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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
審判 全部申し立て 発明同一  C09D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
管理番号 1056704
異議申立番号 異議2001-71833  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-08-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-05 
確定日 2002-03-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第3121756号「エアバッグ用皮膜形成エマルジョン型シリコーン組成物及びエアバッグ」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3121756号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 I 本件発明
特許第3121756号の請求項1ないし2に係る発明(平成8年2月1日出願、平成12年10月20日設定登録。)は、その特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】(A)(a)コロイダルシリカのコア80〜5重量%
(b)平均組成式
R1aHbSiO(4-a-b)/2・・・(I)
(式中、R1は炭素数1〜8の置換または非置換の1価の有機基、aは1.01〜2.01、bは0.01〜1.01、a+b=1.80〜2.20の数を示す。)で表される分子末端が水酸基で封鎖されたポリオルガノハイドロジェンシロキサンのシェル20〜95重量%からなるコロイダルシリカ-シリコーンコアシェル体100重量部、
(B)硬化触媒0〜5重量部、
(C)乳化剤1〜20重量部、および
(D)水50〜1000重量部
とから成ることを特徴とするエアバック用皮膜形成エマルジョン型シリコーン組成物。
【請求項2】請求項1記載のエマルジョン型シリコーン組成物の硬化被膜を形成したエアバック基布を縫製してなるエアバック。」
(以下「本件発明1ないし2」という。)
II 異議申立ての理由の概要
異議申立人は、甲第1号証(特開平5-202338号公報)、甲第2号証(特開平5-98579号公報)及び甲第3号証(特願平6-221771号の願書に最初に添付した明細書又は図面、特開平8-85405号公報参照)を提示し、本件発明1ないし2は、甲第1号証に記載された発明であるか、あるいは甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、先願に係る甲第3号証に記載された発明と同一であるから、本件発明1ないし2に係る特許は、特許法第29条第1項、第2項又は第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものであると主張している。
III 甲号各証に記載された発明
甲第1号証には「(A)一分子中にけい素原子に結合するアルケニル基を少なくとも2個有し、25℃における粘度が300センチストークス以上のオルガノポリシロキサン、(B)一分子中にけい素原子に結合した水素原子を3個以上含むオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)硬化触媒
を含む配合物を乳化剤の存在下、水にエマルジョン化して調製されたシリコーン水性エマルジョンよりなるエアバック用コーティング組成物。」(特許請求の範囲請求項1)、「エアバック用基布に請求項1記載のエアバック用コーティング組成物の硬化皮膜を形成してなるエアバック。」(同請求項2)、「上記コーティング組成物には、基布への接着性を良好にするため、・・・公知の接着助剤を添加してもよく、また、補強性を持たせるためにコロイダルシリカ等の補強剤を添加してもよい。」(4頁5欄43〜47行)と記載されている。
甲第2号証には「(A)一分子中にけい素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンを水に乳化してなるシリコーン水性エマルジョン、(B)アミノファンクショナルシランもしくはその加水分解物と酸無水物との反応生成物、エポキシファンクショナルシランもしくはその加水分解物、一分子中にイソシアナート基と加水分解性基とを有するオルガノシランもしくはその加水分解物の1種又は2種以上、(C)コロイダルシリカ、(D)硬化用触媒を含有するシリコーン水性エマルジョン組成物よりなるエアバック用コーティング剤。」(特許請求の範囲請求項1)、「エアバック布に請求項1記載のエアバック用コーティング剤の硬化被膜を形成してなるエアバック。」(同請求項2)が記載されている。
甲第3号証には「(A)一般式(略)・・・で示され、1分子中に少なくとも2個のOR2基を含むオルガノポリシロキサン ・・・100重量部、
(B)1分子中に少なくとも3個のSi-H結合を含有するオルガノポリシロキサン ・・・0.5〜50重量部、
(C)シリカ及び/又はポリシルセスキオキサン ・・・0.5〜100重量部、
(D)アミド基及びカルボキシル基含有オルガノアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物 ・・・0.1〜20重量部、
(E)エポキシ基又はアミノ基含有オルガノアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物 ・・・0.1〜20重量部、
(F)硬化用触媒 ・・・0.01〜10重量部
を主成分とし、かつ水性エマルジョンであることを特徴とするシリコーン系処理組成物で処理されたエアバック用基布。」(特許請求の範囲請求項1)が記載されている。
IV 対比・判断
1 特許法第29条第1項について
本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証には、オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び硬化触媒を含む配合物を乳化剤の存在下、水にエマルジョン化して調製されたシリコーン水性エマルジョンよりなるエアバック用コーティング組成物が記載され、また、コロイダルシリカを添加してもよいと記載されているから、両者は、乳化剤、水及び硬化触媒を含有するエアバック用皮膜形成エマルジョン型シリコーン組成物である点で一致し、該エマルジョン型シリコーン組成物の主成分が、本件発明1ではコロイダルシリカコアとポリオルガノハイドロジェンシロキサンシェルからなるコロイダルシリカ-シリコーンコアシェル体(以下「コアシェル体」という。)であるのに対し、甲第1号証記載の発明ではオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及びコロイダルシリカの、3成分を併用することが記載されているが、上記コアシェル体について記載されていない点で相違している。
したがって、両者は発明の特定事項において明らかに相違しているから、本件発明1は甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件発明2は、本件発明1のエマルジョン型シリコーン組成物を使用するエアバックに係る発明であるから、上記と同様な理由により、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
2 特許法第29条第2項について
本件発明1と甲第1号証記載の発明との、上記相違点について検討する。
甲第2号証には、オルガノポリシロキサンを水に乳化してなるシリコーン水性エマルジョン、アミノファンクショナルシラン、コロイダルシリカ及び硬化用触媒を含有するシリコーン水性エマルジョン組成物が記載されているが、該組成物の成分としてコアシェル体を使用することについて記載も示唆もされていない。
そうすると、本件発明1は甲第1号証記載の発明に、甲第2号証記載の発明を併せ考えても、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明1は、上記特定事項を採用することにより明細書記載の効果を奏するものである。
異議申立人は、甲第1又は2号証の組成物を硬化させた場合に、コロイダルシリカとポリオルガノシロキサンとの間にシロキサン結合が生じたコアシェル体を含む硬化被膜を与えることは自明の事項である等々の主張をしているので、以下検討する。
本件明細書には「ここでコロイダルシリカ-シリコーンコアシェル体とは、コロイダルシリカをコアとし少なくとも一部をシリコーン被覆した構成を主成分とし、・・・本発明に係るエマルジョン型シリコーン組成物は、次のようにして製造し得る。すなわち、・・・コロイダルシリカと、・・・オルガノシロキサン・・・を、水性媒体中、乳化剤の存在下に重縮合させることによって、コロイダルシリカ-シリコーンコアシェル体水性エマルジョンを調製し、次いで、・・・硬化触媒を添加することにより得られる。」(段落【0008】)と記載され、この記載によれば、コアシェル体は予め調製され、次いで、該コアシェル体をエマルジョン型シリコーン組成物の1成分として配合するものであると認められる。
そうすると、甲第1又は2号証に記載されているように、コロイダルシリカとシリコーン水性エマルジョンとを他の成分共に、硬化させたとしても、本発明1のコアシェル体が形成されるとはいえず、かつ、これが自明の事項であるとは認められない。また、他にこれを裏付ける証拠を見出すことができない。よって、異議申立人の主張は採用できない。
したがって、本件発明1は、甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明2についても、上記と同様な理由により、甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 特許法第29条の2について
本件発明1と先願に係る甲第3号証に記載された発明とを対比すると、甲第3号証には、各種オルガノポリシロキサン、シリカ及び硬化触媒を主成分とするエアバック用水性エマルジョン組成物が記載されているが、エマルジョン型組成物の成分として、上記コアシェル体を使用することについて記載されていない。
したがって、本件発明1と先願に係る甲第3号証記載の発明とは同一であるとはいえない。
また、本件発明2についても、上記と同様な理由により、先願に係る甲第3号証記載の発明とは同一であるとはいえない。
V むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-02-14 
出願番号 特願平8-16537
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C09D)
P 1 651・ 161- Y (C09D)
P 1 651・ 113- Y (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 花田 吉秋
特許庁審判官 山田 泰之
佐藤 修
登録日 2000-10-20 
登録番号 特許第3121756号(P3121756)
権利者 ジーイー東芝シリコーン株式会社
発明の名称 エアバッグ用皮膜形成エマルジョン型シリコーン組成物及びエアバッグ  
代理人 西川 裕子  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 義経 和昌  
代理人 古谷 馨  
代理人 小島 隆司  
代理人 古谷 聡  
代理人 持田 信二  

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