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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1058137
異議申立番号 異議2001-70279  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-10-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-01-24 
確定日 2002-01-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3069458号「口腔内崩壊型錠剤およびその製造法」の請求項1ないし17に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3069458号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3069458号発明は、平成5年1月27日(優先権主張平成4年1月29日、日本)に特許出願され、平成12年5月19日にその特許権の設定登録がなされ、その後、エルメッドエーザイ株式会社、エーザイ株式会社、及びサンノーバ株式会社より特許異議申立がなされ、当審より取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年8月7日に訂正請求(後日取下)がなされた後、再度取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年12月21日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(a) 訂正の内容
・訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1が
「 薬効成分と糖類とを含む錠剤成分に対して、0.3〜7重量%の水分を用い、前記糖類の粒子の表面を湿らせ、前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物を打錠した後、乾燥し、日本薬局方第12改正に記載されている崩壊試験法による崩壊時間が0.05〜3.0分である口腔内崩壊型錠剤を製造する方法。」であるのを
「 薬効成分と糖類とを含む錠剤成分に対して、0.3〜7重量%の水分を用い、前記糖類の粒子の表面を湿らせ、乾燥造粒末又は顆粒を形成することなく、前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物を3〜160Kg/cm2の圧力で打錠した後、乾燥し、日本薬局方第12改正に記載されている崩壊試験法による崩壊時間が0.05〜3.0分、空隙率が20〜80%および落下強度が0〜70%である口腔内崩壊型錠剤を製造する方法であって、前記糖類が、平均粒子径1〜100μmであり、かつ乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種であり、前記糖類を10〜90重量%含む混合物を打錠する製造法。」と訂正する。
・訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2ないし8、12、14及び16を削除し、それに伴い、請求項を順に請求項1〜7と訂正する。
・訂正事項c
明細書【0013】の
「すなわち、本発明は、薬効成分と糖類と前記糖類の粒子表面が湿る程度の水分とを含む混合物を打錠する口腔内崩壊型錠剤の製造法を提供する。具体的には、錠剤成分(薬効成分、糖類および所望により添加剤を含む混合物)に対して、0.3〜7重量%の水分を用い、前記糖類の粒子の表面を湿らせ、前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物を打錠し、次いで乾燥し、日本薬局方第12改正に記載されている崩壊試験法による崩壊時間が0.05〜3.0分である口腔内崩壊型錠剤を製造する方法を提供する。」を、
「すなわち、本発明は、薬効成分と糖類と前記糖類の粒子表面が湿る程度の水分とを含む混合物を打錠する口腔内崩壊型錠剤の製造法を提供する。具体的には、錠剤成分(薬効成分、糖類および所望により添加剤を含む混合物)に対して、0.3〜7重量%の水分を用い、前記糖類の粒子の表面を湿らせ、前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物を打錠し、次いで乾燥し、日本薬局方第12改正に記載されている崩壊試験法による崩壊時間が0.05〜3.0分、空隙率が20〜80%および落下強度が0〜70%であるである口腔内崩壊型錠剤を製造する方法を提供する。この方法において、糖類の平均粒子径は1〜100μmであり、糖類として、乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種が使用される。」と訂正する。
・訂正事項d
明細書【0014】の
「前記糖類は、乳糖、マンニトール、キシリトール、又はエリスリトールなどであってもよい。前記混合物は、糖類を10〜90重量%程度、薬効成分を0.05〜90重量%程度含んでもよい。」を
「前記混合物は、糖類を10〜90重量%含んでおり、薬効成分を0.05〜90重量%程度含んでもよい。」と訂正する。
・訂正事項e
明細書【0015】の
「打錠は3〜160Kg/cm2程度の圧力で行ってもよい。打錠時に薬効成分の成型装置への付着が防止されていてもよい。」を
「前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物は、乾燥造粒末又は顆粒を形成することなく、打錠は3〜160Kg/cm2程度の圧力で打錠する。打錠時に薬効成分の成型装置への付着が防止されていてもよい。」と訂正する。

(b) 訂正の目的の適否、拡張・変更の存否、及び新規事項の追加の有無
上記訂正事項aは、錠剤の製造工程として包含されていた「乾燥造粒末又は顆粒を形成する」工程を除き、かつ限定されてなかった打錠時の圧力、錠剤の空隙率および落下強度をそれぞれ、3〜160Kg/cm2、20〜80%、0〜70%と限定し、更に糖類を乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種であって、その平均粒子径と配合割合を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、願書に添付された明細書(以下、特許明細書という。)の発明の詳細な説明の欄には、錠剤の製造工程に乾燥造粒末又は顆粒を形成する工程については何等記載されてなく、打錠時の圧力、錠剤の空隙率、落下強度、糖類の各限定については、訂正前の請求項4〜8、12、14及び16記載されたものであるから、特許明細書に記載された範囲内のものである。
訂正事項bは、特許請求の範囲の請求項の削除及び請求項の番号を整合させるものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
訂正事項c〜eは、特許請求の範囲の訂正に伴い発明の詳細な説明の項の記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
また、これらの訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立についての判断
(a)異議申立の概要
異議申立人 エルメッドエーザイ株式会社は、甲第1号証(特公昭46-30313号公報、以下、引用例1という。)、甲第2号証(特開昭46-1546号公報、これは下記の引用例2に対応する公開公報であり、両公報の記載内容に実質的な相違はないので、以下、引用例2として取り扱う。)を提出して、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるか、又は訂正前の請求項1〜17に係る発明は甲第1〜2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許明細書の記載が不備であるから、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第36条第5項の規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、特許法第113条第1項第2号及び第4号の規定により取り消されるべきであると主張している。
異議申立人 エーザイ株式会社は、甲第1号証(特公昭51-9004号公報、以下、引用例2という。)、甲第2号証(特公昭50-13332号公報、以下、引用例3という。)、甲第3号証(特開平4-8288号公報,以下、引用例4という。)及び甲第4号証(特開昭61-15830号公報、以下、引用例5という。)を提出して、訂正前の請求項1、2、9〜11に係る発明は甲第1号証に記載された発明であり、訂正前の請求項1〜17に係る発明は甲第1号証〜4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また明細書の記載が不備であるから、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第36条第5項の規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、特許法第113条第1項第2号及び第4号の規定により取り消されるべきであると主張している。
異議申立人 サンノーバ株式会社は、甲第1号証(特公昭51-9004号公報=引用例2という。)、甲第2号証(特公昭50-13332号公報=引用例3)、甲第3号証(特公昭46-30313号公報=引用例1)、甲第4号証(特許第164781号明細書、以下、引用例6という。)、甲第5号証(特公昭44-26317号公報、以下、引用例7という。)、甲第6号証(特開平1-108953号公報、以下、引用例8という。)、甲第7号証(特開昭60-12933号公報、以下、引用例9という。)及び甲第8号証(特開昭57-12954号公報、以下、引用例10という。)を提出し、訂正前の請求項1〜17に係る発明は甲第1〜4号証に記載された発明であるか、又は甲第1〜8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきであると主張している。

(b)本件発明
本件の請求項1〜7に係る発明は、訂正された特許明細書の記載からみて、特許請求の範囲に記載されたとおりの
「【請求項1】 薬効成分と糖類とを含む錠剤成分に対して、0.3〜7重量%の水分を用い、前記糖類の粒子の表面を湿らせ、乾燥造粒末又は顆粒を形成することなく、前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物を3〜160Kg/cm2の圧力で打錠した後、乾燥し、日本薬局方第12改正に記載されている崩壊試験法による崩壊時間が0.05〜3.0分、空隙率が20〜80%および落下強度が0〜70%である口腔内崩壊型錠剤を製造する方法であって、前記糖類が、平均粒子径1〜100μmであり、かつ乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種であり、前記糖類を10〜90重量%含む混合物を打錠する製造法。
【請求項2】 薬効成分を0.05〜90重量%含む混合物を打錠する請求項1記載の製造法。
【請求項3】 薬効成分として、ビタミン、生薬、解熱鎮痛消炎薬、向精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、胃腸薬、制酸剤、鎮咳去痰薬、血圧降下剤、糖尿病用薬、骨粗しょう症用薬または骨格筋弛緩薬を用いる請求項1記載の製造法。
【請求項4】 薬効成分の少なくとも一部が油状のものである請求項1記載の製造法。
【請求項5】 打錠時に薬効成分の成型装置への付着が防止された請求項1記載の製造法。
【請求項6】 有効量の薬効成分と水溶性糖類とを含み、硬度2〜25kg及び空隙率20〜80%を有する多孔性構造の口腔内崩壊型錠剤を製造する請求項1記載の製造法。
【請求項7】 有効量の薬効成分と水溶性糖類とを含み、硬度3〜20kg、空隙率30〜70%および落下強度0〜40%を有する口腔内崩壊型錠剤を製造する請求項1記載の製造法。」
と認められる。

(c)証拠の記載内容
引用例1には、次の事項が記載されている。
(1-i)錠剤化すべき粉末材料の少なくとも大部分を構成する粉末と結合剤とを混合するにあたり、結合剤が溶解または膨潤する液体を(イ)上記粉末各粒子表面に結合剤が均一に分布するに充分な而して(ロ)この液体の連続相が形成されるには不充分な量を使用し上記粉末粒子の相互の結合が実質的に生ぜず粉末の粒径がほぼもとのままに保たれるように均密に混合を行ない、得られた粉末を必要ならば乾燥および(または)残余の粉末と混合し、顆粒化することなく粉末を直接タブレットに圧縮成形することを特徴とする錠剤およびこれと類似の成形体の製造方法。(特許請求の範囲)、
(1-ii)錠剤化すべき粉末材料の少なくとも大部分を構成する微細粉末に結合剤を混合する際に、結合剤を溶解または膨潤させる液体を顆粒化方法で使用していたよりも少量使用して微細粉末粒子の相互の結合が生じないように注意深く結合剤を粉末と均密に混合した場合には、得られる粉末がそのままタブレットに圧縮成型しうること、またこのようにして得られたタブレットは水中で極めて容易に崩壊分散し、上記の要件を満足するということが判明した。
この場合、使用すべき液体は結合剤を溶解または膨潤させる、すなわち結合剤が少なくとも部分的に可溶性であること、および、液体の使用量が粉末の各粒子表面に結合剤を均一に分布させるのに充分な量で而して微細粉末粒子相互の結合を生じるには不充分な量でなければならないことが判明した(2頁3欄8〜24行)。
(1-iii)液体の正確な必要量は、物質の性質、粒径の分布、および使用する混合装置に左右される。一般に顆粒化に使用する量の1/6乃至1/2量であろう。
処理すべき物質が使用する液体に可溶である場合には、液体の添加には特に留意せねばならない。このような場合には、2乃至3%程度で充分である。一方多くの不溶性の物質の場合では5乃至10%である。水分を吸収する材料、例えばポテト澱粉ではそれ以上、約30%の多量を必要とする。すべてのパーセントは処理すべき物質を基準にして計算したものである。(2頁4欄16〜26行)
(1-iv)本発明方法では、原則として、普通の結合剤例えばポリビニルピロリドン、ゼラチン、カルボワックス、多糖類等を普通の液体例えば水、アルコール、アセトン、塩化-メチレン、此等の混合物に溶解したものを使用したタブレットを作るが、結合剤を選択するならば、さらに最良の結果が得られる。(3頁5欄43行〜6欄4行)
以上の記載を総合すると、結合剤が溶解または膨潤する液体の使用量は、錠剤化すべき粉末粒子表面に結合剤が均一に分布するに充分で、液体の連続相が形成されるには不充分な量であって(1-i)、顆粒化方法で使用していたよりも少量であること(1-ii)、水分を吸収する材料を配合する場合を除き2〜10%程度であること(1-iii)及び普通の液体として水が挙げられる(1-iv)から、結合剤が湿っている状態であって、水分の配合量は2〜10%程度のものと認められる。そして、錠剤化すべき粉末材料と結合剤を上記水分量を使用することによって粉末粒子の相互の結合が生じないように混合すると、顆粒化することなく直接圧縮成形してタブレット(錠剤)を製造できること、得られた錠剤は、水中で極めて容易に崩壊分散しうる(1-i及び1-ii)から、引用例1には、粉末とポリビニルピロリドン、ゼラチン、カルボワックス、多糖類等など(1-iv)の結合剤と粉末材料を2〜10%程度の水分で湿らせ混合して、顆粒を形成することなく、直接圧縮成形(打錠)して、水中できわめて容易に崩壊分散しうる錠剤の製造方法が記載されているものと認められる。しかし、錠剤に、乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種の糖類10〜90重量%を配合すること、打錠圧力、錠剤の空隙率及び落下強度は何等記載されていない。

引用例2には、異なる粒度の粒状結晶砂糖を活性成分の少なくとも一種と混合し、得られる混合物を10%未満の湿潤率水準に湿潤化して均質とし、生じた均質混合物を所望の角砂糖の形をした型に入れ、これに50g/cm2以下の圧力を適用することによって上記混合物をかため、次にかためた混合物を20〜60℃の範囲の温度で加熱し、これによって所望の適量単位を得ることを特徴とする、医薬、強壮剤、及び/もしくは栄養剤の固形適量単位服用配剤の製造法(特許請求の範囲)が記載されているが、錠剤に、乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種の糖類10〜90重量%を配合すること、錠剤の空隙率及び落下強度は何等記載されていない。

引用例3には、次の事項が記載されている。
(3-i)ポリヒドロキシ化合物の結合剤0.1〜約30部中に固体粒状砂糖100部を含み、約12〜約325メッシュの大きさで、含水率が約0.1〜約3%の乾燥自由流動性で、一般に球状で有孔性集合体を直接圧縮賦形剤として含ませ、該集合体と活性物質との均一で粒状にされていない混合物を製造し、(該混合物は該集合体を少なくとも10%含み)、次に該混合物を錠剤に圧縮する事から成る錠剤の製造法( 2欄35行〜3欄6行)
(3-ii)砂糖集合体を直接圧縮賦形剤として使用して製造される錠剤は均一で、…且つ水性媒体に容易に溶解する。(3欄20〜23行)
(3-iii)ポリヒドロキシ化合物の例を示すならば、…エリスリトール…キシリトール…マンニトール…ラクトースの如き…糖が好ましい(4欄12〜21行)
以上の記載から、引用例3には、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ラクトースの如き糖であるポリヒドロキシ化合物の結合剤(3-iii)0.1〜約30部中に固体粒状砂糖100部を含み、約12〜約325メッシュの大きさで、含水率が約0.1〜約3%の乾燥自由流動性で、一般に球状で有孔性集合体(乾燥造粒末又は顆粒に相当する。)をまず製造(3-i)し、この集合体を直接圧縮賦形剤として含ませ、該集合体と活性物質との均一で粒状にされていない混合物を製造し、次に該混合物を錠剤に圧縮する水性媒体に容易に溶解する錠剤(3-ii)の製造法が記載されているものと認められる。しかし、錠剤を製造する際の打錠圧力、錠剤の空隙率及び落下強度は何等記載されていない。

引用例4には、酵素剤に水溶性結合剤及び湿潤剤を加え、混和して顆粒を形成せしめ、次いで形成した該顆粒に賦形剤、崩壊剤、滑沢剤等を配合し、圧縮成形することにより錠剤化することを特徴とする酵素含有易崩性錠剤の製造法(特許請求の範囲)、及び結合剤としてソルビトールやポリエチレングリコールを配合した実施例が記載されている。しかし、錠剤に、乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種の糖類10〜90重量%を配合すること、打錠圧力、錠剤の空隙率及び落下強度は何等記載されていない。

引用例5には、製菓用甘味料及び可塑剤の水性混合物を加熱して含水量が約2重量%〜10重量%にし冷却後に制酸剤を配合し、生成物に通気し、用量単位に分割した制酸剤組成物を提供する旨(4頁3行〜18行)、製菓用甘味料として、例えば、シュクロース(蔗糖)等の砂糖(7頁10行〜14行)を、可塑剤として、例えば、ソルビトール等(8頁6行〜11行)を用いることが記載されている。しかし、用量単位に分割した制酸剤組成物が錠剤に相当するとしても、乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種の糖類10〜90重量%を錠剤に配合すること、打錠圧力、錠剤の空隙率及び落下強度は何等記載されていない。

引用例6には、実施例として無水クエン酸の粉末35gと合成アスコルビン酸3gの両者を乳鉢で微粉となし、これにクエン酸5gを蒸留水3mlに溶解した液を注加して充分に撹拌して暫時放置後、乳糖25g、ブドウ糖7gを混和し、常法に従い圧搾賦形して錠剤1g中にビタミンC30mg含有する錠剤を製造したことが記載されている。しかし、錠剤製造時の打錠圧力、錠剤の空隙率及び落下強度は何等記載されていないし、錠剤の崩壊性について何等記載されていない。

引用例7には、プロピレングリコールのビタミンCに対する酸化防止作用と、一方それ自体はグルテン性を出し得るに至らない少量の水に補足するにプロピレングリコールを以てグルテン(小麦蛋白質)を練り、グルテン性を出させる役割をするプロピレングリコールの湿式錠剤作成能力との組合せにより作製された「食べられるチューインガム」形式の湿式錠剤(1頁1欄21〜33行)が記載されている。しかし、錠剤に、乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種の糖類10〜90重量%を配合すること、打錠圧力、錠剤の空隙率、落下強度及び錠剤の崩壊性については何等記載されていない。

引用例8には、メソエリスリトール結晶粒子とメソエリスリトール粉末との混合物に、比較的少量の他の成分を配合し、含水率2〜6重量%になるように水を加えて混練したのち圧縮成形し、乾燥させた成型糖の製造法(特許請求の範囲)が記載されている。しかし、医薬製剤である錠剤については記載されてなく、打錠圧力、錠剤の空隙率及び落下強度は何等記載されていない。

引用例9には、 インスタントコーヒーまたはインスタント紅茶粉末に、必要に応じてクリーミングパウダーを加え、加湿された砂糖を混合し、低圧成型する工程からなる、溶解性に優れかつ硬度の大きい固形嗜好飲料の製造方法が記載されている。しかし、医薬製剤である錠剤については記載されてなく、固形飲料に乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種の糖類10〜90重量%を配合すること、固形飲料の空隙率及び落下強度は何等記載されていない。

引用例10には、ブドウ糖又はブドウ糖と粉末糖アルコールを主原料とし、これに澱粉、アラビヤガム、果汁、有機酸、重曹を適量に混合撹拌した物質に少量の香料及び着色料を添加して打錠機にかけ任意の形状に成型するラムネ菓子の製造方法が記載されているが、医薬製剤である錠剤については記載されてなく、固形飲料に乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種の糖類10〜90重量%を配合すること、固形飲料の空隙率及び落下強度は何等記載されていない。

(d) 特許法第29条第1項第3号について
(d-1)請求項1に係る発明について
上記したように引用例1、引用例2、引用例3及び引用例6には、請求項1に係る発明の構成要件である錠剤に、乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種の糖類10〜90重量%を配合することが記載されていないか、打錠する前に乾燥造粒末又は顆粒を形成するものであるか、又は、錠剤の崩壊性について何等記載されていない。そして、引用例6における錠剤には、請求項1に規定する割合で乳糖が含まれているが、本件特許明細書における実施例と比較例をみても、その打錠圧力等の条件で崩壊性が異なるのであるから、乳糖及び水の配合割合が同じであることを以て、直ちに錠剤の崩壊性が請求項1に記載の範囲内であるとはいえない。
したがって、本件請求項1に係る発明は引用例1〜3及び6に記載された発明ではない。

(d-2) 請求項2〜7に係る発明について
請求項2〜7に係る発明は、請求項1に係る発明をさらに技術的に限定しているから、引用例1〜3及び6に記載された発明ではない。

(e)特許法第29条第2項について
(e-1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と引用例1とを対比すると、錠剤に、乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種の糖類10〜90重量%を配合すること、打錠圧力、錠剤の空隙率及び落下強度は何等記載されていない点で相違する。
そして、請求項1に係る発明で得られる錠剤の製造方法は、請求項に記載の特定の糖、水分の量、及び打錠圧力等の製造条件を限定することによって、特許明細書記載の実用上必要な口腔内での優れた崩壊性、溶解性と共に、製剤工程そして流通過程において壊れないような適度の強度を有するという優れた効果を奏するものである。
これに対して、引用例2には、打錠圧力が大きく異なり、引用例3におけるエリスリトール等のポリヒドロキシ化合物は、打錠前のいわば顆粒を形成する際に使用しており、引用例4には乳糖などの糖類を配合することや、錠剤の製造条件などが記載されてない。また、引用例6、引用例7には、錠剤が記載されているものの、崩壊性については全く記載されていないし、その他の記載をみても口腔内崩壊型錠剤といえるものではない。引用例5及び8〜10は、飲食品に関する記載のみで、医薬錠剤については何等記載されていない。まして、これら引用例2〜10には、錠剤の製造条件検討を決定することにより口腔内崩壊性、製剤工程及び流通過程において壊れないような適度の強度等の向上については何等記載されていない。
そうすると、引用例1に記載のものに、引用例2〜10に記載の事項を組合わせても、口腔内崩壊型錠剤を製造できる条件、糖類の限定などを当業者が容易に想到できるものではない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、引用例1〜10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(d-2)請求項2〜7に係る発明について
請求項2〜7に係る発明は、請求項1に係る発明をさらに技術的に限定しているから、引用例1〜10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(f)特許法第36条について
異議申立人エルメッドエーザイ株式会社及びエーザイ株式会社は、(i)訂正前の請求項1、請求項13〜17には発明の構成に欠くことができない事項が記載されていないし、(ii)明細書の実施例に糖類のみを使用した実施例が記載されていないので、発明の効果が明確でない、(iii)乳糖、マンニトールについての作用効果を確認する記載がないので、明細書の記載が不備である旨主張している。

(i)について
請求項1は、上記のように、乾燥造粒末又は顆粒を形成することがないこと、打錠圧力、特定の糖類の特定の粒度、及び糖類の配合割合を限定する訂正がなされたので、この点の不備は解消された。また、請求項5〜7(訂正前の請求項13、請求項15及び請求項17)の記載は、請求項1に係る発明を慣用の技術手段である「打錠時に薬効成分の成型装置への付着防止」や、錠剤の物性によってさらに限定したものであるから、この限定によって発明の構成が明確でないとはいえない。

(ii)について
異議申立人は、糖類のみでは本件請求項1〜7に係る発明の効果が奏するものでないとの主張のみで、糖類のみでは効果を奏するものでないことを証明するものではないから、実施例の記載がないことのみで発明の効果が明確でないとはいえない。そのうえ、特許権者は平成13年12月10日付けのファクシミリにより実験成績証明書を提出して、薬効成分としてアスコルビン酸2.5g、糖類としてエリスリトール22.5g、水0.75mlの組成をもつ混合物を50Kg/cm2の圧力で打錠して、製造した錠剤が、口溶け0.2分、崩壊時間0.2分、高度23N、空隙率32%。落下強度30%であることを示しているから、発明の効果も明確である。
したがって、この点についても不備はない。

(iii)について
異議申立人は、明細書に乳糖とマンニトールについての作用効果を確認する記載がないことを以て、明細書の記載が不備である旨主張するが、乳糖とマンニトールは、糖類としてキシリトールなどと並列に、特許明細書は勿論、出願当初の明細書の【0029】に明確に記載されており、この記載から通常キシリトールやエリスリトールと同等の効果を奏するものと解せるものであるから、単に確認する記載がないことを以て明細書の記載が不備であるとはいえない。そして、これらの糖が、キシリトールやエリスリトールと異なって効果がないことを異議申立人は証明していない。
したがって、明細書に確認する記載があることが望ましいにしても、本件特許明細書の記載が不備であるとまではいえない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件特許が特許法第29条第1項、同法第29条第2項に違反してされたものではない。また、特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものでもない。
また、本件特許については、他に取消理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
口腔内溶解型錠剤およびその製造法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 薬効成分と糖類とを含む錠剤成分に対して、0.3〜7重量%の水分を用い、前記糖類の粒子の表面を湿らせ、乾燥造粒末又は顆粒を形成することなく、前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物を3〜160Kg/cm2の圧力で打錠した後、乾燥し、日本薬局方第12改正に記載されている崩壊試験法による崩壊時間が0.05〜3.0分、空隙率が20〜80%および落下強度が0〜70%である口腔内崩壊型錠剤を製造する方法であって、前記糖類が、平均粒子径1〜100μmであり、かつ乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種であり、前記糖類を10〜90重量%含む混合物を打錠する製造法。
【請求項2】 薬効成分を0.05〜90重量%含む混合物を打錠する請求項1記載の製造法。
【請求項3】 薬効成分として、ビタミン、生薬、解熱鎮痛消炎薬、向精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、胃腸薬、制酸剤、鎮咳去痰薬、血圧降下剤、糖尿病用薬、骨粗しょう症用薬または骨格筋弛緩薬を用いる請求項1記載の製造法。
【請求項4】 薬効成分の少なくとも一部が油状のものである請求項1記載の製造法。
【請求項5】 打錠時に薬効成分の成型装置への付着が防止された請求項1記載の製造法。
【請求項6】 有効量の薬効成分と水溶性糖類とを含み、硬度2〜25kg及び空隙率20〜80%を有する多孔性構造の口腔内崩壊型錠剤を製造する請求項1記載の製造法。
【請求項7】 有効量の薬効成分と水溶性糖類とを含み、硬度3〜20kg、空隙率30〜70%および落下強度0〜40%を有する口腔内崩壊型錠剤を製造する請求項1記載の製造法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ビタミン、解熱鎮痛消炎薬、降圧薬、向精神薬、糖尿病薬等の薬効成分と糖類とを含有し、適度な強度と口腔内での速い溶解性および崩壊性を持つ口腔内崩壊型錠剤(以下、口腔内溶解型錠剤という場合がある)およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、老化の生理学的研究から、医薬、医薬品、介護の問題に至るまで、老齢患者治療のために総合的な観点から多数の研究が行なわれている。その中でも、厚生省のシルバーサイエンス研究によれば、「高齢者に投与最適な新規製剤及び新規包装容器の作成研究」(東京女子医大、杉原正泰氏ほか)という興味ある研究報告が行なわれている(薬事日報 平成元年8月22日発行)。例えば、新規薬剤として、a)口腔溶解型製剤、b)ペースト状製剤、c)ゼリー状製剤がとり上げられており、中でも口腔溶解型製剤及びペースト状製剤はその服用の容易さ、安定性より共に高齢者にとって服用が容易な製剤とされている。特に、上記した口腔溶解型製剤においては口腔内で溶解する基剤としてポリエチレングリコール1000、口腔内温度で融解する基剤として油脂基剤が選択され、さらに味覚、テクスチャーなどの官能性と成形性も考慮して、白糖・マンニットが添加されている。成形は、PTP(Press Through Pachage)で用いる塩化ビニール成形シートのポケット部に加熱融解した基剤を充填後、放冷成形している。これによって高齢者用の口腔溶解型固型製剤を得ている。
【0003】
特開昭52-76420号公報には、「-30℃〜25℃で凍結する不活性溶剤5〜80重量%と錠剤にすべき物とのかゆ状物混合物または溶液を、液体窒素等の不活性冷却媒体中に入れて固化させた後、得られた顆粒を溶剤の凍結点以下で圧縮して錠剤とし、凍結乾燥または空気乾燥により溶剤を除去することによって、崩壊速度が大きく、急速に溶解する多孔性錠剤を製造する方法」が記載されている。
【0004】
また、特公昭58-24410号公報には、「錠剤内容物を錠剤内容物に対して不活性な-30〜+25℃で凍結する溶剤(例;水、シクロヘキサン、ベンゼン)と混合し、この際、溶剤を全混合物の5〜80重量%とし、混合物を不活性冷却媒体中に入れることにより固化させ、溶剤の凍結点より低い温度で圧縮して錠剤とし、さらに凍結乾燥または自然乾燥等により溶剤を揮発させて崩壊性の良好な多孔性錠剤を製造する方法」が記載されている。
【0005】
さらに、特開昭61-15830号公報には、制酸剤と、製菓用甘味料および可塑剤を含む製菓用基材とを含み、多孔性極微細結晶構造を有する制酸剤組成物が記載されている。
【0006】
一方、外国では、高齢者に使用される医薬品の研究に関するガイドライン(USA・FDA1983)があり、口腔溶解型固型製剤としては、R.P Scherer社(イギリス)の「Zydis(商品名)」などが商品化されている。該製剤の組成は明らかではないが、薬効成分、ポリマー、糖類等を配合し、溶解後凍結乾燥することにより製造されている(マニュファクチュアリング ケミスト、 Manuf.Chemist.Feb.36 (1990))。
【0007】
しかしながら、上記した従来の製剤は、口腔内溶解型製剤として実用性の面からみると、製剤の保存性、溶解性、薬物に対する適用範囲等において未だ充分とは云えない。たとえば、前記特開昭61-15830号公報記載の組成物では、成分を加熱溶融しているため、薬効成分の適用範囲が限定されると共に、製剤の口腔内での崩壊性が充分とはいえない。また、上述した「Zydis(商品名)」は、薬効成分の水溶性、製剤の強度、薬効成分の含有率などに問題があり高齢者用として満足できるものではない。
【0008】
さらに、崩壊性、溶解性の速い錠剤は得てして強度が弱いというのが一般的である。したがって、実用上必要な口腔内での優れた崩壊性、溶解性と共に、製剤工程そして流通過程において壊れないような適度の強度を有する製剤を開発する必要がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、口腔内での適度な崩壊性、溶解性を有しかつ製造時及び保存時に崩れない適度な強度を有する口腔内崩壊型錠剤を製造する方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、上記のような優れた性能を有する口腔内崩壊型錠剤を、繁雑な工程を経ることなく、簡易に得ることのできる口腔内崩壊型錠剤の製造法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、高齢者や小児にとっても服用容易な、実用性のある口腔内崩壊型錠剤の製造法を提供することにある。
【0012】
【発明の構成】
本発明者らは、上記したような事情に鑑み、口腔内溶解型製剤の開発を図るべく種々検討したところ、従来の製造法では必須であった加熱、融解、溶解、凍結手段を用いることなく、薬効成分と糖類と前記糖類の粒子表面が湿る程度の水分とを含む混合物を打錠し、乾燥すると、予想外にも製造工程及び保存、流通過程で崩れない適度な強度を有しかつ口腔内で速やかに崩壊、溶解する多孔性構造が得られること、および、この錠剤が口腔内溶解型錠剤として十分満足のできる性質を有していることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0013】
すなわち、本発明は、薬効成分と糖類と前記糖類の粒子表面が湿る程度の水分とを含む混合物を打錠する口腔内崩壊型錠剤の製造法を提供する。具体的には、錠剤成分(薬効成分、糖類および所望により添加剤を含む混合物)に対して、0.3〜7重量%の水分を用い、前記糖類の粒子の表面を湿らせ、前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物を打錠し、次いで乾燥し、日本薬局方第12改正に記載されている崩壊試験法による崩壊時間が0.05〜3.0分、空隙率が20〜80%および落下強度が0〜70%である口腔内崩壊型錠剤を製造する方法を提供する。この方法において、糖類の平均粒子径は1〜100μmであり、糖類として、乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種が使用される。
【0014】
前記混合物は、糖類を10〜90重量%含んでおり、薬効成分を0.05〜90重量%程度含んでもよい。
【0015】
前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物は、乾燥造粒末又は顆粒を形成することなく、3〜160Kg/cm2程度の圧力で打錠する。打錠時に薬効成分の成型装置への付着が防止されていてもよい。
【0016】
本発明に用いられる薬効成分としては、固体状、粉末状、結晶状、油状、溶液状など何れの形状のものでもよく、例えば、滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、向精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、鎮痙薬、胃腸薬、制酸剤、鎮咳去痰剤、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、冠血管拡張剤、末梢血管拡張剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、骨格筋弛緩薬などから選ばれた1種または2種以上の成分が用いられる。
【0017】
滋養強壮保健薬には、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE(酢酸d-α-トコフェロールなど)、ビタミンB1(ジベンゾイルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩など)、ビタミンB2(酪酸リボフラビンなど)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシンなど)、ビタミンC(アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウムなど)、ビタミンB12(酢酸ヒドロキソコバラミンなど)などのビタミン;カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル;タンパク;アミノ酸;オリゴ糖;生薬などが含まれる。
【0018】
解熱鎮痛消炎薬としては、例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イブプロフェン、塩酸ジフェンヒドラミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジヒドロコデイン、ノスカピン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、カフェイン、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、トルフェナム酸、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、サリチルアミド、アミノピリン、ケトプロフェン、インドメタシン、ブコローム、ペンタゾシンなどが挙げられる。
【0019】
向精神病薬としては、例えば、クロルプロマジン、レセルピンなどが挙げられる。抗不安薬としては、例えば、クロルジアゼポキシド、ジアゼパムなどが例示される。抗うつ薬としては、例えば、イミプラミン、マプロチリン、アンフェタミンなどが例示される。催眠鎮静薬としては、例えば、エスタゾラム、ニトラゼパム、ジアゼパム、フェノバルビタールナトリウムなどが例示される。鎮痙薬には、例えば、臭化水素酸スコポラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸パパベリンなどが含まれる。
【0020】
胃腸薬には、例えば、ジアスターゼ、含糖ペプシン、ロートエキス、リパーゼAP、ケイヒ油などの健胃消化剤;塩化ベルベリン、耐性乳酸菌、ビフィズス菌などの整腸剤などが含まれる。制酸剤としては、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0021】
鎮咳去痰剤としては、例えば、塩酸クロペラスチン、臭化水素酸デキストロメトルファン、テオフィリン、グァヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシンなどが挙げられる。歯科口腔用薬としては、例えば、オキシテトラサイクリン、トリアムシノロンアセトニド、塩酸クロルヘキシジン、リドカインなどが例示される。
【0022】
抗ヒスタミン剤としては、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、プロメタジン、塩酸インチペンジル、dl-マレイン酸クロルフェニラミンなどが挙げられる。強心剤としては、例えば、塩酸エチレフリンなどが挙げられる。不整脈用剤としては、例えば、塩酸プロカインアミド、塩酸プロプラノロール、ピンドロールなどが含まれる。利尿剤としては、例えば、イソソルビド、フロセミドなどが挙げられる。血圧降下剤としては、例えば、塩酸デラプリル、カプトプリル、臭化ヘキサメトニウム、塩酸ヒドララジン、塩酸ラベタロール、メチルドーパなどが挙げられる。
【0023】
血管収縮剤としては、例えば、塩酸フェニレフリンなどが挙げられる。冠血管拡張剤としては、例えば、塩酸カルボクロメン、モルシドミン、塩酸ベラパミルなどが挙げられる。末梢血管拡張剤としては、例えば、シンナリジンなどが例示される。利胆剤としては、例えば、デヒドロコール酸、トレピブトンなどが例示される。
【0024】
抗生物質には、例えば、セファレキシン、アモキシシリン、塩酸ピブメシリナム、塩酸セフォチアムなどのセフェム系、ペネム系およびカルバペネム系抗生物質などが含まれる。化学療法剤としては、例えば、スルファメチゾール、チアゾスルホンなどが挙げられる。糖尿病用剤としては、例えば、トルブタミド、ボグリボーズなどが挙げられる。骨粗しょう症用剤としては、例えば、イプリフラボンなどが挙げられる。骨格筋弛緩薬としては、メトカルバモールなどが挙げられる。
【0025】
薬効成分は、一般に医薬、食品分野などで用いられる希釈剤などによって希釈されたものであってもよい。また、薬効成分の少なくとも一種が油状のものであってもよい。
【0026】
本発明で用いられる薬効成分の好ましいものとしては、例えば上述したビタミン、生薬、解熱鎮痛消炎薬、抗不安薬、催眠鎮静薬、胃腸薬、鎮咳去痰剤、血圧降下剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、骨格筋弛緩薬などが挙げられる。
【0027】
前記薬効成分と糖類と水とを含む混合物中の薬効成分の含有量は、薬効成分の種類などによって異なるが、通常0.05〜90重量%、好ましくは0.1〜70重量%、さらに好ましくは0.3〜60重量%程度である。
【0028】
本発明に用いられる糖類としては、水溶性で薬効成分に対して悪影響(例えば、薬効成分の分解など)を及ぼさないものであれば如何なるものでもよく、例えば、砂糖、澱粉糖、乳糖、蜂蜜、糖アルコールなどが用いられる。
【0029】
砂糖としては、例えば、白糖、カップリングシュガー、フラクトオリゴ糖、パラチノースなどが用いられる。澱粉糖としては、例えば、ブドウ糖、麦芽糖、粉飴、水飴、異性化糖(果糖)などが用いられる。乳糖としては、例えば、乳糖、異性化乳糖(ラクチュロース)、還元乳糖(ラクチトール)などが用いられる。蜂蜜としては、一般に食用に用いられる各種のものが用いられる。糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、マンニトール、還元麦芽糖水飴(マルチトール)、還元澱粉糖化物、キシリトール、還元パラチノースなどが用いられる。その他、ブドウ糖を醗酵させた4炭糖(例えば、エリスリトールなど)なども用いられる。これらの糖類は、単独でまたは、二種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
本発明に用いられる糖類の好ましいものとしては、例えば白糖、ブドウ糖、マルチトール、キシリトール、エリスリトールなどがある。糖類は、乳糖、マンニトール、キシリトール及びエリスリトールから選択された少なくとも1種であってもよい。
【0031】
前記糖類の平均粒子径は、通常1〜100μm、好ましくは20〜70μm、さらに好ましくは30〜50μm程度である。
【0032】
前記混合物中の糖類の含有量は、薬効成分の種類によって異なるが、通常10〜90重量%、好ましくは20〜85重量%、さらに好ましくは30〜80重量%程度である。
【0033】
例えば、投与量の少ない薬効成分を用い、前記混合物中の薬効成分の含有量を0.1〜10重量%とする場合には、前記混合物中の糖類の含有量は、通常30〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは60〜85重量%程度である。投与量の少ない薬効成分としては、ジアゼパム等が挙げられる。
【0034】
また、投与量の中程度の薬効成分を用い、前記混合物中の薬効成分の含有量を10〜30重量%とする場合には、前記混合物中の糖類の含有量は、通常20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、さらに好ましくは40〜75重量%程度である。投与量の中程度の薬効成分としては、解熱鎮痛消炎薬等が挙げられる。
【0035】
さらに、投与量の多い薬効成分を用い、前記混合物中の薬効成分の含有量を30〜70重量%とする場合には、前記混合物中の糖類の含有量は、通常10〜70重量%、好ましくは15〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%程度である。投与量の多い薬効成分としては、ビタミンC等が挙げられる。
【0036】
前記混合物は、本発明の効果に支障のない限り、錠剤の製造に一般に用いられる種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0037】
前記添加剤として、例えば、崩壊剤、結合剤、酸味料、発泡剤、人口甘味料、香料、滑沢剤、着色剤などが挙げられる。
【0038】
崩壊剤としては、例えば、コーンスターチやバレイショデンプンなどデンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ポリビニルアルコールなどが例示される。結合剤としては、例えば、アラビアゴム末、ゼラチン、プルランなどが挙げられる。
【0039】
酸味料としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。発泡剤としては、例えば、重曹などが挙げられる。人口甘味料としては、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。
【0040】
香料としては、例えば、レモン、レモンライム、オレンジ、メントールなどが挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸などが例示される。着色剤としては、例えば、食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素;食用レーキ色素;ベンガラなどが挙げられる。
【0041】
これらの添加剤は、1種または2種以上、例えば、薬効成分と糖類との混合時、水分添加時、練合時あるいはそれらの前後の工程で、適宜適量添加することができる。
【0042】
前記混合物中の水分量は、前記混合物中に含まれる糖類の粒子表面が湿る程度の量、具体的には錠剤成分(薬効成分、糖類および所望により添加剤を含む混合物)に対して0.3〜7重量%であればよい。本発明では、糖類粒子の表面が湿る程度の水分が添加されるため、打錠し乾燥すると、糖類粒子同士が融着し、口腔内崩壊型錠剤として適度な空隙率および硬度を有する多孔性錠剤が得られる。
【0043】
水分の添加量は、具体的には、前記薬効成分、糖類および添加剤の種類や量によって異なるが、通常、前記薬効成分等を含む錠剤成分に対して0.3〜7重量%、より好ましくは0.5〜3重量%、さらに好ましくは0.7〜3重量%、最も好ましくは1〜3重量%程度である。水分の添加量が少ないと、錠剤強度が小さくなり、逆に多い場合は、打錠時に薬効成分等が成型装置(例えば、杵、臼など)に付着し易く錠剤の製造が困難となる。
【0044】
より具体的には、例えば、糖類としてキシリトールおよび/またはマルチトールを20〜40重量%含む混合物を用いる場合は、通常、水分を前記混合物に対して0.5〜5.0重量%、好ましくは1.0〜2.0重量%添加する。また、糖類として白糖および/またはブドウ糖を60〜80重量%含む混合物を用いる場合は、通常、水分を前記混合物に対して1.5〜2.5重量%添加する。さらに、糖類としてエリスリトールを55〜75重量%含む混合物を用いる場合は、通常、水分を前記混合物に対して1.5〜2.5重量%添加する。
【0045】
水分量は、任意の原料成分又はそれらの混合物に水分を添加して調整することができる。水分の添加法は特に限定されず、一度に添加してもよく、また、滴下或いは噴霧して添加してもよい。
【0046】
本発明の方法では、例えば、薬効成分と糖類および必要に応じて前記添加剤とを含む錠剤成分に、前記錠剤成分中に含まれる糖類粒子の表面が湿る程度の水分(具体的には、0.3〜7重量%の水分)を添加することができる。
【0047】
薬効成分と糖類等との混合は、製剤の製造において一般に用いられる混合方法、例えば、混合、練合、篩過などにより行われる。具体的には、バーチカルグラニュレー夕ーGV10(パウレック社製)、万能練合機(畑鉄工所製)、流動層造粒機FD-5S(パウレック社製)、ジヤイロシフター(徳寿製作所製)などを用いて混合することができる。
【0048】
薬効成分、糖類および水を含む混合物は、通常、打錠する前に練合される。水分を含む混合物の練合には、製剤の製造手段として一般に用いられる方法を用いることができる。例えば、薬効成分と糖類等とを混合する際に用いられる上述の装置などを用いて練合できる。
【0049】
上記打錠には、一般に錠剤の成型または造粒に用いられる装置が用いられる。例えば、単発錠剤機(菊水製作所製)、ロータリー式錠剤機(菊水製作所製)などが用いられる。打錠の際の成型圧力は、通常3〜160Kg/cm2、好ましくは5〜130Kg/cm2、より好ましくは8〜50Kg/cm2程度である。打錠時の温度は、糖類粒子が溶解又は溶融しない程度であり、通常室温(例えば20〜30℃程度)、好ましくは約25℃である。
【0050】
また、上記のようにして得られた錠剤を、さらに乾燥する。乾燥は、例えば真空乾燥、凍結乾燥、自然乾燥など一般に製剤の製造において用いられる何れの方法によっても行うことができる。
【0051】
これらの錠剤は、さらに、それが有する強度、溶解性に悪影響を与えない程度に、一般に被覆製剤の製造において用いられるコーティング法によって被覆されていてもよい。
【0052】
かくして得られる本発明の口腔内溶解型錠剤は、多孔性構造を有している。ここで言う多孔性構造とは、通常空隙率が20〜80%、好ましくは30〜70%のものを意味する。そのため、本発明の錠剤は、口腔内での崩壊性および溶解性に優れ、さらに落下強度も強い。
【0053】
すなわち、本発明の口腔内溶解型錠剤においては、口溶け(健康な成人男子の口腔内の唾液で錠剤が完全に溶解するまでの時間)は、通常0.05〜3.0分、好ましくは0.1〜1.5分程度、崩壊時間(日本薬局方第12改正に記載されている崩壊試験法による測定値)は、通常0.05〜3.0分、好ましくは0.1〜1.5分程度、硬度(錠剤硬度計による測定値)は、通常2〜25kg、好ましくは3〜20kg程度、落下強度(錠剤を30cmの高さからガラス板の上に落下させたときの破損率)は、通常0〜70%、好ましくは0〜40%程度である。
【0054】
従って、本発明の口腔内溶解型錠剤は、高齢者用、小児用の服用しやすい製剤として、また一般成人用の安全な製剤として、同一の薬効成分を含有する従来の製剤と同様に種々の病気の治療、予防に用いることができ、しかも長期間の保存、安定性に優れている。
【0055】
本発明の口腔内溶解型錠剤は、前記薬効成分を、通常0.05〜90重量%、好ましくは0.1〜70重量%、さらに好ましくは0.3〜60重量%程度、糖類を、通常10〜90重量%、好ましくは20〜85重量%、さらに好ましくは30〜80重量%程度含む。
【0056】
本発明の口腔内溶解型錠剤が投与量の少ない薬効成分を含む場合には、前記薬効成分の含有量は、錠剤中、通常0.1〜10重量%程度、糖類の含有量は、錠剤中、通常30〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは60〜85重量%程度である。
【0057】
また、本発明の口腔内溶解型錠剤が投与量の中程度の薬効成分を含む場合には、前記薬効成分の含有量は、錠剤中、通常10〜30重量%程度、糖類の含有量は、錠剤中、通常20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、さらに好ましくは40〜75重量%程度である。
【0058】
さらに、本発明の口腔内溶解型錠剤が投与量の多い薬効成分を含む場合には、前記薬効成分の含有量は、錠剤中、通常30〜70重量%程度、糖類の含有量は、錠剤中、通常10〜70重量%、好ましくは15〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%程度である。
【0059】
本発明の口腔内溶解型錠剤は、同じ薬効成分を含む従来の経口剤と同様に投与することができる。配合される薬効成分の種類、対象患者の症状などにより異なるが、一般に、成人においては、例えば薬効成分がジアゼパムの場合には、本発明の錠剤を、その薬効成分の量が一日につき約0.01mg〜100mg、好ましくは0.1〜30mg、より好ましくは0.3〜10mgとなるよう1〜3回に分割し経口投与する。また、例えば、成人の滋養強壮保健薬として、ビタミンCを含む本発明の口腔内溶解型錠剤を経口投与する場合は、ビタミンCの量が一日につき約2mg〜2000mg、好ましくは100〜2000mgとなるよう本発明の錠剤を投与する。
【0060】
【発明の効果】
本発明の口腔内溶解型錠剤は、優れた溶解性、崩壊性を有しているため服用が容易であり、かつ適度な強度を有しているため長期間の保存、安定性に優れている。従って、含有する薬効成分に応じて適用される患者、特に高齢者または小児患者の病気の治療、予防に好適に用いることができる。
【0061】
また、本発明の製造法によれば、上記のような優れた性能を有する口腔内溶解型錠剤を、繁雑な工程を経ることなく、極めて簡易に製造することができる。
【0062】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するがこれらは、本発明を限定するものではない。
【0063】
参考例1
撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーターVG10、パウレック社製)に、アスコルビン酸、酪酸リボフラビン、d-α-トコフェロール、キシリトール、マルチトール、コーンスターチ、アスパルテーム、アラビアゴム末をそれぞれ下記表1の様に添加して、1分間混合した。次に水200mlを加えて練合し、箱型真空乾燥機(楠木製作所製)を用いて真空乾燥後、整粒機(パワーミル、昭和化学機械製)で顆粒として、ステアリン酸マグネシウム添加(0.5%)後、混合機(タンブラーミキサー、昭和化学機械製)で3分間混合した。単発錠剤機(菊水製作所製)を用いて20mmφ隅角平面の杵で圧力1910Kg/cm2(力:6000Kg)で打錠することによって約900個の錠剤を得た。
【0064】
参考例2
練合機(万能練合機、畑鉄工所製)にジアゼパム、白糖、ブドウ糖、バレイショデンプン、クエン酸、ゼラチン、食用黄色5号色素をそれぞれ表2の様に添加し2分間混合した。次に50mlのアルコールと50mlの水を加えて練合し、箱型真空乾燥機(楠木製作所製)を用いて真空乾燥後、整粒機(フィッツミル、ホソカワミクロン製)で顆粒として、ショ糖脂肪酸エステル添加(0.5%)後、混合機(V型ミキサー、パターソンキリー製)1分間混合した。ロータリー式錠剤機(コレクト19K、菊水製作所製)を用いて15mmφ隅角平面の杵で圧力1980Kg/cm2(力:3500Kg)で打錠することによって約900個の錠剤を得た。
【0065】
参考例3
流動層造粒機(FD-5S、パウレック社製)に、イブプロフェン、カフェイン、エリスリトール、クエン酸、カルメロースカルシウム、コーンスターチ、ステビア、メントールをそれぞれ下記表3の様に添加し、3分間混合した。次にスプレーで水120mlを加えて造粒し、続いて乾燥後、整粒機(パワーミキサー、昭和化学機械製)で顆粒として、ステアリン酸マグネシウム0.2%とタルク1.8%を添加後、混合機(タンブラーミキサー、昭和化学機械製)で3分間混合した。ロータリー式錠剤機(コレクト19K、菊水製作所製)を用いて15mmφ隅角平面の杵で圧力1700Kg/cm2(力:3000Kg)で打錠することによって約900個の錠剤を得た。
【0066】
参考例4
水の添加量を40ml(2%)にし、圧力を32kg/cm2(力:100kg)にして打錠する以外は、参考例1と同様にして錠剤約900個を得た。
【0067】
実施例1
撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーターVG10、パウレック社製)に、アスコルビン酸、酪酸リボフラビン、d-α-トコフェロール、キシリトール、マルチトール、コーンスターチ、アスパルテーム、アラビアゴム末をそれぞれ下記表1の様に添加して、1分間混合した。次に、水32mlを加えて練合し、単発錠剤機(菊水製作所製)を用いて20mmφ隅角平面の杵で圧力32Kg/cm2(力:100Kg)で打錠することによって約800個の錠剤を得た。さらに、箱型真空乾燥機(楠木製作所製)を用いて真空乾燥した。
【0068】
【表1】

実施例2
練合機(万能練合機、畑鉄工所製)にジアゼパム、白糖、ブドウ糖、バレイショデンプン、クエン酸、ゼラチン、食用黄色5号色素をそれぞれ下記表2の様に添加し、2分間混合した。次に、10mlのアルコールと10mlの水を加えて練合し、錠剤機(単発錠剤機、菊水製作所製)を用いて10mmφ普通面の杵で圧力38Kg/cm2(力:30Kg)で打錠することによって約800個の錠剤を得た。さらに箱型真空乾燥機(楠木製作所製)を用いて真空乾燥した。
【0069】
【表2】

実施例3
流動層造粒機(FD-5S、パウレック社製)に、イブプロフェン、カフェイン、エリスリトール、クエン酸、カルメロースカルシウム、コーンスターチ、ステビア、メントールをそれぞれ下記表3の様に添加し、3分間混合した。次にスプレーで水20mlを加えて造粒し、錠剤機(単発錠剤機、菊水製作所製)15mmφの隅丸平面の杵で圧力34Kg/cm2(力:60Kg)で打錠し、約800個の錠剤を得た。さらにミニジェットオーブン(富山産業製)を用いて通風乾燥した。
【0070】
【表3】

実施例4
成型圧力を10Kg/cm2(力:30Kg)にして打錠する以外は、実施例1と同様にして錠剤約800個を得た。
【0071】
実施例5
水の添加量を10mlにして練合する以外は、実施例1と同様にして錠剤約800個を得た。
【0072】
実施例6
水の添加量を100mlにして練合する以外は、実施例1と同様にして錠剤約800個を得た。
【0073】
実施例7
下記表4に示す原料成分を用い、水の添加量を36mlとした以外は、実施例1と同様な操作を行い、錠剤約800個を得た。
【0074】
【表4】

実施例8
下記表5に示す原料成分を用い、水の添加量を40mlとし、打錠圧を36Kg/cm2(力:110Kg)とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、錠剤約800個を得た。
【0075】
【表5】

実施例9
下記表6に示す原料成分を用い、水の添加量を9mlとし、打錠圧を101Kg/cm2(力:80Kg)とした以外は、実施例2と同様な操作を行い、錠剤約1600個を得た。
【0076】
【表6】

実施例10
下記表7に示す原料成分を用い、水の添加量を11mlとし、打錠圧を127Kg/cm2(力:100Kg)とした以外は、実施例2と同様な操作を行い、錠剤約1600個を得た。
【0077】
【表7】

実施例11
下記表8に示す原料成分を用い、水の添加量を28mlとし、打錠圧を38Kg/cm2(力:120Kg)として以外は、実施例1と同様な操作を行い、錠剤約800個を得た。
【0078】
【表8】

*水酸化アルミゲル・重曹共沈物
実施例12
下記表9に示す原料成分を用い、水の添加量を24mlとし、打錠圧を35Kg/cm2(力:110Kg)とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、錠剤約800個を得た。
【0079】
【表9】

実施例13
下記表10に示す原料成分を用い、水の添加量を20mlとし、打錠圧を29Kg/cm2(力:90Kg)とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、錠剤約800個を得た。
【0080】
【表10】

実施例14
下記表11に示す原料成分を用い、水の添加量を24mlとした以外は、実施例1と同様な操作を行い、錠剤約800個を得た。
【0081】
【表11】

実施例15
下記表12に示す原料成分を用い、水の添加量を30mlとし、打錠圧を30Kg/cm2(力:90Kg)とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、錠剤約800個を得た。
【0082】
【表12】

実施例16
下記表13に示す原料成分を用い、水の添加量を30mlとした以外は、実施例1と同様な操作を行い、錠剤約800個を得た。
【0083】
【表13】

実施例17
下記表14に示す原料成分を用い、水の添加量を40mlとし、打錠圧を29Kg/cm2(力:90Kg)とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、錠剤約800個を得た。
【0084】
【表14】

実施例18
下記表15に示す原料成分を用い、水の添加量を24mlとし、打錠圧を25Kg/cm2(力:80Kg)とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、錠剤約800個を得た。
【0085】
【表15】

実施例19
下記表16に示す原料成分を用い、水の添加量を10mlとし、打錠圧を25Kg/cm2(力:80Kg)とした以外は実施例1と同様な操作を行い、錠剤約400個を得た。
【0086】
【表16】

実施例20
下記表17に示す原料成分を用い、水の添加量を16mlとした以外は、実施例1と同様な操作を行い、錠剤約800個を得た。
【0087】
【表17】

実施例21
下記表18に示す原料成分を用い、水の添加量を24mlとし、打錠圧を25Kg/cm2(力:80Kg)とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、錠剤約800個を得た。
【0088】
【表18】

実施例22
下記表19に示す原料成分を用い、アルコールと水の添加量をそれぞれ6mlとし、9mmφの杵により31Kg/cm2(力:20Kg)の圧力で打錠した以外は、実施例2と上同様な操作を行い、300mg錠を約1000個得た。
【0089】
【表19】

実施例23
下記表20に示す原料成分を用いた以外は、実施例22と同様な操作を行い、300mg錠を約1000個得た。
【0090】
【表20】

実施例24
下記表21に示す原料成分を用いた以外は、実施例22と同様な操作を行い、300mg錠を約1000個得た。
【0091】
【表21】

試験例
本発明の効果をより詳しく説明するために、実施例で得られた錠剤について、下記のようにな錠剤特性を測定した。得られた結果を表22〜表24に示す。また、対照として参考例で得られた錠剤についても同様に測定した。その結果を表25に示す。
(1)空隙率
錠剤の空隙率を次式により求めた。
【0092】
空隙率=[{錠剤の体積-(錠剤重量/原料成分の真比重)}/錠剤の体積]×100
(2)口溶け
健康な成人男子(年齢45歳、身長165cm、体重55kg)の口腔内のだ液で錠剤が完全に溶解するまでの時間を測定した。試験は2回行なわれ、結果は2回の平均値を表す。
(3)崩壊時間
日本薬局方第12改正に記載されている崩壊試験法により測定した。試験は6回行なわれ、結果は6回の平均値を表す。
(4)硬度
錠剤硬度計(TH-100、富山産業製)を用いて測定した。試験は10回行なわれ、結果は10回の平均値を表す。
(5)落下強度
錠剤を30cmの高さからガラス板の上に落下させた時の破損率を測定した。試験は10回行なわれ、結果は10回の平均値を表す。
【0093】
【表22】

【0094】
【表23】

【0095】
【表24】

【0096】
【表25】

表22〜24と表25との比較により、本発明で得られる口腔内崩壊型錠剤は、溶解性、崩壊性に優れており、さらに適度の強度を有していることがわかる。
 
訂正の要旨 ・訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1が
「 薬効成分と糖類とを含む錠剤成分に対して、0.3〜7重量%の水分を用い、前記糖類の粒子の表面を湿らせ、前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物を打錠した後、乾燥し、日本薬局方第12改正に記載されている崩壊試験法による崩壊時間が0.05〜3.0分である口腔内崩壊型錠剤を製造する方法。」であるのを
「 薬効成分と糖類とを含む錠剤成分に対して、0.3〜7重量%の水分を用い、前記糖類の粒子の表面を湿らせ、乾燥造粒末又は顆粒を形成することなく、前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物を3〜160Kg/cm2の圧力で打錠した後、乾燥し、日本薬局方第12改正に記載されている崩壊試験法による崩壊時間が0.05〜3.0分、空隙率が20〜80%および落下強度が0〜70%である口腔内崩壊型錠剤を製造する方法であって、前記糖類が、平均粒子径1〜100μmであり、かつ乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種であり、前記糖類を10〜90重量%含む混合物を打錠する製造法。」と訂正する。
・訂正事項b
特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項2ないし8、12、14及び16を削除し、それに伴い、請求項を順に請求項1〜7と訂正する。
・訂正事項c
明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書【0013】の
「すなわち、本発明は、薬効成分と糖類と前記糖類の粒子表面が湿る程度の水分とを含む混合物を打錠する口腔内崩壊型錠剤の製造法を提供する。具体的には、錠剤成分(薬効成分、糖類および所望により添加剤を含む混合物)に対して、0.3〜7重量%の水分を用い、前記糖類の粒子の表面を湿らせ、前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物を打錠し、次いで乾燥し、日本薬局方第12改正に記載されている崩壊試験法による崩壊時間が0.05〜3.0分である口腔内崩壊型錠剤を製造する方法を提供する。」を、
「すなわち、本発明は、薬効成分と糖類と前記糖類の粒子表面が湿る程度の水分とを含む混合物を打錠する口腔内崩壊型錠剤の製造法を提供する。具体的には、錠剤成分(薬効成分、糖類および所望により添加剤を含む混合物)に対して、0.3〜7重量%の水分を用い、前記糖類の粒子の表面を湿らせ、前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物を打錠し、次いで乾燥し、日本薬局方第12改正に記載されている崩壊試験法による崩壊時間が0.05〜3.0分、空隙率が20〜80%および落下強度が0〜70%であるである口腔内崩壊型錠剤を製造する方法を提供する。この方法において、糖類の平均粒子径は1〜100μmであり、糖類として、乳糖、キシリトール、マンニトールおよびエリスリトールから選択された少なくとも一種が使用される。」と訂正する。
・訂正事項d
明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書【0014】の
「前記糖類は、乳糖、マンニトール、キシリトール、又はエリスリトールなどであってもよい。前記混合物は、糖類を10〜90重量%程度、薬効成分を0.05〜90重量%程度含んでもよい。」を
「前記混合物は、糖類を10〜90重量%含んでおり、薬効成分を0.05〜90重量%程度含んでもよい。」と訂正する。
・訂正事項e
明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書【0015】の
「打錠は3〜160Kg/cm2程度の圧力で行ってもよい。打錠時に薬効成分の成型装置への付着が防止されていてもよい。」を
「前記薬効成分と糖類と水分とを含む混合物は、乾燥造粒末又は顆粒を形成することなく、打錠は3〜160Kg/cm2程度の圧力で打錠する。打錠時に薬効成分の成型装置への付着が防止されていてもよい。」と訂正する。
異議決定日 2001-12-27 
出願番号 特願平5-32763
審決分類 P 1 651・ 531- YA (A61K)
P 1 651・ 534- YA (A61K)
P 1 651・ 121- YA (A61K)
P 1 651・ 113- YA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今村 玲英子  
特許庁審判長 宮本 和子
特許庁審判官 深津 弘
大宅 郁治
登録日 2000-05-19 
登録番号 特許第3069458号(P3069458)
権利者 武田薬品工業株式会社
発明の名称 口腔内崩壊型錠剤およびその製造法  
代理人 佐伯 憲生  
代理人 谷口 光夫  
代理人 鍬田 充生  
代理人 仁木 弘明  
代理人 鍬田 充生  

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