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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H05K |
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管理番号 | 1058097 |
異議申立番号 | 異議2001-70218 |
総通号数 | 30 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-03-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-01-18 |
確定日 | 2002-02-06 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3067785号「多層回路基板」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3067785号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3067785号の請求項1に係る発明は、平成2年8月7日に特許出願され、平成12年5月19日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人北山恵子により特許異議の申立てがなされ、取消理由の通知がされ、その指定期間内である平成13年6月19日に訂正請求がなされ、再度、取消理由の通知がされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の要旨 a.訂正事項a 特許請求の範囲を以下のとおりに訂正する。 「2層以上の回路基板から形成され、かつその回路基板が層間絶縁材を介して積層された回路基板において、層間絶縁材が硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物であり、層間絶縁材の厚みが100μm以下であることを特徴とする多層回路基板。」 b.訂正事項b 明細書2頁2行に「200μm以下、更には」とあるを削除する。 c.訂正事項c 明細書2頁8行に「材として」とあるを「材として厚みが100μm以下の」と訂正する。 d.訂正事項d 明細書27頁4行に「200μm以下、更に」とあるを削除する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 a.訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 b.訂正事項bないしdは、訂正事項aにおける特許請求の範囲の減縮に伴い、これと適合させるための訂正であり、不明瞭な記載の釈明に該当するものである。 (3)むすび したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定により従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立についての判断 (1)特許請求の範囲に記載の発明 上記2.に記載したように上記訂正が認められるから、特許請求の範囲に記載の発明(以下、「本件発明」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記2.(1)参照) 2層以上の回路基板から形成され、かつその回路基板が層間絶縁材を介して積層された回路基板において、層間絶縁材が硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物であり、層間絶縁材の厚みが100μm以下であることを特徴とする多層回路基板。 (2)引用例 a.甲第1号証:特開平1-190449号公報(以下、「引用例1」という。) 引用例1には、 (a-1)「(1)誘電率の異なる樹脂層を積層一体化してなる・・・ポリフェニレンオキサイド樹脂系多層板。」及び「(2)誘電率の異なる樹脂層を、ポリフェニレンオキサイド、ならびに架橋性ポリマーおよび/または架橋性モノマーを含有する樹脂組成物・・・から形成してなる特許請求の範囲第(1)項記載のポリフェニレンオキサイド樹脂系多層板。」(特許請求の範囲)との記載、(a-2)「・・・ポリフェニレンオキサイドは、・・・架橋性ポリマー、架橋性モノマー等の架橋剤の添加により耐熱性・・・にも優れたものとなることが期待されるものである。」(2頁右下欄12〜17行)との記載、 (a-3)低誘電率層用積層板、コア材の作製に関する「(実施例1)・・・反応器にポリフェニレンオキサイド100g、スチレンブタジエンコポリマー・・・40g、トリアリルイソシアヌレート・・・40g、ジクミルパーオキサイド2gを加え、さらにトリクロロエチレン・・・750gを加えて、均一溶液になるまで十分撹拌した。・・・得られた樹脂組成物溶液を、塗工機を用いてPETフィルム上に、・・・塗布した。・・・トリクロロエチレンを完全に除去してポリフェニレンオキサイド樹脂組成物からなるシートを得た。・・・このシートを4枚重ね合わせ、・・・完全硬化させ、積層板を作製した。」(6頁左下欄7行〜右下欄7行)との記載、(a-4)「(実施例5)・・・反応器に入れた800gのトリクロロエチレン・・・中に、ポリフェニレンオキサイド40g、スチレンブタジエンコポリマー40g、トリアリルイソシアヌレート120g、2,5-ジメチルー2,5-ジー(tertーブチルパーオキシ)ヘキシンー3・・・6gを加え、均一溶液になるまで十分撹拌した。得られた樹脂組成物溶液にガラスクロス・・・を浸漬してこの溶液を含浸させてから取り出し、・・・乾燥させ、プリプレグを得た。また、得られたプリプレグ4枚を積層し、・・・積層板を得た。」(7頁右上欄1〜16行)との記載、(a-5)「(実施例6)実施例1および実施例5の積層板と、銅箔とを195℃の温度において、・・・加圧して両面銅張積層板を作製し、次いで、通常の方法によってエッチングして回路形成して低誘電率コア材を得た。」(7頁右上欄17行〜左下欄2行)との記載、 (a-6)高誘電率層用の積層板の作製に関する「(実施例7)・・・反応器にポリフェニレンオキサイド100g、スチレンブタジエンコポリマー・・・30g、トリアリルイソシアヌレート・・・40g、2,5-ジメチルー2,5-ジー(tertーブチルパーオキシ)ヘキシンー3・・・2gを加え、さらにトリクロロエチレン・・・750gを加えて、均一溶液になるまで十分撹拌した。この後、・・・チタン酸バリウム・・・系セラミック粉末150gを加え、・・・均一に分散させた。その後、脱泡を行い、得られたPPO系樹脂組成物溶液を、塗工機を用いてPETフィルム上に、・・・塗布した。・・・トリクロロエチレンを完全に除去してPPO系樹脂組成物からなるシートを得た。・・・このシートを4枚重ね合わせ、・・・積層板を作製した。」(7頁左下欄4行〜右下欄8行)との記載、 (a-7)多層板の作製に関する「(実施例13)次に、上記実施例6で得た低誘電率のポリフェニレンオキサイド樹脂コア材と実施例7の高誘電率のポリフェニレンオキサイド樹脂接着層とを第1図に示したように積層し、190℃、・・・で・・・圧縮して硬化させ、多層板を得た。通常の方法によって、・・・第1図に示した多層配線板を得た。この多層配線板を電源回路を備えた高速度信号伝達回路に使用したところ、・・・耐熱性、寸法安定性も良好であった。」(8頁左下欄2〜13行)との記載がある。 (a-8)引用例1の上記記載及び第1図によれば、引用例1には、「ポリフェニレンオキサイド、架橋性ポリマーおよび/または架橋性モノマーを含有する樹脂組成物である高誘電率接着剤層3を介在させて、両面に回路4b、4cが設けられた低誘電率コア材2と両面に回路4a、4dが設けられた低誘電率コア材2を互いに積層し、加熱圧縮して硬化させた多層配線板であって、上記低誘電率コア材2、2がポリフェニレンオキサイド、架橋性ポリマーおよび/または架橋性モノマーを含有する樹脂組成物よりなる多層配線板。」が記載されているものと認められる。 (3).対比・判断 引用例1に記載されているものと認められる上記発明(以下、「引用例1の発明」という。)と本件発明とを対比すると、 (a-1) ポリフェニレンオキサイドはポリフェニレンエーテルと同一の樹脂であり、引用例1の発明における高誘電率接着剤層3の樹脂組成物(ポリフェニレンオキサイド、架橋性ポリマーおよび/または架橋性モノマーを含有する樹脂組成物)は、本件発明における層間絶縁材である硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物に相当するので、引用例1の発明と本件発明との両者は、2層の回路基板から形成され、かつその回路基板が層間絶縁材を介して積層された回路基板において、層間絶縁材が硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物である多層回路基板である点において一致し、 (a-2) 層間絶縁材の厚みが、本件発明においては100μm以下であるのに対し、引用例1の発明においては、層間絶縁材の厚みについて特に記載されていない点において相違している。 (b-1) 上記相違点(a-2)について検討すると、引用例1に開示された上記多層配線板においては、一方の低誘電率コア材2の両面には回路4b、4cが設けられ、また、他方の低誘電率コア材2の両面2にも回路4a、4dが設けられているばかりでなく(第1図参照)、本件発明の出願時の技術水準によれば、配線板については、回路の高速度化、小形化の要求が高まっており、これらの要求に対応するために配線板の多層化、高精度微細化が急速に進んでいたことが認められる(特開平1-215852号の従来技術に関する2頁左上欄7〜16行の記載、「電子材料」10月号(第21巻第9号)、株式会社工業調査会(昭和57年10月1日)発行、29頁右欄11〜15行参照)。 そして、膜厚の安定性、加湿に対する信頼性を確保するために、たとえば、基板上に形成された導体の厚みを35μmとし絶縁コートの厚みを導体パターン表面より50μmとし、絶縁樹脂として光硬化タイプを使用することは従来周知の技術的事項(「電子材料」10月号(第21巻第9号)、株式会社工業調査会(昭和57年10月1日)発行、42頁右欄3〜7行及び94頁〜96頁の産業基板用UVソルダレジストの項参照)である。 そうすると、多層配線板において、層間絶縁材の厚みについても、回路設計にしたがって設計されるべき設計事項であるので、回路基板を小型化ないし薄型とすべく引用例1記載の多層配線板の層間絶縁層の厚さを100μm以下とすることは、当業者が容易に想到しうることである。 (b-2) 本件発明の効果について検討しても、引用例1には、引用例1記載の多層配線板に用いるポリフェニレンオキサイドは、架橋性ポリマー、架橋性モノマー等の架橋剤の添加により耐熱性に優れたものとなること(引用例1の2頁右下欄12行〜17行参照)が記載されているばかりでなく、引用例1記載の高誘電率のポリフェニレンオキサイド、架橋性ポリマーおよび/または架橋性モノマーを含有する樹脂組成物からなる接着剤層は、本件発明における線間絶縁材料である硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物と一致するので、本件発明の高密度回路基板が耐熱耐湿絶縁特性に優れたものであれば、引用例1記載の上記多層配線板も、当然のことながら、耐熱耐湿性絶縁性に優れたものであるものであるものと推認され、本件発明が格別優れた効果を奏するものとは認められない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件発明は、引用例1の記載及び従来周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は特許法第29条第2項の規定により拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 多層回路基板 (57)【特許請求の範囲】 2層以上の回路基板から形成され、かつその回路基板が層間絶縁材を介して積層された回路基板において、層間絶縁材が硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物であり、層間絶縁材の厚みが100μm以下であることを特徴とする多層回路基板。 【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は各種電気機器に使用される多層回路基板に関するものである。 [従来の技術] 従来の多層回路基板の層間絶縁材としては、エポキシ樹脂あるいはポリイミド系樹脂が使用されているが、近年機器の薄型化により多層回路も薄型化が要求されて来ており、耐熱耐湿絶縁に関する信頼性の問題が生じている。 [発明が解決しようとする課題] 本発明は多層回路基板の耐熱耐湿絶縁の問題を解決するものであり、特に、層間絶縁層の厚みが100μm以下の多層回路基板での問題を解決しようとするものである。 [課題を解決するための手段] 上記課題を解決するための本発明の構成は特許請求の範囲に記載のとおりの多層回路基板である。 すなわち、本発明は、多層回路基板の層間絶縁材として厚みが100μm以下の硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を使用することにより、耐熱耐湿絶縁の問題が解決され、高信頼性の薄型多層回路基板を得ることが出来る。 [作用] 硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物が持つ耐熱、絶縁、吸水率、可撓性等の優れた物性により、はじめて上記問題解決が可能となる。 本発明の多層回路基板は、2層以上の回路基板を意味しており、部分的に絶縁基板の片側にしか導体が形成されていないものがあっても良い。 図面を参照して具体的に説明すると、絶縁すると、絶縁基板1の両側に導体2を形成した回路基板4を層間絶縁材3を介して積層したものである。 また、層間絶縁材として、少なくとも硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物が使用されていれば良く、他の絶縁材と細み合わせて使用しても良い。 導体としては、金、銀、ニッケル、銅、スズ、半田等何でも良いが、特に導電率及び経済的な理由で銅が好ましい。 必要に応じて形成されるオーバーコート材としても、硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物が好ましく用いられる。 硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物としては、次に示すものが使用可能である。即ち、 (a)不飽和基を含むポリフェニレンエーテル樹脂、 (b)トリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレート、および (c)難燃剤 からなる硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物であって、(a)成分と(b)成分の和100重量部を基準として(a)成分が98〜40重量部、(b)成分が2〜60重量部であり、かつ(a)と(b)成分の和100重量部を基準として(c)成分が0〜50重量部であることを特徴とする硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物である。 硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の(a)成分として用いられる、不飽和基を含むポリフェニレンエーテル樹脂とは、ポリフェニレンエーテル鎖に対して側鎖として炭素-炭素二重結合および/または炭素-炭素三重結合を含む官能基を導入したものを指す。 その好適な例としては、例えば次の一般式(I)で表わされるポリフェニレンエーテル樹脂と一般式(III)のアルケニルハライドおよび/または一般式(IV)のアルキニルハライドの反応生成物からなる樹脂であって、 [式中、mは1〜6の整数であり、Jは次式(II)で表わされる単位から実質的に構成されるボリフェニレンエーテル鎖であり、 Qはmが1のとき水素原子を表わし、mが2以上のときは一分子中に2〜6個のフェノール性水酸基を持ち、フェノール性水酸基のオルト位およびパラ位に重合不活性な置換基を有する多有能性フェノール化合物の残基を表わす。] [式中、l,kは各々独立し1〜4の整数であり、X,Yは各々独立に塩素、臭素またはヨウ素であり、R1〜R4は各々独立に水素、メチル基またはエチル基である。] Xおよび/またはY、下記アルケニル基および/またはアルキニル基がそれぞれ共有的にポリフェニレンエーテル樹脂に結合している樹脂を挙げることができる。 一般式(I)のポリフェニレンエーテル樹脂について説明すると、Qの代表的な例としては、次の4種の一般式で表わされる化合物群が挙げられる。 [式中、A1,A2は同一または典なる炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表わし、Xは脂肪族炭化水素残基およびそれらの置換誘導体、アラルキル基およびそれらの置換誘導体、酸素、硫黄、スルホニル基、カルボニル基を表わし、Yは脂肪族炭化水素残基およびそれらの置換誘導体、芳香族炭化水素残基およびそれらの置換誘導体、アラルキル基およびそれらの置換誘導体を表わし、Zは酸素、硫黄、スルホニル基、カルボニル基を表わしA2と直接結合した2つのフェニル基、A2とX、A2とY、A2とZの結合位置はすべてフェノール性水酸基のオルト位およびパラ位を示し、rは0〜4、sは2〜6の整数を表わす。] 具体例として、 等がある。 一般式(I)中のJで表わされるポリフェニレンエーテル鎖中には、該ポリフェニレンエーテル樹脂の耐熱性、熱安定性を低下させない限りにおいて以下に述べる単位または末端基のうち一種または二種以上が含まれていてもよい。 i)次の一般式で表わされる単位であって、(II)以外のもの、 [式中、R5〜R8は各々独立に水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表わす。] ii)次の一般式で表わされる単位、 [式中、R9〜R15は各々独立に水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表わし、R14,R15が同時に水素であることはない。] iii)次の一般式で表わされる末端基、 [式中、R16〜R20は各々独立に水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表わし、R21〜R23は各々独立に水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基を表わし、Arはアリール基、置換アリール基を表わす。] iv)上記式(II)および一般式(V)〜(VII)の単位または末端基に対し、スチレン、メタクリル酸メチルなどの不飽和結合を持つ重合性モノマーとグラフト重合させて得られる単位または末端基。一般式(V)の単位の例としては、 等が挙げられる。 一般式(VI)の単位の例としては、 等が挙げられる。 一般式(VII)の末端基の例としては、 等が挙げられる。 次に一般式(III)のアルケニルハライドの具体的な例を挙げると、アリルクロライド、アリルブロマイド、アリルアイオダイド、4-ブロモ-1-ブテン、トランス-および/またはシス-1-ブロモ-2-ブテン、トランス-および/またはシス-1-クロロ-2-ブテン、1-クロロ-2-メチル-2-プロペン、5-ブロモ-1-ペンテン、4-ブロモ-2-メチル-2-ブテン、6-ブロモ-1-ヘキセン、5-ブロモ-2-メチル-2-ペンテン等がある。 一般式(IV)のアルキニルハライドの具体的な例を挙げると、プロパルギルクロライド、プロパルギルブロマイド、プロパルギルアイオダイド、4-ブロモ-1-ブチン、4-ブロモ-2-ブチン、5-ブロモ-1-ペンチン、5-ブロモ-2-ペンチン、1-ヨード-2-ペンチン、1-ヨ-ド-3-ヘキシン、6-ブロモ-1-ヘキシン等がある。 これらのアルケニルハライドおよびアルキニルハライドは、一種のみあるいは二種以上をあわせて用いることができる。 本発明の(a)成分に用いられる不飽和基が導入されたポリフェニレンエーテル樹脂は、例えば特開昭64-69628号、同64-69629号、特開平1-113425号、同1-113426号、特願平1-52041号、同1-53703号に開示された方法に従い、一般式(I)のポリフェニレンエーテル樹脂を有機金属でメタル化し、続いてアルケニルハライド(III)および/またはアルキニルハライド(IV)で置換反応することにより製造することができる。 本方法に従って製造されるポリフェニレンエーテル樹脂は、少なくとも次の2種ないし3種の構造式で表わされる単位より構成される。 [式中、Rは前記アルケニル基(III´)および/またはアルキニル基(IV´)を表わす。] さらには上記の他、次の単位を含むこともある。 [式中、Zはハロゲンを表わす。] 上記一般式(VIII)に由来するハロゲンの含量は、該ポリフェニレンエーテル樹脂を基準として0以上30重量%以下の範囲であり、より好ましくは0以上20重量%以下の範囲である。 本発明に用いられる不飽和基が導入されたポリフェニレンエーテル樹脂中には、必ずしもハロゲンが含まれる必要はない。しかしながらハロゲンが特に塩素、臭素である場合には、本発明の硬化性ボリフェニレンエーテル樹脂組成物に難燃性を付与できるという効果がある。難燃性を付与する場合好ましいハロゲンの含量は1重量%以上である。しかし30重量%を越えるとポリフェニレンエーテル樹脂自体の熱安定性が低下するので好ましくない。 上記の方法で得られる不飽和基が導入されたポリフェニレンエーテル樹脂の好ましい例としては、以下に述べる樹脂とアリルブロマイド、アリルクロライド、プロパルギルブロマイド、プロパルギルクロライドの反応生成物からなる樹脂を挙げることができる。 2,6-ジメチルフェノールの単独重合で得られるポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンェーテル)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)のポリスチレングラフト共重合体、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールの共重合体、2,6-ジメチルフェノールと2,6-ジメチル-3-フェニルフェノールの共重合体、2,6-ジメ 数)の存在下で重合して得られた多官能性ポリフェニレンエーテル樹脂、例えば特開昭63-301222号、特開平1-29748号に開示されているような一般式(V)および(VI)の単位を含む共重合体、例えば特願平1-135763号に開示されているような一般式(V)の単位および一般式(VH)の末端基を含む樹脂等。 本発明の硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物に用いられる不飽和基を含むポリフェニレンエーテル樹脂の他の例としては、次のような繰り返し単位を含む樹脂を挙げることができる。 [式中、R24、R25は各々独立に水素、アルキル基、フェニル基を表わす。] 具体的な例としては、米国特許第3422062号に開示されているような2-アリル-6-メチルフェノールと、2,6-ジメチルフェノールの共重合体、米国特許第3281393号に開示されているような2,6-ジアリル-4-ブロモフェノールと2,6-ジメチル-4-ブロモフェノールの共重合体、特公昭63-47733号に開示されているような2,6-ジプレニルフェノールと2,6-ジメチルフェノールの共重合体、同じく2,6-ビス(2-ブテニル)フェノールと2,6-ジメチルフェノールの共重合体、同じく2,6-ジシンナミルフェノールと2,6-ジメチルフェノールの共重合体、特開昭58-27719号に開示されているような2-プレニル-6-メチルフェノールの単独重合体、同じく2-プレニル-6-メチルフェノールと2,6-ジメチルフェノールの共重合体、同じく2-(2-ブテニル)-6-メチルフェノールの単独重合体、同じく2-(2-ブテニル)-6-メチルフェノールと2,6-ジメチルフェノールの共重合体、同じく2-シンナミル-6-メチルフェノールの単独重合体、同じく2-シンナミル-6-メチルフェノールと2,6-ジメチルフェノールの共重合体等が挙げられる。 また米国特許第4634742号に開示されたポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)の2,6位のメチル基をビニル基に置換して得られる樹脂、同じくポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)のフェニル基の3,5位にビニル基を導入して得られる樹脂も本発明に用いられる不飽和基を含むポリフェニレンエーテル樹脂の好ましい例の一つである。 本発明において用いられる不飽和基を含むポリフェニレンエーテル樹脂の不飽和基の含量の範囲は、次式の定義に従った場合0.1モル%以上100モル%以下、より好ましくは0.5モル%以上50モル%以下が好適である。 不飽和基の含量が0.1モル%を下まわると硬化後の耐薬品性の改善が不十分となるので好ましくない。逆に100モル%を越えると硬化後において非常に脆くなるので好ましくない。 また本発明において用いられる不飽和基が導入されたポリフェニレンエーテル樹脂の分子量については、30℃、0.5g/dlのクロロホルム溶液で測定した粘度数ηsp/cが0.1〜1.0の範囲にあるものが良好に使用できる。 本発明の硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の(b)成分として用いられるトリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレートとは、それぞれ次の構造式で表される3官能性モノマーである。 本発明を実施する上においては、トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルシアヌレートはそれぞれ単独で用いられるだけでなく、両者を任意の割合で混合して使用することが可能である。 本発明において、トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルシアヌレートは、可塑剤ならびに架橋剤としてその効果を発揮する。すなわち、プレス時の樹脂流れの向上と架橋密度の向上をもたらす。 本発明の(c)成分として用いられる難燃剤としては、リン系難燃剤、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤を使用することができる。これらの詳細については、例えば西沢仁著「ポリマーの難燃化」(大成社、昭和62年)を参照のこと。 以上説明した(a)〜(c)の3つの成分のうち(a)成分と(b)成分の配合割合は、両者の和100重量部を規準として(a)成分が98〜40重量部、(b)成分が2〜60重量部であり、より好ましくは(a)成分が95〜50重量部、(b)成分が5〜50重量部の範囲である。 (b)成分が2重量部未満では耐薬品の品性の改善が不十分であり好ましくない。逆に60重量部を越えると誘電特性、難燃焼性、吸湿特性が低下し、また硬化後において非常に脆い材料となるので好ましくない。 また、(c)成分の配合割合は、(a)〜(b)成分の和100重量部を基準として、(c)成分が0〜50重量部である。50重量部を越えると接着性を損うので好ましくない。 また、下記複合材料を使用する事も可能である。即ち、(a)不飽和基を含むポリフェニレンエーテル樹脂、(b)トリアリルイソシアヌレートエーテルおよび/またはトリアリルシアヌレート、および(d)基材からなる硬化性ポリフェニレンエーテル・樹脂組成物であって、(a)成分と(b)成分の和100重量部を基準として(a)成分が98〜40重量部、(b)成分が2〜60重量部であり、かつ(a)〜(d)成分の和100重量部を基準として(a)+(b)成分が95〜10重量部、(d)成分が5〜90重量部であることを特徴とする硬化性ポリフェニレンエーテル系複合材料である。 本発明に用いられる(d)成分の基材としては、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマットなどの各種ガラス布またはガラス不織布、セラミック繊維布;アスベスト布、金属繊維布およびその他合成もしくは天然の無機繊維布;ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維などの合成繊維から得られる織布または不織布;綿布、麻布、フェルトなどの天然繊維布;カーボン繊維布;クラフト紙、コットン紙、紙-ガラス況織紙などの天然セルロース系布などが、それぞれ単独で、あるいは2種以上併せて用いられる。 本発明の硬化性複合材料における基材の占める割合は、硬化性複合材料100重量部を基準として5〜90重量部、より好ましくは10〜80重量部、さらに好ましくは20〜70重量部の範囲である。基材が5重量部より少なくなると複合材料の硬化後の寸法安定性や強度が不十分であり、また基材が90重量%より多くなると複合材料の誘電特性や難燃性が劣り好ましくない。 本発明の複合材料には、必要に応じて樹脂と基材の界面における接着性を改善する目的でカップリング剤を用いることができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤等一般のものが使用できる。 [実施例] 以下実施例および比較例によって本発明を具体的に説明する。 導体幅150μm、導体間隔150μmを有する銅導体を、表1に示す層間絶縁材で貼り合わせて、2層回路基板を作製した結果を、表1にまとめた。 *・アリル化ポリフェニレンエーテル 0.5g/dlのクロロホルム溶液で測定した粘度数ηsp/cが0.6アリル化度13% 70部 ・トリアリルイソシアヌレート 30部 ・2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキセン-3からなる硬化物 3部 [発明の効果] 以上説明したように、硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を、層間絶縁材として使用する事により、層間絶縁層厚が100μm以下においても、耐熱耐湿絶縁特性に優れた多層基板を得る事が可能となり、高信頼性の薄型多層基板が得られる。 【図面の簡単な説明】 図面は、本発明の多層回路基板の構成を示す断面の模式図である。 1…絶縁基板、 2…導体、 3…層間絶縁材、 4…回路基板 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 a.訂正事項a 特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲を以下のとおりに訂正する。「2層以上の回路基板から形成され、かつその回路基板が層間絶縁材を介して積層された回路基板において、層間絶縁材が硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物であり、層間絶縁材の厚みが100μm以下であることを特徴とする多層回路基板。」 b.訂正事項b 明細書2頁2行に「200μm以下、更には」とあるを削除する。 c.訂正事項c 明細書2頁8行に「材として」とあるを「材として厚みが100μm以下の」と訂正する。 d.訂正事項d 明細書27頁4行に「200μm以下、更には」とあるを削除する。 e.訂正事項bないしdは、訂正事項aにおける特許請求の範囲の減縮に伴い、これと適合させるための訂正であり、不明瞭な記載の釈明を目的とするものである。 |
異議決定日 | 2001-12-13 |
出願番号 | 特願平2-207590 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(H05K)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 青木 俊明、中川 隆司 |
特許庁審判長 |
粟津 憲一 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 井口 嘉和 |
登録日 | 2000-05-19 |
登録番号 | 特許第3067785号(P3067785) |
権利者 | 旭化成株式会社 |
発明の名称 | 多層回路基板 |
代理人 | 小松 秀岳 |
代理人 | 旭 宏 |
代理人 | 小松 秀岳 |
代理人 | 旭 宏 |
代理人 | 加々美 紀雄 |
代理人 | 加々美 紀雄 |