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審決分類 審判 一部申し立て 発明同一  E06B
管理番号 1056686
異議申立番号 異議2002-70108  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-10-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-01-11 
確定日 2002-04-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第3187708号「板ガラス体保持部材及び板ガラス体」の請求項1、2、4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3187708号の請求項1、2、4に係る特許を維持する。 
理由 (本件発明)
特許第3187708号(平成8年3月28日出願、平成13年5月11日設定登録)の請求項1、2及び4に係る発明(以下、「本件発明1、2及び4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2及び4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

【請求項1】 板ガラス体本体(6)の周縁部を受入自在な凹溝部(8)を備えた硬質の部材本体(6a)を、板ガラス体支持用枠体(1)に嵌め込み自在に形成し、前記凹溝部(8)に前記板ガラス体本体(6)を受け入れた状態での前記部材本体(6a)と前記板ガラス体本体(6)の表裏面との間に弾性変形自在に介在する軟質保持部(6b)を、前記部材本体(6a)と一体的に設けてある板ガラス体保持部材であって、前記軟質保持部(6b)を構成するに、前記凹溝部(8)に受け入れる前記板ガラス体本体(6)を弾性変形力によって挟持する一対の挟持片部(12)を、前記凹溝部(8)の両縁部からそれぞれ溝内側へ突出させて設け、前記部材本体(6a)を構成するに、前記板ガラス体本体(6)の幅寸法に合わせて前記凹溝部(8)の底部(9)を幅狭に形成すると共に、底立ち上がり部分に板ガラス体本体(6)の表裏面に沿う姿勢の立ち上がり保持部を設け、前記立ち上がり保持部より凹溝開口部側に前記底部(9)より幅広の広幅部(10)を設けてある板ガラス体保持部材。
【請求項2】 前記広幅部(10)に、前記挟持片部(12)の弾性変形を許容する変形許容空間(13)を形成してある請求項1に記載の板ガラス体保持部材。
【請求項4】 請求項1〜3の何れかに記載の板ガラス体保持部材を、板ガラス体本体(6)の周縁部に嵌め付けてある板ガラス体。

(申立ての理由の概要)
申立人旭硝子株式会社は、甲第1号証(特願平7-242440号(特開平9-60434号)の願書に最初に添付された明細書又は図面)を提出し、本件発明1、2及び4は甲第1号証に記載された発明と実質的に同一であるから、本件発明1、2及び4の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、本件発明1、2及び4の特許を取り消すべきものと主張している。

(申立人が提出した甲第1号証記載の発明)
甲第1号証には、「複層ガラスの四辺にこれを囲撓するように設けられる複層ガラス用ビードであって、一対の側片部とこれらを連結する連結片部とで断面略U字状に形成されると共に硬質の樹脂で構成された形状保持部材と、当該形状保持部材の各側片部に溶着されると共に軟質の樹脂で構成された一対のシール部材とから成り、前記各シール部材は前記各側片部の上部内面に溶着されていることを特徴とする複層ガラス用ビード。」(特許請求の範囲請求項1)、「前記形状保持材部の両側片部が、前記連結片部から拡開するように斜めに延びていることを特徴とする・・・複層ガラス用ビード。」(同請求項4)、「・・・複層ガラス用ビードを、前記複層ガラスの四辺に対応する長さで且つその両端部を角度45度に切断し、これを当該複層ガラスに組み込んだことを特徴とする複層ガラス体。」(同請求項5)、「この構成によれば、シール部材の弾力を殺すことなく、シール部材を形状保持部材に、強固に溶着することができる。」(段落【0008】)、「この構成によれば、形状保持材部の断面形状が逆台形になり、上辺を同一とする方形のものに比して下辺が短い分、材料を節約することができる。また、斜辺となる両側片部の外面を、枠体などに取り付ける際のガイドとして活用することができる。」(段落【0012】)、「この複層ガラス用ビードは、複層ガラスとこれを組み込む障子の框との間に介在させるものであり、押出し成形などにより長手方向に長尺に形成される。」(段落【0019】)、及び「上ガラスシール部22および下ガラスシール部23は楔状に形成され、それぞれ上下に押し開かれるようにして複層ガラスAに密着する。」(段落【0021】)と記載され、これらの記載、及び図1,3の記載からみて、「複層ガラスの周縁部を受入自在な断面略U字状に形成された部分を備えた硬質の形状保持部材を、複層ガラスを組み込む障子の框に嵌め込み自在に形成し、前記断面略U字状に形成された部分に前記複層ガラスを受け入れた状態での前記形状保持部材と前記複層ガラスの表裏面との間に弾性変形自在に介在する軟質のシール部材を、前記形状保持部材と溶着一体化されて設けてある複層ガラス用ビードであって、前記軟質のシール部材を構成するに、前記断面略U字状に形成された部分に受け入れる前記複層ガラスを弾性変形力によって挟持する一対の下ガラスシール部を、前記断面略U字状に形成された部分の両縁部からそれぞれ内側へ突出させて設け、前記形状保持部材を構成するに、前記複層ガラスの幅寸法に合わせて前記断面略U字状に形成された部分の連結片部を幅狭に形成すると共に、一対の側片部を連結片部からの立ち上がり部分に設け、両側片部が前記連結片部からの立ち上がり部分より拡開するように斜めに延びて前記断面略U字状に形成された部分の開口部側が前記連結片部より幅広に形成された複層ガラス用ビード。」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

(本件発明1について)
そこで、本件発明1と先願発明とを対比すると、先願発明の「複層ガラス」、「断面略U字状に形成された部分」、「形状保持部材」、「複層ガラスを組み込む障子の框」、「軟質のシール部材」、「溶着一体化されて設けてある」、「複層ガラス用ビード」、「下ガラスシール部」、「連結片部」、及び「幅広に形成された」は、それぞれ、本件発明1の「板ガラス体本体」、「凹溝部」、「部材本体」、「板ガラス体支持用枠体」、「軟質保持部」、「一体的に設けてある」、「板ガラス体保持部材」、「挟持片部」、「底部」、及び「幅広の広幅部を設けてある」に相当するから、両者は、「板ガラス体本体の周縁部を受入自在な凹溝部を備えた硬質の部材本体を、板ガラス体支持用枠体に嵌め込み自在に形成し、前記凹溝部に前記板ガラス体本体を受け入れた状態での前記部材本体と前記板ガラス体本体の表裏面との間に弾性変形自在に介在する軟質保持部を、前記部材本体と一体的に設けてある板ガラス体保持部材であって、前記軟質保持部を構成するに、前記凹溝部に受け入れる前記板ガラス体本体を弾性変形力によって挟持する一対の挟持片部を、前記凹溝部の両縁部からそれぞれ溝内側へ突出させて設け、前記部材本体を構成するに、前記板ガラス体本体の幅寸法に合わせて前記凹溝部の底部を幅狭に形成すると共に、凹溝開口部側に前記底部より幅広の広幅部を設けてある板ガラス体保持部材」の点で一致し、本件発明は、凹溝部の底部を幅狭に形成すると共に、底立ち上がり部分に板ガラス体本体の表裏面に沿う姿勢の立ち上がり保持部を設けているのに対し、先願発明は、凹溝部の底部を幅狭に形成すると共に、底立ち上がり部分から拡開するように斜めに延びる一対の側片部を設けており、板ガラス体本体の表裏面に沿う姿勢の立ち上がり保持部を設けていない点で相違する。そして、この相違点に係る本件発明1の事項は、自明な事項とはいえないから、本件発明1は、先願発明と実質的に同一であるとはいえない。
なお、申立人は、「請求項1の発明の(D)の要件に示される『板ガラス体本体(6)の表裏面に沿う姿勢』とは、『板ガラス体本体(6)の表裏面』と平行であることを必ずしも必要とせず、【図7】に示されるように『凹溝部(8)の底部(9)』から拡開するようにやや斜めに延びていても構わないものと思料される。」(異議申立書第8頁第15〜19行)と述べているが、「沿う」とは「あるものの形状のとおりに並ぶ。もととするものに並行する。また、基準となるものから離れないようにする。」(岩波書店「広辞苑」第三版)という意味を有することから、「板ガラス体本体(6)の表裏面に沿う姿勢」とは、板ガラス体本体(6)の表裏面と平行であることが必要と認められ、そうすると、【図7】に示された例は、本件発明1の実施例とは認められないので、申立人の主張は採用できない。

(本件発明2及び4について)
本件発明2及び4は、本件発明1を更に限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、上記先願発明と実質的に同一であるとはいえない。

(むすび)
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1、2及び4についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2及び4についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-03-20 
出願番号 特願平8-73575
審決分類 P 1 652・ 161- Y (E06B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 蔵野 いづみ
鈴木 公子
登録日 2001-05-11 
登録番号 特許第3187708号(P3187708)
権利者 日本板硝子株式会社
発明の名称 板ガラス体保持部材及び板ガラス体  
代理人 北村 修一郎  

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