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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 G02B |
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管理番号 | 1056706 |
異議申立番号 | 異議2001-70128 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-10-11 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-01-12 |
確定日 | 2002-04-10 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3064857号「光リソグラフィー用光学部材および合成石英ガラスの製造方法」の請求項1〜4に係る発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3064857号の請求項1〜4に係る発明の特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯、本件発明 本件特許第3064857号は、平成7年3月28日に特許出願され、平成12年5月12日に特許の設定登録がなされ、その後、信越石英株式会社より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、これに対して権利者より特許異議意見書が提出されたものである。 本件発明は、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載されるとおりのものであり、このうち、その請求項1〜4には、次のとおりのことが記載されている。 【請求項1】合成石英ガラスを用いた光リソグラフィーレンズ用光学部材において、光軸に垂直な方向から見た脈理の強さがB級であって、且つ脈理の分布が光軸に垂直な平面に含まれるものであることを特徴とする光リソグラフィーレンズ用光学部材。 【請求項2】原料ガスと酸素ガスと水素ガスとをバーナから噴出し、ターゲット上に石英ガラス粉を堆積しガラス化させ、インゴットを形成して得られる光リソグラフィーレンズ用合成石英ガラスの製造方法において、前記インゴットの合成面の少なくとも一部を平面とし、インゴット中に形成される脈理が前記平面と平行な方向から見たときの強さがB級であって、且つ脈理の分布が前記平面と平行な平面に含まれるようにすることを特徴とする合成石英ガラスの製造方法。 【請求項3】請求項2に記載の合成石英ガラスの製造方法において、前記バーナと前記ターゲットとを相対的に移動させることにより前記インゴットの合成面の少なくとも一部を平面とすることを特徴とする合成石英ガラスの製造方法。 【請求項4】請求項3に記載の合成石英ガラスの製造方法において、前記ターゲットをX-Yステージ上で移動させることにより前記インゴットの合成面の少なくとも一部を平面とすることを特徴とする合成石英ガラスの製造方法。 II.特許異議申立の概要 特許異議申立人は、証拠として、 甲第1号証:信越石英株式会社作成によるカタログ「信越石英」QA-2 (`92.5 Prinnted in Japan) 甲第2号証:Heraeus社作成による「Quartz Glass for Optics」Q-B1/112E(E 3C 74 9Ko) 甲第3号証:信越石英株式会社作成によるカタログ「石英ガラス」Q-A 1/112.1J(`85.1.30) 甲第4号証:日本光学硝子工業会規格、「光学ガラスの脈理の測定方法」 、JOGIS 11-1975 甲第5号証:特開昭64-24032号公報 甲第6号証:KIRK-OTHMER「ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY」、THIRD EDITION VOLUME 20、1982年、p804 、805 を提示し、本件請求項1〜4に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、したがって、それらの特許は取り消されるべきである、というものである。 III.証拠の記載 甲第1号証には、以下のことが記載されている。 (A-1)光学用透明石英ガラスの品番であるSUPRASIL-P10、SUPRASIL-P20、SUPRASIL-P30、SUPRASIL-P-110、SUPRASIL-1、SUPRASIL-2、SUPRASIL-W1、SUPRASIL-W2につき、「いずれも超高純度の合成石英ガラスです。“P10”、“P110”と“1”は全方向脈理フリー、“P20”と“2”は一方向(主軸)について脈理フリーです。“P30”は脈理は含んでいますが、天然石英ガラスのような粒状構造は含んでいません。いずれも紫外線の透過率が極めて高い合成石英ガラスです。」(第5頁、光学用透明石英ガラスの表の上段) (A-2)「石英ガラスは光透過度などの光学的性質に極めて優れており、また耐熱性、耐放射線性などに優れた、極めて純粋な光学材料で、分光用プリズム・レンズ・窓・セル、各種レーザーの窓・レンズ・ミラー、超音波delay line、Schlierenの窓、ビームスプリッターなどの高級光学用途に使用されています。」(第27頁上段) (A-3)SUPRASIL-2には脈理が最大サイズが250mm未満のものでAであり、同サイズが250mmを超えるものでA-Bであること、SUPRASIL-P20の脈理がAであること。但し、脈理は、米軍規格MIL-G-174によるものであり、主表面を通しての評価であること(第27頁表1、及び、第28頁表1の注と説明の項)。 甲第2号証には以下のことが記載されている。 (B-1)石英ガラス製品の品質-その特性と用途と題し、脈理と気泡の欄には、品番HERASILIにつき、それが、「粒状組織なし、使用の方向と垂直な弱い層、気泡の程度0...1」であること、また、品番SUPRASILIIにつき、それが、「使用の方向と垂直な方向に分離した弱い層、気泡の程度0...1」であること(第8頁の表)。 甲第3号証には以下のことが記載されている。 (C-1)光学用透明石英ガラスの品番SUPRASILI及びSUPURASILIIが紫外線の透過率が極めて高い透明合成石英ガラスであること(第3頁下段) (C-2)「光学用石英ガラスには、ブロック、板、プリズム、レンズ、セル、棒などの形状があります。」(第3頁末行) (C-3)「窓ガラス、レンズおよび簡単な光学素子用には、図17および図18程度の材料で十分です。精密な光学機器用には、断面全体にわたって屈折率が一定であること、すなわち、粒状構造や脈理の全くないことが必要です。」(第22頁左欄第16〜19行) (C-4)「SUPRASILIIおよびInfrasilIIは使用する主軸方向においては、均一性がUltrasil、Homosil、SuprasilIおよびInfrasilIと同等ですが、他の二方向については劣ります。この場合粒状構造はありませんが、多少、脈理があります。」(第22頁右欄第16〜19行) 甲第4号証には、光学ガラスの脈理の測定方法(日本光学硝子工業規格)について、次のことが記載されている。 (D-1)この規格でいう脈理とは,光学ガラス中に存在する筋状あるいは層状の光学的に不均質な部分をいうこと(第17頁本文第2行の用語の意味の項)。 (D-2)標準試料にはBとCの2種類があり、このうち、標準試料Bの脈理の程度は、薄くて分散した脈理で眼に見える限界のものであり、標準試料Cの脈理の程度は、研摩面に対して垂直な方向と平行な脈理がわずかにあるものであること(第17頁中段の試料及び標準試料の項)。 (D-3)測定方法は図1に示される装置を用いて、標準試料と比較し、脈理の程度は、表2によって分類し、その級を表示すること。級1の脈理の程度は、認められないもの、級2の脈理の程度は、標準試料Bと同程度のもの、級3の脈理の程度は、標準試料Cと同程度のもの、級4の脈理の程度は、標準試料Cより多いか、あるいは濃い平行な脈理のあるものであること。(以上、第17頁下段の測定方法と表示の項) 甲第5号証には次のことが記載されている。 (E-1)「シラン化合物の直接火炎法で作られた合成シリカを回転している円形容器内に堆積させる石英ガラスの製造方法において、回転しているかあるいは往復運動させているシリカ合成用のバーナーを用いて石英ガラス塊を作り、ついでこのようにして得た石英ガラスを切断することを特徴とする石英ガラス部材の製造方法」(特許請求の範囲第1項) (E-2)「そして、この光リソグラフィー装置に使用されるマスク材については従来一般の光学ガラスが使用されていたが、・・・短波長の光源を使用する光リソグラフィー装置には光の透過率の点から一般の光学ガラスを使用することは適当はでなく、これには紫外域での透過率のよい石英ガラス、特には合成石英ガラスを用いることが試みられている。」(第1頁右下欄第11〜18行) (E-3)「しかし、この合成石英ガラスには通常脈理と呼ばれている成長縞が存在しているために、これを光リソグラフィー装置のフォトマスク材に使用するとこの脈理によって光の屈折率が各部位で微妙に異なってくるためにこのマスクを透過した投影露光による転写パターンがぼけて明瞭なパターンが得られなくなるという不利がある。」(第1頁右下欄第19行〜第2頁左上欄第5行) (E-4)「すなわち、本発明者らは前記したプールの製造方法における不利を解決する方法について種々検討した結果、シリカの堆積、ガラス化工程を合成シリカ製造用のバーナーを回転させるか往復運動させると溶融されたシリカ溶融体がより均一に加熱されて脈理が平行になる範囲が大きく拡げられることを見出し、この方法を実施する場合の容器、バーナーの運動方法などについて研究を進めて本発明を完成させた。」(第2頁右上欄第15行〜左下欄第3行) (E-5)「本発明の方法はシラン化合物の直悦火炎法で合成シリカを製造するのであるが、この合成シリカの製造は第1図a)に示したように市販の酸水素炎バーナー1にシラン化合物2、例えば・・・などと酸素3、水素4を供給し、これらのシランの熱分解、加水分解でシリカを発生させる公知の方法で行えばよく」(第2頁左下欄第6〜14行) (E-6)「本発明の方法ではシラン化合物として四塩化けい素を始発剤として得られた合成シリカは回転している円形容器に堆積され、ガラス化されて合成石英とされるものであるが、このようにして得られた合成石英は合成シリカの堆積方法と垂直な面状に成長縞10が発生し、これが脈理となるけれども、バーナーが回転するか、平行往復運動していてこれらのバーナーからの加熱が広い範囲でかつ均一になるのでこの脈理の形成が第1図a)のように中央部では平らにかつ各層が平行なものとなり、この平らで平行な部分が広い範囲に及ぶようになるので、この部分を切り出せば一方向脈理フリーのマスク基板用合成ガラス板を従来法にくらべて容易にかつ効率よく得ることができるという工業的な有利性が与えられる。」(第3頁左上欄第16行〜右上欄第10行) 甲第6号証には、ガラス状シリカ製品に関し、Suprasil(光学導波管)が、原料として四塩化けい素等の蒸気を用い、製法として火炎加水分解方法を用いたものに由来すること(図12)が示される。 IV.対比、検討 IV-1.請求項1について 本件請求項1に係る発明(以下、適宜、「本件発明」という)と甲第1号証に記載の発明とを対比する。 甲第1号証には、(A-1により)、合成石英ガラスのSUPRASIL-2につき、一方向(主軸)について脈理フリーで、脈理を主要面を通して評価した場合にAとA-B(米軍規格による)であって、紫外線の透過率が極めて高い合成石英ガラスであることが記載されている。 そして、甲第2号証及び甲3号証に記載されるSUPRASILIIは、いずれも石英ガラスに関するものであり、そして、それらは甲第1号証のSUPRASIL-2をローマ数字で表したものに相当し、また、いずれのものも、そこに示される石英ガラスの物性、特性において共通するものであるから、それらSUPRASILIIは、甲第1号証に記載のものとはその表示方法が異なるだけであって、実際には、甲第1号証に記載のSUPRASIL-2と同じものを指していると解されるものである。 そこで、甲第1号証に記載される合成石英ガラスのSUPRASIL-2(SUPRASIL-II)につき、更に、甲第2号証及び甲第3号証の記載をみると、そこには、SUPRASIL-2につき、脈理に関し、使用の方向と垂直な方向に分離した弱い層があることが示され(前記B-1)、使用する主軸方向においては均一性がUltrasil等と同等であるが、他の二方向については劣ることが示される(前記C-4)。 この外、甲第1号証には、前記(A-2)により、石英ガラスは、分光用プリズム・レンズ・窓・セル、各種レーザーの窓・レンズ・ミラー、超音波delay line、Schlierenの窓、ビームスプリッターなどの高級光学用途に使用されていることが示されるものである。 してみれば、甲第2号証及び甲第3号証を参照しつつ、甲第1号証に記載をみると、そこには、 「その脈理については、一方向(主軸)について脈理フリーであるが、使用の方向と垂直な方向に分離した弱い層の脈理が存在し、また、脈理を主要面を通して評価した場合にAとA-B(米軍規格)であり、そして、その均一性については、使用する主軸方向に比べ、他の二方向については劣るという、合成石英ガラスのSUPRASIL-2を、用いたレンズ用光学物品」に関する発明が、実質上、記載されているものと認められる。 そこで、本件発明と甲第1号証に記載の発明とを対比すると、両者は、 「合成石英ガラスを用いたレンズ用光学部材において、脈理が存在するレンズ用光学部材」である点で共通する。 しかし、まず、その光学部材の用途に関し、(a)本件発明は、「光リソグラフィーレンズ用」とするのに対し、甲第1号証のものではレンズが明示されるものの、光リソグラフィーの用途までは示されない点(相違点a)、次に、当該脈理の程度に関し、(b)本件発明では、「光軸に垂直な方向から見た脈理の強さがB級」とするものであるのに対し、甲第1号証のものでは、米軍規格の脈理の程度が示されるに過ぎず、本件発明のように日本光学ガラス工業規格11による評価ではなく、本件発明のような脈理の程度が示されない点(相違点b)、次いで、当該脈理の存在形態に関し(c)「脈理の分布が光軸に垂直な平面に含まれるもの」であるのに対し、甲第1号証のものでは、脈理は、使用の方向と垂直方向に分離した弱い層の形態で存在するものの、それが平面であるとまでは具体的に示されない点(相違点c)で、相違する。 特許異議申立人は、甲第1号証には光リソグラフィーレンズの用途を含む種々の用途が記載されているというものであるが、確かに、前記(A-2)、(C-2)及び(C-3)等に、種々の光学的用途が示されているとしても、その光学的物性として、高透過率だけでなく高度に均質な屈折率分布が要請される光リソグラフィーレンズの用途までが、そこに示されているといえない。 以下、相違点に関する構成が容易に想到できるか否かにつき検討する。 まず、相違点aにつき検討する。 本件明細書の記載(特に、段落0005〜0010)によれば、従来、光リソグラフィーレンズについては、高透過率だけでなく、高均質な屈折率分布が要請され、そのため、脈理のないものを用いていたものであることが示される。 そして、このことは、他の文献においても示されるものである。 すなわち、甲第3号証には、前記(C-3)により、「窓ガラス、レンズおよび簡単な光学素子用には、図17および図18程度の材料で十分です。精密な光学機器用には、断面全体にわたって屈折率が一定であること、すなわち、粒状構造や脈理の全くないことが必要です。」と、精密な光学機器には、脈理の全くないことが必要であることが示され、また、権利者が提出した参考資料1(「石英ガラスの世界」、株式会社工業調査会、1996年2月1日、第78〜80頁)には、「LSI製造用に縮小投影機(ステッパ)の投影レンズも三方向脈理なしの材料が要求されます。」(第80頁本文第1〜3行)と、脈理の存在しないものが要求されること、そしてまた、同参考資料2(特開平7-74097号公報の段落0016)にも同様なことが示されるものである。 以上のとおり、従来、光リソグラフィーレンズについては、高透過率だけでなく、高均質な屈折率分布が要請され、そのため、脈理のないものが要請されるものであり、このことは、本件出願人だけでなくこの分野の当業者において、共通の認識であったと解されるものである。 ところが、甲第1号証に記載のものは、その脈理につき、一方向(主軸)について脈理フリーであるが、使用の方向と垂直な方向に分離した弱い層の脈理が存在するものであり、そこに、明らかに脈理が存在するものである。 してみれば、例え、光リソグラフィーレンズの素材として合成石英ガラスが用いられることが公知であるとしても、甲第1号証に記載のものを、光リソグラフィーレンズに適用して、本件発明のようにすることは、当業者であれば、容易に想到することができないものである。 次に、他の甲号証の記載をみると、甲第2及び3号証のものでは、甲第1号証に記載のものの用途に関し、それ以上のことを教示するものではなく、また、甲第4号証のものでは、光学ガラスの脈理の測定方法(日本光学硝子工業規格)が示されているだけであり、甲第5号証のものでは、光リソグラフィー装置用に関するものであっても、その使用態様からみて要請される光学的物性が著しく劣ると解されるフォトマスク材の用途が示されるだけであり、更に、甲第6号証のものでは、Suprasil、しかも、光学導波管の品番のものの製造方法が示されるだけであり、いずれにしても、甲第2〜6号証の記載からは、甲第1号証の発明を光リソグラフィーレンズに適用することが教示されない。 そして、本件発明は、この相違点に関する発明の特定事項を備えることにより、その余の発明の特定事項と相俟って、明細書記載の効果を奏したものである。 したがって、上記相違点aに関する発明を特定するための事項が容易に想到することができないものである。 してみれば、他の相違点である相違点b及びcにつては、検討するまでもなく、本件発明は、甲第1〜6号証に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるということができない。 IV-2.請求項2について 本件請求項2に係る発明(以下、適宜、「本件発明2」という)と甲第5号証の記載を対比すると、両者は、 「原料ガスと酸素ガスと水素ガスとをバーナから噴出し、ターゲット上に石英ガラス粉を堆積しガラス化させ、インゴットを形成して得られる合成石英ガラスの製造方法において、前記インゴットの合成面の少なくとも一部を平面とし、インゴット中に形成される脈理の分布が前記平面と平行な平面に含まれるようにする合成石英ガラスの製造方法」である点で、軌を一にするものである。 しかし、まず、該合成石英ガラスの用途につき、(イ)本件発明2では、「光リソグラフィーレンズ用」であるのに対し、甲第2号証のものは、具体的には、光リソグラフィー装置のフォトマスク材が示されるだけで、該光リソグラフィーレンズの用途が示されない点(相違点イ)、次に、当該脈理の程度に関し、(ロ)本件発明2では、「光軸に垂直な方向から見た脈理の強さがB級」とするものであるのに対し、甲第5号証のものでは、脈理の程度につき示されるものが何もない点(相違点ロ)で、相違する。 このうち、相違点イについて検討する。 従来、光リソグラフィーレンズについては、高透過率だけでなく、高均質な屈折率分布が要請され、脈理のないものが要請されるものであり、このことは、前記IV-1.で記載したとおりである。 そして、甲第5号証で製造される石英ガラスは、前記(E-6)により、「この脈理の形成が第1図a)のように中央部では平らにかつ各層が平行なものとなり、この平らで平行な部分が広い範囲に及ぶようになる」とされ、明らかに脈理の存在を前提とするものである。 してみれば、例え、光リソグラフィーレンズの素材として合成石英ガラスが用いられることが公知であるとしても、甲第1号証に記載のものを、光リソグラフィーレンズに適用して、本件発明のようにすることは、当業者であれば、容易に想到することができないものである。 この相違点イにつき、他の甲第1〜4及び6号証の記載をみても、そこから、光リソグラフィーレンズの用途が導き出せず、このことは、前記IV-1.で記載したとおりである。 したがって、上記相違点イに関する発明を特定するための事項が容易に想到することができないものである。 してみれば、他の相違点である相違点ロにつては、検討するまでもなく、本件発明2は、甲第1〜6号証に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるということができない。 IV-3.請求項3及び4について 本件請求項3に係る発明は、本件請求項2のものに、バーナーとターゲットとを相対的に移動させるという発明の特定事項を更に付加するものであり、また、本件請求項4に係る発明は、本件請求項3のものに、ターゲットの移動方法に関する発明の特定事項を更に付加するものであって、これら本件請求項3及び4に係る発明は、本件請求項2の発明の特定事項を全て引用するものである。 したがって、上記IV-2.で説示した理由と同じ理由により、本件請求項3及び4に係る発明は、甲第1〜6号証に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるということができない。 IV. まとめ 以上のとおりであり、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1〜4に係る発明の特許を取り消すことができない。 また、他に本件請求項1〜4に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2002-03-12 |
出願番号 | 特願平7-70165 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(G02B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 深草 祐一 |
特許庁審判長 |
多喜 鉄雄 |
特許庁審判官 |
唐戸 光雄 野田 直人 |
登録日 | 2000-05-12 |
登録番号 | 特許第3064857号(P3064857) |
権利者 | 株式会社ニコン |
発明の名称 | 光リソグラフィー用光学部材および合成石英ガラスの製造方法 |
代理人 | 渡辺 隆男 |
代理人 | 望月 孜郎 |
代理人 | 鈴木 憲七 |
代理人 | 曾我 道治 |
代理人 | 曾我 道照 |
代理人 | 池谷 豊 |
代理人 | 福井 宏司 |
代理人 | 古川 秀利 |