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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1056803
異議申立番号 異議2001-72212  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-10-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-08-13 
確定日 2002-03-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第3135351号「脱酸素用複合包装袋」の請求項1〜3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3135351号の請求項1〜3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3135351号の請求項1〜3に係る発明は、平成4年3月19日に特許出願され、平成12年12月1日にその特許権の設定登録がなされ、その後、申立人三菱瓦斯化学株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成13年12月28日に意見書の提出がなされたものである。

2.本件の請求項1〜3に係る発明
本件の請求項1〜3に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」〜「本件発明3」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】 脱酸素剤包装袋(A)の表面に両面接着テープ(B)、酸素検知剤シート(C)、透明フィルム(D)がこの順序で積層されており、該透明フィルムも該両面接着テープによって該脱酸素剤包装袋の表面に固着されていることを特徴とする脱酸素用複合包装袋。
【請求項2】 前記A、B、C及びDの全てが平面図として見た時に矩形であり、また、それぞれについての一方の対向する両端の各々が平面図として見た時にA、B、C及びDの全てについて重なっていることを特徴とする請求項1記載の脱酸素用複合包装袋。
【請求項3】 前記A、B、C及びDのそれぞれについての他方の対向する両端間の巾(W)がWA≧WD≧WB>WCであることを特徴とする請求項2記載の脱酸素用複合包装袋。」

3.引用刊行物の記載
先の取消の理由の通知において引用した刊行物は次のとおりである。
<引用刊行物>
刊行物1:実願平2-44626号(実開平4-3980号)のマイクロフィルム(申立人の提出した甲第1号証)
刊行物2:実公昭62-19973号公報(申立人の提出した甲第2号証)
刊行物3:実願昭54-108590号(実開昭56-28728号)のマイクロフィルム(申立人の提出した甲第3号証に対応するマイクロフィルム)

刊行物1には、脱酸素剤包装袋について次のように記載されている。
(1-1)
「脱酸素剤袋に酸素検知剤シートをはりつけてなる脱酸素剤包装袋。」(実用新案登録請求の範囲)
(1-2)
「酸素検知剤シートは酸素の有無により色が変化する組成物を紙、不織布などのシートに印刷、塗布、含侵させたものなどが使用される。」(3頁14行〜16行)
(1-3)
「脱酸素剤袋4への酸素検知剤シート2の張りつけは、脱酸素剤袋4と酸素検知剤シート2を重ね合わせ、・・・接着剤を塗布する、あるいは両面接着テープにより接着することで達成される。」(6頁14行〜19行)
(1-4)
「本考案では脱酸素剤袋と同時に酸素検知剤を食品包装袋に入れることができ、作業能率の向上が図れる。」(7頁1行〜3行)

刊行物2には、酸素インジケーターについて次のように記載されている。
(2-1)
「熱可塑性樹脂フィルム2の片面に全面または部分的に塗布された酸素インジケーター剤3を内側にして他の熱可塑性樹脂フィルム4を重ねて、両フィルム2,4を部分的に接着することにより該酸素インジケーター剤3を被覆してなる酸素インジケーター。」(実用新案登録請求の範囲)
(2-2)
「縞模様の接着剤5により両フィルム2,4を接着し、接着剤5の間に開放部6を残して、該部を通気性としたものである。
・・・フィルム2,4の少くとも一方が透明であることが必要であり、・・・等の合成樹脂が用いられる。」(1頁2欄9行〜18行)
(2-3)
「下層フィルムとして非熱接着性フィルム2aと熱接着性フィルム2bを積層した複合材の面に酸素インジケーター剤3が塗着され、その上面に熱接着性フィルム4b、非熱接着性フィルム4aの複合材が重ねられ、両上下フィルムの外周縁において非接着の開放部6aを残して熱圧着による接着部5aにより、重合接着される。」(1頁2欄26行〜2頁3欄4行)
(2-4)
「酸素インジケーター剤は、耐水、耐油性に優れたフィルム間に保持されているので、食品等の内容物に影響されることなくかつ内容物への色素の転移はなく、・・・など種々の実用効果を有するものである。」(2頁3欄11行〜4欄4行)

刊行物3には、脱酸素剤と酸素インジケータとの複合体について次のように記載されている。
(3-1)
「(1)脱酸素剤と、少なくとも一方の面のシートに通気性を有して前記脱酸素剤を収容する脱酸素剤収納袋と、シート状の酸素インジケータ小片と、前記酸素インジケータ小片に通じる小孔を有して前記酸素インジケータ小片をサンドイッチ状の積層構成で保持し且つその両端部が前記脱酸素剤収納袋の両端熱圧着部に熱圧着された透明プラスチックテープと、から成る脱酸素剤と酸素インジケータとの複合体。
(2)前記透明プラスチックテープは、2枚のプラスチックシートの間に酸素インジケータ小片を挿入して積層構成としたものである実用新案登録請求の範囲第1項記載の脱酸素剤と酸素インジケータとの複合体。」(実用新案登録請求の範囲)
(3-2)
「酸素インジケータ小片は透明プラスチックの積層によって保持され、小孔によって外部に通じているので、酸素インジケータ小片が直接に食品等に接触する恐れはほとんどない。」(5頁1行〜5行)
(3-3)
「第3図に示す如く部分的に熱圧着でシート(8)(9)を積層結合せず、小片(7)を除く全体を積層結合させてもよい。」(10頁2行〜5行)

4.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、引用発明における「脱酸素剤包装袋」は、本件発明における「脱酸素用複合包装袋」に対応するから、両者は、「脱酸素剤包装袋(A)の表面に両面接着テープ(B)、酸素検知剤シート(C)がこの順序で積層されている脱酸素用複合包装袋」である点で一致し、次の点において相違するものと認められる。
<相違点>
本件発明1においては、酸素検知剤シート(C)の上に、透明フィルム(D)が積層されており、この透明フィルムも両面接着テープ(B)によって該脱酸素剤包装袋の表面に固着されているのに対して、引用発明においては、このような透明フィルムを備えていない点。

そこで、この点について検討するに、酸素インジケーター剤の塗布面や酸素インジケータ小片が、食品等の内容物へ接触することによる内容物への色素の転移等を防ぐために、酸素インジケーター剤の塗布面や酸素インジケータ小片を透明なフィルムによりカバーすることは、本件の出願前に周知の事項である(刊行物2、3参照)。
してみると、引用発明においては、露出している酸素検知剤シートが食品等の内容物に接触することによる内容物への色素の転移等の恐れがあるものであり、透明なフィルムによるカバーが必要なものであることは当業者にとって自明のことと認められる。
ところで、引用発明においては、両面接着テープの片面に酸素検知剤シートが貼り付けられ、この両面接着テープを介して酸素検知剤シートが脱酸素剤包装袋の表面に固着されている。そもそも、両面接着テープはテープの両面に接着面を有し、両側に配置されたものをテープを介在させて接着するものであることは広く知られたものであるが、テープの幅をどの程度にするか、すなわち、接着面積をどの程度にするかは、接着するものに応じて当業者が適宜選択できる程度のものである。
例えば、特開平1-134243号公報及び特開平1-134246号公報には、基材(ポリエチレンテレフタレートからなる絶縁性基板1)上に両面接着テープを載置し、この両面接着テープの上面に、この両面接着テープの接着面の一部を占める小片(セルロースのテープ)を設置し、この小片の接着面よりも大きな接着面を有する部材(樹脂製の保持枠にポリカーボネート多孔体膜を接着したもの)をこの小片を覆うように載置することにより、上記小片と部材とを両面接着テープにより基材に固定するという、両面接着テープの使用方法が開示されていることから明らかなように、両面接着テープの接着面積を一つの部材が接着面において占める面積よりも大きくすることにより、この部材と、この部材を覆うような部材を、両面接着テープの片面に接着させるような両面接着テープの使用方法は、格別のものではない。
してみると、引用発明において、テープの幅を拡げることを妨げる格別の事情があったとは認められないので、酸素検知剤シートの上に透明なフィルムをカバーとして装着するにあたって、両面接着テープの接着面積を拡大して、すなわち、テープの幅を拡げて酸素検知剤シートのみならず、透明なフィルムをも両面接着テープに接着できるようにした点に、格別の困難があったとは認められない。
したがって、本件発明1は、引用発明及び上記の周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

なお、特許権者は、先の意見書において、本件発明1に係る脱酸素用複合包装袋によれば、脱酸素剤包装袋と酸素検知剤シートと表面の透明なフィルムとが、一枚の両面接着テープのみにより一体化されており、より少ない工程及びより少ない資源(両面接着テープの枚数)で効率よく脱酸素用複合包装袋を製造できるという効果が得れれている旨主張しているが、このような効果は、上記の特開平1-134243号公報、特開平1-134246号公報等に見られる両面接着テープの使用方法から、当然に予測しうる程度の効果にすぎないものと認められる。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1におけるA、B、C及びDの全てが平面図として見た時に矩形であり、また、それぞれについての一方の対向する両端の各々が平面図として見た時にA、B、C及びDの全てについて重なっていることを特定するものである。
そこで、この点について検討するに、引用発明においては、A、B、Cの全てが平面図として見た時に矩形であり、また、それぞれについての一方の対向する両端の各々が平面図として見た時にA、B、Cの全てについて重なっているものである。
してみると、Dを設けるに当たっても、A、B、Cについての上記条件を満たすようにすることは、DがCのカバーとして機能しなければならないことを勘案して、当業者が容易に想到しうる程度のことと認められる。
したがって、本件発明2は、本件発明1についての理由に上記理由を加えた理由により、引用発明及び上記の周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明2におけるA、B、C及びDのそれぞれについての他方の対向する両端間の巾(W)がWA≧WD≧WB>WCであることを特定するものである。
そこで、この点について検討するに、上記4.(1)において、引用発明及び上記の周知に事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるとした本件発明1は、すでに本件発明3の上記要件を満たしているものである。
したがって、本件発明3は、引用発明及び上記の周知に事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1〜3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件の請求項1〜3に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-02-05 
出願番号 特願平4-92396
審決分類 P 1 651・ 121- Z (B65D)
最終処分 取消  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 祖山 忠彦
市野 要助
登録日 2000-12-01 
登録番号 特許第3135351号(P3135351)
権利者 パウダーテック株式会社
発明の名称 脱酸素用複合包装袋  
代理人 高畑 ちより  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 鈴木 俊一郎  
代理人 田中 克郎  
代理人 鈴木 亨  
代理人 牧村 浩次  
代理人 大賀 眞司  
代理人 保坂 延寿  

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