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審決分類 審判 一部無効 1項2号公然実施 無効とする。(申立て全部成立) B23D
管理番号 1057594
審判番号 無効2001-35192  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-08-09 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-05-02 
確定日 2002-04-24 
事件の表示 上記当事者間の特許第2141349号発明「剪断機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2141349号の請求項1乃至請求項3、請求項7及び請求項16係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 当事者の求めた審決
1 請求人
結論同旨
2 被請求人
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
第2 事案の概要
本件は、請求人が、特許第2141349号の請求項1乃至請求項3、請求項7及び請求項16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」乃至「本件発明3」、「本件発明7」及び「本件発明16」という。)についての特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるとしてその無効を求めている事案である。
1 争いのない事実
当事者の提出した証拠及び口頭審理の結果から次の事実が認められる。
(1) 手続の経緯
平成 5年 1月26日 特許出願(特願平5-10341号、優先日 平 成4年3月4日、同4年4月2日、優先権主張国 日本)
同 7年11月22日 出願公告(特公平7-108481号)
同 8年 2月21日 異議申立(異議申立人 本件請求人)
同 8年 2月22日 異議申立(異議申立人 三浦邦彦)
異議申立(異議申立人 亀倉精機株式会社)
同 10年 5月 6日 異議決定(理由あり)、拒絶査定
同 10年 7月 1日 拒絶査定不服審判請求(平成10年審判第996
6号)
同 12年 3月28日 審決(原査定取消)
同 12年 5月19日 設定登録
同 13年 5月 2日 本件無効審判請求
(2) 本件発明
本件発明1乃至本件発明3、本件発明7及び本件発明16は、登録時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至請求項3、請求項7及び請求項16に記載されたとおりのものと認めるところ、構成要件毎に符号を付して分節すると以下のとおりである。
本件発明1
「【請求項1】
A ピストンロッドの前端部分に取付けられた可動刃と、本体に取付けられ
た固定刃とを有し、該固定刃が、ねじ付き被切断棒鋼の外形と実質的に相
補する形状を有する凹部を備え、該凹部が、前記棒鋼のおねじと対応する
めねじを有する剪断機において、
B 前記可動刃は、該可動刃が前進される際に前端部が前記棒鋼に押圧され
る切刃部分を有し、前記固定刃は、左右の固定刃部分と、該固定刃部分間
に配置されたスリットとを有し、該スリットは、前記切刃部分と対向し、
前記切刃部分が前進した際に該切刃部分を収容する位置に位置決めされ、
前記固定刃部分は、前記可動刃の両側で前記棒鋼を支持し、該可動刃は、
左右の固定刃部分の間で前記棒鋼を押圧し、該棒鋼を切断し、
C 前記凹部の中心軸線は、前記固定刃の幅方向軸線に対して所定の角度を
なして傾斜していることを特徴とする剪断機。」
本件発明2
「【請求項2】
A ピストンロッドの前端部分に取付けられた可動刃と、本体に取付けられ
た固定刃とを有し、該固定刃が、ねじ付き被切断棒鋼の外形と実質的に相
補する形状を有する凹部を備え、該凹部が、前記棒鋼のおねじと対応する
めねじを有する剪断機において、
B 前記可動刃は、該可動刃が前進される際に前端部が前記棒鋼に押圧され
る切刃部分を有し、前記固定刃は、左右の固定刃部分と、該固定刃部分間
に配置されたスリットとを有し、該スリットは、前記切刃部分と対向し、
前記切刃部分が前進した際に該切刃部分を収容する位置に位置決めされ、
前記固定刃部分は、前記可動刃の両側で前記棒鋼を支持し、該可動刃は、
左右の固定刃部分の間で前記棒鋼を押圧し、該棒鋼を切断し、
D 前記凹部のめねじは、ねじ山の各頂部が平坦に形成され、前記スリット
を画成する側壁は、ねじ山の頂部に位置することを特徴とする剪断機。」
本件発明3
「【請求項3】
A ピストンロッドの前端部分に取付けられた可動刃と、本体に取付けられ
た固定刃とを有し、該固定刃が、ねじ付き被切断棒鋼の外形と実質的に相
補する形状を有する凹部を備え、該凹部が、前記棒鋼のおねじと対応する
めねじを有する剪断機において、
B 前記可動刃は、該可動刃が前進される際に前端部が前記棒鋼に押圧され
る切刃部分を有し、前記固定刃は、左右の固定刃部分と、該固定刃部分間
に配置されたスリットとを有し、該スリットは、前記切刃部分と対向し、
前記切刃部分が前進した際に該切刃部分を収容する位置に位置決めされ、
前記固定刃部分は、前記可動刃の両側で前記棒鋼を支持し、該可動刃は、
左右の固定刃部分の間で前記棒鋼を押圧し、該棒鋼を切断し、
E 前記スリットは、前記固定刃に対し、前記凹部のめねじのリード角と略
同一に設定された角度をなして傾斜し、前記スリットの側壁に近接するね
じ山は、スリットと略平行に延び、前記固定刃の露出端面と凹部の底部と
の間に位置する前記側壁の部分は、互いに略平行に延びることを特徴とす
る剪断機。」
本件発明7
「【請求項7】
A ピストンロッドの前端部分に取付けられた可動刃と、本体に取付けられ
た固定刃とを有し、該固定刃が、ねじ付き被切断棒鋼の外形と実質的に相
補する形状を有する凹部を備え、該凹部が、前記棒鋼のおねじと対応する
めねじを有する剪断機において、
B 前記可動刃は、該可動刃が前進される際に前端部が前記棒鋼に押圧され
る切刃部分を有し、前記固定刃は、左右の固定刃部分と、該固定刃部分間
に配置されたスリットとを有し、該スリットは、前記切刃部分と対向し、
前記切刃部分が前進した際に該切刃部分を収容する位置に位置決めされ、
前記固定刃部分は、前記可動刃の両側で前記棒鋼を支持し、該可動刃は、
左右の固定刃部分の間で前記棒鋼を押圧し、該棒鋼を切断し、
F 前記凹部の中心軸線は、前記スリットの中心線に対する垂線に対して所
定の角度をなして傾斜し、前記スリットの中心線と前記凹部の中心軸線と
がなす角度は、90度よりも小さく、前記スリットは、前記棒鋼のおねじ
のリード角方向の切断面を該棒鋼に形成するように配向されることを特徴
とする剪断機。」
本件発明16
「【請求項16】
A’ピストンロッドの前端部分に取付けられる可動刃と、本体に取付けられ
る固定刃とを有し、該固定刃が、ねじ付き被切断棒鋼の外形と実質的に相
補する形状を有する凹部を備え、該凹部が、前記棒鋼のおねじと対応する
めねじを有する剪断機の切断具において、
G 前記可動刃は、該可動刃が前進するときに前記棒鋼に押圧される切刃部
分を有し、前記固定刃は、左右の固定刃部分と、該固定刃部分間に配置さ
れたスリットとを有し、該スリットは、前記凹部のめねじのリード角の方
向に延び、前記スリットを画成する側壁は、前記凹部のめねじのねじ山の
頂部に一致又は近接して位置し、前記スリットは、前記可動刃が前進した
ときに該可動刃の切刃部分を収容するように、該切刃部分を受入れ可能な
幅を有し、
H 使用において、前記固定刃部分は、前記可動刃の両側で前記棒鋼を支持
し、該可動刃は、左右の固定刃部分の間で前記棒鋼を押圧し、該棒鋼を切
断するようになっていることを特徴とする剪断機の切断具。」
2 当事者の主張
(1) 請求人の主張の概要
理由1
本件発明1乃至本件発明3、本件発明7及び本件発明16は、検甲第1号証、検甲第2号証及び甲第1号証乃至甲第9号証に証するとおり、本件特許の出願の優先日前(以下「本件特許の出願前」という。)に日本国内において公然知られた発明又は公然実施をされた発明であり、特許法第29条第1項第1号及び同第2号に該当し、同項の規定により特許を受けることができないものである。
理由2
本件発明1、本件発明3、本件発明7及び本件発明16は、検甲第1号証、検甲第2号証及び甲第1号証乃至甲第9号証により証される公然知られた発明若しくは公然実施された発明又は本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第10号証乃至甲第12号証記載の発明に基づいて、また、本件発明2は、さらに同じく本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第13号証記載の発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がそれぞれ容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものである。
(2) 被請求人の主張の概要
理由1について
ア 検甲第2号証の切断具は、本件特許の出願前に製造したものと同一のものと認める。しかしながら、検甲第1号証の剪断機については、これを証明すべき証拠はない。
イ 請求人は、検甲第2号証の切断具を、亀倉精機株式会社が、本件特許の出願前である昭和60年11月から、甲第7号証及び甲第8号証の設計図に基づいて製造していたとしている。
亀倉精機株式会社は、本件の審査過程において、平成8年2月22日付で特許異議の申立てをしたという経緯があり、本件特許を無効とすることによって利益を得ることができる当事者的立場にあるといえるところ、甲第7号証及び甲第8号証の設計図は、当事者的立場にある亀倉精機株式会社によって作成されたものであって、客観性に欠け、また、その記載の真偽は、乙第1号証に照らすと極めて疑わしい。
乙第1号証は、本件の審査過程において、請求人が特許異議の申立てを行う過程で、被請求人に提供した亀倉精機株式会社のW3/8ダイの図面であり、甲第7号証及び甲第8号証を製図した者と同じ樋浦によって昭和61年8月9日に作成され、またそれを承認した者と同じ西山によって昭和61年8月11日に承認されている。これに対し、甲第7号証は、樋浦による記載及び西山の承認印の日付によれば、昭和60年8月6日に作成され、かつ、承認されたものということになる。このように、同じ様な時期に、同じ製品について、異なった内容の書面が作成され、いずれも外部の者に別々に示されていること自体不自然である。
また、甲第7号証の図面には、中央に示された「W3/8-16山」の記載からわかるように、凹部には、直径3/8インチの凹部に1インチあたり16山の雌ねじが形成されており、また、上段右側の平面図において、スリットは凹部の軸線に対して3°の溝角度を有している構成が示されており、他方、甲第7号証より約1年後に作成された乙第1号証には、上段中央の図である側面図に示された「W3/8-16山タップ」の記載からわかるように、凹部には、直径3/8インチの凹部に1インチあたり16山の雌ねじが形成されており、また、凹部とスリットとの間の角度については「直角角度は1/500以内のこと」と記載されているが、これは、本件各発明の分野における技術の流れを考えるとき大変不自然である。
すなわち、本件特許の出願前に各社によって実施されていたダイは、スリットが凹部に対して直角に形成されていたのであり、これが本件各発明の従来技術であって、この従来技術がもつ課題を、本件発明1を例とすると、凹部の中心軸線を固定刃の幅方向軸線に対して所定の角度をなして傾斜させることにより解決したのである。亀倉精機株式会社が過去に特許異議の申立てを行った事実からして、同社が本件各発明の技術的効果を認めていることは明白である。仮に甲第7号証の記載が正しいとすれば、スリットが凹部の軸線に対して3°の溝角度を有しているダイは、昭和60年8月6日の時点で完成されていたのであり、それから約1年も後の昭和61年8月9日に、乙第1号証に示すような技術的に劣るダイを作るのは、技術の進歩に逆行することであり、大変不自然である。
したがって、甲第7号証の図面又は乙第1号証の図面のいずれかが、真実の作成日を記載していないものと考えるべきであるところ、乙第1号証は、請求人が特許異議の申立ての段階において被請求人に交付したものであり、自己に不利益な図面をわざわざ作成して交付することは考え難いことからみて、甲第7号証の図面の作成日の真実性について疑わざるをえない。
なお、甲第7号証自体、通常の実務における製図法とは異なる態様で作図されており、これを特に、同じ図面作成者が作った乙第1号証と比べると不審な点が多い。
すなわち、甲第7号証は、向かって左側上方の平面図及び左側下方の側面図において中間部品を示し、また、中央において、異なる工程である、旋盤・フライスによって加工された部品を表し、更に、その後、焼入、放電加工、研磨を行うべきことが記載され、更に、中央下方に製品完成図を示しているが、通常の実務における製図法では、このように異なる工程に係わる部品を1枚の図面に表すことはせず、例えば、乙第1号証に示されているように、製品完成図は独立して1枚の図に表す。また、甲第7号証は、中央のダイの側面図と右側の平面図との向きが正しい製図法に基づいていない。乙第1号証には正しく示されているように、通常であれば、甲第7号証のダイの側面図は、平面図との関係で、横向きに表されているべきである。
以上からすると、甲第7号証は、通常の業務遂行の過程で作成された図面としては極めて不自然なものであり、前記の作成日についての不自然さを考え併せれば、到底、本件特許の出願前に同図記載の製品が製造されていたことを証明するに足りるものではない。
ウ 更に、請求人は、甲第1号証及び甲第2号証はいずれも、亀倉精機株式会社製剪断機(AP-2型)及び切断具(AP-2型のSC-3/8)の販売カタログであり、そこには、検甲第2号証として提出した寸切用スクリューカッターが装着された検甲第1号証の剪断機が掲載されていると主張している。
しかし、甲第1号証及び甲第2号証は、確かに、亀倉精機株式会社のAP-2型ポートパンチャーのカタログであり、その中に、AP-2型ポートパンチャーと、SC-3/8”寸切用スクリューカッターと称する取換部品の写真が表されている。しかし、いずれのカタログの写真を見ても、本件各発明の構成は全く示されておらず、これらカタログに記載されたものが、本件各発明の構成要件を備えているものか否か、全く不明である。したがって、頒布の時期を問わず本件各発明を開示するものではないから、これらによって本件各発明が本件特許の出願前から公知であったということはできない。
また、同様の理由から、上記カタログに検甲第1号証の剪断機と検甲第2号証の切断具が掲載されているか否か判断しようがない。
エ 更に、請求人は、甲第1号証及び甲第2号証の販売カタログは、それぞれ、本件特許の出願前である昭和60年11月と、平成2年12月10日に頒布されたものであると主張している。そして、その頒布時期は、販売カタログの印刷を注文し、納品を受けたと称する西巻印刷株式会社の代表者である西牧克郎による証明書(甲第4号証)、亀倉精機株式会社の代表取締役である亀倉芳邦による証明書(甲第5号証)及び同専務取締役である亀倉邦男による証明書(甲第6号証)を根拠としている。
甲第4号証において、西巻印刷株式会社の代表者である西巻克郎は、甲第1号証及び甲第2号証の販売カタログの印刷時期及び亀倉精機株式会社への納入時期について証明している。しかし、例えば、注文を受け、納品したカタログが甲第1号証及び甲第2号証のカタログであることを明確に特定した納品書等、客観性のある証拠書類に基づくならともかく、甲第4号証の証明書は、取引先の代表者による証明書であり、しかも、どのようにして、当時、当該カタログを納品したことを確認したのかという方法も何ら記載されておらず、具体性に欠け、客観性、信用性に乏しいものである。
また、西巻克郎は、甲第4号証の証明書に添付されているカタログのコピーのうち、2番目のカタログの裏面右下に「CTG.No.901210」と記載されており、これは、1990年(平成2年)12月10日に印刷したことを意味することを証明しているが、上記証明書に添付されている1番目のカタログを参照すると、裏面右下には上記と同様な番号の記載はなく、また、他に、上記番号が印刷日を意味するものであることを確認する証拠もない。
したがって、甲第1号証及び甲第2号証のカタログの印刷時期は未だ不明であり、ましてや、その頒布時期は全く明らかでない。
仮に、甲第4号証の2番目に添付されたカタログ裏面右下の「CTG.No.901210」の記載が1990年(平成2年)12月10日に印刷されたことを意味し、また、1番目に添付されたカタログの表紙には「SC-3/8”寸切用スクリューカッター」の前に「新発売」が記載されているのに対して2番目に添付されたカタログの表紙には「新発売」の文字がないことを根拠にこれらカタログが上記の順番で印刷・配布されたとしても、本件各発明が、本件特許の出願前に公知であったということはできない。甲第1号証のカタログの表紙の「新発売SC-3/8”寸切用スクリューカッター」という記載は、SC-3/8”寸切用スクリューカッターが取換部品として新発売であるということを示しているに過ぎず、当時、新発売であった、このSC-3/8”寸切用スクリューカッターは、昭和61年8月9日に作成の乙第1号証の設計図に示すW3/8のダイを、パンチャーの取換部品として、新たに発売したとの憶測も可能である。
オ 甲第5号証及び甲第6号証はそれぞれ、亀倉精機株式会社の代表取締役及び専務取締役による証明書である。既に述べたように、亀倉精機株式会社は、本件特許無効審判事件において利害関係のある当事者的立場にあり、甲第5号証及び甲第6号証で主張している販売カタログ(甲第1号証及び甲第2号証のカタログ)の印刷時期及び配布時期は、客観性及び信用性を欠くものである。
また、亀倉精機株式会社の上記代表取締役及び専務取締役は、甲第5号証及び甲第6号証の中で、上記販売カタログに掲載されている寸切用スクリューカッター(AP-2型のSC-3/8)は、甲第5号証及び甲第6号証に添付した昭和60年8月6日作成の「AP-2ダイ」及び「AP-2パンチ」の設計図に示す製品と同一であり、また、同号証に添付したイ号製品証明書に示すイ号製品と同一であると主張している。
甲第5号証及び甲第6号証に添付された設計図は、甲第7号証及び甲第8号証の設計図と同じものであり、甲第7号証及び甲第8号証の設計図については、既に説明したとおり、不自然な部分があり、到底採用されるべきものではない。また、既に説明したように、カタログ上の不明確な写真に表れた寸切用スクリューカッターと、甲第7号証及び甲第8号証の設計図に表わされたダイ及びポンチとが同一であるかの判断は、到底できず、これらの関連性を認めることはできない。カタログに示された寸切用スクリューカッターは、むしろ、乙第1号証の図面に示す従来技術に係るダイと関連性があるのではないかと推測することができる。また、同様にカタログ上の寸切用スクリューカッターが甲第5号証及び甲第6号証に添付したイ号製品説明書に示す可動体及び固定体と同一のものであるかを判断することは不可能である。
カ 更に、亀倉精機株式会社の上記代表取締役及び専務取締役は、甲第5号証及び甲第6号証の中で、株式会社三金などのカタログ配布先に、カタログに掲載されている寸切用スクリューカッター(AP-2型のSC-3/8)を販売したとしている。
乙第2号証は、請求人が、本件に対して特許異議の申立てを行った際に、平成8年3月25日付で提出した特許異議申立理由補充書に添付した証明書(特許異議申立理由補充書の甲第5号証)の写しであり、この証明書において、株式会社三金の代表者である伊藤武男は、亀倉精機株式会社の営業員から同証明書に添付した販売カタログ(甲第1号証と同じカタログ)を配布され、そこに掲載されている寸切用スクリューカッター(AP-2型のSC-3/8)を購入したとしている。
上記カタログに示された寸切用スクリューカッターは、本件各発明の構成を有するものであるかは全く不明であることは既に説明したとおりであり、したがって、乙第2号証の証明書によって、株式会社三金が本件各発明の切断具を取り扱ったことは証明していない。
また、乙第3号証は、被請求人が、上記特許異議の申立てに対して平成10年2月9日付で提出した答弁書に添付した伊藤武男による陳述書であり、乙第3号証に記載されているとおり、株式会社三金の代表者である伊藤武男は、乙第2号証に記載されているAP-2型のSC-3/8を取り扱ったことには間違いないがその細かい構造については覚えていないのである。
したがって、甲第5号証及び甲第6号証に記載されたとおり、株式会社三金に甲第1号証及び甲第2号証のカタログを配布し、また、このカタログに掲載されている寸切用スクリューカッターを販売したのは事実であったとしても、また、その頒布及び販売時期が、仮に本件特許の出願前であったとしても、伊藤武男は、販売した寸切用スクリューカッターが、本件各発明の構成を有するものであったかは、全く覚えておらず、甲第5号証及び甲第6号証の証明書は、単に、甲第1号証に示す販売カタログに掲載されている寸切用スクリューカッターを販売したこと以上に何も証明していない。
キ 甲第9号証は、亀倉精機株式会社製AP-2型剪断機のパーツリストとしているが、実際にはAP-2型ポートパンチャーのパーツリストである。パーツリストには、穴あけ用のパンチ101が示されているにすぎず、本件各発明の切断具は示されていないから、本件各発明の構成要件を開示するものではない。
ク 以上のとおり、検甲第2号証の切断具は、本件特許の出願前に製造したものと同一のものであると認める。検甲第1号証の剪断機は、本件特許の出願前に製造販売されたものではないから、それによって、本件各発明が本件特許の出願前に公然実施され、また、公然知られたものであったということはできない。また、甲第1号証及び甲第2号証のカタログは、頒布時期が不明であり、それ自体も本件各発明の構成要件を開示するものではないから、これらがいつ頒布されたとしても、それに基づいて、本件各発明が公然知られた発明であるとすることはできない。また、甲第7号証及び甲第8号証の設計図は信用性に欠ける上、これらと甲第1号証及び甲第2号証のカタログに示された寸切用スクリューカッターとの関連性は全く認められず、更に、甲第5号証及び甲第6号証に添付されたイ号製品説明書と甲第1号証及び甲第2号証のカタログに示された寸切用スクリューカッターとの関連性も全く認められない。
したがって、検甲第1号証及び甲第1号証乃至甲第9号証を参照しても、本件各発明は、本件特許の出願前に公然実施され、公然知られたものであるということは到底できない。
3 証拠方法
(1) 請求人
検証物
検甲第1号証 亀倉精機株式会社が昭和60年12月から製造・販売して
きたと称する剪断機
検甲第2号証 上記剪断機の切断具である固定刃(ダイ)及び移動刃(パ
ンチ)
文 書
甲第1号証 亀倉精機株式会社が昭和60年11月から頒布していたと
称する剪断機(寸切用スクリューカッター)のカタログ
甲第2号証 亀倉精機株式会社が平成2年12月から頒布していたと称
する剪断機(寸切用スクリューカッター)のカタログ
甲第3号証 亀倉精機株式会社の登記簿謄本
甲第4号証 西巻印刷株式会社が昭和60年11月に甲第1号証及び甲
第2号証のカタログを印刷し、亀倉精機株式会社に納入し
たことを証明する同社代表者西巻克郎の証明書
甲第5号証 亀倉精機株式会社が昭和60年8月に剪断機を開発し、昭
和60年11月にカタログの印刷、頒布、同年12月に剪
断機の販売をしたこと、及び平成2年12月10日にもカ
タログを製作依頼し、カタログの頒布、剪断機の販売を行
ったことを証明する同社代表取締役亀倉芳邦の証明書。
甲第6号証 同じく専務取締役亀倉邦男の証明書。
甲第7号証 亀倉精機株式会社が昭和60年8月6日に完成したと称す
る切断具「寸切用スクリューカッター(AP-2型SC-
3/8」)のダイ」の設計図
甲第8号証 同じく「パンチ」の設計図
甲第9号証 亀倉精機株式会社が昭和60年12月以前より販売してき
たと称するAP-2型ポートパンチャーのパーツリスト
甲第10号証 実願平1-93035号(実開平3一33019号)の
マイクロフィルム
甲第11号証 米国特許第3495331号明細書
甲第12号証 仏国特許第1201334号明細書
甲第13号証 実願昭59-176936号(実開昭61-92516
号)のマイクロフィルム
証 人
亀倉芳邦、亀倉邦男
(2) 被請求人
文 書
乙第1号証 亀倉精機株式会社の設計図面
乙第2号証 株式会社三金 代表者伊藤武男の証明書
乙第3号証 同人の陳述書
第3 当審の判断
1 甲第1号証乃至甲第9号証、乙第2号証、証人亀倉芳邦、同亀倉邦男の証言及び検証の結果を総合勘案すると以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
(1) 検甲第1号証及び検甲第2号証それ自体ではないがそれらと同一構成の剪断機及びその切断具である固定刃及び移動刃が本件特許の出願前に製造・販売されたこと。
(2) 検甲第1号証は、前端部分に移動刃が取付けられるピストンロッドと、固定刃が取付けられる本体とからなる剪断機であること。
(3) 検甲第1号証の剪断機は、取換部品として検甲第2号証の固定刃及び移動刃を取付けるものであり、検甲第1号証に検甲第2号証の固定刃及び移動刃を取付けたものも本件特許の出願前に製造・販売されたこと。
(4) 検甲第2号証の移動刃は、当該移動刃が前進される際に前端部がねじ付き被切断棒鋼に押圧される切刃部分を有していること。
(5) 検甲第2号証の固定刃は、以下の構成を有するものであること。
ア ねじ付き被切断棒鋼の外形と実質的に相補する形状を有する凹部を備え
、該凹部が、前記棒鋼のおねじと対応するめねじを有すること。
イ 左右の固定刃部分と、該固定刃部分間に配置されたスリットとを有する
こと。
ウ 前記凹部の中心軸線は、固定刃の幅方向軸線に対して所定の角度をなし
て傾斜していること。
エ 前記凹部のめねじは、ねじ山の各頂部が平坦に形成され、前記スリット
を画成する側壁は、ねじ山の頂部に位置すること。
オ 前記スリットは、固定刃に対し、前記凹部のめねじのリード角と略同一
に設定された角度をなして傾斜し、前記スリットの側壁に近接するねじ山
は、スリットと略平行に延び、前記固定刃の露出端面と凹部の底部との間
に位置する前記側壁の部分は、互いに略平行に延びること。
カ 前記凹部の中心軸線は、前記スリットの中心線に対する垂線に対して所
定の角度をなして傾斜し、前記スリットの中心線と前記凹部の中心軸線と
がなす角度は、90度よりも小さいこと。
キ 前記スリットは、前記凹部のめねじのリード角の方向に延び、前記スリ
ットを画成する側壁は、前記凹部のめねじのねじ山の頂部に一致又は近接
して位置していること。
ク 前記スリットは、移動刃の切刃部分を受入れ可能な幅を有していること

(6) 検甲第1号証に検甲第2号証の移動刃及び固定刃を取付けたものは、以下の構成を有す剪断機又はその切断具であること。
a ピストンロッドの前端部分に取付けられた移動刃と、本体に取付けられ
た固定刃とを有し、該固定刃が、ねじ付き被切断棒鋼の外形と実質的に相
補する形状を有する凹部を備え、該凹部が、前記棒鋼のおねじと対応する
めねじを有する剪断機において、
b 前記移動刃は、該移動刃が前進される際に前端部が前記棒鋼に押圧され
る切刃部分を有し、前記固定刃は、左右の固定刃部分と、該固定刃部分間
に配置されたスリットとを有し、該スリットは、前記切刃部分と対向し、
前記切刃部分が前進した際に該切刃部分を収容する位置に位置決めされ、
前記固定刃部分は、前記移動刃の両側で前記棒鋼を支持し、該移動刃、左
右の固定刃部分の間で前記棒鋼を押圧し、該棒鋼を切断し、
c 前記凹部の中心軸線は、前記固定刃の幅方向軸線に対して所定の角度を
なして傾斜しており、
d 前記凹部のめねじは、ねじ山の各頂部が平坦に形成され、前記スリット
を画成する側壁は、ねじ山の頂部に位置し、
e 前記スリットは、前記固定刃に対し、前記凹部のめねじのリード角と略
同一に設定された角度をなして傾斜し、前記スリットの側壁に近接するね
じ山は、スリットと略平行に延び、前記固定刃の露出端面と凹部の底部と
の間に位置する前記側壁の部分は、互いに略平行に延びており、
f 前記凹部の中心軸線は、前記スリットの中心線に対する垂線に対して所
定の角度をなして傾斜し、前記スリットの中心線と前記凹部の中心軸線と
がなす角度は、90度よりも小さく、前記スリットは、前記棒鋼のおねじ
のリード角方向の切断面を該棒鋼に形成するように配向されている剪断機

a′ピストンロッドの前端部分に取付けられる移動刃と、本体に取付けられ
る固定刃とを有し、該固定刃が、ねじ付き被切断棒鋼の外形と実質的に相
補する形状を有する凹部を備え、該凹部が、前記棒鋼のおねじと対応する
めねじを有する剪断機の切断具において、
g 前記移動刃は、該移動刃が前進するときに前記棒鋼に押圧される切刃部
分を有し、前記固定刃は、左右の固定刃部分と、該固定刃部分間に配置さ
れたスリットとを有し、該スリットは、前記凹部のめねじのリード角の方
向に延び、前記スリットを画成する側壁は、前記凹部のめねじのねじ山の
頂部に一致又は近接して位置し、前記スリットは、前記移動刃が前進した
ときに該移動刃の切刃部分を収容するように、該切刃部分を受入れ可能な
幅を有し、
h 使用において、前記固定刃部分は、前記移動刃の両側で前記棒鋼を支持
し、該移動刃は、左右の固定刃部分の間で前記棒鋼を押圧し、該棒鋼を切
断するようになっている剪断機の切断具。
2 対比・判断
本件各発明と1(6)に示す剪断機又はその切断具とをそれぞれ対比すると、1(6)の剪断機又は切断具における移動刃が、本件各発明の可動刃に相当することが明らかである。
そうしてみると、1(6)の剪断機は、本件発明1の構成要件A乃至C、本件発明2の構成要件A乃至D、本件発明3の構成要件A乃至E及び本件発明7の構成要件A乃至Fの全てを備えており、また、1(6)の切断具は、本件発明16の構成要件A’乃至Hの全てを備えているということができる。
そして、1(6)の剪断機又はその切断具と同一の構成を備えたものが本件特許の出願前に製造・販売されたことは、1(3)に示すとおりである。
したがって、本件発明1乃至本件発明3、本件発明7及び本件発明16は、本件特許の出願前に日本国内において公然実施をされた発明であるということになり、特許法第29条第1項第2号に該当し、同項の規定により特許をすることができないものである。
3 被請求人の主張について
ア 甲第7号証について
検甲第2号証の切断具と同一のものが本件特許の出願前の昭和60年12月頃に製造・販売されていたことは、各証人の証言内容から充分窺うことができる。また、このことについては、第2の2(2)ア及びクに示すように被請求人もその旨認めているところである。
そうしてみると、検甲第2号証の切断具と同一のものを本件特許の出願前に製造するために、設計図が必要であることは殊更いうまでもないところであって、乙第1号証が存在すると否とに関わりなく甲第7号証が存在することに何等不自然なところはない。
また、本件無効審判について亀倉精機株式会社が被請求人の主張するように当事者的立場にあるとしても、そのことだけをもって直ちに甲第7号証が客観性に欠けるものであるということにはならない。
さらに、甲第7号証が、たとえ、被請求人の主張するように通常の実務における製図法とは異なる態様で作図されているとしても、一般に設計図をどの様に作図するかは、その時々の必要に応じて適宜の態様でなされることも充分考えられることからみて、甲第7号証が通常の業務遂行の過程で作成された図面として極めて不自然なものであるともいえない。
イ 甲第1号証及び甲第2号証について
甲第1号証及び甲第2号証の記載からでは、オプション取換部品としての「SC-3/8″寸切用スクリューカッター」についてはその詳細な構成を把握することができないものの、「AP-2型ポートパンチャー」が、前端部分に移動刃が取付けられるピストンロッドと、固定刃が取付けられる本体とからなる剪断機であるということは充分把握することができる。そして、このことは、検甲第1号証についての検証の結果とも一致している。
甲第2号証が本件特許の出願前に印刷・頒布されたことは、唯一つだけの証拠によるのではなく、甲第2号証カタログ裏面右下の「CTG.No.901210」という記載、甲第4号証乃至甲第6号証及び証人の証言等複数の証拠に照らして充分窺うことができる。また、甲第1号証が甲第2号証よりも前に印刷・頒布されたことは、前記各証拠の外、甲第1号証のカタログの表紙には「SC-3/8”寸切用スクリューカッター」の前に「新発売」が記載されているのに対して甲第2号証のカタログの表紙には「新発売」の文字がないこと及び甲第1号証及び甲第2号証のカタログの表紙に記載されている亀倉精機株式会社の本社所在地の相違についての経緯を証明する甲第3号証から窺うことができる。
ウ 検甲第1号証について
上記したように本件特許の出願前に印刷・頒布されたと認められる甲第1号証及び甲第2号証の販売カタログには、前端部分に移動刃が取付けられるピストンロッドと、固定刃が取付けられる本体とからなる剪断機である検甲第1号証と同一構成の「AP-2型ポートパンチャー」と称する剪断機が記載されおり、また、各頁の右下に昭和63年4月6日のことと解される数字「63.04.06」の付された甲第9号証のパーツリストにも前端部分に移動刃であるパンチが取付けられるピストンロッドと、固定刃が取付けられる本体とからなる剪断機が示されている。
販売カタログやパーツリストは、そこに示されている製品を販売することを前提として作成されるものであることが明らかであること、また、乙第2号証で株式会社三金の代表者である伊藤武男は、甲第1号証と同じ販売カタログに掲載されている剪断機(AP-2型)を購入したことを証明していること、さらに、甲第5号証、甲第6号証及び各証人の証言から、検甲第1号証と同一構成の「AP-2型ポートパンチャー」と称する剪断機が本件特許の出願前に製造・販売されていたと認めることができる。
そして、1(3)に示すように、検甲第1号証の剪断機は、取換部品として検甲第2号証の切断具である固定刃及び移動刃を取付けるものである。
エ したがって、検甲第1号証及び甲第1号証乃至甲第9号証を参照しても、本件各発明は、本件特許の出願前に公然実施され、公然知られたものであるということは到底できないとする被請求人の主張は採用できない。
第4 むすび
以上のとおりであるので、本件発明1乃至本件発明3、本件発明7及び本件発明16に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、請求人の主張する他の理由について検討するまでもなく、無効とすべきものである。
よって、本件審判費用の負担については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条を適用して、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-02-26 
結審通知日 2002-03-01 
審決日 2002-03-12 
出願番号 特願平5-10341
審決分類 P 1 122・ 112- Z (B23D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 関口 勇  
特許庁審判長 小池 正利
特許庁審判官 鈴木 孝幸
宮崎 侑久
登録日 2000-05-19 
登録番号 特許第2141349号(P2141349)
発明の名称 剪断機  
代理人 西島 孝喜  
代理人 井野 砂里  
代理人 磯野 道造  
代理人 小川 信夫  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 吉井 雅栄  
代理人 小川 啓輔  
代理人 大塚 文昭  
代理人 富岡 英次  
代理人 竹内 英人  
代理人 吉井 剛  
代理人 中村 稔  
代理人 今城 俊夫  
代理人 弟子丸 健  
代理人 村社 厚夫  
代理人 箱田 篤  
代理人 熊倉 禎男  
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