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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G02F
管理番号 1058051
異議申立番号 異議2001-71352  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-27 
確定日 2002-02-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3107075号「液晶表示装置」の請求項1ないし3、5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3107075号の請求項1、2、4に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続の経緯
特許第3107075号の請求項1、2、3、5に係る発明は、平成10年12月14日に出願され、平成12年9月8日にその設定登録がなされ、その後、中川徹より特許異議申立がなされ、取消理由通知に対して平成13年9月21日に訂正請求がなされたものである。

【2】訂正の適否についての判断
《2-1》訂正の要旨
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
訂正事項a:
特許請求の範囲の請求項1を特許請求範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】透明絶縁性基板上に第1遮光膜、第1層間膜、薄膜トランジスタ、第2層間膜及び第2遮光膜とをこの順に有する液晶表示装置であって、前記第1遮光膜は、薄膜トランジスタ側の上辺が基板側の下辺よりも短い台形形状となる端部テーパー形状を有し、前記下辺の端部と薄膜トランジスタのチャネル端部とを結ぶ線と該チャネル端部の法線方向との成す角が50度以上であり、且つ、前記第2遮光膜の下面端部と前記第1遮光膜の上辺のテーパー開始点とを結ぶ線と、該第2遮光膜の下面端部の法線方向との成す角が30度以上であるとともに、前記端部テーパー形状のテーバー角が、前記第1遮光膜の前記下辺に対して30〜80度であることを特徴とする液晶表示装置。」と訂正する。
訂正事項b:
特許請求の範囲の請求項2を、特許請求範囲の減縮を目的として、削除する。
訂正事項c:
特許請求の範囲の請求項3を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項2】前記第1遮光膜はシリサイドにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。」と訂正する。
訂正事項d:
特許請求の範囲の請求項4を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【請求項3】前記第1遮光膜のテーパー部はSF6+C2Cl2F4又はCl2+N2+AlCl3の混合ガスを用いたプラズマエッチングにより形成されたものであることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。」と訂正する。
訂正事項e:
特許請求の範囲の請求項5を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項4】前記第2遮光膜がデータ線を兼ねることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。」と訂正する。
訂正事項f:
明細書段落【0011】を、請求項1の訂正に伴い、これと整合するため、明りょうでない記載の釈明を目的として
「【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、透明絶縁性基板上に第1遮光膜、第1層間膜、薄膜トランジスタ、第2層間膜及び第2遮光膜とをこの順に有する液晶表示装置であって、前記第1遮光膜は、薄膜トランジスタ側の上辺が基板側の下辺よりも短い台形形状となる端部テーパー形状を有し、前記下辺の端部と薄膜トランジスタのチャネル端部とを結ぶ線と該チャネル端部の法線方向との成す角が50度以上であり、且つ、前記第2遮光膜の下面端部と前記第1遮光膜の上辺のテーパー開始点とを結ぶ線と、該第2遮光膜の下面端部の法線方向との成す角が30度以上であるとともに、当該端部テーパー形状のテーパー角が、前記第1遮光膜の前記下辺に対して30〜80度であることを特徴とする液晶表示装置に関する。」と訂正する。

《2-2》訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a、bは、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記訂正事項c〜fは、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内で、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、これらの訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

《2-3》むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項並びに同条第3項で準用する同第126条第2項及び同条第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】特許異議の申立てについての判断
《3-1》申立ての理由の概要
特許異議申立人は、以下の刊行物を示して、本件の訂正前の請求項1〜3、5に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである旨主張している。
刊行物1:国際公開パンフレットWO98/16868(甲第1号証)
刊行物2:特開平7-84247号公報(甲第2号証)
刊行物3:特開平5-21399号公報(参考資料1)
刊行物4:特開平9-263974号公報(参考資料2)
刊行物5:特開平9-258200号公報(参考資料3)
刊行物6:特開平7-64111号公報(参考資料4)
なお、本件の訂正前の請求項1、3、5は、訂正後の請求項1、2、4に対応し、訂正前の請求項2は削除された。よって、以下では、訂正後の請求項1、2、4に係る発明の進歩性について検討する。

《3-2》訂正後の発明
訂正後の請求項1、2、4に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりの以下のものである。
「【請求項1】透明絶縁性基板上に第1遮光膜、第1層間膜、薄膜トランジスタ、第2層間膜及び第2遮光膜とをこの順に有する液晶表示装置であって、前記第1遮光膜は、薄膜トランジスタ側の上辺が基板側の下辺よりも短い台形形状となる端部テーパー形状を有し、前記下辺の端部と薄膜トランジスタのチャネル端部とを結ぶ線と該チャネル端部の法線方向との成す角が50度以上であり、且つ、前記第2遮光膜の下面端部と前記第1遮光膜の上辺のテーパー開始点とを結ぶ線と、該第2遮光膜の下面端部の法線方向との成す角が30度以上であるとともに、前記端部テーパー形状のテーパー角が、前記第1遮光膜の前記下辺に対して30〜80度であることを特徴とする液晶表示装置。」、
「【請求項2】前記第1遮光膜はシリサイドにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。」及び
「【請求項4】前記第2遮光膜がデータ線を兼ねることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。」
以下、「本件発明1」、「本件発明2」及び「本件発明4」という。

《3-3》刊行物に記載された発明
《3-3-1》刊行物1
(1)1頁16行〜2頁12行
「前記TFTを用いた液晶装置にあっては、画素電極駆動用のTFT(以下、画素TFTと称す。)の上方は、対向基板に設けられるブラックマトリクス(あるいはブラックストライプ)と呼ばれるクロム膜等の遮光膜で覆われており、TFTのチャネル領域に直接光が照射されてリーク電流が流れないようにしている。しかしながら、光によるリーク電流は、入射光のみならず液晶装置用基板の裏面で偏光板等により反射した光がTFTを照射することによって流れることがある。そこで、反射光によるリーク電流を低減するため、TFTの下側にも遮光膜を設けるようにした発明が提案されている(特公平3-52611号)。ところが、TFTの下側に設ける遮光膜を対向基板に設けられたブラックマトリクスの開口部にはみ出すように形成すると、入射光が直接遮光膜に当たり、反射された光がTFTのチャネル領域を照射し、リーク電流が流れる場合がある。これは、TFTの下方に遮光膜を設ける技術において、対向基板に設けられるブラックマトリクスと液晶装置用基板に形成された画素領域との高精度な位置合わせが困難であるため、対向基板側からの入射光がブラックマトリクスの開口部にはみ出した遮光膜に直接当たって反射し、TFTのチャネル部が照射され、リーク電流が流れるからである。特に、液晶装置用基板上の遮光膜とブラックマトリクスの位置合わせの誤差が大きいと、遮光膜表面による反射光が著しく多くなり、この反射光がチャネル領域に照射されることで、TFTのリーク電流が増大し、クロストーク等の表示劣化を引き起こす。本発明の目的は、液晶装置において、TFTの光によるリーク電流を低減することができる技術を提供することにある。本発明の他の目的は、対向基板にブラックマトリクスを設けることなくTFTの光によるリーク電流を低減することができる技術を提供することにある。」
(2)11頁10行〜17行
「本実施例1では、前記TFTの能動層となる半導体層1の下方、特にチャネル1領域1c(図1における右下がりの斜線部分)およびLDD領域(あるいはオフセット領域)1d、1eとソース・ドレイン領域1a、1bとの接合部の下方よび走査線2の下方にタングステン膜、チタン膜、クロム膜、タンタル膜、およびモリブデン膜等の金属膜あるいはその金属合金膜からなる第1遮光膜7(図1における右上がりの斜線部分)が設けられている。このように半導体層1が前記第1遮光膜7と前記第2遮光膜(データ線)3および対向基板側の第3遮光膜(ブラックマトリクス)6とによって上下から挟み込まれた構造となっているので、」
(3)14頁17行〜23行
「次に、図3および図4用いて本実施例の製造プロセスを説明する。まず、無アルカリガラスや石英等の基板l0上にスパッタ法等によりタングステン膜,チタン膜,クロム膜,タンタル膜,およびモリブデン膜等の導電性の金属膜、あるいは金属シリサイド等の金属合金膜を約500〜3000オングストローム好ましくは約1000〜2000オングストロームの厚さに形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術等を用いてパターニングすることにより第1遮光膜7を形成する(図3a)。」
(3)18頁2行〜7行
「この際、データ線(第2遮光膜)3を少なくともチャネル領域lcおよびLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,leを覆うように形成する。そして、前記データ線3を覆うように、基板10全面に第3層間絶縁膜15を例えばCVD法や常圧オゾンTEOS法等により5000〜15000オングストロームのような厚さに形成する。」
(4)21頁3行〜7行
「したがって、対向基板31側からの入射光に対しては2およびデータ線(第2遮光膜)3が遮光層となり、液晶装置用基板裏面からの反射光に対しては前記第1遮光膜7が遮光層として機能し、反射光が画素TFTのチャネル領域lcおよびLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,1eを照射するのを防止して、光によるリーク電流を抑制することができる。」
(5)24頁3行〜27頁27行
「(実施例7およびデータ線3部における遮光膜のサイズ規定)
図13および14は、本発明を適用した液晶装置用基板の画素領域部分の代表を的な例で実施例5の変形である。本実施例7では、容量線16を画素電極14下で部分的に斜めに形成し、画素開□率を向上させている。図13は隣接する画素の平面図であり、図14は図13のE一E'における断面図である。図13におけるA-A'線に沿った断面、すなわちTFTの能動層となる半導体層1に沿った断面構造は、実施例1で説明した断面(図2)と同様の構造をとる。本実施例7では、第1遮光膜7(図13における右上がりの斜線部分)の上方に第1層間絶縁膜11を介して形成された半導体層1は、少なくともチャネル領域lc(図13における右下がりの斜線部分)およびLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,leをデータ線(第2遮光膜)3で覆うように形成する。更に、液晶装置用基板との間に液晶を介在させて貼り合わされた対向基板31上のブラックマトリクス(第3遮光膜)6で、少なくとも第1遮光膜7を覆うようにする。ここで、第1遮光膜7には対向基板31側からの入射光が直接照射されないようにパターン形状を工夫しなければならない。そこで、図14に示すようにチャネル領域lcおよびLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,leの幅Wに対して、第1遮光膜7、第2遮光膜(データ線)3、第3遮光膜(対向基板上のブラックマトリクス)6のサイズを規定する。チャネル領域lcとLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,leの幅Wは同じでも構わないし、サイズが変わっても良い。願わくは、LDD領域(あるいはオフセット領域)ld,leの幅とゲート電極(走査線)2の幅は、画素TFT特性の安定を図るためにも、パタターンアライメント精度を考慮して同じ幅Wで形成した方が良い。もしサイズを変えるのならば、チャネル領域lcに対して、光により電子が励起されやすいLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,1eの幅を狭く形成すると高品位な画質が得られる。本発明を適用したすべての実施例では、チャネル領域lcとLDD領域ld,leとの幅をほぼ同一として遮光膜のサイズ規定を行う。図14において、基板10裏面からみてチャネル領域lcおよびLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,leを覆っている第1遮光膜7側面から、チャネル領域lcおよびLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,leまでの最小距離をL1,L1'と定義すると、少なくとも次の定義式(1)に示される関係が成立するようにパターンレイアウトすると良い。
0.2μm≦L1,L1'≦4μm...(1)
液晶装置の高開□率を維持しつつ、第1遮光膜7のパターン精度を考えると、望むべくは、次の定義式(2)に示される関係が成立するようにパターンレイアウトすると更に良い。
0.8μm≦L1,L1'≦2μm...(2)
定義式(2)における値は、第1層間絶縁膜11の膜厚が約8000オングストロームであるため、基板10裏面での反射光は、入射光に対して第1遮光膜7側面を基点に45度以上の角度で反射しないと、チャネル領域lcおよびLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,leに照射されないということから導き出るされている。基本的に液晶装置の画面領域に対して入射光は垂直方向に平行な光が照射されるため、第1遮光膜7側面を基点にして入射光が45度以上の角度で反射される確立は少ない。したがって、定義式(2)の値を満足すれば、反射光の影響はほとんど無視できる。次に、第1遮光膜7と第2遮光膜(データ線)3との関係を定義する。第1遮光膜7に直接入射光が照射されないように、第1遮光膜7の上方に位置する第2遮光膜(データ線)3の幅を広く形成する必要がある。特に、LDD領域ld,leは走査線2がないため、入射光に対する影響を受けやすい。そこで、第2遮光膜側面から第1遮光膜までの最小距離をL2,L2'と定義する、少なくとも次の定義式(3)に示される関係が成立するようにパターンレイアウトすると良い。
0.2μm≦L2,L2'...(3)
望むべくは、第1層間絶縁膜11と第2層間絶縁膜13を合わせた膜厚が約15000オングストロームなので、次の定義式(4)に示される関係が成立するよきうにパターンレイアウトすると更に良い。
1.5μm≦L2、L2'...(4)
これは、上述した第1遮光膜7とチャネル領域lcおよびLDD領域(あるいはオフセツト領域)ld,leとの関係と同様で、入射光が第2遮光膜(データ線)3を基点として45度以上の角度で入射されないと、第1遮光膜7の表面に光が到達しないからである。また、図13に示すようにチャネル領域lc下方の第1遮光膜7は、走査線2に沿って延設されているため、この部分では定義式(3),(4)は成立しない。しかし、少なくともチャネル領域lcおよびLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,le付近は走査線2や第3遮光膜(対向基板上のブラックマトリクス)6で覆われているため問題ない。次に第2遮光膜(データ線)3と第3遮光膜(対向基板上のブラックマトリクス)6との関係を定義する。基本的に第2遮光膜(データ線)3が十分な遮光性を発揮するならば、第3遮光膜(対向基板上のブラックマトリクス)6は必要ない。そこで、走査線2を遮光性の膜で形成し、画素電極14の全ての辺を隣り合うデータ線3および走査線2に対して重なるように形成すれば、対向基板上のブラックマトリクス(第3遮光膜)6を省略することができる。そこで、液晶装置用基板10と対向基板31の貼り合わせずれで第3遮光膜(ブラックマトリクス)6が画素の光透過領域を狭めることがあるので、.高開ロ率を実現するためには、対向基板上のブラックマトリクス(第3遮光膜)6を形成しないことが望ましい。ところが、第2遮光膜を形成するアルミニウム膜等の金属膜や金属合金膜のピンホールにより光が透過するおそれがあるので、それを防止するためにデータ線上に第3遮光膜(対向基板上のブラックマトリクス)6を形成すると冗長構造になる。もし、ブラックマトリクス(第3遮光膜)を形成する場合は、望むべくは、第2遮光膜(データ線)3側面から第3遮光膜6までの距離L3,L3'が定義式(5)の関係であれば良い。
L3,L3' ≦1μm...(5)
定義式(5)を満足すれば、ほとんど開□率に影響しないためである。また、チャネル幅Wは画素TFTの書き込み特性によるところが大きいが、TFTのオン/オフ比が6桁以上確保できるのであれば、できるだけ短い方が光に対する影響を受けにくい。したがって、
0.2μm≦W≦4μm...(6)
で形成すると良い。更に望むべくは、
0.2μm≦W≦2μm...(7)
で形成すれば、データ線(第2遮光膜)3の線幅を細く形成できるので、更なる高開ロ率が実現できる。また、本実施例7も実施例1と同様な製造プロセスで形成することができる。」

(6)35頁2行〜9行
「1.基板上に複数のデータ線と、前記複数のデータ線に交差する複数の走査線と、前記複数のデータ線および前記複数の走査線に接続された複数の薄膜トランジスタと、該複数の薄膜トランジスタに接続された複数の画素電極とを有する液晶装置用基板において、少なくとも前記薄膜トランジスタのチャネル領域および該チャネル領域とソース・ドレイン領域との接合部の下方には第1遮光膜が形成されてなり、該チャネル領域とソース・ドレイン領域との接合部の上方に第2遮光膜が形成されてなることを特徴とする液晶装置用基板。」

(7)36頁24行〜末行
「15.前記第1遮光膜の側面から前記チャネル領域伊までの最小距離L1は0.2μm≦L1≦4μmになるように形成されていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の液晶装置用基板。
16.前記第2遮光膜の側面から前記第1遮光膜までの最小距離L2は0.2μm≦≦L2になるように形成されていることを特徴とする請求項9から15のいずられか一項に記載の液晶装置用基板。」

以上の記載及び図面から、刊行物1には、「無アルカリガラスや石英等の基板l0上に第1遮光膜7、第1層間絶縁膜11、画素TFTのチャネル領域lcおよびLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,1e、第2層間絶縁膜13及び第2遮光膜(データ線)3とをこの順に有する液晶表示装置であって、第14図において、第1層間絶縁膜11の膜厚が約8000Åで、0.2μm≦L1,L1'≦4μm...(1)、望ましくは0.8μm≦L1,L1'≦2μm...(2)であり(定義式(2)における値は、基板10裏面での反射光が入射光に対して第1遮光膜7側面を基点に45度以上の角度で反射しないと、チャネル領域lcおよびLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,leに照射されないということから導き出るされている)、0.2μm≦L2,L2'...(3)、望ましくは第1層間絶縁膜11と第2層間絶縁膜13を合わせた膜厚が約15000オングストロームであるので、1.5μm≦L2、L2'...(4)(これは、入射光が第2遮光膜(データ線)3を基点として45度以上の角度で入射されないと、第1遮光膜7の表面に光が到達しないこと)である液晶表示装置。」
なる発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。

前記第1遮光膜は、薄膜トランジスタ側の上辺が基板側の下辺よりも短い台形形状となる端部テーパー形状を有し、前記下辺の端部と薄膜トランジスタのチャネル端部とを結ぶ線と該チャネル端部の法線方向との成す角が50度以上であり、且つ、前記第2遮光膜の下面端部と前記第1遮光膜の上辺のテーパー開始点とを結ぶ線と、該第2遮光膜の下面端部の法線方向との成す角が30度以上であるとともに、前記端部テーパー形状のテーバー角が、前記第1遮光膜の前記下辺に対して30〜80度であることを特徴とする


《3-3-2》刊行物2
(1)段落【0013】
「【0013】特に好ましくは、遮光層は、実質的に台形状の縦断面を有する。遮光層側面のテーパ角は、基板の法線方向に対し、2°ないし60°であることが好ましい。」
(2)段落【0020】
「【0020】以上のように、本発明に従って側面にテーパを有する遮光層を設けることにより、開口率の低下を最小限にせしめ、視角特性を改善することができる。ここで、テーパ角度の範囲について考察する。」
(3)段落【0023】
「【0023】また、液晶表示装置は、液晶自体の特性として、視角依存性を有する。代表的なパネルのコントラスト比の視角依存性の例を図11に示す。図11において、θは、パネルの法線に対する角度、φはパネルの右方向をゼロとしたときの方位角を表す。この図から、実用的なコントラスト比5:1がとれる視角θは、最大で60°程度であることが分かる。従ってテーパ角は、60°以下であることが好ましい。ただし、ここでいう角度の定義は、基板の法線から測定した角度である。」
(4)段落【0026】の実施例5および段落【0027】
「実施例5
図15に本発明の第5の態様を表す概略図を示す。この液晶表示装置は、遮光層3をアレイ基板側に設けること以外は、実施例1と同様の構造を有する。この遮光層3は、アレイ基板の透明電極2間の間隙を埋め、かつ金属配線5を覆うように設けられ、その断面形状は、透明電極2表面より上方では、基板側が長く液晶層側が短い。
【0027】このような装置においては、着色層及び遮光層のエッチング条件を適宜選択することにより、容易にテーパを形成することが可能であり、プロセスの大きな変更なしに、開口率及び視角特性の向上等をなし得、画質を改善し得るという利点がある。」

《3-3-3》刊行物3〜6(参考資料1〜4)
刊行物3には、ウエットエッチングし、陽極酸化した高誘電率の絶縁膜の断面が図3(d)に示され、ドライエッチングした場合には、絶縁膜の表面部分にアンダーカットが発生せず、図2(c)のようになることが示されている。
刊行物4には、液晶表示装置の遮光膜(Cr膜)の断面を、上層の被覆性を向上させる目的で、テーパ化すること、およびこれは遮光膜にも適用されることが示されている。
刊行物5にはアレイ基板上に所望の形状にエッチング加工して遮光膜8が形成されていることが示され、図1には遮光膜の端面が基板に対して傾斜して描かれている。
刊行物6には、絶縁膜上の層の段切れや抵抗増大を回避するために遮光膜(Cr膜)11をウエットエッチングでエッジ部をテーパ加工することが記載されている。

《3-4》対比・判断
《3-4-1》本件発明1
引用発明と本件発明1とを対比すると、引用発明における「無アルカリガラスや石英等の基板l0」、「第1遮光膜7」、「第1層間絶縁膜11」、「画素TFTのチャネル領域lcおよびLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,1e」、「第2層間絶縁膜13」及び「第2遮光膜(データ線)3」は、請求項1に係る発明の「透明絶縁性基板」、「第1遮光膜」、「第1層間膜」、「薄膜トランジスタ」、「第2層間膜」及び「第2遮光膜」に相当する。
また、引用発明における、「第14図において、第1層間絶縁膜11の膜厚が約8000Åで、0.2μm≦L1,L1'≦4μm...(1)、望ましくは0.8μm≦L1,L1'≦2μm...(2)であり(定義式(2)における値は、基板10裏面での反射光が入射光に対して第1遮光膜7側面を基点に45度以上の角度で反射しないと、チャネル領域lcおよびLDD領域(あるいはオフセット領域)ld,leに照射されないということから導き出るされている)、0.2μm≦L2,L2'...(3)、望ましくは第1層間絶縁膜11と第2層間絶縁膜13を合わせた膜厚が約15000オングストロームであるので1.5μm≦L2、L2'...(4)(これは、入射光が第2遮光膜(データ線)3を基点として45度以上の角度で入射されないと、第1遮光膜7の表面に光が到達しないこと)である」旨の技術事項は、特許異議申立書6頁16行〜7頁11行に説明されているように、第1遮光膜の基板側の下辺の端部と薄膜トランジスタのチャネル端部とを結ぶ線と該チャネル端部の法線方向との成す角が15〜79度以上(望ましくは45〜68度)であり、50〜79度の範囲で本件発明1の範囲と一致し、且つ、第2遮光膜の下面端部と前記第1遮光膜の上辺の端部とを結ぶ線と、該第2遮光膜の下面端部の法線方向との成す角が7.6度以上(望ましくは45度以上)であり、30度以上の範囲において本件発明1の範囲と一致していることを意味している。

してみると、両者は、以下の点で一致する。
「透明絶縁性基板上に第1遮光膜、第1層間膜、薄膜トランジスタ、第2層間膜及び第2遮光膜とをこの順に有する液晶表示装置であって、前記第1遮光膜は、前記下辺の端部と薄膜トランジスタのチャネル端部とを結ぶ線と該チャネル端部の法線方向との成す角が50度以上であり、且つ、前記第2遮光膜の下面端部と前記第1遮光膜の上辺のテーパー開始点とを結ぶ線と、該第2遮光膜の下面端部の法線方向との成す角が30度以上である液晶表示装置。」

そして、第1遮光膜の端部形状について、本件発明1は「薄膜トランジスタ側の上辺が基板側の下辺よりも短い台形形状となる端部テーパー形状」を有すると規定し、端部テーパー形状について「前記第1遮光膜の前記下辺に対して30〜80度」と規定しているのに対して、引用発明は、第1遮光膜の端部形状について何ら規定していない点で両者は相違する。

そこで、上記相違について検討するに、刊行物2〜6には、遮光膜の端部をテーパー形状とする点が記載又は図示され、特に刊行物2では、テーパ角を2〜60度とすることが記載されている。しかし、刊行物2〜6において、遮光膜の端部をテーパー形状とする理由は、開口周辺を回折光等により明るくしたり、視野角特性を改善したり、上層の段切れを防止したりするためのものである。本願発明1のように、開口効率を低下させることなくチャネル領域への光の入射を抑制するためのものではない。したがって、刊行物2〜6において公知の遮光膜の形状を引用発明の遮光膜に適用することは当業者といえども容易に想到できたものとすることはできない。
そして、本件発明1の前記相違に係る構成は、他の構成と相俟って、明細書記載の効果を奏するものと認められる。

したがって、本件発明1は、刊行物1〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

《3-4-2》本件発明2、本件発明4
本件発明2、本件発明4は、本件発明1の構成をすべて含むものである。
したがって、本件発明2、本件発明4と引用発明とを対比すると「《3-4-1》本件発明1」に記載した相違が存在するので、本件発明2、本件発明4は、少なくとも本件発明1と同じ理由により、刊行物1〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

《3-5》むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠方法によっては、本件の請求項1、2、4に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1、2、4に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液晶表示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明絶縁性基板上に第1遮光膜、第1層間膜、薄膜トランジスタ、第2層間膜及び第2遮光膜とをこの順に有する液晶表示装置であって、
前記第1遮光膜は、薄膜トランジスタ側の上辺が基板側の下辺よりも短い台形形状となる端部テーパー形状を有し、前記下辺の端部と薄膜トランジスタのチャネル端部とを結ぶ線と該チャネル端部の法線方向との成す角が50度以上であり、
且つ、前記第2遮光膜の下面端部と前記第1遮光膜の上辺のテーパー開始点とを結ぶ線と、該第2遮光膜の下面端部の法線方向との成す角が30度以上であるとともに、
前記端部テーパー形状のテーパーが、前記第1遮光膜の前記下辺に対して30〜80度であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】 前記第1遮光膜はシリサイドにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】 前記第1遮光膜のテーパー部はSF6+C2Cl2F4又はCl2+N2+AlCl3の混合ガスを用いたプラズマエッチングにより形成されたものであることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】 前記第2遮光膜がデータ線を兼ねることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶プロジェクターなどの液晶表示装置に関し、詳しくは、薄膜トランジスタ(TFT)により液晶のスイッチングを行うライトバルブ用アクティブマトリクス型液晶表示装置の遮光性の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、壁掛けTVや投射型TV、あるいは、OA機器用ディスプレイとして液晶パネルを用いた各種表示装置の開発が行われている。液晶パネルの中でもアクティブ素子である薄膜トランジスタを液晶表示装置に組み込んだアクティブマトリックス液晶ディスプレイは、走査線数が増加してもコントラストや応答速度が低下しない等の利点から、高品位のOA機器用表示装置やハイビジョン用表示装置を実現する上で有力であり、液晶プロジェクションなどの投射型液晶ディスプレイにおいては、大画面表示が容易に得られる。
【0003】通常、液晶プロジェクション用途に使用されるライトバルブ用アクティブマトリクス型液晶表示装置では、小さな素子に強力な光を入射して、TFTにより液晶をスイッチングすることにより画素毎のON/OFFを行って、透過する光を画像情報に応じて制御し、透過した光をレンズなどの光学素子を介してスクリーン上などに拡大投影しているが、その際、TFTの活性層をポリシリコン(p-Si)により形成すると、入射光による影響はもちろんのこと、レンズなどの光学系からの反射光によってもTFTのチャネル部において光励起により発生するオフ時のリーク電流が問題となっている。
【0004】従来、このようなライトバルブ用アクティブマトリクス型液晶表示装置では、TFT基板上に設けられた第1遮光膜と、TFT上部に設けられた第2遮光膜を有する。つまり、液晶層を挟んでTFTの対向基板側から光が入射される場合、第2遮光膜で入射光を遮光し、第1遮光膜によって光学系からの反射光を遮光している。
【0005】第2遮光膜は、TFTと同じ基板上に層間膜を挟んで形成する場合と、液晶層を挟んでTFTの対向基板上に形成する場合があるが、第2遮光膜をTFTの対向基板側に形成する場合、2枚の基板の重ねあわせ精度として10μm程度のずれを見込んで、第1遮光膜よりもその分大きくしなければならない。その結果、開口率が大きくできないという問題がある。
【0006】従って、現在ではもっぱらTFTと同一基板上に形成する方法が採られている。この場合、半導体装置製造工程を利用して高い位置合わせ精度が得られるために前記したような大きなマージンを見込む必要はないが、二つの遮光膜とTFTの位置関係が考慮に入っていないため、パネル内での乱反射による光の遮光については対策が十分でなかった。
【0007】図4(a)は従来構造になるTFT基板の模式的断面図である。ガラスや石英などの透明絶縁性基板41上に第1遮光膜42が形成され、その上に第1層間膜43を介してTFTの活性層としてのp-Siが形成され、活性層は不純物添加によってソース・ドレインが形成され、ソース・ドレイン間にチャネル45が形成される。なお、同図ではチャネル幅方向の断面図を示しており、ソース・ドレインは紙面の手前及び奥に形成されている。活性層上にはゲート酸化膜47を介してゲート電極48が形成され、その上に第2層間膜49を介して通常はデータ線を兼ねる第2遮光膜50が形成される。更にこれらの上に第3層間膜51が形成され、不図示の画素電極、液晶層、対向基板が形成されることで液晶パネルが完成する。
【0008】通常、光源光の出射主方向と液晶パネルとが垂直に配置される場合、液晶パネル内を通過する光の伝播方向は、そのほとんどがその液晶パネル法線方向の30度以内に収まると考えられる。このことは、特開平8-171101号公報の段落(0065)に開示されている。そこで、最大30度の光について考えると、第1遮光膜42がチャネル幅と同じ幅に形成されている従来構造では、入射光60が、基板裏面で反射した反射光61、あるいは光学系からの反射光62がチャネルに入射してしまうという問題があった。
【0009】これに対して、第1遮光膜42の幅を図4(b)に示すように第2遮光膜の幅と同じ程度まで広げることで、反射光61及び62は第1遮光膜に遮られて、チャネルに到達しなくなるが、入射光60が第1遮光膜表面で反射された反射光62がチャネルに入射してしまうという問題が新たに発生してしまう。更にこれを解消しようとすれば、第2遮光膜50の幅を広げる必要があり、その結果、開口率が低下してしまう。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、開口率を低下させることなく、基板裏面からの反射光や光学系からの反射光のチャネルへの入射を抑制することのできる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、透明絶縁性基板上に第1遮光膜、第1層間膜、薄膜トランジスタ、第2層間膜及び第2遮光膜とをこの順に有する液晶表示装置であって、前記第1遮光膜は、薄膜トランジスタ側の上辺が基板側の下辺よりも短い台形形状となる端部テーパー形状を有し、前記下辺の端部と薄膜トランジスタのチャネル端部とを結ぶ線と該チャネル端部の法線方向との成す角が50度以上であり、且つ、前記第2遮光膜の下面端部と前記第1遮光膜の上辺のテーパー開始点とを結ぶ線と、該第2遮光膜の下面端部の法線方向との成す角が30度以上であるとともに、当該端部テーパー形状のテーパー角が、前記第1遮光膜の前記下辺に対して30〜80度であることを特徴とする液晶表示装置に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】本願発明者らは、基板裏面からの反射光を想定し、基板裏面から赤、青、緑の光を照射した場合、青色光に起因するリーク電流がもっとも大きいことを確認した。そこで、基板側に形成される第1遮光膜の幅とリーク電流との関係について調査した結果、図2に示すような関係であることを確認した。ここでは、第1遮光膜端部にはテーパーを形成せずに測定した。第1遮光膜の幅をチャネル幅と同じにした場合、TFTチャネル幅よりもその幅を大きくし、片側あたり1.0μm及び1.5μm広げた場合について評価した。同図からわかるように、1.5μm以上では10000luxの照射強度においても青色光によるリーク電流を10pA以下に抑えることができ、良好なTFT特性が得られる。その他、この試験に供したサンプルの作製条件を以下に示す。
【0013】
第1遮光膜:タングステンシリサイド 膜厚110nm
第1層間膜:SiO2 膜厚1μm
チャネル幅:1μm
【0014】つまり、第1遮光膜とチャネルとの位置は、チャネル端部と第1遮光膜端部とを結ぶ線がチャネル端部における法線方向との成す角θ1は、第1層間膜厚をa、チャネル端部と第1遮光膜端部の距離をbとすると、下記式(1)により求められる。
【0015】
【数1】

【0016】上記式において、aに1μm、bに1.5μmを代入すると、θ1は約56度となる。実際には、θ1は50度以上であれば、10000luxの照射強度においても青色光によるリーク電流を10pAに抑制することが可能である。従って、第1層間膜の膜厚が変わったとしてもθ1を50度以上に設定することで、同様の効果が得られると考えられる。なお、上限については、第1層間膜の膜厚と許容される開口率の下限の関係から決定すれば良く、上記の例ではbが3μm程度とするのが望ましい。
【0017】ここで、第1遮光膜の厚みは、前記タングステンシリサイドなどのシリサイド膜を使用する場合、100nm以上であれば遮光効果が得られるが、好ましくは160nm以上とするのが望ましい。また、第1層間膜の膜厚は、第1遮光膜がTFTに対してバックゲートして作用しないようにするために、500nm以上とするのが望ましい。各膜の膜厚の上限は特に規定されず、適宜設計に応じて選択すればよいが、通常は、第1遮光膜が500nm程度まで、第1層間膜は2μm程度までとするのが望ましい。
【0018】次に、第1遮光膜と第2遮光膜との位置関係について検討した。前記従来技術においても説明したように、液晶層側に配置した光源から液晶パネルに垂直に光が入射される場合、ほぼ30度以内に収まる。従って、第2遮光膜で第1遮光膜表面への入射光を抑制することで、入射光による問題を解消することができると考えられる。つまり、第1遮光膜の端部と第2遮光膜の端部と結ぶ線と第2遮光膜端部の法線方向との成す角度θ2が、30度以上となるように形成すればよいと考えられる。そこで、第1遮光膜と第2遮光膜との距離をc、第1遮光膜の端部と第2遮光膜の端部の距離をdとして考えると、距離dは下記式(2)によって示される。
【0019】
【数2】
d=tanθ2×c ・・・・(2)
【0020】ここで、θ2を30度、第1遮光膜2と第2遮光膜10との距離cを2μmとして計算すると、距離dは1.2μmとなる。
【0021】先ほどの例で距離bを1.5μmとした場合、第2遮光膜のチャネルに対しての幅は、片側で2.7μmとなる。このように第2遮光膜の幅を広げると前記従来技術で説明したように開口率が低下してしまう。
【0022】そこで、本発明者らは、第1遮光膜のチャネル幅方向での断面形状を上辺(TFT側)が下辺(透明絶縁性基板側)より短くなる台形形状とし、第1遮光膜の端部をテーパー形状とすることで、第2遮光膜の幅の拡大を抑制し、開口率の低下を抑制できることを見いだした。
【0023】すなわち、図1(a)に示すように、第2遮光膜10のエッジ部を回り込んで入射した入射光15は、第1遮光膜2のテーパー部に当たって外部に反射されるため、チャネル5への入射が阻止される。また、第2遮光膜10の幅は第1遮光膜2の上辺のテーパー開始点2aを基準に考えればよいため、テーパーとした分だけ短くすることができ、開口率の低下を抑制できる。
【0024】本発明ではテーパーの角度θ3は第1遮光膜の膜厚によって種々異なるが、30〜80度の範囲で設定することで効果があることを見いだした。好ましくは、30〜50度とするのが望ましい。角度θ3が30度未満では、テーパー部に入射する光を外部へ反射させることができず、また、テーパー部の遮光膜が薄くなる領域が多くなり、第1遮光膜下からの反射光に対して遮光効果が低下する場合がある。また、80度を越えると、テーパーとした効果、すなわち、第2遮光膜の幅を抑制するという効果があまり得られない。
【0025】ここで、テーパー角度θ3を30度として第1遮光膜端部とテーパー開始点2aとの距離eを計算すると、下記式(3)から導き出せる。
【0026】
【数3】

【0027】ここで、fは第1遮光膜の膜厚である。第1遮光膜の膜厚として200nmを代入して計算すると、距離eは約350nmとなる。つまり、この距離eの分だけ、第2遮光膜の幅を狭くできることになる。
【0028】以上の第1遮光膜2の下辺端部2b、テーパー開始点2a、チャネル端部5a、第2遮光膜10の端部10aの位置関係について、図1(b)に示す。
【0029】
【実施例】以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。
【0030】図3(a)にアクティブマトリクス型液晶表示装置のTFT周辺部の部分断面図を示す。また、図3(b)は図3(a)のA-A’線での部分断面図である。ここでは、ガラス等の透明絶縁性基板1上に、各画素のスイッチング素子となるトップゲート型TFTがアレイ状に形成されている。このTFT基板と、対向電極が形成された対向基板13の間に液晶層12が封入されて液晶表示装置が構成されている。
【0031】TFT基板上に形成されている各層について、以下に説明する。TFTはソース4、ドレイン6となるポリシリコン層とゲート電極8であるポリシリコン層、それらの層間のゲート酸化膜7で構成されている。TFTと透明絶縁性基板1の間には、該基板側からの反射光がTFTに入射するのを遮蔽するための第1遮光膜2が設けられている。第1遮光膜2とTFTの間には、Si02から成る下地酸化膜3が設けられている。ゲート電極8であるポリシリコン層とゲート酸化膜7を覆ってSiNから成る第2層間膜9が設けられている。第2層間膜9は、図示されていない領域でゲートと繋がる走査信号線(ゲート線)となる金属配線層を挟んで形成されている。第2層間膜9上には、Alから成る第2遮光膜10が設けられており、これは、データ信号線を兼ねている。第2遮光膜10は、液晶層12側からの入射光に対する遮光層となる。第2遮光膜10は、走査信号線(ゲート線)と直交する方向に複数本設けられており、第2層間膜9とゲート酸化膜7を通じて形成されたコンタクトホールを介してソース4に接続されている。さらに第2遮光膜10と第2層間膜9を覆って、平坦化のための第3層間膜11が形成されている。この第3層間膜11には図示されていない領域に、第2層間膜9及びゲート酸化膜7を通してドレイン6に接続するコンタクトホールが形成されている。第3層間膜11上には各画素にパターニングされたITO膜が形成されており、このコンタクトホールを介してドレイン6に接続されることで、画素電極として機能する。
【0032】次に、各層の形成方法を述べる。まず、ガラスなどの透明絶縁性基板1上に第1遮光膜2を形成する。第1遮光膜2にはタングステンシリサイドを用いる。なお、第1遮光膜2にはクロム等を用いても良い。タングステンシリサイドは、後に加えられるTFTの熱工程に対して安定な性質を持ち、膜厚0.1μm程度で十分な遮光性能を持つ。本実施例では、膜厚0.175μmとする。第1遮光膜2はスパッタリング法もしくはCVD法で成膜し、第1遮光膜2のエッジをテーパ状に加工する。シリサイド膜をテーパ状に加工するには、フォトリソグラフィ工程を加えた後に、SF6+C2Cl2F4やCl2+N2+AlCl3などの混合ガスを用いてプラズマエッチングするなどの方法がある。この時、テーパの形状は、液晶層12側から第2遮光膜10の端部を回り込んで入射した光をTFTよりも外側に反射させるため、第1光膜2の側面をテーパー形状に加工する。
【0033】第1遮光膜2の下辺端点2bは、TFTのチャネル5のチャネル端部5aの法線方向とチャネル端部5aと下辺端点2bとを結ぶ線とのなす角度θ1が50度以上となる位置に設ける必要がある。本実施例では、TFTのチャネル5のチャネル端部5aから垂直におろした位置から第1遮光膜の下端点2bまでの長さを1.5μmとする。また、テーパー角度θ3は、30度と成るようにテーパー状に加工する。
【0034】この第1遮光膜2を覆って、第1層間膜3が形成される。ここでは、例えばSiO2膜をCVD法で成膜する。この第1層間膜3の膜厚は、下地に用いたガラス基板から金属等の不純物がTFT工程を経るうちに拡散してTFTに電気的な影響及ぼすのを防ぐのに十分な厚さが必要である。このことから、例えば1μmとする。
【0035】この第1層間膜3上にTFTを形成する。まず、LPCVD法によりボロンをドープしたアモルファスシリコン層を0.075μm厚に成膜したのち、レーザーアニール工程を加え、さらにフォトリソグラフィ工程とエッチング工程を加えてポリシリコン層を形成する。このポリシリコン層を覆って、ゲート酸化膜7を0.1μm厚にCVD法で成膜する。さらに、第2のポリシリコン層をCVD法で成膜してパターニングし、ゲート電極8を形成する。続いて、イオン注入法でN型MOS-TFTにはリンイオンを、P型MOS-TFTにはボロンを注入してソース4とドレイン6を形成したのち、不純物の活性化アニールを行う。
【0036】TFTを作製したのち、SiNからなる第1の絶縁膜をCVD法で0.4μmの膜厚に形成する。第1の絶縁膜にはエッチング工程を加え、ゲート電極に繋がるコンタクトホールを形成する。これを通じて、第2層間膜9上に形成する不図示の金属配線層とゲートを接続させる。金属配線層はAlをスパッタリングして形成する。この金属配線層と第1の絶縁膜とを覆って、さらにSiN膜を0.4μmの厚みに形成して第2層間膜9とする。
【0037】第2層間膜9の上には、第2遮光膜10を形成する。これは、Alをスパッタリングして成膜し、データ線となるようパターニングをする。その際、TFTのチャネル領域が投影される領域の第2遮光膜10の幅は、第2遮光膜10の端部10aにおける法線と端部10aと第1遮光膜2のテーパ開始点2aとを結ぶ線とがなす角度θ2が30度以上となる幅に設計する。本実施例ではステッパーの精度を考慮して、第1遮光膜2のテーパ開始点2aと第2遮光膜10の端部10aまでの長さdを0.8μmとする。この第2遮光膜10は、第2層間膜9に形成されたコンタクトホールを介してソース4と接続されている。
【0038】さらに、第2遮光膜10と第2層間膜9を覆って平坦化のための第3層間膜11を0.8μm塗布する。第3層間膜11にはエッチング工程を加え、第2層間膜9とゲート酸化膜7とを通じてドレイン5に繋がるコンタクトホールを形成する。最後にITO膜をスパッタリング法で成膜し、各画素電極の形状にパターニングする。
【0039】その後、液晶層12,対向基板13を形成することにより液晶表示装置が完成する。
【0040】
【発明の効果】本発明では、TFTの下に形成される第1遮光膜、上部に形成される第2遮光膜及びチャネルとの位置関係を規定し、第1遮光膜の端部をテーパー形状とすることで、液晶パネルの出斜側外部に設けられる光学系からの反射光、あるいはTFTの形成される基板裏面からの反射光を第1遮光膜で確実に遮光し、また、第2遮光膜を回り込んだ光は、第1遮光膜のテーパー面で反射されることで、TFTのチャネルにおける光リークを抑制できるとともに、開口率も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の効果を説明する模式的断面図である。
【図2】裏面青色光照射強度に対するリーク電流の変化の第1遮光膜の幅依存性を示すグラフである。
【図3】本発明の一例になる液晶表示装置の断面図であり、(b)は(a)のA-A’線での断面図を示す。
【図4】従来構造の問題点を説明する模式的断面図である。
【符号の説明】
1 透明絶縁性基板
2 第1遮光膜
2a テーパー開始点
2b 下辺端部
3 第1層間膜
4 ソース
5 チャネル
5a チャネル端部
6 ドレイン
7 ゲート酸化膜
8 ゲート電極
9 第2層間膜
10 第2遮光膜
10a 第2遮光膜端部
11 第3層間膜
12 液晶層
13 対向基板
15 入射光
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
訂正事項a:
特許請求の範囲の請求項1を特許請求範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】透明絶縁性基板上に第1遮光膜、第1層間膜、薄膜トランジスタ、第2層間膜及び第2遮光膜とをこの順に有する液晶表示装置であって、前記第1遮光膜は、薄膜トランジスタ側の上辺が基板側の下辺よりも短い台形形状となる端部テーパー形状を有し、前記下辺の端部と薄膜トランジスタのチャネル端部とを結ぶ線と該チャネル端部の法線方向との成す角が50度以上であり、且つ、前記第2遮光膜の下面端部と前記第1遮光膜の上辺のテーパー開始点とを結ぶ線と、該第2遮光膜の下面端部の法線方向との成す角が30度以上であるとともに、前記端部テーパー形状のテーパー角が、前記第1遮光膜の前記下辺に対して30〜80度であることを特徴とする液晶表示装置。」と訂正する。
訂正事項b:
特許請求の範囲の請求項2を、特許請求範囲の減縮を目的として、削除する。
訂正事項c:
特許請求の範囲の請求項3を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項2】前記第1遮光膜はシリサイドにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。」と訂正する。
訂正事項d:
特許請求の範囲の請求項4を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【請求項3】前記第1遮光膜のテーパー部はSF6+C2Cl2F4又はCl2+N2+AlCl3の混合ガスを用いたプラズマエッチングにより形成されたものであることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。」と訂正する。
訂正事項e:
特許請求の範囲の請求項5を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項4】前記第2遮光膜がデータ線を兼ねることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。」と訂正する。
訂正事項f:
明細書段落【0011】を、請求項1の訂正に伴い、これと整合するため、明りょうでない記載の釈明を目的として
「【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、透明絶縁性基板上に第1遮光膜、第1層間膜、薄膜トランジスタ、第2層間膜及び第2遮光膜とをこの順に有する液晶表示装置であって、前記第1遮光膜は、薄膜トランジスタ側の上辺が基板側の下辺よりも短い台形形状となる端部テーパー形状を有し、前記下辺の端部と薄膜トランジスタのチャネル端部とを結ぶ線と該チャネル端部の法線方向との成す角が50度以上であり、且つ、前記第2遮光膜の下面端部と前記第1遮光膜の上辺のテーパー開始点とを結ぶ線と、該第2遮光膜の下面端部の法線方向との成す角が30度以上であるとともに、当該端部テーパー形状のテーパー角が、前記第1遮光膜の前記下辺に対して30〜80度であることを特徴とする液晶表示装置に関する。」と訂正する。
異議決定日 2002-02-06 
出願番号 特願平10-354845
審決分類 P 1 652・ 121- YA (G02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉野 公夫  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 土屋 知久
吉田 禎治
登録日 2000-09-08 
登録番号 特許第3107075号(P3107075)
権利者 日本電気株式会社
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 福田 修一  
代理人 福田 修一  
代理人 京本 直樹  
代理人 河合 信明  
代理人 京本 直樹  
代理人 河合 信明  

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