パン生地を製造し、-26℃のフリーザー内に7日間貯蔵した。貯蔵終了後、25℃で2時間解凍し、家庭用オートベーカリ(FAB-72)を用いて、第1発酵、第2混捏、第2発酵、丸め、成形発酵、焼成、あら熱取りの工程を経て、製品を得た。
製品の評価は、25℃で一夜貯蔵した後に行い、体積(ml)および内相の硬さ(gwf)を測定した。なお、体積は菜種置換法により、硬さはレオナーRE-3305((株)山電)を用い、直径30mm円板状プランジャーを装着させて、40×40×25mmの直方体状の内相を圧縮速度1mm/secで25%ひずみを与えた時の荷重として測定した。
結果を第1表に示す。本発明の冷凍パン生地用改良剤を添加して調製した冷凍パン生地を用いて製造したパンは、パン生地の冷凍貯蔵による体積低下やパン内相の硬化が抑制された。また、パン内相のすだちの劣化、パン外相の肌荒れ、パン形状の歪化なども有効に抑制された。さらに、本発明の冷凍パン生地用改良剤は、製造直後のパン生地から製造された製品と同様な風味、味、品質を示し、遜色がなかった。
 
訂正の要旨 (訂正の要旨)
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の「【請求項1】パン生地の製造方法において、三糖類以上のグルコースを構成単糖とする非還元ホモオリゴ糖および/または二糖類アルコール以上の還元オリゴ糖を穀物粉に対して0.2〜20重量%添加し、小麦粉、水、酵母等のパン原料と共に混捏した後、冷凍することを特徴とする冷凍パン生地の製造方法。」を、「解凍後にほいろ工程を経て焼成される冷凍パン生地の製造方法において、三糖類以上のグルコースを構成単糖とする非還元ホモオリゴ糖および/または二糖類アルコール以上の還元オリゴ糖を穀物粉に対して0.2〜20重量%添加し、小麦粉、水、酵母等のパン原料と共に混捏した後、冷凍することを特徴とする冷凍パン生地の製造方法。」と訂正する。
イ.訂正事項b
明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の第10頁第16行(特許公報第5欄31行)の「、ほいろ後冷凍法」を削除する。
ウ.訂正事項c
明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の第6頁第2行(特許公報第4欄10行)の「マルトデキストリン類」の後の「、」を削除する。
エ.訂正事項d
明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の第6頁第4行(特許公報第4欄12行)の「およ微」を「および」と訂正する。
異議決定日 2001-12-04 
出願番号 特願平2-260154
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A21D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鵜飼 健  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 斎藤 真由美
大高 とし子
登録日 2000-04-07 
登録番号 特許第3052362号(P3052362)
権利者 三菱化学株式会社
発明の名称 冷凍パン生地の製造方法  
代理人 長谷川 曉司  
代理人 長谷川 曉司  
代理人 渡邊 薫  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ