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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1057830
審判番号 不服2001-2652  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-22 
確定日 2002-05-02 
事件の表示 平成10年特許願第261502号「指紋識別を用いた情報処理装置および情報処理方法」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 3月31日出願公開、特開2000- 90273]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年9月16日の出願であって、その請求項1-8に係る発明は、平成12年12月22日付けの手続補正書で補正された明細書、並びに、図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1-8に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「ユーザが使用している装置について使用を中断する時に、前記ユーザの任意の指の指紋を入力し、中断時の該装置に関するユーザに固有の情報を前記入力された指紋にのみ対応づけて保存し、該装置の使用を再開する時に、前記ユーザの任意の指の指紋を入力し、前記再開時に入力された指紋に対応する前記保存したユーザに固有の情報を選択してユーザに提供することを特徴とする、指紋識別を用いた情報処理方法。」

2.引用刊行物
これに対し、原審における平成12年10月31日付け拒絶理由通知書の拒絶の理由で引用された特開平5-250319号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の各記載がある。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ローカルエリアネットワーク(以下、LANという)で接続された複数のワークステーション(以下、WSという)において、各WSユーザが以前に行っていたWS環境を、LANに接続された任意のWSで自動的に動作環境を再設定し、以前の業務処理の継続性を保証する、WS処理再開方式に関するものである。」(第2頁左欄第14〜21行)

(イ)「【0006】本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、各ユーザの以前の動作環境を全て保持し、途中に別のユーザがWSを使用した場合、あるいは異なるWSで処理を再開する場合においても、以前に業務処理を実行していた動作環境を保証することが可能な技術を提供することにある。」(第2頁右欄第8〜13行)

(ウ)「【0008】
【問題を解決する手段】前記目的を達成するために、本発明は、複数のWSが接続されるLANに接続されたファイルサーバにおいて、前記各WSの処理中断時の動作環境を収集する手段と、前記各WSの業務処理終了時に収集した動作環境をファイルサーバ内に各ユーザ毎に保持する手段と、WSの処理開始時に、指定されたユーザ識別情報に応じて、以前の動作環境をファイルサーバからWSへ転送し、WSの動作環境を以前の動作環境に再設定する手段とを備えることを最も主要な特徴とする。」(第2頁右欄第17〜27行)

(エ)「【0009】
【作用】前述の手段によれば、LANにより接続された複数のWSと各WSで共用可能なファイルサーバと、ファイルサーバ配下の記憶装置を有するシステムにおいて、各WSは、WSの処理中断時の動作環境を収集し、ファイルサーバ内に各ユーザ毎に、各WSの業務処理終了時に収集した動作環境を保持し、WSの処理開始時に、指定されたユーザ識別情報に応じて、以前の動作環境をファイルサーバからWSへ転送し、WSの動作環境を以前の動作環境に再設定することにより、WSで業務処理を再開する場合、ユーザの識別情報によりファイルサーバに保持されている以前の動作環境を選択し、WSに読み出し、読み出した動作環境をWSに再設定し、業務処理を中断した状態に復元可能とし、業務処理終了時にその動作環境をファイルサーバに転送、保持し、業務再開時の情報として利用することができる。
【0010】このWS処理再開手段により、処理を中断したWS以外のLAN内の別WSにより、中断した処理の動作環境を引き継いで処理を継続することもできる。(第2頁右欄第28〜47)
なお、丸数字の記載は、印刷の都合上括弧付きの数字で表した。

(オ)「【0015】ファイルサーバに保持される情報は、(1)各ユーザを識別するためのID情報11、ユーザを確認するために使用されるパスワード12、構成情報格納ファイル名13、状態情報格納ファイル名14で構成されるIDテーブルと、(2)各ユーザ対応に、前記構成情報格納ファイル名13で指定される、WSのファイルアクセスパス、周辺装置の初期化等のユーザ固定的な情報を保持する構成情報ファイル16と、(3)前記状態情報格納ファイル名14で指定される、業務処理により変更されたウィンドウの状態情報を保持する状態情報ファイル17とで構成される。
【0016】前記IDテーブル15は、登録されたユーザ全てを保持する複数の記憶領域を持ち、データベースを構成している。また、各ユーザ対応に構成情報ファイル16と状態情報ファイル17を保持する。」(第3頁左欄第11〜25)

(カ)「【0020】(2)業務処理における処理再開時の流れマルチウィンドウ動作をしているWSにおいては、表示装置内に複数の大きさの異なるウィンドウが使用中のユーザの目的にあった形で表示されている。本実施例では、ウィンドウの状態を監視するウィンドウマネージャにより全てのウィンドウの状態が管理されており、WSの処理終了をウィンドウマネージャに指示した場合、その時のウィンドウの状態を再現するために必要な情報は、ウィンドウマネージャから取得することができる。」(第3頁左欄第36〜44行)

(キ)「【0031】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明によれば、次の効果を得ることができる。
【0032】(1)WSの終了時点の動作環境を各ユーザ対応に保持するため、以前に処理のために使用したWSが別ユーザに使用されたか否かに係わらず、以前のWSの動作環境が再設定されるため、全てのユーザに対して業務処理の継続性が保証できる。
【0033】(2)WSの動作環境が複数のWSからアクセス可能なファイルサーバ内に保存されるため、以前使用していたWSとは別の業務処理を再開する場合でも、以前のWSの動作環境が再設定され、WSの装置を跨った業務処理の継続性が保証できる。」(第4頁左欄第4行〜同頁右欄第1行)

3.対比
そこで、本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、
(1)本願発明は、「ユーザが使用している装置について使用を中断する時には、識別したユーザ毎に該装置に関するユーザに固有の情報をユーザに対応付けて保存し、該装置の使用を再開する時には、識別したユーザに対応する前記保存したユーザに固有の情報を選択してユーザに提供することを特徴とする」(本願明細書段落【0009】)が、この点は、引用例1に記載された発明のそれと同一である。(前記(ア)〜(キ)参照。)
(2)本願発明の「ユーザに固有の情報」は、引用例1に記載された発明の「WSの動作環境」に相当することは、明かである。
該「WSの動作環境」の詳細は、前記(オ)及び(カ)に詳述されているとおりであり、両発明において差異はない。

(一致点)
してみると、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
「ユーザが使用している装置について使用を中断する時に、前記ユーザを識別する情報を入力し、中断時の該装置に関するユーザに固有の情報を前記入力された情報に対応づけて保存し、該装置の使用を再開する時に、前記ユーザを識別する情報を入力し、前記再開時に入力されたユーザを識別する情報に対応する前記保存したユーザに固有の情報を選択してユーザに提供することを特徴とする、ユーザ識別情報を用いた情報処理方法。」
である点で一致しており、次の2点で相違する。
(相違点1)
ユーザを識別する情報が、
本願発明は、「ユーザの任意の指の指紋」であるのに対して、
引用例1に記載された発明は、「ユーザのID情報11とパスワード12」である点。
(相違点2)
ユーザを識別するための情報の入力が、
本願発明は、装置の使用を中断する時」であるのに対して、
引用例1に記載された発明は、「WSの電源投入時」である点。

4.当審の判断
(1)そこで、前記相違点1について検討すると、
ID情報やパスワードに代え、指の指紋を使用してユーザを識別することは、原審が拒絶の理由で引用した特開平10-198453号(平成10年7月31日出願公開。以下、「引用例2」という。)に記載されているとおり、当業者には公知の事項である。
そして、個人を特定するために指の指紋や目の瞳孔を照合し本人と確認することは、広く行われていることであるから、引用例2に記載された発明のID情報やパスワードを引用例2に記載された発明の指紋情報に置き換えることに格別の困難性はなく、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明し得たものである。
(2)次に、前記相違点2について検討すると、
特定のプログラムの処理の中断時に退避情報(本願発明のユーザに固有の情報に相当する。)の識別子を入力することは、原審が拒絶査定時に引用した特開昭58-40662号公報(以下、「引用例3」という。)に記載されている。
そして、引用例3に記載された技術事項及び当技術分野における技術常識に鑑みれば、ユーザを識別するための情報を、装置の使用の中断時に入力するか又は装置の電源投入時に入力するか又は中断時および投入時に入力するかは、当業者が適宜決定すべき微細な設計事項にすぎず、いずれを採用するかは当業者が適宜なし得ることである。

5.むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明及び前記周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-02-27 
結審通知日 2002-03-05 
審決日 2002-03-19 
出願番号 特願平10-261502
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中里 裕正  
特許庁審判長 東 次男
特許庁審判官 関川 正志
江頭 信彦
発明の名称 指紋識別を用いた情報処理装置および情報処理方法  
代理人 河合 信明  
代理人 京本 直樹  
代理人 福田 修一  

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