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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1057555
審判番号 不服2000-19185  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-04-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-04 
確定日 2002-04-18 
事件の表示 平成 7年特許願第253594号「高密度マトリクスボード」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 4月 8日出願公開、特開平 9- 98455]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成7年9月29日の出願であって、その請求項1〜4に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1〜4の各請求項に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。(なお、平成12年12月4日付けの手続補正書は却下された。)
「複数本のX方向のパターンが設けられた層と複数本のY方向のパターンが設けられた層とを各パターン間で絶縁が保たれるように交互に複数重ね、X方向のパターンとY方向のパターンの各交差点に格子ホールを設けて、所望の格子ホールに接続ピンが挿入されることでX方向のパターンとY方向のパターンとが電気的に接続されるマトリクス回路を内蔵した高密度マトリクスボードにおいて、
上下でペアとなるX方向のパターン間で、上側に位置するパターンと下側に位置するパターンとを入れ換えるパターンひねり部を設けるとともに、上下でペアとなるY方向のパターン間で、上側に位置するパターンと下側に位置するパターンとを入れ換えるパターンひねり部を設けることを特徴とする高密度マトリクスボード。」
2.引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開平7-235341号公報(以下、「引用文献」という。)には、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 1次側の信号線に接続される第1の配線パターンと2次側の信号線に接続される第2の配線パターンとが立体的に交差されるように配置され前記第1の配線パターンと第2の配線パターンの内、任意のパターン間を接続することができるようにした配線切換盤のマトリクスボードにおいて、前記第1、第2の配線パターンを対線毎により対構造にしたことを特徴とする配線切換盤のマトリクスボード。
・・・・・・・
【請求項4】 少なくとも4層以上の多層基板の2層ずつを用いて前記第1、第2の配線パターンを形成し、各配線パターンを構成する複数の各対線の一方の線と他方の線を別の層に形成し、かつ、スルーホールにて互いに相手側の層と入れ替わるようにすることにより、より対構造となるようにしたことを特徴とする請求項1・・・記載の配線切換盤のマトリクスボード。」(特許請求の範囲)、「図12に示すように、マトリクスボード11により行われる。12は両面基板の片面に形成された1次側配線パターンであり、13は両面基板の他方の面に形成された2次側配線パターンである。各配線パターン12、13は、共に平行配線され、互いには、立体的に直交するように配置されており、両配線パターンの交点(クロスポイント)にはスルーホールをなす接続穴15が穿設されている。1次側配線パターン12と2次側配線パターン13との接続は、2つの接続片14a、14bを有する接続部材14により行う。1次側配線パターン12は1次側I/O16を介して1次側信号線(図示せず)に接続され、2次側配線パターン13は1次側I/O17を介して2次側信号線(図示せず)に接続される。ここで、1次側配線パターン12と2次側配線パターン13は対線(ペア線)で1つの信号を送るようになっており、対線12aと対線13aを接続させる場合には、接続穴15a、15bにそれぞれ接続片14a、14bを挿入することにより対線を同時に接続させることができる。このようにして、接続部材14により、任意の対線間を接続することができる。」(段落番号【0002】)、「【発明が解決しようとする課題】 ところが、配線切換盤1の省スペース化からマトリクスボード11の配線パターン12、13は高密度化し、また、近年、LANの信号伝送速度が高速化し、従来の平行配線のマトリクスボード11では、クロストーク性能が満足できない
という問題があった。・・・
本発明は、上記の点に鑑みてなしたものであり、その目的とするところは、クロストークを低減した配線切換盤のマトリクスボードを提供することにある。」(段落番号【0004】〜【0005】)、「25a、25bは1次側配線パターン22a、22bと2次側配線パターン23a、23bとのクロスポイントにスルーホールで形成された接続穴である。図12で示した接続片14を接続穴25a、25bに差し込むことにより、1次側の配線パターンと2次側の配線パターンとを電気的に接続することができるのである。」(段落番号【0020】)、「図6は、本発明に係る他の実施例を示す模式図であり、(a)は4層基板の内、層Aと層Bの部分の一部を示す斜視図であり、(b)は上面からみた平面図である。本実施例は、図3で示した実施例において、1次側の配線パターン22a、22bの各対線を同一面上に形成するのではなく、スルーホールSを介して1つのクランク形状毎に上下面を入れ替えるように形成したものである。このようにすることにより、より対の効果がさらに向上するのである。」(段落番号【0024】)、と記載されている。また、これらの記載と関連して、第1〜4図、第6図、第12図が示されている。
上記摘記した事項によれば、「第1の配線パターン」と「第2の配線パターン」は各各層であって、その間で絶縁が保たれるようにされていることは自明のことであるし、上記摘記した段落番号【0020】によれば、「接続穴」は、「第1の配線パターン」と「第2の配線パターン」の各交差点に設けられた格子ホールであり、上記摘記した請求項1に記載の「接続」が電気的な接続を意味することは明らかであり、上記摘記した段落番号【0004】〜【0005】によれば、「マトリクスボード」が高密度であることは明らかであり、上記摘記した段落番号【0024】及び第6図の記載によれば、上記摘記した請求項4に記載の「相手側の層と入れ替わるようにする」ことはより具体的には入れ換えるパターンひねり部を設けることである。また、「第1の配線パターン」と「第2の配線パターン」は、上記摘記した段落番号【0002】及び第1〜4図の記載により、直交していることは明らかであるから、それぞれを複数本のX方向のパターン及び複数本のY方向のパターンと記載することができる。
してみると、これらの記載を総合すると、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。
複数本のX方向のパターンが設けられた層と複数本のY方向のパターンが設けられた層とを各パターン間で絶縁が保たれるように複数重ね、X方向のパターンとY方向のパターンの各交差点に格子ホールを設けて、所望の格子ホールに、2つの接続片からなる接続部材が挿入されることでX方向のパターンとY方向のパターンとが電気的に接続されるマトリクス回路を内蔵した高密度マトリクスボードにおいて、
上下でペアとなるX方向のパターン間で、上側に位置するパターンと下側に位置するパターンとを入れ換えるパターンひねり部を設けるとともに、上下でペアとなるY方向のパターン間で、上側に位置するパターンと下側に位置するパターンとを入れ換えるパターンひねり部を設けた高密度マトリクスボード。
3.対比
本願発明中の「接続ピン」も引用発明中の「接続部材」も、X方向のパターンとY方向のパターンとを電気的に接続するための接続用具といえるから、本願発明と引用発明は、
「複数本のX方向のパターンが設けられた層と複数本のY方向のパターンが設けられた層とを各パターン間で絶縁が保たれるように複数重ね、X方向のパターンとY方向のパターンの各交差点に格子ホールを設けて、所望の格子ホールに接続用具が挿入されることでX方向のパターンとY方向のパターンとが電気的に接続されるマトリクス回路を内蔵した高密度マトリクスボードにおいて、
上下でペアとなるX方向のパターン間で、上側に位置するパターンと下側に位置するパターンとを入れ換えるパターンひねり部を設けるとともに、上下でペアとなるY方向のパターン間で、上側に位置するパターンと下側に位置するパターンとを入れ換えるパターンひねり部を設けた高密度マトリクスボード。」
の点で一致し、以下の2点で相違点で相違する。
(イ)本願発明では、「複数本のX方向のパターンが設けられた層と複数本のY方向のパターンが設けられた層とを各パターン間で絶縁が保たれるように交互に複数重ね」ているのに対し、引用文献には、引用発明に関して、「交互」とする構成の記載はない。
(ロ)接続用具に関して、本願発明では「接続ピン」であるのに対して、引用発明では、「2つの接続片からなる接続部材」である。
4.当審の判断
そこで、これらの相違点について検討する。
相違点(イ)について
「複数本のX方向のパターンが設けられた層と複数本のY方向のパターンが設けられた層とを各パターン間で絶縁が保たれるように交互に複数重ね」たマトリクスボードは周知(必要ならば、周知文献として、特開平7-160315号公報、特開平5-303927号公報、特開平3-141565号公報、特開平2-246458号公報、特開平1-276524号公報があるので、参照されたい。)であるから、相違点(イ)は、単なる設計的変更にすぎない。
相違点(ロ)について
引用発明における「接続部材」は、一定の位置関係にある2つの格子ホールのそれぞれを同時に電気的に接続するため、2つの「接続片」からなる構成になっているが、これらの「接続片」を単体として使えることは自明である。そして、引用文献の第12図を参酌すると、この接続片は、実質において、ピンといえるものである。してみると、この「接続部材」中の「接続片」を分離して、「接続ピン」とする程度のことは、単なる設計的事項にすぎない。 また、「接続ピン」自体、上記した周知文献にも示されているように、マトリクスボードにおいて周知のものである。
したがって、この相違点(ロ)にも格別な創意工夫を見いだすことはできない。
5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、引用文献記載の発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明について特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-02-05 
結審通知日 2002-02-12 
審決日 2002-03-04 
出願番号 特願平7-253594
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大日方 和幸岩井 健二小宮 慎司戸次 一夫  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 山本 春樹
矢頭 尚之
発明の名称 高密度マトリクスボード  
代理人 金倉 喬二  
代理人 金倉 喬二  

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