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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C23C
管理番号 1056717
異議申立番号 異議2000-74315  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-05-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-11-28 
確定日 2002-03-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第3047241号「液状半導体形成材料気化供給装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3047241号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3047241号発明は、平成1年10月11日に特許出願され、平成12年3月24日にその特許権の設定登録がなされたものである。
これに対し、尾島浩敬から特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、特許権者から特許異議意見書が提出されたものである。
2.特許異議申立てについての判断
(1)特許異議申立ての概要
特許異議申立人尾島浩敬は、証拠方法として、甲第1号証(特開平1-215793号公報)及び甲第2号証(特開昭50-147669号公報)を提出して、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであると主張している。
(2)本件の請求項1に係る発明
本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】テトラエトキシシランなどの液状の半導体形成材料を気化して気相反応装置へ供給するための液状半導体形成材料気化供給装置であって、該装置は、液状半導体形成材料噴霧機構と、該噴霧材料を加熱気化する機構とからなり、前記液状半導体形成材料噴霧機構は不活性ガスからなるキャリアガスを吹き込む霧吹き式であり、当該液状半導体形成材料噴霧機構の噴霧口は前記加熱気化機構の端部に配設されており、前記加熱気化機構の室内は噴霧材料を拡散するのに十分な容積を有することを特徴とする液状半導体形成材料気化供給装置。」
(3)証拠の記載内容
甲第1号証及び甲第2号証には、それぞれ次の事項が記載されている。
甲第1号証:特開平1-215793号公報
(a)「(ii)シリコン原料液体の気化熱によってシリコン原料液体の温度が低下してしまい、シリコン原料ガスを化学的蒸着装置本体すなわち反応室に対して長時間安定して供給できない欠点があり、」(第2頁右上欄第4〜8行)
(b)「(1)(a)化学的蒸着装置本体に対し高速で気体を供給する高速気体供給管と、(b)前記高速気体供給管に対しシリコン原料液体を噴出せしめる噴出手段とを備えてなることを特徴とする化学的蒸着装置。
(2)シリコン原料液体が、加熱手段により加熱されてなることを特徴とする特許請求の範囲第(1)項記載の化学的蒸着装置。」(第1頁左欄特許請求の範囲の項)
(c)「ここで高速気体供給管14によって供給される気体は、加熱手段(図示せず)により予め加熱されておれば、シリコン原料液体の気化を促進できるので好ましいが、」(第3頁左上欄第13〜16行)
(d)「同様にシリコン原料容器11に対して加熱手段(図示せず)を配置しシリコン原料液体11aを加熱しておけば、シリコン原料液体の気化を促進できるので好ましいが、」(第3頁左上欄第18行〜右上欄第1行)
甲第2号証:特開昭50-147669号公報
「第1図は、この発明による加熱水蒸気生成機構を用いた半導体への熱酸化膜形成装置を示すもので、スプレイガン1から噴射させた噴霧水2を反応管3内の反応管3の加熱部4の熱を利用して空中で瞬間的に加熱水蒸気5に変える構成を有している。」(第1頁右下欄第12〜17行)
(4)当審の判断
甲第1号証には、水素ガスなどの高速気体供給管に対してシリコン原料容器の原料液体を噴出させる噴出手段を備えた「化学的蒸着装置」が記載されている。そして、この装置の噴出手段の具体例であるシリコン原料液体供給管15は本件発明の実施例の「液状半導体形成材料給送管20」に相当し、高速気体供給管とシリコン原料液体供給管との接点の構造は液状半導体形成材料噴霧機構であってキャリアガスを吹き込む霧吹き式と云うことができる。また、またシリコン原料液体は加熱気化されて反応室に供給されるものであると云えるから、甲第1号証の「化学的蒸着装置」を本件発明に則って整理すると、甲第1号証には、「液状の半導体形成材料を気化して気相反応装置へ供給するための液状半導体形成材料気化供給装置であって、該装置は、液状半導体形成材料噴霧機構と、該液状半導体形成材料を加熱気化する手段とからなり、前記液状半導体形成材料噴霧機構はキャリアガスを吹き込む霧吹き式である液状半導体形成材料気化供給装置。」という発明(以下、「甲1発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件発明と甲1発明とを対比すると、両者は、液状半導体形成材料を噴霧して供給するという基本的な点では共通するものの、次の(イ)〜(ハ)の点で相違していると云える。
(イ)本件発明では、加熱気化機構において噴霧された液状半導体形成材料を加熱気化するのに対し、甲1発明では、液状半導体形成材料を予め加熱するか、液状半導体形成材料を搬送する高速気体を予め加熱して液状半導体形成材料を加熱気化する点
(ロ)本件発明は、その液状半導体形成材料噴霧機構の噴霧口を加熱気化機構の端部に配設するのに対し、甲1発明は、このような構成を有しておらず、気化した半導体形成材料を反応室に供給するだけである点
(ハ)本件発明は、その「加熱気化機構」の室内が噴霧材料を拡散するのに十分な容積を有するのに対し、甲1発明は、このような加熱気化機構を有していない点
次に、これら相違点について検討すると、甲第2号証には、「半導体への熱酸化膜形成装置」に関し、反応管内にスプレイガンを挿入設置して液体の水を噴霧しこれを加熱気化する装置が記載されているが、この装置は、スプレイガンで直接に反応室内に液体を噴霧するものであるから、本件発明のいわゆる気相反応装置と別個に設けられた「加熱気化機構」について何ら示唆するものではない。
してみると、甲第2号証も、本件発明の上記相違点について何ら示唆するものではないから、本件発明は、甲第1〜2号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
3.むすび
以上のとおり、特許異議申立の理由及び証拠方法によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-02-19 
出願番号 特願平1-262975
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 北村 明弘高木 正博  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 唐戸 光雄
野田 直人
登録日 2000-03-24 
登録番号 特許第3047241号(P3047241)
権利者 日立電子エンジニアリング株式会社
発明の名称 液状半導体形成材料気化供給装置  
代理人 山本 富士男  
代理人 梶山 佶是  

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