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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F22D
管理番号 1057779
審判番号 審判1997-9362  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-05-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-06-05 
確定日 2002-04-03 
事件の表示 平成 3年特許願第313201号「貫流型排熱ボイラ」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 5月21日出願公開、特開平 5-126309]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
この出願は、平成3年10月31日の特許出願で、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成9年6月5日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「内部に多数の受熱水管を収納配置し、排ガスによる前記受熱水管の熱負荷を求め、求められた熱負荷の下における受熱水管に対する水位レベルの適値を決定し、決定された適値と受熱水管の実際の水位レベルとを比較し、この比較結果に基づいて受熱水管の給水レベルを制御する演算処理器を備えたことを特徴とする貫流型排熱ボイラ。」
2.引用例1、2記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、この出願前の昭和60年4月12日に頒布された特開昭60-64101号公報(以下、「引用例1」という。)及び同昭和54年8月15日に頒布された特開昭54-103905号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
(1)引用例1
「ごみ焼却炉やディーゼルエンジン、ガスタービン等の排ガスをその熱源として利用するボイラは通常の専焼のボイラと異なり加熱の強さは他の要因で定まるものであり自由に調節することはできない。これは通常の専焼ボイラなどではバーナに送る燃料量を調節することにより加熱の度合が加減できるが、しかし排ガスを熱源とするボイラ即ち排ガスボイラはディーゼルエンジンやガスタービンの負荷もしくはごみ焼却炉に供給されるごみの量とごみの質によりボイラの加熱の度合が左右され自由に調節することができないものである。従って排ガスボイラの制御装置としては通常の専焼ボイラの制御装置とは異なり、排出されるガスの有するエネルギに応じてボイラの給水量を制御をすることがその主たる役割をなすものである。しかし、一方貫流ボイラは給水量に比して加熱が強過ぎると流動不安定現象を起し、ボイラが安定した蒸気を発生しなくなるばかりでなくボイラの管路を焼損することもあり、このような流動不安定現象は給水温度が低い場合に起り易いという傾向がある。」(第2頁右上欄7行〜同頁左下欄8行)こと、「第1図は前記コンバインドプラントの管路系統図の例示でありガスタービン1の排ガスはダクト2を通過して貫流ボイラ3に到りこれを加熱してスタック4から系外に排出される。他方給水は給水ポンプ5で加圧され給水弁6で流量調節されたあと管路7aを通過して貫流ボイラ3に供給される。貫流ボイラ3内の水路は管路7bにより構成されており給水はガスタービン1の排ガスにより加熱されて過熱蒸気となり管路7cを経て気水分離器8に送られる。」(第2頁右下欄5〜14行)こと、「50は貫流ボイラ3の従来例の制御装置であり、ガスタービン1の回転数計(ガスタービンの低圧圧縮機の回転数)20,ガスタービンの吸気温度計21,ガスタービンの排ガス温度計22,貫流ボイラの排ガス温度計23と貫流ボイラ出口の蒸気温度計24の出力信号を夫々入力として給水弁6に制御信号を出力するものである。即ち給水ポンプ5は一定回転にて運転されているのでここで給水弁6の開度を加減することにより貫流ボイラ3への給水量が調節されるという構成になっている。ここで制御装置50について従来の (中略) ここで制御装置50内の関数発生器101には低圧圧縮機回転数計20よりの回転数N1と吸気温度計21よりの温度出力T0が入力されており、予め定められたガスタービンの特性に基づき排ガス流量Ggを推定し出力する。なおここで吸気温度計21の温度出力T0は排ガス流量Ggをより高い精度で推定するためにパラメータとして用いられる。他方ガスタービン1の排ガス温度計22の温度出力T3とボイラの排ガス温度計23の温度出力T2は減算器103に入力されてその差温ΔTが計算され出力される。排ガス流量信号Ggと差温ΔTは乗算器102にて乗ぜられボイラ受熱量に比例した即ちボイラ受熱量(予想)信号Gg・ΔTが出力され、この値が次の関数発生器104に入力される。関数発生器104はボイラの特性に基づき予め関数の形が設定されており、ボイラ受熱量信号から発生蒸気量信号Gsを計算する機能を有しており信号Gg・ΔTに基づき発生蒸気量信号Gsに見合った給水をおこなうように給水弁6に給水制御信号Sc1を出力する。」(第3頁左上欄3行〜同頁右上欄19行)こと、「次に第2図に例示した制御装置50の作用について説明すると、ガスタービン1の負荷が変化すればそれに応じて排ガス流量や貫流ボイラ3の出入口の温度も変化し、貫流ボイラ3の加熱の程度も影響をうける。このようなボイラの運転状態の変化は制御装置50において検知され給水量が調節されることになる。即ち関数発生器101により排ガス流量信号Ggが、また減算器103によりボイラの入口および出口のガス温度の差温ΔTが夫々出力され乗算器102の出力であるボイラ受熱量(予想)信号Gg・ΔTはボイラの新しい運転状態における受熱量を示す。この新しい受熱量に対応した給水量が関数発生器104で計算された発生蒸気量信号Gsに見合った給水をおこなうように加算器108を介して給水弁6に給水制御信号Sc1が出力される。」(第3頁左下欄10行〜同頁右下欄5行)ことが図面と共に記載されている。
よって、引用例1には、次の発明が記載されている。
貫流ボイラ内の水路は管路7bにより構成されており、排ガスによるボイラ受熱量を求め、求められたボイラ受熱量に対応した前記管路7bの給水量を決定し、前記管路7bの給水量を調節する制御装置を有する排ガスボイラ。
(2)引用例2
「この発明は、多管式小型貫流ボイラ用水位制御方法及びその制御装置に関するものである。」(第1頁左下欄16〜17行)こと、「しかし多管式小型貫流ボイラにおいては水管の全てが上昇管でなければならないから、水位は水管の途中に設定しなければならない。そこでこの発明の目的は、水管の途中に水位を設定するという特異条件を持った水管ボイラにおいて、与えられた運転条件で水管が過熱しない適正な水位を自動的に得ようとするものである。すなわち全長にわたって加熱されている水管の途中にある水位が低すぎる場合には、その水位より上部のある区間までの水管内は気水混合物で満たされており過熱の心配はないが、さらにそれより上部区間では水管が過熱される恐れがある。一方水位が高すぎる場合には循環比が2以上になり法規上の条件を満たさないばかりでなく、得られる蒸気の乾き度が悪化し水分を多く含んだ蒸気しか得られなくなる。以上説明したように管内の水位は、水管の温度及び循環比及び蒸気の乾き度に多大の影響を及ぼす。」(第1頁右下欄8行〜第2頁左上欄6行)こと、「すなわち水管温度は、管内水位、管内の蒸気圧力及び水管を加熱する熱流束の3つの要素にて左右される。ここで熱流束は、燃焼流量と排ガス分析より求まるボイラ効率より計算されるが、簡単には燃焼量と考えても良い。そこで水管温度をある定めた温度以下にすると、循環比、蒸気の乾き度を適正な値に維持するには、管内の蒸気圧力及び熱流束を信号入力として管内水位を適正な範囲に自動的に制御すれば良い。この発明は、蒸気圧力を0〜10kg/cm2の範囲内で2段階にわけ、さらに熱流束を低燃焼及び高燃焼の2段階にわけ、その組合せを自動的に判別し水位を変化させるものである。第1図に示したように、水管の上部の温度をTとし、水管の長さをA、水位をBとすると、今温度Tを一定に保つためにB/Aを変える事を考えた場合、同一熱流束では管内圧力が高い程B/Aを大きくしなければならない。また同一圧力においては熱流束が低い程B/Aを大きくしなければならない。すなわち、管内圧力が高まれば水位を上昇させ、また熱流束が低い時にも水位を上昇させるように制御すれば良い。」(第2頁左上欄11行〜同頁右上欄13行)こと、「この発明実施例を図面にもとづいて説明すると第3図は給水制御幅を一定にしながら水位を3段階に制御するものである。6、7、8、9はそれぞれ長さの異なる水位制御用電極棒、10は燃焼量信号接点、11は蒸気圧力信号接点である。燃焼量信号接点10は、低燃焼のときには共通端子と通常閉端子とが接触しており、高燃焼のときには共通端子と通常開端子とが接触するように構成されている。 (中略) (イ)低燃焼で蒸気圧力が設定値より低いときには、水位は電極棒8の点まで上昇し電極棒7の点まで蒸発して下降し、電極棒7より離れると再び電極棒8まで給水される。(ロ)低燃焼で蒸気圧力が設定値より高いときには、電極棒9まで給水され、電極棒8まで水位が下降すると再び給水される。(ハ)高燃焼で蒸気圧力が設定値より低いときには、電極棒7まで給水され、電極棒6まで水位が下降すると再び給水される。このとき電極棒7と電極棒8は共に接続されるが、前記したように先に水位が到達した電極棒が優先されるので、電極棒8は考慮しなくても良い。(ニ)高燃焼で蒸気圧力が設定値より高いときには、電極棒8まで給水され、電極棒7まで水位が下降すると再び給水される。このときにも電極棒8と電極棒9は共に接続されるが、電極棒9は考慮しなくても良い。(ホ)まだ燃焼していないときには、燃焼量信号接点10は低燃焼と同じ位置にあるようにしておけば良い。
低圧 高圧
始動時、低燃焼 7-8 8-9
高燃焼 6-7(8) 7-8(9)」
(第2頁左下欄17行〜第3頁左上欄20行)ことが図面と共に記載されている。
よって、引用例2には、次の発明が記載されている。
低燃焼あるいは高燃焼の各熱流束に応じた水管の途中の管内水位の適正な範囲を上下に設定し、設定された適正な範囲と水管の実際の水位とを比較し、この比較結果に基づいて水管の水位を制御する水位制御器を備えた多管式小形貫流ボイラ。
3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明を対比する。
引用例1に記載された発明の「ボイラの受熱量」は、ガスタービンの排ガス温度計22の温度出力T3とボイラの排ガス温度計23の温度出力T2から計算される差温ΔTと、排ガス流量信号Ggとが乗ぜられたボイラ受熱量に比例した即ちボイラ受熱量(予想)信号Gg・ΔTを求めていることから、本願発明の「受熱水管の熱負荷」に対応するものである。
また、給水量とその結果としての水位は、給水量が多ければ水位が上昇し、給水量が少なければ水位は下降するという相関した関係にあることは自明であり、水管の給水量及び水管の水位はいずれも上位概念としては水管内の水量としてとらえられるから、引用例1に記載された発明の給水量、及び本願発明の水位は、共に貫流型排熱ボイラの受熱水管内の水量に対応するものである。
そして、上記引用例1に記載された発明の「管路7b」、「排ガス」、「制御装置50」、「貫流」、「排ガスボイラ」は、本願発明の「受熱水管」、「排ガス」、「演算処理器」、「貫流型」、「排熱ボイラ」にそれぞれ相当する。
よって、両者は、内部に受熱水管を収納配置し、排ガスによる前記受熱水管の熱負荷を求め、求められた熱負荷の下における受熱水管に対する水量の適値を決定し、受熱水管の水量を制御する演算処理器を備えた貫流型排熱ボイラの点で一致し、次の点で相違している。
(1)本願発明が、多数の受熱水管であるのに対して、引用例1に記載された発明が、1つの受熱水管である点。
(2)本願発明が、水量を制御するとき、決定された水位の適値と受熱水管の実際の水位レベルとを比較し、この比較結果に基づいて受熱水管の給水レベルを制御するのに対して、引用例1に記載された発明は、水量を制御するとき、制御量が水位ではなく給水量であり、引用例1には実際の制御量との比較を行う制御については記載されていない点。
4.当審の判断
上記相違点について判断する。引用例2には、上記相違点(1)(2)に係る構成を有する、低燃焼あるいは高燃焼の各熱流束に応じた水管の途中の管内水位の適正な範囲を上下に設定し、設定された適正な範囲と水管の実際の水位とを比較し、この比較結果に基づいて水管の水位を制御する水位制御器を備えた多管式小形貫流ボイラが記載されている。(ここで「熱流束」は本願発明の「熱負荷」に相当するものである。)
そして、引用例2に記載された発明は水位制御装置を備えた貫流ボイラに関するものであり、受熱水管の水位は上位概念としては受熱水管内の水量としてとらえられるから、引用例1に記載された発明と引用例2に記載された発明は共に水量制御装置を備えた貫流ボイラに関する同一の技術分野に属している。
さらに、引用例1に記載された発明は排ガスの熱負荷、引用例2に記載された発明は低燃焼あるいは高燃焼という各熱負荷と、熱源が異なるものではあるが、熱負荷に応じて貫流ボイラの受熱水管内の水量を適正な値に設定するという共通の課題を有している。
しかも、貫流ボイラに単管式と多管式があることは周知(一例として、特開昭55-43325号公報を参照)であって、容量等に応じて適宜選択する事項であり、多管式貫流ボイラにおいて水量を水位制御にて制御することも周知(例えば、特公昭57-35361号公報、特開平2-287002号公報を参照)であるから、引用例1に記載された単管式の水管を、引用例2に記載のような多管式とし、かつ水位制御による水量制御を行うようにすることは当業者ならば格別困難なことではない。
したがって、引用例1に記載された発明に引用例2に記載された発明を適用して、本願発明の構成とすることは当業者ならば容易になし得たことである。
また、本願発明の効果は、引用例1、2に記載された発明から当業者が予測し得る程度のものである。
なお、審判請求人は、請求の理由において本願発明は熱負荷の変動が極めて大きい(例えば100%〜数%)ものである点で引用例1,2に記載された発明と相違する旨を主張しているが、引用例1に記載されたものも排ガスボイラであり、熱負荷変動は本願発明と同様に大きいものであるから、前記主張は採用できない。
5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたと認められるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-12-19 
結審通知日 2002-01-04 
審決日 2002-02-12 
出願番号 特願平3-313201
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F22D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清田 栄章小菅 一弘  
特許庁審判長 滝本 静雄
特許庁審判官 長浜 義憲
井上 茂夫
発明の名称 貫流型排熱ボイラ  

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