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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B |
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管理番号 | 1056730 |
異議申立番号 | 異議2001-73064 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-08-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-11-07 |
確定日 | 2002-03-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3170664号「熱封緘性蓋材」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3170664号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.本件発明 本件特許第3170664号は、平成5年2月19日に出願され、平成13年3月23日に設定登録されたものであって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの以下のものと認める。 「【請求項1】 最内層がホットメルト剤層で形成され、該最内層から順次外側方向に接着剤層、強度層、紙層を積層させた蓋材において、接着剤層がポリオレフィンであり、最内層が、酢酸ビニル含有率10〜25%のエチレン・酢酸ビニル共重合体を20〜40%、粘着付与剤20〜40%、ワックス剤を20〜40%の範囲で混合したことを特徴とする熱封緘性蓋材。」 2.特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人 西田 穣は、甲第1〜3号証を提出し、本件請求項1に係る発明は、本件の出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきであると主張している。 3.甲各号証の記載内容 ・甲第1号証(実公昭60-36451号公報)の記載内容 ア.「紙単体または紙を含む積層体のいずれかからなる基材の下面に介在層、ポリエチレン層、ホットメルト層を順次設けてなる熱封緘蓋材。」(実用新案登録請求の範囲第1項) イ.「介在層が、ナイロンフイルム、ポリエステルフイルム、2軸延伸ポリプロピレンフイルム、15μ以上の厚さのアルミ箔のいずれかからなる実用新案登録請求の範囲第1項記載の熱封緘材料。」(実用新案登録請求の範囲第2項) ウ.「ホットメルト層が、酢酸ビニル含有率10〜40重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体が99〜75重量%と粘着付与剤が0〜25重量%とからなる樹脂Aと酢酸ビニル含有率が10重量%以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体Bとを重量比でA:B=100:0〜10:90の範囲で混合した樹脂からなる実用新案登録請求の範囲第1項または第2項記載の熱封緘蓋材。」(実用新案登録請求の範囲第3項) エ.「本考案は、第1図に示すように紙または紙/アルミ箔の積層体のいずれかからなる基材1の下面に接着剤を介して延伸ポリプロピレンフイルム、ナイロンフイルム、アルミ箔、ポリエステルフイルムのいずれかからなる介在層2を設ける。さらに介在層2の下面にポリエチレン層3およびホットメルト層4を押出しラミネートすることにより設けた熱封緘蓋材である。」(第1頁第2欄第4〜11行) オ.「上記樹脂で添加する粘着付与剤は、ロジン、変性ロジン、シクロペンタジエン系樹脂、芳香族系石油樹脂、ポリテルペン系樹脂、テルペン変性体、脂肪族炭化水素またはスチレン系のいずれかの樹脂からなる。」(第1頁第2欄第24〜28行) カ.「<実施例>表面に印刷模様を設けた特片アート紙(73kg)/アルミ箔(9μ)/2軸延伸ポリプロピレンフイルム(20μ)/ポリエチレン層(30μ)/ホットメルト層 (30μ)からなる蓋材をポリ塩化ビニル成形容器の開口部に重ね熱封緘した。 また同時に上記構成から2軸延伸ポリプロピレンフイルムを除いた構成の従来の蓋材についても同様に試験した。ホットメルト層としては、酢酸ビニル含有量15〜20重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体80重量%に水素添加シクロペンタジエン樹脂20重量%からなる樹脂50重量%に酢酸ビニル含有量6重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を50重量%混合した樹脂を用いた。」(第2頁第3欄第5行〜第4欄第2行) ・甲第2号証(若林一民著、「接着管理(上)」、(株)高分子刊行会発行、1990年3月20日発行、p146〜161)の記載内容 キ.ヒートシール用の接着剤として、EVA〔MI 400g/min,軟化点90℃(環球法)〕:30重量%、テレピン系重合体樹脂(軟化点115℃):40重量%、ネオワックスM:30重量%、の組成からなるものがあること。(第149頁31〜34行) ・甲第3号証(奥田平編、高分子加工別冊11・第24巻増刊号「ホットメルト接着剤」、高分子刊行会発行、昭和50年7月25日発行、p103〜111)の記載内容 ク.「ホットメルト接着剤も近年非常な勢いで伸展を見せているが、特殊な場合を除いてほとんど粘着付与剤を必要とする。本文では主として、粘着付与剤としてのピネン系ポリマーについてご紹介する。」(第103頁10〜12行) ケ.「テレピンフェノール樹脂は、松の精油から得られる。α-ピネンと、フェノールの共重合体樹脂であり、微黄色透明な樹脂である。当社ではそのポリマーに、ポリスターと名づけて、#2130タイプ、Tタイプ、Sタイプのシリーズを生産し、S145タイプでは145℃までの高軟化点の樹脂を生産している。」(第107頁第5〜8行) コ.ヒートシール用ホットメルト配合例として、エバフレックス320:20%、YSポリスターT115:40%、ネオワックスM30%のものがあること。(第109頁表10) 4.対比、判断 上記イ、エの記載によれば、甲第1号証には、介在層として、ナイロンフィルム、あるいは、ポリエステルフィルムを用いることが記載されている。 そうすると、甲第1号証には、「紙単体または紙を含む積層体のいずれかからなる基材の下面にナイロンフィルム、あるいは、ポリエステルフィルムからなる層、ポリエチレン層、酢酸ビニル含有率10〜40重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体が99〜75重量%と粘着付与剤が0〜25重量%とからなる樹脂Aと酢酸ビニル含有率が10重量%以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体Bとを重量比でA:B=100:0〜10:90の範囲で混合した樹脂からなるホットメルト層を順次設けてなる熱封緘蓋材。」の発明が記載されている。 当該発明における「ナイロンフィルム、あるいは、ポリエステルフィルムの層」は、請求項1に係る発明の、強度層に相当するものである。さらに、甲第1号証に記載された発明におけるポリエチレン層は、厚みが30μで押出ラミネートにより設けられる層であって(上記エ、カ参照)、本件のポリオレフィン接着剤層と同程度の厚み、同様の方法により設けられる層であることからすると、同様に接着剤層として機能するものであると認められる。 請求項1に係る発明と、甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、「最内層がホットメルト剤層で形成され、該最内層から順次外側方向にポリエチレン層、強度層、紙層を積層させた熱封緘性蓋材。」である点において一致しているが、 本件請求項1に係る発明においては、ホットメルト剤が、酢酸ビニル含有率10〜25%のエチレン・酢酸ビニル共重合体を20〜40%、粘着付与剤20〜40%、ワックス剤を20〜40%の範囲で混合したものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明においては、ホットメルト剤が、酢酸ビニル含有率10〜40重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体が99〜75重量%と粘着付与剤が0〜25重量%とからなる樹脂Aと酢酸ビニル含有率が10重量%以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体Bとを重量比でA:B=100:0〜10:90の範囲で混合した樹脂からなるものである点、 において相違している。 そこで、上記相違点について検討する。 甲第2号証には、ヒートシール用の接着剤として、EVA:30重量%、テレピン系重合体樹脂:40重量%、ネオワックスM:30重量%、の組成からなるものが記載され(上記キ参照)、甲第3号証のク、ケの記載によれば、テレピン系重合体樹脂は、粘着付与剤として機能するものであると認められる。そうすると、ヒートシール用の接着剤として、EVA:30重量%、粘着付与剤:40重量%、ワックス:30重量%、の組成からなるものは本願出願前公知であったと認められる。 しかし、甲第1号証に記載された発明は、熱封緘蓋材に係るものであるから、そのホットメルト剤層に用いる接着剤は、単にヒートシール性があれば選択できるというのではなく、開封の際に蓋と容器との界面において適切に剥離できるように、蓋材を構成する他の層の層間強度との関係を考慮して選択しなければならないものである。 そうすると、甲第2号証に、一般的なヒートシール用接着剤が記載されているからといって、これを直ちに、甲第1号証に記載されるヒートシール用接着剤に代えて採用することができるとは認められない。 よって、上記相違点は、甲第2、3号証に基づいて当業者が容易になしうるものとは認められない。 そして、請求項1に係る発明は、上記の点により、「蓋材と容器本体の適度な接着性を有し、さらに開封時には蓋材及び容器本体の紙層の破壊を生じることなく蓋材を容易に剥離することができる」という優れた効果を奏するものである。 したがって、請求項1に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2002-02-27 |
出願番号 | 特願平5-53177 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B32B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 平井 裕彰 |
特許庁審判長 |
小林 正巳 |
特許庁審判官 |
石井 克彦 加藤 志麻子 |
登録日 | 2001-03-23 |
登録番号 | 特許第3170664号(P3170664) |
権利者 | 大日本印刷株式会社 |
発明の名称 | 熱封緘性蓋材 |
代理人 | 金山 聡 |