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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1056735
異議申立番号 異議2001-70774  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-05-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-03-12 
確定日 2002-03-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第3087138号「硬化性組成物」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3087138号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 2.理由
(1)本件発明
本件特許第3087138号の請求項1〜2に係る発明は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 (A)重合主鎖が、
【化1】
式 -CH(CH3)-CH2-O-
で示される繰り返し単位を含有し、水酸基または加水分解性基の結合したケイ素原子を含むケイ素原子含有基を少なくとも1個有するオキシプロピレン重合体であって、Mw/Mnが1.6以下で数平均分子量が6,000以上であるオキシプロピレン重合体、
【化2】
(B) 式 R3Si-
(式中、Rは同一または相異なり、置換又は非置換の1価の炭化水素基)で示される基を含有し、加水分解によりR3SiOHを生成するシリコン化合物、及び
(C)硬化触媒を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】 前記(B)成分のシリコン化合物が、
【化3】
式 QOSi(CH3)3(式中、Qは炭素数1〜20の置換又は非置換の1価の炭化水素基)、あるいは
【化4】
式 ZNHSi(CH3)3(式中、Zは炭素数1〜20の置換又は非置換の1価の有機基)で示されるシリコン化合物である請求項1に記載の硬化性組成物。」
(2)先の取消理由通知に引用した各刊行物、審査書類および実験報告書の記載事項
(2.1)刊行物1(特開昭61-34066号公報;甲第1号証)には、
「分子内に少くとも1個の反応性シリコン官能基を有する有機重合体と、分子内に1個のシラノール基を有する化合物、および/または水分と反応して分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物とから成ることを特徴とする引張り特性の改善された含む組成物。」(特許請求の範囲請求項(1))、
「(4)水分と反応して分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物が(CH3)3SiNHSi(CH3)3である特許請求の範囲第1項記載の組成物。」(特許請求の範囲請求項(4))
「例えば鐘淵化学工業(株)から製造販売されている、主鎖がポリオキシプロピレンで末端にメトキシシリル官能基が結合した有機重合体(商品名:MSポリマー)のように、硬化物の伸びや表面の残留タック(ベトつき)が、その配合組成や使用条件の影響により、用途によっては充分でなく改善が望まれていた。・・・・
本発明者等は、該重合体の引張り物性の改善(高伸び化)と残留タックの改善(ベトつきの減少)につき鋭意検討を重ねた結果、・・本発明に到達した。」(第2頁左下欄第5〜18行)
「分子内に少なくとも1個の反応性シリコン官能基を有する重合体は、たとえば・・・方法で得ることが出来るが、好ましくは主鎖が実質的にポリエーテル、ポリエステル・・、分子量が300〜30000のものである。」(第2頁右下欄第6〜19行)
「これらの化合物が硬化物の引張り物性の改善、即ち低モジュラス・高伸び化に効果があり、・・・結果として低モジュラス・高伸び化が達成されるものと考えられる。」(第7頁左下欄下から7行〜同右下欄第2行)
と記載されている。
(2.2)刊行物2(「日本接着協会誌」Vol.19、No.6(1983)、P.32〜39;甲第2号証)には、
「ポリプロピレンオキシド主鎖の末端にメチルジメトキシシリル官能基を有するテレケリック液状ポリマー(商品名「カネカMSポリマー」・・)である。この液状ポリマーは、水分及び触媒により末端のケイ素原子上のメトキシ基が加水分解をうけて・・架橋反応が進みゴム弾性体となる。この硬化反応が・・、弾性シーリング材として有用な液状ポリマーとなる。」(第32頁左欄下段)、
「3.変成シリコーン系シーリング材に基本特性
3.1配合組成
表2に2成分形の代表的配合組成を示す。・・低応力高伸び硬化物を得るには炭酸カルシウムを充填剤とし・・、老化防止剤としてはヒンダードフェノール類または・・ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤・・垂れ防止剤としては無水ケイ酸や水添化ヒマシ油などがよい。」(第34頁右欄中段)、
と記載されている。
(2.3)審査書類1(特願平4-114319号の審査経過の、平成11年2月15日付け「手続補正書」(甲第3号証に1)、「意見書」(甲第3号証の2)及び「手続補足書」(甲第3号証の3)には、
甲第2号証第35頁表2に記載されているカネカMSポリマーには、カネカMS-20A,カネカMS-203が含まれることがよく知られていること、一方MS-20A,MS-203がMn≧6,000、Mw/Mn≦1.6の変成シリコーンに相当することは甲第3号証の3(手続補足書)に添付された参考資料1-(1)(Mn=16,700,Mw/Mn=1.62を示している)
という趣旨のことが説明されている。
(2.4)刊行物4(特開昭59-24771号公報;甲第4号証)には、
「1.(A)・・・加水分解性ケイ素官能基を末端に有するポリエーテル重合体
(B)(イ)一般式・・・アミノアルキルアルコキシシラン・・・との部分付加縮合物
(C)シラノール化合物の縮合触媒
上記ポリエーテル重合体(A)、上記部分付加縮合物(B)および上記縮合触媒(C)を含有することを特徴とする一液型室温硬化性シーラント組成物。」(特許請求の範囲)、
「実施例1・・・
シーラント組成物の調製
ポリエーテル重合体(A)としてポリ(メチルジメトキシシリルエチルエーテル)(鐘ケ淵化学工業株式会社製商品名MSP-20A)を100部とり、」(第6頁右下欄第5行〜第7頁左上欄第1行)
と記載されている。
(2.5)刊行物5(特開昭64-9268号公報;甲第5号証)には、
「(a)分子内にシロキサン結合を形成することにより硬化しうる反応性シリコン官能基を有するゴム系有機重合体および
(b)一般式(I);掲載省略
(式中、・・・の整数)で表わされる有機シリコン化合物を含有してなる硬化性組成物。」(特許請求の範囲1)
「本発明は、湿気により硬化し、引張り物性が優れ、残留タックのないゴム状弾性体となるとともに、保存安定性の改善された新規な硬化性組成物に関する。」(第2頁右上欄下から第3行〜左下欄第1行)、
「有機シリコン化合物(B)は組成物の硬化時に加水分解してシラノール化合物を生成し、これが有機重合体(A)中の反応性シリコン官能基またはその加水分解された基と反応する。」(第11頁左上欄第8〜11行)、
「本発明の硬化性組成物を、・・硬化触媒、・・などを配合しうる。」(第11頁右上欄第12〜16行)
と記載されている。
(2.6)刊行物6(特開平3-72527号公報;甲第6号証)には、
「(4)複合金属シアン化物錯体触媒の存在下イニシェーターに炭素数3以上のモノエポキサイドを開環付加重合させ、つづいて分子末端の水酸基を不飽和基に変換し、さらに不飽和基に加水分解性基を有するヒドロシリコン化合物を反応させることを特徴とする、加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドの製造法。」(特許請求の範囲(4))、
「(12)請求項第4項記載の方法で製造された加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドを硬化成分とする湿気硬化性樹脂組成物。」(特許請求の範囲(12))、
「さらにまた、末端不飽和基を加水分解性シリル基に変換した加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドの原料として使用できる。不飽和基を加水分解性シリル基に変換する方法としては、不飽和基に加水分解性基を有するヒドロシリコン化合物を反応させる方法が用いられる。」(第4頁右下欄第8〜14行)、
「本発明における加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドは水分と接触すると架橋反応により3次元化して硬化する。」(第5頁右上欄第13〜15行)、
「本発明の加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドを含む湿気硬化性樹脂組成物は、・・シーリング組成物またはこれ等の類似物として好適に使用する事ができる。」(第5頁右下欄第17行〜第6頁左上欄第1行)、
「得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量並びに分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は12,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。」(第6頁右上欄第3〜7行(実施例1))、
「得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量並びに分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。」(第6頁左下欄第12〜16行(実施例2))
と記載されている。
(2.7)実験報告書1(旭硝子株式会社 中央研究所勤務 田中英明作成「実験報告書-1」;甲第7号証)は、
MS-203はMS-20Aと同等の化学構造を有すること、すなわち、末端にメチルジメトキシシリル基を有する分子量約17,000程度のポリオキシプロピレン系重合体であってMw/Mnが1.6程度であることが立証されている。
(2.8)実験報告書2(旭硝子株式会社 中央研究所勤務 田中英明作成「実験報告書-2」;甲第8号証)は、
数平均分子量を6,000以上、Mw/Mnを1.6以下と特定すると、ヘキサメチルジシラザンの添加の有無にかかわらず分子量分布の狭い重合体の方が硬化性が良好であることを立証している。
(3)対比・判断
進歩性違反について〉
本件請求項1〜2に係る発明(以下、「本件発明1〜2」という。)は、引張り物性の改善及び残留タックの改善のために用いた特定のシリコン化合物の存在にも拘らず、硬化時の適度な硬化速度は低下させず、引張り物性の改善及び残留タックを改善させるという技術課題を解決したことにある。
本件発明1と各刊行物に記載の発明とを順次対比するに、まず、本件発明1と刊行物1又は刊行物5に記載された発明と対比すると、本件発明1は、
「(A)重合主鎖が、
【化1】
式 -CH(CH3)-CH2-O-
で示される繰り返し単位を含有し、水酸基または加水分解性基の結合したケイ素原子を含むケイ素原子含有基を少なくとも1個有するオキシプロピレン重合体であって、Mw/Mnが1.6以下で数平均分子量が6,000以上であるオキシプロピレン重合体(以下「(A)OPP」という。)、
【化2】
(B) 式 R3Si-
(式中、Rは同一または相異なり、置換又は非置換の1価の炭化水素基)で示される基を含有し、加水分解によりR3SiOHを生成するシリコン化合物(以下、「(B)シリコン化合物」という。)、及び
(C)硬化触媒を含有する硬化性組成物」に係るものである。
一方、刊行物1の特許請求の範囲(1)には、「分子内に少くとも1個の反応性シリコン官能基を有する有機重合体と、分子内に1個のシラノール基を有する化合物、および水分と反応して分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物を含む組成物」が記載されており、更に、「主鎖がポリオキシプロピレンで末端にメトキシシリル官能基が結合した有機重合体(商品名:MSポリマー)のように、硬化物の伸びや表面の残留タック(ベトつき)が、その配合組成や使用条件の影響により、用途によっては充分でなく改善が望まれていた。・・本発明者等は、該重合体の引張り物性の改善(高伸び化)と残留タック(ベトつきの減少)につき鋭意検討を重ねた結果、・・本発明に到達した。」との記載から明らかなとおり、上記有機重合体とはMSポリマーに相当する機能又は用途を備えたものを対象としていることが容易に推察できる。
また、本件発明1の(B)シリコン化合物は、刊行物1記載の「水分と反応して分子内に1個のシラノール基を有する化合物を生成し得る化合物」の範疇に、(CH3)3SiNHSi(CH3)3(特許請求の範囲請求項4、第7頁右上欄下から第3行〜左下欄下から第8行)が属するから、この点でも両者は一致する。
本件発明1の(C)硬化触媒は、刊行物1記載の硬化触媒(第8頁右下欄第6〜9行、第9頁左下欄第12行〜右下欄下から第4行)と一致する。
そうすると、本件発明1と刊行物1記載の発明とは、(A)OPP、(B)シリコン化合物、および(C)硬化触媒からなる、いわゆる三成分系硬化性組成物という点では一応一致するといえる。
次に、本件発明1と刊行物5記載の発明とを対比するに、刊行物5には、「湿気により硬化し、引張り物性が優れ、残留タックのないゴム状弾性体となるとともに、保存安定性の改善された新規な硬化性組成物に関する。」(第2頁右上欄下から第3行〜左下欄第1行)と記載され、両者は同じ技術課題の解決を指向しているといえる。
その組成をみると、本件発明1の(A)OPPおよび(B)シリコン化合物は、刊行物1の(a)分子内にシロキサン結合を形成することにより硬化しうる反応性シリコン官能基を有するゴム系有機重合体、および(b)一般式(1)で表される有機シリコン化合物とそれぞれ一致する。
それに、本件発明1の(C)硬化触媒に対応する物として、刊行物5にも硬化触媒を配合する(第11頁右上欄第12〜16行、第12頁右上欄第4行〜左下欄第9行)ことが示されている。
そうすると、本件発明1と刊行物1又は刊行物5に記載の発明とは、(A)OPP、(B)シリコン化合物、および(C)硬化触媒からなる、いわゆる三成分系硬化性組成物という点では一応一致するが、
本件発明1は、(A)OPPとして、「Mw/Mnが1.6以下」、「数平均分子量6,000以上」と限定しているのに対して、刊行物1又は刊行物5に記載の有機重合体にはそれを明示する記載がない点で一応相違する。
そこで検討するに、まず、刊行物1に、主鎖がオキシプロピレンで末端にメトキシシリル官能基が結合した有機重合体(商品名:MSポリマー)が例示されており、これは本件発明1の(A)OPPに類似するものであり、この「MSポリマー」なるものは刊行物2、4にみるとおり本件出願前に周知慣用のものであり、しかもこの「MSポリマー」の対象には、カネカMS-20A,カネカMS-203で表示するポリマーが含まれ、これらポリマーがMn約17、000、Mw/Mn約1.6程度のものであるこが刊行物3の3(参考資料1-(1))及び実験報告書1を参酌すれば明らかである。
これらの事例からすると、刊行物1に記載の有機重合体なるものは、「Mw/Mn」が比較的低い物であり、しかも「数平均分子量」においても6,000以上という比較的高い物までを対象としている(更に第2頁右下欄第16〜19行も参照)ことが容易に推察できる。
ところで、本件発明1で限定する、(A)OPPと同一の重合主鎖を有し、「Mw/Mnが1.6以下」かつ「数平均分子量が6,000以上」である加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシド(オキシプロピレン重合体なるものは、刊行物6に記載(第6頁右上欄第3〜7行、同左下欄第12〜16行)されているとおり公知のものであり、しかもそれは、硬化促進触媒ととも用い(第5頁左下欄第8〜17行)、硬化性樹脂の硬化成分として利用される(特許請求の範囲(12)及び第4頁右下欄第6〜14行)ことが示されており、まさに本件発明1の硬化性組成物を構成する(A)OPPの代替に供する性質を備えた物であることが容易に推察できる。
しかも、異議申立人の提出した平成13年11月22日付け「上申書」に添付の、参考資料1(WO91/13927)を参酌すれば、「分子量分布の狭いオキシプロピレン重合体を主鎖として用い反応性ケイ素基を導入した重合体に有機錫とエステル化合物との反応物を添加して硬化させると、分子量分布の広いオキシプロピレン重合体を使用した場合と比べて、硬化速度が著しく向上することを見出し本発明に至った。」(第3頁左上欄下から6〜1行)と記載されており、Mw/Mnの狭い重合体の方が、広い重合体を用いた場合に比べて硬化性が優れることが記載されており、硬化性に観点からすれば、当然にMn/Mnが狭い重合体の方が推奨されることも容易に理解できる。
してみれば、本件発明1は、上記技術課題を解決する目的で、刊行物1又は刊行物5に記載の重合体に代えて刊行物6記載のシリル基末端ポリアルキレンオキシドを適用すれことなど造作ないことであり、その組み合わせたものに基づいて当業者が容易に想到し得る程度のものといえる。
本件発明2は、(B)シリコン化合物を特定なものに限定しているが、これは刊行物1、5に記載の化合物に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえる。
本件発明1、2の作用効果は、実験報告書2も参酌し、本件特許公報の表1、表2を考察しても、格別なものではなく、しかも上記参考資料1示すMw/Mnと硬化性の技術事項などを斟酌すれば、特に刊行物1、5、6に記載の技術事項に基づいて予測できる程度のことである。
したがって、本件発明1〜2は、刊行物2、4,5、審査書類1、実験報告書1〜2に示す技術事項を参酌すれば、刊行物1又は5に記載の発明に、刊行物6に記載の発明を適用すれば、それに基づいて当業者が容易に発明することができたものといえる。
(4)むすび
以上のとおり、本件発明1〜2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-01-18 
出願番号 特願平3-286524
審決分類 P 1 651・ 121- Z (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 ▲吉▼澤 英一  
特許庁審判長 三浦 均
特許庁審判官 村上 騎見高
柿沢 紀世雄
登録日 2000-07-14 
登録番号 特許第3087138号(P3087138)
権利者 鐘淵化学工業株式会社
発明の名称 硬化性組成物  
代理人 安西 篤夫  
代理人 萩原 亮一  
代理人 橋本 良郎  
代理人 内田 明  
代理人 鈴江 武彦  
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