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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F15B
管理番号 1058115
異議申立番号 異議2001-71724  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-06-14 
確定日 2002-03-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3118963号「シリンダアクチュエータ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3118963号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3118963号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る発明についての出願は、平成4年6月30日に特許出願され、平成12年10月13日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について社団法人日本フルードパワー工業会より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年12月25日に訂正請求がなされるとともに特許異議意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1) 訂正の内容
a 訂正事項a
本件特許明細書の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】 内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプと、
上記シリンダパイプの一方端部を収容するボディー側収容凹部を有するシリンダボディーと、
上記シリンダパイプの他方端部を収容するキャップ側収容凹部を有するシリンダキャップとを具備し、
上記シリンダボディーに上記シリンダキャップの周縁部をボルト締めして、上記シリンダボディーと上記シリンダキャップとを互いに組み付けるとともに、上記シリンダパイプの内周面、上記ボディー側収容凹部の底面、および上記キャップ側収容凹部の底面によってシリンダ室を画成して成ることを特徴とするシリンダアクチュエータ。」を、
「【請求項1】 内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプと、
上記シリンダパイプの一方端部を収容するボディー側収容凹部を有するシリンダボディーと、
上記シリンダパイプの他方端部を収容するキャップ側収容凹部を有し、周縁部のシリンダ軸方向肉厚を上記キャップ側収容凹部の底面よりも厚く形成し、上記シリンダボディーに締め付ける際の外力に耐え得る肉厚としたシリンダキャップとを具備し、
上記シリンダボディーに上記シリンダキャップの周縁部をボルト締めして、上記シリンダボディーと上記シリンダキャップとを互いに組み付けるとともに、上記シリンダパイプの内周面、上記ボディー側収容凹部の底面、および上記キャップ側収容凹部の底面によってシリンダ室を画成して成ることを特徴とするシリンダアクチュエータ。」と訂正する。

b 訂正事項b:
本件特許明細書の段落【0004】の記載
「【課題を解決するための手段】そこで、本発明では、シリンダボディーにボディー側収容凹部を設ける一方、シリンダキャップにキャップ側収容凹部を設け、内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプの一方端部をボディー側収容凹部に収容するとともに、シリンダパイプの他方端部をキャップ側収容凹部に収容した状態で、シリンダボディーにシリンダキャップの周縁部をボルト締めして組み付け、シリンダパイプの内周面と、ボディー側収容凹部の底面と、キャップ側収容凹部の底面とからシリンダ室を画成することによって上記目的を達成している。」を、
「【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、シリンダボディーにボディー側収容凹部を設ける一方、シリンダキャップにキャップ側収容凹部を設け、シリンダキャップの周縁部のシリンダ軸方向肉厚をキャップ側収容凹部の底面よりも厚く形成して、シリンダボディーに締め付ける際の外力に耐え得る肉厚とし、内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプの一方端部をボディー側収容凹部に収容するとともに、シリンダパイプの他方端部をキャップ側収容凹部に収容した状態で、シリンダボディーにシリンダキャップの周縁部をボルト締めして組み付け、シリンダパイプの内周面と、ボディー側収容凹部の底面と、キャップ側収容凹部の底面とからシリンダ室を画成することによって上記目的を達成している。」と訂正する。

c 訂正事項c:
本件特許明細書の段落【0033】の記載
「【発明の効果】以上、詳述した如く、本発明に関わるシリンダアクチュエータでは、シリンダボディーにボディー側収容凹部を設ける一方、シリンダキャップにキャップ側収容凹部を設け、内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプの一方端部をボディー側収容凹部に収容するとともに、シリンダパイプの他方端部をキャップ側収容凹部に収容した状態で、シリンダボディーにシリンダキャップの周縁部をボルト締めして組み付け、シリンダパイプの内周面と、ボディー側収容凹部の底面と、キャップ側収容凹部の底面とからシリンダ室を画成したことによって、シリンダ室に臨んでいるシリンダキャップの中央部の肉厚を可及的に小さく設定しても、シリンダボディーに締め付けられる周縁部には十分な肉厚を確保し得るために、シリンダボディーとシリンダキャップとを組み付けた状態における、軸方向の外形寸法を小さくすることができ、もってシリンダアクチュエータを可及的に小型化することが可能となる。また、上記構成によれば、仕上げ加工の施されたシリンダパイプの内周面によりシリンダ室の内周面が構成されるので、シリンダボディーやシリンダキャプに形成された凹部の内周面に対して仕上げ加工を施す必要がなく、もってシリンダアクチュエータにおける製造工程の単純化および製造コストの低減を達成することができる。」を、
「【発明の効果】以上、詳述した如く、本発明に関わるシリンダアクチュエータでは、シリンダボディーにボディー側収容凹部を設ける一方、シリンダキャップにキャップ側収容凹部を設け、シリンダキャップの周縁部のシリンダ軸方向肉厚をキャップ収容凹部の底面よりも厚く形成して、シリンダボディーに締め付ける際の外力に耐え得る肉厚とし、内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプの一方端部をボディー側収容凹部に収容するとともに、シリンダパイプの他方端部をキャップ側収容凹部に収容した状態で、シリンダボディーにシリンダキャップの周縁部をボルト締めして組み付け、シリンダパイプの内周面と、ボディー側収容凹部の底面と、キャップ側収容凹部の底面とからシリンダ室を画成したことによって、シリンダ室に臨んでいるシリンダキャップの中央部の肉厚を可及的に小さく設定しても、シリンダボディーに締め付けられる周縁部には十分な肉厚を確保し得るために、シリンダボディーとシリンダキャップとを組み付けた状態における、軸方向の外形寸法を小さくすることができ、もってシリンダアクチュエータを可及的に小型化することが可能となる。また、上記構成によれば、仕上げ加工の施されたシリンダパイプの内周面によりシリンダ室の内周面が構成されるので、シリンダボディーやシリンダキャップに形成された凹部の内周面に対して仕上げ加工を施す必要がなく、もってシリンダアクチュエータにおける製造工程の単純化および製造コストの低減を達成することができる。」と訂正する。

(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1に記載されていた事項に本件特許明細書に記載されていた事項(例えば、特許掲載公報第3頁第6欄第7行〜第25行参照。)を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
また、訂正事項b及びcは、訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、訂正事項aと同様に、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3) むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(1) 特許異議申立てされた取消理由の概要
本件特許発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いてその発明に属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規程により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号の規程により取り消されるべきである。

(2) 提示された甲号各証及びその記載内容
甲第1号証:特公昭47-48806号公報
甲第2号証:実願平2-95588号(実開平4-52659号)
のマイクロフィルム
甲第3号証:実願昭63-133266号(実開平2-53504号)
のマイクロフィルム

(2-1) 甲第1号証の記載内容
圧縮空気を動力源とする空気動工具、エヤーモーター等の空気機械のためのエヤーシリンダーの改良に関するものである。

(2-1-1) 特許請求の範囲
「1 シリンダー1内のシリンダー室2を、この内において軸方向に往復動可能なピストン5によって二つの室6,7に区画し、一方の室に圧縮空気が供給されることによってピストン5を他方の室に向つて運動せしめ、前記ピストン5はシリンダ1を貫通して軸方向に延びるピストンロット9を有しておるエヤーシリンダーにおいて、前記シリンダー室2の内周壁にライナー3をピストン5の外周壁に少なくとも一つのピストンリング8を嵌着せしめ、シリンダー室2の軸方向の側壁に環状のシール4を装着せしめたことを特徴とするエヤーシリンダー。」
(2-1-2) 第1頁第2欄第15行〜第22行、第1図及び第2図
「実施例 1
実施例1を示す第1,2図において1はシリンダー本体であつて二つの円筒状の部材1a,1bにより構成される。それぞれの部材1a,1bは内部に凹部を有し該凹部はそれぞれ外方に向つて開口している。そうしてこの開口部を互に対向させて両部材を螺着せしめることによつてシリンダー室2が形成される。該シリンダー室2の内周壁にはライナー3が定着される。」

第1図、第2図を参照しつつ、これらの記載事項を検討するに、当該甲第1号証には、
「ライナー3と、
上記ライナー3の一方端部を収容する凹部を有する円筒状の部材1aと、
上記ライナー3の他方端部を収容する凹部を有する円筒状の部材1bとを具備し、
上記円筒状の部材1aに上記円筒状の部材1bを螺着して、上記円筒状の部材1a,1bを組み付けるとともに、ライナ3の内周面、円筒状部材1aの収容凹部の底面、及び円筒状部材1bの収容凹部の底面によってシリンダ室2を画成したエヤーシリンダー」
が記載されている。
以下、「甲第1号証記載の発明」という。

(2-2) 甲第2号証の記載内容
流体圧シリンダーに関するものである。

(2-2-1) 実用新案登録請求の範囲
「内周面に強化樹脂が被着されたシリンダーと、外周面に強化樹脂が被着されたピストンと、外周面に強化樹脂が被着されたピストンロッドとを具えたことを特徴とする流体圧シリンダー。」

(2-2-2) 第5頁第2行〜第6頁第3行及び第1図
「第1図において、金属製で比較的薄い肉厚でできたチューブ外筒11内に自己潤滑性を有するとともに強度が比較的大きい樹脂又は強化繊維入樹脂製のチューブ内筒12を圧入又はチューブ外筒を温ためて焼ばめする。
その中にロッド14にナット15で嵌着された金属製又は強化樹脂製ピストン13を挿入し、ロッド14の外周には強化樹脂系のシリンダーカバー16が外挿され、シリンダーカバー16はチューブ外筒11にボルト17を介して取付けられる。
このような構造によれば、ロッド14にかかる横荷重Wを支承する摺動支承面としてピストン外周面PS、シリンダーカバー内周面PKがそれぞれチューブ内筒12,ロッド14に圧接的に形成されており、各チューブ、内筒12ピストン13間のすきまδ1、ロッド14,シリンダーカバー16間のすきまδ2は微小で済み、ピストン外周面PS、シリンダーカバー内周面PK部にピストンシール18,ロッドシール19が挿入されることで、流体圧P1、P2を保つ。」

第1図を参照しつつ、これらの記載事項を検討するに、当該甲第2号証には、
「チューブ内筒12を収容したチューブ外筒11とシリンダーカバー16とを組み付けるに際して、シリンダーカバー16の周縁部をボルト17によりボルト締めした構成」
が記載されている。

また、第1図及び第2図として示される実施例について検討するに、
「チューブ内筒12と、
上記チューブ内筒12の一方端部を収容する収容凹部を有するチューブ外筒11と、
上記チューブ内筒12の他方端部においてチューブ内筒12の内面に嵌合する突出部分を有し、周縁部においてチューブ外筒11に締着されるシリンダカバー16とを具備し、
上記チューブ外筒11に上記シリンダカバー16の周縁部をボルト17でボルト締めして、上記チューブ外筒11と上記シリンダカバー16とを互いに組み付けるとともに、上記チューブ内筒12の内周面、上記チューブ外筒11の収容凹部の底面、および上記シリンダカバー16の底面によってシリンダ室を画成した流体圧シリンダーの構造」
が把握できる。

(2-3) 甲第3号証の記載内容
エアシリンダのシリンダ本体構造に関するものである。

(2-3-1) 第3頁第19行〜第4頁第19行
「[考案が解決しようとする課題]
しかしながら、前述の如きエアシリンダのシリンダ本体2は、アルミニウム合金鋳物で作られ削り出しにより内部側壁摺動面の仕上げが行われているため、ブローホールやピンホールといった表面欠陥がどうしてもできてしまい、前記摺動面にメッキをする場合にもメッキが付着しにくく、又付着しても剥離しやすくなって、パッキン4が摩耗を起こしやすかった。
本考案は、斯かる実情に鑑み、シリンダ本体の内部側壁摺動面の表面欠陥に起因するパッキンの摩耗防止を図り得るエアシリンダのシリンダ本体構造を提供しようとするものである。
[課題を解決するための手段]
本考案はシリンダ本体にピストンをパッキンを介して摺動自在に嵌挿したエアシリンダに於いて、前記シリンダ本体内部に、パイプ状の素材から成り内面を研摩仕上げしたライナを、該ライナ内面に沿い前記ピストンがパッキンを介して摺動自在となるよう、嵌着したことを特徴とするものである。」

(2-3-2) 第5頁第13行〜第6頁第19行及び第1図
「第1図に示す如く、シリンダ本体2内部に、鋳造以外のパイプ状の素材から成り内面を研摩仕上げしたライナ1を嵌着し、該ライナ1内面に沿ってピストン3がパッキン4を介し摺動し得るよう構成する。
上述の如く構成したので、エア供給孔9よりシリンダヘッド側室10にエアが供給されると、リターンスプリング8の付勢力に抗してピストン3が第1図中左方へ移動する一方、前記エア供給孔9からのシリンダヘッド側室10へのエアの供給が停止されると、リターンスプリング8の付勢力にてピストン3が元の位置に復帰するが、この時、前記ピストン3と共にパッキン4は、研摩仕上げされたライナ1内面に沿って摺動することになり、その際の摺動抵抗は、鋳造による表面欠陥を有するシリンダ本体2内部側壁面に対しピストン3と共にパッキン4が摺動する場合に比べ、大幅に低減され、パッキン4は磨耗の度合いが低くなり、エアシリンダの寿命も延長する。」

第1図を参照しつつ、これらの記載事項を検討するに、当該甲第3号証には、
「シリンダ本体2内部に収容されるパイプ状の素材から成るライナ1に関して、ライナ1内面に沿いピストン3が摺動自在となるようにすべく、ライナ1の内面を研摩仕上げしたものとする」ことが記載されている。

また、第1図として示される実施例について検討するに、
「ライナ1と、
上記ライナ1の一方端部を収容する収容凹部を有するシリンダ本体2と、
上記ライナ1の他方端部においてライナ1の内面に嵌合する突出部分を有し、周縁部がシリンダ本体2に締着されるシリンダヘッドカバー7とを具備し、
上記シリンダ本体2に上記シリンダヘッドカバー7の周縁部を締着して、上記シリンダ本体2と上記シリンダヘッドカバー7とを互いに組み付けるとともに、上記ライナ1の内周面、上記シリンダ本体2の収容凹部の底面、および上記シリンダヘッドカバー7の底面によってシリンダ室を画成したエアシリンダのシリンダ本体構造」
が把握できる。

(3) 判断
本件請求項1に係る発明は、前記のように訂正が認められるものであることからして、前記「2.訂正の適否についての判断」「(1) 訂正の内容」「a 訂正事項a」に掲げた次のとおりのものである。
「【請求項1】 内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプと、
上記シリンダパイプの一方端部を収容するボディー側収容凹部を有するシリンダボディーと、
上記シリンダパイプの他方端部を収容するキャップ側収容凹部を有し、周縁部のシリンダ軸方向肉厚を上記キャップ側収容凹部の底面よりも厚く形成し、上記シリンダボディーに締め付ける際の外力に耐え得る肉厚としたシリンダキャップとを具備し、
上記シリンダボディーに上記シリンダキャップの周縁部をボルト締めして、上記シリンダボディーと上記シリンダキャップとを互いに組み付けるとともに、上記シリンダパイプの内周面、上記ボディー側収容凹部の底面、および上記キャップ側収容凹部の底面によってシリンダ室を画成して成ることを特徴とするシリンダアクチュエータ。」

そこで、本件請求項1に係る発明と、甲第1号証記載の発明とを対比すると、両者は、いずれもシリンダアクチュエータに係るものであり、
甲第1号証記載の発明の「ライナ」は本件請求項1に係る発明の「シリンダパイプ」に、以下同様に、
「円筒状の部材1a」は、「ボディー」に、
「円筒状の部材1b」は、「キャップ」に、
「円筒状の部材1aの凹部」は、「ボディー側収容凹部」に、
「円筒状の部材1bの凹部」は、「キャップ側収容凹部」に、
それぞれ相当している。
したがって、本件請求項1に係る発明と、甲第1号証記載の発明とは、
シリンダパイプと、
上記シリンダパイプの一方端部を収容するボディー側収容凹部を有するシリンダボディーと、
上記シリンダパイプの他方端部を収容するキャップ側収容凹部を有するシリンダキャップとを具備し、
上記シリンダボディーと上記シリンダキャップとを互いに組み付けるとともに、上記シリンダパイプの内周面、上記ボディー側収容凹部の底面、および上記キャップ側収容凹部の底面によってシリンダ室を画成して成るシリンダアクチュエータ、
である点で一致している。
他方、本件請求項1に係る発明と、甲第1号証記載の発明とは、以下の点において相違している。

(相違点1)
本件請求項1に係る発明におけるシリンダパイプは、「内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプ」と特定されるのに対して、
甲第1号証記載の発明のものにおいては、このような特定がない点。

(相違点2)
本件請求項1に係る発明におけるシリンダは、「上記シリンダボディーに上記シリンダキャップの周縁部をボルト締めして、上記シリンダボディーと上記シリンダキャップとを互いに組み付ける」と特定されているのに対して、
甲第1号証記載の発明のものにおけるシリンダは、「上記シリンダボディーと上記シリンダキャップとを互いに組み付ける」ものではあるものの、螺着により組み付けるものである点。

(相違点3)
本件請求項1に係る発明におけるシリンダキャップは、
「周縁部のシリンダ軸方向肉厚を上記キャップ側収容凹部の底面よりも厚く形成し、上記シリンダボディーに締め付ける際の外力に耐え得る肉厚としたシリンダキャップ」と特定されるのに対して、
甲第1号証記載の発明のものにおいては、このような特定がない点。

まず、相違点1について検討する。
シリンダパイプの内周面にピストンが摺動接触することは当業者が当然に認識するところであり、前記したように甲第3号証には、シリンダチューブに相当するライナ1内面に沿いピストン3が摺動自在となるようにすべく、ライナ1の内面を研摩仕上げしたものとすることが記載されているように、その摺動接触面を形成するシリンダチューブ内周面に研摩仕上げ加工を施す必要性は技術常識に属する。
してみれば、本件請求項1に係る発明の相違点1により得られる作用効果も、格別なものとはいえない。

次に、相違点2及び相違点3について検討する。
確かに、甲第2号証において、シリンダ本体を組み付けるに際してボルト締めを行うものが記載されている。
よって、相違点2に掲げた組み付け手法としてのボルト締め自体に関しては、当業者が容易になし得た程度のものといえる。
しかしながら、本件請求項1に係る発明は、相違点2に加えて、相違点3に摘記したシリンダキャップの構成をも備えるものである。
そして、本件請求項1に係る発明は、このように構成されたことで、本件特許明細書に記載される如く、シリンダキャップの周縁部に、シリンダキャップを締め付ける際の外力に耐え得る十分な肉厚を確保することができ、もって締め付け力に起因する割れ等の不都合を招来することなく、シリンダアクチュエータの軸方向の寸法を短く設定することができる、という格別な作用効果を得られるものである。

次に、甲第2号証あるいは甲第3号証に記載される構成あるいはそれに記載される実施例から把握できるシリンダー構成についても検討する。
前記「(2-2) 甲第2号証の記載内容」あるいは「(2-3) 甲第3号証の記載内容」に示したように、甲第2号証に記載される構成あるいはそれに記載される実施例から把握できるシリンダー構造には、本件請求項1に係る発明で採用している相違点2のボルト締めの技術思想は記載されるものの、相違点3に係るシリンダーキャップ構造は記載も示唆もされておらず、一方、前記甲第3号証に記載される構成あるいはそれに記載される実施例から把握できるシリンダー構造においても、相違点3のシリンダーキャップ構造は記載も示唆もされていない。

したがって、本件請求項1に係る発明は、前記相違点3に係るシリンダキャップ周縁部の構成を特定したことで、相違点2に係るボルト締めが良好に達成し得るものであって、これら相違点2,3が相俟って、本件特許明細書に記載の作用効果を奏するものであるから、前記甲号各証に記載されるいずれの発明からも導き出し得ないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める制令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規程により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シリンダアクチュエータ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプと、
上記シリンダパイプの一方端部を収容するボディー側収容凹部を有するシリンダボディーと、
上記シリンダパイプの他方端部を収容するキャップ側収容凹部を有し、周縁部のシリンダ軸方向肉厚を上記キャップ側収容凹部の底面よりも厚く形成し、上記シリンダボディーに締め付ける際の外力に耐え得る肉厚としたシリンダキャップとを具備し、
上記シリンダボディーに上記シリンダキャップの周縁部をボルト締めして、上記シリンダボディーと上記シリンダキャップとを互いに組み付けるとともに、上記シリンダパイプの内周面、上記ボディー側収容凹部の底面、および上記キャップ側収容凹部の底面によってシリンダ室を画成して成ることを特徴とするシリンダアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、シリンダアクチュエータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シリンダアクチュエータを駆動源とする、図10に示す従来のワーククランプ装置Aは、装置本体を構成するシリンダボディーBと、該シリンダボディーBに組付けられたシリンダキャップCとを具備し、上記シリンダボディーBには凹部Baが設けられている一方、上記シリンダキャップCにはボス部Caが形成されている。上記シリンダボディーBの凹部Baに、シリンダキャップCのボス部Caが嵌合することによってシリンダ室Dが画成されており、上記シリンダボディーBおよびシリンダキャップCには、それぞれ上記シリンダ室Dに連通するオイル通路Bbおよびオイル通路Cbが形成されている。また、上記シリンダ室DにはピストンEが収容されているとともに、該ピストンEにはシリンダボディーBを貫通して上方に延びるピストンロッドFが設けられており、上記シリンダボディーB、シリンダキャップC、およびピストンEとピストンロッドF等によって、シリンダアクチュエータGが構成されている。
一方、ピストンロッドFの端部にはクランプアームHがピン結合されており、該クランプアームHは上記ピストンロッドFの伸張縮退動作に基づいて、シリンダボディーBに支承されているアームIを介して揺動し、もって図示していないワークに対するクランプ作業あるいはアンタランプ作業が実施される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のシリンダアクチュエータGでは、シリンダボディーBにシリンダキャップCをボルトJによって締め付けた際に、シリンダキャップCのフランジ部Ccに割れを生じることのないよう、上記フランジ部Ccの肉厚を十分に大きく設定しておく必要がある。このため、シリンダボディーBとシリンダキャップCとを互いに組み付けた状態での軸方向における外形寸法が大きなものとなり、もってシリンダアクチュエータ全体の大型化を招来する不都合があった。また、上記従来のシリンダアクチュエータGでは、シリンダボディーBに形成された凹部Baの内周面がシリンダ室Dを画成しているため、ピストンEに嵌着されたOリングKの不用意な摩耗を防止するべく、上記凹部Baの内周面に対してホーニング加工等の精度の高い仕上げ加工を施す必要があり、これによって製造工程の煩雑化や製造コストの増大を招いていた。
本発明は、上記実状に鑑みて、可及的な小型化を達成することが可能であり、併せて製造工程の単純化および製造コストの低減を達成し得るシリンダアクチュエータを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明では、シリンダボディーにボディー側収容凹部を設ける一方、シリンダキャップにキャップ側収容凹部を設け、シリンダキャップの周縁部のシリンダ軸方向肉厚をキャップ側収容凹部の底面よりも厚く形成して、シリンダボディーに締め付ける際の外力に耐え得る肉厚とし、内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプの一方端部をボディー側収容凹部に収容するとともに、シリンダパイプの他方端部をキャップ側収容凹部に収容した状態で、シリンダボディーにシリンダキャップの周縁部をボルト締めして組み付け、シリンダパイプの内周面と、ボディー側収容凹部の底面と、キャップ側収容凹部の底面とからシリンダ室を画成することによって上記目的を達成している。
【0005】
【作用】
上記構成によれば、シリンダ室に臨んでいるシリンダキャップの中央部の肉厚を可及的に小さく設定しても、上記シリンダボディーに締め付けられる周縁部には十分な肉厚を確保することができる。また上記構成によれば、仕上げ加工の施されたシリンダパイプの内周面によりシリンダ室の内周面が構成されるので、シリンダボディーに形成された凹部の内周面に対して高精度の仕上げ加工を施す必要がない。
【0006】
【実施例】
以下、一実施例を示す図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。図1ないし図4に、本発明に関わるシリンダアクチュエータを、工作機械の治具におけるワーククランプ機構の駆動源に採用した例を示す。
【0007】
上記治具1は作業フロアに固定されたベース10と、該ベース10に対して上下動自在に設けられたフレーム20とを具備しており、上記ベース10には、基準座11、パレット位置決めピン12、およびパレット位置決めラフガイド13等が設けられているとともに、パレット搬入出装置30が設けられている。
【0008】
このパレット搬入出装置30は、図1および図4中の左右方向に沿って前後進可能に設けられ、パレット係止ピン31を有するブラケット32と、該ブラケット32を移動動作させるシリンダアクチュエータ33とを具備し、上記シリンダアクチュエータ33の伸張縮退動作に基づいて、ワークパレット60を治具1の外部から上記ベース10上へ引き入れ、かつ該ベース10上から払い出す作業を実施する。
【0009】
一方、上記フレーム20の左右側部には、各々ガイドブロック21L,21Rが取り付けられており、上記ガイドブロック21Lおよびガイドブロック21Rには、それぞれ複数個のパレットガイドローラ22,22,…が支承されているとともに、クランプピース23Lおよびクランプピース23Rが取り付けられている。
【0010】
また、上記フレーム20は、下方に延設されたガイドロッド24,24,…を介して、上記ベース10に上下移動自在に支承されているとともに、上記ベース10に固設されたシリンダアクチュエータ50に連結されており、上記フレーム20は、このシリンダアクチュエータ50の動作に基づいて上下動作される。
【0011】
図2に明示するように、上記シリンダアクチュエータ50は、上記ベース10に固設されたシリンダボディー51と、該シリンダボディー51に組み付けられたシリンダキャップ52と、シリンダパイプ53とを有しており、上記シリンダボディー51およびシリンダキャップ52には、各々ボディー側収容凹部51Aおよびキャップ側収容凹部52Aが形成されている。
【0012】
上記シリンダボディー51およびシリンダキャップ52は、上記ボディー側収容凹部51Aにシリンダパイプ53の上方端部(一方端部)53Uを嵌入するとともに、上記キャップ側収容凹部52Aにシリンダパイプ53の下方端部(他方端部)53Lを嵌入した状態で、シリンダボディー51にシリンダキャップ52の周縁部をボルト締めすることによって互いに組み付けられている。
【0013】
また、上記シリンダパイプ53の内周面53aにはホーニング加工が施されており、該シリンダパイプ53の内周面53aと、上記ボディー側収容凹部51Aの底面51a、および上記キャップ側収容凹部52Aの底面52aとによって、シリンダ室50Aが画成されている。
【0014】
上記シリンダ室50Aには、ピストン54が収容されているとともに、該ピストン54にはシリンダボディー51を貫通して上方に伸びるピストンロッド55が設けられており、上記ピストンロッド55の先端部(図中の上端部)は、図1および図3に示す如く上記フレーム20の中央部に固設されている。
【0015】
また、上記シリンダボディー51およびシリンダキャップ52には、それぞれ上記シリンダ室50Aに連通するオイル通路51Bおよびオイル通路52Bが形成されており、上記各オイル通路51B,52Bには、各々図示していないオイル配管が接続されている。
【0016】
さらに図2に示すように、上記シリンダパイプ53の外周面と、上記ボディー側収容凹部51Aおよび上記キャップ側収容凹部52Aとの間には、各々Oリング56a,56bが介装されているとともに、上記ピストンロッド55とシリンダボディー51との間には、Oリング56cとダストシール57とが介装されている。
【0017】
上記オイル通路51Bからシリンダ室50Aに作動油が供給されると、ピストン54が下動してロッド55が縮退動作することにより上記フレーム20が下降する。このとき、オイル通路51Bからの作動油は、ピストン54に嵌着しているOリング56dと、Oリング56aおよびOリング56cとによってシールされる。一方、上記オイル通路52Bからシリンダ室50Aに作動油が供給されると、ピストン54が上動してロッド55が伸張動作することにより上記フレーム20が上昇する。このとき、オイル通路52Bからの作動油は、上記Oリング56dとOリング56bとによってシールされることとなる。
【0018】
ところで、上記シリンダパイプ53は、内周面53aに予めホーニング加工が施された購入品を、その外径寸法および軸方向の長さを仕様に合わせて加工するとともに、外周面にOリング収容溝を形成することによって構成されている。
【0019】
一方、上記シリンダボディー51におけるシリンダボディー側収容凹部51Aの内周面は、上記Oリング56aの当接する極く狭い範囲のみに対して、表面粗さを小さく加工すれば良く、その他の部位は加工精度の低い逃がし加工で十分である。また、上記シリンダキャップ52におけるシリンダキャップ側収容凹部52Aの内周面においても、Oリング56bの当接する部分のみに対して、表面粗さを小さく加工すれば良い。
【0020】
すなわち、上述したシリンダアクチュエータ50によれば、仕上げ加工の施されたシリンダパイプ53の内周面53aによって、シリンダ室50Aの内周面が構成されるので、シリンダボディー51およびシリンダキャップ52に形成された各凹部の内周面に対して高精度の仕上げ加工を施す必要がない。
【0021】
また、上述したように上記シリンダアクチュエータ50におけるシリンダキャップ52には、シリンダパイプ53の下方端部53Lを収容してシリンダ室50Aを画成するべく収容凹部52Aを形成しているので、図1ないし図3に示すように、上記シリンダキャップ52の周縁部は、上記シリンダ室50Aの油圧に耐えるべく十分な肉厚を持って形成された中央部分よりも更に厚い肉厚寸法を有している。
【0022】
このため、上記シリンダキャップ52における中央部の肉厚を可及的に小さく設定しても、上記シリンダキャップ52の周縁部には、シリンダキャップ52をシリンダボディー51に締め付ける際の外力、さらにはシリンダキャップ52のオイル通路52Bにオイル配管(図示せず)を締め付ける際の外力に耐え得る十分な肉厚を確保することができ、もって締め付け力に起因する割れ等の不都合を招来することなく、上記シリンダアクチュエータ50の軸方向の寸法、すなわち上記治具1における上下方向の寸法を低く設定することができる。
【0023】
上述した如き構成の治具1では、図1に示す如くシリンダアクチュエータ50の作動ロッド55を伸張させ、フレーム20を上動位置に占位させた状態においてワークパレット60をパレット搬入出装置30によって搬入し、こののちシリンダアクチュエータ50の作動ロッド55を縮退させてフレーム20を下降させることにより、図3に示すようにワークパレット60をパレットクランプピース23L,23Rにより基準座11,11,…に押圧し、もって上記ワークパレット60に載置されたワーク(図示せず)が所定位置に固定保持される。
【0024】
上記ワークに対する所定の加工作業が終了したのち、シリンダアクチュエータ50の作動ロッド55を伸張させてフレーム20を上昇させることによって、パレットクランプピース23L,23Rによるワークパレット60に対するクランプが解かれ、こののち上記ワークパレット60は、パレット搬入出装置30によって上記治具1の外部へ払い出される。
【0025】
図5ないし図9に示す治具100は、ベース110と、該ベース110に対して上下動自在に設けられた左右一対のガイドブロック121L,121Rとを具備しており、上記ベース110には、上述した治具1と同様に、基準座111、パレット位置決めピン112等が設けられているとともに、パレット搬入出装置130が設けられている。なお、パレット搬入出装置130における符号131はパレット係止ピン、132はブラケット、133はシリンダアクチュエータであり、その構成および動作態様は上述した治具1と基本的に同一である。
【0026】
一方、上記各ガイドブロック121L、121Rには、それぞれ複数個のパレットガイドローラ122,122,…が支承されているとともに、クランプピース123Lおよびクランプピース123Rが取り付けられており、また上記各ガイドブロック121Lおよび121Rは、下方に延設された一対のガイドブロック124Lおよび124Rを介して、上記ベース110に上下移動自在に支承されているとともに、上記ベース110に設けられたシリンダアクチュエータ150Lおよび150Rに連結されており、これらシリンダアクチュエータ150Lおよび150Rの動作に基いて上下動作される。
【0027】
図7に明示する如く、シリンダアクチュエータ150Rは、上記ベース110と一体に形成されたシリンダボディー151と、このシリンダボディー151に組み付けられたシリンダキャップ152と、内周面153aに予めホーニング加工の施されたシリンダパイプ153とを有しており、上記シリンダボディー151と、シリンダキャップ152と、シリンダパイプ153とによって画成されたシリンダ室150Aにはピストン154が収容され、該ピストン154にはシリンダボディー151を貫通して上方に伸びるピストンロッド155が設けられており、該ピストンロッド155の先端部はガイドブロック120Rに固設されている。また、シリンダアクチュエータ150Lも、上記シリンダアクチュエータ150Rと同様に構成されていることは言うまでもない。
【0028】
ここで、上記シリンダアクチュエータ150Lおよび150Rの構成は、図1ないし図4に示した治具1におけるシリンダアクチュエータ50と基本的に同一であり、もって上記シリンダアクチュエータ50の構成要素と同一の機能を成す構成要素に対し、上記シリンダアクチュエータ50の構成要素を示す番号を100番台に書き替えて付すことにより、上記シリンダアクチュエータ150Lおよび150Rの構成に関わる詳細な説明は省略する。
【0029】
また、上述したシリンダアクチュエータ150Lおよび150Rの構成においても、図1ないし図4に示した治具1におけるシリンダアクチュエータ50と同様に、製造工程の単純化や製造コストの低減、さらには可及的な小型化を達成し得ることは勿論である。
【0030】
上述した如き構成の治具100では、シリンダアクチュエータ150Lおよび150Rによって、ガイドブロック121Lおよび121Rを上動位置に占位させ、ワークパレット160をパレット搬入出装置130によって搬入したのち、上記ガイドブロック121Lおよび121Rを下降させ、ワークパレット160をパレットクランプピース123L,123Rにより基準座111,…に押圧することにより、ワークパレット160に載置されたワーク(図示せず)が所定位置に固定保持される。
【0031】
上記ワークに対する所定の加工作業が終了すると、ガイドブロック121Lおよび121Rは、シリンダアクチュエータ150Lおよび150Rの動作に基づいて上昇し、パレットクランプピース123L,123Rによるワークパレット160に対するクランプが解かれたのち、上記ワークパレット160は、パレット搬入出装置130によって上記治具100の外部へ払い出される。
【0032】
なお、本発明に関わるシリンダアクチュエータは、実施例に示したクランプ装置における駆動源としてのみならず、様々な装置における駆動源として有効に適用し得ることは勿論であり、また油圧シリンダアクチュエータのみならず、空気圧シリンダアクチュエータ等の各種シリンダアクチュエータに対しても効果的に適用し得ることは言うまでもない。
【0033】
【発明の効果】
以上、詳述した如く、本発明に関わるシリンダアクチュエータでは、シリンダボディーにボディー側収容凹部を設ける一方、シリンダキャップにキャップ側収容凹部を設け、シリンダキャップの周縁部のシリンダ軸方向肉厚をキャップ側収容凹部の底面よりも厚く形成して、シリンダボディーに締め付ける際の外力に耐え得る肉厚とし、内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプの一方端部をボディー側収容凹部に収容するとともに、シリンダパイプの他方端部をキャップ側収容凹部に収容した状態で、シリンダボディーにシリンダキャップの周縁部をボルト締めして組み付け、シリンダパイプの内周面と、ボディー側収容凹部の底面と、キャップ側収容凹部の底面とからシリンダ室を画成したことによって、シリンダ室に臨んでいるシリンダキャップの中央部の肉厚を可及的に小さく設定しても、シリンダボディーに締め付けられる周縁部には十分な肉厚を確保し得るために、シリンダボディーとシリンダキャップとを組み付けた状態における、軸方向の外形寸法を小さくすることができ、もってシリンダアクチュエータを可及的に小型化することが可能となる。また、上記構成によれば、仕上げ加工の施されたシリンダパイプの内周面によりシリンダ室の内周面が構成されるので、シリンダボディーやシリンダキャップに形成された凹部の内周面に対して仕上げ加工を施す必要がなく、もってシリンダアクチュエータにおける製造工程の単純化および製造コストの低減を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に関わるシリンダアクチュエータを適用したワーククランプ装置を示す断面側面図。
【図2】
本発明に関わるシリンダアクチュエータを適用したワーククランプ装置の要部断面側面図。
【図3】
本発明に関わるシリンダアクチュエータを適用したワーククランプ装置を示す要部断面正面図。
【図4】
本発明に関わるシリンダアクチュエータを適用したワーククランプ装置を示す要部破断平面図。
【図5】
本発明に関わるシリンダアクチュエータを適用したワーククランプ装置の他の実施例を示す全体平面図。
【図6】
本発明に関わるシリンダアクチュエータを適用したワーククランプ装置の他の実施例を示す全体側面図。
【図7】
本発明に関わるシリンダアクチュエータを適用したワーククランプ装置の他の実施例を示す要部断面図。
【図8】
本発明に関わるシリンダアクチュエータを適用したワーククランプ装置の他の実施例を示す要部断面図。
【図9】
本発明に関わるシリンダアクチュエータを適用したワーククランプ装置の他の実施例を示す要部断面図。
【図10】
従来構造のシリンダアクチュエータを駆動源としたワーククランプ装置を示す概念的な要部断面側面図。
【符号の説明】
1,100 治具
10,110 ベース
20,120 フレーム
30,130 パレット搬入出装置
50,150 シリンダアクチュエータ
50A,150A シリンダ室
51,151 シリンダボディー
51A,151A ボディー側収容凹部
51a,151a 底面
52,152 シリンダキャップ
52A,152A キャップ側収容凹部
52a,152a 底面
53,153 シリンダパイプ
53a,153a 内周面
53U,153U 上方端部(一方端部)
53L,153L 下方端部(他方端部)
 
訂正の要旨 訂正の内容
1.訂正事項a:
本件特許明細書の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】 内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプと、
上記シリンダパイプの一方端部を収容するボディー側収容凹部を有するシリンダボディーと、
上記シリンダパイプの他方端部を収容するキャップ側収容凹部を有するシリンダキャップとを具備し、
上記シリンダボディーに上記シリンダキャップの周縁部をボルト締めして、上記シリンダボディーと上記シリンダキャップとを互いに組み付けるとともに、上記シリンダパイプの内周面、上記ボディー側収容凹部の底面、および上記キャップ側収容凹部の底面によってシリンダ室を画成して成ることを特徴とするシリンダアクチュエータ。」
を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】 内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプと、
上記シリンダパイプの一方端部を収容するボディー側収容凹部を有するシリンダボディーと、
上記シリンダパイプの他方端部を収容するキャップ側収容凹部を有し、周縁部のシリンダ軸方向肉厚を上記キャップ側収容凹部の底面よりも厚く形成し、上記シリンダボディーに締め付ける際の外力に耐え得る肉厚としたシリンダキャップとを具備し、
上記シリンダボディーに上記シリンダキャップの周縁部をボルト締めして、上記シリンダボディーと上記シリンダキャップとを互いに組み付けるとともに、上記シリンダパイプの内周面、上記ボディー側収容凹部の底面、および上記キャップ側収容凹部の底面によってシリンダ室を画成して成ることを特徴とするシリンダアクチュエータ。」
と訂正する。
2.訂正事項b:
本件特許明細書の段落【0004】の記載
「【課題を解決するための手段】そこで、本発明では、シリンダボディーにボディー側収容凹部を設ける一方、シリンダキャップにキャップ側収容凹部を設け、内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプの一方端部をボディー側収容凹部に収容するとともに、シリンダパイプの他方端部をキャップ側収容凹部に収容した状態で、シリンダボディーにシリンダキャップの周縁部をボルト締めして組み付け、シリンダパイプの内周面と、ボディー側収容凹部の底面と、キャップ側収容凹部の底面とからシリンダ室を画成することによって上記目的を達成している。」
を、前記訂正事項aで訂正された特許請求の範囲との整合性を図るべく、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、シリンダボディーにボディー側収容凹部を設ける一方、シリンダキャップにキャップ側収容凹部を設け、シリンダキャップの周縁部のシリンダ軸方向肉厚をキャップ側収容凹部の底面よりも厚く形成して、シリンダボディーに締め付ける際の外力に耐え得る肉厚とし、内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプの一方端部をボディー側収容凹部に収容するとともに、シリンダパイプの他方端部をキャップ側収容凹部に収容した状態で、シリンダボディーにシリンダキャップの周縁部をボルト締めして組み付け、シリンダパイプの内周面と、ボディー側収容凹部の底面と、キャップ側収容凹部の底面とからシリンダ室を画成することによって上記目的を達成している。」
と訂正する。
3.訂正事項c:
本件特許明細書の段落【0033】の記載
「【発明の効果】以上、詳述した如く、本発明に関わるシリンダアクチュエータでは、シリンダボディーにボディー側収容凹部を設ける一方、シリンダキャップにキャップ側収容凹部を設け、内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプの一方端部をボディー側収容凹部に収容するとともに、シリンダパイプの他方端部をキャップ側収容凹部に収容した状態で、シリンダボディーにシリンダキャップの周縁部をボルト締めして組み付け、シリンダパイプの内周面と、ボディー側収容凹部の底面と、キャップ側収容凹部の底面とからシリンダ室を画成したことによって、シリンダ室に臨んでいるシリンダキャップの中央部の肉厚を可及的に小さく設定しても、シリンダボディーに締め付けられる周縁部には十分な肉厚を確保し得るために、シリンダボディーとシリンダキャップとを組み付けた状態における、軸方向の外形寸法を小さくすることができ、もってシリンダアクチュエータを可及的に小型化することが可能となる。また、上記構成によれば、仕上げ加工の施されたシリンダパイプの内周面によりシリンダ室の内周面が構成されるので、シリンダボディーやシリンダーキャップに形成された凹部の内周面に対して仕上げ加工を施す必要がなく、もってシリンダアクチュエータにおける製造工程の単純化および製造コストの低減を達成することができる。」
を、前記訂正事項aで訂正された特許請求の範囲との整合性を図るべく、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【発明の効果】以上、詳述した如く、本発明に関わるシリンダアクチュエータでは、シリンダボディーにボディー側収容凹部を設ける一方、シリンダキャップにキャップ側収容凹部を設け、シリンダキャップの周縁部のシリンダ軸方向肉厚をキャップ収容凹部の底面よりも厚く形成して、シリンダボディーに締め付ける際の外力に耐え得る肉厚とし、内周面に仕上げ加工の施されたシリンダパイプの一方端部をボディー側収容凹部に収容するとともに、シリンダパイプの他方端部をキャップ側収容凹部に収容した状態で、シリンダボディーにシリンダキャップの周縁部をボルト締めして組み付け、シリンダパイプの内周面と、ボディー側収容凹部の底面と、キャップ側収容凹部の底面とからシリンダ室を画成したことによって、シリンダ室に臨んでいるシリンダキャップの中央部の肉厚を可及的に小さく設定しても、シリンダボディーに締め付けられる周縁部には十分な肉厚を確保し得るために、シリンダボディーとシリンダキャップとを組み付けた状態における、軸方向の外形寸法を小さくすることができ、もってシリンダアクチュエータを可及的に小型化することが可能となる。また、上記構成によれば、仕上げ加工の施されたシリンダパイプの内周面によりシリンダ室の内周面が構成されるので、シリンダボディーやシリンダーキャップに形成された凹部の内周面に対して仕上げ加工を施す必要がなく、もってシリンダアクチュエータにおける製造工程の単純化および製造コストの低減を達成することができる。」
と訂正する。
異議決定日 2002-02-15 
出願番号 特願平4-173508
審決分類 P 1 651・ 121- YA (F15B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長屋 陽二郎  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 船越 巧子
秋月 均
登録日 2000-10-13 
登録番号 特許第3118963号(P3118963)
権利者 スズキ株式会社
発明の名称 シリンダアクチュエータ  
代理人 有原 幸一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  
代理人 筒井 大和  
代理人 小塚 善高  

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