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審決分類 審判 全部申し立て 産業上利用性  C08B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08B
管理番号 1058145
異議申立番号 異議2001-71358  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-05-01 
確定日 2002-02-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3107358号「環状構造を有するグルカンおよびその製造方法」の請求項1〜26に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3107358号の請求項1〜26に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3107358号の請求項1〜26に係る発明は、平成7年7月31日(平成6年9月13日の特許出願に基づく優先権主張)に特許出願され、平成12年9月8日に特許権の設定の登録がされた。その後、加太和博により特許異議の申立てがされ、特許取消し理由が通知された後、意見書提出の指定期間内である平成13年12月10日に、明細書の訂正請求がされた。

2.訂正請求について
(1)訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項10の記載中の
「重合度が50以上であるグルカンの製造方法」
を、
「重合度が50から5000であるグルカンの製造方法」
に訂正する。

訂正事項b
特許請求の範囲の請求項10の記載中の「反応させることを含み、」の後に改行して、
「ここで、D酵素またはサイクロデキストリングルカントランスフェラーゼを反応させる場合には、該方法は、該糖類と該酵素との反応生成物を精製することをさらに含み、」
を挿入する。

訂正事項c
特許請求の範囲の請求項13の記載中の
「A 1kalophilic」
を、
「Alkalophilic」
に訂正する。

訂正事項d
特許請求の範囲の請求項18の記載中の
「重合度が50以上であるグルカンの製造方法」
を、
「重合度が50から5000であるグルカンの製造方法」
に訂正する。

訂正事項e
特許請求の範囲の請求項19の記載中の
「重合度が50以上であるグルカンの製造方法」
を、
「重合度が50から5000であるグルカンの製造方法」
に訂正する。

訂正事項f
特許請求の範囲の請求項19の記載中の「反応させることを含み、」の後に改行して、
「ここで、D酵素またはサイクロデキストリングルカントランスフェラーゼを応させる場合には、該方法は、該糖類と該酵素との反応生成物を精製することさらに含み、」
を挿入する。

訂正事項g
特許請求の範囲の請求項2の記載中の
「前記内分岐環状構造部分の重合度が、10から100の範囲である」
を、
「前記内分岐環状構造部分の重合度が、16から100の範囲である」
に訂正する。

(4)請求の適否について
訂正事項a、d及びeは、特許明細書の特許請求の範囲10、18及び19に記載された「重合度が50以上」の上限を規定して、「重合度が50から5000」に限定しようとするものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
本発明の方法で得られるグルカンの重合度が最も好ましくは50〜5000であることは特許明細書第0076段落に記載されているので、上記訂正は明細書に記載した事項の範囲内でされたものである。

訂正事項b及びfは、許明細書の特許請求の範囲10及び19に記載された方法においてD酵素またはサイクロデキストリングルカントランスフエラーゼを反応させる場合に、該方法は、「該糖類と該酵素との反応生成物を精製すること」をさらに含むという限定を加えるものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
本発明の方法にD酵素またはサイクロデキストリングルカントランスフエラーゼを使用する場合には精製工程が行なわれ得ることは、特許明細書第0073段落の「上記反応で得られた種々の環状構造を有するグルカンは、・・・(中略)・・・精製され得る。」との記載、及び第0074段落の「D酵素、あるいはCGTaseを用いる場合には、環状構造のみを有するグルカンも生産されるが、これらは、・・・(中略)・・・目的の分岐構造を有する環状グルカンから分離され得る。」と記載されているので、上記訂正は明細書に記載した事項の範囲内でされたものである。

訂正事項cは、特許明細書の特許請求の範囲13に記載された「A lkaliphilic」を、「Alkalophilic」に訂正するものであって、誤記の訂正を目的とする訂正に該当し、明細書に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかである。

訂正事項gは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項2において内分岐環状構造部分の重合度の下限を16以上に限定しようとするものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また、本発明のグルカンの内分岐環状構造部分の重合度が、16以上であり得ることは、本件特許明細書第0125段落の「重合度16〜38の環状グルカンにナトリウムイオンが付加したピークが検出された。」と記載されているので、上記訂正は明細書に記載した事項の範囲内でされたものである。

また、上記訂正事項a〜gは、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

したがって、本件訂正は、特許法第120条の4第2項但し書き並びに同条第3項において準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
上記2.に示したように本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1〜26に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜26に記載された事項により特定された次のとおりのものである。

【請求項1】内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50から5000の範囲にあるグルカンであって、
ここで内分岐環状構造部分とはα‐1,4-グルコシド結合とα-1,6‐グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、グルカン。
【請求項2】前記内分岐環状構造部分の重合度が、16から100の範囲である、請求項1に記載のグルカン。
【請求項3】前記外分岐構造部分の重合度が、40以上である、請求項1または2に記載のグルカン。
【請求項4】前記外分岐構造部分の各単位鎖の重合度が、平均で10から20である、請求項3に記載のグルカン。
【請求項5】内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50から5000の範囲にあるグルカンと、α‐1,4‐グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの、飲食用組成物としての混合物であって、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4‐グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、混合物。
【請求項6】内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50から5000の範囲にあるグルカンと、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの、食品添加用組成物としての混合物であって、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4‐グルコシド結合とα‐1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、混合物。
【請求項7】内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50から5000の範囲にあるグルカンと、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの、輸液としての混合物であって、
ここで、内分岐環状構造部分とはα‐1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、混合物。
【請求項8】内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50から5000の範囲にあるグルカンと、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの、接着用組成物としての混合物であって、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、混合物。
【請求項9】内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50から5000の範囲にあるグルカンと、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの、老化防止剤としての混合物であって、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα‐1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、混合物。
【請求項10】内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50から5000であるグルカンの製造方法であって、
該方法は、α-1,4-グルコシド結合とα-1,6‐グルコシド結合とを有する糖類と、枝作り酵素、D酵素、およびサイクロデキストリングルカントランスフエラーゼからなる群より選択される酵素とを反応させることを含み、
ここで、D酵素またはサイクロデキストリングルカントランスフェラーゼを反応させる場合には、該方法は、該糖類と該酵素との反応生成物を精製することをさらに含み、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である方法。
【請求項11】前記糖類が澱粉である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】前記糖類がアミロペクチンである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】前記サイクロデキストリングルカントランスフエラーゼが、Alkalophilic Bacillus sp A2-5a由来の酵素である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】前記グルカンの重合度が50から5000の範囲にある、請求項10から13いずれかの項に記載の方法。
【請求項15】前記内分岐環状構造部分の重合度が、10から100の範囲である,請求項10ないし14いずれかの項に記載の方法。
【請求項16】前記外分岐構造部分の重合度が、40以上である、請求項10ないし15いずれかの項に記載の方法。
【請求項17】前記外分岐構造部分の各単位鎖の重合度が、平均で10から20である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50から5000であるグルカンの製造方法であって、
該方法はα-1,4‐グルコシド結合のみを有する糖類と、枝作り酵素とを反応させることを含み、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4‐グルコシド結合とα‐1,6-グルコシド結合とで形成される現状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、方法。
【請求項19】内分鼓環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50から5000であるグルカンとα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの混合物の製造方法であって、
該方法は、α-1,4‐グルコシド結合とα-1,6‐グルコシド結合とを有する糖類と、枝作り酵素、D酵素、およびサイクロデキストリングルカントランスフェラーゼからなる群より選択される酵素とを反応させることを含み、
ここで、D酵素またはサイクロデキストリングルカントランスフェラーゼを反応させる場合には、該方法は、該糖類と該酵素との反応生成物を精製することをさらに含み、 ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα‐1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、方法。
【請求項20】前記糖類が澱粉である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】前記糖類がアミロペクチンである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】請求項1に記載のグルカンを含有する、飲食用組成物。
【請求項23】請求項1に記載のグルカンを含有する、食品添加用組成物。
【請求項24】請求項1に記載のグルカンを含有する、輸液。
【請求項25】請求項1に記載のグルカンを含有する、接着用組成物。
【請求項26】請求項1に記載のグルカンを含有する、老化防止剤。

(2)異議申立の理由の概要
特許異議申立人加太和博は、以下の理由により本件特許は取り消されるべきである旨を主張している。
1)請求項1〜26に係る発明は、特許を受けようとする発明が明確でないので、
本件特許は特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第1項第4号に該当する。
2)請求項1〜26に係る発明は、単なる発見であって、産業上利用することができる発明に該当しないので、本件特許は特許法第29条柱書に違反してされたものであり、特許法113条第1項第2号に該当する。
3)請求項1〜26に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるので、本件特許は特許法第29条第2項に違反してされたものであり、特許法第113号第1項第2号に該当する。

(3)判断
1)特許法第36条第6項第2号について
特許異議申立人は、本件特許明細書の特許請求の範囲の記載における「重合度50から5000の範囲にある」との数値限定に関し、以下のa〜fの理由により、請求項1〜26に係る発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反している旨を主張をしている。

a.限定された数値範囲内の技術的意義、即ち、規定された下限値及び上限値の臨界的意義が不明確であり、当業者であっても本発明の技術的意義を理解することができない。

b.本願特許発明のグルカンの特徴を構成する「重合度50から5000」なる数値限定を特定した技術的意義を出願当初明細書において明確にすべきである。

c.本件特許発明に係るグルカンの特定範囲の重合度がこの重合度範囲外のグルカンに比して、本願発明の目的を達成するためになぜ好適なのか、その具体的な理由が全く不明である。

d.本件特許明細書の特許請求の範囲請求項10とこれに従属する請求項11〜17並びに請求項18、請求項19とこれに従属する請求項20〜21の記載における「重合度が50以上である」との数値限定は、下限値のみを表しているので、不明確である。

e.本件特許明細書には特許発明の好適な実施態様が重合度50以上、重合度50から5000である旨が記載されているが、本願発明の目的と関連する作用・効果の点で、真に好適であるか否かは実証されていない。特許を受けようとする発明に数個限疋を含める以上、当該数当該数値限定範囲内外での作用・効果の顕著な差異を示す必要がある。

f.詳細に説明に具体的に開示されたD酵素又はサイクロデキストリングルカントランスフェラーゼを用いた反応により得られた、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有するグルカンの重合度は、185であって、請求項10、請求19等に記載された数値限定である「重合度50以上」とは一致しないから、「重合度50以上」の臨界的意義が不明であり、請求項10とこれに従属する請求項11〜17並びに請求項18
〜21に記載された製造方法は、特許を受けようとする発明の外延が不明確である。

主張a〜c及びeについて
上記主張a〜c及びeは、要するに、「重合度50から5000の範囲にある」との数値限定が、その範囲以外のものに比べての技術的意義・臨界的意義が明確でないというものである。しかしながら、一般に数値限定の技術的意義・臨界的意義は、新規性進歩性との関連において問題となる事項であり、発明特定事項としての「重合度50から5000の範囲にある」との記載自体の意味するところは当業者に明らかであって、上記数値範囲の技術的意義が明確か否かに拘わらす、発明に属する具体的な事物を把握できるので、発明の範囲を不明確にするものとはいえない
なお、a〜c及びeの主張は特許法第36条第4項において委任する経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)に規定する要件にも関連するものであるが、この要件についても、本件明細書は、例えば、特許明細書の段落番号0018の、「本願発明は、既存の澱粉と比較して、水に対する溶解度が高く、かつ溶解した溶液の粘度が低く、そして通常の澱粉に観察される老化が起こらないという優れた性質を有する環状グルカンであって、澱粉の代替物質として有用な物質の新規な製造方法を提供することを目的とする。」等の記載により、充足している。

主張dについて
上記主張dは、「重合度が50以上である」との数値限定は下限値のみを表しているので不明確であるというものであるが、訂正請求によって特許請求の範囲における本件発明のグルカンの重合度に関する記載は「重合度50から5000の範囲」に訂正されたので、下限値だけを示すことによる不明確さの問題は生じない。

主張fについて
上記主張fは、発明の詳細な説明に開示された生成物の重合度が特許請求の範囲に規定された重合度範囲の下限値と一致していないというものであるが、特許請求の範囲に含まれるすべての範囲について発明の具体的な実施の形態を示す必要はなく、本件発明について特許請求の範囲に規定された重合度の範囲のものが、具体的形態として示された重合度のものと同様に製造・使用できないとすべき格別の理由もないので、これにより発明が不明確になっているとはいえない。

2)特許法第29条柱書について
特許異議申立人は、本件特許発明は、周知の酵素の備える作用を公知の製造工程に適用する製造方法とこの製造方法から得られる結果物に含まれる予測可能な物を提供することに留まるものであって、公知の製造方法によって得られる結果物に含まれる所望の重合度を、本発明に係る環状グルカンを当業者において常套手段である糖の構造決定手段を用いて見出したものである。よって、本件特許発明は、実証技術レベルの単なる発見に留まるものであるとともに特許請求の範囲で規定された当該重合度の有利性も不明であるから、技術的思想の創作である発明とは言い難く、特許法第29条柱書に違反していると主張している。
しかしながら、上記主張の前提である本件発明のグルカンが「公知の製造方法から得られる結果物に含まれる予測可能な物」といえるかどうかは、発明の新規性進歩性の問題であり、この前提自体が本件発明に該当しないことは、下記3)に示すとおりであるので、本件発明が「単なる発見に留まり技術思想の創作とはいえない」との主張は採用できない。

3)特許法第29条第2項について
i.甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明
特許異議申立人が提出した甲第1号証〜甲第4号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。

(I)甲第1号証:特開昭60-75295号公報
a.「糊化澱粉質に技作り酵素を作用させて得られる生成物から水溶性面分を採取することを特徴とする水溶性澱粉質の製造法1(特許請求の範囲第1項)
b.「飲食物の製造に関し、糊化澱粉質に枝作り酵素を作用させて得られる生成物から採取した水溶性澱粉質を含有せしめることを特徴とする飲食物の製造法」(特許請求の範囲第2項)
c.「澱粉を糊料としてさらに広く利用する目的て、澱粉を低分子化することなく物性を変化させる研究を実施した。その結果、澱粉のα-1,4-結合をα‐1,6-緒合に転移させる酵素(Q-酵素、EC2.4.4.18)、即ち枝作り酵素を澱粉に充分に作用させて、その可溶性区分を集めると高分子ではあるが、非常に水への溶解性の高い糖質を生成することを発見し、これに基づいて本発明を完成した。」(第1頁右欄8〜16行)
d.「本水溶性澱粉質は、原料澱粉に比較し水に極めて溶けやすく、低粘度ではあるが,還元力の増加はみられないこと,さらにゲル濾過(セフアデックスG-100,ファルマシア社製)ではじめに溶出してくることから原料澱粉と同程度の分子量を有する高分子物質であると認められる。」(第3頁上段右欄13〜18行)
e.「実施例2ワキシーコーンス夕ーチ1kgに水33Lを加え、水懸濁液とし、水酸化ナトリウムでpH75に調製し、沸騰水溶中で65℃達温後10分加熱糊化し、流水中で糊化液を40℃以下に冷却後、バチルス・メガテリウム10-5株を用いて得た枝作り酵素をコーンスターチ1g当たり5単位添加し、室温で1晩反応させた。反応液を70℃まで加熟して酵素を失活させた後、遠心分離液で5000rpm、20分間遠心分離し、水不溶性画分を除去した水可溶性画分液約31Lにエチルアルコール約30Lを加え、水可溶性画分を沈殿させた。その沈殿物を室温で減圧乾燥して、スピードカッター(ナショナルMK-122型)で粉砕し100メッシュの篩を通過する白色の水溶性澱粉質850gを得た。」(公開公報第4頁下段左欄13〜右欄8行)

(II)甲第2号証:特開平6-62883公報
a.「澱粉類にサイクロデキストリン合成酵素を作用させて得たサイクロデキストリン製品から内分岐大環状サイクロデキストリンを含むサイクロデキストリン混合物を製造する方法。」(特許請求の範囲第1項)
b.「分岐CDについては、特にCD環内にα-1,6結合を持つ内分岐CDは、古くはフレンチらによる内分岐α-及び内分岐β-の存在が予想されている。」(段落番号0004)
c.「そこで、本発明者らはαからγ-CDには内分岐CDは存在せず環に歪みがかかる大環状CDにその存在の可能性を予想し、さらにプルラナーゼを用いず、グルコアミラーゼのみを用いた大環状CDの調製を試み、グルコアミラーゼの作用を受けず、枝切り酵素の作用によりグルコース9個以上のα-1,4グルカンを産生することを確認し、内分岐大環状CDの存在を明確にして本発明を完成したのである。」(段落番号0007)
d.「したがって、E’はG10であり、Eはプルラナーゼで切断されない環状糖(ε-CD)と、環内にα-1,6結合を1個もつ内分岐大環状CD(IBr-ε-CD〕の混合物であることが明らかにされた。」(段落番号0018)
e.「環内にα-1,6結合が2個以上ある大環状内複分岐CDは未だ発見されていないが、その存在も予想できる。」(段落番号0020)
f.「本発明の方法では、CD合成酵素により生産されたCD製品からグルコアミラーゼを用いることにより、内分岐大環状CDを含むCD混合物を製造することができる。さらに、酵母を作用させることによりグルコースとマルトースは資化されるので、α-,β-,γ-CDを含む大環状CD混合物が得られる。用途によってはこの状態でも商品化できるが、大環状CD含有量を高めた製品を生産するには、ODSカラムを用いる。すなわち、水溶出によりε環以上のCDが得られるので、これを濃縮して製品化すればよい。」 (段落番号0029)
g.「大環状CDの利用法としては、クロロフィル、ステロイド、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、その他の分子量が大きい疎水性物質の包接、普通環CDでは包接し難い不快臭の包接などがあり、さらに溶解性にも優れているので、可溶化にも利用できる。その他普通環CD、分岐CDと同様に、医薬、化粧品、化学工業等への用途も考えられる。」(段落番号0030)

(III)甲第3号証:特開平1-199575号公報
a,「CGTaseは、デンプン、アミロース、アミロぺクチン、グリコーゲンなどのα-1,4-グルカン及びそれらの部分加水分解物中のα-1,4-グルコピラノシド結合に作用してサイクロデキストリン類を生成するCD生成反応、そしてサイクロデキストリン類を開環して蔗糖やマルトースなどの糖残基受容体に転移するカップリング反応及び種々の重合度を異にするマルトオリゴ糖を生成する不均化反応を触媒する酵素である。」(第2頁所上段右欄16行へ同第2頁下段左欄5行)
b.当該公開公報に開示された第3表及び第1図には、サイクロデキストリン・グルカノトランスフェラーゼを糖に作用させたときの生成物に関する記載がある。

(IV)甲第4号証:「澱粉科学ハンドブック」二國二郎監修、朝倉書店、昭和52年7月20日初版
a.「さらに高重合度(〜12)までのサイクロデキストリンが分離されているが、重合度10以上のものは環状分子に側鎖が縮合したものと考えられる。(P67)
b.「アミロペクチンから形成したサイクロデキストリンのなかにはα-1,6-結合
を含むものもある。」(P472)

(V)甲第5号証:「澱粉科学」第30巻、第2号、1983年刊行
a.「枝作り酵素(branching enzyme)は、α-1,4グルカンに作用し、その結合を切断グルカン鎖を同一分子内または他の分子にα-1,6結合で転移させる作用を解媒する酵素である。」 (P223)
b.「澱粉を含む食品加工において澱粉の老化は保存性の低下や消化率の減少をもたらす等、大きな問題点となっているが、その原因の大半は、澱粉中に含まれるアミロースの老化に起因している。したがって、branching enzymeを用いて、食品中の澱粉分子に更に枝分れさせることができれば澱粉の老化防止や、食品の物性の改善などに有効と考えられ、その応用途は非常に広いものと予想される。」 (P223)

ii.対比・判断
a.請求項1に係る発明について
はじめに、甲第1号証に記載された水溶性澱粉質が、本件特許の請求項1に記載されたグルカン(以下、本件グルカンという。)に相当する構造を有する物質であるか否かについて検討する。
本件グルカンの製法を示した本件実施例1の記載と、甲第1号証の水溶性澱粉質製法を示した甲第1号証の実施例2の記載を対比すると、両者はいずれもワキシコーンスターチを微アルカリ性条件下(pH7.5)で加熱して糊化し、冷却後に枝作り酵素を添加して反応させ、酵素失活、遠心分離後に、可溶性画分にエタノールを加えて沈殿させ、凍結乾燥して、粉末生成物を得る工程から構成されている点で一致しているが、本件グルカンの製法では、使用する枝作り酵素の使用量が、「基質1g当たり約50〜10000単位である。」[0069欄]とされ、実施例1においても1g当たり400単位が使用されているのに対し、甲第1号証の製法では、1g当たり5gが使用されているに過ぎない点で相違している。そして、甲第1号証における生成物は、「原料澱粉と同程度の分子量を有する高分子物質である」と記載されており、これに反して本件グルカンと同程度の重合度範囲までに低分子化していると考えるべき根拠は見出せない。 また、甲第1号証を精査しても、澱粉に枝作り酵素を作用させることによって、本件グルカンの特徴的な構造である内分岐環状部分を形成する反応が生じることについても何らの記載も示唆もなく、甲第1号証に記載された水溶性澱粉質が内分岐環状部分を有すると理解できる根拠も見出せない。
そうすると、甲第1号証に記載された水溶性澱粉質が、本件特許の請求項1に記載されたグルカン(以下、本件グルカン)に相当する内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する構造を有する物質とすることはできないし、重合度の点でも本件グルカンで規定している範囲内のものとは認めることができない。

次に、甲第2号証に記載された、内分岐環状構造を有する大環状シクロデキストリン(CD)が、本件グルカンに相当する構造を有するか否かについて検討する。
甲第2号証には、上記大環状CDについて、「利用法としては、・・・普通環CDでは包接し難い不快臭の包接」。「枝切り酵素の作用によりグルコース9個以上の以上のα-1,4グルカンを産出」、「水溶出によりε環以上のCDが得られるので、これを濃縮して製品化すればよい」と記載されており、その製法及びこれらの記載からみて、α〜γCDに比べて相対的には大環状であるとしても、本件グルカンのような重合度50を超えるようなものまでも示唆しているとは認めることができない。また、甲第2号証には、大環状CDが内分岐環状構造部分と共に外分岐構造部分を有することを示唆する記載もない。
そうすると、甲第2号証に記載された大環状CDが、本件特許の請求項1に記載されたグルカン(以下、本件グルカン)に相当する内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する構造を有する物質とすることはできないし、重合度の点でも本件グルカンで規定している範囲内のもの認めることができない。

また、甲第3〜4号証のいずれにも、本件グルカンのような重合度50を超えるようなものまでも示唆する記載も、内分岐環状構造部分と共に外分岐構造部分を有することを示唆する記載も見出せない。

甲第5号証は、本件グルカンの製造に使用される酵素についての一般的な事項が記載されているだけであり、該酵素の作用により本件グルカンが生成するについては記載も示唆もされていない。

以上に述べたように、本件グルカンは甲第1号証〜甲第5号証のいずれにも記載も示唆もされていない物質であるし、甲第1号証〜甲第5号証の記載を組み合わせても、当業者が本件グルカンを想到し、製造することができるということはできない。

したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、刊行物1〜5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認めることができない。

b.請求項2〜26項に係る発明について
請求項2〜4に係る発明は本件グルカンをさらに限定したものであり、請求項5〜9に係る発明は本件グルカンを含む混合物であり、請求項10〜19に係る発明は本件グルカン又はそれを含む混合物の製造方法であり、請求項20〜26に係る発明は本件グルカンを含有する用途発明であるので、上に述べたと同様の理由によって、当業者が容易に発明できたものと認めることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1〜26に係る発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1〜26に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
環状構造を有するグルカンおよびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50から5000の範囲にあるグルカンであって、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、
グルカン。
【請求項2】 前記内分岐環状構造部分の重合度が、16から100の範囲である、請求項1に記載のグルカン。
【請求項3】 前記外分岐構造部分の重合度が、40以上である、請求項1または2に記載のグルカン。
【請求項4】 前記外分岐構造部分の各単位鎖の重合度が、平均で10から20である、請求項3に記載のグルカン。
【請求項5】 内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50から5000の範囲にあるグルカンと、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの、飲食用組成物としての混合物であって、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、混合物。
【請求項6】 内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50から5000の範囲にあるグルカンと、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの、食品添加用組成物としての混合物であって、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、
混合物。
【請求項7】 内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50から5000の範囲にあるグルカンと、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの、輸液としての混合物であって、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、
混合物。
【請求項8】 内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50から5000の範囲にあるグルカンと、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの、接着用組成物としての混合物であって、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、
混合物。
【請求項9】 内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50から5000の範囲にあるグルカンと、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの、老化防止剤としての混合物であって、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、
混合物。
【請求項10】 内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50から5000であるグルカンの製造方法であって、
該方法は、α-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とを有する糖類と、枝作り酵素、D酵素、およびサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼからなる群より選択される酵素とを反応させることを含み、
ここで、D酵素またはサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを反応させる場合には、該方法は、該糖類と該酵素との反応生成物を精製することをさらに含み、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、方法。
【請求項11】 前記糖類が澱粉である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】 前記糖類がアミロペクチンである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】 前記サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼが、Alkalophilic Bacillus sp. A2-5a由来の酵素である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】 前記グルカンの重合度が50から5000の範囲にある、請求項10から13いずれかの項に記載の方法。
【請求項15】 前記内分岐環状構造部分の重合度が、10から100の範囲である、請求項10ないし14いずれかの項に記載の方法。
【請求項16】 前記外分岐構造部分の重合度が、40以上である、請求項10ないし15いずれかの項に記載の方法。
【請求項17】 前記外分岐構造部分の各単位鎖の重合度が、平均で10から20である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】 内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50から5000であるグルカンの製造方法であって、
該方法は、α-1,4-グルコシド結合のみを有する糖類と、枝作り酵素とを反応させることを含み、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、方法。
【請求項19】 内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50から5000であるグルカンと、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの混合物の製造方法であって、
該方法は、α-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とを有する糖類と、枝作り酵素、D酵素、およびサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼからなる群より選択される酵素とを反応させることを含み、
ここで、D酵素またはサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを反応させる場合には、該方法は、該糖類と該酵素との反応生成物を精製することをさらに含み、
ここで、内分岐環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、方法。
【請求項20】 前記糖類が澱粉である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】 前記糖類がアミロペクチンである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】 請求項1に記載のグルカンを含有する、飲食用組成物。
【請求項23】 請求項1に記載のグルカンを含有する、食品添加用組成物。
【請求項24】 請求項1に記載のグルカンを含有する、輸液。
【請求項25】 請求項1に記載のグルカンを含有する、接着用組成物。
【請求項26】 請求項1に記載のグルカンを含有する、老化防止剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】
本願発明は、澱粉加工工業における原料、飲食用組成物、食品添加用組成物、糊料あるいは生物崩壊性プラスチック用の澱粉の代替物質として有用な、グルカンあるいはその誘導体、およびその製造方法に関する。
【0002】
更に詳しくは、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上であるグルカンおよびその製造方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
澱粉は、マルトース、水飴類、またはサイクロデキストリンなどの製造のための原料、飲食用組成物、食品添加用組成物、糊料あるいは生物崩壊性プラスチック用素材として用いられている高分子物質である。しかし、既存の澱粉には、溶解性が低いこと、老化しやすいこと、および高い粘度を有すること、という問題点がある。具体的には、澱粉は、一般的に水に対する溶解度が低い。従って、澱粉を溶解するためには、加熱処理、または、有機溶媒、酸、あるいはアルカリなどにより処理を行うことが必要である。
【0004】
溶解した澱粉もしくは糊化した澱粉は、迅速に老化し、不溶性の沈澱を形成する。澱粉の老化は、澱粉溶液の粘弾性、澱粉の接着性などの物性を変化させる、あるいは、澱粉質を含有する食品においては、保水性、保形性、冷凍耐性、または消化性を低下させるなどの問題を引き起こしている。
【0005】
さらに、糊化した澱粉は、高い粘度を有する。これは、澱粉中のアミロペクチンが、房状構造が多数連なった非常に長い分子であることに起因する。高粘度であるため、澱粉を、マルトースあるいはサイクロデキストリンなどを製造するための原料として用いる場合、取り扱いが困難であるという問題がある。例えば、一定濃度以上の糊化した澱粉を用いた場合には、製造時に輸送用のパイプが詰まることがある。
【0006】
このように、既存の澱粉が有する上記性質(溶解性の低さ、老化性、および高粘度)は、食品およびその他の産業において、澱粉の利用を制限するものであった。
【0007】
そこで、これらの澱粉を低分子化させることにより、溶解性および耐老化性を向上させる研究が行われ、ある程度は、老化を防止し得るようになった。しかし、過剰な分子量低下を抑えることは困難であり、高分子である本来の澱粉の持つ固有の性質を失うという問題が生じた。さらに、これらの方法では、澱粉の還元力が増加するため、タンパク質やアミノ酸などと混合して加熱した際に、これらの物質との反応により、澱粉が着色してしまうため、その用途は制限されていた。一方で、これらの澱粉を低分子化することなく、溶解性を向上させる研究が行われ、澱粉のα-1,4-結合を切断し、α-1,6-結合を転移反応により合成する酵素(Q-酵素、EC 2.4.1.18)、すなわち枝作り酵素を澱粉に反応させて、水溶性澱粉が得られている(特開昭60-75295号公報)。しかし、この方法で得られた水溶性澱粉は、原料として用いた澱粉と同程度の分子量を有する高分子物質であり、上記澱粉が有する問題点を解決するものではなかった。
【0008】
他方、上記澱粉の代替物として、D-グルコースからなる環状の糖類、すなわち環状グルカンを使用することが考えられる。
【0009】
この環状グルカンとしては、サイクロデキストリン類が既に知られている。サイクロデキストリン類は、通常、澱粉等にサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(以下、CGTaseという)を反応させて製造されている。
【0010】
澱粉にCGTaseを作用させることによりサイクロデキストリン(CD)を合成すると、通常6から8の重合度を有するサイクロデキストリン(α-CD、β-CD、およびγ-CD)が生産される。このα-、β-あるいはγ-CDでは、澱粉の代替物とはなり得ないため、さらに重合度の大きいサイクロデキストリンが必要となる。
【0011】
重合度が9から13のサイクロデキストリン類が、澱粉にCGTaseを作用させて合成されている(Archives of Biochemistry and Biophysics vol.111 153-165(1965)が、その収量は極めて低い。さらに重合度が大きい環状のグルカンについては、開示されていない。
【0012】
特開平6-62883は、高重合度のCDを開示しているが、その重合度は、最高28程度である。しかも、内分岐CDを含まないε-(重合度10)、η-(重合度12)、θ-(重合度13)のCDにマルトースを過剰に加えてプルラナーゼを作用させて製造され得るという可能性を示唆しているにすぎない。
【0013】
ところで、上記Archives of Biochemistry and Biophysics vol.111 153-165(1965)には、α-1,4-グルコシド結合からなる環状構造内部にα-1,6-結合を有するグルカン(内分岐グルカン、あるいは内分岐CD)、あるいは、環状α-1,4-グルカンの外部にα-1,6-結合を有するグルカン(外分岐グルカン、あるいは外分岐CD)が副産物として生産されることが記載されている。
【0014】
内分岐グルカンは、特開平6-62883に、内分岐構造を有するサイクロデキストリンとしてその構造が記載されている。この公開公報には、内分岐サイクロデキストリンは、環に大きなひずみがかかる重合度10から13の大環状サイクロデキストリンにのみ存在すること、および環内に存在するα-1,6-結合の個数は、多数個の可能性も示唆されているものの、分析した範囲ではすべて1個であったことが記載されている。
【0015】
外分岐グルカンについては、その製法と構造が、特開昭63-46201および特開昭64-74997に記載されている。これらの公開公報には、分岐デキストリンとサイクロデキストリンとを混合し、枝きり酵素を作用させて、外分岐サイクロデキストリンを製造したことが記載されている。しかし、反応に使用したサイクロデキストリンが内分岐環状構造を有していないので、内分岐環状構造部分と外分岐構造とを有するグルカンは、開示されていない。さらに、環状構造部分は、重合度6-8であり、分岐構造部分は、せいぜい重合度6のマルトオリゴ糖あるいは分岐マルトオリゴ糖が結合しているものにすぎない。
【0016】
以上のように、上記澱粉の代替物として、サイクロデキストリンを使用することが考えられたが、いずれも重合度は小さく、代替物となり得ない。また、内分岐あるいは外分岐を有するCDも開示されているが、重合度が小さく、澱粉の代替物としては、使用できない。さらに、内分岐あるいは外分岐構造を有するCDも開示されているが、重合度の高いCDの生産は極めて微量であるから、澱粉の代替物としての環状グルカンを大量に生産することはきわめて困難であるというのが現状である。
【0017】
従って、澱粉の代替となり得る分子量の大きい環状グルカンの簡易な製造方法が望まれていた。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、上記問題点を解決することを目的とするものである。本願発明は、既存の澱粉と比較して、水に対する溶解度が高く、かつ溶解した溶液の粘度が低く、そして通常の澱粉に観察される老化が起こらないという優れた性質を有する環状グルカンであって、澱粉の代替物質として有用な物質の新規な製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、従来、環状化反応を触媒するとは考えられなかった1,4-α-グルカン分枝酵素(枝作り酵素、Q酵素)および4-α-グルカノトランスフェラーゼ(D酵素、不均化酵素)が、澱粉に作用して環状グルカンを合成し得ることを初めて見いだし、本願発明に至ったものである。さらに、本願発明者らは、CGTaseの反応機構として、従来知られていた機構とは異なる反応機構を見いだした。その反応機構に基づいて、CGTaseを用いて、分岐を有する環状グルカンを合成し得ることを発見し、これを利用して本願発明を完成させたものである。
【0020】
本願発明は、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上であるグルカン(以下、本願発明のグルカンという)に関する。
【0021】
好適な実施態様においては、前記グルカンの重合度が50から5000の範囲にある。
【0022】
好適な実施態様においては、前記グルカンの内分岐環状構造部分の重合度が、10から100の範囲である。
【0023】
好適な実施態様においては、前記グルカンの外分岐構造部分の重合度が、40以上である。
【0024】
好適な実施態様においては、前記外分岐構造部分の各単位鎖の重合度が、平均で10から20である。
【0025】
さらに、本願発明は、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50以上であるグルカンと、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの混合物に関する。
【0026】
さらに、本願発明は、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上であるグルカンの製造方法であって、該方法は、α-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とを有する糖類と、該糖類に作用して環状構造を形成し得る酵素とを反応させることを含む。
【0027】
好適な実施態様においては、前記糖類が澱粉、あるいはアミロペクチンである。好適な実施態様においては、前記酵素が枝作り酵素、D酵素、あるいはサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼである。
【0028】
さらに好適な実施態様においては、前記サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼが、Alkalophilic Bacillus sp.A2-5a由来の酵素である。
【0029】
好適な実施態様においては、前記グルカンの重合度が50から5000の範囲にある。
【0030】
好適な実施態様においては、前記グルカンの内分岐環状構造部分の重合度が、10から100の範囲である。
【0031】
好適な実施態様においては、前記グルカンの外分岐構造部分の重合度が、40以上である。
【0032】
好適な実施態様においては、前記外分岐構造部分の各単位鎖の重合度が、平均で10から20である。
【0033】
本願発明は、さらに、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上であるグルカンの製造方法であって、該方法は、α-1,4-グルコシド結合のみを有する糖類と、枝作り酵素とを反応させることを含む。
【0034】
本願発明は、また、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50以上であるグルカンと、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造を有するグルカンとの混合物の製造方法であって、該方法は、α-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とを有する糖類と、該糖類に作用して環状構造を形成し得る酵素とを反応させることを含む。
【0035】
好適な実施態様においては、前記糖類が澱粉、あるいは、アミロペクチンである。
【0036】
好適な実施態様においては、前記酵素がD酵素あるいはサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼである。
【0037】
本願発明は、さらに、上記グルカンを含有する、飲食用組成物、食品添加用組成物、輸液、接着用組成物および澱粉の老化防止剤に関する。
【0038】
本願発明の方法により、上記目的が達成され得る。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明を詳細に説明する。
【0040】
(本願発明の概略)
図1は、本願発明の、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上のグルカンの製造方法のひとつを示す模式図である。図1において、水平の直線および曲線は、α-1,4-グルコシド結合でつながったグルカンの鎖を示し、垂直の矢印は、α-1,6-グルコシド結合を示す。図1の21は還元末端を示す。白ぬり三角は酵素がアッタクしたグルコシド結合を、黒ぬり三角は酵素作用により新たに合成されたグルコシド結合を示す。(以下の模式図における水平の直線、曲線、および垂直の矢印、白ぬり三角、および黒ぬり三角も同様である)。
【0041】
本願発明は、α-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とを有するアミロペクチンに、CGTase、枝作り酵素(BEと表す)、あるいはD酵素(DEと表す)を作用させると、図1の2、5、および6で示される内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上のグルカンが得られることを発見して完成されたものである。図2は、図1で得られた反応生成物のゲル濾過パターンである。いわゆる大環状CDといわれる図1の3、内分岐CDといわれる図1の8、外分岐CDといわれる図1の9、そしてCD(図1の4)等よりも分子量が大きいが、原料よりは明らかに分子量が小さい。
【0042】
図1における2、5、あるいは6で示されるように、内分岐環状構造部分とその環状構造に結合した外分岐構造部分とからなり、重合度が50以上のグルカンが、本願発明の方法で得られたグルカンである。その態様は、図3に示される。
内分岐環状構造部分とは、本願明細書においては、α-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分をいう。
【0043】
外分岐構造部分とは、本願明細書においては、前記内分岐環状構造に結合した非環状構造部分をいう。
【0044】
なお、本願発明においては、上記グルカンという用語には、グルカンの誘導体が含まれる。さらに、本願発明の方法においては、原料という用語には誘導体化された原料が含まれる。
【0045】
(酵素)
本願発明に使用し得る酵素としては、α-1,4-グルコシド結合および少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合を有する糖類に作用して、重合度が50以上であって、環状構造を有するグルカンを形成し得る酵素であれば、いずれをも使用し得る。使用し得る酵素としては、1,4-α-グルカン分枝酵素(枝作り酵素、Q酵素)、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(D酵素、アミロマルターゼ、不均化酵素)、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
これらの酵素が、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上のグルカンを生産することは、従来知られている酵素の作用機構を考慮すると、驚くべきことである。
【0047】
枝づくり酵素は、澱粉系の糖類のα-1、4-グルカン鎖の一部を6位に転移して分枝を作る酵素である。従って、この枝作り酵素が、環状構造を形成し得るとは全く予想が出来ないものである。
【0048】
さらに、D酵素(ディスプロポーショネーティングエンザイム)(EC 2.4.1.25)は、マルトオリゴ糖の糖転移反応(不均一化反応)を触媒する酵素であり、供与体分子の非還元末端からグルコシル基あるいは、マルトシルもしくはマルトオリゴシルユニットを受容体分子の非還元末端に転移する酵素である。従って、酵素反応の結果、最初に与えられたマルトオリゴ糖の重合度の不均一化がおこる。この不均一反応は、例えば、可溶性澱粉あるいはアミロース等の高分子量の澱粉を供与体とし、グルコースあるいはマルトオリゴ糖を受容体としたときにおこることが知られている。従って、このD酵素を澱粉に作用させた場合、重合度の異なる糖類が生じることは予想し得ても、枝作り酵素と同様に、環状化糖を形成し得るとは全く予想ができないものである。
【0049】
また、CGTaseも、従来とは異なる反応機構を有するものであることが明らかとなり、本願発明に至ったものである。従って、本願発明は、従来、重合度が高く、かつ環状構造を有するグルカンを生産することが不可能と思われていた酵素を用いて、環状グルカンの新たな製造方法を提供するものである。以下、CGTaseの新たな反応について説明する。
【0050】
従来考えられていたCGTaseの反応を図4を用いて説明する。図4Aに示すように、アミロース11の様なα-1,4-グルカンにCGTaseを作用させた場合、本酵素はアミロース分子の非還元末端から6から8個のグルコース鎖を認識してこの部分を環状化させるように転移反応を行い、元の基質からの最終的な産物は、重合度6-8の環状マルトオリゴ糖(α-、β-およびγ-CD)12と少量の非環状オリゴ糖13になると考えられていた。
【0051】
また、図4Bに示すように、CGTaseをアミロペクチン14に作用させた場合も、アミロペクチン側鎖の非還元末端の6から8個のグルコース鎖を認識してこの部分を環状化させるように転移反応を行い、重合度6-8のCD12と非環状リミットデキストリン15になると考えられていた。
【0052】
他方、本願発明者らは、CGTaseをアミロペクチンに作用させた際の、生産物のゲルろ過クロマトグラフィーの溶出パターンの変化を検討した。図5にその結果を示す。ボイドボリュームの位置に溶出されていたアミロペクチンは、酵素反応の経過とともに、低分子化し、主として2つの低分子ピーク(IおよびII)を生じた。このうちピークIIは低分子のCD(α-およびβ-CD)であった。またIとIIの間の小さなピークは、重合度9〜14程度の大環状CD、内分岐CD、外分岐CD、リニアなマルトオリゴ糖の混合物のピークであった。一方、ピークIはこれらのCDよりも明らかに高分子であるが、アミロペクチンよりは明らかに小さい。これらの結果は、図4Bのメカニズムでは説明ができず、より大きな環状化反応(図6)を考えることにより説明がつく。
【0053】
もし、このような環状化反応が起こっている場合、環状構造部分はグルコアミラーゼにより分解されないため、グルコアミラーゼに耐性を示すグルカンが生じているはずである。
【0054】
そこで、図5の各反応時間の生産物中のCD量、CD以外のグルコアミラーゼ耐性グルカン量を求めた。なおここで反応液中のCD量は、α、β、γ-CDをそれぞれHPLC法により定量して求めた。グルコアミラーゼ耐性グルカン量はグルコアミラーゼにより分解されないグルコース量を測定して求めた。CD以外のグルコアミラーゼ耐性グルカン量はグルコアミラーゼ耐性グルカンの全量からCD量を差し引くことにより求めた。図7に示したように、CGTaseを作用させることにより、明らかにCD以外のグルコアミラーゼ耐性グルカンがつくられていることがわかった。従って、図5でみられた、アミロペクチンの低分子化産物ピークIは、図6のような大きな環状化反応により起こっていることが考えられる。
【0055】
そこで、低分子化反応物ピークIを分取し、これをさらに分析したところ、この物質がα-1,6-結合を含む環状構造を有するグルカンであることが証明できた。このことは、CGTaseをアミロペクチンに作用させた場合にも、これまで知られていたような、CD合成反応以外に、α-1,6-結合を含む環状化反応を触媒する事が証明されたことを示している。
【0056】
以上のように、本願発明は、糖類に作用する種々の酵素に、環状構造を形成し得る能力があることを見いだして本願発明を完成させたものであり、環状構造を形成し得る能力がある酵素はすべて、本願発明に含まれ得る。
【0057】
(枝作り酵素)
枝づくり酵素は、種々の植物、動物、細菌等の微生物に存在しており、その起源は問わない。反応最適温度が高い点から、好熱性細菌由来の枝作り酵素遺伝子をクローン化した大腸菌から精製された枝作り酵素が、あるいは、大量の酵素が得易い点から、馬鈴薯由来の枝作り酵素が好ましい。
【0058】
(D酵素)
D酵素としては、種々の植物、あるいは微生物に由来するものが使用され得、市販の酵素も使用され得る。D酵素は最初、馬鈴薯から発見されたが、馬鈴薯以外にも、種々の植物および大腸菌などの微生物に存在することが知られている。この酵素は、植物に由来する場合にはD酵素、微生物に由来する場合にはアミロマルターゼと呼ばれている。従って、D酵素はその起源は問わず、植物由来の酵素をコードする遺伝子を大腸菌などの宿主を用いて発現させたものであっても使用し得る。
【0059】
(CGTase)
CGTaseとしては、周知の微生物由来のCGTase、あるいは市販のCGTaseが用いられ得る。微生物由来のCGTaseとしては、好適には、市販のBacillus stearothrmophilus由来のCGTase(株式会社林原生物化学研究所、岡山)、Bacillus macerans由来のCGTase(商品名:コンチザイム、天野製薬株式会社、名古屋)、あるいはAlkalophilic Bacillus sp.A2-5a由来のCGTaseが用いられ得る。より好適には、Alkalophilic Bacillus sp.A2-5a由来のCGTaseが用いられ得る。Alkalophilic Bacillus sp. A2-5aは、特開平7-107972号に開示されているアルカリ域で高い活性を有するCGTaseを産生する株であり、出願人によって、工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号(FERM P-13864)として寄託されている。
【0060】
上記枝作り酵素、D酵素、あるいはCGTaseは、澱粉分子内のα-1,4-またはα-1,6グルコシド-結合を加水分解するエンド型のアミラーゼ類の酵素活性が検出されなければもしくは非常に弱ければ、精製段階の粗酵素であっても、本願発明のグルカンの製造に使用し得る。
【0061】
また、本願発明に用いる酵素は、精製酵素、粗酵素を問わず、固定化されたものでも反応に使用し得、反応の形式は、バッチ式でも連続式でもよい。固定化の方法としては、担体結合法、(たとえば、共有結合法、イオン結合法、あるいは物理的吸着法)、架橋法あるいは包括法(格子型あるいはマイクロカプセル型)等、当業者に周知の方法が使用され得る。
【0062】
(使用する原料:基質)
本願発明に使用する原料としては、α-1,4-グルコシド結合および少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合を有する糖類が用いられ得る。このような糖類としては、澱粉、澱粉の部分分解物、アミロペクチン、グリコーゲン、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、可溶性澱粉、デキストリン、澱粉加水分解物、ホスホリラーゼによる酵素合成アミロペクチンなどが挙げられる。
【0063】
澱粉としては、通常市販されている澱粉であればどのような澱粉でも用いられ得る。例えば、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉、タピオカ澱粉などの地下澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉などの地上澱粉が用いられ得る。
【0064】
澱粉の部分分解物としては、上記澱粉を酵素や酸などで部分的に加水分解したもの、澱粉の枝切り物が挙げられる。
【0065】
アミロペクチンとしては、特にアミロペクチン100%からなるワキシーコーンスターチが、製造されるグルカンの分子量分布がより均一となるため、好適に用いられ得る。例えば、重合度が約600程度以上のアミロペクチンが原料として用いられ得る。
【0066】
また、枝作り酵素を用いる場合には、α-1,4-結合のみを有するグルカンも原料として用いられ得る。α-1,4-グルコシド結合のみを有する糖類としては、アミロース、澱粉の部分分解物、澱粉枝切り物、ホスホリラーゼによる酵素合成アミロース、マルトオリゴ糖などが挙げられる。重合度が約400以上のアミロースが好適に用いられ得る。
【0067】
また、原料としては、上記澱粉あるいは澱粉の部分分解物等の誘導体も用いられ得る。例えば、上記澱粉のアルコール性の水酸基の少なくとも1つが、グリコシル化、ヒドロキシアルキル化、アルキル化、アセチル化、カルボキシメチル化、硫酸化、あるいはリン酸化された誘導体なども用いられ得る。さらに、これらの2種以上の混合物も原料として用いられ得る。
【0068】
(酵素と原料との反応)
本願発明のグルカンの製造方法における、上記原料と上記酵素とを反応させる工程は、本願発明のグルカンが生成するpH、温度などの反応条件であれば、いずれもが用いられ得る。上記原料の濃度(基質濃度)も、反応条件等を考慮して決定され得る。
【0069】
酵素が枝作り酵素である場合には、反応のpHは、通常約3から約11である。反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは約4から約10、さらに好ましくは約7から約9である。温度は、約10℃から約110℃、反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは約20℃から約90℃である。基質濃度は、通常約0.05%から約60%程度、反応速度、効率、基質溶液の取り扱い易さなどの点から、好ましくは約0.1%から約30%程度である。使用する酵素量は、基質1gあたり、通常約50〜10,000単位である。
【0070】
酵素がD酵素である場合には、反応のpHは、通常、約3から約10、反応速度、反応効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは約4から約9、さらに好ましくは、約6から約8である。温度は、約10℃から約90℃、反応速度、反応効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは約20℃から約60℃、さらに好ましくは、約30℃から約40℃の範囲である。耐熱性の微生物などから得られる酵素を用いる場合は、約50℃から約110℃の高温で使用し得る。原料の濃度(基質濃度)も、反応条件等を考慮して決定し得る。通常、約0.1%から約50%程度、反応速度、効率、基質溶液の取り扱い易さなどの点から、好ましくは約0.1%から約30%、溶解度などを考慮すると、さらに好ましくは、約0.1%から約20%である。使用する酵素の量は、反応時間、基質の濃度との関係で決定され、通常は、約1時間から約48時間で反応が終了するように酵素量を選ぶのが好ましい。基質1gあたり、通常約500〜約100,000単位、好ましくは約700〜約25,000単位、より好ましくは約2,000〜約20,000単位である。
【0071】
酵素がCGTaseである場合、反応時のpHは、通常約4から約11である。反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは約4.5から約10、さらに好ましくは約5から約8である。反応温度は、約20℃から約110℃、反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは約40℃から約90℃である。基質濃度は、通常約0.1%から約50%程度、反応速度、効率、基質溶液の取り扱い易さなどの点から、好ましくは、約0.1%から約30%程度である。使用する酵素量は、基質1gあたり、通常約1から約10、000単位、好ましくは約1から約1、000単位、より好ましくは約1から約500単位である。
【0072】
なお、各酵素の単位の決定法は、実施例で述べる。
【0073】
(生成物の単離、精製)
上記反応で得られた種々の環状構造を有するグルカンは、当業者に周知の分離方法、例えば、クロマト分離(例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー、HPLC)膜分離等で分離され、溶媒(例えば、メタノール、エタノール)を用いる沈澱等の方法を、単独で、あるいは組み合わせて用いて精製され得る。
【0074】
本願発明の方法で、原料の澱粉からの本願グルカンの収率は非常に高く、特に、枝作り酵素を用いた場合にはほぼ100%である。D酵素、あるいはCGTaseを用いる場合には、環状構造のみを有するグルカンも生産されるが、これらは、例えば、セファデックスを用いるゲル濾過により、容易に、目的の分岐構造を有する環状グルカンから分離され得る。
【0075】
また、分離された環状グルカンは、HPLC等のゲル濾過で分子量に応じて分離され得る。
【0076】
(反応生成物)
本願発明の方法で製造されるグルカンは、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有し、重合度が50以上の、環状構造を有するグルカンである。重合度は、好ましくは約50〜約10、000、より好ましくは約50〜約7、000 最も好ましくは、約50〜約5、000である。
【0077】
本願発明の方法により製造されるグルカンに存在する、上記内分岐環状構造における重合度は、好ましくは、約10〜約500、さらに好ましくは、約10〜約100である。
【0078】
本願発明の方法により製造されるグルカンに存在する、上記内分岐環状構造部分のα-1,6-グルコシド結合は少なくとも1個あればよく、通常1個〜約200、好ましくは、約1〜約50個である。
【0079】
反応生成物の重合度は、ゲル濾過によって、重合度既知のアミロースの溶出位置から示差屈折計を用いて測定され得る。さらに、示差屈折計と低角度レーザー光散乱光度計を併用して、次の原理により重合度が決定され得る。示差屈折計の出力はグルカンの濃度に比例し、低角度レーザー光散乱計の出力はグルカンの重合度と濃度の積に比例する。従って、両検出器の出力の比を測定することにより、グルカンの重合度が決定され得る。
【0080】
(環状構造を有することの確認)
本願発明の製造方法により得られるグルカンが、内分岐環状構造を有することの確認は、エキソ型のグルコアミラーゼを用いて行い得る。
【0081】
エキソ型グルコアミラーゼは、澱粉などのグルカンの非還元末端から順次α-1,4-グルコシド結合を加水分解する酵素である。速度は遅いが、非還元末端からα-1,6-グルコシド結合を加水分解し得ることが知られている。図8に示したように、環状構造を有しないアミロースおよびアミロペクチンは、エキソ型グルコアミラーゼによリ完全にグルコース27にまで分解される。しかし、分子内に環状構造を有するグルカン25および23は、その非環状構造部分のみがグルコアミラーゼにより分解され、環状構造部分は、グルコアミラーゼでは分解を受けない物質(以下、グルコアミラーゼ耐性成分という)として残る。
【0082】
このグルコアミラーゼ耐性成分(環状構造部分)が、内分岐構造を有するか否かは、α-1,6-結合を切断する枝切り酵素に対する感受性によって決定することができる。
【0083】
内分岐環状構造(α-1,6-グルコシド結合)を有する環状グルカン26は、枝きり酵素とグルコアミラーゼの併用で、グルコース27にまで完全に分解される。
【0084】
他方、内分岐環状構造を有しない(α-1,4-グルコシド結合のみを有する)環状構造のグルカン23は、枝切り酵素およびエキソ型グルコアミラーゼの併用によって分解されない。この環状グルカン23は、エンド型α-アミラーゼとグルコアミラーゼを併用することにより完全にグルコースまで分解され得る。
【0085】
これらの性質を利用することにより、グルカンの内分岐環状構造部分、外分岐(非環状)構造部分、およびα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造部分を定量することが可能となる。
【0086】
本願発明で製造されるグルカンが、内分岐環状構造を有していることは、以下の▲1▼から▲6▼の性質で確認され得る。
【0087】
▲1▼還元性末端数は、原料(澱粉など)と比較して増加しない。すなわち、還元末端を検出することができない。上記還元末端数の定量は、Hizukuriら、Carbohydr.Res.94:205-213(1981)の改変パークジョンソン法により行い得る。
【0088】
▲2▼エキソ型アミラーゼであるグルコアミラーゼを作用させると、グルコアミラーゼ耐性成分が残る。その成分は脱リン酸化酵素(シグマ社)を作用させた後にさらにグルコアミラーゼを作用させても分解されない。
【0089】
▲3▼上記グルコアミラーゼ耐性成分は、澱粉中のα-1,6-グルコシド結合を加水分解するイソアミラーゼ(株式会社林原生化学研究所製)により分解され、グルコアミラーゼの作用を受けるようになる。
【0090】
▲4▼上記グルコアミラーゼ耐性成分は、澱粉中のα-1,4-グルコシド結合を加水分解するエンド型α-アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社製)により分解され、グルコアミラーゼの作用を受けるようになる。
【0091】
▲5▼▲4▼のエンド型α-アミラーゼによる加水分解により、イソマルトシルマルトース(IMM)を生じる。α-1,6-グルコシド結合を有するグルカンにエンド型α-アミラーゼを作用させた場合の最小のリミットデキストリンは、IMMである(Yamamoto,T.、Handbook of amylase and related emzymes、Pergamon Press、p40-45(1988))との記載と一致する。
【0092】
▲6▼上記グルコアミラーゼ耐性成分の分子量をレーザーイオン化TOF-MS装置(島津社製)で分析すると、得られた分子量の値は、環状グルカンの理論値に一致し、非環状のグルカンの理論値に一致しない。
【0093】
内分岐環状構造部分の確認のために用いる、前記グルコアミラーゼ耐性成分の検出は、次のように行い得る。例えば、上記反応で生成したグルカンにグルコアミラーゼを添加し、例えば、約40℃で一夜反応させる。この反応物を100℃で10分間加熱し、不溶物を遠心分離により除去した後、10倍量のエタノールを添加し、残存する多糖を遠心分離による沈澱として回収する。この操作をもう一度繰り返して、グルコアミラーゼ耐性成分を得る。ただし、2回目のグルコアミラーゼの処理時間は、短時間(例えば、1から2時間)で十分である。
【0094】
本願発明で使用する原料が一部リン酸基により修飾されている澱粉などの場合には、グルコアミラーゼ耐性成分の検出には前処理が必要である。例えば、反応生成物を10mM炭酸緩衝液(pH9.4、10mMのMgCl2および0.3mMのZnCl2を含む)に溶解し、脱リン酸化酵素を添加して反応させた後、10倍量エタノールを添加し、沈澱を回収する。この沈殿に上記の方法を適用して、グルコアミラーゼ耐性成分を得ることができる。
【0095】
グルコアミラーゼ耐性成分の重合度および構成成分は、上記▲1▼から▲6▼に記載のように、グルコアミラーゼ耐性成分と糖の加水分解酵素とを反応させて生じた糖を分析することによって、決定し得る。加水分解は、グルコアミラーゼ単独、グルコアミラーゼとイソアミラーゼとの組み合わせ、あるいはグルコアミラーゼとα-アミラーゼとの組み合わせが挙げられる。反応は、例えば、グルコアミラーゼ耐性成分を0.2%(w/v)となるように蒸留水に溶解後、上記分解酵素をそれぞれ適当量加えて、30-45℃で適当な時間(例えば1時間)反応させる。このグルコアミラーゼ耐性成分分解物を、Dionex社製の糖分析システム(送液システム:DX300、検出器:PAD-2、カラム:Carbo Pac PA100)にかけ、分析する。溶出は、例えば、流速:1ml/分、NaOH濃度:150mM、酢酸ナトリウム濃度:0分-50mM、2分-50mM、37分-350mM、45分-850mM、47分-850mMの条件で行う。この分析により、グルコアミラーゼ耐性成分の重合度、および分解により生じる糖が決定され得る。
【0096】
(重合度の調整)
本願発明の方法で得られる内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有するグルカンの重合度も調整し得る。例えば、得られたグルカンにエキソ型のアミラーゼ、例えばグルコアミラーゼを作用させて、外分岐構造部分の糖鎖を切断し、重合度がより低いグルカンにし得る。この方法も、本願発明に含まれる。
【0097】
(本願発明のグルカンの用途等)
本願発明のグルカンおよび本願発明で得られるグルカンは、種々の澱粉の用途に使用され得、特に、飲食用組成物、食品添加用組成物、輸液、接着用組成物、および澱粉の老化防止剤として、使用され得る。これら用途において、本願発明のグルカンは、それぞれの用途に適した濃度となるように使用され得る。
【0098】
以下に実施例をあげて本願発明を説明するが、本願発明はこの実施例にのみ限定されるものではない。
【0099】
【実施例】
A 使用する酵素の調製および酵素活性の測定
A-1:枝作り酵素の調製:馬鈴薯からの精製および酵素活性の測定
馬鈴薯塊茎を5mMの2-メルカプトエタノールを含む適当な緩衝液中でホモジナイズし、遠心分離して、孔径0.45μmの膜を通した後、Q-セファロースカラム(上述)にかけ、5mMの2-メルカプトエタノールを含む20mM Tris-HCl(pH7.5)(緩衝液D)に150mM NaClを含む緩衝液Eで洗浄する。そして、緩衝液Dに450mMのNaClを含む緩衝液Fで枝作り酵素を溶出する。これを透析し、500mMの硫酸アンモニウムを含むフェニルトヨパール650M(Tosoh製)カラムにかけ、緩衝液D中の硫酸アンモニウム濃度を500mMから0mMに変化させることにより溶出を行い、枝作り酵素画分を集め、緩衝液Dに対して透析を行う。透析内液を緩衝液Dで平衡化したPL-SAXカラム(Polymer Laboratory製(U.K.))にかけ、緩衝液D中のNaCl濃度を150mMから400mMに変化させることにより溶出させて、枝作り酵素画分を集めた。
【0100】
酵素活性は、5mM Tris-HCl(pH7.5)、0.05%(w/v)アミロース、および酵素を含む100μlの反応液を30℃、30分間反応させた後、ヨウ素溶液(1mg/ml KI,0.1mg/ml I2,3.8mM HClを含む)2mlを添加して反応を停止し、波長660nmにおける吸光度測定して、定量した。1分間に吸光度を1%低下させる酵素量を1単位とした。
【0101】
A-2:枝作り酵素の調製-2 大腸菌からの組換え枝作り酵素の精製
バチルス ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)TRBE14株(工業技術院生命工学工業技術研究所:受託番号FERM P-13916)を、枝作り酵素遺伝子の供与体として用いた。
【0102】
バチルス ステアロサーモフィラスTRBE14株を、100mlのL培地を含む500mlフラスコ中で、一夜、50℃で培養した。培養終了後、遠心分離して菌体を集めた。この集めた菌体から染色体DNAをフェノール法(斎藤、三浦、Biochimica et Biophysica Acta,72,619(1963))により調製した。得られた染色体DNAを、制限酵素Sau3AIを用いて部分分解した後、NaCl密度勾配遠心にかけ、10kb以上のDNA断片を集めた。得られた10Kb以上のDNA断片と、BamHIで予め切断したλ-EMBL3ベクター(ストラタジーン社製)とを、T4DNAリガーゼを用いて連結した。インビトロパッケージングキット(ストラタジーン社製)を用いて、この連結したDNAを含む組換えλ-ファージ懸濁液を作製した。
【0103】
大腸菌P2392を、10mMのMgCl2を加えたNZY培地(1%NZアミン、0.5%イーストエキス、0.5%NaCl)で37℃、一夜、振とう培養した。培養終了後、集菌し、10mMのMgCl210mlに懸濁して、組換えλ-ファージ懸濁液と混合した。混合液を37℃で20分間保温した後、NZY寒天培地に重層し、37℃で一晩保温して、溶菌斑が点在するプレートを得た。
【0104】
この組換えλ-ファージの中から、目的の遺伝子を持つファージを選択するためのプローブを作製した。数種の枝作り酵素のアミノ酸配列中には、α-アミラーゼなどに既に見出されている4つの保存領域(保存領域1、2、3、および4)が存在することが知られている(J.Biol.Chem.、267、18447(1992年))。図9に示す保存領域1の配列に対応する配列(5’GAYTGGGTNCCNGSNCAYTTY 3’:配列番号:1)および4付近の配列に対応する配列(WSNGTRCTRCTYCANCANGTR:配列番号:2)に対応する2種のDNAプライマーを合成した。この合成プライマーと上記で得られた10kb以上の染色体DNAとを、TthDNAポリメラーゼ(東洋紡(株)製)を用いて反応させ、上記の2つの合成プライマーにはさまれる領域のDNA断片を増幅した。反応は、94℃、1分;45℃、1分;72℃、1分を1サイクルとして、30サイクル繰り返した。増幅されたDNA断片は、約560bpであった。この増幅したDNA断片を、制限酵素SmaIで処理したpUC19に連結し、組換えプラスミドpTBE3を得た。この得られた組換えプラスミドpTBE3から、マルチプライム法DNAラベリングキット(ファルマシア社製)を用いて、放射能ラベルされた枝作り酵素遺伝子の単離のためのプローブを作製した。
【0105】
上記で作製した組換えλ-ファージの溶菌斑が点在するプレートにナイロンフィルター(アマーシャム社製)を密着させ、アルカリ処理して、溶菌斑中の組換えλ-ファージDNAを変性させ、フィルターに固定した。このフィルターを上記で作製した放射能ラベルしたプローブの溶液に浸し、65℃で16時間、ハイブリダイゼーションを行った。フィルターをよく洗い、乾燥後、X線フィルムに密着させ、枝作り酵素遺伝子を含む組換えλ-ファージを選択した。この得られた組換えλ-ファージをλ-TBE102と命名した。λ-TBE102の制限酵素地図を、図10に示した。
【0106】
枝作り酵素の遺伝子を含むプラスミドは、図11に示す方法で作製した。まず、λ-TBE102からDNA断片を回収し、SalIで切断し、アガロースゲル電気泳動した。常法により、DNAをニトロセルロースフィルターに移動させ、上記プローブを用いて、65℃、16時間ハイブリダイズさせた。SalIの4Kbの断片がハイブリダイズした。この4kbSalI断片を単離し、pBR322のSalI部位に組み込んで、pTBE31を作製した。
【0107】
次に、pTBE31から1.4kbのSalI-EcoRI断片を単離し、SalI-EcoRI処理したプラスミドpUC118に連結して、pUC118SEを作製した。pUC118SEをEcoRIで切断し、T4DNAポリメラーゼで切断部位を平滑末端とし、HindIIIリンカーを導入して、pUC118SEHを作製した。
【0108】
他方、上記4kbSalI断片を含む約5kbのXhoIDNA断片をpBR322のSalI部位に導入し、pTBE51を作製した。このpTBE51から、SalI-Aor51HIDNA断片を切り出し、SmaI-SalIで切断したpUC118に連結し、pUC118ASを作製した。
【0109】
このpUC118ASから、約1kbのBamHI-SalIDNA断片を単離し、BamHI-SalI処理したpUC118SEHに連結して、pTBE821を得た。このプラスミドpTBE821は、枝作り酵素のアミノ酸配列をコードしていた(配列番号:3)。
【0110】
このプラスミドpTBE821を常法に従い、大腸菌TG-1に形質転換した。
【0111】
プラスミドpTBE821で形質転換された大腸菌TG-1株を培養し、遠心分離(8,000rpm,5分)して菌体を得た。この菌体を、5mMの2-メルカプトエタノールを含む50mMのTris-HCl(pH7.0)(緩衝液A)に懸濁し、超音波により細胞を破壊した。そして、遠心分離(12,000rpm,10分)により不溶物を除き、60℃で15分間加熱し、遠心分離(12,000rpm,10分)により変性したタンパク質などを沈澱として除いた。得られた上清を緩衝液Aに対して透析した後、Q-セファロースカラム(ファルマシア製)にかけ、5mMの2-メルカプトエタノールを含む50mM Tris-HCl(pH7.0)(緩衝液A)に100mM NaClを含む緩衝液Bで洗浄した。そして、緩衝液Aに200mMのNaClを含む緩衝液Cで枝作り酵素を溶出した。これに終濃度170mMになるように硫酸アンモニウムを添加し、これをフェニルトヨパール650M(Tosoh製)カラムにかけ、緩衝液Aにより枝作り酵素を溶出させ、枝作り酵素を得た。
【0112】
酵素活性の測定は、反応温度を50℃にする以外は、馬鈴薯枝作り酵素の場合と同様に行った。
【0113】
A-3:D酵素の調製および活性の測定
Takahaら、J.Biol.Chem.vol.268.1391‐1396(1993)に記載されている方法でD酵素を精製した。まず、馬鈴薯塊茎を5m1Mの2-メルカプトエタノールを含む20mMTris‐HCl(pH7.5)緩衝液(緩衝液A)中でホモジナイスし、遠心分離して、0.4μmのメンブレンを通した後、Q-Sepharoseカラム(16X100mmファルマシア)にかけ、150mM NaClを含む緩衝液Aで洗浄した。D酵素は、450mMのNaClを含む緩衝液Aに溶出した。溶出後、緩衝液Aに対して透析し、最終濃度が500mMとなるように硫酸アンモニウムを加えた.この溶液をPhenyl Toyopearl 650M(Toso)カラム(10X100mm)にロードし、緩衝液A中の硫酸アンモニウム濃度を500mMから0mMに変化させることにより溶出を行った。D酵素活性画分を集め、緩衝液Aに対して透析を行い、透析液をAmicon Centricon 30マイクロコンセントレーターを用いて濃縮し、PL‐SAXHP1Cカラム(Polymer Laboratory U.K)にかけ、緩衝液A中150‐400mMのNaCl直線濃度勾配をかけて溶出し、活性画分を集めて上記Amicon Centricon 30マイクロコンセントレーターで濃縮した。
【0114】
酵素活性の測定は、100mM Tris‐HCl(pH7.0)、5mM2‐メルカプトエタノール、1%(W/V)マルトトリオース、および酵素を含む100μlの反応混合液を37℃、10分間、反応させ、反応液を沸騰水中で3分間加熱して、反応を停止し、反応によリ遊離したグルコースをグルコースオキシダーゼを用いる方法(Barham et al.,(1972)Analyst 97:142)によリ定量した。1分間に1μmolのグルコースを生じる酵素量を1単位とした。
【0115】
A-4:CGTaseの調製
Alkalophilic Bacillus sp.A2-5a(以下、A2-5a株という)由来のCGTaseを用いた。このCGTaseの生産株Alkalophilic Bacillus sp.A2-5aは、特開平7-107972号にその性質等が開示されており、出願人によって、工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号(FERM P-13864)として寄託されている。
【0116】
A2-5a株由来CGTaseの精製方法は以下の通りである。A2-5a株をAL液体培地(1%可溶性澱粉、4%コーンスティープリカー、0.1%K2HPO4、0.02%MgSO4、7H2O、1%Na2CO3、pH=10.0)で、33℃、24時間培養後、遠心分離して培養液から菌体を除去した培養上清を集めた。この培養上清1.6Lにデンプン20gを添加し、4℃で16時間攪はんし、CGTaseをデンプン粒子に吸着させた。これをカラムにつめ、カラムを100mlの22.8%硫酸アンモニウム溶液で5回洗浄後、100mlの33mM Na2HPO4でCGTaseを5回溶出させた。この溶出液に終濃度で57%となるように硫酸アンモニウムを添加し、生じた沈澱を回収後、20mM Tris-塩酸バッファー(pH7.5)に対し透析した。この溶液全量を20mM Tris-塩酸バッファー(pH7.5)で平衡化したQ-セファロースカラム(8ml)にロードし、0.4M NaClを含む同緩衝液50mlで洗浄した後、同緩衝液中のNaCl濃度を0.4Mから1Mに変化させることによりCGTaseを溶出した。活性画分を集めてA2-5a株由来の精製CGTaseを得た。
【0117】
A-5:固定化CGTaseの調製
蒸留水で洗浄した酵素固定化用担体キトパールBCW‐3503(富士紡績(株))1gと、20mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を含むCGTase酵素液100単位(5ml)を室温で2時間緩やかに攪はんしながらインキュベートし、CGTaseを担体に吸着させた。この懸濁液をろ過してから、ろ液のCGTase活性を測定したところ、CGTase活性はほとんど検出されなかったため、大部分のCGTaseは担体に結合したものと考えられた。このCGTase結合担体を、反応に使用した。
【0118】
なお、CGTaseの活性は、1.5%可溶性澱粉溶液(20mM酢酸ナトリウムバッファーでpH5.5に調整)をあらかじめ40℃に設定した恒温槽にいれ、次いで、この溶液にCGTaseを加えて反応を開始させる。10分間の反応の後、この反応溶液(0.25ml)に0.5mlの0.5N酢酸-0.5NHCl(5:1、v/v)溶液を添加し反応を停止させる。この反応液0.1mlをとり、0.005%I2および0.05%KIを含有する溶液を加え、攪はんし室温に20分間放置する。この溶液の660nmにおける吸光度を測定する。このときCGTaseを添加しないものをブランクとして調製し、同様の操作を行う。この条件下、1分間に10%の660nmにおける吸光度の減少を生じる酵素量を1単位とした。
【0119】
B.枝作り酵素を用いるグルカンの製造
(実施例1:グルカンの調製)
市販のワキシーコーンスターチ(平均重合度30,000以上)5gを40mlの5mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁し、100℃の湯浴中で糊化させて、約50℃まで放冷した。この糊液に、組み換え法で精製した枝作り酵素2000単位を添加し、50℃で6時間反応させた。
【0120】
この反応液を100℃で20分間加熱し、遠心分離(10,000rpm,15分)により変性した酵素タンパク質を除いた。上清に2倍量のエタノールを添加し、沈澱させた。この沈澱を凍結乾燥し、粉末のグルカン約4.8gを得た。
【0121】
(実施例2:重合度の測定)
示差屈折計と低角度レーザー光散乱光度計を併用して、ゲルクロマトグラフィーを行い、重合度を測定した。上記反応で得られたグルカンを0.6%(W/V)となるように、1.5%アセトニトリルおよび0.02%アジ化ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.2)に溶解した。この溶液200μlをAsahipak GS520、Asahipak GS320(いずれも旭化成製)、およびTSK-G2000PW(東ソー製)を連結したカラムにかけた。
【0122】
溶出パターンを図12に示す。図12に示したように、製造されたグルカンの重合度は、約50〜5,000の範囲にあり、ピークSおよびLはそれぞれ、460および770であった。重量平均重合度は900であった。
【0123】
(実施例3:実施例1で得られたグルカンの構造決定)
3-1:還元性末端の定量
実施例1で得られたグルカンの還元性末端の定量を、Hizukuriらの改変パークジョンソン法により行った。原料であるワキシーコーンスターチと比較し、還元性末端数の増加は検出できなかった。還元性末端を増加させることなく、原料を低分子化するには環状化反応しかないことから、これらのグルカンは、少なくとも1個のα-1,6-グルコシト結合を持つ環状構造を分子内に1つ有すると考えられる。
【0124】
3-2:グルコアミラーゼ耐性成分の取得
エキソ型グルコアミラーゼ耐性成分の検出を以下のように行った。実施例1で得られたグルカン500mgを500μlのDMSOに完全に溶解させた。このグルカン溶液に、1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)500μl、蒸留水3mlおよび、50単位/mlのグルコアミラーゼ(1ml)を添加し、40℃で3時間反応させた。この反応物を100℃で10分間加熱し、不溶物を遠心分離(10,000rpm、15分)により除去した。上清に10倍量のエタノールを添加し、遠心分離(10,000rpm、15min)して沈殿を回収した。得られた沈殿を乾燥後、1mlの蒸留水に溶解した。この溶解液に再度50単位のグルコアミラーゼを添加し、40℃で3時間反応させた。100℃で10分間加熱し、不溶物を遠心分離(10,000rpm、15分)により除去した。上清に10倍量エタノールを添加し、遠心分離して沈殿を回収した。得られた沈殿を乾燥し、粉末のグルコアミラーゼ耐性成分13mgを得た。このことから、実施例1で得られたグルカンは、環状構造を有していることが示唆された。
【0125】
3-3:グルコアミラーゼ耐性成分の重合度測定
得られたグルコアミラーゼ耐性成分を、示差屈折計と低角度レーザー光散乱計を併用したゲル濾過クロマトグラフィーに供することにより、その平均重合度を求めると49であった。この値は、分解前の平均重合度900よりも小さくなっており、グルコアミラーゼで分解される外分岐構造部分が存在していることを示唆する。このグルコアミラーゼ耐性成分の中から、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて、低分子部分を取得した。これを島津社製レーザーイオン化TOF-MS装置Kompact Maldiに供し、分子量測定を行った。図13に示したように、10数本のピークが観察された。それらの分子量は、重合度が1づつ異なる環状構造を有するグルカンにナトリウムイオンが付加した物質の理論値によく一致した。その誤差は、装置の誤差範囲内(±0.2%)であった。環状構造を有しないグルカンの理論値には一致しなかった。図13において、最も小さいピークの分子量は2455であり、これは、重合度15の環状グルカンに、ナトリウムイオンが付加したものの分子量と一致する。このほか、重合度16〜36の環状グルカンにナトリウムイオンが付加したピークが検出された。
【0126】
3-4:グルコアミラーゼ耐性成分の各種糖質分解酵素による消化
上記のようにして得られたグルコアミラーゼ耐性成分を0.4%(w/v)になるように蒸留水に溶解後、50μlとり、図14に示した糖質分解酵素をそれぞれ図14に示した濃度になるように加えて60μlとし、40℃で一晩反応させた。この反応液を100℃で5分加熱後、変性したタンパク質を遠心分離(12,000rpm,5分)により除き、反応物を、Dionex社製の糖分析システムにかけた。条件は上記と同じである。
【0127】
このグルコアミラーゼ耐性成分は、図14に示されるように、グルコアミラーゼ単独によっては分解されなかったが、澱粉分子内部のα-1,4-グルコシド結合を加水分解するエンド型アミラーゼであるα-アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社製)により分解され、IMMが検出された。また澱粉中のα-1,6-グルコシド結合を加水分解するイソアミラーゼ(林原生物化学研究所製)とグルコアミラーゼとの併用により分解された。また、図14に示されるように、グルコアミラーゼ耐性成分は、イソアミラーゼ単独で一部分解され、重合度3以上のオリゴ糖を生成した。
【0128】
以上のことから、得られたグルコアミラーゼ耐性成分は、環状のグルカンであること、および、少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合を含むものであることがわかった。
【0129】
3-5:実施例1で得られたグルカンの構造
実施例1のグルカン中に外分岐構造が存在することの証明として、グルコアミラーゼ耐性成分中にグルコシルスタッブが存在することを確認した。ここで、グルコシルスタッブとは、グルコアミラーゼで処理したときに残る、外分岐構造部分と環状構造との結合部分のグルコース残基をいう。Hizukuriら(1978)Carbohydr.Res:63:261‐264の迅速スミス分解法により、グルコアミラーゼ耐性成分の非還元末端を定量することにより、グルコアミラーゼ耐性成分の全グルコシル基の19%が、環状構造に結合したグルコシルスタッブであることがわかった。従って、グルコアミラーゼ耐性成分の平均重合度49のうち約9個のグルコースは、外分岐構造より由来したグルコシルスタッブであり、残り約40個のグルコースが、内分岐環状構造を形成していると考えられた。以上のことから、実施例1のグルカンは、内分岐環状構造に加えて複数個の外分岐構造部分を有することがわかった。
【0130】
以上から、本願発明の方法で製造されたグルカンは、外分岐構造部分と内分岐環状構造部分とを有すること、および、重合度が約50以上であることがわかった。また、本願発明の方法で製造されたグルカンは、全体の平均重合度が約900、内分岐構造部分の平均重合度が約40であったことから、外分岐構造部分の重合度は約860であると推測された。従って、枝作り酵素により生産された本願発明のグルカンは、平均的には内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを約1:20の割合で含んでいることを示唆している。
【0131】
(実施例4:環状グルカンの重合度の調節)
実施例1で得られたグルカン500mg(平均重合度900)を、500μlのDMSOに完全に溶解させた。これに1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)500μl、蒸留水3ml、および10単位/mlのエキソ型グルコアミラーゼ(東洋紡(株)製)1mlを添加して、40℃、3時間反応させた。100℃、10分間加熱した後、変性した酵素タンパクを遠心分離(10,000rpm、15分)して除いた。上清のグルコース量を、グルコスタット法により定量した。実施例1で得られたグルカン中のグルコシル残基のうち、約70%が切除されたことがわかった。この上清に、10倍量のエタノールを添加することにより、グルカンを沈澱させ、外分岐構造部分が短くなったグルカンを得た。得られたグルカンの平均重合度は270であった。
【0132】
C.D酵素を用いる製造方法
(実施例5)
5-1:D酵素を用いる製造
市販のワキシーコーンスターチ40mgを2mlのDMSOに懸濁した。この懸濁液に、精製したD酵素680単位を含む20mM クエン酸緩衝液(pH7.0)18mlを添加し、30℃で40時間反応させた。
【0133】
反応液を100℃で10分間加熱した後、遠心分離して、変性した酵素タンパクを除去した。上清に10倍量のエタノールを添加し、グルカンを沈澱させた。次いで、得られた沈殿を凍結乾燥し、グルカンの粉末約40mgを得た。
【0134】
得られた沈澱をゲル濾過クロマトグラフィーで分画した。沈澱を250μlの蒸留水に溶解し、Superose6(φ1cm×30cm、ファルマシア製)とSuperdex30(φ1cm×30cm、ファルマシア製)とを連結したカラムにその全量をロードした。次いで、150mM酢酸ナトリウム水溶液を用いて流速1ml/分で溶出を行った。図15に示すように、ボイドボリュームに溶出されていたアミロペクチンはD酵素の反応によリ低分子化され、平均分子量が約30,000であるピークIおよび平均分子量が約3,000であるピークIIの2種類の成分が生成した。なお、環状グルカンの分子量は、酵素合成アミロースをスタンダードとして用いて算出した値である。
【0135】
ピークIおよびIIの画分をそれぞれ分取した。ピークIの画分に10倍量のエタノールを加えてグルカンを沈澱させた。沈澱を遠心分離して回収後、凍結乾燥して、20mgのグルカンを得た。同様にして、ピークIIから沈殿を回収し、凍結乾燥して、5mgを得た。
【0136】
この分離したピークIおよびIIの構造を解析した。
【0137】
5-2:ピークIの構造解析
ピークIのグルカンの還元性末端は、検出されず、還元末端数も原料であるワキシーコーンスターチと比較して、増加しなかった。
【0138】
ピークIのグルカンを、実施例3の3-2と同様の条件で、グルコアミラーゼ処理したところ、グルコアミラーゼ耐性成分が得られた。このグルコアミラーゼ耐性成分の平均分子量は上記と同様、酵素合成アミロースをスタンダードとして用いて算出した値で、約5,000であり、グルコアミラーゼ処理前と比較して小さくなっていることも認められた。
【0139】
さらに、得られたグルコアミラーゼ耐性成分を実施例3:3-4と同じ方法で各種糖質分解酵素により消化した結果、グルコアミラーゼ単独によっては分解されなかったが、澱粉分子内部のα-1,4-グルコシド結合を加水分解するエンド型アミラーゼであるα-アミラーゼにより分解され、IMMが検出された。また澱粉中のα-1,6-グルコシド結合を加水分解するイソアミラーゼとグルコアミラーゼとの併用により分解された。また、グルコアミラーゼ耐性成分は、イソアミラーゼ単独で一部分解され、重合度3以上のオリゴ糖を生成した。
【0140】
以上のことから、得られたグルコアミラーゼ耐性成分は、少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合を含む環状構造であることがわかった。
【0141】
さらに、グルコアミラーゼ耐性成分中に、グルコシルスタッブが存在することを確認した。従って、ピークIのグルカンは内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有するグルカンであると結論した。
【0142】
5-3:ピークIIの構造解析
ピークIIのグルカンは、還元性末端が検出されなかった。ピークIIの大部分のグルカンをグルコアミラーゼで処理しても分子量が減少しなかった。ピークIIのグルカンはエンド型アミラーゼであるα-アミラーゼにより完全に分解され、IMMがほとんど検出されなかった。さらに、α-1,6-グルコシド結合を切断するイソアミラーゼで大部分が分解されなかった。
【0143】
これらのことから、ピークIIは、α-1,6-グルコシド結合を含まず、かつ外分岐構造を有しない、およびα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンを主成分とすると結論した。
【0144】
5-4:実施例5で得られたグルカン
従って、実施例5で得られたグルカンは、α-1,4-グルコシド結合のみを有するグルカンと、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有するグルカンとの混合物であると結論した。
【0145】
(実施例6:実施例5のピークIのグルカンの構造)
ピークIは、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有するグルカンであることが確認された。このうち、外分岐構造部分は、グルコアミラーゼにより完全にグルコースにまで分解され、内分岐環状構造部分(グルコアミラーゼ耐性成分)が残る。さらにこのグルコアミラーゼ耐性成分は、枝切り酵素とグルコアミラーゼの併用によって分解される。これらの性質を利用して、グルカン中の非環状構造部分、α-1,6-結合を含む環状構造部分及びα-1,6-結合を含まない環状構造部分を定量することが可能となる。
【0146】
実施例5で得られたピークIを10mg、およびアミロペクチン10mgを、それぞれ、1mlのDMSOに溶解し、直ちに、8mlの100mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を加えて希釈した。この希釈液を900μlずつ4本のチューブに分注した。ついで、それぞれのチューブに(1)蒸留水、(2)グルコアミラーゼ液、(3)枝きり酵素とグルコアミラーゼとの混合液、および(4)エンド型α-アミラーゼとグルコアミラーゼとの混合液を100μl加えて、40℃、4時間反応させた。反応終了後、生成したグルコースの量を、市販のグルコース定量キットを用いて測定した。そして、試料グルカン中の外分岐構造部分、内分岐環状構造部分およびα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造部分をそれぞれ以下の式により求めた。
【0147】
【数1】

【0148】
ここで、c、x、yおよびzは、それぞれ、上記(1)、(2)、(3)および(4)の反応液から生じたグルコース量である。結果を表1に示す。
【0149】
【表1】

【0150】
この結果は、実施例5で得られたピークIのグルカンが、少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合を含んでいること、および、平均的には、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを約1:7の割合で含んでいることを示唆している。
【0151】
D.CGTaseを用いるグルカンの製造
(実施例7:CGTaseを用いるグルカンの製造方法)
原料として市販のワキシーコーンスターチ40mgを、18mlの100mM NaClを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(PH5.5)に加熱溶解した。他方、精製したCGTaseを0.2単位/mlとなるように、100mM NaClを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(PH5.5)に溶解した。この酵素溶液2mlを上記原料の溶解液に添加し、40℃で2時間反応させた。
【0152】
反応液を100℃で10分間加熱したのち、遠心分離により変性した酵素タンパクを除いた。上清に10倍量のアセトンを添加し、グルカンを沈澱させた。
【0153】
(実施例8:実施例7で得られたグルカンの構造解析)
得られた沈澱をゲルろ過クロマトグラフィーで分析した。沈澱を250μlの蒸留水に溶解し、Superose6(φ1cm×30cm、ファルマシア製)とSuperdex30(φ1cm×30cm、ファルマシア製)を連結したカラムにその全量をロードし、100mM NaClを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(PH5.5)により、流速1ml/分で溶出させた。図16に示したように、ボイドボリュームに溶出されていたアミロペクチンはCGTaseの反応により低分子化され、主として、ピークIIIおよびピークIVの2種類の成分が生成された。これらのピークIIIおよびIVは、分取され、アセトンによる沈澱を経て、回収され、凍結乾燥されて、それぞれ粉末として、16mgおよび13mgを得た。
【0154】
ピークIIIの平均分子量は30,000であった。ピークIVは、非常に低分子であり、本法では測定不可能であった。
【0155】
8-1 ピークIIIの構造解析
分取したピークIIIの画分に10倍量のエタノールを加えて沈澱を生じさせた。沈澱を遠心分離して回収し、凍結乾燥した。粉末のグルカン16mgを得た。
【0156】
ピークIIIのグルカンの還元性末端は、検出されず、還元末端数も原料であるワキシーコーンスターチと比較して、増加しなかった。
【0157】
ピークIIIのグルカンを、実施例3の3-2と同様の条件で、グルコアミラーゼ処理したところ、グルコアミラーゼ耐性成分が得られた。このグルコアミラーゼ耐性成分の平均分子量は上記と同様、酵素合成アミロースをスタンダードとしたゲル濾過クロマトグラフィーから算出した値で、約5,000であり、グルコアミラーゼ処理前と比較して小さくなっていることも認められた。
【0158】
さらに、得られたグルコアミラーゼ耐性成分を上記実施例3:3-4と同じ方法で各種糖質分解酵素により消化した結果、グルコアミラーゼ単独によっては分解されなかったが、澱粉分子内部のα-1,4-グルコシド結合を加水分解するエンド型アミラーゼであるα-アミラーゼにより分解され、IMMが検出された。また澱粉中のα-1,6-グルコシド結合を加水分解するイソアミラーゼとグルコアミラーゼとの併用により分解された。また、グルコアミラーゼ耐性成分は、イソアミラーゼ単独で一部分解され、重合度3以上のオリゴ糖を生成した。さらに、グルコアミラーゼ耐性成分中に、グルコシルスタッグが存在することを確認した。
【0159】
以上のことから、得られたグルコアミラーゼ耐性成分は、少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合を含む環状構造であることがわかった。
【0160】
従って、ピークIIIのグルカンは内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有するグルカンであると結論した。
【0161】
8-2 ピークIVの構造解析
ピークIVのグルカンは、還元性末端が検出されなかった。ピークIVのグルカンをグルコアミラーゼで処理しても分子量が減少しなかった。ピークIVのグルカンはα-1,6-グルコシド結合を切断するイソアミラーゼで分解されなかった。これらのことから、ピークIVは、α-1,6-グルコシド結合を含まず、かつ外分岐構造を有しない、およびα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造であると結論した。
【0162】
他方で、ピークIVのグルカンを、アミノカラムを用いたHPLCにより分析したところ、2本のピークが確認された。それぞれのピークは、重合度が6,7の環状α1,4グルカンつまりα-CDおよびβ-CDと溶出位置が完全に一致した。従ってピークIVは、従来から知られているα-CDとβ-CDの混合物であると結論された。
【0163】
8-3:実施例7で得られたグルカンの構造
以上から、実施例7で得られたグルカンは、α-1,4-グルコシド結合のみを有するα-CDおよびβ-CDと、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有するグルカンとの混合物であると結論した。
【0164】
(実施例9:実施例7のピークIIIのグルカンの構造)
実施例6と同様にして、実施例7で得られたピークIIIのグルカンの内分岐環状構造部分、および外分岐構造部分の構造を検討した。結果を表2に示した。
【0165】
【表2】

【0166】
この結果は、実施例7で得られたピークIIIのグルカンが、実施例5のピークIのグルカンとほぼ同様なグルカンであることを示している。つまり、ピークIIIのグルカンは、少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合を含んでいること、および、平均的には、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを約1:7の割合で含んでいることを示唆している。
【0167】
以上のことから、枝作り酵素、D酵素、あるいはCTGaseを用いて、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有するグルカンを製造し得、かつ、酵素が異なっても、ほぼ同じグルカンが製造され得ることが確認された。
【0168】
(実施例10:本願発明の方法で得られたグルカンの溶解性)
実施例1、実施例5のピークI、実施例7のピークIIIのグルカン、比較としてワキシーコーンスターチ、および可溶性澱粉(和光純薬製)を、それぞれ10%(W/V)となるように蒸留水に懸濁し、vortexミキサーにて激しく攪拌した後、遠心分離(12,000rpm、10分)し、上清に溶解した糖濃度を測定した。その結果を表3に示す。
【0169】
【表3】

【0170】
従来のワキシーコーンスターチおよび可溶性澱粉に比べ、本願発明の方法で得られたグルカンの溶解性が顕著に高いことが示された。
【0171】
(実施例11:各実施例で得られたグルカンの老化性)
実施例1、実施例5のピークI、実施例7のピークIIIで得られたグルカン、比較として従来のワキシーコーンスターチ、および可溶性澱粉(和光純薬製)を、それぞれ200mgとり、スクリューバイアルに入れ蒸留水10mlを加えた後、沸騰湯浴中で加熱することにより溶解した。但し、ウキシーコーンスターチは溶解性が悪いため、50mgをとり、同様に処理した。これらを4℃に放置し、一定時間後それぞれのサンプル1mlをとり、その660nmにおける濁度を測定し、老化性の指標とした。その結果を表4に示す。
【0172】
【表4】

【0173】
従来のワキシーコーンスターチおよび可溶性澱粉に比べ、実施例で得られたグルカンの老化性が顕著に低いことが示された。
【0174】
(実施例12:実施例で得られたグルカンの糊液の粘性)
実施例1、実施例5のピークI、実施例7のピークIIIで得られたグルカン、比較として従来のワキシーコーンスターチ、および可溶性澱粉(和光純薬製)、およびパインデックス(Pinedex)#1(松谷化学株式会社製)を、それぞれ1.6gとり、バイアルに入れ、蒸留水8mlを加えて分散させた後、ジメチルスルフォキシド72mlを加え、室温で十分に攪拌することにより溶解した。それぞれの粘度を、Digital Viscometer DVL-B(TOKYO KEIKI製、ローター:No.1、回転数:60rpm、10秒間測定)により測定した。対象として、蒸留水8mlにジメチルスルフォキシド72mlを加えた溶液(90%DMSO溶液)についても測定した。その結果を表5に示す。なお、ここで用いたパインデックス#1は、上記可溶性澱粉よりも強く酸で加水分解した澱粉である。
【0175】
【表5】

【0176】
従来のワキシーコーンスターチ比べて、各実施例で得られたグルカンを溶解した糊液の粘性が顕著に低く、パインデックス#1および可溶性澱粉と同様の粘性を示すことがわかった。
【0177】
(実施例13:実施例で得られたグルカンの反応性)
実施例1、実施例5のピークI、実施例7のピークIIIで得られたグルカン、比較として従来の可溶性澱粉(和光純薬製)、およびパインデックス(Pinedex)#1(松谷化学株式会社製)を、それぞれ20mgを蒸留水1mlに溶解させ、還元力をジニトロサリチル酸法(福井作蔵著、生物化学実験法1 還元糖の定量法、学会出版センター)により、グルコースを標準として調べた。その結果を表6に示す。
【0178】
【表6】

【0179】
従来のパインデックス#1および可溶性澱粉から還元糖が検出されたのに対し、各実施例から得られたグルカンからは、還元糖が検出されなかった。
【0180】
着色が生じる糖とアミノ酸との反応(アミノ・カルボニル反応)は、糖の還元基とアミノ酸との反応である(五十嵐修著、食品化学、弘学出版社)。従って、上記各実施例で得られたグルカンは、還元糖の量が少ない(検出されない)、すなわち還元基が少ないことから、従来のパインデックス#1および可溶性澱粉に比べて、反応性が低いということがわかった。
【0181】
(実施例14:リン酸化したグルカンの誘導体の調整)
実施例1で得られたグルカン8mgをジメチルホルムアミド1ml中に懸濁し、オキシ塩化リン46mgとを反応させ、この反応液にアセトン9mlを加えて、リン酸化したグルカンの誘導体8mgを得た。
【0182】
(実施例15:実施例1のグルカンによる、澱粉の老化抑制効果)
完全に加熱糊化した4%可溶性澱粉水溶液を4℃に保存すると、可溶性澱粉は速やかに老化し、糊液は白濁する。この系を用いて本願発明で得られるグルカンの、澱粉老化抑制効果について検討した。実施例1で得られたグルカンをそれぞれ終濃度で、0%、2%、および4%となるように、4%の可溶性澱粉水溶液に添加し、これを4℃に保存した。一定時間にサンプリングを行い、660nmの吸光度で白濁度を測定した。結果を、図17に示す。
【0183】
実施例1のグルカンは、澱粉の老化抑制効果を有することが示された。
【0184】
(実施例16:本願発明のグルカンを含むスポーツドリンク)
実施例1で得られたグルカンを用いて、以下の成分を以下の割合で配合したスポーツドリンクを作製した。なお、単位は重量部である。
【0185】
食塩 0.3
ビタミンC 0.02
ビタミンB1ソーダ 0.02
塩化マグネシウム 0.2
乳化カルシウム 0.2
クエン酸 2.0
クエン酸ソーダ 1.5
ブドウ糖 50
水 1000
実施例1の環状グルカン 100
得られたスポーツドリンクは消化性に優れ、エネルギー変換効率の高い飲料であった。
【0186】
(実施例17:本願発明のグルカンを含む接着性組成物)
実施例5のピークIのグルカン40部に水60部を加え、加熱溶解させた。この溶液は、良好な接着性を示した。
【0187】
【発明の効果】
本願発明の方法により、従来用いることが考えられなかった酵素を用いて、本願発明のグルカンが生産され得る。本願発明の製造方法は、原料であるα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とを有する糖類と、該糖類に作用して環状構造を形成し得る酵素とを反応させる工程を包含すればよい。従って、非常に容易に、本願発明のグルカンを製造し得る。
【0188】
本願発明のグルカンは、既存の澱粉などの上記原料と比較して、水に対する溶解度が非常に高く、溶解した糊液の粘度が低く、また通常の澱粉に観察される老化が起こらないという優れた性質を有する。さらに、本願発明のグルカンまたはその誘導体は、反応性が低いため、タンパク質やアミノ酸と混合して加熱したとき、既存の水飴およびデキストリンと比較して、着色しにくいという優れた性質を有している。
【0189】
このように、本願発明のグルカンは、水に対する溶解度が非常に高いため、粉末化基剤、コーヒー、醤油、たれ、麺類のつゆ、ソース、ダシの素、シチューの素、スープの素、複合調味料、カレーの素、ゼリー、キャラメル、ガム、チョコレート、クッキー、クラッカー、アイスクリーム、シャーベット、ジュース、粉末ジュース、入浴剤、飲み薬、粉末薬、塗料、接着剤、増粘剤、糊料などに、好適に使用され得る。
【0190】
本願発明のグルカンは、老化が起こらないため、和生菓子、洋生菓子、冷凍食品、冷蔵食品、餅、おにぎりなどに好適に使用しされ得る。
【0191】’
本願発明のグルカンまたはその誘導体は、溶解した糊液の粘度が低いため、生物崩壊性プラスチックの原料や、澱粉からサイクロデキストリンなどを製造する際の中間物質、澱粉加工工業における原料などに好適に使用され得る。
【0192】
また、本願発明のグルカンは、良好な接着性を有し、接着用組成物として好適に使用され得る。
【0193】
また、本願発明のグルカンは、環状構造を除けば、通常の澱粉と同じ基本的構造を持つことから、生体内の酵素により容易にグルコースに分解されることができるため、消化性に優れている。そのため、スポーツ飲料、スポーツ食品などにも使用され得る。
【0194】
【配列表】






【図面の簡単な説明】
【図1】
本願発明の内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有するグルカンの製造方法のひとつを示す模式図である。
【図2】
図1で得られた反応生成物のゲル濾過パターンである。
【図3】
本願発明の方法により得られるグルカンの態様を示す模式図である。
【図4】
従来考えられていたCGTaseの反応を示す模式図である。図4Aは、アミロースに作用させた場合、図4Bは、アミロペクチンに作用させた場合を示す模式図である。
【図5】
CGTaseをアミロペクチンに作用させた際の、生産物のゲルろ過クロマトグラフィーの溶出パターンの変化を示す図である。
【図6】
新たなCTGaseの作用機構を示す図である。
【図7】
CGTaseを作用させることにより、CD以外の高分子環状グルカンがつくられていることを示す図である。
【図8】
本願発明の方法で得られるグルカンの構造決定をするための、各酵素によるグルカンの分解を示す模式図である。
【図9】
各種アミラーゼ間の保存領域1および4の配列、および、この配列に対応する枝作り酵素のクローニングのためのプライマーを示す図である。
【図10】
枝作り酵素遺伝子を含むλ-TBE102の制限酵素地図を示す図である。
【図11】
枝作り酵素の遺伝子を含むプラスミドの作製方法を示す図である。
【図12】
実施例1で調製されたグルカンのカラムからの溶出パターンを示す図である。
【図13】
グルコアミラーゼ耐性成分の分子量測定を行った結果を示す図である。
【図14】
グルコアミラーゼ耐性成分の各種糖質分解酵素による消化の結果、生じる糖を示す図である。
【図15】
D酵素を用いて得られたグルカンの、ゲル濾過クロマトグラフィーを示す図である。
【図16】
CGTaseを用いて得られたグルカンの、ゲル濾過クロマトグラフィーを示す図である。
【図17】
実施例1で得られたグルカンが、澱粉の老化抑制効果を有することを示す図である。
【符号の説明】
1 アミロペクチン
2 内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有するグルカン
3 大環状CD
4 CD
5 内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有するグルカン
6 内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有するグルカン
7 環状α1,4グルカン
8 内分岐CD
9 外分岐CD
11 アミロース
12 α-、β-およびγ-CD
13 非環状オリゴ糖
14 アミロペクチン
15 非環状リミットデキストリン
21 還元末端
23 分子内に環状構造を有するグルカン
25 分子内に環状構造を有するグルカン
26 環状グルカン
27 グルコース
 
訂正の要旨 訂正の要旨について
訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項10の記載中の
「重合度が50以上であるグルカンの製造方法」
を、
「重合度が50から5000であるグルカンの製造方法」
に訂正する。
訂正事項b
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項10の記載中の「反応させることを含み、」の後に改行して、
「ここで、D酵素またはサイクロデキストリングルカントランスフェラーゼを反応させる場合には、該方法は、該糖類と該酵素との反応生成物を精製することをさらに含み、」
を挿入する。
訂正事項c
誤記の訂正を目的として、特許請求の範囲の請求項13の記載中の
「A 1kalophillc」
を、
「Alkalophillc」
に訂正する。
訂正事項d
特許請求の範囲の減縮を目的として、 特許請求の範囲の請求項18の記載中の
「重合度が50以上であるグルカンの製造方法」
を、
「重合度が50から5000であるグルカンの製造方法」
に訂正する。
訂正事項e
特許請求の範囲の減縮を目的として、 特許請求の範囲の請求項19の記載中の
「重合度が50以上であるグルカンの製造方法」
を、
「重合度が50から5000であるグルカンの製造方法」
に訂正する。
訂正事項f
特許請求の範囲の減縮を目的として、 特許請求の範囲の請求項19の記載中の「反応させることを含み、」の後に改行して、
「ここで、D酵素またはサイクロデキストリングルカントランスフェラーゼを応させる場合には、該方法は、該糖類と該酵素との反応生成物を精製することさらに含み、」
を挿入する。
訂正事項g
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項2の記載中の
「前記内分岐環状構造部分の重合度が、10から100の範囲である」
を、
「前記内分岐環状構造部分の重合度が、16から100の範囲である」
に訂正する。
異議決定日 2002-01-31 
出願番号 特願平7-195647
審決分類 P 1 651・ 536- YA (C08B)
P 1 651・ 121- YA (C08B)
P 1 651・ 14- YA (C08B)
P 1 651・ 537- YA (C08B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 恵理子  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 深津 弘
横尾 俊一
登録日 2000-09-08 
登録番号 特許第3107358号(P3107358)
権利者 江崎グリコ株式会社
発明の名称 環状構造を有するグルカンおよびその製造方法  
代理人 山本 秀策  
代理人 渡邊 薫  
代理人 山本 秀策  
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