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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C12P
審判 全部申し立て 2項進歩性  C12P
管理番号 1056741
異議申立番号 異議2001-73233  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-08-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-12-03 
確定日 2002-03-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第3173805号「フラクトオリゴ糖含有シロップおよびその製造法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3173805号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第3173805号(平成2年12月26日出願、平成13年3月30日設定登録。)の請求項1及び2に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】サトウキビから作られたシュクロース分が78〜86重量%で還元糖含有量が2〜7重量%である黒砂糖、精製糖の前段階の砂糖である粗糖およびシュクロース分が約95重量%で還元糖含有量が2〜3重量%である三温糖よりなる群から選ばれたミネラル分を含む糖のシュクロース分の少なくとも一部をフラクトシルトランスフェラーゼにより酵素的にフラクトオリゴ糖に変換したフラクトオリゴ糖含有シロップ。
【請求項2】サトウキビから作られたシュクロース分が78〜86重量%で還元糖含有量が2〜7重量%である黒砂糖、精製糖の前段階の砂糖である粗糖およびシュクロース分が約95重量%で還元糖含有量が2〜3重量%である三温糖よりなる群から選ばれたミネラル分を含む糖の水溶液にフラクトシルトランスフェラーゼを作用させることにより、シュクロース分の少なくとも一部をフラクトオリゴ糖に変換させることを特徴とするフラクトオリゴ糖含有シロップの製造法。」

2.異議申立ての理由の概要
異議申立人 石原庸男は、下記甲第1号証〜甲第5号証を提出して、
(1)本件請求項1及び2に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである、
(2)本件特許明細書には記載上の不備があり、請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第36条第4項、第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである、
旨主張している。

甲第1号証:特開昭61ー9266号公報
甲第2号証:特開昭60ー27395号公報
甲第3号証:四訂 日本食品標準成分表(1982)、昭和57年11月
25日、大蔵省印刷局発行、第66頁〜67頁
甲第4号証:砂糖の知識、昭和59年7月20日、財団法人口腔保健協会
発行、第90頁
甲第5号証:特開昭52-130931号公報

3.対比、判断
29条2項違反について>
甲第1号証には、「甜菜糖蜜よりビフイズス菌増殖を促進する甘味料の製造方法」に関し、「ラフィノースを含む甜菜糖蜜をフラクトシルトランスフェラーゼで処理し、シュクロースをフラクトオリゴ糖に変換する第1行程と、第1工程で得た糖液をCa型強酸性陽イオン交換樹脂のカラムで分離し、フラクトオリゴ糖とラフィノースを主成分とする混合物を得る第2工程とよりなる………」(特許請求の範囲)及び「得られたフラクトオリゴ糖及びラフィノースを含有する糖液はさわやかな甘味を有するビフィズス菌増殖促進に好適な甘味料であった。」(3頁右下欄19行〜4頁左上欄2行)と記載され、甲第2号証には、「………菌体を含む培養液を蔗糖(シュクロース)溶液に添加または接触反応させて該菌体内に含有されている菌体内転移酵素であるフラクトシルトランスフェラーゼで蔗糖を………〔中略〕………フラクトオリゴ糖(Fructoーoligo糖)に変えるフラクトオリゴ糖の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)及び「………蔗糖を加えて本酵素反応を行うと………〔中略〕………フラクトオリゴ糖含有液が製造できる。」(4頁左上欄4行〜14行)と記載されている。
しかしながら、甲第1、2号証には、フラクトシルトランスフェラーゼを作用させるにあたり、原料であるシュクロースとして、本件請求項1で特定する「サトウキビから作られたシュクロース分が78〜86重量%で還元糖含有量が2〜7重量%である黒砂糖、精製糖の前段階の砂糖である粗糖およびシュクロース分が約95重量%で還元糖含有量が2〜3重量%である三温糖よりなる群から選ばれたもの」を使用すること、及びかかる糖を原料として用いることにより、保存中に酸性化を起こし難く、長期間にわたってpHが安定しているフラクトオリゴ糖シロップが得られることについての記載は何もない。
また、甲第3号証には、黒砂糖100g当たりしょ糖が80g、三温糖100g当たりしょ糖が95g含まれること、及び黒砂糖、粗糖及び三温糖には、ミネラル分が所定量含まれることが記載され、甲第4号証には、各種砂糖の成分比較と題して、黒砂糖について「蔗糖 78〜86%」、「還元糖 2.0〜7.0%」と記載され、三温糖について「蔗糖 94.95%」、「還元糖 2.13%」と記載されている。
これらの記載をみると、本件請求項1において特定する黒砂糖、粗糖及び三温糖は、本件出願時に公知であった通常の黒砂糖、粗糖及び三温糖と特に異なるものではないと認められるが、本件明細書の段落0015にも記載されているように、製法の違いによってあるいは製造の各段階で得られる種類の異なる多数の砂糖が存在していることを考えると、これらの中からシュクロースの原料として特に黒砂糖、粗糖及び三温糖を選択し、これらの糖にフラクトシルトランスフェラーゼを作用させることにより、長期間にわたってpHが安定しているフラクトオリゴ糖シロップを製造できることは、当業者において容易に想到し得ることではない。
さらに、甲第5号証には、サトウキビの精製搾汁を加熱殺菌することにより、pH値の変化が少なく、保存性に優れたサトウキビシロップが得られることが記載されているが、かかる記載に基づいて、黒砂糖をフラクトシルトランスフェラーゼを作用させることにより、長期間にわたってpHが安定しているフラクトオリゴ糖シロップを製造できることは当業者が容易に想到し得ることではない。
そして、本件請求項1に係る発明は、請求項1に記載の構成を採用することにより、特許明細書に記載されたとおりの効果を奏するものである。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第5号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
また、本件請求項2に係る発明は、フラクトオリゴ糖シロップの製造法の発明であり、請求項1に係る「フラクトオリゴ糖シロップ」の発明の構成要件のすべてを必須の構成要件とする発明であるから、本件請求項1に係る発明と同様の理由で、甲第1号証〜甲第5号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

36条4項、5項違反について>
異議申立人は、本件明細書に記載不備がある理由として、
(a)実施例1に記載の「黒砂糖(糖度86.0%、シュクロース分80重量%、………)」と表1に示される原料黒砂糖のシュクロース分89.5wt%とは、シュクロース分の数値が一致しておらず不明瞭である、
(b)本件請求項2の「………フラクトオリゴ糖シロップの製造法。」と本件明細書の段落0010の「また本発明のフラクトオリゴ糖含有シロップの製造法は、………」との記載が対応しておらず不明瞭である、
点を挙げている。
上記(a)の点について
実施例1において原料として用いた黒砂糖のシュクロース含量と実施例1の試験結果を示す表1の黒砂糖のシュクロース含量とは、異議申立人が指摘するとおり一致していないが、通常の黒砂糖に含まれるシュクロース含量は78〜86重量%である(例えば、甲第4号証の表8参照)ことを参酌すると、表1に記載の数値が間違いであることは当業者が容易に予想することができる。
表1には、実施例1の方法によりフラクトシルニストース、ニストース、及び1-ケストース からなるフラクトオリゴ糖を50.0重量%含むフラクトオリゴ糖化黒砂糖シロップを製造できることが示され、表2には、該黒砂糖シロップが長期間にわたる保存によってもpHが安定していることが示されていることを考えると、表1の黒砂糖のシュクロース含量の数値が間違いであることをもって直ちに本件特許を取り消すほどの記載不備があるとまではいえない。

上記(b)の点について
本件明細書の発明の詳細な説明の記載からみて、請求項2に記載の方法により得られるフラクトオリゴ糖シロップがフラクトオリゴ糖含有シロップであることは明らかであり、「フラクトオリゴ糖シロップ」という用語をそのように解釈することができるのであるから、上記(b)の点に異議申立人が指摘する記載不備はない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1及び請求項2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び請求項2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-02-22 
出願番号 特願平2-414596
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C12P)
P 1 651・ 531- Y (C12P)
最終処分 維持  
前審関与審査官 木村 順子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 大久保 元浩
斎藤 真由美
登録日 2001-03-30 
登録番号 特許第3173805号(P3173805)
権利者 日本オリゴ株式会社
発明の名称 フラクトオリゴ糖含有シロップおよびその製造法  

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