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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B24B |
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管理番号 | 1057516 |
審判番号 | 不服2000-10272 |
総通号数 | 30 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-08-05 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-07-06 |
確定日 | 2002-04-19 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 10772号「面取り装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 8月 5日出願公開、特開平 9-201753]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本件出願の発明 本件出願は、平成8年1月25日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明(以下「本件発明1〜3」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1には、以下のとおり記載されている。 「被削物の直交する面間に沿って走行するためのキャスタを備えたL型ベースと、該L型ベースに固定されモータ出力軸に砥石が取り付けられたモータ部とを備えた面取り装置において、前記L型ベースの両側面に円弧状の溝を設け、前記モータ部がこの溝を摺動し、任意の角度において前記モータ部をL型ベースに固定するストッパを備え、前記モータ部には面取りの切り込み量を調節するスライド機構を設けたことを特徴とする面取り装置。」 第2 引用例記載の発明 1 引用例1記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である実願昭60-10972号(実開昭61-127958号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、以下のとおり記載されている。 (1)実用新案登録請求の範囲 「(1)支持金具1の下方にスライド受台4を、上下の位置が調整できるよう摺動自在にして設け、該スライド受台4にはグラインダー押さえ金具11を、グラインダーを挾持できるようにして設け、そして、前記支持金具1の上方後部に90度の角度を有する角型受台15を設け、該角型受台15の背面角部には、グラインダーの研削具27が進入できる凹所18を設け、この凹所18は該凹所18により角型受台15の内面の角部と背面の角部を貫通する研削用透孔19が形成されるようにして設け、さらに、支持金具1の下部に金属製ベース20を着脱自在に取り付けた手持グラインダー保持具。」 (2)明細書第5頁第7〜9行 「被加工物が大きな場合には、グラインダーを挾持した保持具を手で持ち、角型受台15を被加工物の角部に当てて摺動させて面取りをする。」 (3)明細書第8頁末行〜第9頁8行 「また、本実施例に装着したグラインダーは市販されているディスク型のベビーグラインダーであり、グラインダーの頭部26を角型受台15の凹所18に進入させ、スライド受台4とグラインダー押さえ金具11でグラインダーの胴部を固く挾持し、次に、摘みを回転してスライド受台4の高さを調節し、研削具27の高さを調節する。次に、スライド受台クランプ7をねじ込みスライド受台止金5を押圧固定し、面取り作業をする。」 上記記載事項及び図面の記載からすると、引用例1には以下の発明が記載されていると認める。 被加工物の直交する面間に沿って摺動する角型受台15と、胴部25、頭部26及び研削具27からなるグラインダーを備え、グラインダーが、支持金具1、スライド受台4及びグラインダー押さえ金具11により角型受台15に固定された面取り装置において、スライド受台4の高さを調節することにより、研削具27の高さを調節する手持式の面取り装置。 2 引用例2記載の発明 同じく原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である実公昭42-18719号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のとおり記載されている。 (1)実用新案登録請求の範囲 「外部一側に把手1を設けた匣体2内部上方に垂設したモーター3の回転軸4にチャック5を装着してこのチャック5に回転用砥石24の軸25を固定し、該匣体2の両側壁側方下部に樹設した螺軸6へ適宜な間隔の上下2本の平行な支承杆14、15基部に連接した作用基板8、9の円弧状透溝10、11を遊嵌すると共に蝶ナット12,13を螺軸6に螺締して両側に於ける上下2本の平行な支承杆14、15を適宜な角度に固定しさらに両側に於ける上下2本の平行な支承杆14、15外側壁の基部に近接した位置へ上下に対向する様に全体で4個の滑止車16、17、18、19を着脱自在に軸着すると共に両側に於ける上下2本の平行な支承杆14、15先端に上下に対向して全体で4個の保持車20、21、22、23を該支承杆14、15に対し直角となる様に着脱自在に軸着することにより構成した携帯用硬質板研磨機。」 (2)第1頁右欄第21〜22行 「本考案の研磨機を横に順次移動して硬質板28端縁を均一に成形するものである。」 (3)第1頁第23〜33行 「この時硬質板28端縁の要求する成形角度に従って蝶ナット12、13を緩め作用基板8、9の円弧状透溝10に沿って両側に於ける上下2本の平行な支承杆14、15を回動し・・・硬質板28と回転用砥石24との接頭角度が所望角度になるまで両側の上下2本の平行な支承杆14、15を回動した後、再び蝶ナット12、13を螺締して作用基板8、9を締付ける事により両側の上下2本の平行な支承杆14、15を固定する。」 上記記載事項及び図面の記載からすると、引用例2には以下の発明が記載されていると認める。 匣体2内部上方に垂設したモーター3の回転軸4に回転用砥石24の軸25を固定し、硬質板28を支承する支承杆14、15と一体の作用基板8、9に設けられた円弧状透溝10に沿って、匣体2の下部に樹設した螺軸6及び螺軸6に螺着された蝶ナット12、13が摺動し、硬質板28とモーター3により回転される回転用砥石24との接当角度が所望角度になるまで回動した後、蝶ナット12、13を螺締して固定し、研磨時に硬質板28端縁に沿って移動するようにされた携帯用硬質板研磨機。 第3 対比 本件発明1と引用例1記載の発明を対比する。 引用例1記載の発明における「被加工物」、「角型受台15」、「研削具27」、「スライド受台4」が、それぞれ、本件発明1における「被削物」、「L型ベース」、「砥石」、「スライド機構」に相当する。また、引用例1記載の発明における「グラインダー」、「支持金具1」及び「スライド受台4」の組み合わされたものが、本件発明1における「面取りの切り込み量を調節するスライド機構」が設けられた「モータ出力軸に砥石が取り付けられたモータ部」に相当する。 したがって、両者は、以下の装置である点で一致する。 被削物の直交する面間に沿うL型ベースと、該L型ベースに固定されモータ出力軸に砥石が取り付けられたモータ部とを備えた面取り装置において、前記モータ部には面取りの切り込み量を調節するスライド機構を設けたことを特徴とする面取り装置。 そして、以下の点で相違する。 1 相違点1 本件発明1においては、L型ベースに被削物の直交する面間に沿って走行するキャスタが設けられているのに対し、引用例1記載の発明においては、そうなっていない点。 2 相違点2 本件発明1においては、L型ベースの両側面に円弧状の溝が設けられ、モータ部がこの溝を摺動し、任意の角度においてモータ部をL型ベースに固定するストッパが備えられているのに対し、引用例1記載の発明においては、そうなっていない点。 第4 当審の判断 そこで、上記相違点について検討する。 1 相違点1について 面取り装置のL型ベースの被削物の直交する面間に、面に沿って走行するキャスタを設けることは、本件出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である実公平3-18125号公報に記載されているように周知慣用の技術であるから、引用例1記載の発明において、L型ベースに被削物の直交する面間に沿って走行するキャスタを設けることは、当業者が適宜なしうる設計的事項である。 2 相違点2について 引用例2には、先に認定したように、回転用砥石を固定したモータを垂設した匣体を、硬質板を支承する部材と一体の作用基板に設けられた円弧状溝に沿って所望の角度まで回動させた後、蝶ナットを螺締し、匣体を作用基板に固定することにより、硬質板の回転用砥石への接当角度を調節することが記載されている。 ここで、回転用砥石を固定したモータを垂設した匣体は、本件発明1の「砥石が取り付けられたモータ部」に相当し、匣体が円弧状溝に沿って回動すること、蝶ナットにより匣体を作用基板に固定することは、それぞれ、本件発明1の「モータ部がこの溝(円弧状の溝)を摺動」すること、「モータ部をL型ベースに固定する」ことに相当する。また、引用例2記載の蝶ナットは、これを螺締することにより匣体と作用基板を固定するものであるから、本件発明1における「任意の角度においてモータ部をL型ベースに固定するストッパ」に相当する。 そして、引用例1、2記載の発明は、何れも、加工装置を被加工物に対して案内させながら相対的に移動させて被加工物の端部を削る携帯用装置であること、携帯用の加工装置を使用する場合に加工装置と被加工物のどちらを移動させるかは、被加工物の大きさ・重量に応じて、当業者が適宜決めるべき設計的事項であることを考慮すれば、引用例2記載の発明を引用例1記載の発明に適用し、L型ベースの両側面に円弧状の溝を設け、モータ部がこの溝を摺動するようにし、さらに、任意の角度においてモータ部をL型ベースに固定するストッパを備えるようにすることは、当業者であれば容易に想到したことである。 また、本件発明1の効果は、引用例1、2記載の発明から当業者が予測することができる程度のものであって格別なものではない。 第5 むすび したがって、本件発明1は、本件出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である引用例1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本件発明2、本件発明3について判断するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-02-05 |
結審通知日 | 2002-02-12 |
審決日 | 2002-02-26 |
出願番号 | 特願平8-10772 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B24B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 村山 睦 |
特許庁審判長 |
小林 武 |
特許庁審判官 |
鈴木 孝幸 加藤 友也 |
発明の名称 | 面取り装置 |
代理人 | 大橋 良輔 |
代理人 | 大橋 勇 |