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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04C |
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管理番号 | 1057748 |
審判番号 | 審判1999-1804 |
総通号数 | 30 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-02-04 |
確定日 | 2002-04-24 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 97188号「構造用パネルおよびその製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年10月28日出願公開、特開平 9-279761]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明 本願は、平成8年4月18日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成10年9月7日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】構造用合板等の面材に少なくとも1本の補強材を長手方向に 沿って固定する一方、上記補強材固定側の面材に発泡体を一体に接合してパネル本体を形成し、上記パネル本体は面材に固定される発泡体と補強材とから断熱補強体を構成し、上記断熱補強体は発泡体の外周に囲枠を設けず、かつ幅方向の少なくとも一側が前記面材の端縁から後退あるいは突出して係合段部がパネル本体の長手方向に沿って形成されたことを特徴とする構造用パネル。」 なお、平成11年3月8日付けでした手続補正については、別途、補正却下の決定がなされた。 2.引用例の記載事項 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である、実願昭56-26454号(実開昭57-139509号)のマイクロフィル(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載が認められる。 a「この考案は複合断熱パネルに関し、内装材等の板材,断熱材,桟木等を一体化して壁面,床,天井,屋根下地などに対する断熱施工が至極簡単に行なえるものを得ようとしている。」(明細書1頁18行〜2頁1行) b「この考案においては予め断熱材と根太等になる桟木、および床材等の板材が一体化された複合断熱パネルであつて、施工容易なものを提供するものであり、その構成は、桟木間に断熱材を介在させ、片面には板材を接合してなる複合断熱パネルであつて、パネル側端の桟木にはパネル相互の連結用ダボ孔を形成してなり、ピン状のダボ継手によつて各パネルを連結固定可能に構成してなることを特徴としている。」(同2頁13行〜3頁1行) c「複合断熱パネル(1)は全体が矩形板状に形成されており、(10)が桟木でありパネル(1)の四辺側端および長辺側の中心線上に枠組みされているが、桟木の枠組み形状については種々のパターンで実施することができ、例えば第3図のごとく短辺側端の桟木の無いものなどでも実施可能である。……(20)は発泡ポリスチレン等の合成樹脂発泡体からなる断熱材であり、桟木(10)(10)間に介在させて接合してある。(30)は合板等からなる板材であり、パネル(1)の片面側において桟木(10)に釘打ちされている。」(同3頁4〜16行) d「特に図示の場合、板材(30)は断熱材(20)および桟木(10)の外形と同一形状のものを用い、桟木(10)のうち側端の二辺については、桟木(10)の一部(13)が露出するように板材(30)を縦横両方向へずらせて接合してあり、従つて板材(30)のうち、上記桟木(10)の露出する側の二辺とは反対側になる二辺(31)においては、板材(30)が断熱材(20)および桟木(10)より外方へ突出することになる。なお、第3図の変更例においては、桟木(10)の露出面(13)および板材(30)の突出辺(31)が各々1辺だけになるように板材(30)を横方向へのみずらせて接合している。」(同3頁20行〜4頁10行) e「上記ダボ継手(D)のみでもパネル(1)の連結はできるが、図のように板材(30)の突出辺(31)が桟木(10)の露出面(13)に載置されるように合じやくり状に組合せて連結し、板材(30)上部より釘打ちにて桟木(10)へ固定すれば、連結が確実で強固となり、パネル面の一体性にも一層優れ、隙間の発生もより少なくなり断熱性,気密性の優れたものとなる。(第4図)」(同5頁16行〜6頁3行) f「特に断熱材を桟木間に介在させているため、パネル全体の強度を桟木にて補強する」(同7頁14〜15行) 以上の記載並びに第1図、第2図及び第4図の記載からみて、引用例1には、 「板材(30)に長手方向及び幅方向に4本の桟木(10)を固定する一方、桟木(10)固定側の板材(30)に合成樹脂発泡体を接合してパネル本体を形成し、幅方向の一側の桟木(10)が板材(30)の端縁から後退して突出辺(31)がパネル本体の長手方向に沿って形成された複合断熱パネル」 の発明が記載されているものと認められる。 3.対比・判断 本願発明1と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「板材(30)」、「桟木(10)」、「突出辺(31)」及び「複合断熱パネル」」は、それぞれ本願発明1の「構造用合板等の面材」、「補強材」、「係合段部」及び「構造用パネル」に相当する。また、引用例1記載の発明における、板材(30)に接合される合成樹脂発泡体と桟木(10)から構成されるものは、本願発明1の「断熱補強体」に相当する。そして、本願発明1においては、4本の桟木(10)が合成樹脂発泡体の外周を囲む枠、つまり囲枠を構成しているから、両者は、 「構造用合板等の面材に少なくとも1本の補強材を長手方向に沿って固定する一方、上記補強材固定側の面材に樹脂発泡体を接合してパネル本体を形成し、上記パネル本体は面材に固定される発泡体と補強材とから断熱補強体を構成し、上記断熱補強体は幅方向の少なくとも一側が前記面材の端縁から後退して係合段部がパネル本体の長手方向に沿って形成された構造用パネル」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 本願発明1では、断熱補強体は 発泡体の外周に囲枠を設けていないのに対し、引用例1記載の発明では、発泡体の外周に囲枠を設けている。 相違点2 本願発明1では、面材に発泡体を一体に接合しているのに対し、引用例1記載の発明では、面材に発泡体を一体に接合しているのか不明である。 そこで、上記相違点について検討する。 相違点1について 本願発明1の「囲枠」は、その字句どおりの、周囲を囲む枠を意味するものと解され、断熱用のパネルにおいて発泡体の外周に囲枠を設けないことは、例えば、登録実用新案第3013350号公報に示されているように、また、引用例1においても、「例えば第3図のごとく短辺側端の桟木の無いものなどでも実施可能である。」(明細書3頁8〜9行)との記載及び第3図に、短辺側端の桟木をなくし、発泡体の周囲を桟木で囲っていない、つまり発泡体の外周に囲枠を設けていない例が示されているように、本願の出願前に周知の技術事項である。そして、この周知の技術事項を引用例1記載の発明に採用して、発泡体の外周に囲枠を設けないようにすることを妨げる要因もないから、相違点1における本願発明1の事項とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。 相違点2について 例えば、断熱に用いる合成樹脂発泡体を充填発泡させることにより、面材等に発泡体を一体に接合することは、本願の出願前に周知の技術事項であり、相違点2における本願発明1の事項とすることは、引用例1記載の発明にこのような周知の技術事項を適用する等により、当業者が適宜なし得たことである。 そして、本願発明1が奏する効果も、引用例1記載の発明及び周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明1は、引用例1記載の発明1及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用例1及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-02-18 |
結審通知日 | 2002-03-01 |
審決日 | 2002-03-12 |
出願番号 | 特願平8-97188 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E04C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長島 和子 |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
蔵野 いづみ 鈴木 公子 |
発明の名称 | 構造用パネルおよびその製造方法 |
代理人 | 関口 俊三 |
代理人 | 波多野 久 |