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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B21D
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  B21D
管理番号 1056773
異議申立番号 異議2001-72041  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-02-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-26 
確定日 2002-03-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第3129197号「プリント配線板用の金型材料」の請求項1及び請求項2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3129197号の請求項1に係る特許を取り消す。 同請求項2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3129197号については、平成8年7月17日に特許出願され、同12年11月17日に設定の登録がされ、その後、同13年7月26日に丹羽行彦より請求項1及び請求項2に係る特許について特許異議の申立てがされ、同13年11月7日に取消しの理由が通知された。
第2 本件発明
本件の請求項1及び請求項2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、登録時の明細書(以下「本件明細書」という。)及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項によって特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】 プリント配線板の穴あけ及び外周加工を施す金型に用いるシェダー(31)と抜きポンチ(36)において、不活性ガスを圧力媒体とする熱間等方加圧法によって、厚さ,幅,長さからなる板状材の2種類の異種金属を重ねて拡散接合し、板状材の複合材料とすることを特徴とするプリント配線板用の金型材料。」
「【請求項2】 熱間等方加圧法によって2種類の異種金属を拡散接合して複合材料とするプリント配線板用の金型材料において、母材を中心に、この母材の両面に刃材を設けて熱間等方加圧法処理で接合一体化した後、母材の中央部で切断し、金型の刃型部品材料として用いることを特徴とするプリント配線板用の金型材料。」
第3 特許異議の申立ての理由及び取消しの理由の概要
1 特許異議の申立ての理由
特許異議申立人は、証拠として本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である
甲第1号証 特開平5- 78709号公報
甲第2号証 大橋 修著「Q&A 拡散接合」初版1993年6月20日
産業出版株式会社発行 第39、40頁
甲第3号証 特開平6-155050号公報
甲第4号証 特開平5-228653号公報
甲第5号証 白銅株式会社の“CONDEX-2”と称するカタログ
を提出して、以下のように主張している。
(1) 理由1
本件発明1は、甲第1号証及び甲第2号証記載の発明に基づいて、また、本件発明2は、甲第1号証乃至甲第5号証記載の発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。
(2) 理由2
本件発明2は、母材の中央部で切断することを構成要件としているが、本件明細書の段落【0011】には「・・・その後HIP処理、焼入れ処理の完了した複合材料を図2(d)に示すように、母材2の中央部3Aで切断し、・・・」としか記載されておらず、どのような手段により切断したのか当業者が実施できる程度に開示されていないので、本件の請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消すべきものである。
2 取消しの理由
本件発明1は、刊行物1(甲第1号証)及び刊行物2(甲第2号証)記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 特許異議申立人の主張の検討
1 理由1について
(1) 甲各号証の記載内容
ア 甲第1号証
【0001】「本発明は、ワーク面において特定の性質が要求される部材、例えば、耐摩耗性が要求される工具類やロール,ローラー類、転動強度が要求される軸および軸受類、耐熱・耐食性が要求される航空・宇宙材料やバルブ類などに利用される複合部材に関するものである。」
【0003】「このようにした場合、ワーク面は要求特性をある程度ないしは十分にそなえていることから性能上は問題ないとしても、ワーク面以外のところは要求特性以上の性能を持つこととなるため、ワーク面以外のところは過剰品質のものとなり、コスト面からも不利であることが多い。」
【0004】「また、製品の大きさによって、特に大きなものについては、要求特性を発揮させるために行う種々の特殊処理、例えば焼入れ焼もどしなどの熱処理の効果が小さくなることがあり、ワーク面にその効果が十分にあらわれない場合も多く、場合によっては特殊処理による効果をワーク面に具備させようとしたためにかえって製品の全体に問題が発生したり、内部に残留する応力のために割れを生じたりする場合もあって、製品として不十分なものとなることも多い。」
【0008】「本発明は、上記した従来の課題にかんがみてなされたもので、ワーク面に要求される特性を有する材料を用いて全体を単一の材質で製造した場合のようにコスト面での不利がなく、また、単一の材質で製造してその全体に熱処理などの特殊処理を施す場合においてとくに大型のものであるときのように特殊処理の効果が十分でなくなるというおそれもなく、さらに全体を単一の材質で製造したものにおいてワーク面にのみ溶射などの表面改質処理を施す場合のように工程の繁雑さや剥離などの不具合が生じがたく、ワーク面において要求される特性が十分であると共にワーク面とバックアップ部位とで各々適切な材質の選択が可能であってコスト的にも有利なものとすることが可能である複合部材を提供することを目的としている。」
【0011】「本発明に係わる複合部材の実施態様においては、耐摩耗性,耐熱性,耐食性,耐薬品性,摺動性,転動性,強度,耐力,耐疲労性等のワーク面に要求される少なくとも一つの特性をそなえたワーク側部材と、前記ワーク側部材をバックアップするバックアップ側部材とを熱間静水圧加圧(HIP)により拡散接合して一体化してなる構成のものとすることができる。」
【0017】「これらのうち、熱間でガス加圧して行う熱間静水圧加圧(HIP)によれば、拡散接合が容昜に可能となるため、接合界面での接合強度が著しく高いものとなる。」
【0019】「また、ワーク面に要求される少なくとも一つの特性をそなえたワーク側部材としては、耐摩耗性が要求される場合に高速度工具鋼やダイス鋼や金型用鋼等が使用され、耐食性が要求される場合にチタン系材料やステンレス鋼や高合金鋼ないしは高合金等が使用される。」
【0020】「また、ワーク側部材をバックアップするのに用いるバックアップ側部材としては、例えば、前記ワーク側部材よりも高強度であるものや、高靭性であるものや、軽量であるものや、加工性の良いものや、安価であるものなどが使用される。」
【0023】「さらにまた、ワーク側部材,バックアップ側部材およびこれらを一体化した複合部材の形状としては、円筒形状,円柱形状,円錐形状,楕円形状,球形状,角形状(正方形断面,長方形断面,多角形断面等),角錐形状(三角錐,四角錐等),部分曲面形状等々の各種のものがあり、ワーク面としての必要な形状や、バックアップ材としての強度上等において必要な形状や、複合部材としての取付け上等において必要な形状等々を考慮してこれらの形状を定めることができる。」
【0028】「次いで、カプセル11内にロール基材12および粉末13を収容したまま熱間静水圧加圧(HIP)装置に収容し、Ar雰囲気中において1200°Cの温度で1200Kgf/cm2の加圧力により熱間静水圧加圧を行った。」
【0029】「かくして、図2に示すようにバックアップ側部材であるロール基材12の表面にワーク側部材である厚さ10mmの高速度工具鋼製外張り15を拡散接合により一体化した圧延用ロール(複合部材)10を得た。」
【0049】「次いで、このカプセル81の中に金型基材82および金型部材85を収容したまま静水圧加圧(HIP)装置に装入し、Ar雰囲気中において1250°Cの温度で1200Kgf/cm2の加圧力により熱間静水圧加圧を行った。」
【0050】「かくして、図14に示すようにバックアップ側部材である金型基材82とワーク側部材である金型部材85とを拡散接合により一体化したダイカスト用金型(複合部材)80を得た。」
イ 甲第2号証
第40頁第1〜5行
「また、最近脚光を浴びている方法としては、図2.8(前ページ)の
”HIP(Hot Isostatic Pressing):熱間等方加熱”という方式があります。これは、高温高圧のガスを利用して接合するもので、接合面にガスが浸入しないように、金属容器に封入するキャンニング処理が必要となります。」
第39頁の図2.8
Arを圧媒ガスとして熱間等方加圧により2つの金属材を拡散接合すること。
ウ 甲第3号証
【0021】「合せ材としての6.0mm厚のJIS 2種の純チタン材を、母材として0.12%のCおよび0.05%のTiを含有する50mm厚の炭素鋼鋳片とサンドイッチ状に重ね、さらにチタンの上からAl2 O3+ZrO2系分離材を介して同じ組合わせのチタンおよび炭素鋼を上下対称に重ね、端面および側面に12mm厚の母材と同じ成分組成の鋼板を挟み、かつ内部を真空にして端面をおよび側面を溶接し固定した。次いで、この組立スラブを950℃に加熱し、14パスで板厚6mmまで圧下し、最終圧下後のホットランテーブル上で冷却水を制御し、380〜786℃の間の4水準の温度域で捲取った。その後、Al2 O3+ZrO2系分離材の部分で上下に分離し3mmの熱延コイルとした。」
エ 甲第4号証
【0013】「・・・・・・。また、上記実施例では被処理材11、12を用いたが、本発明の方法は2枚以上の被処理材を重ねて拡散接合することもできる。さらに、凹凸を有する被処理材にも適用できる。例えば、2枚の薄板18,20で複数の穴が開口した部材19を挟持して、図3に示すような拡散接合部材を製造できる。リング状部材22が薄い金属板23で結合されたような機械部品も製造できる(図4参照)。」
【0019】「本発明の製造方法によれば、薄板状に限らず種々の形状の被処理材を拡散接合でき、しかも得られる拡散接合部材は、圧延で拡散接合部材を製造する場合と同様に、被処理材の初期の剛性、硬度を確保できる。従って、本発明の製造方法により、充分な剛性、硬度及び接合強度を兼ね備えた複雑な機械部品、例えば、OA機器のディスクドライブ装置の磁気ヘッド保持部材や薄型モ-タ部品を製造できる。さらに、従来の方法では困難であった肉厚の異なる板状製品、例えば、金網を金属枠に接合固定したフィルタや電気式剃刀の刃のようなバネ性を確保したい薄板状拡散接合部材も、本発明の製造方法により製造できる。」
オ 甲第5号証
バンドソーにより鋼板材を長手方向に切断できること。
(2) 対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1については、第3の2に示す取消しの理由を通知し期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。
そして、上記取消しの理由は妥当なものと認められる。
イ 本件発明2について
本件発明2と甲第1号証乃至甲第5号証記載の事項とを対比すると、甲第1号証乃至甲第5号証記載の事項は、本件発明2と一部共通する構成を備えているものの、甲第1号証乃至甲第5号証には、本件発明2の必須構成要件である「母材を中心に、この母材の両面に刃材を設けて熱間等方加圧法処理で接合一体化した後、母材の中央部で切断し、金型の刃型部品材料として用いること」について何等記載されておらず示唆もされていない。
そして、本件発明2は、上記構成要件を備えることにより本件明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、本件発明2は、甲第1号証乃至甲第5号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
2 理由2について
金属材を切断する手段としては、例えば、甲第5号証に示されているバンドソーの外種々の手段があり、母材中央部の切断手段について本件明細書に具体的な開示がないからといって当業者が本件発明2を容易に実施することができないということにはならない。
第5 結論
以上のとおりであるから、本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであって、取り消すべきものであり、また、本件の請求項2に係る特許は、特許異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由及び提出した証拠によっては取り消すことができないだけでなく、他に取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-02-07 
出願番号 特願平8-205445
審決分類 P 1 651・ 531- ZC (B21D)
P 1 651・ 121- ZC (B21D)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 川端 修福島 和幸  
特許庁審判長 小池 正利
特許庁審判官 鈴木 孝幸
宮崎 侑久
登録日 2000-11-17 
登録番号 特許第3129197号(P3129197)
権利者 日立エーアイシー株式会社
発明の名称 プリント配線板用の金型材料  
代理人 曽々木 太郎  

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