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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B21H
管理番号 1057823
審判番号 不服2000-7393  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-18 
確定日 2002-05-02 
事件の表示 平成10年特許願第238660号「物品移送用チューブおよびその製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 2月29日出願公開、特開2000- 61570]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本件発明
本件出願は、平成10年8月25日に特許出願されたものであって、その請求項1及び2に係る発明は、平成11年8月18日付け及び同12年6月15日付けの各手続補正書により補正された明細書並びに願書に最初に添付した図面の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項2に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりである。
「外径面の表面粗さRaが5μm程度とされた円柱状マンドレル上にステンレスパイプをセットして一端を軸方向に非可動とし、そのステンレスパイプをマンドレルと共に軸心を中心として回転し、前記マンドレルの周方向に間隔をおいて設けられ、かつ軸方向に位置をずらして設けられた複数の成形ローラを半径方向に位置調整したのち、その成形ローラとステンレスパイプを相対的に軸方向に移動して、ステンレスパイプを自由端から停止端に向けて半径方向と軸方向に圧延し、マンドレルの外径面に対するステンレスパイプの内面の接触によってステンレスパイプの内面を鏡面状に成形する物品移送用チューブの製造方法。」
なお、本件出願についてなされた平成13年3月13日付け手続補正書による補正は、本審決と同じ日付の補正の却下の決定により却下されている。
2 引用刊行物
特許法第162条の規定による審査における拒絶の理由に引用した本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭59-92123号公報には、次の事項が記載されている。
a「マンドレルの一部に所定の厚肉円筒からなるワークを挿着し、このワークの外周面にマンドレルの軸方向に偏位する複数の加工ローラを当接して回転しごき加工により薄肉円筒を加工するスピニングマシンにおいて、マンドレルの中心軸に対し同一の垂直面において一対の加工ローラを対向配置し、さらに同様に構成した複数組の加工ローラ対を前記マンドレルの軸方向に変位させて配置し、各加工ローラ対のマンドレルとの間隙をそれぞれ段階的に変化させると共に相対するローラとマンドレルとの間隙を略均等に保持しながら移動することを特徴とする回転しごき加工方法。」(特許請求の範囲)
b「本発明は、スピニングマシン等を使用して極く薄い肉厚の円筒体を加工する回転しごき加工方法および装置に関するものである。」(第2頁左上欄第14-16行)
c「すなわち、第1図および第2図において、参照符号10はマンドレル、12はワーク、14,16,18は加工ローラを示す。この場合、加工ローラは、第1ローラ14、第2ローラ16および第3ローラ18とから構成され、各ローラはマンドレル10の中心軸に沿つて少しづつずらすと共にマンドレル10の間隙(C1,C2,C3)を順次変化させ(第1図参照)、さらにマンドレル10の中心軸に対し120°の等角に配置される(第2図参照)。従つて、このように構成したスタツガ方式の加工機においては、第1図に示すように、当初第1ローラ14のみがワーク12に当接し、次いで第2ローラ16および第3ローラ18が順次当接してワーク12に対する回転しごき加工を行う。」(第2頁右上欄第12行-左下欄第6行)
d「また、回転しごき加工方法においては、加工力のラジアル分力は、5〜6mm厚のステンレス鋼を対象とする場合は・・・である。」(第3頁左上欄第10-17行)
e 従来のスタツガ式回転しごき加工装置の要部側面説明図である第1図に、加工ローラ14,16,18をワーク12の軸方向に移動して、厚肉円筒体を自由端から停止端に向けて半径方向と軸方向に圧延することが示されている。
f また、円柱状マンドレル上に厚肉円筒体の一端が軸方向に非可動にセットされており、また、薄肉円筒体の内面は、マンドレルの外径面に対する厚肉円筒体の内面の接触によって成形されることが明らかである。
以上のとおりであるので、前記刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。
円柱状マンドレル上にステンレス鋼の厚肉円筒体をセットして一端を軸方向に非可動とし、その厚肉円筒体をマンドレルと共に軸心を中心として回転し、前記マンドレルの周方向に間隔をおいて設けられ、かつ軸方向に位置をずらして設けられた複数の加工ローラを半径方向に位置調整したのち、その加工ローラを厚肉円筒体の軸方向に移動して、厚肉円筒体を自由端から停止端に向けて半径方向と軸方向に圧延し、マンドレルの外径面に対する厚肉円筒体の内面の接触によって厚肉円筒体の内面を成形する薄肉円筒体の製造方法。
3 対比
本件発明と前記刊行物に記載された発明とを対比すると、前記刊行物に記載された発明の「ステンレス鋼の厚肉円筒体」及び「加工ローラ」が本件発明の「ステンレスパイプ」及び「成形ローラ」にそれぞれ相当している。
また、前記刊行物に記載された発明の「加工ローラを厚肉円筒体の軸方向に移動して」は、「成形ローラとステンレスパイプを相対的に軸方向に移動して」と表現することができるものであり、また、前記刊行物に記載された発明の「薄肉円筒体」は、薄肉円筒体であることに限り、本件発明の「物品移送用チューブ」と一致している。
したがって、両者は、次の薄肉円筒体の製造方法で一致している。
円柱状マンドレル上にステンレスパイプをセットして一端を軸方向に非可動とし、そのステンレスパイプをマンドレルと共に軸心を中心として回転し、前記マンドレルの周方向に間隔をおいて設けられ、かつ軸方向に位置をずらして設けられた複数の成形ローラを半径方向に位置調整したのち、その成形ローラとステンレスパイプを相対的に軸方向に移動して、ステンレスパイプを自由端から停止端に向けて半径方向と軸方向に圧延し、マンドレルの外径面に対する接触によってステンレスパイプの内面を成形する薄肉円筒体の製造方法。
しかし、両者は、次の点で相違している。
本件発明では、円柱状マンドレルの外径面の表面粗さRaが5μm程度であり、また、薄肉円筒体が内面を鏡面状に成形された物品移送用チューブであるのに対し、前記刊行物に記載された発明では、円柱状マンドレルの外径面の表面粗さが明らかにされているものではなく、また、薄肉円筒体の内面が鏡面状であることが明らかにされているものでも、その用途が明らかにされているものでもない点。
4 判断
前記相違している点について検討すると、ステンレス鋼製の円筒体を物品移送用チューブとして用いることは、例示するまでもなく本件出願前周知であるので、前記刊行物に記載された薄肉円筒体の製造方法を物品移送用チューブの製造方法に採用することに格別の困難性はない。
また、薄肉円筒体の内面が円柱状マンドレルの外径面に対するステンレスパイプの内面の接触によって成形されるものであることより、薄肉円筒体の内面の表面粗さが円柱状マンドレルの外径面の表面粗さの影響を受けるものであることは、当然に理解されることであるので、前記採用に際して、物品移送用チューブの内面が移送する物品の種類に応じた適切な表面粗さとなるように円柱状マンドレルの外径面の表面粗さを決定することは、必要に応じて適宜なされる程度の設計的事項にすぎず、その表面粗さRaの値として5μm程度を設定することに困難性はない。
また、円柱状マンドレルの外径面を5μm程度の表面粗さRaとすることより、その外径面との接触により成形される内面は、当然に鏡面状になるものと認められる。
また、本件発明の効果は、前記刊行物に記載された発明及び前記周知な技術から予測しうる程度のものであり、格別のものではない。
5 むすび
したがって、本件発明は、本件出願前に日本国内において頒布された前記刊行物に記載された発明及び前記周知な技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるので、請求項1に係る発明について判断するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-02-27 
結審通知日 2002-03-05 
審決日 2002-03-18 
出願番号 特願平10-238660
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B21H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 亨藤井 新也  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 宮崎 侑久
鈴木 孝幸
発明の名称 物品移送用チューブおよびその製造方法  
代理人 鎌田 文二  
代理人 東尾 正博  
代理人 鳥居 和久  

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